試作問題・地理総合/地理探究[第3問]解説

<第3問問1>


[インプレッション]

これも問題としてのクオリティ低過ぎない?私大の問題っぽいな。センターや共通テストの問題としては正直どうかと思う。そもそもセンター試験時代からあまり廃サーグラフって出題されないんですよ。僕もあまり大切なものとは思わない。

それよりこういった気候をテーマとした問題は、オリジナルの気候グラフを登場させて、その場でそれを工夫して読み取り、そこから実際の気温や降水量を考えながら分析するといったものが多いし、それがベストアプローチ。このようにハイサーグラフそのものを登場させず、文字だけと問う問題ってどうなんだろう?


[解法]

ハイサーグラフに関する問題だが、肝心なハイサーグラフは図としては登場していない。また、そのハイサーグラフにしても、数字を具体的に読解し、その地域の月ごとの気温や降水量を読み取ることが大切であり(例えばムンバイだったら、6月や7月の降水量が500ミリ以上に達したりする)、「おおおまかな形」などは問題にならない。たしかに教科書では「おおまかな形」を観察することにページが裂かれていたりするが、それは僕はグラフの本質じゃないと思う。やっぱり数字を直接読むことがグラフの本来の目的なんだと僕は思うよ。


さて、問題に目を移そう。

ハイサーグラフは縦軸(Y軸)に月平均気温、横軸(X軸)に月平均降水量(*)を示す。「その形が縦軸にほぼ平行」とうことは、Y軸の値のみ変化し、X軸の数値は変化しないということ。

Xつまり月ごとの降水量が変化しない。年間を通じ偏西風の影響を受け、降水量がほぼ一定である西ヨーロッパの気候が該当するね。1が正解。

3は夏に多雨、冬に少雨。季節風の影響が強く、季節ごとの降水量の差が大きい。4と2は大陸西岸・緯度35度付近に位置し、地中海性気候。夏に亜熱帯高圧帯の影響でほとんど降水がみられない。やはり季節ごとに降水量の差がある。

(*)これ、間違ってますよ。「月降水量」です。「平均」は要りません。気温ならば、例えば7月ならば

7月1日から31日までそれぞれの日の平均気温を出して、それを合計し31で割って「平均」気温を出すわけです。これ、納得でしょ?でも降水量の計算はそうじゃなくて、7月1日から31日までに降った雨を合計して、それでオシマイ。例えば、7月中はほとんど晴れで5日と15日の2日のみ雨が降り、それぞれ20ミリと40ミリだったら「60ミリ」になるのです。これも日数(31日)で割ったりしません。この問題って大丈夫なの?


[雑観]

これ、ダメでしょ。問題として成立していない。「月降水量」を「月平均降水量」なんてミスってるの初めて見た。誰もチェックしていないのかな。全体としてこの試作問題って作りが甘すぎる。本当にこんな感じで再来年から試験をスタートさせるつもりなんだろうか???



<第3問問2>


[インプレッション]

図の読み取りがやや難解なような。逆にいえば、図がしっかり読めれば何の問題もない。


[解法]

ではXから断面を辿ってみよう。まずXの地点はAかな(ちょっと図が読み取りにくいけど)。これは最も高いところにある地形。断面図をみればわかりやすいね。さらにBだが、これはAより一段低い地形。問題文には「海岸段丘」と記されている。段丘については「隆起」地形であることを知っておこう。かつて低地だったところが持ち上がり(隆起し)、高台の地形となっている。図の東端の海との境界をみてみようか。海から狭いエリア(おそらくここは砂浜海岸など砂が堆積した地形だろう)を隔て、すぐにBの地形となっている。海から急な斜面を登り、その奥が平坦な土地になっている。海岸段丘の「段丘面」である。海岸段丘は海岸沿いにみられる階段状の地形。

そして問題はCだね。これは河川沿いの土地で、断面図を見ると、さらに一段低い土地になっている。ただ、Dの河川沿いの土地(これは谷底平野(*)など土砂の堆積地形だと思われる)よりは一段高いね。階段状の地形になっているのがわかる。河川沿いの段丘であり「河岸段丘」が該当。

海岸段丘と同様に隆起による地形であるが、Bよりは標高が低い。この地域全体の土地の様子を考えてみて欲しいのだが、古い時代は全体が低地だった。その時代の土地が残っているのはAの部分。全域が隆起し、土地が削られる(侵食)。これによってAとBの間の急斜面がつくられ、その後、隆起が落ち着くことによって平坦な土地が作られる。これがBの「海岸段丘」の段丘面。

新しい時代になり隆起が復活し、土地が侵食されることでBの下に深い谷が刻まれる。BとCの間の斜面である。再度隆起が収まり、Cの「河岸段丘」の段丘面が形成。そしてまたしても土地が隆起し、深い谷が刻まれるのだが、さらに隆起がストップ。今度は深く谷になった部分に土砂が堆積し、細長い廊下のような平野がみられる。Dにみられる黒い曲線は河川の流れでしょう。なお、Dについては「土砂の堆積」地形と思われる。河川沿いに土砂が堆積し(谷底平野というものですが、別に知らなくていいです)、さらに海岸沿いにも狭い範囲だけどDがみられる。海岸沿いに砂が堆積した砂浜海岸だろう。

以上より、時代別に考え、高所ほど古い地形となる。エがA、ウがB、イがC、アがDですね。図4は気温と海面の関係が示されているが、別に見る必要はないんじゃない?


ところで、この問題で気になったのは「海岸段丘」と一括りにしてしまっている点。海岸段丘は階段状の地形で、急な崖状の斜面(段丘崖)と、ほぼ平坦な土地(段丘面)との組み合わせになっている。Bは断面を見る限り平坦な土地であるので、厳密には「段丘面」だよね。斜面(つまり段丘崖)はその周囲にある。「海岸段丘の段丘面」をここでは「海岸段丘」と言い切ってしまっている。河岸段丘も同様。これも断面を見る限り、平坦な土地をCとしている。「河岸段丘」ではなく「河岸段丘の段丘面」とするべきだよね。この辺り、チェックする人いなかったのかな。問題として成り立っていない。


(*)谷底平野は特別な言葉ではなく、単に「谷底にみられる平野」程度の意味で十分。テストに問われるものでもない。今回も別に話題になっているわけでもないでしょ?河川に沿っているので、細長い廊下のような平野になっているね。


[雑感]

どうなんだろうな。。。上述したように「海岸段丘」や「河岸段丘」という言い方は不適切。「段丘面」と言わないと。また、図4については実質的に全く見る必要がなかった。高所ほど古い地形ってこと。問題として不完全というか、詰めが甘すぎると思う。そもそもBが海岸段丘と言っているのに、解答の選択肢ではCについても「海岸段丘」とするものがある。それならBもCも海岸段丘なの?それって分ける必要なくない?この試作問題って、問題として成り立っていない問題が多すぎるんだけど、これはその一つ。



<第3問問3>


[インプレッション]

問1と問2酷すぎたので、他の問題も同じぐらいあかんのんちゃうか?めちゃ疑心暗鬼やねんけど、どうなんやろう?図が多く用いられ、その点は共通テスト/新課程の雰囲気があるんだが、問題はその中身やねんなぁ。


[解法]

図が多く用いられている。こういった問題こそ、実は文章を読むだけで解答できたりするので、文章から検討していこう。

1について。「放射収支」というのがよくわからない。あ、これは2つ目の図にある言葉なんやね。後で検討しましょう。保留。

2について。これは問題ないんじゃない?地球は空気と水が存在する星である。空気と、水(液体あるいは気体)が低緯度から高緯度へと移動する中で熱を伝える。

3について。熱帯収束帯に関する説明。「活発な対流活動」はその通り。太陽から受け取る熱量が多く、地表付近の空気の温度が上がることで激しい上昇気流を生じる。スコールによる降水。スコールは「対流性降雨」とも言うね。下線部の前の文にも注目しよう。「赤道付近」とある。もちろん熱帯収束帯が影響を与えるのは赤道付近。

4について。「緯度45度付近から運ばれる水蒸気」とある。熱帯収束帯は文字通り「収束」しているのだ。両半球から「風」が収束し、それらが強い上昇気流の原因となるのだが、この際に大量の水(水蒸気)を持ち込むため、この気圧帯の下では降水量が極めて多くなる。

この「風」ってのが大事なんですよね。これは「貿易風」だね。北半球、南半球それぞれの。ともに両半球の亜熱帯高圧帯が吹き出した貿易風が熱帯収束帯へ向かって吹き込み(収束)、この際に水蒸気をもたらしているのだ。ただ、ここでは「緯度」が大事だよね。「緯度45度」は北海道の北端。これ、かなり高緯度なんじゃない?もちろん貿易風の吹くところではない。むしろ偏西風だよね(日本は地表付近は季節風の影響が強いが、上空は偏西風が吹いている。雲が西から東へと動くのは偏西風の影響)。偏西風は亜熱帯高圧帯から高緯度側に吹き出す風で、いわば貿易風の反対語。

亜熱帯高圧帯が形成され、貿易風が吹くのは低緯度地域。「緯度10~20度付近」と改めるべきだろう。4が誤り。


[解き終えて]

図を全く見ることなく、文章だけで解けてしまったけれど、だからといって問題の完成度が低いとは思わない。個人的には極めて優れた問題だと思う。ここで問われているのは「気候のメカニズム」であり、熱帯収束帯の形成と、そこでなぜ降水が多いのか(対流が活発。貿易風によって水が供給される)ということについて理論的・科学的に説明がなされている。理系のみんなならばこの問題文を興味深く読むことができたはずだ。文系のみんなはちんぷんかんぷんだったかもしれないけどね(笑)。これ、本当にいい問題だと思う。



<第3問問4>


[インプレッション]

これは表の読み取り一発の問題。問題文がややこしいので、しっかり読み取らないと。


[解法]

エノキとケヤキについて。エノキは暖かさ指数「80~180」、ケヤキは「60~110」。両者が重なるのは「80~110」。ある地点の1万年前の地層からエノキとケヤキの化石が出てきたそうだ。1万年前にはエノキとケヤキの生育に適した気候環境がみられ、それは暖かさの指数において「80~110」の間だったってことだね。

これを日本列島の図に当てはめてムル。1は55~65、2は85~100、3は120~140、4は140~180。該当するのは2。


[解き終えて]

ちょっと意味がわかりにくい文章だったので、しっかり読み取ることが大切。かなり理科によった内容だったね。