授業プリントK 15・1・2・1

たつじん地理[15・1・2・1] [8]農牧業区分

 

8.1 集約的な農牧業と粗放的な農牧業

集約的・・・土地生産性(1ha当たり収量。収量を水田や畑地の面積で除す)の高い農牧業。気候や土壌に恵まれたアジア、近代的な農牧業が行われるヨーロッパなど。人口密度も高い。

粗放的・・・土地生産性の低い農牧業。環境条件の厳しい熱帯や寒冷地、大規模な農場の多い新大陸(農地面積と反比例することに注意)。人口密度は低い。

 

8.2 自給的な農牧業と商業的な農牧業

自給的・・・アジアやアフリカなど伝統的な農牧業地域。小麦や米は原則として栽培地域で消費されることを目的につくられる。

商業的・・・ヨーロッパや新大陸など近代的な農牧業地域。農畜産物の輸出がさかん。例えば小麦の上位輸出国は、新大陸とヨーロッパの国々。

 

8.3 家族中心の零細経営的な農牧業と企業的な農牧業

家族中心の零細経営的・・・アジアやアフリカ、ヨーロッパ南部など伝統的な農牧業地域では家族単位で農牧業が営まれる。農業就業人口率は相対的に高く、労働生産性(1人当たり収量。収量を労働者数で除す)は低い。

企業的・・・新大陸でみられる大資本を投下した農牧業形態。大規模機械化が進行し省力化が進むため、相対的に農業就業人口率は低くなる。労働生産性は高い。

 

8.4 有畜農業と無畜農業

有畜農業・・・遊牧や企業的牧畜など作物の栽培が困難で家畜の飼育に依存する農業形態の他、ヨーロッパの農業も原則的に有畜となる。地力に乏しいため、飼料作物を栽培し家畜を飼育することで、その排泄物を肥料として用いることができる。

無畜農業・・・焼畑やプランテーション農業など熱帯地域の農業(高温多雨で不衛生な環境条件)、企業的穀物農業(小麦は家畜の飼料とならない)。

 

8.5 ホイットルセー農牧業区分・伝統的な農牧業形態

・焼畑(移動式)農業;熱帯雨林地域で行われる。地力に乏しいため樹木を焼いた灰を用いて農業を行う。数年ごとに耕地を移動するため移動式農業ともよばれる。主に栽培されるのはキャッサバなどのイモ類やソルガムなどの雑穀類。[粗放・自給・家族・無畜]

・遊牧;穀物栽培が困難や地域で行われる。冷帯・ツンドラ地域など北半球の寒冷地域ではトナカイ、乾燥地域ではラクダや羊、高地ではチベット高原・ヒマラヤ山脈でヤク、アンデス山脈でリャマ・アルパカ。[粗放・自給・家族・有畜]

・オアシス農業;砂漠地域で行われる伝統的な灌漑農業(天水に頼らず、人為的に水を耕地に与える農業)。水が貴重であり、耕地面積が限られるため集約的な農業形態となる。自給作物としては乾燥に強いナツメヤシや小麦など。商品作物としては綿花など。ラクダや羊などの家畜飼育を伴う場合も。[集約・原則として自給だが一部では商業・家族・有畜]

 

 

<練習問題>

                                    

[1] 世界には、慢性的に食料が不足する地域と、食料を輸出する地域がある。次の表1は、アジア、アフリカ、北・中央アメリカ、ヨーロッパの人口と食料生産の年平均増加率を、穀物の輸出量を輸入量で割った値を示したものである。アフリカに該当するものを、表1中の①〜④のうちから一つ選べ。

 

 

人口の年平均増加率(%)

1995~1997年

 食料生産の年平均増加率(%)

1995~1997年

穀物輸出量÷穀物輸入量

1997年

2.7

2.9

0.1

1.5

3.8

0.2

1.2

3.0

4.9

0.1

0.9

1.2

『世界国勢図会』により作成。

 

 

[2] 家畜飼育に関する次の文①〜④のうちから、誤っているものを一つ選べ。

 

① 牛や馬、羊などの家畜は、焼畑農業地域で広く普及した。

② アメリカ合衆国やオーストラリアでは、フィードロットと呼ばれる集約的な肥育農業が増加している。

③ ヨーロッパの商業的混合農業や酪農は、三圃式農業から発達したものである。

④ 遊牧は、穀物の栽培が困難や半乾燥地域で広く行われている。

 

 

[3] 農産物の需給や利用には、地域的な差異がみられる。次の表1は、穀物の用途別利用量と穀物自給率を国別に示したものであり、①〜④は、アメリカ合衆国、ナイジェリア、日本、ブラジルのいずれかである。ナイジェリアに該当するものを、表1中の①〜④のうちから一つ選べ。

 

表1

 

穀物の用途別使用量(千t

穀物自給率(%)

食料

飼料

17925

16560

24

18835

1693

83

22625

39615

87

90562

162493

127

統計年次は、穀物の用途別利用量が2003年、穀物自給率が2001年。

『世界国勢図会』により作成。

 

 

[4] 図1中の5として示された地域でみられる自給的農業の説明として適当でないものを、次の文①〜④のうちから一つ選べ。

 

① 森林や草原を焼いて耕地とし、数年を経て地力が衰えると耕地を放棄して他へ移動する焼畑農業が行われている。

② 作物としては、キャッサバ・タロいも・ヤムいもなどが主に食料自給用に栽培されることが多い。

③ 広大なやせた土地を耕すために、家畜に犂(すき)をひかせる農法が各地にみられる。

④ 植物な旺盛な生長力にたよって、長い木の棒で地面に穴をあけて種をまく耕作が行われている。

 

[5] 次の図1は、世界の主な遊牧・酪農・企業的放牧の三つの牧畜業の分布を示したものである。この図を見て、下の問いに答えよ。

 

図2中のア・イ・ウは、図1中の遊牧地域の3地点(B・C・D)付近における特徴的な家畜をスケッチしたものである。それぞれの地点と家畜の正しい組合せを、下の①〜⑥のうちから一つ選べ。

 

 

 

 

 

 

 

必須統計 [1−1] 人口                              

 

<必須統計>

世界の総人口は2000年で(1)億人を突破し、そこから年に1億人ずつ増加していく計算。年人口増加率は(2)%である。

 

人口世界最大は(A         )で14億人。一人っ子政策によって人口増加率は世界平均より低い。

人口2位は(B        )で13億人。人口増加率は高く、今世紀の半ばには世界最大になると思われる。

人口3位は(C        )で3億人。先進国としては例外的に人口増加率が高い。移民の流入が続く。

人口4位は(D        )で2.5億人。イスラム教徒の数が世界で最も多い。

人口5位は(E        )で2億人。「人種のるつぼ」。人口、面積ともに南米大陸の半分を占める。

人口6位は(F        )で1.8億人。外来河川インダス川の流域に国土が広がる乾燥国。

人口7位は(G        )で1.7億人。アフリカ大陸最大。人口増加率が高い。

人口8位は(H        )で1.5億人。三角州に国土が広がる。面積は日本の3分の1程度で人口密度が高い。

人口9位は(I        )で1.4億人。日本の45倍の面積を持ち、人口密度は10人/未満。

人口10位は(J        )で1.25億人。少子化が進み、人口が減少に転ずる。

 

アジア;韓国が4500万人、タイが7000万人、マレーシアが3000万人。

西ヨーロッパ;ドイツが8000万人、イギリス・フランス・イタリアがそれぞれ6000万人、スペインが4500万人、それ以外の国がそれぞれ1000万人程度。

新大陸;カナダが3000万人、メキシコが1.2億人、オーストラリアが2000万人。

人口が少ない国としてよく取り上げられるのが、シンガポール、ノルウェーなど北欧諸国、ニュージーランド。500万人程度。



第1講 農牧業(1)                                         

[1](1)① 緑の革命とよばれる農業改革が行われたアジアにおいては、人口当たりの食料生産が拡大。
(2)⑥ 日本に注目。日本で低い値となっているAが農業就業人口率。また土地生産性は日本や中国など東アジアで高く、タイなど東南アジアで低いので、Bが土地生産性に該当。残ったCが耕地率。低湿な地形で水田に適した土地に恵まれたバングラデシュなど。
(3)① フィリピンには外国系の農園が多く、とくに日本へのバナナ輸出が盛ん。
②;バングラデシュは米の輸出国ではない。③;マレーシアのプランテーションはイギリス系企業によって作られ、天然ゴム栽培が中心だった。現在は国営もしくはマレー人による経営となり、アブラヤシへと転換されている。④;パキスタンでは灌漑による小麦栽培が中心。一部で米も栽培されるが、野菜は主ではない。
(4)③ 輸出量に注目。タイは世界最大の米の輸出国。
[2](1)③ 北極海沿岸はトナカイ、砂漠はラクダ、モンゴルの草原は馬。
[3]④ 華中以南は米。華北より北は小麦だが、やや温暖な南東部は冬小麦であり、とくに冬季に寒冷となる北部や内陸部は春小麦。
[4]① 新大陸ではないので、企業的牧畜は消える。クリークは稲作地帯における水路のこと。