2022年地理A本試験解説

たつじんオリジナル解説【2022年地理A本試験】

<第1問>

[問1]地形図問題。

1について。等高線間隔を確認。国道の西側には等高線が密になっているところがあるね。急斜面。それに対し東側は全体的に間隔が疎。なだらか。

2について。果樹園の土地利用記号はないね。

3について。「水が得にくい」は定かではないが、集落や水田(田の土地利用記号)があるのは間違いない。これが正文でしょう。

4について。国道や鉄道との交わっているところを見る。河川の方が下を通っているね。

この地形は扇状地だが、扇状地という言葉は出ていないし、図をしっかり見るだけで得点ができるのは、センター・共通テストの傾向。とくに高度差(立体視)や土地利用記号が出題されやすい。

[問1]フェーン現象は乾いた空気が高所から低所に吹き下ろす場合に、温度が過度に上がること。まずアは「山地を下る」である。さらに周囲に山地地形があることがフェーン現象の発生する条件。Aが該当する。Aに向かって南西方向から風が吹いた場合、山地から低地に向かって風が吹き下ろすことになる。(完成)

[問3]これ、ややこしそうやね。クイズだと思ってリラックスして解いてみよう。

まず現在の役所の支所の場所を確認。地域の北西部に位置し、周辺人口は比較的多い。現在の距離別人口割合を見た場合、ほとんどの人口が3キロ以内に居住しているが、10%ほどは3キロ以上離れたところに住んでいるようだ。なるほど、地図をみると南東部(キの部分)に人口の飛び地があり、ここにもそれなりの人口が住んでいる。彼らは現在の役所の支所を訪れる際に長距離となり、不便である。

これに対し、カに2つ目の支所をつくってみようか。そもそも現在の支所とさほど変わらない位置にあり、どれほどの意味があるんだろう。ただ、この辺りは人口密集地区であり、現在の支所で扱いきれない業務をこちらで補佐するという目的はあるんだろう。

カのところに支所を作ったとしても、南東部の人々からみれば、遠距離であるのは変わらない。やはり「3キロ以上」の人は取り残されるだろう。支所が現在のものとカとに2つに増えた場合の距離別人口はbだろう。

ではキにつくられたらどうだろう?人口密集地区からは遠いが、この南東部に住む人々は近所に支所ができるので、便利になるね。「3キロ以上」の人はいなくなるはず。こちらはaに該当。

文章を解析しよう。この時点で、カは人口規模に対応した支所、キは居住地に対応した支所であることがわかっているね。Dでは「移動負担」とある。これはキでしょう。南東部の遠隔地域に住む人が現在の支所やカに行くのはさすがに遠すぎる。移動負担が軽減されるのはキの方。

一方でEには「住民を増やす」とある。カの方が周辺に多くの人々が住み、カができることで利便性の増す人口は多くなる。カがDになるね。(完成)

[問4]サは火砕流の熱風は達するのでJに該当。シは火砕流が流れ込むのでKに該当。スは溶岩流や火砕流がほぼ流れ込まないのでLに該当。(完成)

[問5]これはおもしろいですね。今回一番好きな問題かも。

もともとの地形を想像してみよう。「造成前」の点線だね。山地の傾斜地であることがわかる。ここを、あるところは削って、あるところは盛り土をして、住宅地として整備したわけだ。

点線より実線が上にあるところを探してみよう。造成前の土地より造成後の土地の方が高いのだから、盛り土がなされたことがわかる。1と3が該当し、4もそのように見ていいんじゃないかな。新しく盛られた土砂だから、しっかりとした岩盤ではない。地盤が十分に固められておらず、崩れやすくなっているのかもしれない。

それに対し、2はもともとの斜面を削って平坦化された土地。古い岩盤の上に直接住宅が乗っていて、こちらは強固な地盤だろう。地震の際の揺れも小さいはず。2が正解。

ただ、ちょっと気になるのは「周辺の盛り土からの崖崩れ」だね。2より高い3や4の地盤は盛土になっており、新しい土砂による軟弱な土地であることが想像できる。これ、地震の際に崩れ落ちる可能性はあるんじゃない?振動自体は小さいけれど、土砂によって建物が埋まってしまう可能性はある。

[問6]これは、なんとなくだけど3が誤りなんだと思う。堤防沿いに竹が植えられている。洪水の時にこれを乗り越えて水が周辺地域に溢れ出したとする。その水を「排出」とあるが、例えば水が再度河川に戻ろうとしても、そこに竹が植えられているわけだから、それが障害物になってスムーズに水が戻らないことが考えられるよね。「早く」は排出されにくいんじゃないかな。ちょっと意味がわからない文章になっている。3が誤りなんでしょう。

<第2問>

[問1]1は誤り。米国は生産が多いが、1人当たり年間消費量は少ない。そもそも生食より飼料用が多いのではないか。

2も誤り。単位面積当たりの収量が多いかはわからないが、アジアの農業は基本的には「自給的」であり、輸出向けではない。中国やインドは人口が多く、消費量が多いため、おそらく国内自給で目一杯なのでは?

おそらく3が正解なんじゃないかな。ポーランドなど東ヨーロッパの北部では混合農業が営まれ、ジャガイモとライ麦の輪作、豚の飼育がみられる。ジャガイモが全て飼料用というわけではないだろうし、ジャガイモを使った料理もあるんじゃないかな。

4はよくわからない。ただ、ジャガイモは南米のアンデス地域が原産(インカ帝国で栽培が広まった)ことから、ジャガイモをヨーロッパに持ち込んだのはこの地域を植民地としていたスペインやポルトガルなんじゃないかな。

[問2]これ、難しかったですね。判定ができなかった。

まず家畜をチェック。水牛、ラクダ、トナカイ。ア~ウのどれが該当するだろう。

アには「乾燥」とある。これはラクダだろうね。イは「寒さに強く」とあるのでこれはトナカイ。ウは「農耕」に利用され、さらに「乳」も得られる。これはインドにおける牛の仲間の特徴であり、水牛。インドはそもそも家畜の肉は食さない国であるが、一部では食べられたりするのだろう。「肉」も間違いではない。

グラフ参照。水牛はインドで飼育されている。熱帯の湿潤気候に適応し、降水量がとくに多いAが該当。気温年較差が小さいのも納得だね。これは低緯度であるから。低緯度のインドでは年間を通じて太陽からの受熱量が変化しない。

さぁ、ここからが難しい。ラクダは砂漠地域、トナカイは寒冷地域、どっちがどっちなんだろう?Bの気温年較差の大きさが気になるわけだ。40℃っていうのはかなり大きいよ。たしかに内陸部にあって、温度を保持する水分が無い砂漠も寒暖の差は大きくなると思う。でも40℃っていえば、最暖月(夏だね)の平均気温が35℃、最寒月(冬ね)平均気温がマイナス5℃になるということ。ラクダが住むような西アジアや北アフリカの乾燥地域で冬の気温がマイナスにまで下がるだろうか。緯度20~30度でそもそも日射量が大きく(だから強く乾燥し、砂漠となるのだ)、そこまで寒冷になるとは思えない。どうだろうか、とくに降水量が少ないことからCを砂漠と判定し、これをラクダのアとする。

残ったBはイのトナカイ。シベリア内陸部は極端に寒暖の差が大きく、気温年較差は40℃に及ぶ。冬がマイナス20、夏が20っていう感じ。また降水量は冬はほぼゼロだが(低温で大気が収縮。高気圧となる)、夏はある程度の降水がある。海洋から湿った風が入ってくるのだ。年降水量は少なめではあるが、500ミリ程度ならあるんじゃないかな。5が正解。

ただ、、、この問題はやはり疑問が残るんですよね。というのも、「ラクダ=中央アジアの砂漠」、「トナカイ=北極海沿岸のツンドラ」とすると、BとCが逆転する。中央アジアは高緯度内陸部で砂漠が広がるわけだが(海からの距離が遠く水分が達しない。これを「隔海度が高い」というね)気温年較差は軽く40℃はいくだろう。そうなると、Bがラクダになるんやなぁ。。。それにトナカイはツンドラ地域でも遊牧されている家畜。ツンドラは基本的には非居住地域(アネクメーネ)であり、夏の気温(最暖月平均気温)は10℃に達しない。農耕は不可能。しかし、0℃以上には上がる期間があるので、そういった短い夏の間は地表面にコケが繁茂し、家畜の遊牧も行われる。こういった地域ならば気温年較差が20℃ぐらいになるはずなんだが。夏が5℃、冬がマイナス15℃といった感じで。沿岸に接しているので、シベリア内陸部ほど冬の気温が下がらない。

本当に判定が難しいね。降水量が決め手になるんだろうが、たしかに中央アジアは年間を通じて降水が少ないので(同じ内陸部でもシベリアは夏には雨が降る)、年降水量が500ミリってのはちょっと考えにくいかな。またツンドラ地域も、低温であるため気圧の高い北極に接し(極高気圧)、降水量が少ないことは間違いないのだが、それにしても「ほとんどゼロ」は言い過ぎなんじゃないか。ツンドラ地域は湿潤地域(例えばツンドラ土は強酸性の土壌。これは湿潤地域の特徴)であり、海空の湿った風による降水はある程度みられるのではないか。だから、やっぱり答えはBがトナカイ、Cがラクダなのか。

でも地球のどこかを探してみたら、Bのようになる砂漠、Cのようなツンドラはあるような気がするんだよなぁ。わからん問題やわ。

[問3]カは「夏の暑さ」、キは「強風」、クは「風力の利用」。なるほど、まずキはEだね。米国の中央平原からグレートプレーンズにかけての小麦地帯ではしばしばトルネードの被害がみられる。ロッキー山脈から吹き下ろす北西風と、メキシコ湾から吹き込む南東風がぶつかり、巨大な竜巻が発生する。

さらに「暑い」ことからカを低緯度のGとし、残ったクがFとなる。ヨーロッパで卓越する風は偏西風であり、風力発電が行われる。

[問4]これは2が正解でしょう。アラビア半島は安定陸塊であり、地震は発生しないね。(完成)

[問5]えっ、これは妙な問題だなぁ。センター・共通テストっぽくない。これはスペインのバルセロナにある聖家族教会(サグラダファミリア教会)だね。スペインはラテン系でカトリックなので3が正解。

[問6]

中国系の移民がポイントかな。1970年代の白豪政策の撤廃後、オーストラリアはアジア地域からも広く移民を迎え入れた。その主な出身地として中国がある。中国からの移民が増え、国内には二世、三世もいる。中国人や中国系の人たちは主に商業を営む。各地にチャイナタウンが作られ、富裕層を成す人々も多い。彼らの多くは都市居住者である。中国系をはじめアジアからの移民系の割合が上昇しているaが現在の値。bは昔。移民系の人たちは自宅では出身国の言語を使うこともあるだろうし(とくに移民一世は英語が不自由な人もいるだろう)、英語以外の割合が高いYがシドニー。っていうか、英語以外の割合が40%ってかなり高いね。シドニーでは半分ぐらいの家庭で外国語で会話されているということ。

<第3問>

[問1]ラサは低緯度の高原に位置する。全体の気温が低く、そして気温年較差が小さいアがラサ。

さらに台北。低緯度で気温が高い(もちろん高原ではなく、標高は低いよね)。エが該当。

イとウは年較差に注目。大陸性気候であり気温年較差が大きいシーアンがイ、沿岸部のプサンで気温年較差が小さくウとなる。

[問2]クの「辛い漬物」は朝鮮半島のキムチだね。Bに該当。キは「イスラームの影響」から、日本は該当せず中国内陸部のA。ここはよくわからないんだが、イスラーム圏内なのかな。イスラームが信仰されているのは北西端のウイグルが典型的な地域。シルクロードを伝わってイスラームが広がったので、Aの付近もその影響があるということだろうか。

[問3]どうなのかな。1人当たりのコメを食べる量は、日本では減っているんじゃないかな。もちろん食生活の多様化もあるし、全体的な高齢化でそもそもの食事量も減っている。シはFもEも両方ともアップしている。サは白黒の位置がシとは逆転し、Fについては微増、Eは大きく減少している。Eをコメ、サを日本とすると辻褄が合うんじゃないかな。

ただ、2013年の値を見ると、日本における米の値が55キロ程度、小麦が50キロ。ほとんど変わらないんだね。

[問4]野菜が最大のポイントだね。日本の最大の野菜輸入先は中国。鮮度が重要であるため、本来の農産物の輸入先である米国からの輸入量は少なく、近距離の中国が主となる。日本への太い矢印が「中国からの野菜輸入」。

[問5]

これはおもしろいな。韓流やKPOPがあるってことでしょ?マイナス280が韓国の文化・娯楽サービスでしょ。

そうなると圧倒的な大きな値の5284が中国に対する知的財産使用料ってことだね。知的財産使用料は、先進国が受け取り側(つまり知的財産を相手国に提供し、その代金を取るってこと)、発展途上国が支払い側となるのだが、これはまさに日本と中国の関係でしょう。日本で研究開発をし、それを利用して中国では工業製品の生産が行われる。

これだけ見ると、日本ってテクノロジーが優れた素晴らしい国だって思ってしまうけど、本当にそういう考え方でいいんだろうか。せっかくの高い技術や研究開発能力を持っていても、それを製品に加工し、収益化するという点においては中国から大きく遅れを取っているとも言える。研究者は頑張っているけれど、それに対する企業側の努力や国の支援が足りないってこと。もったいない話だよね。

[問6]急増しているリが中国と思っていいと思う。韓国は近隣の九州への観光着が多く、また(安定陸塊の朝鮮半島には見られない)温泉地を訪れることも特徴。九州には湯布院があるしね。Pが韓国でしょう。

<第4問>

[問1]うわ、これは難しいな。AとBについてはアジアで判定しないといけないってことか。ただ、アジアの農業は原則として自給的であり、穀物も直接食用にする割合が高いと思う。とくに人口規模が極めて大きく、人々が食べる穀物を生産するだけで手一杯なんだと思う。アジアで割合が高いBの方が飼料用途なんじゃないかな。

さらにヨーロッパは有畜農業に特徴がある。有畜農業には酪農や混合農業が含まれ、いずれも家畜を飼養し、乳や肉、さらには排泄物(肥料)が利用される。混合農業でジャガイモなどが飼料となることを考え、飼料の割合が高いアがヨーロッパ。一方のアフリカは、例えば熱帯雨林地域は衛生環境が悪く四本足の獣が生育できない環境であることを考えれば、家畜がそもそも少ないだろうし、いたとしても遊牧のような牧草を食べる家畜ばかりで穀物を飼料として使わないだろう。

[問2]フードマイレージは輸入食品の環境負荷を数字で示したもの。「重量×輸送距離」で表され(ということは単位は「gm」なのかな)、これが大きいほどより多くの燃料を使い、資源枯渇や二酸化炭素の排出を招きます。自給自足が地産地消の必要がこれからの世界には必要とされるということです。

1について。例えば食材の重量が倍になっても、距離が10分の1になれば、フードマイレージは減るよね。大豆を米国産から北海道産に変えれば排出される二酸化炭素の量は減る。

2について。Dは国産が240g、外国産が40g。国内産地からの距離を1、外国産地からの距離を10とすると、240×1+40×10=640(gkm)。Eは、240×10+40×1=2800(gkm)。

3について。ここでいきなり「単価」という言葉が登場。食事をつくるのに必要な単価って何だろう?「つくる」のだからガス代や電気代、あるいは調理器具を買うコストかな。でも、それらならば食材の出身国(?)がどこだろうが、同じだけのガスや電気、器具を使うのだから変わらないよね。あるいは、食材の値段だろうか。それならば確実に外国産の方が安い。というか、そもそも安いから我々は外国に食材を求めているのだ。米国のような賃金水準(1人当たりGNI)が高い国は労働力のコストが高い。なぜそんな国で作ったものが安いのだ?それは、そもそも米国が農畜産物の生産に「労働力」を使っていないから、そこでコストは発生しないのだ。大規模機械化が進み(企業的農業だね)省力化が徹底している。労働生産性が高いというやつだ。人間の手を使っていないのだから、当然生産物や安くなる。一方で、国内農業は小規模であり、機械化は進んでいるとはいえ米国のレベルではない。こちらは生産物の単価は高くなる(その分、品質や味、安全性はこっちの方が高くなるけどね)。これが誤りでしょう。

4について。これはフェアトレードのしくみだね。正文です。

それにしても、これ、いい問題だね。我々は「日本の食料はほとんど外国からの輸入に頼っている」というデマを教えられているけれど、もうそういう教育って止めにした方がいい。これを見てわかるように、食材はほとんど国内産だよ。牛肉にしても本当に美味しいのは国産だし、安くたって不味い米国産を食べる価値ってあるのか。例えば、日本の食料自給率はカロリーベースで40%とされている(つまり輸入が60%)けれど、これもミスリードを招くデータであり、例えば100%国内産のはずの牛乳や卵も輸入品扱い。家畜の飼料である大豆やトウモロコシが輸入品だから、そこから供給される牛乳や卵も輸入品だっていう「無茶な論理」。それなら鉄を使ってできている自動車は全て鉄鉱石産地のメイド・イン・オーストラリアになるよ。本問ではキチンと卵については「国内産」となっている。地理で用いられる自給率は、カロリーベースではなく「品目別」。卵は当然国内産どころか、近郊農業のものなので都市近隣の養鶏場で今日の朝に産まれたものだ。「日本が農業ダメ」っていうイメージはどこから生まれたもんなんだろうね。日本が農産物を自給するようになったら困る国が世界にはあるってことだ。

[問3]Jはアジアでしょう。世界人口の6割が集まり、圧倒的な人口規模を有する。KとLは増え方に注目すればいいと思うよ。増加しているKが、地域全体の人口増加率も高いし、農村から都市への人口流入も顕著で都市が巨大化しやすいアフリカとみていいんじゃないかな。残ったLがヨーロッパ。メガシティはロンドンとモスクワかな。変化はなし。

さらにaにはキが入るんじゃないかな。1人当たりGNIの差すなわち先進国と発展途上国を対比して考える。カは先進国の都市問題。都市の歴史が古く都心部の旧市街地では施設の老朽化が進む。高齢化も先進国のキーワード。キは発展途上国の都市問題。農村から都市へと多くの人口が流入し、スラムが市街地の周辺に拡大していく。そういったスラムはインフラも整わず、居住環境は悪い。

[問4]Xの時期もYの時期も、自動車保有率が高いのはスである。経済レベルも高く(自動車が買えるっていうことで、これは大切な要因)、また日本以上にモータリゼーション社会であるアメリカ合衆国がスになるんじゃないかな。窒素酸化物排出量の割合が高いのも「エネルギー無駄遣い国」のアメリカ合衆国っぽい。ただ、そのアメリカ合衆国で大きく窒素酸化物排出量の割合が低下しているんですよね。窒素酸化物は空気の燃焼によって生じるもので(空気には窒素が多く含まれているね)。エンジンでの燃焼であり、ガソリン車でこの排出量が多い一方で、電気自動車はこれを生じない。窒素酸化物は大気中で水分と化合し、硝酸となる。自動車の通行量が多い都市部で酸性雨が発生するのはこれによる。また太陽光線によって化学変化を起こし、高化学スモッグを引き起こす。

アメリカ合衆国ではカリフォルニア州でガソリン車がすでに規制されているように、電気自動車の普及が進んでいる。窒素酸化物の値の急激な減少はこれを反映したものではないか。もちろん日本でもハイブリッドカーが普及しているけれど、こちらは一部ガソリンであり、完全に窒素酸化物を排出しないものではない。

サとシはいずれも窒素酸化物排出量の割合が低い。ちょっと判定は難しいかな。ということで、自動車保有率で考える。おっと、その前に先ほど「スでは窒素酸化物排出量の値が下がっている」というように、すでにXが昔(1990年)、Yが今(2015年)と決めつけてしまったけれど、これは大丈夫だよね。自動車保有率がサ~スのいずれでも上昇している。経済成長とともに自動車の保有率も上がっていくのだから、時期は「X→Y」と変化している。

さて、再度サとシを考える。1990年の時点では「サ<シ」だが、2015年の時点では「サ>シ」と逆転している。背景には経済成長があるんじゃないか。サは1990年の段階では国民の所得水準(つまり1人当たりGNI)が低く、自動車を買える人が少なかった。それがそれ以降社会が劇的に変化し所得水準が上がり、自動車を買うことができる人が増えた。このような社会変革があった国ってどこだ?日本の場合は1960年代の高度経済成長の時期がこれにあたる。本問の場合、この「1990年」っていうのがカギなんだよね。ソ連のペレストロイカ(改革)→ベルリンの壁崩壊→東欧の自由化→ソ連解体の激動の時代じゃないか。東欧で社会主義政権が倒され、自由主義となる。西欧と同じ資本主義経済圏となり、EUにも加盟。2015年にかけて急激に経済成長が進んだ。自動車の保有についても数値が休場していてもおかしくない。サがポーランド。

シは日本。この25年間に大きな変化はなかった。窒素酸化物排出量の割合がやや低下しているが、これはすでに述べたようにハイブリッドカーの普及によるものだろう。しかし電気自動車のような劇的な変化はない。日本は未だにハイブリッドカーにこだわっているし、ガソリン車もまだまだ販売されている。しかし、世界の先進国はすでに電気自動車に方向転換し、ガソリン車は過去の遺物となっている。もともと省エネが進み(このグラフをみても、米国と比べて日本がもともと「エコ」だったことはわかるね)環境についての危機感が低かったのかも知れない。「環境の優等生」である日本だが、これからの世界はそういったことは言っていられないんじゃないかな。日本がさらに率先してクリーンな地球をつくっていかないといけない。

[問5]タンタルってよくわかりませんが、問題を解く際には関係ないね。これは2が違うんじゃないかな。円の面積で数量の大小を示した図形表現図だが、単位に注目するといずれも80、320、720とあり、数値は共通する。純粋に円の大きさだけで判定すればいい。どうだろう?タンタルの方がコンゴ民主の値が極めて大きいものの、他の国はわずか(分布が偏っているので選択肢1は正文)。一方の金はコンゴ民主のような突出した国はないが、地球の広い範囲に分布し、世界各国でそれぞれ値が大きい。合計は金の方が多いんじゃない?

[問6]最もわかりやすいのはQのス。熱帯雨林が広がるが、近年商品作物であるパーム油の栽培が広がり、農園開発のため熱帯林が減少している。

他の2つはどうかな。感覚的にわかるかな。Pはカラハリ砂漠というところで、南緯25度付近で亜熱帯高圧帯の影響が強く乾燥したステップ地域となっている。草原には多種多様な「野生動物」。Pはチに該当。

残ったタがRのハワイ。実は僕も知らなかったのだが(勉強不足でした。。。)ハワイでは英語の他にハワイ語も公用語となっている。

<第1問>

[問1]地形図問題。

1について。等高線間隔を確認。国道の西側には等高線が密になっているところがあるね。急斜面。それに対し東側は全体的に間隔が疎。なだらか。

2について。果樹園の土地利用記号はないね。

3について。「水が得にくい」は定かではないが、集落や水田(田の土地利用記号)があるのは間違いない。これが正文でしょう。

4について。国道や鉄道との交わっているところを見る。河川の方が下を通っているね。

この地形は扇状地だが、扇状地という言葉は出ていないし、図をしっかり見るだけで得点ができるのは、センター・共通テストの傾向。とくに高度差(立体視)や土地利用記号が出題されやすい。

[問2]フェーン現象は乾いた空気が高所から低所に吹き下ろす場合に、温度が過度に上がること。まずアは「山地を下る」である。さらに周囲に山地地形があることがフェーン現象の発生する条件。Aが該当する。Aに向かって南西方向から風が吹いた場合、山地から低地に向かって風が吹き下ろすことになる。(完成)

[問3]これ、ややこしそうやね。クイズだと思ってリラックスして解いてみよう。

まず現在の役所の支所の場所を確認。地域の北西部に位置し、周辺人口は比較的多い。現在の距離別人口割合を見た場合、ほとんどの人口が3キロ以内に居住しているが、10%ほどは3キロ以上離れたところに住んでいるようだ。なるほど、地図をみると南東部(キの部分)に人口の飛び地があり、ここにもそれなりの人口が住んでいる。彼らは現在の役所の支所を訪れる際に長距離となり、不便である。

これに対し、カに2つ目の支所をつくってみようか。そもそも現在の支所とさほど変わらない位置にあり、どれほどの意味があるんだろう。ただ、この辺りは人口密集地区であり、現在の支所で扱いきれない業務をこちらで補佐するという目的はあるんだろう。

カのところに支所を作ったとしても、南東部の人々からみれば、遠距離であるのは変わらない。やはり「3キロ以上」の人は取り残されるだろう。支所が現在のものとカとに2つに増えた場合の距離別人口はbだろう。

ではキにつくられたらどうだろう?人口密集地区からは遠いが、この南東部に住む人々は近所に支所ができるので、便利になるね。「3キロ以上」の人はいなくなるはず。こちらはaに該当。

文章を解析しよう。この時点で、カは人口規模に対応した支所、キは居住地に対応した支所であることがわかっているね。Dでは「移動負担」とある。これはキでしょう。南東部の遠隔地域に住む人が現在の支所やカに行くのはさすがに遠すぎる。移動負担が軽減されるのはキの方。

一方でEには「住民を増やす」とある。カの方が周辺に多くの人々が住み、カができることで利便性の増す人口は多くなる。カがDになるね。

[問4]サは火砕流の熱風は達するのでJに該当。シは火砕流が流れ込むのでKに該当。スは溶岩流や火砕流がほぼ流れ込まないのでLに該当。

[問5]これはおもしろいですね。今回一番好きな問題かも。

もともとの地形を想像してみよう。「造成前」の点線だね。山地の傾斜地であることがわかる。ここを、あるところは削って、あるところは盛り土をして、住宅地として整備したわけだ。

点線より実線が上にあるところを探してみよう。造成前の土地より造成後の土地の方が高いのだから、盛り土がなされたことがわかる。1と3が該当し、4もそのように見ていいんじゃないかな。新しく盛られた土砂だから、しっかりとした岩盤ではない。地盤が十分に固められておらず、崩れやすくなっているのかもしれない。

それに対し、2はもともとの斜面を削って平坦化された土地。古い岩盤の上に直接住宅が乗っていて、こちらは強固な地盤だろう。地震の際の揺れも小さいはず。2が正解。

ただ、ちょっと気になるのは「周辺の盛り土からの崖崩れ」だね。2より高い3や4の地盤は盛土になっており、新しい土砂による軟弱な土地であることが想像できる。これ、地震の際に崩れ落ちる可能性はあるんじゃない?振動自体は小さいけれど、土砂によって建物が埋まってしまう可能性はある。

[問6]これは、なんとなくだけど3が誤りなんだと思う。堤防沿いに竹が植えられている。洪水の時にこれを乗り越えて水が周辺地域に溢れ出したとする。その水を「排出」とあるが、例えば水が再度河川に戻ろうとしても、そこに竹が植えられているわけだから、それが障害物になってスムーズに水が戻らないことが考えられるよね。「早く」は排出されにくいんじゃないかな。ちょっと意味がわからない文章になっている。3が誤りなんでしょう。

[問2]数字に注目。Aの年降水量2000ミリというのはかなりの多雨。それに対し気温年較差が5℃程度というのはかなりの低緯度地域なんじゃないかな。年間を通じ太陽からの受熱量が変わらない。熱帯雨林地域なのかな。でも、熱帯雨林地域は不衛生な環境(高温で湿潤)で寄生虫や病原菌も多く家畜飼育には適さない。同じく熱帯地域で家畜が多いっていうと、、、インドかな。牛が搾乳用(肉ではなく)に飼育されている。おそらくウがこれに該当するね。インドっていうと「牛は神様だから肉は食べられない」と盲目的に信じている人がいるけれど、それは決して真実ではないからね(笑)。インドと日本は似ていて、そもそも動物の肉は食さない。主な動物性タンパク源がインドではミルク、日本では魚という違いはあるけれど、基本的に家畜を殺して食べるという習慣はない。でも、日本では食生活の変化によって肉を食べるようになったでしょ?インドでも近年は「殺す」ことがタブーとならず、肉の消費量は少しずつ伸びつつある。とくに鶏肉の生産は、他の国に比べれば僅かなものだが、増加率が高い。「乳や肉は食料」というのはあながち間違いではない。

さらにBとC。これ、おもしろんだな。BもCも少雨だが、気温年較差が全く違う。日本(東京)の気温年較差は20℃ほど(夏が25℃、冬が5℃)であり、Cは比較的近い値だが、Bは極端に大きい。降水量もBは500ミリ程度はあり、乾燥気候とはいえ、例えば草原(ステップ)のようなところだろうか。それに対しCはほぼゼロであり、これは完全に砂漠だと思う。ここでちょっと見当をつけるんだが、Bは中央アジアやモンゴルのような高緯度のステップ地域で、ここでは羊が飼育されているのでは。Aは比較的低緯度の砂漠(低緯度であるので、気温もかなり高いはず)で、こちらはラクダなんじゃないかな。アはまさにラクダだね。そして、イは、、、あれ、これ、トナカイじゃないの???えっ、ということは考え方が全く間違っていたってことか。おいおい、考え直さないと。

実はここまでに不自然なところが一つあったのだ。それはCの気温年較差。これが砂漠だとすると、実はこの気温年較差が20℃に達しないというのはいかにも少ない。温度を一定に保つ働きを持つ水分がないのだから、砂漠は寒暖の差が大きい。砂漠で日中は極めて暑いのに、夜は急に冷え込むなんてのは聞いたことがあるんじゃないかな。気温の日較差が大きい。そして同様に夏と冬とでの気温の差も大きくなるのだ。それが20℃未満で、日本より小さいなんて?これがかなり怪しかったのだ。

でも、もしもここが北極海沿岸のツンドラ地域だとしたら、納得はできるのだ。北極海沿岸にはツンドラという荒原が広がる。年間のほとんどの期間は氷雪に覆われ、短い夏の間のみ地表面の氷雪が融解。限られた地肌に地衣・蘚苔(コケ)が繁茂する。高緯度ではあるが、こうした極地は気温年較差は小さい。夏の平均気温は10℃には上がらず(10℃以上なら冷帯となる。農業ができるパターンだね。北海道など)、冬の気温はマイナスとはなるが、大陸内部のような極端な低温ではない。気温年較差が20℃弱というのは納得できるのだ。寒冷地であり、大気が収縮し気圧が上昇。高気圧が発生し、雲はできない。降水量が少ないのも納得。なるほど、Cを北極海沿岸のツンドラ地域と考え、イのトナカイが該当すると考えて正解だろう。