2019年地理B追試験[第2問]解説
2019年地理B本試験第2問
僕は毎回センター試験については第2問から取り掛かるのです。というわけで、この試験も最初にこの大問に目を通しました。今回もなるほど、資源と産業に関する大問になっている。このジャンルは統計が最重要なのだが、今回はどうだろう?
<2019年地理B追試験第2問問1>
[インプレッション]産業に関する問題は統計に関するものが多い。あれ?本問は文章正誤問題であり、統計問題じゃないぞ!?いやいや、判断を焦ってはいけない。文章正誤問題であっても、内容に統計を含むパターンは多い。本問もその手の問題じゃないかって、ちょっと勘繰ってみて解くことが大事だね。
[解法]工業に関する文章正誤問題、のはずなんだが、実は違っているね。農業の問題だってことに気づくかな。
誤りは④だね。綿花の生産順位は必ず知っておかないといけない。というか、そもそもいろいろな農産物において生産首位の国はリストアップしておこうよ。
綿花の最大の生産国は「中国」。アメリカ合衆国ではないね。
綿花の生産順位は詳しく知っておいた方がいいと思う。1位中国、2位インド、3位アメリカ合衆国、4位パキスタン。これに加え、ウズベキスタンも重要な生産国の一つである。
1位;中郷・・・北西部のウイグル自治区での生産が最大。黄河流域の華北地方でも栽培される。
2位;インド・・・インド半島・デカン高原西部のレグール土の分布地域が最大の綿花栽培地域。インド半島西岸のムンバイは綿織物工業。
3位;アメリカ合衆国・・・かつては国土南東部の「コットンベルト」のプランテーションで黒人奴隷の労働力によって栽培。現在は西方の灌漑農業地域へと栽培地域が移動。テキサス州やカリフォルニア州など。
4位;パキスタン・・・インダス川の流域で灌漑によって栽培。
ウズベキスタン・・・旧ソ連時代の自然改造計画によって綿花栽培地が拡大。ただし、アムダリア川からの過剰な灌漑によって、この河川が流れ込む湖沼であるアラル海の湖水が減少するという環境問題が生じる。
他の選択肢についても確認してみよう。
①;合成繊維とは化学繊維(ナイロンやポリエステル)のことであり、石油化学工業に含まれる。1980年代までは先進国が生産の中心。その後、NIEs(新興工業経済地域。いわゆる中進国)である韓国や台湾での生産が活発化し、現在は中国やインドなど発展途上国が上位を占める。生産の中心が「先進国」→「NIEs」→「発展途上国」と移るのはほとんどの工業製品に言えることだが、とくに合成繊維(化学繊維)にその傾向が強い。
②;衣類工業については「縫製」部門は安価な労働力が必要であるため発展途上国に工場が立地するが、「デザイン」部門については先進国において企画・開発が行われる。「手が使われる発展途上国、頭が使われる先進国」ということ。イタリアのミラノなど。
③;選択肢②の説明でも触れたが、衣服の縫製部門は安価な労働力が必要とされ、アジアならばベトナム、ヨーロッパ周辺ならトルコやモロッコなど、1人当たりGNIの低い国々へと生産の拠点が移動する。とくに大量生産が可能な既製品。一方、オーダーメイドの注文服については、個々のデザイン性も重視され、先進国の大都市でも生産がなされる(もちろん高価格であるが)。
[難易度]★★
[今後の学習]工業の問題と思いきや、農業の問題だったので驚いた。センターの問題ってジャンルで区切るのは大変だね。
さらに文章正誤問題ではあったが、実質的に統計問題であったことにも注目。ただでさえセンター地理の問題は図表類を用いた統計問題が多く出題されているのだが、実はこういった文章正誤問題も「隠れた統計問題」だったりするんだね。注意が必要。
上記の綿花の統計は絶対に確認しておくこと。さらに「解法」で触れた統計もチェック。ベトナム、トルコ、モロッコの輸出品目に衣類が含まれていること、化学繊維の生産において中国とインドが上位にあり、台湾での生産も比較的多いことが重要。化学繊維はとくに、先進国→NIEs(中進国)→発展途上国へと生産の中心が移行したことが明確である工業製品。1960〜70年代はアメリカ合衆国や日本、1980〜90年代は韓国や台湾、2000年代以降は中国やインド、
<2019年地理B追試験第2問問2>
[インプレッション]シンプルな印象を受けるが「消費量が生産量を上回っている国」っていう言い方がややこしいね。国についてはよく知られた国ばかりだけれど、判定はかなり難しいと思う。統計が当然ポイントになる。
[解法]石油の貿易に関する問題。「消費量が生産量を上回っている」って言い方は大丈夫かな。基本駅には「輸入している」と考えればいいけれど、輸出国であっても、それを超える量を輸入していれば、やはり「消費量が生産量を上回っている国」と判定されるわけだ。
もちろん統計が重要となる。ただし、単に石油を輸出しているか否かではなく、その量も重要になってくる。統計を深いところまで理解しているかどうかっていうこと。
候補は4つ。イギリス、カナダ、サウジアラビア、ロシア。あれっ、全部原油の輸出国じゃないか!「原油=石油」と考えて全く問題ないから。全て石油の自給率は100%を超えているように思える。つまり「消費量<生産量」。でも、この中に一つだけ仲間外れがあるんだが、それはどこだろう?
まず真っ先に外していいと思うよ、サウジアラビアについては。OPEC(石油輸出国機構)の中心的な存在であり、我が国にとっても最大の原油の輸入先。とうぜん「消費量<生産量」だろう。
さらにサウジアラビアと並んで原油の産出が多い国がロシア。OPECには加盟していないけれど、ヨーロッパは主にロシアから原油を輸入している。ロシアは原油だけでなく天然ガスについても世界的な産出国であり輸出国でもある。昔はソ連といえば重工業の発達した国だったけれど、それを受け継いだロシアについてはもはや工業国のイメージはないね。たしかに日本はロシアからアルミニウムを輸入しているけれど、それにしてもむしろ水力発電がさかん。すなわち豊かな自然にあふれていることが背景になる。「ロシア=エネルギー資源」というイメージはつくっておこう。これも選択肢から外す。
さて、残った2つはどうだろう?なるほど、イギリスか。北海に油田とガス田を有するEU最大の原油産出国(*)。北海は極めて浅い海域で、大陸棚に多くの油田が開かれている。原油はイギリスの輸出品目の一つ。
ただ、実はカナダも原油については輸出国の一つなのだ。カナダはアメリカ合衆国を中心としたNAFTA(北アメリカ自由貿易協定)の調印国。カナダと、同じくNAFTA調印国であるメキシコは、アメリカ合衆国に原油と自動車を輸出している。アメリカ合衆国は世界最大の原油と自動車の輸入国でもある。カナダとメキシコは、アメリカ合衆国の欲しいものを売っているっていうことだね。
「カナダ=原油」っていうイメージは作っておいていいと思うよ。カナダの上位輸出加工区は、自動車と原油。日本からみると、木材(パルプ)や小麦がカナダからの主な輸入品目になっているが、カナダ全体(というか、カナダの貿易の8割は対アメリカ合衆国が占めているのだが)で見た場合、原油と自動車の輸出が多い。
さて、どうだろう?イギリスとカナダ、いずれも原油輸出国には間違いないのだが、輸入量がそれ以上に多いのはどちらだろう?
統計を知っていれば簡単に答えることができる。すでに述べたように原油はカナダの上位輸出品目(1位もしくは2位)であるのに対し、イギリスは機械類や自動車の輸出が上位を占め、原油は5位。どちらが「消費量>生産量」かといえば、それはイギリスである可能性が高いだろう。①を答えとする。
「消費量」そのものに注目する方法もある。カナダは人口3500万人、イギリスは6000万人。いずれも1人当たりGNIの高い先進国であり、国内の経済規模(GNI)は人口にそのまま比例すると思っていいと思う。つまり「イギリス>カナダ」。石油の消費量もイギリスの方が大きくなるはず。それだけ経済活動が活発というわけだ。消費量が大きいのだから。それが産出量より大きくなる可能性が高いのもイギリスってことになるよね。どうかな。考え方としてはスムーズだと思うよ。
以上、統計に基づく問題ではあったけれど、かなりの難問だったと思う。地名や都市名は大ざっぱにしか問われないけれど。統計は細かいところまで知らないと答えられない問題も出題されている。統計の重要性を改めて知る問題だった。
(*)ヨーロッパではロシアとノルウェーの原油産出量がイギリスを上回っているが、この2カ国はEU未加盟なので、EU最大の産油国の地位はイギリスにある。ただ、そのイギリスもEUを脱退するんじゃないかっていう不安定な状況にあるのだが。
[難易度]★★★
[最重要問題リンク]これ、関連問題をちょっと思い出せない。形式も問われている内容も初出と言える。
[今後の学習]
統計の捉え方が難しいね。いずれも原油の輸出国ではあるのだが、程度というか、それぐらいの輸出量があるかまで想像しないといけない。貿易統計の1位は覚えておいた方がいいし、サウジアラビアとロシアについてはたしかに輸出品目の1位が原油。この2カ国の判定は容易。しかし、カナダが難しいんだな。カナダもたしかに輸出品目の上位2位までに原油が含まれるのだが(もう片方は自動車)、これはかなり意外に思う人もいるんじゃないかな。カナダはNAFTA調印国でアメリカ合衆国との関係が極めて大切であり、「カナダの輸出品目」は「アメリカ合衆国の輸入品目」であることが重要。アメリカ合衆国は世界最大の原油と自動車の輸入国である。これと関連させて考えて欲しい。
<2019年地理B追試験第2問問3>
[インプレッション]図が用いられているが、考察問題ではない。日本語の言葉の問題だなぁ、こりゃ。言葉の意味を知らないと解けないぞ。
[解法]サンフランシスコ郊外のサンノゼ。ハイテク産業の集積地区が「シリコンバレー」。第二次世界大戦後に発達をみた先端産業の集積地であり、コンピュータソフトの開発拠点ともなっている。マッキントッシュのPCで知られるアップル社の本社が近隣に位置している(ちなみにマイクロソフト社はシアトル近郊)。高度な技術を生かして、革新的なテクノロジーが日々開発されている。
さて、こうした背景を考えて見ると、ちょっと怪しい言葉があるんだね。それが選択肢③の「規格品の大量生産」。これって何だろう?
まず「規格品」って何だ?衣類で考えてみれば、いわゆるファストファッション系の店でみかけるSサイズやMサイズなど、規格が決まっている商品のことだね。これらは工場で「大量生産」される。服の場合、縫製が必要になるのだが、それらはできるだけ安価な労働力が得られる賃金水準の低い地域でこそ成り立つ。衣服以外でも、例えば自動車や電気製品などやはり単純労働による組み立て工業なら同じ様なことが言えるわけだ。「規格品の大量生産」は先進国を離れ、発展途上国へと移動する。
以上を考えてみると、本選択肢が誤っているのがわかるんじゃないかな。先進国であるアメリカ合衆国はそもそも規格品の大量生産には適さない。とくにシリコンヴァレーは「ハイテク産業」であり「情報技術産業」であり、そして「研究者や技術者」による研究が進められている。決してファストファッションの衣服がつくられているわけではない。③が正解。
選択肢③には「ベンチャービジネス」というキーワードも挙げられているが、これはとくに考える必要はないだろう(そもそも下線部でもないし)。個人が起業し、大規模企業にはできない革新的な事業を行う。そうした自由で挑戦を許容する風土がシリコンヴァレーにはあるのだろうね。そしてそうした若い才能に多くの投資が集まる。
他の選択肢についても検討していこう。
①;「産学共同」はハイテク産業(IT産業)の一つのキーワード。シリコンヴァレーはスタンフォード大学が近接している。
②;情報化が進んだ現代社会だからこそ、対面での直接交渉が重要になる。東京でも渋谷や六本木の限定された範囲にいわゆる「IT長者」が集まり、相互に交流を図っているね。トップ同士が友好な人間関係を結ぶことで、企業同士の連携が成り立ったり、投資が集まったりする。
④;アメリカ合衆国の北緯37°以南の範囲(ぶっちゃけアメリカ本土の半分ぐらいの面積を占めているからめちゃ広いんだけどね)を「サンベルト」といい、豊富な資源などを基礎として戦後に発展を遂げた地域。先端産業地域も多く分布する。ただ、先端産業の典型的地域であるシリコンヴァレーって、実はこれよりちょっとだけ北にあったりするんだよね。北緯38°ぐらい。たしかに「北緯40°より南に位置して」いるんだけど、だからどうしたって感じではあるよね(笑)。
[難易度]★★
[今後の学習]
本問をミスした人も、言われてみれば納得って感じだったんじゃないかな。本問のポイントは日本語そのものにあったと思う。「規格品」って何だ?「大量生産」ってどういったものをつくるんだ?地理用語の丸覚えじゃなくて、普段使っている言葉の中にヒントがある。国語力とか文章読解力とかそういった高級な話ではなく、単に「規格」や「大量」と言う普通の言葉の意味を考えるべき。知識重視の暗記型の勉強ではダメで、柔軟な思考を有する「頭の使い方」を問う、本当の思考力が必要となる問題だったと思う。本問がスムーズにできた君は、かなり頭がいいぞ。
<2019年地理B追試験第2問問4>
[インプレッション]日本地理の問題とも言えるし、工業の理論に基づく問題とも言える。「電気・電子機器」って具体的にどんなものなのだろうということを考えつつ、ある程度は感覚的に解くこともできるかな。多面的な要素を持った良問。
[解法]日本の工業に関する問題だが。日本に限定せず、先進国の工業における一般的な傾向として解いてもいいんじゃないかな。
例えば、「繊維・衣服」工業は軽工業である。安価な労働力を求めて発展途上国へと生産の拠点が流出するので、先進国(1人当たりGNIが高い)ではこれに関する工業は衰退する傾向にある。値が大きく減っているものがこれに該当するとみていい。
逆に「電気・電子機器」については、これがコンピュータや情報通信機器を含んでいると考えれば、21世紀に入ってからの伸びは著しいだろう。世界全体での生産は増加しているはずであり、それに携わる人も増えている。
ではグラフを参照しよう。この手の問題では、「現在の数値」だけに注目するのがコツ。例えば、④は極端に少ない。これは大きな手がかりになるだろう。
でも、それだけでは他がわからない。仕方ないので(?)時代ごとの変化の様子にも注目する。①が極端。1970年には最大だったのに現在は急降下。④を除いた3つの中では最下位。そして②。これは1970年から1990年の間に目立って増加している。現在は数字を減らしているが、それでも実数としては1位。③はなぜかほとんど変化なし。とはいえ、その数は常に②より劣っている。
ではここから推理していこう。各業種について、具体的にどんなものを作っているのか考えてみたらいい。例えば「輸送用機器」。これは簡単なんじゃないかな。もちろん自動車だよね。造船は衰退したし、航空機は元々日本でつくっていない。自動車工業と直接結びつけてしまっていいと思う。さらに「電気・電子機器」。もちろんこれはテレビや冷蔵庫などの電気機械をメインに考えればいいけれど、果たしてそれだけだろうか。そう、もちろんPCや携帯電話などの情報通信機器も含むと考えるべきだね。わざわざ「電子」と示されているのだから、それぐらいの想像はできるんちゃうかな。
さらに「繊維・衣服」。これはそのまんまでしょう。化学繊維をつくる化学工業も一部含まれるんだろうが、綿織物をつくり、さらに衣服を縫製する工業。こういった軽工業の立地条件を考えてみよう。
その一方で謎なのが「木材・木製品」なんだわな。現在の日本では林業はもはや主産業の一つではなく、木材生産は少ない。後継者不足や労働力の高齢化、木材の輸入自由化などの影響で経営が成り立たず。放棄される山林も多い。その中で「木製品」なのだから、これって何なのだろう?製材業?家具工業?それともパルプ工業?正直よくわからないが。ただ、いずれにせよこれに従事する人が多いとは思えないんだわね。おそらくもともと少なく、さらに現在ほとんどその従事者がいなくなった④が「木材・木製品」に該当するのだと思う。
さて、残る3つ。1970年といえば高度経済成長の末期(もっとも当時の人は「末期」だなんて気づいていなかっただろうけど。大阪万博の都市だね)。公害や都市の過密が問題となり、やがてオイルショックで日本の経済は頭打ちになる。
高度経済成長期までは多かったのに、それ以降一貫して減少しているものって何だ?現在の日本を考えればわかると思う。極端な経済成長は終わったものの、やはり日本は1人当たりGNIの高い先進国であることは間違いない。賃金水準は高く、安価な労働力を求め工場が海外に移転する。その代表的な業種こそ「繊維・衣服」ではないだろうか。製品価格が安く、国内の高い労働力を使えば採算割れをする。規格品を大量生産するだけであり、単純労働力に依存する衣服の縫製業については、とくに日本から外国への産業流出が顕著であるはず。当初は多くの従業者がいたのに、現在大きく数字を減じている①が「繊維・衣服」ではないか。
さて、残った二つである。自動車かPCか。1970年から1990年にかけて急増した②に注目してほしい。この時期の日本を想像しよう。
1960年代・・・高度経済成長
1970年代・・・オイルショック
1980年代・・・貿易摩擦
それぞれ時代ごとのキーワードである。1950年代後半より始まった高度経済成長によって工業化が進み、とくに自動車工業や石油化学工業などの重工業が発達するようになった。しかし、その流れも1970年代中頃のオイルショックで頓挫し、鉄鋼業、石油加賀工業といった資源多消費型工業は大きなダメージを受けた。
しかし、その一方でさらに生産を増やしていった工業ジャンルがある。それが自動車工業。燃費の良い日本車は世界中で人気が高まり、各自動車メーカーは生産を拡大、輸出も増加していった。1980年代には日本がアメリカ合衆国を抜き去り、自動車生産世界1位の地位に駆け上がる。
しかし、この時期に同時に問題となったのが「貿易摩擦」である。日本の輸出超過、アメリカ合衆国の輸入超過により、貿易の不均衡が生じる。アメリカ合衆国による日本叩きが始まり、日本の自動車メーカーはこの事態を打開するために、アメリカ国内へと工場を移転させ「現地生産」を行う。
この流れが理解できれば、②と③の判定は可能なのではないか。1980年代にかけて日本の自動車工業は上り坂にある。もちろん③も「88→96」と数字を伸ばしているが、さすがに②の「134→196」は強烈である。この時期、間違いなく日本の主要産業は自動車工業であり、日本こそが世界最大の自動車生産国であった。②を「輸送用機器」とみるのは妥当だろう。
そして残った③が「電気・電子機器」である。このカテゴリーには電気機械から精密部品など多種多様な工業製品が含まれるので、従業者の絶対数がもっと多くてもいいのかなと思うんだが、自動車工業の従業者数が多すぎるだけなのかな。少なくとも、1990年から2010年までの20年間で減少していないのは③だけでもあるし。近年のコンピュータ産業の隆盛を考慮すれば、「電気・電子機器」は③しかあり得ない。
と思ったら。。。答えは②でした! えっ、間違えた(涙)
②が「電気・電子機器」ってことは、③が「輸送用機器」なのか。なるほど、言われてみればそう考えた方が自然なのかも知れないな。先に述べたように、絶対的な人数で考えた場合、自動車工場で働いている人の数の方が、電気機械やら精密機械やらなんやかんやいろいろ含めた多様な工場で働いている人の数より多いとは、やっぱり考えにくいんだわ。絶対的な人数で考えるべきだったのだろうか。
しかし、それにしても変化に注目した場合、かなり不自然な感じがするんだなぁ。1980年代に世界最大の生産台数を誇った日本の自動車工業。1970年と1990年の従業者数が大きく変わっていないっていうのは納得いかないのだ。
たしかにこの時期はコンピュータなど知識集約型の工業も発達した時代であり、それらを「電気・電子機器」にカウントすれば、むしろ増加したのは「電気・電子機器」の方であって、自動車を中心とした「輸送用機器」の伸びはそうでもないのかも知れないけれど。
さらに言えば、1990年代はマレーシアやタイなど東南アジアの国々へと、音響機器などの電気機械工場がさかんに進出した時期でもある(ウォークマンはメイド・イン・マレーシアが多いよ)。そう考えると、2010年までに大きく人数を減らしたのが「電気・電子機器」であることにも、一応納得はできるのだが。
いや、難しかった。というか、未だによくわからない。本気で間違えました。面目ありません。参った(涙)。
[難易度]★★★
[今後の学習]う〜ん、これは難しかったな。。。途中で間違いに気づいた、とか。答えを知ってから考えたら納得できた、とかそういうパターンじゃないからね。未だによくわからない。まぁ、こういう問題もあるということで諦めないといけないのかな。スイマセンです。
<2019年地理B追試験第2問問5>
[インプレッション]前問に続き日本地理に関する問題。ただ、前問が工業(製造業)という第二次産業に関する問題であったのに対し、本問はサービス業、情報通信といった第三次産業に関するものとなっている。とくに情報通信業は今後の日本の主要産業とも成り得るものであるので、注目して欲しい。
[解法]グラフで「宿泊業・飲食サービス業」と「情報通信業」の従業者割合が示されている。いずれも第3次産業であるので、都市部を中心に従事者が多いとは思われるが、その度合いはどうだろう。
図を見るとなるほど、③から仙台市、札幌市、名古屋市、福岡市とほぼ一直線上に並び、比例のグラフを描いていることがわかる。③はこれらの都市と同じような特徴を有していると思われる。
それに対し、①と②は情報通信業の割合が高く、とくに①は飛び抜けて高い。④はその反対で、こちらは宿泊業・飲食サービス業の割合が際立って高い。
さて、東京都区部はどれだろう。日本においては各種産業の東京への一極集中が激しく、とくに研究・開発など「頭を使う」産業においては東京の占めるシェアが圧倒的に高い。第2問問1の選択肢③と④の説明でも述べているが、「手を使う」ことで何かを作り出す産業つまり製造業については安価な労働力を求め賃金水準の低い地域へと進出するのに対し、同じ「何かをつくる」産業であっても「頭を使うこと」が重要である情報産業については先進国へと研究・開発の拠点が集まる。第2問問1の選択肢②では「デザイン」が例として挙げられているが、「頭を使う」という点においてはコンピュータソフト開発にも同じことが言えると思う。「情報通信業」が集積するのは東京都であり、それに従事する人の割合も高いはず。①が東京都区部。
②も東京に近いキャラクターを有している。国内2位の巨大都市圏を有する大阪市だろう。西日本の中心。
④は京都市ではないか。ここでは京都市が観光業の発達した都市であることを考える。国内外から多くの観光客を集め、それをもてなす宿泊業や飲食業に従事する人が多いことは納得。なお、情報通信の値は低いが、近畿地方の経済の中心は大阪市であり、企業も集まる。京都市に本拠を置く情報通信企業は少ないだろう(京大があるから多そうなイメージもあるけどね)。
③は広島市であろう。上でも述べたように、仙台市などと同じキャラクター。地方中枢都市である。両方の指標のバランスがいい。
[難易度★★]
[今後の学習]「日本は東京への一極集中が進む」ことは絶対として、「情報産業も東京に集中」することを利用して解く問題だった。例えば、情報通信機器という「機械」を組み立てる製造業については長野県の生産が多いので、注意すること。あくまで東京に集中するのは「頭をつかった」産業なのだ。
例えば、みんなの中には工学部に進みたいっていう人もいるよね。過去の日本においては、工学部を出て、自動車メーカーに勤める。つまり第二次産業に従事する人が多かったと思うんだわ。でもそれがだんだん変わってきて、工学部を出て、ソフト開発を行う。そんな第三次産業的な仕事の仕方っていうのが増えてくるんじゃないかな。理学部との境界線がなくなってくる。自動車工業のような典型的な工業からコンピュータ系の情報産業への転換が、今後の日本においては一般的な流れとなる。
でも、その時にいつまでも東京がそういった産業の中心地であっていいのかって僕は思うんだわ。例えば、アメリカ合衆国の情報産業の集積地はサンノゼ(カリフォルニア州)のシリコンバレーであり、首都のワシントンでも人口最大のニューヨークでもない。ボストン(エレクトロニクスハイウェー)、ノースカロライナ(リサーチトライアングルパーク)、ダラス(シリコンプレーン)、フロリダ半島(エレクトロニクスベルト)など、他にも多くのハイテク産業の集積地が生まれている。ピッツバーグもバイオテクノロジーなど新しい産業が誘致された。
ヨーロッパでもルール工業地域はすでに鉄鋼業などの重工業からハイテク産業へと主産業が転換している。
アジアではインドのバンガロールがIT産業の中心地として有名だったが、今はデリーやムンバイもバンガロールを超えるほどのハイテク産業の集積地となっている。
韓国や台湾でサイエンスシティが設置され先端産業の研究が行われ、マレーシアでも首都クアラルンプール近郊のサイバージャヤには多くのIT企業が誘致された。
果たして、日本には国家としてそうした先端産業の育成を行おうという動きはあるのだろうか。せめて「日本のシリコンバレー」をつくらないといけない。かろうじて筑波研究学園都市がそれに近い立場ではあるが、それでも茨城県でとくに情報通信産業が発達しているなんていう話は聞かない。
東京に一極集中する日本では、黙っていても東京に各種産業が集まり。情報産業もその例外ではない。しかし、それでさらに進化は深まるのだろうか。進化の流れは日本全体に及ぶのだろうか。東京のみが突出し。しかしあまりに過密であり、多様な都市問題を抱える東京はすでに飽和の状態を迎えてしまっているのではないか。
政府が主導してIT産業を誘致し、大学を設置し、外国から多くの研究者を迎え入れ、世界をリードする先端産業地区をつくらないといけない。「日本のシリコンバレー」は必要ではないのか?
<2019年地理B追試験第2問問6>
[インプレッション]いきなり農業でビックリ! 他の問題はみんな工業や資源に関するものばかりだからね。たしかに大問のテーマは「産業」だったんで、農業が入っていてもおかしくはないのだが。唐突に無理やりはめ込んだって雰囲気だなぁ。
さて問題の方はグラフを用いた文章正誤問題。シンプルなグラフであるので、考察問題ではなく、ある程度の知識は問われているとは思うが、さて、どんなもんかな。
[解法]日本の農業に関する問題。「耕地面積」と「作付・栽培延べ面積」の両方の変化がグラフに示されている。なんだよ、作付・栽培延べ面積」って?おっと、ちゃんと説明が書いてあるじゃないか。「各年の作付・栽培延べ面積は、同一の農地における農作物の作付・栽培面積の合計」とある。これ、どういうことかわかるかな。ある年に、ある耕地で一回だけ作付したら「耕地面積=作付面積:になるわけだよね。ただ、グラフを参照するに、全体として作付面積が耕地面積を超えている。なるほど、これは二期作あるいは二毛作なんだろうね。一年に同じ耕地で複数回作付をする。米を二回作付するのが二期作、米と他の作物(小麦など)を作付するのが二毛作。1960年代までの日本では二期作や二毛作がさかんに行われていたというわけだ。
では、文章を参照しよう。まず①から。これはその通りだよね。1年の間に複数回利用される、二期作や二毛作が行われる耕地が多かったのだ。
さらに②。これは奇妙。耕地面積と作付面積の逆転現象が生じる。どういうことだ?あるほど、②の説明を読めば納得。「耕作放棄地」が増加しているんだろうね。いわば「0期作」といったところだろうか。2010年代には耕地面積のうち、2〜3割程度は何の作付もなされず。耕作放棄地となっていることが読み取れる。
③もその通りだね。第1次産業である農業は、工業など第2次産業、商業など第3次産業に比べ収益性が低い。1人当たりGNIの高い日本において、農民として生きていくのはなかなか厳しいのだ。挙家離村なんていう言葉もある。家を挙げて、村を離れる。農業を捨て、都市へと人々が流動する様子を表した言葉である。そこまでいかなくても、農業は親の代で終わり、子供に後は継がせないという形も多いね、耕地を保有したまま農業から離れるので。耕作放棄地が増える大きな理由の一つともなっているのだ。③は正文とみていいだろう。
ラストの④について。なるほど、今後の日本農業においては生産性を上げ、より高い収益を目指すことが必須となる、そのためには何をしたらいい?例えばアメリカ合衆国の農業を参考にしたらいいのではないか。アメリカ合衆国の農業の特徴は、粗放的・企業的・商業的(日本は、集約的・家族中心の零細経営的・自給的)。粗放的つまり土地生産性は高くないけれど、それを上回る勢い(?)で土地を広げればいいね。そう、アメリカ合衆国の農業は企業的であり、大資本を投下したスケールの大きな農業。広大な土地で大型機械を利用し大量生産する。省力化も勧められ、少人数で生産活動を行うため、労働生産性も高い。人件費がかからないことが、「安価な農産物」の理由になっているんだね。そして商業的でもある。食料自給率の低い日本は、食料の多くをアメリカ合衆国からの輸入に依存している。それだけアメリカ合衆国は低コストで農産物を生産しているのだ。現在の日本では価格競争に勝てない。この状況を変えていかないといけないわけだ。
さて、改めて選択肢④を含む文章の後半部分を見てみよう。「近年、効率的な農地の利用に関する取り組みがすすめられている。例えば、農地を分割することで、労働生産性を高めて収益をあげようとする農業生産法人が増加している。」とある。
「労働生産性を高める」とは省力化のこと。農業就業人口を減らし、1人当たりの生産量を増やす。そのためにはどうすればいい?当然「機械化」は一つの方法だね。農業機械の導入によって、人間が行うべき作業の量を減らす。それはアメリカ合衆国でも行われていること。
そしてスムーズな農業機械の導入には何をなすべき?もちろん、大資本の投入は重要。巨大な予算を立て、農業機械を購入する。そして、農地は広い方がいい。まさに「企業的」な農業への転換が図られる。なるほど、ラストの部分に「農業生産法人」とある。法人つまり企業ってことだね。日本の農業は「農家」に依存していた。それを今後は「農業企業」中心に移行していくべきだってことだね。アメリカ合衆国の農業のスタイルを見習えということ。そして将来的には農業を輸出産業に育てていこう。「商業的」への転換である。
これを踏まえて考えるとどうだろう?「農地を分割」って狭くすることじゃないか。これでは効率いい農業は行えず、農業機械も使いにくいから省力化は進まず、労働生産性は上改善しないし、収益も上がらない。「農地を結合」し、規模を拡大していくべきなんじゃないか。広い農地で大規模農業を行う。大資本を投下し、企業による大量生産で、自給率を高め、さらに輸出を目指す。
まだまだ日本の農業はそこまで進化はしていないけれど。将来の理想形がそこにある。④が誤りとなる。
[難易度]★★
[今後の学習]理想を言えば、感覚的に解いて欲しいところ。「農地を分割」して小規模経営にしてしまえば、コストがかかり生産性が下がるだろう。そうしたことをスムーズに想像して欲しかったんだがどうだろう。
なお、2015年地理B本試験第2問問6にこうした選択肢がある。参考になるね。
③ 日本では、農産物市場の対外開放にともなって、小規模な農家を保護するために営農の大規模化を抑制する政策がとられるようになった。
この選択肢が誤りであるのはわかるかな。日本では農業の大規模化が求められ、政府もそれを支援している。保護されるべきは「小規模な農家」ではない。