2016年度地理A本試験解説
たつじんオリジナル解説 2016年度地理A本試験解説
<第1問>
問1 ①
北半球の夏至(南半球の冬至)である6月22日は、北極圏で白夜、南極圏で極夜となることからわかるように、「北へ行けば行くほど昼(太陽が出ている時間)が長い」。
②;BとCは経度30度分違うので、「2時間」。
③;AとBは緯度30度分違うので、「3300キロ」。
④;大圏航路は、2地点間の最短距離となる直線ルート。B—Cのように緯線に沿う場合、その航路は大きく高緯度側(ここでは南極側)に張り出す形となる。
問2 ②
アはイタリア、イはエチオピア、ウはバングラデシュ、エはブラジル。
最も判定が容易なのはエチオピアだろう。沿岸部には低地が見られるが(そしてこの部分は強い乾燥地域となっている)、内陸部は全体が高原となっている。アフリカ大地溝帯に沿い、2000メートルを超えるような高所も多い。④がイである。エチオピア高原はコーヒーの原産地としても知られている。アフリカ大陸は「高原大陸」であり、全体としてテーブル状の形をしており、標高200mに達しない低地が少ない。とくにエチオピア秋雨変においてはその傾向が顕著である。
さらにウもわかりやすい。バングラデシュはガンジス川水系の作り出す三角州(デルタ)の上に国土が乗る国。低地の面積割合が高く、米やジュートの栽培がさかん。サイクロン(インド洋周辺の熱帯低気圧)が原因となる激しい風雨や高潮によってしばしば洪水に見舞われ、さらに地球温暖化による海面上昇によって水没が予想される低地の面積も広い。①がウとなる。
極端な2つがわかったので、残りのイタリアとブラジルについては、微細な点に注目して解いていこう。イタリアは国土のほぼ全体が新期造山帯に含まれる国で、北部にはアルプス山脈、南部には火山と、高峻な地形は多い。それに対し、ブラジルは安定陸塊が主。北部のアマゾン川流域には広大な低地が広がり、南部のブラジル高原は標高1000メートル程度の台地地形である(南部でコーヒーが栽培されている)。全体としてなだらかな②がエのブラジルに該当し、険しい地形がみられる③がアのイタリアとなる。
問3 ③
気温年較差の問題であるが、最優先で考えるべきは「緯度」。原則として「緯度と気温年較差は比例」する。そして、これに加える補助的な要素として「内陸部は寒暖の差が激しくなり、沿岸部は穏やかになる」という大陸性気候と海洋性気候の性質を考える。
まず、最初のセオリーから。地球と太陽の関係を考えてほしい。地球は地軸を傾けながら、太陽の周りを公転している。このことにより、季節によって太陽光の当たる場所が変化し、季節が生じる原因となっている。北極周辺の地域(北極圏)は、7月を中心とした時期に白夜(24時間昼の状態)となり、南極周辺の地域(南極圏)は、1月を中心とした時期に白夜となる。高緯度地域は季節によって昼の長さが大きく異なり、受熱量の違いが寒暖の差に結びつく。
ただし、赤道直下の地域では年間を通して昼の時間は12時間で変わらず。気温年較差が生じない。低緯度地域では気温年較差の小さな気候がみられる(下の[発展ポイント]も参照しよう)。このことをふまえて考えるに、赤道に沿う(つまり、緯度0°である)Fについては、気温年較差がほとんどない④が該当し、それぞれ北半球と南半球の低緯度である(緯度20°ほど)のEとGについては気温年較差が20℃に満たない②と③、北半球の中緯度(北緯35°ほど)のHは①に該当する。東京(北緯35°)の気温年較差が20℃であることも考え合わせて欲しい。夏は太陽からの受熱量が大きく、冬は同じく小さい。
さらにGを特定しないといけないので、②と③について考えてみよう。②については、東西どの地点においてもほぼ気温年較差は同じ値であるのに対し、③では東端と西端においてやや寒暖差の緩やかな気候がみられる。これを海洋の効果とみることはできないだろうか。比熱の大きい液体(つまり海)は「暖まりにくく、冷めにくい」。この影響もあり、Gにおいては海に接する東端と西端匂いて、寒暖の差はやや弱まる。全てが大陸内部であるEに比較して、Gでは沿岸部と内陸部において差異のある気候がみられるはずである。
②をEとし、③をGと判定する。
なお、Hの西端はサンフランシスコだが、ここは寒流の影響により、とくにはっきりとした海洋性気候がみられる。中緯度でありながら、気温年較差はわずか10℃程度である。
[発展ポイント]
低緯度であれば、沿岸部だろうと内陸部だろうと気温年較差は小さい。「低緯度でも高原など内陸部は気温年較差が大きいのではないか」と勘違いしている人も多いと思うので、注意して欲しい。気温年較差を決定する最大の要因は「緯度差」であり、「海陸分布」は2次的な要素と考える。例えば「気温年較差は、沿岸部では半減し、内陸部では倍加する」と覚えておけばいいと思う。中緯度地域で、緯度全体の気温年較差が20℃とすれば、沿岸部の気温年較差は10℃、内陸部では40℃となる。なるほど、東京の気温年較差は20℃であるが、サンフランシスコでは10℃、中央アジアの乾燥地域では40℃である。
この法則に照らし合わせて考えるならば、赤道直下の地域では緯度全体の気温年較差は0℃である。半減しても倍加しても同じく0℃なのだから、沿岸部も内陸部も変わらないことになる。低緯度地域で緯度全体の気温年較差が2℃ならば、沿岸部で1℃、内陸部で4℃となり、結局ほとんど差はみられないことになる。
気温年較差についてはまず緯度の違いを絶対視し、海洋性気候と大陸性気候については後から考えること。
問4 ①
写真はないが、文章だけで解いてみましょう。
カ;オアシス農業の風景。伝統的な灌漑農業であり、旧大陸の乾燥地域(西アジアや北アフリカ)で行われている。Jが該当。
キ;ヤクはチベット高原に分布する家畜。ただし、本問ではチベット高原は含まれていない。かつて「ヒマラヤ山脈=ヤク」もセンターで問われたことがあるので、ヤクの分布域についてはもっと広げて考えていいと思う。中央アジアのKが該当するとみていいだろう。農業区分の「遊牧」地域である。
ク;地下水を使った穀物の栽培といえば、円形の農場が印象的なセンターピボット農法が真っ先に想像できるんじゃないかな。最近はサウジアラビアでもメジャーな農業方式となっているけれど、やっぱりアメリカ合衆国が本家本元ではあるよね。テキサス州などグレートプレーンズ(中央平原)にとくに多く見られるものの、西部の乾燥地域でこれが行われていたとしてもおかしくはないだろう。Lがクとなる。
問5 ①
まずアジアを判定しよう。世界全体の米の生産の90%がアジアに集中している。アジアは、世界の総人口の60%を超える45億人が住む地域であるが、それでも人口1人当たりの生産量を考えてみても、米の値は大きくなるだろう。③がアジアである。
さらに北アメリカ。三大穀物の中で最大の生産量を誇るトウモロコシ。とりわけアメリカ合衆国での生産が圧倒的。飼料や油脂原料、さらにはアルコール燃料に加工されることも。トウモロコシの値が際立って大きい②が北アメリカ。
残った①と④だが、ここは小麦に注目しよう。商業的な農業が営まれ、小麦の輸出がとくに多いヨーロッパと北アメリカ。それに対し、商品作物の栽培が優先され、小麦をはじめとする自給作物については輸入に依存するアフリカ。人口1人当たりの生産量についても、ヨーロッパは高い値となり、アフリカの値はとりわけ低い。①がヨーロッパでこれが正解。④がアフリカである。
それにしても驚くべき統計結果である。一般的に「農業がさかん」と思われているアフリカだが、それはプランテーションによる商品作物がさかんなだだけであり、自給作物の栽培は全く十分でない。農産物輸出地域である欧米の先進国が、アフリカの生命を握っているという構図。
問6 ①
ロシアは人口1.4億人。アフリカやラテンアメリカに植民地を持っていたわけではないので、ロシア語を公用語とする国も限られている。①が正解。
②は英語。アメリカ合衆国(3億人)やイギリス(6千万人)など。
③はフランス語。フランス(6千万人)など。アジアやアフリカにフランス語を公用語とする国は多いが、それらのほとんどは伝統的な言語(ベトナム語やアラビア語)を母語とし、フランス語は第二言語となっている。
④はスペイン語。メキシコ(1億人)やアルゼンチン(4千万人)など。カリブ海の島嶼国など含めると、国の数は極めて多い。
問7 ③
観光地図というものが正式にあるわけではなく、観光案内所や駅においてあるようなイラストを交えたパンフレットのようなものを考えればいい。
①;「1/25000」と「1/50000」を比較。(1/25000)>(1/50000) であるので、2万5千分の1の方が縮尺が「大きい」。
②;正距方位図法は航空図。大圏航路を表す。
④;「土地利用」というテーマ(主題)を扱っているので、「主題図」である。一般図とは、2万5千分の1地形図や5万分の1地形図など。
問8 ③
底辺に注目すればいいんじゃないかな。
X;底辺にはほとんど等高線はみられず、とくに西端から中央まではほぼ平坦とみていい。チが該当。
Y;底辺に沿って多くの等高線がみられ、複雑な地形であることがわかる。タが該当。
Z;同じく底辺に注目。西半分は平坦もしくは緩やかな斜面であるが。東半分は等高線が混み合い急斜面がみられる。ツが該当。
<第2問>
問1 ③
日本付近には4枚のプレートが集まっている。東日本は北アメリカプレート、西日本はユーラシアフレート、伊豆半島や小笠原諸島がフィリピン海プレート、そして東方の海底が太平洋プレート。
アは日本海溝に沿う地点であり、太平洋プレートと北アメリカプレートのせばまる境界である。まずこれが該当。海洋プレートである太平洋プレートが西に移動し、大陸プレートである北アメリカプレートの下にもぐり込むことによって海溝が形成される。深度の深い大規模な地震が頻発するエリアである。
さらにエは南海トラフに沿う地点であり、フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界である。これも該当し、正解は③。トラフとは小規模な海溝と考えてほしい。南海トラフにおいては地震の発生回数は多くないが、過去に巨大な地震が発生したことがある。
イとウは活断層に沿って発生した地震。最近の熊本の地震も断層活動によって生じたものであるが、海溝に震源があるものに比べると、震源の位置が浅い。ただし、直下型の地震となることがあり、その場合は地震の規模(マグニチュード)に比べ震度は大きくなり、被害が拡大するおそれがある。
問2 ②
まず「積雪日」から判定。日本海側や北海道で「多」、沖縄や九州で「少」を選べばいいだろう。③が積雪日。
さらに「強風日」。台風の来襲が多い沖縄は当然「多」となるだろう。太平洋の沿岸地域にもいくつか同様の場所がみられるはずだ。さらに強風といえば、冬の日本海側の季節風を忘れてはいけない。日本海に沿って「多」を探してみよう。一方、風が弱いのはどこだろうか。周囲を高い山で囲まれた長野県など中央高地がその候補となるはずである。本州内陸部の「少」もポイントになる。④が強風日。
残った①と②であるが、「多降水日」については、逆に降水量が少ない地域を考える。日本全体でみれば、年降水量の平均は1500ミリであるが、冷涼な北海道、山岳で周囲を囲まれた中央高地、そして中国山地と四国山地で囲まれ湿った風が届きにくい瀬戸内地方については、いずれも年降水量が1000ミリ程度で比較的雨の少ないエリアとなっている。①と②の明確な違いは、瀬戸内地方が全体に「少」となっている①に対し、「多」となっている②。「多降水日」を①と考え、「真夏日」は②となる。②で実は重要なポイントとなっているのは、関東地方の内陸部である。乾いた熱風が入り込み、埼玉県北部(熊谷市)などはとくに猛暑に襲われる地域として、よくニュースでも取り上げられている。
なお、①については、豪雪地帯である日本海側地域でもっと「多降水日」が多くなってしかるべきとも思うのだが、雪の場合、台風や梅雨前線がもたらすような集中豪雨的な降り方はしないということなのだろう。その代わり、断続的に降り続き、月単位や年単位で考えた場合は、多降水となる。
問3 ③
A;誤り。輪中集落(周囲を堤防で囲む)は洪水対策である。
B;正しい。砂防ダムである。地形図では「堰(せき)」の記号で表される。山間部の河川上流に建設され、土石流や火砕流が下流側で流下するのを防ぐ。
問4 ⑤
液状化は土壌に豊富に水分が含まれた低地で主に発生する。埋立地や干拓地、湿地など、現在は直線化された河道であるが、かつては大きく蛇行しており、流路も複数に分かれていたことを考えよう。堤防の外側に大きく張り出し、液状化の発生域とほぼ一致するクが「旧河道」である。かつての河川の一部であり、現在は干からびて表面に水はみられないが、低地となっており、じめじめした地形となっている。
さらに「自然堤防」であるが、これは河川沿い(だけ)にみられる地形。河川の氾濫時に土砂が周囲へと流れ出し、堆積したもの。かつて河川だったクの周囲にみられるカが自然堤防である。
河川の流れとは無関係に存在するキが「台地」。高燥(低湿の反対。周囲よりやや高く、乾いた地形)であるため、液状化の被害からは免れている。
問5 ?
地形図がないので判定できず。ただ、解答は③っぽいけどなぁ。津波被害があったわけですが、③については津波とは全く関係ないような。他のことはいかにも行われていそうだけど、③はないんじゃない?
<第3問>
問1 ②
ブラジルは茶の栽培国というわけではない。
①;アルゼンチンのパタゴニア地方は、乾燥地域。偏西風がアンデス山脈にあたる風下側斜面にあたり、降水量が少ない。乾燥に適応した家畜である羊が粗放的に放牧されている。
③;スペイン南部のバレンシア地方では、温暖な気候を利用してオレンジ類の栽培がなされる。降水量が少ない地域であるが、灌漑によって農業用水を補っている。
④;黒海北岸のウクライナは、肥沃なチェルノーゼムが広がり、企業的穀物農業が行われている。小麦やトウモロコシ、ヒマワリなど。
問2 ?
写真がないので判定できません。トルコの家屋とかどんなんか見当つかないなぁ。
問3 ?
これもちょっとわかりません。ただ、おそらく解答は④。
①;ヴァラナシが登場するならば、「礼拝」ではなく「沐浴」が登場するはず。ヒンドゥー教徒がガンジス川に沐浴する様子は写真問題で何回か取り上げられている。
②;ブッダガヤは確かに聖地であるけれど、とくに礼拝って感じでもないんだよなぁ。
③;イスラム教とはそもそもメッカ以外でもどこでも礼拝するかなぁ。とくにメッカという都市名にこだわる必要がない。
以上より、おそらく答えは④。エルサレムに「嘆きの壁」っていうユダヤ京都のための礼拝の場所があり、そこで「祈りを捧げている」ユダヤ教徒が撮影されているんじゃないかな。
問4 ①
「低湿地」で栽培に適するのは、米やジュートなど。天然ゴムは熱帯の低地で栽培されるものだが、樹木だから「低湿地」に植えたら根っこが腐ってしまうよね。
②;ナンシャー諸島。沿岸国(中国やフィリピン、ベトナム、マレーシア)の間で領有を巡る争いがある。
③;マラッカ海峡。西アジアから日本へと向かうタンカーの通り道として非常に重要だが、水深が浅いので座礁事故の危険性も。危ない!
④;ミャンマーからマレー半島、スマトラ島(Yの島)からこのジャワ島などはアルプスヒマラヤ造山帯に属する新期造山帯の地形。スマトラ島やジャワ島の南岸には海溝が走り(スンダ海溝)、これらの島のは火山も多い。なお、インドネシア東部は環太平洋造山帯とアルプスヒマラヤ造山帯が交わり、複雑な形状の島が多い多島海となっている。Zの北西にあるスラウェシ島(Kのような形となっている)が代表例。
問5 ③
東南アジアは、国ごとに信仰される宗教の違いがよく出題される地域であるが、本問はやや特殊な例外的な地域が問われている。地理A特有のパターンと思うので、地理B受験生にとってはノーマークでも構わないが、参考までに知っておいて欲しい。
Xのミンダナオ島は、カトリック教徒がほとんどであるフィリピンにおいて、例外的にイスラム教が信仰される島。西部に住むモロ族は、アラブ人の承認たちによってイスラム教が伝えられ、現在に至っている。ミンダナオ島はバナナ栽培の中心地であり、とくに日本へと輸出されている。
Zのバリ島も例外的な地域で、ここはイスラム教徒が多数を占めるインドネシアの中のヒンドゥー教の島。古い時代はこの一帯はヒンドゥー教が広まっていたが、やがてアラブ商人たちが交易(付近では香料が生産されていた)で訪れるうちにイスラム化が進み、東南アジア島嶼部ではイスラム教が広く信仰されるようになった。しかし、バリ島は火山島で周囲は遠浅の砂浜海岸が続き、交易に適する港がなかったため、アラブ商人たちの根拠地がつくられず、イスラム化が回避され、ヒンドゥー教が保たれた。現在は日本やオーストラリアからの訪問客も多い観光地として栄えている。
以上より、正解は③。Yは消去法でカとなる。スマトラ島であるが、インドネシアでは近年アブラヤシ農園の拡大によって熱帯林が失われている。
問6 ①
シンガポールは、先住民の言語マレー語、旧宗主国の英語に加え、移民の言語である中国語とタミル語(インド南部)も公用語。「中国語が公用語の一つ」になっている。「華人が人口の多数を占めている」も正しい。
②;バンコクは急激な都市化が進む都市であるが、「運河の町」としても知られ、伝統的な水上マーケットは観光地ともなっており、賑わっている
③;ベトナムの旧宗主国はフランスだが、積極的に布教をしたわけではない。仏教国である。なお、日本と同じ大乗仏教(世界に大乗仏教の国は日本とベトナムの2つだけ)なので、知っておいてもいいかもね。
④;鉱山(すず)やプランテーション(天然ゴム)の開発がかつてさかんだったが、流入したのは中国やインドからの移民。現在マレーシアは多民族国家となっている(でも公用語はマレー語だけなのだ。シンガポールとの違い)。
問7 ③
実はこれ、全くわからない。っていうか、そもそも問題として成立していなくない?だって、サとシって同じじゃん???
下に表にしておきますね。
| サ | シ | ス |
高 | マレーシア | マレーシア タイ インドネシア | カンボジア ラオス ミャンマー |
中 | タイ インドネシア フィリピン | フィリピン ベトナム ミャンマー | ベトナム タイ インドネシア |
低 | ベトナム ミャンマー ラオス カンボジア | ラオス カンボジア | フィリピン マレーシア |
(なお、シンガポールとブルネイは図から判別できないので、本問の分析においては「存在を無視」して考えています)
スは難しくないと思う。1人当たりGNIに反比例しているので「農業就業者比率」になる。1人当たりGNI(1人当たりGDPと同じ)が低い低所得国は、農業を主とする第一次産業に就業する人の数が相対的に多い。
ただ、ここからは無理。上の表をみればわかるように、高中低の区分の基準が違うだけで、サとシは全く「同じ」なのだ。だから君たちは判定の必要なない。これは捨て問です。
とはいえ、捨て問を切り捨ててしまってはたつじん的には無責任すぎる(涙)。なんとか解釈しながら、正解にたどりつきましょう。
注目するべき指標は「GDPに占める製造業の割合」なんですよ。製造業いわゆる工業のことなんですが、この値が高い国は間違いなく工業国であり、とくに付加価値の高い(値段が高いって考えていいです)工業製品を製造していることを考えるといい。例えば近年工業化が著しいとはいえ、衣類工業がその中心であるベトナムなんかは当然この値が低いと思っていいよね。逆に電気製品や自動車の組み立て、さらに先端産業(マレーシアにはサイバージャヤという先端産業の集積地区がある)が発達するタイやマレーシアで、「高」の水準になると思う。
ただし、ここでポイントがあって、そのマレーシアなんですが、実は決して「製造業だけに偏った国ではない」んだよね。例えば、日本がマレーシアからさかんに輸入するものに「天然ガス」や「合板(木材)」がある。マレーシアは世界有数の「パーム油」の生産国であり。重要な輸出品にもなっている。どうだろう?意外にマレーシアって、GDPに占める製造業の割合って「極めて高い」っていうわけでもないのでは?
それに対し、タイってどうだろう?もちろん米や天然ゴムの輸出が多い国ではあるが、近年は日系企業の進出によってとくに「自動車」の生産が拡大している国である。その生産は世界9位!タイこそ、GDPに占める製造業の割合が「極めて高い」となるのではないか。
1人当たりGNIは絶対に知っておかないといけないので、「マレーシア(10000ドル)>タイ(5000ドル)>それ以外の国」であることは明らか。
これに対し、GDPに占める製造業の割合は「タイ>マレーシア>それ以外の国」となるはずなのだ。マレーシアだけが「高」となっているサが1人当たりGNI、タイも「高」となっている(つまり、「タイ>マレーシア」となっている可能性がある)シがGDPに占める製造業の割合となり、正解は③となる。
これで当たってるんか???ドキドキしながら解答を見ると。。。正解はまさしく「③」でした。良かった〜(笑)
ただ、振り返ってみるとこの問題、やっぱり難しいや。「タイは絶対に製造業メインの国や!」とうネタ一発で解いてるんですが、しかしインドネシアをメインで考えてみるとかなり迷う。インドネシアこそ資源国だよね。石炭の世界最大の輸出国であり、日本の重要な天然ガスの輸入相手であり、そしてOPECに加盟する産油国でもある。農業もパーム油の世界最大の生産国であるだけでなく、コーヒーやカカオ、天然ゴムなど商品作物の栽培もさかん。こうした国で「GDPに占める製造業の割合」が「高」ってなるのかなぁ。実はすごく疑問なのです。いやぁ、本問は確証となるデータに欠ける「解答不能」の問題と見なすしかないんじゃないかな。
<第4問>
問1 ①
木材伐採量を人口や経済規模と結びつけ、さらに「薪炭材(燃料にする。ガスや電気のかわり)=発展途上国、用材(パルプなど)=先進国」とヒントとする。
アは総量が多く、薪炭材が多いので「アジア」。イは総量が少なく、薪炭材が多いので「アフリカ」、ウは用材が多いので先進地域の「北アメリカ」。
問2 ①
これ、おもしろいですね。良問。
まず③が消える。新期造山帯ではあるが、アルプス山脈は褶曲(しゅうきょく。地層が大きくねじれること)山脈で火山は存在しないので謝り。
さらに④も間違い。エルニーニョ現象は「海水温が上昇」することで、海面が上昇することではない。っていうか、モアイ像って倒壊してるのね。たいへんだ!
さて、残った①と②だが、ギリシャは比較的降水量の少ない地域に位置し、「集中豪雨」っていうのが怪しい。そもそも夏は中緯度高圧帯の影響によって雲が発生しにくいので、日本とは違って、台風のような熱帯低気圧の影響はないだろうし、激しい上昇気流による夕立(スコール)も降らないだろう。アクロポリスのような歴史的建造物の崩壊の原因は、それが石灰石や大理石によってつくられていることから「酸性雨」の影響を考えるのが最も妥当だと思う。
②も消えて、①が正解。オーストラリア大陸北東岸の沖合に位置するグレートバリアリーフ。この海域は暖流(東オーストラリア海流)が流れ、熱帯低気圧サイクロンの発生も多い。暴風や波浪(ようするに風や波が強いっていうこと)の影響も強いのでしょう。これによってサンゴ礁が損傷しているかどうかはわかりませんが。
問3 ④
フェアトレードに関する話題かな。「より高い価格」が正しい。
問4 ②
これ、難しいな。1人当たりGNIの高い地域において、衛生的なトイレは普及していると考え、④がオーストラリアなど「オセアニア」、3がブラジルやメキシコなど「ラテンアメリカ」と解釈する。①と②についても同様に、より低所得国が多いサハラ以南のアフリカが①、南アジアを②と考える。南アジアは急激な経済成長(インドは世界有数の工業国である)により、衛生的なトイレの普及率が大きく上昇している。
問5 ①
「金融・保険サービス」は1人当たりGNIの高い国で発達。スイスはとくに1人当たりGNIが高い国であり、金融・保険業は発達していると考えるべき。さらにアルプス観光を中心とした観光国であり、「観光サービス」は少なくともプラスになっているだろう。①が正解。
さらにシンガポールも考えてみよう。1人当たりGNIが高いのはカナダとオランダも同様だが、シンガポールの場合、周辺諸国の値が低いため、とくにこの国にのみ金融業が集中し、「アジアの中心」となっている。さらにシンガポール港は世界屈指の取扱量を誇り、「輸送サービス」も発達しているとみていい。②がシンガポール。
③はオランダかな。上述のように1人当たりGNIは高いものの、周辺諸国と比べればそうでもない(やっぱりスイスが高いわけだ)。ライン川河口のユーロポートはヨーロッパ最大の港湾であり、「輸送サービス」は多いんじゃないかな。
残った④がカナダ。となりにアメリカ合衆国があるので、金融・保険は厳しいよね。ただ、観光がさかんな国っぽいんだけど「観光サービス」が大きくマイナスなのがよくわからないんやな。
問6 ③
いわゆるデジタルディバイド。インターネットを利用できる人や地域、そうでない人と地域との間で情報格差が拡大する。
問7 ②
F・・・輸入が多いので、資源国である。アラブ首長国連邦・サウジアラビア。
H・・・輸入も輸出も少なく、日本との経済交流がさかんではない。イギリス・フランス
Gは消去法で韓国・タイ(おそらくとくに総輸出額が多い方が韓国)。
問8 ⑥
旅客輸送の問題であるが、航空機だけでなく、鉄道や自動車による移動も考慮に入れるべきである(船舶もあるが、旅客輸送は極端に少ないので、さほど重要ではない)。まず「首都間距離」に注目。「渡航者数上位10か国」に入るような国は、政治経済的にも非常に緊密な関係を持つ国であろう。ドイツについて考えた場合、EU諸国が頭に浮かぶ。EUは、国境線を超えた移動が自由化されており、当然渡航者数が多いだろうし、陸づたいでいろいろな国に行くとすれば、「渡航者数上位10か国」の首都との距離は、極めて近しいことが予想される。「首都間距離」がほぼゼロである国が多く存在し、最も遠い国でも2千キロメートルほどである(北海道北部から九州南部までが約2千キロメートル)。狭い範囲に国が集中し、さらに「渡航者数」も多いことから(自動車などによる「気軽」な移動もあるのだろう)、キをドイツとする。
カとクについては、全体として渡航者が少ないカと、とくに2つの国が突出しているクという違いがある。例えば、アメリカ合衆国はどうだろうか。NAFTA(北アメリカ自由貿易協定。アメリカ合衆国とカナダ、メキシコが調印)は、EUとは違い、ヒトの移動は自由化されていないが、例えばアメリカ合衆国によって最大の貿易相手国がカナダであり、メキシコとの貿易額も多いことからわかるように、経済的なつながりはEU圏のそれに等しい。例えば、クにおいて最も「首都間距離」が近い点をカナダとし、アメリカ合衆国からカナダへの渡航者が多いことを想像する。また4千キロメートルの国が最も渡航者数が多くなっているが、これはイギリスではないだろうか。アメリカ合衆国東部から大西洋を渡った距離がこれぐらいである。クをアメリカ合衆国とする。
それに対し、日本と周辺国の関係は、EU圏やNAFTA圏ほどには緊密ではない。もちろん近年は経済的なつながりも強くなり、文化的な交流も活発化しているが、渡航者が際立って多くなるとは思えない。むしろ、日本からアメリカ合衆国への移動が多いのではないか。なるほど、カを日本とすると、「首都間距離」が近い2つの点は韓国と中国であると思われ、さらに1万2千キロメートルに近い点も渡航者数が多くなっているが、これがアメリカ合衆国であろう。クの図にも同じ距離に点が打たれており、こちらは日本なのだろう。渡航者自体は、日本からアメリカ合衆国に向かう方が、反対よりも多くなっている。
以上のことを総合的に考え、正解は⑥である。
(第5問は地理Bとの共通問題のため、省略します)
解答不能も含め、公式発表の解答および配点を載せておきますね。
[1]① [2]② [3]③ [4]①(2点) [5]① [6]①
[7]③(2点) [8]③
[9]③ [10]② [11]③ [12]⑤ [13]③
[14]② [15]⑤ [16]④ [17]① [18]③ [19]① [20]③
[21]① [22]① [23]④ [24]② [25]① [26]③ [27]② [28]⑥
[29]① [30]③ [31]① [32]④ [33]④ [34]④