2023年共通テスト地理B追試験[第3問]解説

2023年地理B追試験[第3問]解説

<第3問問1>

[インプレッション]

かなりインパクトのある人口ピラミッドだよね。普通の人口ピラミッドは左が男性、右が女性でおおまかに左右対称になっているわけだけど、この4枚の人口ピラミッドはあまりに歪(いびつ)でグロテスクな印象すらある。左が1970年、右が2010年。日本なんかどれほど極端に変化したのだろうか。一気に高齢化が深刻化した様子が目で見えて恐ろしい。

[解法]

人口ピラミッドと出生・死亡の関係を考える問題。こういった問題は「過去」を見てはいけない。現在に注目し、そこの数字を厳密に読み取るのだ。それぞれ2010年のグラフに注目しよう。

さらに人口ピラミッドの原則として「底辺」に注目しよう。底辺は「0~5歳」の人口割合だよね。いわゆる乳幼児であり、その数は出生数に比例する。つまり人口ピラミッドの底辺をみれば、その国の出生率が想像できるわけだ。2010年のア~ウについて底辺を比べれば「ア>ウ>イ>日本」の順。資料1のA~Cの2010年の出生率の高い順に並べると「A>B>C>日本」。そのまま対応させ、アがA、イがC、ウがB。正解は2となる。

[雑感]

ん?これだけの問題なの?何か仕掛けとかある?なんか変だな。。。(答えを確認)ん、やっぱり2でいいやん。簡単すぎない?簡単すぎて逆に不安になる問題だな(苦笑)

<第3問問2>

[インプレッション]

国境を超える人口移動。国の社会増加の問題だね。国の人口増減を考える場合、「人口増加=自然増加+社会増加」なんだけれど、自然増加をメインで考えるのがセオリー。つまり出生と死亡。移民や出稼ぎなどの社会増加については自然増加に比べれば、相対的に少ない数字に落ち着いている。とはいえ本問はその社会増加に関する問題。流入や流出について「経済レベル」を中心に考えないといけない。つまり「1人当たりGNI」というわけだね。

[解法]

こういった問題はまず現在を見るのが基本。社会増加がプラスになっているのが1と2、マイナスになっているのが3と4。1人当たりGNIの低い国から高い国に向かって人口は流動する。主に若年層が高賃金の仕事を求めて移動するのだ。1人当たりGNIの高い先進国は「流入超過」。社会増加率はプラスとなり、1と2は日本かフランス。1人当たりGNIの低い発展途上高は「流出超過」。社会増加率マイナスとなり、3と4はベトナムかメキシコ。この時点で選択肢は1と2に絞られる。

さて、ここから。日本とフランス、さて現在どちらの国が外国からの移民を多く受け入れているだろうか。これはいうまでもないと思うよ。日本は鎖国かってぐらい徹底的に外国からの移民を受け入れていないよね。もちろん留学や研修生などは訪日しているけれど、労働力としての移民はほとんど受け入れていない。一部、日系人に限り単純労働への就労が認められた(日系人の多いブラジルから自動車工業都市などへと人口の流入がみられた)が、国籍として日本に変更したって例は少ないんじゃないかな。本問が国籍を問題にしているのかどうかわからないけれど、日本がフランスより移民を多く迎え入れていることはないだろう。

そのフランスだが、海外に植民地を多く有した歴史があり、とくに北アフリカのアラブ圏や西アフリカのギニア湾岸地域には現在もフランスと経済的・文化的関係が深い国々が多い。それらの国から移民は恒常的に多くなっている。また、もちろんEU加盟国であることも外国からの移民が多い一つの理由になっている。ポルトガルなど南欧、ポーランドなど東欧からの流入が多いだろう。さらにダメ押しを言うならば、難民の受け入れがあるよね。近年、シリアなど西アジアからの難民が多くヨーロッパへと移動している。もちろんそれらの難民を無尽蔵に受け入れているということはないだろうが、実質的に南院の受け入れが「ゼロ」えある日本に比べれば遥かに多い数である。社会増加率が高い、すなわち移民や難民の受け入れに積極的なフランスが1となり、欧米に比べ外国人の移入が制限される傾向にある日本が2となる。

3と4は判定不要。おそらく4がベトナム。1970年代にオーストラリアが白豪主義政策を撤廃し、アジアからの移民を受け入れた際に、当時戦争によって荒廃し政治的に不安定だったベトナムから多くの難民を受け入れている。ベトナムでは流出人口が多かったはず。

[雑感]

興味深いグラフなのだが、結局見るところはたった一つ。現在の数字のみ。日本は先進国であり「受け入れ」側であるのだが、その数はあまりに小さい。移民や難民の受け入れについては、それを「当たり前」のもにしないといけないと、僕は思うけどね。

<第3問問3>

[インプレッション]

いきなりかつてのセンター試験でよくみられた文章正誤問題のパターン。共通テストでも生き残っていたんやね。誤文判定なので、しっかり一つだけ誤りを指摘すればいい。

[解法]

合計特殊出生率に関する問題のようだけど、これについて考える必要は全く無いね。下線部だけをしっかり読み解けばいい。

ここでちょっと気になるのは選択肢3。まず「比較の構造」が文中に含まれていることに注目。シンガポールと日本を比べているわけだ。その中で平均寿命の話が登場している。でもどうだろうね。日本は世界で最も高齢化が進んだ国と言ってもいいよね。高齢化が進むということは、健康で長生きするおじいちゃん、おばあちゃんが増えたということ。これ自体はいいことだよね。日本は世界有数の長寿国家なのだ。比較的早い段階から平均寿命が延び始めたと思っていいんじゃない?もちろん社会の成熟度が早かったヨーロッパの方が平均寿命が延びる時期も早かったのかもしれないけれど、今や日本がそれを追い越してしまった。高齢者の国になってしまったとも言える。

東南アジアの若い国であるシンガポールで、たとえば高齢化は進んでいるだろうか。若い移民を多く受け入れ、国民全体の平均年齢も若いはずである。近代化が進み、経済発展するなかで平均寿命は延びたとは思うが、そのタイミングは日本より遅いんでじゃないかな。3が誤り。

[雑感]

「解説」ではそれっぽく説明してみたけれど、なんやかんやこの問題は「カン」で解いてます(笑)。やっぱり「何となく」でしか解けないよね、この問題。他の選択肢が誤っている箇所はないようで、それに対しこの選択肢3には明確な「比較の構造」が含まれている。たしかに4にも比較の構造(ノルウェーと日本を比べる」があるけれど、福祉国家が並ぶ北欧より日本の方が先に少子化対策に取り組んでいるとは思えない。っていうか、日本は実質的に少子化対策、取り組んでいないよね。本気でやるなら、政府が莫大な予算を投じないと、子どもの数は増えない。

<第3問問4>

[インプレッション]

すいません、、、この問題、間違えました(涙)。さらに言えば、答えをみても全く意味がわからない。申し訳ない、手も足も出ません。

[解法]

僕自身間違えたので、先に答えを言っちゃいますが、これ、1が正解なんだって。つまりサが日本、シがアメリカ合衆国、スがデンマーク。

例えばフランスを中心に考えるよね。ヨーロッパにおいては社会保障負担率と租税負担率がいずれも大きいと解釈できる。そうなると、同じヨーロッパの国として共通項が多いんじゃないかって予想されるデンマークをサとしてしまうんだよな。たしかに租税負担率は26、1%とあまり高く無いけれど、社会保障負担率がシ(8.4)やス(1.2)では低すぎるんやなぁ。悩ましい。

ここはもしかして租税負担率でデンマークを特定するのか。確かに北欧は税金が高いと聞いたことがあるよな。「租税負担率=租税収入金額÷国民所得」なんだそうな。例えばこれを人口で割ってみて、「1人当たりの租税負担率=1人当たりの租税収入金額÷1人当たりの国民所得」となり、結局1人当たりがどれぐらいの税金を払っているか(どれぐらいの税率で、給料から税金が取られているのか)ってことだよね。61.9%って3分の2に近い!いくら何でもこの税率は高すぎるでしょ?とは思うのだが、北欧諸国は各種サービスが無料だったり、年金が手厚かったり、高い税金を払ってもリターンが大きい。国民はそれに納得するわけだ。聞いた話によると、北欧の人ってほとんど貯金をしないみたいだね。年をとって働けなくなっても全て国がケアしてくれるから貯金の必要がないのだ。日本人がやたら貯金に熱心で、その結果、莫大なお金が市場に出ず。「死に金」となって経済を悪化させるのとは大きな違い。国が税金の形で国民からお金を預かり、それを有効に使っていくというのは経済活性化の面から考えても、とてもいいことなんじゃないか。

ただ、そうなるとデンマークの「社会保障負担率」がわずか1.2%ということで、これがわからない。っていうか、そもそも社会保障負担率という指標自体がよくわからないんだよね。「医療保険や年金保険などの社会保障負担額を国民所得で除した値」ってどういうことなんだろう?もしかして僕が考えているものとは全く逆なんだろうか。これも全て人口で割ってみると(つまり1人あたりにしてみると)「1人当たりの社会保障負担額÷1人当たり国民所得」となる。1人当たり国民所得は1人当たりGNIだから、要するに給料ってことだよね。年間の給料から、社会保障費をどれだけ出しているかってことなのかな。そう考えると、基本的に国が負担してくれているから、自分の「お財布」からはほとんど何も出さなくていいってことなのかな。それが1.2という数字に表れてる。ん???そういうことなのか???

いや、ホントにこの問題、わからないんですよ。過去に類似の問題も出たことがないし。手がかりやヒントもない。あえていえば「同じヨーロッパだからフランスとデンマークは同じような数字だろう」っていうのがヒントのはずなんだが、それも裏切られているんですよね。すいません、本当にわかりません。

[雑感]

というわけで本当に何もわからない問題なんですよ。指標の定義が抽象的すぎて、具体的にどういうことなのかが理解できない。得点調整用の悪問だとして諦めるしかないかな。

<第3問問5>

[インプレッション]

今度は先ほどの問4とは違い、過去問で問われた内容を応用できる。過去問で「単独世帯」という言葉が出てきていて、重要なキーワードとなっている。単独世帯って何だろう?これがわかれば解ける問題。

[解法]

日本の階級区分図。都道府県ごとに色分けされている。階級区分図は相対値(割合・率)を示すものであるが、今回登場している3つの指標がいずれも相対値であることをまず確認しておこう。

まず最もわかりやすいものが「平日の平均通勤・通学時間」だろう。通学に関しては多くの子どもたちが公立の小中学校に通っているわけだが、学区があるため、そうした小中学生に関しては通学時間は短いと思う。ただし、通勤時間はどうだろう?郊外の住宅地(ニュータウン)に住むお父さん・お母さんが電車を乗り継いで都心部の企業に通勤する様子を想像する。「通勤圏=都市圏」である。東京大都市圏ならば通勤圏の規模も大きく、数十キロ先からバスや電車を乗り換えて、1~2時間かけて通勤するということもあるだろう。大都市圏を有する東京を中心とした地域でこそ、圧倒的に通勤時間が長いんじゃないか?とくに注目してほしいのは、東京大都市圏における郊外の県である埼玉県、千葉県、神奈川県。いずれも人口が多く「栄えて」いる県ではあるが、実は昼夜間人口比率は100を切る(つまり、昼間の人口の方が夜間より少ない)。東京都へと多くの人々が通勤しているので、昼間の人口が少なくなっているのだ。県境を越え、それぞれの県から東京都へと通勤しているのだ。通勤時間が短いわけがないよね。これら3つの県、そして京阪神大都市圏での郊外の県である奈良県の値が「高」となっているタが「平均通勤・通学時間」。なお、東京都も「高」となっているが、これは東京都が東西に長いことを考えよう。オフィスが集まる東京特別区部は東京都の東側。西側の多摩地区や八王子地区から通勤する人々も多く、彼らの通勤時間は長い。

さらに「単独世帯」。これ、めちゃめちゃ重要なキーワードだよ。2009年地理B追試験[25]で登場しているので、過去問が手に入る人は確認しておこう。単独世帯とは要するに「一人暮らし」のことであり、例えばワンルームマンションなんかを考えてほしい。大都市圏においては「郊外」が一戸建てとなり、家族単位の居住が多いのに対し、「都心部」では地価が高いこともあり狭いマンションやアパートが主流であり、その多くはワンルームなど1人世帯用。ただ、交通アクセスがいいので若い間はそうした都心部のマンションに住む方が便利だよね。だから、先ほどの東京大都市圏に当てはめると、郊外の埼玉県・千葉県・穴川県はファミリータイプの家やマンションが多いのに対し、都心部である東京都(とくに特別区部)では1人暮らし用の部屋が多い。東京大都市圏において東京都のみ「高」となっている。ツが「単独世帯」。大阪府が高いのも同じ理由だろう。京都府は大学が多いからかな。福岡県も「九州の首都」なのでやはり1人暮らしが多いだろうし、あるいは大学の多さ、単身赴任の多さも理由かもしれない。北海道や高知県が高いのは何故だろう?これがよくわからないんだよね。過疎化の村において連れ合いが亡くなってしまって、高齢者が一人で住んでいるような世帯が多いっていうパターンなのかな。ちょっとわからない。

よって答えは6。残ったチが「共働き」。これがよくわからない。女性の社会進出を考えれば東京大都市圏でこそ高い値になりそうなものだけれど。ただ、東京大都市圏は高所得者が多いので、意外に専業主婦が多いのだろうか。逆に地方の方が家計を支えるため、パートに出かける女性も多いのかも知れない。そもそもキャリア志向の女性は未婚のことも多いし。結婚した後でも女性が社会で活躍できるのが理想なんだが、まだまだ日本はそうなっていないってことなのかな。

[雑感]

まぁ、でもやっぱり指標に詳しい説目は欲しいよね。「単独世帯」じゃなんのことやらわからない。問4の社会保障費もそうだったけれど、地理用語ではないから教科書にも載っていないわけで、しかしこれらの言葉の解釈が問題の成否を分ける。地理は統計学であり、さまざまな統計が登場する。それらの統計が具体的に何を示しているのか。そういったことをキチンと定義してこそ、我々は思考することができるし、問題に取り組むこともできる。

<第3問問6>

[インプレッション]

地理で待機児童の問題が出るとは思わなかったな。でもこういった問題こそ、地理で真正面から取り上げるべき事例でもあると思う。

図はちょっと読み取りにくい印象。ただ、こういった問題こそ逆に文章を読むだけで解けてしまったりする。文章メインで行きましょう。

[解法]

誤文指摘問題。文章(下線部)の中からちょっと怪しい言葉を拾い上げてみよう。

まず1から。これは文章そのものが正しい気がする。そりゃそうだよね。どこにも間違っている部分はない。

さらに2。これは「2倍」っていう数字が気になる。「地理は数字の学問」なので数字にはこだわってください。後でチェックしよう。

そして3。これも図からチェックしないといけない。ただ「ペースが加速している」っていう言い方が曖昧で、ここを否定しにくいんだよね。選択肢2の「2倍」という言い方との違いを意識してください。

最後に4。ここにも「2倍」ってある。なるほど、おそらく誤りは2と4に絞られたよ。

で、僕が怪しいと思うのは4の方。「定員の多い保育所」って要するにその地域に子どもが多いってことだ。「実数」として子どもが多いところ。それに対し「2倍以上に増加」っていうのは「割合」であり相対数。実数として多いかわからない。むしろ元々の人数が少なかったから2倍という高い値になっているだけで、実数としては小さいんじゃないかな。1が2に増えた、みたいな。いずれにしても、実数と増加率の間に直接的な因果関係はなく、そこを強調しているこの選択肢は怪しい。

図を参照しよう。下の図からみるとわかりやすい。南東部に「2倍以上」の地域がいくつかある。上の図に目を移すと、この箇所には保育所そのものが存在しない。おそらくここって人口が少ない地域で、ちょっとだけ子どもが増えたから「2倍」になっているだけだと思うよ。市街地からは離れた地域。

逆に上の図で確認。南西部に大きな円がある。白いので2000年以前だね。でもこの地域って下の図で確認すると、せいぜい「1~2倍増加」であって、2倍以上ではない。古い時代に大きな保育所があるところは昔からの住宅地なんだろうか。子どもの数はもともと多いと思われ、これ以上は増えにくい。どうかな?4を誤りにしていいと思うよ。

[雑感]

いい問題ですね。僕は気に入りました。これ、何も知らない人に見せて「実は地理の入試問題なんです」って種明かしをしたらかなりビックリするんじゃない?一般的な地理のイメージとは異なっているよね。地図を開いて地名や都市名を覚えるみたいな。でも、こういった問題こそが地理の正統的な問題なんだなって僕は思うわけで。地理は統計学の側面があるわけですよ。このように統計を用いて、そこからいろいろな考察をする。増加率だけ見てしまうと、その地域に保育所をつくるべきと考えてしまうんだけど、いやいや、実数としてはどうなんだ?って感じ。実際の人数を調べて、それに対応して保育所を設けるべき。もちろん選択肢1にあるような交通インフラとの関係も考えるべきであるし、選択肢2のように全体としての増加の稽古も考えるべき。とてもいい問題だと思いますし、僕と同じようにこの問題をいい問題だなと思った君はとても地理のセンスがあると思う。