2020年地理B本試験[第6問]解説
こたつじんオリジナル解説[2020年地理B本試験]<第6問>
[30][インプレッション]スミさんでしたか、これはさすがに当てられない(笑)。おそらく女性の名前やと思うんだが、変わった名前やわぁ。取り上げている地域は山梨県。初登場だと思います。「教科書で見た山梨県の扇状地」に興味を持ったっていう設定もスゴイですが(笑)、「山梨県には扇状地しか無いんかい!?」ってお叱りの声も聞こえて来そうな問題ですね。
さて、問1では気候が扱われています。何となく醸し出されている緩い雰囲気とは対照的に、実はこれ、かなりの良問です。日本国内の気候を問う問題って毎年のように出題されていますが、簡単すぎたり、あるいは奇をてらい過ぎていたり、正直あまり質の高い問題って少なかったりしたんですが、本問はその例外。かなりクオリティ高いですよ。今回の問題、全35問中ベストの問題なんじゃないか。僕はかなり好きです。
[解法]日本国内各地の気候を問う問題。与えられているデータは「夏季の気温の日較差」と「冬季の総降水量」の2つのみ。これだけで特定するのだから、かなり鋭い思考が要求される。
候補となる都市は2つ。東京と甲府、そして御前崎。緯度的にみれば御前崎がやや南に位置するので、最も気温は高そうなんだが、与えられた2つのデータのみでは気温の高低はわからない。甲府は標高が高そうで、その分だけ気温も低くなるんだろうが、そういったデータは示されていない。
とはいえ、沿岸部の内陸部の差は決定的だと思う。海陸の比熱を考え、「温まりにくく冷めにくい」のが液体の特徴、「温まりやすく冷めやすい」のが固体の特徴。今回は「夏季」と限定されているけれど、そこは無視してしまっていいと思う。一般的な気温の日「較差」と考えていいだろうし、例えばこれが気温年較差であったとしても内陸部で開きは大きく、沿岸部で小さくなることは確実だろう。最も日較差の大きなアを甲府とする。
さらに東京と御前崎の比較だが、いずれも海岸に接している点には変化がないが、内湾(東京湾)の奥に位置する東京と、外洋(太平洋)に面する御前崎とでは差があって当然なのでは。より「海洋性」といえば御前崎だろう。日較差がとくに小さいウを御前崎とする。イとウで「1.4℃」しか差はないけれど、それでもイの方が大きくウが小さいのは数字ではっきり示されている。まさかイが御前崎でウが東京ということはないだろう。正解は⑤。
本問は手がかりが少ない。しかし、問題をつくる側はこれだけの「わずかな」手がかりでも十分に問題が解けると考えているからこそ、こういった形での出題をしてくるわけだ。少ないヒントであるが、しかしそのヒントは絶対的なものである。ターゲットを絞って(今回は「較差」)理論付けて問題を解く。
ただし、もう一つのデータにも注目するべきだろう。「冬季の降水量」である。ウが最大でアが小さくなっている。さぁ、果たして先ほどの答えは当たっているのだろうか。
「冬季の降水量」といえば、みんな、「雪」を想像するよね。日本列島の日本海側の地域は地球最大の豪雪地帯。シベリアからの北西季節風が日本海の上空で水分を拾い上げ(日本海は暖流の影響で水温が高い。湯気が出ているような状態なのだ)、日本列島にぶつかる。山脈の風上斜面側でとくに降水(この場合は降雪)が多い「地形性降雨」がみられるが、平野部でも比較的雪は多い。新潟県、富山県、石川県、福井県の北陸4県。彼らは群馬県や長野県、岐阜県、滋賀県などと「山脈」によって隔てられているわけだが。それらの山脈の北陸側においてとくに雪が深くなる。
一方で、それら山脈を越えた内陸側や太平洋側の地域は、乾いた寒風は吹きすさぶのだろうが、それらは水分を伴わず、雪ともならない。長野県は国内でとくに降水量が少ない県の一つであるし、群馬県は「赤城おろし」と呼ばれる乾いた風(からっ風)で有名。山梨県も雪はほとんど降らないとみていいと思う。アの冬季の降水量は、3ヶ月間でわずか「118.4」ミリで一ヶ月当たり30ミリほど。日本の平均の年降水量が1500ミリなので、これが極端に少ない値ってことがわかるよね。月平均で30ミリならば、年間で360ミリしか降らず、これは乾燥気候だ(砂漠とは言わないが、ステップ気候ほどの少雨)。
逆にウの御前崎では「248.7」ミリもあり、かなり冬の降水量が多いように思えるが、実はこれもそんなことはない。1ヶ月平均80ミリであり、これを12倍しても1000ミリに満たない。沿岸部である御前崎ならば、国内の平均値を越え、2000ミリぐらいの年間降水量があるのではないか。そう考えると、冬の1カ月の降水量が80ミリ程度というのは、「極めて少雨」とも言える値なのだ。
本問については「降水量」は無視して「気温」だけで解くことができた。というか、降水量を気にするとかえって混乱してしまう。気候判定問題は「気温で決める」ことが絶対であり、どうしても気温だけでわからない場合のみ降水量を参照すること。
[31][インプレッション]数値標高データを用いた問題ですね。コンピュータによる情報解析とグラフィック、いわゆるGISですが、新課程(2022年から始まるものなので、2021年の共通テストでは関係ありません)では重視されるとこみたい。でもGISの内容を問う問題なんか作りようもなく、このように形式としてGISを取り入れるって感じになるんじゃないかな。
[解法]こういった鳥瞰図の問題は例年難しい問題が多いのだが、本問は簡単。簡単すぎる。簡単な問題だからこそ丁寧に解いて、確実に得点をゲットする。
図3参照。まず中央の縦線を引いてみよう。自分が中心に立って、この方向に地形を眺めている。手前から中央にかけて大きな盆地があり、奥を左右に険しい山々が貫いている。左手前と右手前にも山地があり、左手前の地形の方がやや険しいようだ。中央の盆地は、こちらから見て「上辺が長く下辺が短い台形」のような形をしているが、とくに右に向かって低い土地が続いている。
図2参照。①〜④の矢印をそれぞれ延長してみよう。①と③、②と④の矢印がそれぞれ向かい合っているようなので、両者を結んでしまえばいい。手前から中央にかけて盆地となり、そして奥に険しい山々が連なっているものはどれだろうか。④はいきなり手前が山地。①は手前は低地だが、奥の方向は山地が連続しているわけではない。③付近で低地になっている。
③も同様。手前はやや低い土地のようだが、奥は左右が高く中央が凹んだ(①の部分が低い)地形。
②が正解っぽいね。手前から中央にかけて低地が広がり、これが台形状の盆地でしょう。奥に高峻な山脈が南北に(②の方向から見れば左右に)走行している。さらにこの盆地だが、①の方向に低い土地が続いている。この様子も図3の鳥瞰図から伺える。これが正解ですね。
なお、ダメ押しで。図3に再度注目。最も手前の断面を見てみよう。単色グレーで塗られている部分。右側はなだらかな丘陵になっていて、中央からやや左にかけては低地、最も左側の部分はちょっと険しく急斜面になっている。これを図2の枠線の右側の辺(つまり正解である②の側)に当てはめてみよう。なるほど、北が丘陵で、中央からやや南にかけてが低地、最も南側で険しい複雑な地形になっている。
[32][インプレッション]おっと、地形図登場ですね。最近のセンター試験では地形図問題の難易度は低いので、時間をかければ必ず解ける。共通テスト試行調査でも2017年、2018年ともに地形図問題は極めて容易だった。
逆にいえば、ここで失点しては他の受験生に差をつけられてしまうし、時間もゆっくりかけて余裕を持って問題に当たるべき。本問も難しくはないと思いますが、もしかしたらとんでもない「落とし穴」があるかも。慎重に、先進的な余裕をもって取り組みましょう。
[解法]地形図問題だが、問題形式がちょっと変わっているのでまずは確認。地形図問題にありがちな「新旧2つの地形図の比較」ではないものの、古い時代の地形図も考慮に入れた問題になっている。具体的には、古い時代の「堤防」の位置が現在の地系図に重ねられている。なるほど、昔の河道(河川の流路)は今とは異なっているのか。
さらに図中にAからDまで4つの地点が示されているのだが、この4点が選択肢の①から④のいずれかに当てはまるのだそうだ。単純な正文判定・誤文判定問題ではない。もっとも、全ての文章が正しいことを言っているわけで、その内容を読み込めば、この地域の様子がはっきりと見えてくるかもしれない。Dを特定する問題ではあるが、他の選択肢(AからC)を先に当ててしまって、消去法で解くという手もある。全てがわからなくても、いくつかわかりやすいものをピックアップして、候補を削っていくというパターンでもいいね。いろいろなアプローチがある。
さらに問題文が長い問題って、そこにヒントがある場合があるから軽視しちゃいけない。まず「御勅使川」という川があるようなので、それを確認しないと。さらに「扇状地」と明確に書かれている。最初から扇状地の特質を頭に入れながら解く必要があるね。一応「25000分の1」地形図であることは確認し、さらに前述のように古い地形図に示されていた堤防を現在の地形図に書き入れた図であることも確認。ちょっと気になる言葉が「土地利用」。AからDの各点、そして①から④の文章については「土地利用」をメインに読み取っていこう。
地形図問題は先に文章を読んでしまうのが鉄則。①から。土地利用に関する言葉は「農地」しかないかな。農地には「田」も「畑・牧草地」も含まれるし、あいまいだね。「直線的な道路」が気になる表現。
次に②。なるほど。ここには「果樹」とある。これはわかりやすいんじゃない?「果樹園」の土地利用記号を探せばいい。おっと、「徳島堰」っていう具体的な地名(施設名)が示されている。これはわかりやすいね、大きなヒント。
③について。ここも「農地」しかないんだよなぁ。はっきりしない。でもわかりやすい言葉はちゃんと含まれていて、それが「扇状地より高い位置にあり」という言葉。等高線などから標高の高い場所を探せばいいんじゃないかな。
最後に④。これに至っては土地利用が書かれていない(笑)。「古くからの集落」はポイントだろうし、「等高線に沿うように延びる主要道路」ももちろん重要。こちらは選択肢②のような「直線的」ではないのだろう。実は最大のヒントは「公共施設」なのか。これ、具体的に何なんだろう?図から探していかないと。
ここで初めて図を参照。「果樹園」はポイントだと思うよ。ただ、どこも「果樹園」の土地利用記号はあるんだよなぁ(笑)。ま、そもそも扇状地ってブドウなどの果樹栽培に適した土地であるし、山梨県もブドウやモモの生産が圧倒的に多い県なので、そりゃ当たり前か。他のキーワードで探していかないと。
最も気になったのはA。「築山」集落に接した地点であるが、ここ、周辺を等高線で囲まれてるよね。標高を表す数字はみられないけれど、かなりの高台の上にあることがわかる。これに該当する選択肢があったような。。。そう、「扇状地よりも高い位置にあり」の③だ。Aを③とみていいんじゃないかな。「住宅」もあるし、これだけ高い地形ならば水害も及ばないだろう。
具体的な地名として「徳島堰」を探してみようか。なるほど、図の右下の方に「徳島堰」の文字が。この並びに沿って徳島堰があるのだなとわかる。「堰」といえば、「せき止める」もののことであり、いわゆるダムみたいなものなのだが、ここは選択肢②中に「用水路」と説明がされているので迷うことはない。ここを農業用水が流れていて、これより下方の土地を灌漑しているのだろう。「高低差を利用して」と述べられていることからもその様子は想像できる。徳島堰の下方にあるものはどれだ?そう、それはDだね。扇状地(扇央)の一部であるDは本来水に乏しいところ。農業には適さないはずなのだが、徳島堰を利用して水を得ることにより果樹栽培がなされている。Dは②と思っていいんじゃないかな。これが正解。
ただし、ここで手を休めてはいけない。より正確を期すため、他の2つの選択肢についても確認していかないと。
先に①について判定。ここにはわかりやすいキーワードがあるね。それは「直線的な道路」。地形図を見れば一発だと思う。間違いなくBだろう。東西および南北に連なる直線状の幹線道路が確認できる。また「1916年ごろには御勅使川の河道に位置していた」とあるが、これについても過去の堤防の位置から類推できる。現在の御勅使川の流れは、Bより北側を西から東へと流れ、「福祉」の北で盤外へと消えている。「御勅使川」という文字を探してみよう。これに沿って河川が流れているのだが確認できるかな(本当の地形図ならば、河川の流れは青色で示されているのでわかりやすいのだが、センター試験はモノクロ印刷ですからね)。さらにそれを辿っていけば、道路と交差する場所に「橋」も架かっており、判別は可能かと。河川の流れに多くの「堰(せき)」が造られているのも確認できる。これはいわゆる「砂防ダム」であり、上流側からの土砂の流出を防ぐもの。土石流などに対する防災施設である。
これが現在の御勅使川だが、過去はどうだっただろう。Bの南側(「有野」から「支援学校」に向けて)にも堤防がみられる。南北の堤防に挟まれて、Bを含む広い一帯が全体的に河原だったのではないか。扇状地は砂利に覆われ、水が染み込む地形となっている。石ころだらけの土地で、大雨の時だけ表面を水が流れ落ちるような「水無川」になっていたのだろう。現在の御勅使川は堤防の整備も進み、川の流れも集約化されており、B付近はすでに河川の一部ではない。
残った④がCとなりそうだ。C付近の集落は、建物(黒い■で表されている)の周囲が薄墨色で縁取られているが、これは「屋敷林(屋敷森)」を表す。古い集落ではこのように家屋の周りに樹木を植えることが一般的であった。防風林の役割があり、さらに日陰を提供し、葉や枝は燃料ともなる。同じく古い集落である証拠に、寺院や神社などがこの集落には含まれている。集落内の道路も細く曲がりくねった路地が多く、最近つくられたものではないだろう。「等高線に沿うように延びる主要道路」とは●と
「C」の間のやや太い道路だろうか。この扇状地における等高線の方向(南北)に一致している。「公共施設」がよくわからないのだが、「C」の北側の「郵便局」だろうか。ただ、現在は郵便事業は民営化されているので、これを公共施設と言っていいのか。それとも●の北の「学校」のことか。学校を普通、公共施設って言うかなぁ。まぁ、広い範囲ではいずれも公共施設と考えてみてもいいんだろうね。よくわかりませんが(笑)。
[33][インプレッション]おっと、いかにも地域調査っぽい問題ですね。さらにこの写真、似たようなものを先日見たぞ。ほら、例えば岐阜県の雪深い地域の「合掌造り」ってあるでしょ。屋根が大きくつくられていて急傾斜で、あれはもちろん雪が屋根に積もるのを防ぐためにつくられているものなんだけれど、屋根裏スペースが広く取れるというメリットもあって、養蚕部屋として使われていたんですね。桑はやせた土壌でも栽培できる作物で、養蚕業は貧しい山間部の農家にとっては重要な産業だったわけです。
ただ、養蚕業が行われていたのはそういった豪雪地帯だけではない。富岡製糸場(世界遺産ですね)を有する群馬県はその代表的な地域で、関東地方に位置し雪はほとんど降らないものの、住居は屋根を大きくつくり屋根裏スペースを広く設けることで、養蚕を行っていた。ただ、ここでちょっとおもしろいのは、ほら、雪が降らないわけじゃない?だからそもそも急傾斜の屋根は必要ではないし、むしろ風通しを良くし、陽の光を入れるために、屋根をちょっと削って窓を設ける形で家屋が作られたんだそうだ。これを赤城型民家って言って、群馬県の伝統的な家屋として保存運動もなされている。「赤城型」だなんて昔の空母みたいでかっこいい名前だけれど(笑)よかったら画像検索でもしてみてください。なるほど雪に弱いんでしょうが、群馬県は雪は降らないから全く問題ない。こういった家屋で養蚕が行われ、そこで得られた繭(まゆ)が生糸となり、明治時代の日本の国力の礎となったのですね。
僕が本問の写真1を見て既視感を覚えたのは、先日たまたま群馬県の養蚕業について調べ物をしていたから。そしてそこで赤城型民家をみつけたから。日本の養蚕業、奥が深くとてもおもしろいと思いますよ。
[解法]最近、このような会話文を主体とした地域調査に関する問題がよく問われている。ほぼ純粋な思考問題であり、時間はかかるものの、特別な知識を必要とせず、解答に達することができる。じっくり取り組んでみよう。
こういった問題は写真やグラフは後回しにして、文章を先に読んだ方がいい。漠然と写真や図を見ても仕方ない。文章の内容に即してターゲットを絞って読解するのだ。
まずサについて。屋根の中央部を突き上げるような形になっているのは、何かと採光を重視したからなんだそうだ。「採光」つまり太陽光線が屋根裏部屋に差し込むように。要するに「窓」が作られたってことだよね。写真1でもどうなんだろう。突き出した屋根の手前側面に窓というか引き戸みたいなものがないか。今ならガラス張りだろうけれど、昔なら障子紙を張って、光を取り入れることはできるよね。そしてもちろん引き戸を開けば風も入ってくる。暗くて湿った屋根裏部屋に光が差し込み風が入れば清潔な空間になる。サはもちろん「通気性」でしょう。
さらにシについて。なるほど、「神金地区と演算地区内の他地域」とを比べているわけだね。おっと、忘れてた。問題文が長文の場合はそこに問題を解くカギが必ず隠されているからしっかり読んでおかないと。問題文に戻ってみよう。
「甲府盆地」は「養蚕業」が盛んだった。なるほど、これは大前提なわけだね。さらに「甲州市塩山地区の山間部にある神金地域」とある。図1でその位置関係を確認してみよう。破線で囲まれた地区が「塩山地区」というらしい。そして格子が描かれた部分が「神金地域」。塩山地区の半分以上を占めているようだが「山間部」ともあり、人口密度は低いのだろう。塩山地区の中心的なエリアというわけでもなさそうだ。
このことを頭に入れつつ、会話文に戻る。
「図5からもわかるように1990年ごろまでに、養蚕戸数が大きく減少」とある。図5を確認しよう。なるほど、1975年(高度経済成長の末期)には200戸を数えていた神金地域の養蚕農家であるが、その数は現在10戸程度に減少している。ここで「神金地域と塩山地区内の他地域を比べる」のだが、神金地区は養蚕業が「遅くまで行われていた」地域なのか、それとも「早くに縮小した」地域なのか。
図5からこれについて考察を進める。図から具体的な数値を読み取り、下にまとめてみた。
1975年 | 1981年 | 1987年 | 1992年 | |
神金地域の養蚕戸数 | 200戸 | 120戸 | 40戸 | 10戸 |
塩山地区の養蚕戸数に占める割合 | 30% | 60% | 60% | 70% |
こんな感じだろうか。
「神金地域の養蚕戸数」÷「塩山地区全体の養蚕戸数」=「神金地域の養蚕戸数が塩山地区の養蚕戸数に占める割合」
なので、「塩山地区の養蚕戸数に占める割合」=「神金地域の養蚕戸数」÷「神金地域の養蚕戸数が塩山地区の養蚕戸数に占める割合」という計算式が成り立つ。
これを上記の表に書き込むと、
1975年 | 1981年 | 1987年 | 1992年 | |
神金地域の養蚕戸数 | 200戸 | 120戸 | 40戸 | 10戸 |
塩山地区の養蚕戸数に占める割合 | 30% | 60% | 60% | 70% |
塩山地区の養蚕戸数 | 670戸 | 200戸 | 67戸 | 14戸 |
さらにこの表に、「塩山地区内の他地域の養蚕戸数」を書き加えてみよう。「塩山地区の養蚕戸数」―「神金地区の養蚕戸数」によって算出される。
1975年 | 1981年 | 1987年 | 1992年 | |
神金地域の養蚕戸数 | 200戸 | 120戸 | 40戸 | 10戸 |
塩山地区の養蚕戸数に占める割合 | 30% | 60% | 60% | 70% |
塩山地区の養蚕戸数 | 670戸 | 200戸 | 67戸 | 14戸 |
塩山地区内の他地域の養蚕戸数 | 470戸 | 80戸 | 27戸 | 4戸 |
さて、どうだろうか。命題は次のいずれか。
(命題1)「神金地域と塩山地区の他地域とを比べると、神金地域は養蚕業が遅くまで行なわれていた地域である」
(命題2)「神金地域は塩山地区の他地域とを比べると、神金地区は養蚕業が早くに縮小した地域である」
1975年から1992年にかけての養蚕戸数の変化を比較し、神金地区は「200→10」と20分の1,塩山地区内の他地域は「470→4」で100分の1以下。どうだろう?「命題1」の「遅くまで行なわれていた」こそ適切なんじゃないか。よって正解は①となる。
それにしても驚かされるのが、この急激な変化がわずか17年間の話だということ。子供の頃には養蚕で栄えていた地域だったのに、大学を卒業し社会人になる頃には養蚕農家はほぼ消えている。とんでもない変化が日本の農村で起こっているということ。
[34][インプレッション]甲府駅周辺の比較的限られたエリアにおける商業活動の変化を暑かった問題ですね。それにしても、こちらもわずか27年間で大きな変化があったものだと驚かされます。農地が極端に減っていますよね。基本的には、図と文章を対応させてその場で解く「考察問題」だと思います。「時間はかかるが必ず解ける」わけですね。逆にいえば、「簡単だけど、時間は必ずかかる」ということでもあります。
[解法]図と文章から考える「考察問題」のようだ。知識は不要であり、必ず正解を導くことができるが、ただし時間はかかる。腰を据えてじっくり取り組んでみよう。
まず問題文。問題文が長文の場合、そこにヒントが隠されていることがままある。ただ、本問についてはどうもそういったキーワード的なものは含まれていないようだ。とりあえず「大型小売店」の定義について「店舗面積が1000m2以上」とあるが、いきなり数字を言われてもピンと来ないよね(笑)。というか、おおよそ30m四方ということか。あまり大きくないような気もするけれど。。。ただ、「以上」なので、極端に大きなものも含まれ、むしろそれがスタンダードなのかな。大型ショッピングセンターのようなものを考えてみたらいいのだと思う。
図は素通りして、選択肢の文章に目を移そう。選択肢を読んで、何が話題にされているのかを知ってから図を参照する。いきなり漠然と図を見てみても、何が何だかわからないことの方が多いからね。
まず選択肢の①から。「店舗面積10000m2」だって?あれ、さっきは「1000m2」だったよね。あ、そうか。図には「○ 10000m2未満」、「■ 10000m2以上」となる。なるほど、まずは「1000m2」以上という定義があって、その上で「10000m2」を基準に二つに分けているわけか。ということは、○については「1000m2以上、10000m2未満」が正確なところなのだな。納得。
それはそうと、10000m2を超える「超大型」店については、甲府駅の周辺より(1kmなら徒歩圏と言えるね)、その外側が1991年の時点で多かったんだそうだ。なるほど、土地に余裕がある郊外においてこそこのような超大型店舗は成り立つだろうし、駐車場を備えて、大量に商品を購入するようなお客さんにとっても便利なつくりになっているはず。図6で1991年の方を見てみよう。親切にも点線で「甲府駅から半径1kmの範囲」が示されている。この中で■を数えてみたらいい。あれ、甲府駅の近くの方が多いじゃないか、■が3つある。点線の外側は1つのみ。なるほど、この時点ではまだ「郊外化」は進んでいないのかも。超大型店は駅前に集中し、人々は鉄道やバス(バス路線は甲府駅を中心として整備されているはず)を利用してこうした店舗に商品を買いに来たのだろう。これ、おそらくデパートかな。デパートがまだまだ元気だった時代だね。①は誤り。
次に選択肢②。今度は「店舗面積10000m2未満の大型小売店」ということで、一般の大型店って感じだね。上記のように1000m2以上、10000m2未満。これも数を数えてみよう。今度は1991年と2017年とを比較している。点線内の○の数は、1991年は9個だろうか。ちょっと重なっていてよく見えないものもあるが、かすかに見えているものをカウントしたらその数になると思う。それに対し、2017年はギリギリ点線上にあるものも含めて5つ。たしかに減少しているようだ。②も誤り。
さらに③。2017年に甲府バイパスより南側にある「超大型店」を確認。なるほど、3箇所確認できるね。図の中央部に近い甲府バイパスの近くに一つあり、残理の二つはバイパスから遠く離れた図の南東端に近いところ。この二つはずいぶんと辺鄙(へんぴ)なところにあるような印象だけど、お客さんは来るのかな。一応、主要道路にはそれぞれ接しているようだけれど。
まぁ、そんなことを心配しても仕方ないので(笑)、選択肢の文章を検証していこう。これらは「1991年に農地であった場所」に立地しているのか。二つの図を突き合わせて見れば明らかだと思う。一番南のものがちょっと際どい感じもあるけれど、これも含めて「農地」だった場所とみていいんじゃないかな。とりあえず保留としておこう。
最後に選択肢④。これはどうかな。またしても甲府バイパスより南側にある「超大型店」が話題の中心。それぞれ「最寄りの駅から500m以内」に立地しているかどうか。これらはおそらく完全なロードサイド店であり、幹線道路に沿って自家用車で来店する人を対象としてつくられたお店だと思う。お店というか、大型ショッピングセンターって感じかな。郊外で土地も安く、広い駐車スペースが設けられる。鉄道の駅が近接していることは全く条件から外れている。図中の目盛りを見ると、500mというのはほんのわずかな距離。3つの「超大型店」はいずれも駅から遠く離れている。誤文である。
よって③が正解。先程も述べたように、ちょっと判定が微妙なところもあるけれど、選択肢①②④が明らかに間違っていることからも③が決定的な正文となる。
[35]そうなんですよ、山梨県は「移住」にとても積極的らしいですよ。移住者の受け入れが促進されている。大都市圏からの移住を考えている人にとったアンケートで、たしか最も移住したい県としてランキング1位が山梨県だったはず。そのデータを見て、僕も模試で「山梨県=移住者受け入れ」をテーマに問題を作ったことがあります。実際に移住ってそんな簡単なもんじゃないとは思いますが、とりあえずデータを見て、いろいろと考えてみましょうって問題になっていますね。
[解法]問4や問5に続いて考察問題になっている。地域調査の大問で立て続けに考察問題が登場するパターンって、実は共通テストの試行調査で顕著だった。この傾向は21年実施の共通テストでも引き継がれるんじゃないかな。何度も同じことばかり繰り返して申し訳ないが、時間をかけてゆっくり問いてみよう。
まず問題文を熟読。とくに特別なことは書かれていないようだ。図7については、2010年から2017年まで1年ずつ「社会増加率」と「自然増加率」が示されている。「社会増加=転入―転出」であり、「自然増加=出生―死亡」、そして「人口増加=社会増加+自然増加」である。一般に、日本の市町村の場合、重要なのは社会増加の方。社会増加(あるいは減少)によって人口が流動し、それから10年後ぐらいにその影響が自然増加(減少)に現れる。若い世代が流入すればやがて出生率も上昇し、額に若い世代が流出すればやがて出生率も下がるということ。タイムラグはあるが、両者は比例関係にある。ただ、北杜市の場合はちょっと興味深く、自然増加率が大きくマイナスであるのに対し社会増加はプラス傾向にある。本来なら人口が流出し、過疎化が進んでもおかしくない土地であるのに、移住促進の取り組みによって移住者が多いということだろうか。行政の努力が伺える。
図8は、「転入者数が上位の4都県からの転入者の年齢別割合」を示したものなんだそうだ。図7からわかるように、北杜市には転入者が比較的多い。とくにどの県からの転入者が多いかといえば、(北杜市を除く)山梨県、東京都、神奈川県、長野県とのこと。同じ山梨県の周辺地域からの移住者が多いが、大都市圏の東京都や神奈川県からの移住者も多いのが印象的。もちろんこの二つの都県は母数となる人口そのものも多いが(東京1400万人、神奈川900万人)、それだけではない理由もあるのだろうね。
では選択肢の文章を検討していこう。
まず①について。2010年から2017年、「北杜市の総人口は増加している」だろうか。自然増加は社会増加と自然増加の合計。たとえば2010年時点で、社会増加率は0.5%ほど、自然増加率はマイナス1.0%。北杜市の人口を10万人とすると社会増加は500人、自然増加はマイナス1000人で、差し引き人口は500人の減少。どの年次もおおよそこのような数値であり、とくに2015年は社会増加もマイナスとなっている。人口は減少している。ん、これが誤りではないか。正解は①である。
他の選択肢も検討。
②について。2015年以外は社会増加率がプラスとなっているので「転入>転出」である。正文。
③について。高齢者といえば「65歳以上」である。たしかに東京都と神奈川県の65歳以上の割合は、他の2県より高い。なるほど、会社を定年退職したリアイア組が「第2の人生」を過ごそうと、北杜市に転居してきたのだろう。大都市圏からの転入者にはこうしたパターンが多いのだろうね。
④について。山梨県内からの移住者。「中学生以下」ならば「5〜14歳」である(なお、本統計ではそもそも0〜4歳の子どもはカウントされていないようだ。問題文の注釈に「2010年に北杜市以外に居住していた者」という縛りがあることが説明されている。0〜4歳は居住どころかこの世にいなかった)。山梨県での割合が高い。こちらは転勤や転職によって、家族ごと転入してきたってことなんだろうね。40代で小中学生の子供がいる夫婦かな。