2022年地理B本試験【第1問】解説

<第1問問1>

[ファーストインプレッション]

噂で、今年の最初の問題は難しいぞって聞いてたんですが、簡単じゃないですか(笑)

[解法]

海溝の問題ですね。海溝はプレート境界に形成される溝状の低地。海洋プレートが大陸プレートの下に潜り込む一帯に形成される。深度6000mより深い(6000mより浅いものはトラフ。名前が違うだけで同じもの)。

東南アジアで海溝がみられるのは2か所。フィリピン諸島の東岸に沿う一帯(フィリピン海溝)とインドネシアのスマトラ島とジャワ島の南岸に沿う一帯(スンダ海溝)。この部分が浅く描かれているbは誤りで、まずaが正しい。

ラテンアメリカで海溝がみられるのも2か所。一つはメキシコ以南の北アメリカ大陸、南アメリカ大陸の太平洋岸。中央アメリカ海溝、ペルー海溝、チリ海溝。太平洋側のプレートが北米や南米の大陸プレートの下に沈む込むことで形成されている。メキシコの太平洋岸が浅く描かれているイは誤りで、正しいのはアの方。

なお、もう一つはカリブ海の島々の北岸で、プエルトリコ海溝が大西洋唯一の海溝となっている。ただ、本図ではプエルトリコの北岸は両図とも深く示されており、問題を解く鍵とはなっていない。プエルトリコ島は、キューバ島の東に位置するエスパニョーラ島(ハイチなど)のさらに西。なおキューバ島の南東側にはジャマイカ。

[ちょっとコメント]

海溝が出題されているのはセンター試験の時代から一貫していますね。

<第1問問2>

[ファーストインプレッション]

エスチュアリーは形で分かるんじゃない?「切り込み」が入っている形。

問題は流量の方だなぁ。とくにBがどんな川か知らないと、ちょっと解けなかったかも。

[解法]

この問題、実はBの川がとても大事なんだと思う。イタリア北部を流域に含むこの川、ポー川っていう名前なんですよね。地理の授業的には「沖積平野」を形成する河川としてよく知られている。沖積平野というのは河川の堆積作用によって形成された地形で、扇状地・氾濫原・三角州のこと(沖積平野三兄弟です)。扇状地を除けば全体に低平な地形であり、水もちのいい(水はけが悪いとも言いますが)地形となっている。日本には沖積平野は多く、河川沿いにはこの水もちのいい地形を利用して水田が開かれているのだが、実はこのポー川流域もヨーロッパ随一の稲作地帯だったりするのだ。イタリア料理には米を使ったものって結構あるでしょ?

沖積平野が形成される条件の一つとして、上流部の傾斜が急であることが挙げられる。日本の地形の特徴こそまさに「急傾斜」であるので、河川が上流部で削る土砂の量が大きい。それらが下流側へと運搬され、傾斜がなだらかになったところに堆積することで平野ができる(沖積平野)。このポー川も同じで、この図だとちょっとわかりにくいけれど、支流はアルプス山脈から流れ出しており、急斜面を削る。土砂は下流側へと流れ出し、川沿いに堆積。沖積平野が形成されるというわけなのだ。

イタリアと日本は地形的に共通項が多い国だと思うよ。もちろんイタリア南部の半島部には火山が多く、まさに日本と同じなのだが、火山のない北部のアルプス山脈周辺の地形も、実に日本と似ている。河道の標高の高いカが、イタリア(そして日本)の河川の特徴であると思っていいんじゃないかな。

なお、年平均流量が多い点もおかしくはないと思うよ。「イタリア=地中海性気候」と思っている人もいるかもしれないが、それは一面的な事実にすぎない。イタリアは南北の違いが大きい国で、先にも言ったように、火山のない北部と火山の多い南部という違いはある(ただ、北部も新期造山帯の険しい地形があり、地震も多いところは南部と同じだけどね)。気候についても、イタリア北部はやや緯度が高いので(北緯45度ぐらい)、地中海性気候が現れる緯度帯からは外れている。地中海性気候の条件は「緯度35度・大陸西岸」だったね。イタリア半島はこの条件をジャストで満たし、典型的な地中海性気候(夏に雨が少ないどころか、年間を通じても少雨。ブドウが多く栽培される)がみられるのに対し、北部は普通に夏も雨が降るし、冬には雪に見舞われる(アルプスだからね)。北部の代表的な都市であるトリノは16年ほど前の、ミラノでは4年後の、冬季五輪の開催地。ちなみに長野は史上最も低緯度で行われた冬季オリンピックなのです。そうした事情を考えてみると、この流量の多さにはアルプスからの雪解け水も含まれているのかも知れない。納得ですね。

そしてxとyの判定だけど、これも沖積平野をヒントにしたらいけるんじゃない?上流部が急流であり、多くの土砂を削り(侵食)、それらが流され(運搬)、下流側に積み重なる(堆積)。その際に河口までたどり着いた目の細かい土砂(これを「粘土」あるいは「泥」といいます)が、河口付近の浅い海底に堆積し、新たな土地をつくる。これが「三角州」。沖積平野三兄弟の三男坊。Bをyと判定しよう。Bのポー川が流れるイタリア北部は、日本の地形と同じ特徴を持つ。

A川については消去法でいいでしょう。ヨーロッパは北部でなだらか、南部で急なので、北部を流れるA川も勾配が緩やかで、上流部であっても標高の高い地形は含まれない。流量はやや少なめだけど、そもそも西ヨーロッパというところは降水量の多い地域でもない。偏西風の影響で年間を通じて一定の降水があるけれど、かといって梅雨や台風がくるわけでもないしね。

A川の河口は「エスチュアリー」という地形。これ、日本に見られない地形なので注意してね。上からみたら河口付近が「切り込み」が入ったような形になっていて、このラッパ状の入り江がエスチュアリー。昔は海面が低く、現在河口となっている部分もそれなりに標高(海抜)が高かったため、谷が侵食されていた。それが地球の気候の変動で海水が増え(氷河の氷が溶け)、海水面が持ち上がった際に、その谷へと海水が侵入することで、このような「切り込み」の地形ができたんですよね。

深い入江であるので波が静か、かつての谷であるので水深が深い。天然の良港になるのです。おっと、これだけではリアス海岸やフィヨルドと同じじゃないかって?実は決定的な違いがあるんですよ。リアスやフィヨルドは周辺は山地地形の急傾斜。平野は少なく耕地には恵まれない。農業が発達しないことで周辺の人口は少ないし、そして大都市も発展しない。それに対し、エスチュアリーは周辺が平野であるので(つまり川の部分だけ大きく凹んでいるというイメージ)農地が広がり人口が増え、大都市も立地する。「大都市プラス天然の良港」という組み合わせはエスチュアリーにしか見られないのだ。

[ちょっとひとこと]

これ、ちょっと難しかった気がするな。イタリア北部の自然環境てイメージしにくいよね。

<第1問問3>

[ファーストインプレッション]

出たな、外来河川。乾燥地域を流れる外来河川は「地形の王様」。これに関する出題、めちゃ多いですよ。

[解法]

圧倒的に大事なのはEの川。これ、何ていう川か分かるかな。インドの西の国を流れている。パキスタンだね。砂漠国を流域に含むこの河川は外来河川の代表例であり、古代文明発祥の地としても有名。そう、「インダス川」なのだ。

湿潤地域に水源を発し、乾燥地域を流れる河川を外来河川んと言うのだが、これは必ずチェックしておいてね。本問に関するもので言えば、Fの黄河もこれに該当。とりあえず古代文明と対応させて覚えておくと楽なんじゃないかな。中国文明は黄河に、インダス文明(パキスタン)はインダス川、メソポタミア文明(イラク)はチグリス・ユーフラテス川、エジプト文明はナイル川、いずれも外来河川沿いの乾燥地域に生まれた。

乾燥地域の植生は2つ。砂漠と草原(ステップ)。砂漠は砂をイメージしないように。「砂漠=植生なし」の状態と考えよう。極度な乾燥(降水量<蒸発量)により、樹木どころか草も成育できないのです。

表2の4つの植生のうち、乾燥気候にみられるものはもちろん「裸地(砂や岩)」、それから「低木・草地」になるね。この割合が高い3と4が、上記の2つの外来河川。

残った二つは湿潤地域を流れる河川であり、流域の自然環境も豊か。ただ、気温が違うんじゃないかな。Gの方が高緯度側であり、流域は主に温帯であるはず。Hは低緯度側であり、こちらは熱帯。

熱帯林は主に「常緑広葉樹林」から成り、1がHとなる。温帯林には落葉広葉樹も多く、Gが2に該当。樹木は、高温多雨の地域で常緑広葉樹林、寒冷地域で針葉樹林となり、その中間(日本のような温帯が主)で落葉広葉樹林が多くなるのは理解できるよね。

[ちょっと一言]

外来河川、マストですよ。

<第1問問4>

[ファーストインプレッション]

等温線だけでみるとわかりにくいんだよね。これ「+」と「-」が示されているからこそ解ける問題。図がややこしく感じるけれど、こういった問題の方が「考える手がかり」が多いから、時間はかかるかも知れないけれど、確実に得点できるよ。

[解法]

まず気温と降水量に分けてみよう。原則として気温を示す等値線は緯線に平行する。太陽からの受熱量によって決定し、低緯度で高い値(高温)、高緯度で低い値(低温)。だから選択肢2が最も気温っぽいわけ。赤道に近い北部でマックスの値になって、そこから高緯度側に向かうにつれ、段々に気温が低下していく。なるほど、Qが気温になって、Pが降水量だ!

と思ったのだけど、それだとかなりおかしくなってしまうのだ。Pが降水量ならば、選択肢1はどうなんだろう。沿岸部と内陸部で値が違っているので、いかにも降水量って感じなのだが、よく見ると「+」と「-」がおかしいんじゃない???内陸部の、海から離れた地域に「+」がある。いくらなんでもここで小水量が多いわけはないでしょ。むしろ降水量ゼロのはずだよ。これ、絶対的な間違い。つまり、Pが気温でQが降水量ってわけだ。

となると、内陸部で気温が高くなる1は「夏」ということ。オーストラリアは南半球なので、これが「1月」だね。等値線も一応、緯線に平行する箇所が多い。(+)が描かれている閉曲線を仮に「32℃」とするならば(等値線は2℃ごとに引かれているそうなので)、北部の(-)と描かれている部分は「28℃」となり、なるほど夏ならこの気温は納得。日本も大体こんな感じ。一方で、最南端の(-)は「14℃」になる。夏の気温でこれはかなり低いけれど、緯度が高いことを考えればこんなものかも知れない(シベリアだと大陸性気候になるから、夏は20℃ぐらい上がるんですよね。ちょっと比較できない)。

選択肢3が冬の気温。こちらは高緯度側の大陸内部でとくに低いところがある。ちょっとしたシベリア状態なのか(でも南半球には大陸性気候=冷帯気候はないので、凍りつく気温ではないけどね)。右下の(-)を「2℃」とすると、南東部の島で「6℃」となり、(+)が描かれている北端で「18℃」。熱帯期湖の定義が「最寒月平均気温18℃以上」であり、オーストラリア北部が熱帯気候(サバナ気候)であることを考えるとこんな感じかな(ちょっと誤差はあるけど)。これが7月の気温でした。

選択肢2は1月の降水量。熱帯収束帯(赤道低圧帯)が赤道付近から南下してきており、オーストラリア北部ではスコールによる激しい雨がみられる。一方で、通常時(変な言い方ですけど、要するに春とか秋ってことね)はオーストラリアのほぼ中央に横たわっている亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)だが、これも同じくやや南下している。最も降水量が少ない一帯(-が描かれているエリアね)は大陸の中央よりやや南側にズレたところをカバーしている。

選択肢4は7月の降水量。今度は北半球の受熱量が大きい時期であり、熱帯収束帯は北半球側(タイやベトナム方面)に移動している。亜熱帯高圧帯も北上し、選択肢2に比べて(-)のエリアが北にズレているのがわかるかな。

なお、せっかくなので地中海性気候の場所を確認しておこう。地中海性気候の合言葉(?)は「緯度35度・大陸西岸」。オーストラリアの場合は、大陸の南西端がそれに該当するね。4の図で南西端に(+)があるのがわかるかな。7月すなわち冬に雨が多くなっているわけだ。亜熱帯高圧帯の影響から離れ、低気圧や前線による降雨がある。

同じ場所を選択肢2で確認してみてね。今度は(-)のエリアでしょ。本来なら気温が上がれば、上昇気流の作用が活発となり、大気中の水蒸気量も多い(飽和水蒸気量が多くなるね)から多雨となるはずなのだが、この緯度帯は亜熱帯高圧帯が低緯度側から張り出してくるため下降気流が卓越し、雲ができない。「乾いた夏」が訪れるわけだ。ブドウ栽培が行われているね。

[ちょっと一言]

焦った。安易に緯線と平行だからって気温と決めつけてはいけないね。複数の図を検証し、多面的に考えるのが共通テストの真髄なのだ。

<第1問問5>

[ファーストインプレッション]

おっと火山の問題。定番すぎますね。それにしても問1の海溝、問3の外来河川、そして本問の火山など、地形に関する問題って同じネタばっかり出てる気がしません?そう、それは貴方の気のせいではないんです。本当に同じ問題ばっかり出てるんです。大丈夫かよ、受験業界?笑

[解法]

大地形の問題ですが、とくに火山が重要だね。変動帯、新期造山帯も含め、言葉の定義をしておこう。

・変動帯・・・地球上の陸地において地震が発生しやすい地域。主にプレート境界である。プレートの狭まる境界のみでなく、広がる境界やずれる境界も含む。

・新期造山帯・・・現在、地殻変動が活発な地域のうち、プレートの狭まる境界に沿う一帯。沈み込み帯である海溝付近の地形(日本列島など)、衝突帯付近の褶曲山脈(ヒマラヤ山脈)。

・火山がみられる地域・・・新期造山帯のうちの沈み込み帯(環太平洋造山帯のほとんどの地域、インドネシア、イタリア)、アイスランド島(プレートの広がる境界)、アフリカ東部(プレートの広がる境界)、ハワイ(ホットスポット)。

どうかな、結構複雑な印象?でも大地形は覚えてしまえばそれでおしまいだから、この機会にしっかりマスターしようよ。例えば、アフリカ東部の大地溝帯はみんな知っていると思う。アフリカ大地溝帯だね。これは「変動帯」であり「火山がみられる地域」だけど「新期造山帯」ではない。新期造山帯はプレートの狭まる境界だけだから。

だから、変動帯についてはこのような公式(?)で表すこともできる。「変動帯=新期造山帯+プレートの広がる境界+プレートのずれる境界+ハワイ」

さらにいえば、新期造山帯の全てに火山があるわけでもないのもわかるよね。大陸プレートがぶつかったような巨大な褶曲山脈には火山は少なく、とくにヒマラヤ山脈はチベット高原には火山はない。大陸プレートは分厚いので、地球内部からマントルが上がってこないのだ。アフリカ大陸においては、このような「新期造山帯である褶曲山脈」は北西部のアトラス山脈が該当。図5における「北部」に位置している。

さて、ここまでのことを頭に入れたら問題を解いてみよう。タ~ツが北部、西部、東部のいずれかになる。もちろん最も重要なのは「火山噴火」。アフリカで火山があるのは、新期造山帯のアトラス山脈ではない。プレートの広がる境界(変動帯ですね。もっとも、アトラス山脈も変動帯ですが。変動帯は意味が広いのです)であるアフリカ東部。キリマンジャロ山は富士山と同じ成層火山で、複数回の噴火によって火山灰と溶岩が積み重なって(バームクーヘンみたいに。美味しそうでしょ・笑)次第に標高を上げていった。他にもケニア山も有名であるし、エチオピア高原にも多くの火山。「火山噴火」が生じているチが東部アフリカになる。

そして次は北部。ここには新期造山帯のアトラス山脈がある。アフリカプレートが大きくねじ曲がった褶曲山脈であり、火山はないが、もちろん地震は発生する。変動帯。タとツのうち、地震の発生がみられるタが北部。正解は2。

なお、チの熱帯低気圧も気になるでしょ?これ、もちろんインド洋のサイクロンだね。意外とこれ、マダガルカル島のサイクロン被害が大きい。低緯度の高温の海域で発生し(ただし、赤道直下では発生しない。赤道直下は転向力(地球の自転によって生じる力)が作用しないので、低気圧が発生しても渦を巻かず、成長がみられない)低緯度から中緯度の沿岸部を襲う。太平洋北西部が台風、インド洋やオーストラリアがサイクロン、北米がハリケーンだね。

一方で、北部や西部では熱帯低気圧の発生はみられない。こちらは沿岸を寒流が流れており、水温が低いので、熱帯低気圧が生まれないのだ(でも、ツの西部では熱帯低気圧が「1」あるよね。こういった例外もあるってことなのかな)。

[ちょっとコメント]

火山です、火山。火山がめっちゃ大事。

<第1問問6>

[ファーストインプレッション]

これ、難しかったなぁ(涙)。ガチで間違えたよ。面目ない。みんなの方があっさりとできたんじゃない?

[解法]

日本の災害の問題なのだが、季節がポイントになっている。「雪崩」がわかりやすいと思う。そもそも雪がなければ雪崩は起きないし、雪の多い日本海側地域や北海道を中心に見ていけばいいだろう。とくに雪崩は積もった雪が融解し始める春先にこそ危険のピークがある。雪崩を示す▲マークがいくつもみられるムが春先の「3~5月」なんじゃないかな。

残った二つ。「土砂災害」は間違いなく豪雨によるものだよね。日本列島で豪雨といえば、台風が考えられるわわけだが、例えば梅雨前線に湿った空気が吹き込むことで集中豪雨となることもある。土砂災害の発生件数が極めて多いマが、梅雨から台風のシーズンである「6~8月」とみていいだろう。正解は5。

ミは「9~11月」。この時期にやってくる台風もあるけれど、それはやはり数が少ないと思う。北海道に雪崩のマークがあるが、これは何だろう?まださすがに11月では積雪も早いとは思うんだが。すでに積もっていた雪が、何らかの理由dで崩れたのだろうか。

[ちょっとひとこと]

実はこんなにシンプルな問題だったんですよね。どうして間違えたんだろう。。。僕は答えを6にしてしまいました。台風シーズンを「9月」にしてしまったんですよね。でも梅雨の時の豪雨も考えれば、やっぱり土砂災害が極めて多くなるのは6月から8月ですよね。反省です。