2023年共通テスト地理A[本試験]解説

<第1問>


[1]

4;アは大圏コースであり、最短距離。イメージは悪いけど(笑)ミサイルを飛ばす方向と考えてみたらいいよ。距離は短いね。


[2]

写真を撮った地点と方向はB。2つの山が見え、右の方が標高が高い(地形図より。左の火山は「1537」、右は「1584」)。これらの山は火山である。山頂付近が崖を伴った凹地となっており、火口である。


[3]

まず「年較差」から。季節による昼と夜の時間の差が大きい高緯度地域、および比熱の小さい内陸部(温まりやすく、冷めやすい)で「高」が目立つ1が該当。

さらに「日最大風速~」。周囲を山で囲まれた長野県や岐阜県、および中国山地と四国山地に囲まれた瀬戸内地方で値が小さい2が該当。

「日照時間」については、雪に雪雲も覆われる期間の長い日本海側の地域で全体的に「低」となる4が該当。

残った3が「真夏日」。全体として北で低く、南で高くなっているが、とくに注目して欲しいのは関東地方の内陸部。群馬県のあたりだろうか。緯度は高いが「高」となっている。内陸部で夏の気温が上昇しやすい。なお。同じ内陸部でも長野県や岐阜県や標高が高いため、気温そのものは低い(年較差は大きいけどね)。


[4]

1;干拓地は図の中央部やや東寄りの一帯。北に「3日以上」がとくに多く、浸水が長いのがわかる。誤り。

2;「盛土地・埋立地」は沿岸部。こちらは「12時間未満および浸水なし」がほとんど。誤り。

4;図の東端の台地では、ほぼ全域が「12時間未満および浸水なし」。誤り。

これより3が正文となる。たしかに「後背湿地」では黒い「3日以上」の範囲が広いようだ。


[5]

キの「標高の低い方へ」がわかりやすい。等高線から判定して、あきらかに標高の低い方向への経路はLである。Lがキに該当。

さらにクも明瞭。「比高が最も大きく」、「標高が高い」ところへと向かう経路。10mの等高線を越えるJが該当。

残ったカがKとなる。「崖崩れ」というのがちょっとよくわからないのだが。。。K地点の東側に伸びる濃く彩られた部分が斜面(崖)にでもなっているのだろうか。


[6]

4;竜巻はさすがに風力発電には利用できないね。風力発電に利用しやすい風は、一定方向から同じ力で吹き続けるもの。西ヨーロッパの大西洋沿岸など。竜巻や、台風に伴う突風は風力発電には適さない。


<第2問>


[7]

Aについてはアフリカで圧倒的な値を占めており、これが工業用とは考えにくいだろう。Aが農業用。農業用水を多く必要する農業形態は水田耕作。集約的稲作農業地域である東アジアで農業用としての利用が多いと考え、アが東アジア。イは北アメリカとなるが、農業用と工業用が同じぐらい。


[8]

左の写真はわかりにくいのだが、これはイモだろうか。右はわかりやすいね。ヤシ科の樹木がみられ、熱帯と思われるし、右端に写っている人も服を着ていない(つまり暑い)ように見える。床を持ち上げる建物の作り方も、地面から熱や湿気を伝えないための熱帯地域特有のもの。

低緯度地帯であり高温だが、季節による太陽からの受熱量に差がなく、気温年較差はほとんどない。樹木が生育し、農業も盛んなようなので、降水量も十分だろう。Eが該当。


[9][10]

カとキの両方に当てはまるものは2じゃないかな。カは周囲を山で囲まれた土地で、水路橋が架けられている。キはロープウェイはそもそも急斜面を伴う地形につくられるもの。

他の選択肢を検討するが、1と3は明らかに間違いだろう。いずれも大雨はともかく強風の際には極めて危険な交通手段となるし、とくにロープウェーはさほど多くの人数を運べるものとも思えない。

これより、おそらくキのみに当てはまるものは2だろう。写真キの背後には大都市が広がっており、交通渋滞もひどいのでは。ロープウェーによる人員輸送が混雑を緩和する役割もあるのでは。カについては農村地域を通っており、交通渋滞とは関係ないと思うんだよなぁ。


[11]

サ~スの判定。最もわかりやすいのはスかな。大きくアラビア語が書かれている。カタールでしょう。よく見ると、サにもアラビア語が示されている。マレーシアは国教がイスラームであるなど、ムスリムが多い国。たとえばイスラームの経典コーランはアラビア語で記載されているなど、マレーシアとアラビア語圏との関わりは深いと言えそうだ。サがマレーシア。残ったシがメキシコだろう。スペイン語圏であり、おそらくここでもスペイン語による説明が書かれていると思われる。


J~Lの判定。上述したように、マレーシアとアラブ圏とは関係が深いはず。一方で遠隔のメキシコとの関係は薄いかな。JとKの組み合わせがマレーシアとカタールであり、この2つと航空便のないLがメキシコ。

JとKについては東京からの便数で考える。日本にとってより結びつきの強い国はマレーシアだろう。多くの日系工場も進出し、経済的なつながりも強い。Jをマレーシアとする。


[12]

日本はサーモンをチリから輸入している。チリの値が大きいXが「輸出」、日本の値が大きいYが「輸入」。

興味深いのはヨーロッパ。輸出も輸入も多い。隣接する国が近距離でサーモンを貿易しているのだろう。距離が近ければ鮮魚の状態で輸送可能であり、ヨーロッパで値が高いタが「鮮魚」。一方で、遠距離のチリから日本への輸送は主に「冷凍」。


[13]

マでは「天然資源」とある。これはQで割合が高い「石油製品」のことではないか。

ムには「低賃金」の労働力と「安価な製品」の生産というキーワード。これはRの「繊維・衣類」だろう。

残ったミがP。「付加価値が高く」は自動車など「輸送用機械」だろうか。


<第3問>


[14]

わかりやすいのはイかな。サボテンが生えていて砂漠っていうのがわかるね。Bが該当。AやCは高緯度で気温が低く蒸発量が少ないので、乾燥気候にはならない。

アとウの違いは土地の起伏。図1から判断できるように、険しい山脈に近く、土地も起伏が大きいと思われるAがアに該当。一方の平坦な土地であsるCがウとなる。


[15]

ブドウは比較的乾燥によく耐える作物。夏に乾燥する地中海性気候の地域で主に栽培される果実である。地中海性気候は「大陸西岸・緯度35度」であり、アメリカ合衆国南西部のカリフォルニア州でみられる気候パターン。1がブドウ。

2はメープルシロップかな。カナダの五大湖沿岸にはメープルが植えられ、ヨーロッパからの入植者の栄養源となった。3はトウモロコシ。五大湖の南側のコーンベルト。最も値が大きいのがアイオワ州。コーンベルトの西部に位置し、トウモロコシと大豆、豚の飼育頭数は全米有数(ということは世界有数)。4は綿花。南東部の「南部」のプランテーションで栽培されていたが、綿花は乾燥地域での灌漑農業と相性が良く、近年はテキサス州での栽培がとくに多くなっているね。

アメリカ合衆国の州をとくに知る必要はないが、カリフォルニア州とテキサス州、そしてアイオワ州を知っておくといいよ。「アイオワ=コーンベルト=トウモロコシ・大豆・豚」。


[16]

先住民はそもそも人数が少なく(人口の数%程度)、その多くが西部の乾燥地域に設けられた居留地に住んでいる。ヨーロッパ人による侵略の際に、彼らが住み慣れた東部の森林地域から追われ、西部の居留地に封じ込め荒れた。先住民の半数が住むカが「西部」。

アフリカ系は「南部」のプランテーション地域。綿花栽培のためにアフリカから連れてこられて、奴隷労働に従事。奴隷解放後は一部は北部の工業都市へと移動した者もいたが、まだ多くの人々は南部に住んでいる(なおテキサス州はヒスパニックが多く、アフリカ系は少ない)。キが「南部」。


[17]

2;牛を神聖視し食肉用としないのはヒンドゥー教。写真はキリスト教の教会だね。


[18]

ICT産業については「情報処理・通信技術者」と考えるのが妥当だろうね。この割合が高いチがシリコンヴァレー。アメリカ合衆国は医療について国民皆保険の制度がないなど、社会保障費の負担が話題になることはない(その代わり、直接的に医療費を払うことになるので、家計に占める医療費の負担は大きい)。ここは家賃を考えればいいんじゃないかな。狭い地域に多くの人々が流入し、家賃が高騰している。「住居費」が正解。


[19]

女性が増え、さらに先住民やマイノリティも増加しているNが最近のもの。多くの民族が共生し、お互いの文化を尊重する社会が「多文化主義」。

民族主義=ナショナリズムはちょっと違うよね。こちらは、たとえば「日本は日本人のものだ!外国人は出ていけ!」みたいな思考。でも、この考え方自体、グローバル化する世界の中で時代遅れっていうのが分かるよね。


<第4問>


[20]

1;Aの国々は海に面して入るけれど、大陸に位置している国ばかりで、海面上昇の影響を受けやすいとは言えないだろう。海面上昇により国土が水没する危機にあるのは、太平洋やインド洋の島嶼国であり(この図では、それらの国は小さすぎてちょっと見にくいよね)、さんご礁の島々。あるいはバングラデシュに注目してもいい。ガンジス川水系のデルタに位置する国であり、標高が極めて低い沿岸部にも多くの人々が居住。海面上昇によって土地を失う人々も多いだろう。バングラデシュはインドの東に隣接する国であるが、Aには含まれていない。


というように考え、1を正解(誤り)にしてしまったのですが、答えは2でした。。。すいません、間違えました。


答えは2みたいですね。僕は2も一理あるかなと思って正文にしてしまったのですよ。Bの国々はいずれも原油産出国であり、そういった国では天然ガスも産することが多い。例えば現在の日本では火力発電はほとんどが天然ガスを燃料としており、かつての石炭の利用は減っている。天然ガスは石炭に比べて燃焼効率が良く(*)エネルギー当たりの二酸化炭素排出量が少なく、地球温暖化への影響は相対的に低い。このため「石炭の利用が今後制限される。一方で天然ガスの価値は上がるんじゃないか」と考え、Bの国々は温暖化対策に貢献しているんじゃないかって思ってしまったんですよね。でも原油や天然ガスにしても化石燃料であることには変わらず、もちろん燃焼によって二酸化炭素を排出するのですから、「地球温暖化を防ぐ」ことはできませんよね。これが誤文だったのですね。

(*)要するに燃えやすいということ。短時間の燃焼で十分なエネルギーが得られるため、排出する二酸化炭素量は少ない。クリーンエネルギーと呼ばれる所以。


というわけで、よくわからない問題だなぁ。すいません、考えが至らず。


[21]

これは超難問だった!かなり考えたけれど、もしかして間違っているかも。。。


こういう問題は問題文の中にヒントがある。問題文を参照すると「先進国と発展途上国との経済格差」とある。アメリカ合衆国と日本という「先進国」、中国とマレーシアという「発展途上国」との対比を基礎として考えていかないといけないね。


図を見ると、日本から多くのプラスチックごみがイやウに輸出されているのがわかる。また図の説明を読むと、中国や東南アジアが輸入先となっていることが説明されている。プラスチックごみは「先進国から発展途上国へと」輸出されているのものなのだ。


このため、日本からプラスチックゴミの主な輸出先となっていないアが先進国の「アメリカ合衆国」だろう。残ったイとウが中国かマレーシア。


ただ、ここからが難しい。どちらが中国で、どちらがマレーシアだろうか。カギになるのは図中に添えられた説明文。「中国が2017年に輸入を厳しく制限した」である。2017年以前は、先進国から中国への輸出が極めて多かったのだが、それが問題となり、それ以降は急激に輸出量が減少した(中国からみれば輸入)。


FとGについて、Fを2010年、Gを2018年とするならば、アメリカ合衆国や日本からの輸入が大きく減ったイが中国となる。反対にFを2018年、Gを2010年とするならば、同じく値が減ったウの方が中国となる。さて、これ、どっちが正しいと思う?


どうしても気になるのはアメリカ合衆国や日本からの輸出量なのだ。ひとまず日本にのみ注目してみよう。Gでは「19」、「16」、「262」であり、この3カ国への輸出量は300程度になる。それに対し、Fでは「769」と「7」で800近い。なるほど、経済成長によってプラスチックの消費量が増大し、それに伴いプラスチックごみの排出も多くなるので、輸出が2倍以上増えているのだ、という解釈はできる。でも、それって本当に正しい?日本はそもそも先進国であり、今さら急激にプラスチックの消費量が増えるとは思えない。それに、2つの図の間の期間はわずか8年間。図中の数字(輸出量・輸入量)の変化は、国内のプラスチック消費量の増減ではなく、説明にあるよう「中国が2017年に輸入を厳しく制限した。その受け皿になった東南アジア」という点にあるのだと思う。


また、図ではマレーシアしか示されていないが、東南アジアには数多くの発展途上国がある。そちら向けの輸出こそ増えているんじゃないか。とくにインドネシアのような大国は多くのプラスチックごみを引き受けているんじゃないだろうか。


というわけで、Fを2010年としてみる。日本から中国に向けて大量(769)のプラスチックごみが輸出されている。しかし、規制がかかったことにより、その値は急減(19)。主な輸出先は東南アジアへと移り、その一つにマレーシアがある。ただし、マレーシアへの輸出はさほど多くなく(262)、これは他の東南アジア諸国が主な輸出先になっているのでないか。図からは判定できないが、インドネシアやフィリピンなど。こう考えてみると、矛盾がない。


アメリカ合衆国を中心に考えてみる。アメリカ合衆国からはかつて中国へと日本を超える量のプラスチックごみが輸出されていた(942)。しかし規制後は「17」にまで減少している。アメリカ合衆国こそ、近隣に発展途上国は多い。メキシコやカリブ海諸国、南米など。2010年にはアメリカ合衆国から輸出されているプラスチックごみは図の2カ国相手だけでも「942+15」で950を超える。現在もおそらくその水準でプラスチックごみが輸出されているのだろう。中国規制後の2018年には2カ国向けの輸出は「17+61」で100に満たないが、現在でも1000近くのプラスチックごみが輸出されているとすれば、900ほどが中国とマレーシア以外の世界中の国々に輸出されているのだろう。こちらの考え方も矛盾はないと思う。


マレーシアを軸として考えると、2010年の段階ではアメリカ合衆国や日本から一部のプラスチックごみを受け入れていたものの、67もの量を中国へと輸出していた。しかし、中国で規制が始まると2018年には中国向けの輸出は無くなる。逆にアメリカ合衆国や日本からの輸入量が増加している。先進国にとって、マレーシアを含む東南アジア地域が新しいプラスチックごみの輸出先となったのだ。まさに「受け皿」である。だからこそ、2018年以降は「規制が進みつつある」のだろう。ただし、その規制の様子はまだこの表からはわからない。


[22]

シンプルに図を読解する問題。

Jは正しい、dでは「流出した日からの時間経過」が「8」である時、「有害物質の濃度」も「4」程度で、ピークに達している。

Kは誤り。それぞれピークとなっている日時を比較すればいい。このタイミングでそれぞれの地点を大量の湯害物質が通過しているのだ。aは3日目の午後がピーク。bでは5日の未明だろうか。その間は「1日半」ほど。cのピークは6日の正午ごろ、dのピークは8日の午前中。「2日」ほどかかっている。cーd間の方が、aーb間よりやや経過時間が長いようだが、勾配が緩やかになったのだろうか。しかし、「4倍」の差はないね。

Lは正しい。ピーク時の値は、aが25、bが20、cは10、dは4。流出地点から離れるほど値が小さくなる。


[23]

Pはブラジル。サトウキビから抽出したアルコール燃料がガソリンの代替エネルギーとして使用されている。

Qはインドネシア。油ヤシの世界的な生産国。油ヤシは高温多雨の自然環境に適応。

Rはアメリカ合衆国。トウモロコシの生産は世界1位。コーンベルトにおける栽培。


[24]

図2の判定。人口密度が低く、自家用車利用の割合が高いのは「郊外」であり、つまり周辺都市。Yが周辺都市となる。中心都市つまり「都心部」は人口密度が高く、自家用車利用の割合が低い。こちらはX。


図3からそれぞれの経路の二酸化炭素排出量を計算。「一人を1キロメートル輸送する際に排出される二酸化炭素」は自家用車では「150」、鉄道では「20」。

自家用車だけを利用するならば、「40×150」で「600」。自家用車を4キロ、鉄道で30キロならば「4×140+30×20」で「120」。その差は5倍。


[25]

誤り(解答)は2なんじゃないかな。ライン川は国際河川であり、沿岸国の船舶の自由航行が認められている。水上交通が活発であり、内陸水蔭の要衝。貿易や工業など経済的価値が高い。そのような河川の水が「飲用水」として用いられているだろうか。仮に用いられていたとしても、「浄水施設」は普通の河川水(もちろんこの状態では飲めないよね)について、飲むことのできるレベルにまで清潔にするもの。「有害物質によって汚染された河川水」を普通の状態の河川水に戻すものではない。っっていうか、一回でも有害物質が混ざった水を、いくら浄水したからといって、飲みたくはないよね。有害物質と取り除くことと、飲用水として浄水することは、全く次元の違う話なのだ。