試作問題・地理総合/地理探究[第6問]解説

<第6問問1>


[インプレッション]

ちょっと捻りのある問題。素直には解かせてくれない問題だね。都市圏構造の典型的な問題と思ったらちょっと違う。


[解法]

あまり先入観を持たず、文章を丁寧に読んで細かい部分まで検討して答えを出すことが大切。

地区a~cで最もわかりやすいキーワードは「ニュータウン」。郊外で地価が安く、戸建てが中心。ファミリー層が主体であり、子どもを持つ家庭も多いだろう。「単身世帯」の割合が低く、「年少人口」の割合が高いウが該当。

さらにbでは「農村地域」とある。「敷地面積の広い」住宅が「散在」なので、人口密度の低い過疎地域をイメージしてもいいと思う。若年層の流出により、年少人口の割合が最も低くなる。ウが該当。ただ、ちょっと気になるのは「単身世帯」の割合が比較的高いこと。通常なら単身世帯の割合が高いのは都心部。地価が高いため狭いアパートやマンションが中心であり、一人暮らしの若者などが多い。若いサラリーマンなどが通勤の負担を軽減するため、狭くて家賃は高いだろうが、こうした都心部のワンルームマンションに入居している。ただ、こういった過疎地域でも意外に単身世帯が多いのかもしれない。配偶者が亡くなってしまった高齢者が1人で暮らしているパターンは少なくない。農村の独居老人。

残ったアがaである。こちらこそ「単身世帯」の割合が極めて高い。「アパートやマンション」がキーワードになっているね。都心部に近く、家賃も高いのだろう。その代わり、周辺の働き場所へのアクセスはいい。


[解き終えて]

都市構造の典型的な問題とはいえ、あまりパターンにはめこまず、その場で文章を読み解きながら考えて欲しい。これ、中学生でもできるかな?特殊な知識は不要なので何とかなりそうな気もする。良問です。



<第6問問2>


[インプレッション]

悩んだ。手がかりが少ない。どうやって考えればいいか、難しい。


[解法]

先にカとキを判定してしまおうか。地価が高い都市部にはマンションやアパートなど集合住宅が多く、地価の安い農村部では戸建てが中心。北部地域が過疎化が進む農村と考え、カが「戸建て住宅」、中央地域が都心部に近く、キが「集合住宅」である。


ここからはAとBの判定。北部では圧倒的にAの割合が高く、中央部ではBの値が大きい。これ、どっちだろうね。それぞれの地域で「空き家」となる状況を想像してみよう。例えば、北部は過疎地域である。そもそも古い一戸建ての住宅が多く、若者が出ていっただけではなく、そこに取り残された老人が亡くなることによって空き家が増えているのかも知れない。築年数が古い伝統的な家屋も中には見られるだろう。住む人がいなくなれば、荒廃していくのも仕方ない。「倒壊の危険性」と「損傷が激しい」を加えれば、住むに耐えない家屋が8割近くある。そういった状況は十分に想像できるよね。Aは「倒壊の危険性が高い」なんじゃないか。

一方の中央地域。こちらは都心に近い市街地であり、集合住宅が中心。家賃の高さや間取りの狭さなどが不満の要因となり、多くの入居者が転居してしまったマンションやアパートが多いんじゃないか。そういった状況は都心部では一般的にみられるものだと思う。築年数も新しく、あるいは古い建物であっても鉄筋のビルならば十分にリノベーションして再利用はできる。Bを「利活用できる」と考えていいんじゃないだろうか。


ここまであくまで推論のみで解いてしまっているため、もしかして間違っているかも知れないけれど、問題文から得られる手がかりがほとんどない問題なので、ある程度は自分の感覚を優先させてしまっていいと思う。これで正解なんじゃないかな。


[解き終えて]

教科書に載っている内容ではなく、君自身の人生観というか、これまでにどんな生活を送ってきて、どんなことを見聞きしたのか、その「引き出し」の多さが解答のポイントになったんじゃないかな。地理は暮らしの中にある科目である。日々の暮らしを大切にしましょう。ガリ勉ばっかじゃダメですよ(笑)



<第6問問3>


[インプレッション]

これも悩んだなぁ。もしかして答えが違っているかも。かなり曖昧な印象がある。それとも僕が決定的な手がかりを見逃しているのか。解きにくい問題だったな。


[解法]

「食品スーパーに行くことが困難」とあるので、食品スーパーに近い3は消える。ただ、ここからが難しいのだ。「坂道」をキーワードにするしかないのだろうか。平坦な1も消える。

残った2と4だが、ここで本当に悩んでしまうのだ。ただし最初の図で2では75歳以上の割合が「中位」、4は「高位」となっている。これを判別材料にするしかないんだろうな。難しい。一応答えは4としてみました。


[解き終えて]

解きようがない問題なんだわな。。。とりあえず説明文と図を素直に対応させて4を答えにしてみました。何となく釈然とはしないが。決定的なヒントが見当たらない。



<第6問問4>


[インプレッション]

これも曖昧なんだよなぁ。この第6問は全体的に曖昧な問題が多いと思う。問題とフィーリングが合わないと、バタバタと連続して失点してしまうんだろうな。ちょっとヤバい。勢いに頼らず、慎重に。


[解法]

「住居系」が北に位置し「工業系」が南に位置する。この2つの地域を結ぶ幹線道路が渋滞するはずで、なるほど、縦方向に「渋滞発生区間」がみられる。

それに対し、鉄道は東西方向に走っており、この図の外側の東側や西側の地域にはそれぞれ大きな都市があるのだろうか。鉄道に沿って市役所を通る道がやはり「渋滞発生区間」になっている。鉄道の東西の都市を結ぶ道路であり、市内を「東西」方向に通過するだけの交通によって渋滞が生じている様子が想像できる。サは「東西」としてみよう。


さらにシだが、ここに「計画」っていう言葉があるね。図をみるとなるほど「計画中の幹線道路」とある。これは市役所や駅のある中心市街地を避け、その周囲を「環状」に取り巻くものである。中心部の渋滞からは解放されている。この環状の道路を起点として、例えば市役所方面から「放射状」の小さな道路をたくさんつくれば、中心市街地方面へのアクセスも良くなる。「放射・環状」でいいんじゃないかな。


[解き終えて]

これ、いい問題ですね。僕は好きですね。図を判断材料として理論的に考える。

ただ、こういった都市構造に関する問題は非常に多くとわれているわけだが、交通ネタとして考えると地理A特有のものだったりする。今回の地理総合/探究の試作問題だが、どちらかというと地理A的な問題が多く、「地理A=総合、地理B=探究」と考えるならば、重心は地理総合に置かれているような気がするね。



<第6問問5>


[インプレッション]

これもいい問題。ただ、やっぱり「地理A=総合」の匂いがしてしまうんだな。パークアンドライドはセンター時代に地理Aを中心に出題されていた。


[解法]

図は後回しにして、選択肢からみていこう。

1は正しいでしょう。とくに否定できそうな箇所はない。

2はどうだろう。「中心市街地」と「郊外」という対立する概念が示され、その方向(ベクトル)が表されている。「中心市街地から郊外へ向かう」のか、「郊外から中心市街地へ向かう」のか。パークアンドライドは市街地への自動車(自家用車)の進入を制限するもの。郊外の人々が自家用車である街を訪れる際、街の外側の駐車場に車を停め、そこからは路面電車など公共交通機関に乗り換え、市街地の中を訪れる。これ、「郊外から中心市街地」が正しいよね。2が誤り(解答)です。

3と4は問題ないでしょう。ただ、4の選択肢は興味深いよね。日本でもこういった「知識集約型産業の誘致」は積極的に行うべきである。この点はヨーロッパの都市を参考にするべきだと思うよ。


[解き終えて]

いい問題ですね。図もよくできているんだけど、やっぱり文章を先に読んで、そこで「誤っていそうな」選択肢を探す技術を身につけて欲しい。こういうのは経験が大切だから、できるだけ多くの過去問を解きましょうね。



<第6問問6>


[インプレッション]

このパターンの問題は過去にもあったような。簡単なんじゃないかな。


[解法]

日本の都道府県は全部知らなくてもいいんだが(もちろん知っておいて欲しいよ、常識として)、キャラクターのはっきりしている県はマスト。「奈良県」は、埼玉県や千葉県、神奈川県と並んで「郊外」型の代表的な県。大都市圏の外縁に近く、都心部への通勤者が多いため、昼夜間人口比が100を切る(つまり昼間の方が人口が少ない)。地価が安いので一戸建ての広い住宅は多いが、都心部(大阪や京都)への通勤を考えると、どうしても通勤時間は長くなるよね。


一方の福岡県は、福岡市を中心とした「地方中枢都市」のキャラクター。いわば九州の首都であり、福岡市及び福岡県へと九州の行政や文化、経済や金融は一極集中する。一人暮らしのサラリーマンや学生は多いだろうから集合住宅(マンションやアパート)の割合は高くなるだろうし、それにより一戸建ての持ち家の割合は下がるだろう。ただ、福岡市を中心とした都市圏は、三大都市圏(東京大都市圏、名古屋大都市圏、京阪神大都市圏)に比べればサイズは小さく、たとえ大都市圏の外縁に近い場所であっても都心部への通勤時間は比較的短くて済む。


Qはタ、チともに「大」となっており、Pはともに「小」。郊外(奈良)は通勤時間が長く、持ち家率も高い。「大・大」のQが該当。一方の地方中枢都市(福岡県)は通勤時間が短く、持ち家率も低い。「小・小」のPが該当。


タとチについては東京都から考える。東京都では過密が進み、地価の高さから持ち家住宅率は低いと考える。一方で、巨大な東京大都市圏に含まれ、例えば東京都の郊外(東京都西部の多摩や八王子方面などは、23区を主とする「都心部」に対し、「郊外」であると考えられる)は都心部からの距離も遠く通勤時間は長いはず。東京都が「小」となるタが持ち家住宅率、「大」となるチが平均通勤時間。


なお、平均通勤時間が東京都より高い県が3つあるが、これは東京大都市圏の郊外に位置する埼玉県、千葉県、神奈川県であろうか。参考までに東京都より持ち家比率が低い県は沖縄県。戦後長い間アメリカ合衆国に占領されていた影響。賃貸の住宅に住む人が多い。


[解き終えて]

オーソドックスな問題ですね。かつてのセンター試験のように。解きやすくて好きな問題です。



<第6問問7>


[インプレッション]

地域調査ジャンルの締めの問題ですね。教科書内容を踏まえた問題と思われ、内容的には捻ったところはないでしょう。


[解法]

それぞれの文を検討。

マについて。日本全体において「大都市」と「それ以外の地域」が比較対象とされている。過密である大都市ではさまざまな不利益が生じている。その解決のためには「地方」へと目を向けることが必要。

ミについて。こちらは「地方都市」の内部における問題。地方都市の中で自動車を利用できない人が多いことについてはどう考えるべきなのか。

ムについて。これは身近な問題だと思うよ。「地理は生活の中にある」科目なので、普段から身の回りに意識を向け、私たちが生活している町で、どんなことが起きているのか、常に考えながら暮らして欲しい。


ではここからはS~Uの検討。こちらから考えた方がわかりやすかったかも。

Sについて。例えば公共施設などを「一定の範囲内」に置くことで、自宅から徒歩でそれらの施設に赴くことができ、利便性が増す。これ、「コンパクトシティ」という考え方だよね。遠方まで出かけることがないので、自動車に頼る必要がない。これはミの対策として有効なんじゃないかな。


Tについて。これは大規模な日本再編計画と言えるだろう。世界各国で首都移転が計画されており、近年ではインドネシアがジャカルタからヌサンタラ、韓国がソウルからセジョンへへと首都機能を移し始めている。日本でも当然そういった動きがあって然るべきなのだが、なぜかそういったプランがないね。本気で東京(東京大都市圏)の過密を解消するのならば「企業の本社や

行政機関の地方都市への移転」を考えないといけない。マの対策。


Uについて。地方への移転という点においてはTの内容を重なり、マにも該当するとは思うのだが、こちらの方がより小規模というか、一人一人の個人の問題とも言える。近年はリノベーションによる「古民家再生」もよく耳にするし、ネット環境が整いオンラインやリモートが一般的になれば、地方移住もしやすい状況となる。また「空き家」とはちょっと異なるかも知れないけれど、地方都市の駅前のシャッター通りにも若者が店を開くなどして活気を取り戻すところもみられる。空き家を活用しての地方都市の再生は有効なことだと思う。ムに該当。


[解き終えて]

サッと解いてしまったんだけど、よく考えるとTとUって内容が類似していて判定が難しいよね。Tの方が大規模で、Uの方が個人の問題だっていう枠組みを意識しないといけない。Sについては「コンパクトシティ」という用語が与えられているので、みんなも理解しやすかったと思うけれど、TやUにはそういったわかりやすい言葉がないので、考えにくかったよね。あえていえばTは「首都(機能)移転」であるし、Uは「古民家再生」なんだろうけれど、こういったことに君たちは関心はあるだろうか。勉強は決して教科書の上だけで行うものではなく、普段から自分が生活している圏内の「社会」に関心を持ち、それについていろいろと考える(時には友人たちと議論する)ことが大切なんじゃないなかって思う。そういった主体的な行動こそ、本当の意味での「学び」だよね。