地理総合サンプル問題[第1問]解説

<第1問問1>

[インプレッション]

地域(大陸)ごとの人口変遷の問題。かなりオーソドックスな印象を受けるね。これまでのセンター・共通テストとは大きな違いは感じない。

[解法]

こういった時代を追うグラフが登場する問題のコツは「現在に注目する」こと。2020年の値を確認してみよう。

ウが最大で「23億人」、イが「20億人」、アが最小で「10億人」。

世界全体の人口分布については、現在の人口が約80億人として、「アジア」が50億人で圧倒的に多く、他の3つの地域である「アフリカ」「ヨーロッパ(ロシア含む)」「南北アメリカ」については、平均10億人ずつとして、アフリカが「10億人よりやや多い」、ヨーロッパが「10億人よりやや少ない」、南北アメリカが「10億人ちょうど」と考えるのが妥当。

そうなると、アフリカ全体で10億人超なので、その4分の3ほどを占めるサブサハラ・アフリカについては10億人ちょうどぐらいとみていいと思う。アが「サブサハラ・アフリカ」。

それに対し、イとウは現状(2020年)では大きな差はない。ここで初めて「変化」に注目。つまり、将来の人口の動きである。

地域(大陸)別の年人口増加率を比較した場合、このような形となる。

2.0%;アフリカ

1.5%;南アジア

1.0%;ラテンアメリカ

0.5%;東アジア・アングロアメリカ

0.0%;日本・ヨーロッパ

基本的には年人口増加率は1人当たりGNIに反比例する。1人当たりGNIが低い地域(アフリカなど)は増加率が高く、1人当たりGNIが高い地域(ヨーロッパなど)は増加率が低い。つまり発展途上地域は大きく人口が伸びるのに対し、先進国では停滞し、時には減少の場合も。

ただ、重要な例外が二つある。一つがアングロアメリカ。アメリカ合衆国とカナダである。いずれも移民の流入が顕著な国であり、社会増加率が高いと同時に、そうした移民の出生率も高いため、自然増加率も高くなる。他の先進地域とは異なり、将来的にも人口増加が予想される。

もう一つが東アジアであり、中国。一人っ子政策はすでに終わっているものの、一人っ子政策が実施されていた時代に生まれた現在の20~30代の人口が少ない。出産適齢期の人口が少ないため、新生児の数も少なくなる。1人当たりGNIは低い(10000ドル。世界平均ほど)にも関わらず、人口増加率も低い。同じ東アジアではすでに日本と韓国は人口が減少しつつあるが、近い将来、中国も急激な高齢化により人口が減少すると予想されている。

南アジアで人口増加率が高く、東アジアで人口増加率が低い(さらに減少することが予想される)ことを考えれば、2060年までは増加が続くイが南アジア、2030年ごろより減少していくウが東アジア・東南アジアとみていいだろう。東南アジアは人口減少地域ではないが、現在の人口は6億人程度であり、中国が14億人であるなど東アジアの方が人口が大きいので、さほど考慮の必要はないだろう。あくまで東アジアとくに中国を中心に考えればいい。

それにしても、アの急激な伸びには驚かされる。未来の世界人口はほとんどアフリカに集中という分布パターンになってしまうのだろうか(この予想って本当なのかな?)。

なお、本問については「ヨーロッパ・北アフリカ」、「中部・南アメリカ」のように、北アメリカがヨーロッパに含まれているが(本来の区分は「南北アメリカ」で一つとして考えるべきだろう)、これは特殊な区分パターンなので、考える必要はないと思うよ。

[雑感]

最初に「これまでのセンター・共通テストとは大きな違いは感じない」とは言ったけれど、実は感覚的にあ大きな違いも感じたりはしている。地理という科目において、かつて世界人口については「人口爆発!人口が増えすぎて困るぞ!」みたいな論調で取り上げられていたけれど、それはもはや前世紀の遺物。21世紀型の人口問題は「世界の人口ってもうすぐ減るぞ。人口が減ったらどうなるんだ?」みたいなコンセプトになってる。僕らの時代と違って、今の子供たちはこういった「人口減少社会」への恐怖と寄り添って暮らしているのだろうな。

<第1問問2>

[インプレッション]

合計特殊出生率という指標は、僕は全然好きじゃない。一般には「一生涯に女性がもうける子どもの数の平均」と言われているが、計算方法が複雑でちょっと意味がわからない。また、将来的にも現在の人口規模が維持される(人口置換水準)とされる合計得出生率の値が2.1とされているが、この値がキープされている先進国はほとんどなく、日本もまだまだ子どもが増えていた高度経済成長期にすでにこの値が2.1を切っている。この表でも、人口が十分に増えているアメリカ合衆国ですら合計特殊出生率は1.7に過ぎない。意味がある数字ではないよ。

[解法]

こういった問題については表ではなく、解答となる選択肢の文章を先に読んでしまった方がいい。ある程度、「間違っていそうな」選択肢を絞ってから検討しいこう。

選択肢1から「合計特殊出生率が高い国は、成人識字率が男性より女性のほうが高い」とある。これら社会的事象については「1人当たりGNI」を基準に考える。

合計特殊出生率は、「15歳から49歳までの女性の出生率(子どもをもうけた割合)を合計した数値」であり、出産適齢期の女性の数に反比例する(女性の数が分母となるので)。一般的な傾向として、国別で考えた場合には出生率と比例し、国内(都道府県別)で考えた場合には反比例する。

(世界各国の合計特殊出生率)

出生率の高いアフリカ諸国で高い値となり、出生率が低いヨーロッパ諸国で低い値となる。

(都道府県別の合計特殊出生率)

出生率の高い都心部(東京都など)で低い値となり、出生率が低い農村部で高い値となる。

出産適齢期の若い女性の割合の高い東京都で合計特殊出生率が低くなる一方で、新生児の数が圧倒的に多いアフリカでは若い女性が多いにも関わらず合計得出生率が高くなる(異常なほど子どもが多いのだ!)。こういったセオリーをまず理解してほしい。

以上のことを鑑み、本問は世界の国別の値なので、シンプルに「合計特殊出生率と出生率は比例する」と考えてしまっていい。さらに、出生率については1人当たりGNIに反比例すると考えよう。1人当たりGNIが低い発展途上国では、女性が早く結婚し家庭に入るため生まれる子どもが多くなる(女性が社会進出していないため、全体を平均した所得も下がるのだ。つまり1人当たりGNIも低い。1人当たりGNIが賃金水準の目安であることに注意)。反対に、1人当たりGNIが高い先進国は女性が社会進出し、平均賃金も高い。しかし、晩婚化や非婚化が進み、子どもの数は少ない。

このことを踏まえ、選択肢1を検討。合計特殊出生率が高い国は出生率も高い。そういった国は1人当たりGNIが低く、女性が家庭に留まるため社会進出が進まない。女性への教育も十分でなく、女性は学校に通わず、字も読めない者が多い。成人識字率は男性より女性の方が「高い」と言えるだろうか?答えはもちろん否。女性の識字率が極めて低いことが想像される。選択肢1はNG。

選択肢2について。「合計特殊出生率が高い国ほど、女性の労働力率が高い傾向がみられる」とある。さて、この選択肢はどうだろう?選択肢1の説明の際に、「女性の社会進出が盛んな国は平均賃金つまり1人当たりGNIが高くなるが、晩婚化・非婚化が進み出生率が下がる」と述べた。「労働力=社会進出」と考えるならば、合計特殊出所率と出生率が比例することも併せて考えて、「合計特殊出生率と女性の労働力率は反比例する」とみなすことができる。

ただ、ここでちょっと頭を悩ませるのが「労働」の定義なのだ。過去のセンター・共通テストで「女性の労働力」が登場した際には。その労働の種類については第1次産業つまり「農業」も含まれている。たしかに一般的に考えた場合、「労働=社会進出」であり、女性が家庭に入らず社会で活躍してこそ労働力率は上がる(この場合は出生率が下がるわけだが)とみなすべきなのだが、この労働について農業まで含めて考えてみたらどうだろう?

農業の場合は、農家において家の仕事を手伝うだけなので「社会進出」には当てはまらない。家族中心の零細経営的な農業が行われている地域では、女性も農業に従事し、つまり「労働者」となる。社会が成熟せず、女性の社会進出はみられないものの、国民の多くが農業に従事する国においては女性の労働力率は実は高くなるのだ。

というわけで、その定義があいまいである以上、この文章だけで判断するわけには行かない。実際に表をみて、確証を得ないといけないわけだ。表を参照しよう。合計特殊出生率の高い国は、ナイジェリア、パキスタン、インドネシア、インドの順。これらの女性労働力率は、それぞれ48.2、21.7、53.0、20.7であり、インドとパキスタンではとくに低い値となっている。一方で、合計特殊出生率が低い国は、中国、アメリカ合衆国、ブラジル、バングラデシュであり、こちらの女性労働力率は61.1、56.4、54.4、36.1と全体的には高いようだ。どうだろう?むしろ、合計特殊出生率が「低い」国ほど、女性の労働力率が「高い」とは言えるけれど、その逆は否定される。2は誤り。

3はどうだろう。これはその通りなんじゃないかな。労働力率の男女差が特に大きい国(つまり女性労働力率が極端に低い国)としてはインドがあるが、インドは伝統的に女性の地位が低いことはよく知られているだろう。幼児婚と言って、極めて若いうちに成人男性との婚姻が強制され、さらに家庭に入るため、子ども多く産み、それが高い人口増加率につながっている。インドにおける伝統的な考え方に基づくものである。これは間違っていないので、とりあえず保留にしておく。

最後に4を検討してみよう。「5歳未満児死亡率は,女性が家庭で育児に専念することによって低下させ

ることができる」なんてヤバいことを言ってる(笑)。これも1人当たりGNIを基準に考えるといい。1人当たりGNIが高い先進国は医療体制がしっかりし、衛生環境や栄養状態もいいことから、5歳未満時死亡率は低くなる。「1人当たりGNIと5歳未満児死亡率は反比例」するわけだ。これに対し「女性が育児に専念する」社会ってどういう社会だ?女性が専業主婦として家庭に入るのだから、女性の労働力率は当然低い。女性が社会進出せず、高収入の仕事に就いていないのだから、もちろん全体の平均所得は下がる。平均賃金の低い社会すなわち1人当たりGNIは低い。「女性の労働力率と1人あたりGNIは比例」ってことになるよね。

これらより、「5歳未満児死亡率と女性の労働力率は反比例する」というセオリーが導き出されるよね。女性が家庭に入ることが多い発展途上国では、乳幼児のうちに失われる子どもの命が多いということ。「女性が家庭で育児に専念する」国では「5歳未満児死亡率は高い」のだ。4は誤り。

どうだろう?1人当たりGNIを軸に考えれば、全ての指標が一つの道筋に繋がってくるでしょ?地理は理論科目であり、統計を使いこなす科目でもある。理論の中心には1人当たりGNIという極めて重要な統計指標があり、1人当たりGNIを中心としてそれぞれの指標が比例するのか、それとも反比例するのか、数字に基づいて思考することが必要。「地理は思考科目だ」とよく言われるが、それは「地理は1人当たりGNIを中心とした科目なのだ」と同じ意味なのです。

[雑感]

こういった問題に「地理」という科目のコンセプトを感じる。上述しているように、合計特殊出生率は全く重要な指標ではない。この指標に詳しくない人(とくにマスコミなど)ほど、合計特殊出生率を金科玉条のように崇め奉って大切な指標として扱うが、僕はそれに違和感がある。「女性が一生に産む子どもの数の平均」といいながらもその計算方法は複雑であり(というか、こんな計算、意味あるの?)、アフリカと東京都で高くなるという何の脈絡もない指標となる。地理では合計特殊出生率はほとんど無視され、取り上げられる際も本問のように、単にデータとして示されるだけであり、意味は特に問われていない。

さらに、女性の労働力率についての考え方も世間一般とはちょっと異なっていて、たとえば君たちは「イスラームは女性差別である」と聞いたことがあるんじゃないか。これ、全くの嘘だよね。むしろこれほど女性に優しい宗教はない。それまで無限の妻帯が許されていたアラブ世界において、「妻は4人まで」と厳しい制約を課した点は歴史がひっくり返るほどの大革命であり、女性の地位がこれほど尊重されたことはない。「一夫一妻」にならない理由も「戦争未亡人の救済」であることはよく知られているね。夫が戦争で死に、生活に困窮した女性(そしてその子どもたち)は富裕な男性が支援するというシステムが確立されている。西アジアのアラブ圏では、そもそも女性の地位が低く虐げられていたが、その差別を緩和し、権利を尊重したものがイスラームである。しかし、伝統的な考え方はなかなか払拭されず、今だに女性に差別的な考え方が根強く残ってしまっているのだが。

一方で、そうしたイスラームによる「改革」が広まらなかった地域がインドである。この地域で支配的なヒンドゥー教には女性の地位を尊重するという概念が薄く、女性は過去数千年にわたってひたすら差別されてきた。早くに結婚させられ、とにかく子どもを多くもうけることが賞賛されてきた。彼女たちに自由も権利もない。21世紀の社会において女性の労働力率がわずか20%とは、いかに遅れているか。それがインドなのである。

地理の教科書ではイスラームがかなり好意的に書かれているように感じる。地理を学ばない人たちがイスラームに持っている「悪い」イメージとは全くそれは異なる。イスラームは差別的な宗教ではなく、むしろ人々を解放する新しい考え方なのだというコンセプトが徹底してるように僕は感じます。

<第1問問3>

[インプレッション]

おもしろい問題ですね。センター試験時代には見られず、共通テストになったから登場した新傾向。「言うてることは合うてるんやけど、それ、関係ないんちゃう?」っていうツッコミを入れながら問題を解きましょう(笑)

[解法]

階級区分図を用いた問題。面積の小さな国の高低は読み取れないが、大雑把に1人当たりGNIに対応させて考えればいい。

1人当たりGNIの高い地域として北米、低い地域としてアフリカを考え、次のような傾向が読み取れる。

カ;1人当たりGNIが高い地域で低く、1人当たりGNIが低い地域で高い。1人当たりGNIに反比例する指標。

キ;一応1人当たりGNIが高い知育で低く、1人当たりGNIが低い地域で高いが、アメリカ合衆国の値が比較的高く、カの図ほど明瞭な傾向があるわけではない。1人当たりGNIとの関係は薄い。

ク:1人当たりGNIが高い地域で高く、1人当たりGNIが低い地域で低い。1人当たりGNIに比例する指標。

ここでちょっと面白いのが南アフリカ共和国。アフリカ最南端の国であるが、比較的1人当たりGNIが高い(自動車工業など発達し、BRICSの一員となっている)。サハラ以南アフリカでは、カでは南アフリカ共和国のみ低く、クではやや高い値となっている。一方でキではサハラ以南アフリカの他地域と同様に高い値。この点をみても、カが1人当たりGNIに反比例、キが無関係、クが比例であることが予想される。

では、ここで各指標の判定に戻ろう。「安全な飲用水源の設備割合」(以下「水源」)、「HIV /エイズによる死亡率」(以下「エイズ」)、「農林水産業人口割合」(以下「農業」)の3つ。いずれも階級区分図での表現に適する「相対的な値(割合・率)」であることを確認。

「5歳未満児死亡率を下げるため」の解決策としてX~Zが提示されている。一般に、こういった対策としては3つの柱があり、「衛生環境の整備」、「医療の発達」、「栄養状態の改善」がある(これは論述問題でよく登場するキーワードなので、国公立二次の受験生はキーワードとして知っておくといいね)。X~Zの文章は、ちょうどこの3つの要因に対応している。Xは「衛生的な設備の充実」、Yは「医療体制の充実」、Zは「栄養状態の改善」。

さらにそれぞれが上記の指標にも対応しているようにも思える。つまり「水源」がX「衛生的」、「エイズ」がY「医療体制」、「農業」がZ「栄養状態」。

ただし、ここからがポイント。たしかにそれぞれ関連性が強いようには一見思えるのだが、果たしてジャストミートで対応するものなのだろうか。もしかして、無関係なものも含まれているのか。

たとえばXから検討しよう。ここでいう「衛生的な設備」とは上下水道のことだろう。これの整備によって「安全な水」が得られやすくなる。これまでは汚い泥水をやむを得ず飲用や調理用としていたり、あるいは水汲み場が遠く水が自由に得られなかった状況が大きく改善され、病気が減り、子どものうちに失われる命が減る。妥当な内容である。

ではYはどうだろう?ここで述べられている「医療体制」は「専門家立会のものでの出産を増やす」など出産に関するものであり、たしかにこれにより新生児のうちに失われる命は減り、5歳未満時死亡率を下げることは可能。しかし、これが「エイズ」と関係あるだろうか?エイズは感染症であり、出産に専門家が立ち会うことで感染が未然に防がれるものではない。病院の開設やワクチンの開発と普及などによって防がれるものなのではないだろうか。これ、関係ないよね?解答の候補から外していい。

さらにZ。先にネタバラシをしちゃうと、これ、最高に「鋭い」選択肢。この文章の意味がわかれば君は地理マスターだよ。あとで詳しく説明するけれど、「農業」に関する階級区分図はカだったりする。農業就業人口割合は1人当たりGNIに反比例し、先進国であるアメリカ合衆国で低く、発展途上地域であるアフリカで高い。

さて、このことから何を考える?農業就業人口割合が高い地域において「農業が盛ん」と言えるんだろうか。アメリカ合衆国は極端に農業就業人口割合が低い(わずか1%。日本の3%より低い)。でも、世界最大の農産物輸出国として、世界の農業の中心的な立場を担っている。アメリカ合衆国のさじ加減で穀物や肉類を主とした農産物の価格は決定され、世界全体の食糧事情に大きな影響が与えられる。

一方で、慢性的な食糧不足に悩まされる地域ってどこだろう?例えばアフリカがあり、インドがあるよね。でもそうした地域って第1次産業就業人口割合って高いんじゃないの?つまり農業に従事する人はかなり多い。でも、実際には食糧生産は十分でないのだ。商品作物(プランテーション農業による)が優先され、自給作物の生産はおぼつかない。機械化が進まず多人数で非効率な農業が行われる(労働生産性が極めて低い)。干ばつや病気も多いかも知れない。どうだろうか、こうして考えると、第1次産業就業人口割合の高低と農業生産って実は無関係ということがわかる。むしろ第1次産業就業人口割合が低い方が機械化が進むなどして、農業生産は多くなるんじゃないか(実はここに日本の農業のヒントがある。日本は「農民が多すぎる」のだ。農業に従事する高齢者を引退させ、土地を集めて大規模農場を作り、少人数で機械による効率的な農業を行えば農業生産はアップするのです。政治家はこういうこと、わかっているのかなぁ。農林水産省主導でがんばってくれよ~)。「農林水産業人口割合」の高低を確認したところで、それが「栄養状態の改善」や「食糧生産の充実」とは全くの無関係なのだ。こちらも解答の候補から外す。

結果として残るのは「水源=X」の組み合わせのみ。そして、安全な水を得やすい国が1人当たりGNIの高い国であることを考えれば、図についてはクを選択すればいいことがわかる。X・クの3が正解。

一応最後にカ~クの階級区分図の判定をしておこう。カが「農業」。1人当たりGNIに反比例。アメリカ合衆国や欧州など先進地域で低く、アフリカやインドなど発展途上地域で高い。ただ、すでに述べているように農業が盛んなのは農林水産業人口割合(第1次産業就業人口割合)が低い地域であり、農民の割合が高いことが決して農業生産の多さには結びつかない。

1人当たりGNIに比例するクが「水源」。サウジアラビアなど西アジアの産油国が高くなっているのは、莫大なオイルマネーによって淡水化プラント(海水を炭水にする)が建設されているからか。

残ったキが「エイズ」。これはアメリカ合衆国でも比較的高く、1人当たりジーエヌアイと関係ないことがわかる。南アフリカ共和国など赤道以南のアフリカでとくにHIVウイルスの蔓延が深刻。

[雑感]

「正しいんだけど、それって意味ないでしょ」っていう選択肢を探すパターンは共通テスト導入以降に特有のもので新傾向と言える。難易度は低いとは言えないけれど、でも決して解答不可能じゃないでしょ?本問を含む過去問を丁寧に読み解き、解答のコツをつかもう。雑に「何となく」解くと怪我をする。論拠に基づき、確信を持って解こう。こういった問題こそ、解けたら最高に気持ちいい。