2026年地理総合、探究[本試験]第1問・解説
2026地理総合探究本試験
第1問 問1 解説
北アフリカ・モロッコ内陸部の写真(建物+ナツメヤシ)から、乾燥地域の生活文化と農業を組み合わせて問う問題です。共通テスト(とくに地理総合・地理探究)らしい、複数ジャンルを重ねた出題です。本文に「乾燥地域」とは書いていませんが、モロッコ内陸部という位置と写真の風景から十分に推察できます。
下線部①〜④のうち、適当でないもの(誤り)は④です。
① 日干しレンガ → 正しい
写真aの建物の主材料は日干しレンガです。
乾燥地域では樹木が乏しく、とくに砂漠は植生がほとんどありません。湿潤地域なら木材や竹が使われますが、ここではそれが使えません。一方で雨が極端に少ないため、焼かずに太陽で乾かしただけの「日干しレンガ」で十分もちます。大雨が降れば崩れる心配はありますが、その心配がほとんどない気候だからこそ一般的な建材になっています。
乾燥地域の建築材料として、日干しレンガは必ず押さえておきましょう。
② 窓が小さい理由 → 正しい(主目的は外気遮断)
窓が小さいことは絶対に押さえるべきポイントです。
最大の理由は、外気温が高いので暑い空気を建物内部に入れないことです。扉の数も少なくなっています。選択肢は「砂やほこりの侵入を防ぐこと」と書いてあり、それも間違いではありませんが、一般的に最も重視されるのは「暑い外気を入れない」ことです。設問では「目的の一つ」とあるので、②は誤りにはなりません。
③ ナツメヤシは伝統的にオアシスで栽培 → 正しい
写真bはナツメヤシです。乾燥地域(とくに砂漠)で行われる伝統的な灌漑農業をオアシス農業と呼びます。水源は湧き水(オアシスそのもの)のほか、外来河川や地下水路(カナートなど)も使われます。
ウィットルセーの農牧業区分でも、オアシス農業は独立した類型として出てきます。この選択肢はオアシス農業を強く意識して作られています。
(参考:ウィットルセーの主な区分)
焼畑農業/オアシス農業/遊牧/集約的稲作/集約的畑作/酪農/混合農業/地中海式農業/企業的穀物農業/企業的牧畜/プランテーション農業/園芸農業 など
④ ナツメヤシの実は大部分が工業用として輸出 → 誤り(これが正解)
ここが本問の核心です。ナツメヤシとアブラヤシを対比して覚えます。
ナツメヤシ | アブラヤシ | |
気候 | 乾燥地域 | 湿潤地域(熱帯) |
作物の性格 | 自給作物(食べ物) | 商品作物 |
農業形態 | オアシス農業 | プランテーション |
主な生産地 | エジプト・イラン・パキスタン・サウジアラビアなど(砂漠かつ人口が多い国) | マレーシア・インドネシア |
利用 | 実(デーツ)を食用。高カロリー・高栄養 | パーム油。食用油・加工食品・洗剤・代替エネルギー |
ナツメヤシの実はデーツと呼ばれ、砂漠の人々の重要な食糧です。スーパーやドラッグストアでも見かけるようになりました。工業用として大部分が輸出される、というのはアブラヤシ(パーム油)の説明です。
アブラヤシ側の補足:
- マレーシアでは天然ゴムのプランテーションがアブラヤシに植え替えられた
- インドネシアでは熱帯林減少の一因になっている
- 日本の食用油でもパーム油の割合が高い
- バイオ燃料(石油代替)としても利用が進んでいる(アメリカ=トウモロコシ、ブラジル=サトウキビ、東南アジア=パーム油、という対比も出題されやすい)
したがって「大部分が工業用として輸出されている」はナツメヤシには当てはまりません。④が誤りです。
まとめ
- ①日干しレンガ・小さな窓 → 乾燥地域の建築の定番
- ③ナツメヤシ → オアシス農業の代表作物(自給)
- ④はアブラヤシの説明をナツメヤシに当てはめた誤り
答え ④
ナツメヤシ(乾燥・自給・オアシス・デーツ)とアブラヤシ(湿潤・商品・プランテーション・パーム油)の対比は、今後の問題でもよく出ます。セットで覚えておきましょう。
第1問 問2 解説
乾燥・半乾燥地域では生活用水の確保が大きな課題です。西アジア周辺の地形図(標高の高いところほど色が濃い)の地点ア・イ・ウと、水の利用を述べた文A〜Cを組み合わせます。
正解は⑤(ア=C、イ=A、ウ=B)
文章は全部読まず、キーワードだけ拾うのが効率的です。
地点の位置を押さえる
ア
ペルシャ湾の北西奥、低地。ティグリス川とユーフラテス川が流れるメソポタミア(イラク)。四大古代文明の一つです。
イ
ペルシャ湾沿岸。カタール、アラブ首長国連邦、クウェートなどが並ぶ一帯です。
ウ
ユーラシア大陸内陸部。天山山脈周辺〜中央アジアのイメージです。
A・B・Cのキーワード
A
「エネルギー資源が豊富」+「施設内で淡水化した水」
→ 石油(オイルマネー)で海水淡水化プラントを動かしている地域。
B
「高山の雪や氷河が季節の気温変化で融け出す」+「内陸河川」
→ 山の雪解け水が山麓に出てくる内陸河川。
C
「上流の湿潤地域を水源とする外来河川」+「ダムや水路」
→ 乾燥地を貫く外来河川の水を灌漑に使う。
組み合わせ
ア = C(外来河川)
アはティグリス・ユーフラテス川の流域です。上流の湿潤地域で貯えた水が乾燥地に運ばれてくる川を外来河川と呼びます。雨(天水)がほとんどない乾燥地では、この水が灌漑農業と生活そのものを支えています。ダムや水路で取水する、という記述もそのまま当てはまります。
外来河川は頻出です。最低限これだけは押さえてください。
- 黄河(中国)
- インダス川(パキスタン)
- ティグリス・ユーフラテス川(メソポタミア)
- ナイル川(エジプト)
- ニジェール川
- コロラド川
- マリー川(オーストラリア)
外来河川は複数の国を流れることが多く、上流でダムを造ると下流の水利用が困る、という国際問題にもなりやすいです(本試験の別問でも関連が出ます)。
イ = A(淡水化)
イはペルシャ湾岸の産油国です。1970年代以降のオイルマネーで豊かになり、一人当たりGNIが高い地域です。
- 面積が狭いカタール、UAE、バーレーンなどは人口密度も高く、一人当たりGNIが極端に高い
- サウジアラビアは面積も人口も大きめなので、一人当たりGNIは2〜3万ドル程度(世界的には高いが、湾岸小国ほど突出しない)
- イラン(ペルシャ側)は石油は採れるが人口が多く、湾岸アラブ諸国ほど豊かではない
雨が極端に少ないため、豊富なエネルギーを使って海水淡水化を行い、その水を主に使っています。Aの「エネルギー資源が豊富であることを背景として、施設内で淡水化した水」がそのままイです。
ウ = B(内陸河川・雪解け水)
ウは内陸部の高山(天山山脈など)の麓です。高山の雪や氷河が夏に融け、流量が増える内陸河川の水を使います。山麓にオアシスができ、オアシス都市が立地し、シルクロード(天山北路・天山南路)が通った地域です。
内陸河川・内陸湖の考え方も覚えておくとよいです。
- 海へ流れ出ない湖を内陸湖という(カスピ海、死海など)
- その湖に注ぐ川、または途中で干上がってしまう川を内陸河川という
- カスピ海は海面より低く、当然海へ流出する川はない
カナート(イランなど)のような地下水路も乾燥地の水利用として重要ですが、この文Bは雪解け水による内陸河川を指しています。
まとめ
地点 | 場所 | 水の利用 | 文 |
ア | メソポタミア(イラク) | ティグリス・ユーフラテス(外来河川)+ダム・水路 | C |
イ | ペルシャ湾岸産油国 | オイルマネーによる海水淡水化 | A |
ウ | 天山山脈周辺の内陸 | 雪・氷河の融水による内陸河川 | B |
答え ⑤
必ず残す知識は次の2点です。
- 外来河川(四大古代文明の川+ニジェール・コロラド・マリー)
- ペルシャ湾岸諸国(オイルマネー・高い一人当たりGNI・海水淡水化)
ウの雪解け水・内陸河川は「なるほど、そういう水の使い方もある」程度で十分です。
第1問 問3 解説
雨温図と生活文化の特徴から、南米地図上の地点①〜④のどこかを選ぶ問題です。
正解は②(ボリビアのアンデス高原/ラパス付近)
気候グラフ問題では、まず降水量ではなく気温を見ます。
気温から分かること
1. 南半球である
1月の気温が高く、7月が低いので南半球です。
地図上では①だけが北半球なので、①はここで消えます。残るのは②③④です。
2. 気温年較差が極端に小さい(5℃未満)
年較差が数度しかありません。これは低緯度の特徴です。
ここで重要なのは次のルールです。
- 低緯度では、沿岸でも内陸でも気温年較差は小さい(季節による日射量の差がほとんどないため)
- 「沿岸=年較差小、内陸=年較差大」は中緯度の話
目安の数字も覚えておくと便利です。
地域 | 気温年較差の目安 |
低緯度(沿岸・内陸を問わず) | 数度〜5℃前後 |
中緯度の海洋性気候(サンフランシスコ、ニュージーランド、ポルトガル、沖縄など) | 約10℃ |
東京 | 約20℃ |
北海道 | 約30℃ |
今回の年較差は5℃未満なので、低緯度で間違いありません。沿岸か内陸かは、この数字だけでは判断しません。
3. 低緯度なのに気温が通年10℃前後 → 標高が高い
低緯度の低地なら平均気温はだいたい30℃弱になります(砂漠の真昼は別ですが、月平均は通常30℃を超えにくい)。
それが通年10℃未満なので、約20℃低い=標高およそ4000mです。
(目安:標高が100m上がると約0.5℃下がる → 20℃差 ≒ 4000m)
低緯度+標高4000mといえば、南米では**ボリビアのアンデス高原(アルティプラーノ)**です。ラパス付近がこれに当たります。地図上では②です。
南米の位置関係(必ず空で描けるように)
南米の国は少ないので、位置を確実にします。
コロンビア/ベネズエラ/エクアドル/ペルー/チリ/ボリビア/パラグアイ/アルゼンチン/ウルグアイ/ブラジル(国土の半分近く)
ボリビアは内陸国で、大陸の西寄りに見えますが、アンデス山脈そのものの高原にあります。標高4000m級です。テストに非常に出やすい国です。
他の地点のイメージ:
- ① … 北半球。コロンビアなどの高地。南半球のグラフと合わない
- ③ … 南緯25度前後。チリ北部の海岸砂漠(アタカマ)。世界有数の少雨地域
- ④ … パタゴニア。高緯度なので気温年較差はもう少し大きくなる
資料の生活文化も②と一致する
- ジャガイモの栽培・消費が盛ん
ジャガイモの原産地は南米、とくにインカ/アンデス地域です。 - 毛の利用や物資運搬のためにアルパカやリャマを飼う
アンデスの垂直的な土地利用です。- 最も高い帯:雪・氷
- その一段下(3000〜4000m前後):牧草地 → アルパカ・リャマ
- さらに下:ジャガイモ
- もっと下:トウモロコシ
- 最も高い帯:雪・氷
低緯度なので同じ標高帯では季節による作物の入れ替わりが少なく、標高で帯が分かれます。資料の記述はラパス周辺の伝統的な生活そのものです。
ボリビアで押さえておきたいこと
- アンデス高原・内陸国・標高約4000m
- ジャガイモ原産地、アルパカ・リャマ
- ウユニ塩湖が有名。その地下にリチウムが埋蔵され、開発が進んでいる
- 現在のリチウム生産最大はオーストラリアだが、今後ボリビアや周辺(チリ、アルゼンチンなど)が統計に出やすくなる
答え ②
この問いで残す知識は、「低緯度は沿岸・内陸を問わず年較差が小さい」ことと、「低緯度なのに涼しい=標高4000m級のボリビア(アンデス高原)」です。
第1問 問4 解説
アジア周辺の家畜分布(1km²あたり50頭以上)です。xとyは牛と羊のどちらか、右端はヤギです。モンゴルでヤギが増えている理由(空欄E)との組み合わせを選びます。
正解は③(羊=y、E=カ)
前半は飼育分布の読み取り、後半は環境問題への切り替えです。共通テストらしいマルチジャンルの出題です。
x が牛、y が羊
決め手はインドに濃く出ているかどうかです。
インドは牛(水牛を含む)の飼育頭数が世界でも上位です(ブラジルに次ぐ規模、というのが定番の捉え方)。ヒンドゥー文化では牛肉を食べず、牛を大切にします。役畜・糞(燃料や壁材)・乳利用が中心で、とくに乳が南アジアの主要な動物性タンパク源です。
押さえておきたい統計・背景:
- 牛乳生産はインドが世界一(白い革命による流通整備も背景)
- バター生産もインドが上位
- 各家庭が少頭数を飼い、道端の草を食べさせて乳を搾る、という生活サイクルがある
- 湿潤で人口の多い地域に牛が集まりやすい
したがって、インドに広く分布している x が牛、乾燥・内陸寄り(パキスタン、中国北部など)に広がる y が羊 です。
羊・ヤギが乾燥地に強い理由もセットで覚えます。
- 毛が皮膚からの水分蒸発を防ぐ
- 胃が強く、硬い草でも耐えられる(牛は柔らかい草向きで、反芻が必要)
ヤギの図はすでに示されているので、x・yの判別に使います。
空欄Eは「カ」(高級衣料の原料繊維需要の高まり)
モンゴルでヤギの飼育頭数が増えている要因です。
ここで問題のジャンルが切り替わります。単なる家畜統計ではなく、**砂漠化(過放牧)**の話です。
家畜が増える → 草を根こそぎ食べる → 植生が失われる → 過放牧による砂漠化。
砂漠化が起きる場所の考え方:
- 砂漠化=植生がなくなること
- 湿潤地域(森が成立する地域)では砂漠はできない
- すでに砂漠の場所はこれ以上砂漠化しない
- 問題になるのは、木は少ないが草はある半乾燥の草原
モンゴルは草原・遊牧の国なので、砂漠化のリスクが高い地域です。同様にオーストラリアやアメリカのグレートプレーンズも砂漠化の危険が指摘されます。
砂漠化の主な原因(4つ):
- 不適切な灌漑による塩害(オーストラリア・アメリカで典型)
- 過放牧
- 薪炭材の過剰伐採
- 過耕作(土地に負担をかけすぎる農業)
今回の「ヤギが増えた」は明らかに過放牧の方向です。
選択肢を見ると:
- カ 高級衣料の原料繊維需要の高まり
→ カシミヤ(ヤギの毛)。需要が増えて飼育頭数が増えた、という説明として成立する - キ 砂漠化の抑制に向けた対策の広がり
→ 過放牧は砂漠化を進める側。抑制対策なら頭数を抑えるはずで、矛盾する
よってキは誤り、Eはカです。
羊=y、E=カなので ③。
補足(2026年らしい「高級」の流れ)
カの「高級衣料」は、近年の出題トレンドにもつながります。安さ優先の大量輸入(中国の繊維、アメリカの農畜産物など)だけでなく、ヨーロッパやブランド産品のように高くても質の高いものをやり取りする貿易が意識されやすくなっています(チーズ、ハム、ワイン、イベリコ豚、神戸牛をめぐる関税の話など)。モンゴルのカシミヤ需要も、その延長で読んでよいテーマです。
ただし本問の直接の正解根拠は、「ヤギ増=カシミヤ需要」であり、「砂漠化抑制」は過放牧と矛盾する、という点です。
まとめ
項目 | 内容 |
x | 牛(インドに厚い。乳利用・水牛含む) |
y | 羊(乾燥・内陸) |
ヤギ増の理由 | カシミヤなど高級繊維需要(カ) |
キが不可の理由 | 頭数増は過放牧 → 砂漠化を進める |
答え ③
残す知識は、「インド=牛・乳」「乾燥地=羊・ヤギ」「モンゴルのヤギ増=カシミヤ」「過放牧は砂漠化の原因」です。