2022年地理B本試験【第2問】解説

<第2問問1>

[ファーストインプレッション]

みなさん、こんにちは。僕は第2問から必ず解くことにしているので、本解説もこの問題から書き始めています。第2問問1って簡単な問題になることが多いのですが、今回もそのパターンにハマっていますね。実に簡単な問題。

[解法]

石炭(炭田)と石油(油田)の問題だね。シンプルな統計問題。図1は一応世界全図ではあるものの、特殊な知識は全く不要。中学レベルで十分。

まずは油田から判定しよう。これ、簡単でしょ?世界の原油(石油)資源の多くは西アジアの、特にペルシャ湾に集中している。アラビアプレートがユーラシアプレートを押し上げる際に、地下の地層に褶曲が生じ、背斜構造となった部分に石油が溜まっている。

西アジアに極端に集まっているイを油田と考えていいんじゃないかな。他の箇所についてはノーマークでいい。西アジアは知らないといけないけど、これは中学の時に習っているよね。

もう片方のアが炭田。これはとくにポイントになる部分はない。あえて言えば、オーストラリアの東部かな。ここは古期造山帯(安定した地域に位置する山地)で2~3億年前の古生代・石炭紀に造山運動を受けて形成されたもの。当時の森林が泥炭層に堆積し、長い時間をかけて炭化した。

文章の判定。「埋蔵量の約半分が特定の地域に偏っている」からBを石油とする。もちろん西アジアのペルシャ湾だね。っていうか、半分も集中していたんや。僕は知りませんんでした(笑)。たしか産出量は世界の3分の1がこの地域に集中しているんじゃなかったかな。埋蔵が半分で、産出が3分の1だから、実は余裕を持って採掘しているってことになるね。正解は4。

AとBの他の部分は検証の必要なし。一応コメントしておくと、Aの「生産量~9割を超えており)はよくわからない。「世界最大の~ある」は中国のことだけど、これもヒントにはならない。最新統計では原油(石油)の産出量はアメリカ合衆国となっているのだが、消費量もやはりアメリカ合衆国が1位なのだ。

Bの「世界の~占めており」も参考にならない。そもそも一次エネルギーは固体燃料の石炭、液体燃料の石油(原油)、気体燃料の天然ガスなのだから、3分の1は普通の値でしょ?

[ちょっとひとこと]

やっぱ統計やな。

<第2問問2>

[ファーストインブレッション]

いいですね。数字のセンスが問われる問題だね。十数と割合の違い。それに加えて、統計の妙というか、複数の統計指標について比例関係や反比例関係を考えることもおもしろい。ガッツリ良問。

[解法]

Xから先に判定しようか(意味はないですけど・笑)。「アジアにおける1人当たりエネルギー消費量は(X)」とあり、これは増えているのか、減っているのか。

「1人当たり」ということは人口で割らないといけない。グラフから正確に数字を読み取る。1965年と2015年を比べてみよう。

1965年の人口は「50」ほど。2015年の人口は「100」。

一次エネルギー消費量は、1965年が「10」、2015年が「180」ぐらいか。

同じ期間ながら、人口は2倍、一次エネルギーが18倍に増えているのだから、もちろん一人当たりの一次エネルギー消費量は上昇している。「増えている」とみていいね。

一応計算してみると、(単位は不確かなので省略します)1965年が「10÷50」で「1/5」、2015年が「100÷180」で「5/9」で、高くなっているね。

次にカとキの判定。どちらがアフリカで、どちらがヨーロッパだろうか。まず実数で考えてみよう。現在の世界人口は75億人ほどだが、このうち、アジアが45億と圧倒的に多く、アフリカが13億(中国やインドと同じ)、ヨーロッパが7億(EUが4.5億でこれにイギリスやロシアを加えたらこれぐらいになるでしょ?)、南北アメリカが10億、オセアニアが0億。このような単純化された数字ならば覚えやすいじゃないかな。

世界の人口の2015年の値を読み取り、カの方が幅が広く、大きな値になっているように見える。カがアフリカ、キがヨーロッパ。

一応、増加率にも注目してみよう。地域別の年人口増加率は、「2%;アフリカ、1.5%;南アジア(インド)、1.0%;ラテンアメリカ、0.5%;東アジア(中国)・アングロアメリカ(米加)、0%;日本・ヨーロッパ」である。おおよそ1人当たりGNIに反比例している。中国は一人っ子政策の影響で、1人当たりGNIが低いが、人口増加率も低い。アメリカ合衆国は移民を多く迎え入れ、1人当たりGNIが高い先進国グループとしては、人口増加率も高くなっている。

アフリカで人口増加が高く、ヨーロッパで低くなっている様子を観察してみよう。1965年の段階ではカの方がキより人口増加率が高い。しかし、先にも見たように2015年にはこれが逆転している。キの人口が停滞している一方で、カは急増したことがわかる。

さらにせっかくなので「一次エネルギー消費量」も見ていこう。これもかなり面白い。一次エネルギーは問1にも出てきたね、石炭、石油、天然ガスのこと。この消費は経済活動が活発な国で大きく、つまり「GNIに比例」する。

実際の統計を確認してみよう。GNIは「1位;アメリカ合衆国、2位;中国、3位;日本、4位;ドイツ、5位;インド」。一次エネルギー消費量は「1位;中国、2位;アメリカ合衆国、3位;インド、4位;ロシア、5位;日本、6位;ドイツ」。どうかな、おおまかにGNIが大きい国と、一次エネルギー消費量の多い国は一致していないかな。もちろんロシアのような例外もあるけれど(これについては次の問3でも説明します)、経済規模が大きい国でこそエネルギー資源は大量消費されているのだ。

このセオリーをグラフに当てはめてみよう。「一次エネルギー消費量」のグラフで2015年の値を確認する。ヨーロッパを示すキの値は約100であり、値が大きいことが分かる。それに対しアフリカを示すカのあたいはごくわずか。細すぎて、せいぜい10あるかどうかってとこじゃない?アフリカは人口は13億人いるものの、1人当たりGNIは全体的に低いし、もちろんGNIも小さい。一次エネルギーについても消費量は極めて小さいのだ。

[ちょっとひとこと]

計算問題ですね。僕は好きです。

<第2問問3>

[ファーストインプレッション]

いい問題だね。共通テストではこうやって国名を隠した状態で解かせる問題がよく登場している。地名や都市名の知識が全く通用しないし、小手先の「豆知識」なんて全然役に立たない。クールでいいじゃないですか。思考問題として極めてレベルが高い。今回の全31問中ベストですよ。

[解法]

1人当たり二酸化炭素排出量と1人当たりGDPが示されている。美しいグラフですね。僕は思わずウットリしてしまうよ。1人当たりGDPはもちろん1人当たりGNIと同じ。データブック オブ・ザ・ワールドには1人当たりGDPの記載はありませんが、1人当たりGNIは全ての国のものがあるので、確認してみるといいよ。

1人当たりGNIを用いて思考する場合、他の指標とどういった関係があるのか考察して欲しい。比例関係なのか?反比例なのか?それとも無関係なのか?aやb、そして世界平均の変化を見ると、1人当たりGNIが上がると1人当たり二酸化炭素排出量の値も上がっているよね。これ、比例関係とみていいんじゃないか。そもそも二酸化炭素ってどういった状況で排出される?もちろん我々生物は生きているだけで(呼吸するだけで)二酸化炭素を排出するわけだけど、やはり大量排出となれば、それは一次エネルギーである石炭・石油・天然ガス(つまり化石燃料だね)の燃焼によるものだろう。鉄鋼業などの重工業化が進めば二酸化炭素排出も増えるし(石炭の燃焼により鉄鉱石を溶かすのだ)、自動車が増えればガソリンの消費も増える(もちろん石油から作られたものだね)。火力発電のための化石燃料消費も多い(日本の火力発電の主要エネルギーは天然ガスだ)。1人当たりGNIと1人当たり二酸化炭素排出量が比例するということは、「1人当たり」を外した、GNIと二酸化炭素排出量も比例する。GNIは経済規模であり、その国の「大きさ」を表すと考えていい。経済大国は工業化が進み、自動車の保有台数も多ければ、発電量も多い。それだけ多くの化石燃料を消費し、莫大な二酸化炭素を排出するのだ。

「比例」を表すためにこのグラフに線を引いてみよう。世界平均が基準になるかな?起点となる0と、現在の世界平均である★を結ぶ直線を引いてみよう(右上の方法にずっと延長してください)。(y=ax)の比例直線。世界平均の値はこの上にある。

となると明確になることがあるよね。この直線より上側にあるのがaとbの国であり、下側にあるのがcの国。1人当たりGDPに比して1人当たり二酸化炭素排出量の値が大きくなるのがaとbならば、逆に1人当たりGDPに比して1人当たり二酸化炭素排出量の値が小さくなるのがc。とくにcについては今まで触れてこなかったけれど、明らかに動きがおかしい。1995年から2015年にかけて1人当たりGNIが上昇しているのに、1人当たり二酸化炭素排出量が低下している。ここで「比例」関係が崩れているのだ。これはどうしたことなのだろう?

その謎は後で解くことにして、aとbについて先に考えてみよう。bは気になることが多い。1人当たりGNI(1人当たりGDP)が2015年の段階で20000ドルって、これ、かなり高い。世界平均は10000ドルであり、中国・マレーシア・トルコ・ルーマニア・ロシア・メキシコ・ブラジルといった錚々たる新興工業国がこのレベルにある。20000ドルってどこだよ?決して「遅れた」国ではないぞ。

さらに具体的な数字に注目するならば、1人当たりGNIが20000ドルで1人当たり二酸化炭素排出量が20トンを超えている。直接的に数字を比較するのは間違っているかもしれないが、比にすれば「20000:20」になる。一方で、aの2015年の値は1人当たりGNIが10000ドルで1人当たり二酸化炭素排出量が8トン程度。同じく比にすると「10000:8」。b国の方が絶対的な量でも、1人当たりGNIとの相関的な関係でも、a国を超える「エネルギー多消費」国と言えるのではないか。

さぁ、これぐらいの情報を頭に入れて、サ~スの各文を検討していこう。美しいぞ。覚悟して望みなさい。

まずサから。キーワードはもちろん「脱工業化」。先進国においては「工業」はもはや時代遅れのアイテムなのだ。未だに自動車を嬉しそうに作っている日本なんて国は救いようのないアホ国ということになる。欧米の先進国ではとっくに製造業は外国に押し出してしまい、知識集約型の扇端産業の研究開発が主産業になっている。これ、よく考えたら当たり前の流れでしょ。僕らの生活の中にはすでにテレビや冷蔵庫、洗濯機などの電気機械にあふれ、それらは10年経っても壊れない。これ以上作る必要があるかい?車だって、僕は持っていないし、将来的に買う予定もない。少なくとも都会に住めば車は必要ではない。そういったものをいくら一生懸命作ったところで先はあるんだろうか?世界はとっくに「ハード」から「ソフト」に転換している。再生可能エネルギーもそうだ。日本は未だに原発に力を入れようとしている。ちょっと待てよ、日本はわずか12年前に原発によって福島の沿岸部を破壊したばかりじゃないか?そんな国がどの顔して原発やりますなんて言えるんだよ?福島の故郷を失った人たちの声、君には聞こえていないのか。原発はたしかに二酸化炭素を排出しない「クリーン」なエネルギーだよ。でもウランは有限だ。もうすぐなくなる。使用済み核燃料の再処理だってスムーズに進んでいるわけではないし、とくにプルトニウム式の発電など実用化には遠い。原発は諦めて、再生可能エネルギーに特化するべきだって僕は思うし、世界の先進国の多くはすでにそこを目指している。日本だけが乗り遅れている。サがcであるのは明確だね。これがどこの国かはよくわからないが、シンガポールかなってちょっと思ってる(違ったらゴメンなさい)。かつて日本が低く見ていたアジアの国の方が日本より先を行っている。この状況、君はどう思うんだ?

さらにシ。「資源が豊富」が間違いなくキーワード。国内に一次エネルギー資源が豊富に産出されると、どうしても経済規模や経済レベルに比して、それらエネルギー資源の消費が野放図に行われることになる。例えばGNIと一次エネルギー消費の関係を考えると、GNIは1位米国、2位中国、3位日本、4位ドイツ、5位インド。一次エネルギー消費量は1位中国、2位米国、3位インド、4位ロシア、5位日本、6位ドイツ。おおまかに比例関係にあるとも言えるし、例外が多いとも言える。GNIに比して一次エネルギー消費量が少ないのが日本とドイツ。つまり、1人当たりエネルギー消費量が低くなるわけだ。日本は高い技術力で省エネを進めてきた国なのだ(でも、これからはわからないよ。再生可能エネルギーは電気自動車の分野においては世界各国の後塵を拝している)。それに対し、ロシアはどうだ?GNIは少ないのに、一次エネルギー消費量は世界4位。1人当たりエネルギー消費量が極めて高くなっていることがわかる。ロシアは世界的な原油、天然ガスの産出国。有り余るエネルギー資源を「無駄遣い」してしまっているわけだ。b国がロシアであるとは思わないが(ロシアは1人当たりGNIは10000ドル)、ロシアと同じような状況であることは十分に想像できる。「資源大国」なのだ。bがシとなり、正解は6。bはどこなんだろう?20000ドルっていうと、サウジアラビアじゃないかな。

Aは一般的な発展途上国のパターンだね。今や発展途上国であっても重工業化は進む。というか、発展途上国だからこそ賃金が安く電気機械工業や自動車工業が発達する。現在の1人当たりGNIが10000ドルなので、中国・マレーシア・トルコ・ルーマニア・メキシコ・ブラジルのいずれかだろうね(同じ10000ドルであってもロシアは「資源国」のキャラクターなので該当しないと思う)。

なお、マレーシアは国内にサイバージャヤという知識集約型産業の集積地区を設け、先端産業の研究開発を行なっている。日本にも国内にこうしたインテリジェンス・シティをつくるべきだと思うのだが、国家としてそういったプロジェクトに前向きではない。カジノやら万博なんて言っている場合じゃないと、僕は思うよ。

[ちょっとひとこと]

世界はとっくに脱工業を指向している。日本は?

<第2問問4>

[ファーストインプレッション]

第2問は全体的に簡単な問題が並んでいると思う。本問もその一つじゃない?数字の用い方がカギ。

[解法]

会話文の中に「化石燃料による発電は環境への負荷が大きく、再生可能エネルギーによる発電は環境への負荷がきわめて小さい」とあるよね。中国は「化石燃料による発電量」が極めて大きいので、eは正文でしょう。

さらに今度は人口が考慮の対象になるのだが、「1人当たり」の値を計算しないといけない。1人当たりの化石燃料による発電量を計算するならば、アメリカ合衆国ならば3.3億人で「26915」を割らないといけない。

以下にそれぞれの計算式を挙げておく。単位は「億キロワット時」と「億人」だが省略。

(中国)46783÷14

(米国)26915÷3.3

(日本)8199÷1.25

(ドイツ)3461÷0.8

(カナダ)1274÷0.4

いずれにせよ主な国の人口はマストで知っておかないといけない。とはいえ、たつじん地理のみんなならこれぐらいは余裕で知ってるよね。本当にこういった統計数字こそしっかり覚えないと話にならないってことがわかるでしょ?地名や都市名なんかより統計数字の方が遥かに大切。

計算はちょっとめんどくさいけど、米国の値が最も高く(「割合」なのであえて「高く」と言っていますよ)なるのは分かるんじゃない?「化石燃料~」は中国の方が米国より2倍ぐらい大きいが、人口はさらに大きく4倍あるので、1人当たりの値は米国の方が高い。微妙なのはカナダだけど、人口は約10倍違うとして、「化石燃料~」は20倍違うのだから、やっはり1人当たりの値は米国の方が高い。日本とドイツは問題ないでしょ。全然低い。fも正文だね。

ラストは「発電量の構成比」。これ、おもしろいのは「化石燃料~割合」と「再生可能エネルギー~割合」を合計しても100%にならないところ。中国なら70.5+25.1=95.1、ドイツなら52.9+33.1=86.0。問題文の注釈に「原子力なども含む」とあり、それらも合わせて初めて100になるってことなんだろうね。

そして問題文に戻ると「発電量の構成比でみると、ドイツが環境への負荷が最も小さい構成比である」となっている。これ、そうだろうか?カナダの方が明らかに「再生可能エネルギー~割合」は高いよね。gが誤りとなります。

[ちょっとひとこと]

人口は知らなあかんで。

<第2問問5>

[ファーストインプレッション]

「センター・共通テストは必ず見たことがないグラフが登場する」という鉄の掟。本問がまさにそれだね。4つ!の要素が一つのグラフの中に詰め込まれている。アバウトに見るのではなく、一つ一つのデータを丁寧に読み解いていく。グラフの形状は未知のものであっても、取り上げている内容は実にオーソドックスなものである場合が多いのだ。

[解法]

林業に関する問題。最初に薪炭材と用材のセオリーからまとめてしまおうか。薪炭材とは燃料に利用される木材のこと。電気やガスの普及していない発展途上国でこの値が大きい。用材は主にパルプ材。紙の需要が多い先進国で値が大きい。選択肢となる国は3つ。ロシア、ブラジル、エチオピア。ブラジルの1人当たりGNIは第4問でも登場しているね。1人当たりGNIが10000ドルであるグループは必ず知っておくこと。マレーシア、トルコ、ルーマニア、ロシア、メキシコ、ブラジル。資源国ロシアを除けば、いずれも先進国から工場が進出し工業化が著しい国。最近は中国がこの10000ドルグループに食い込んできている。一方のエチオピアはサハラ以南アフリカの一国であり、この地域の国が概して1人当たりGNIは低い。発展途上国の中でもとくに発展の遅れた「後発発展途上国」と呼ばれるグループ。

このことから明らかに経済レベルが一つだけ低いエチオピアで薪炭材としての利用がメイン(というか100%)のMと判定していいんじゃないか。「木材伐採量」にしても、国の面積自体がロシアやブラジルが広大すぎるので、普通の面積のエチオピアで伐採量が多くないのは当たり前なんじゃないかな。Mはエチオピアで決定。

さて、ここからは判定が難しい。ロシアとブラジルは1人当たりGNIは同じ水準なので、薪炭材と用材のバランスで考えるのは難しい。木材伐採量は両国とも変わらないので、これも判断材料とはならない。

よってカギは他の2つの指標である木材輸出額と森林面積の減少率なのだが、とくに明確な違いがあるのは森林面積の減少率だね。ここにターゲットを絞ろう。

世界の森林は大きく3種類に分けられる。熱帯林、温帯林、冷帯(亜寒帯)林。最も広い面積を占めるのが熱帯林で森林全体の50%超。冷帯林が次に多く3分の1ほど。温帯林は残る10%ほど。温帯地域は古い時代から開発が進み、多くの森林が伐採されてしまった。耕地や牧場の拡大、燃料←建築材料としての利用。西ヨーロッパや北アメリカの森林面積割合は低く、温帯で森林国と言えるのは日本と韓国ぐらい。とくに日本も古い時代から木材の利用が進んだ地域だが、日本の場合は植林を徹底的に行なっていたという歴史がある。中国山地などほぼ全体が人工林だったりする。昔から日本人って「エコ」の意識は高かったんだね。

さて話を森林減少に戻すけれど、実は地球全体で考えた場合、森林面積は増加しているのは知っているかな?ちょっと意外?これに貢献しているのは中国。現在、中国では内陸の乾燥地域を中心に植林運動が活発で、森林が大きく増えている。「退耕還林」(耕地を森林に戻す)や「緑の長城計画」(大規模な植林)がプロジェクト名である。

ただ、それでも特定の地域では森林減少が著しく、それが熱帯なのだ。熱帯林の減少は著しい。とくに東南アジアのジャングルや南アメリカのセルバが深刻。東南アジアでは、高級材の伐採やアブラヤシ農園の拡大、エビ養殖池のためのマングローブ林の伐採などが熱帯林(ジャングル)破壊の原因。南アメリカでは、アマゾン横断道路の開通に伴う農地や牧場(肉牛の放牧地)開拓、鉄鉱山の開発が熱帯林(セルバ)破壊の原因。特に近年は大豆栽培地域が熱帯林地域にも及び、広い範囲の森林が伐採されている。ブラジルでは、近年需要が大きく拡大している中国向けの大豆の栽培と輸出が急増している。経済成長による食生活の変化で、中国でも油脂用あるいは家畜の飼料用の大豆が求められているのだ。

これに対し、冷帯林は比較的経済レベルが高い国に分布していることもあり、企業的な管理がなされていることが多い。計画的な伐採と植林により、その面積は保全されている。冷帯林は主に針葉樹からなるが、針葉樹は材質が軟かく加工が用意であり、パルプ材としての需要が大きい。

こういった事情を考えるとどうだろうか。森林面積が大きく減少しているLが熱帯のブラジル、さほど減少していない(というかもしかしたら増えているのかもしれない。本グラフからは明確でないが)Kがロシアとなり、3が正解となる。

先ほども言ったように、冷帯林の方がパルプ材として利用されやすく、ロシアで用材の割合が高いのにもそういった背景があるのだろう。

さらに熱帯林について付け加えておくと、熱帯林の減少の要因の一つとして土壌の問題がある。熱帯の土壌ラトソルは、多雨により表土が流出し、表面に金属が残存している。森林が伐採され、土壌が露出するとこれが激しい日光の直射によって硬化し、植物が根を張ることができない「鉄板」になってしまうのだ。樹木を伐採したら土壌が乾かないうちに植林をしないといけないのだが、これが間に合わず裸地となった場合、森林の再生は見込めない。

[ちょっとひとこと]

それにしても4つのファクターをようぶっ込んでくるなぁ。すごいグラフやで。

<第2問問6>

[ファーストインプレッション]

これは簡単なんじゃないの?っていうか第2問は簡単な問題ばっかりだったよね。全問ゲットで決めようぜ。

[解法]

問5の熱帯林減少のところでもちょっと説明したけれど、東南アジアでは沿岸のマングローブ林の伐採が大きな熱帯林の減少につながっている。循環型社会なわけがない。2が誤りだね。

他は問題ないと思います。知らない話題もあるとは思うけど(僕も4は知らないです)、1はエコな伝統的農業であるし、3と4はリサイクル・リユースだね。

[ちょっとひとこと]

循環型社会って言いたかっただけの問題ちゃう?