試作問題・地理総合/地理探究[第2問]解説

<第2問問1>


[インプレッション]

大地形の問題は知識を問う問題が多く、基本的な知識を整理しておくことが必要。今回も地震の種類が問われているね。


[解法]

大地形の問題。大地形は地質学と地形学に分けられ、地理では地形学が優先して出題される。地質学は地形の成因について、地形学は「今そこにどんな地形があるか」という観点。

1について。これはどうなんだろう?この図が「1900年以降」って書いてあるよね。それなのに「1900年より前」の地震についてここでは問われている。これはわからないんじゃない?保留にしましょう。

2について。地理では地形学が中心であり、海溝についてもそれがどこにあるのかが問われるポイント。海溝は日本の周辺に多く、プレートの狭まる境界であり、地震が多く発生する。海溝に近い東京こそ、地震の発生頻度は高いよね。誤り。

3について。これも海溝の位置の問題。海溝は太平洋の外周およびインドネシアの南側、カリブ海。★の位置はこれらと一致している。「大地震=海溝」であることは間違いない。ただし、ここで気をつけて欲しいのは「海溝=プレートの狭まる境界」であるということ。プレートの広がる境界は海嶺である。誤り。

4について。地震の種類が問われている。とはいえ、「地震の巣」である日本に住む我々にとって地震の種類が2つあることについてはとくに理解しがたいことではないだろう。

地震には「海溝型」と「内陸直下型」の2種類がある。海溝型はプレート境界で生じる地震であり、とくにプレートの狭まる境界(沈み込み帯)である海溝で発生。規模が大きく、震源が深い。東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)、関東地震(関東大震災)など。

内陸直下型地震はプレートの内側(中央部)。活断層が震源。震源が浅く、人々の居住地に近いため、地震の規模に比して被害が甚大となる傾向がある。兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)など。

「陸域の活断層による地震」は内陸直下型。「せばまるプレート境界で起こる」のは海溝型地震。後者の方が規模が大きく、広域に被害が及ぶ。甘まり。


結局1が正文みたいだね。1900年以前の話なんてこの図からわからないとは思うんだが、どうなんだろう?


[解き終えて]

この問題ってどうなの?図からは1の内容って判定できないんじゃない?内容的にはオーソドックスであり、「海溝・海嶺」や「内陸直下型・海溝型」の違いが出題されている。試作問題ならば、もっとメッセージ性のある問題にするべきだと思うんだが。



<第2問問2>


[インプレッション]

地形図問題だが、細かい地形区分を示した図も付されている。地理Aでよくあったパターン。


[解法]

1について。これは問題ないような気がするな。「河川の水を流れやすくして」というのは、直線化したということ。地形分類図の黒く塗られた部分。正文。

2について。液状化は地盤が水を含んでいる場合に生じる。地震の振動で土中の水の分子が押し出され、表面に噴出する。泥状となり建物の倒壊も生じる。

AとBを比較し、どちらが土中に水分が多いだろう。Bは「台地」であるので、標高が高く「高燥」な地形であることがわかる。Aは「盛り土」はしているけれど、もともとは河川である。かつての河道であり水分は多かったんじゃないかな。「低湿」な地形。Aの方が液状化の危険性は高い。オッケイでしょう。

3について。Cは旧河道。もともと河川であり、そこから水がなくなっただけの状態。極めて低湿な地形だね。正文。

となると4が誤りなのかな。Dは自然堤防であり、土砂が堆積し、わずかに土地が高くなっている。水捌けは良い。一方でEは後背湿地であり、低地となっている。浸水被害は大きい。これが誤りだね。


[解き終えて]

こちらも土地についてのオーソドックスな内容。「液状化」は重要キーワードであり、「自然堤防・後背湿地」の違いも頻出。とくに地理Aでよくみられたバターン。試作問題であるがゆえの「クセ」は全く感じないね。サンプル問題の方がメッセージ性が強かったな。何でこんな普通の問題、出すかな。



<第2問問3>


[インプレッション]

資料(史料)を使う問題ってのが日本史っぽいのかな(とかいいつつ、僕は日本史の問題は全然知りませんが・笑)。文章の内容と地形を対応させるという点では、オーソドックスな問題である。


[解法]

文章からキーワードを探っていこう。「建物や民家」があり、「田畑」が広がる。そして、洪水の際には「水に沈み」低地であることがわかる。集落がみられ、広く「田」の土地利用記号がみられる3が正解。

「海潮」となるので、海の近く=標高が低いこともポイントになるのだが、図中に標高を表す数字はみられないようだ。


[解き終えて]

3以外の図がいずれも斜面や山地が広がる地形であるため、判別は容易だったね。



<第2問問4>


[インプレッション]

ベタな気圧配置図が登場。これは結構珍しいような。地理っていうより地学ですよね。気象に関する内容。理科的な内容も問われるという一つの証明ですね。わかりやすい天気図。

それに対し、写真の方は実にわかりにくい。これはどうやって判定する?サイズも小さく、ちょっと判定しにくいな。。。


[解法]

気圧配置図からみていこうか。冬は「西高東低」の気圧配置。比熱が小さい大陸内部で極端に気温が低下し、大気が収縮。密度が増し、気圧が上昇。シベリアには巨大な高気圧が発生する。ユーラシア大陸東部に「高」とあるイが冬の気圧配置。一方で、比熱が小さい海上では相対的に気温が高く、大気が膨張。気圧が低下し、低気圧が生じている。

「西高東低」は、大陸内部から風が吹き出す気圧配置。大陸内部からの寒冷な風が日本海上空(暖流が流入し、水温が高い。水蒸気の大気への供給がさかん)を通過する際に水分を蓄え、日本列島にぶつかる。日本列島は険しく標高が高い。湿った風が山脈に当たることで高度を増し、風上斜面側に雲(冬であるので雪雲の場合が多い)が降る。イの気圧配置図では、日本列島の日本海側では豪雪に見舞われる。

もう片方のアでは中央に前線がみられる。高緯度側の寒気団と低緯度側の暖気団との間に前線が形成されている。日本でこのような前線が顕著にみられるのは「梅雨」のシーズンだよね。降水量は決して多くないものの、薄曇りの天候となる。梅雨前線は寒帯前線の一種。初夏に日本列島上空に居座るオホーツク海気団(湿潤である寒気団)に向かって、南から小笠原気団(湿潤である暖気団)が重なることによって前線が形成。この時、南方海上から大量の湿った空気が吹き込むことで、集中豪雨が生じることもある。


ここまでは明瞭なのだが、写真判定が難しいのだ。一つ一つ見ていこう。まずJなんだが、僕は一瞬これが「水屋」に見えてしまったのだ。濃尾平野の下流域の「輪中」地帯にみられる。極めて低湿な土地であり、台風の被害が大きい。河川氾濫や高潮による洪水。各家庭には水屋とよばれる建物がみられ、浸水の際には倉庫代わりとなる。写真のように、石垣などが組まれ、一段高いところに家屋がつくられている。

ただ、今回のアとイはいずれも「台風」の気圧配置ではないのだ。あえていえばアの梅雨の時期に豪雨がみられるのだが、それならば最初から台風を図の中に描いておくはず。輪中地帯が甚大は被害を受けた災害に「伊勢湾台風」がある。極端な気圧低下と海から吹き込む強い風によって高潮(海面上昇)が生じ、全域が深く浸水した。こうした水屋の写真を用いるならば、必ず台風と対応させるはず。これが「梅雨」じゃおかしいのだ。

だから、これって水屋じゃないんだよね。浸水対策ですらない。ではなぜこのように高いところに建物が作られている?これ、もしかして豪雪対策なのか?雪で深く埋もれてしまっても、建物はその上にあるため、雪の被害を受けない。この建物、よく見ると窓の形も変わっていて、やや高い域に、しかもあまり大きなものではない。窓には外枠も設置されているように見えるのだが違うだろうか。深い雪に耐えられるような形になっているんじゃないかな。窓が大きすぎたり、補強されていないと、雪の圧力で割れてしまうこともあるだろう。これ、雪国にみられる家屋かと思えば、それはそれで納得できる。これをイとしてみようか。


二つ目のK。これ、何だろう?写真が小さいのでわかりにくいのだが(パソコンのモニターで見ているのですが、めっちゃ拡大しています。本番の試験では小さいサイズのまま見ないといけないので、かなり辛いよね)、火山シェルターのように見えるんだよなぁ。背後には植物のない、荒地が広がっている。火山の山頂付近の風景だとすれば納得なのだ。火山シェルターは阿蘇山などに設置されているもので、火山噴火の際の噴出物の降下による被害を避けるもの。日本の火山の中には阿蘇山のように、観光客が比較的火口に近いところまでやってくるパターンが多かったりする。その時にいきなり爆発が始まったらかなり危ないよね。爆発によって噴出される岩石などを、このシェルターの中に隠れて避けるのだ。これは気象とは全く関係なく、今回の解答の候補から外れる。


よって、アは残ったLが正解だと思うのだ。これ、何なんだろう?山地にトンネルのようなものが見えるのだが?その周りにはコンクリートの壁が作られている。地形からみて、土砂崩れ対策なのだろうか。土砂崩れの際には、岩石や土砂で道路が埋もれてしまうことがあるよね。あらかじめこのようなトンネルを作っておけば、そうした道路の通行止めは防がれる。土砂崩れの原因の一つが豪雨である。上述のように梅雨の際に前線へと南から湿った風が入り込み、集中豪雨を生じる場合がある。山間部では土砂崩れの危険性が高まる。アはLの梅雨・豪雨対策なんじゃないか。


図に比べ写真の判定が難しい。ただ、Kが絶対に違う(これは間違いなく火山シェルターだよね。僕にはそうとしか見えないのだが)ので、何とか答えは出せるのだが、難しいな。


[解き終えて]

う~ん、これもどうなんだろう?問題としての質は高くないように思うんだよね。気圧配置図がそのまま出題されているのがまず意外。たしかに見やすいからこれでいいんだけど、これまでは衛生写真による日本列島における雲の様子が示されることが多かった。地理の問題としては写真の方がいいんじゃないかな。気圧配置図では地学に寄り過ぎている。

さらにこの写真もわかりにくいな。3つ登場させている時点で難易度は上がっているのだから、写真そのものは簡単にするべき。選択肢が一つ減るだけでもかなりマシとは思う。