<[地理A]2025年/本試験・第1問解説>

たつじんオリジナル解説[地理A]2025年/本試験

 

<第1問問1>

ロンドンを通る経線が0度の標準時子午線である。aはそれより9本分東であり東経135度(経線は15度間隔で描かれている)。経度差15度で1時間。時間は東で早く西で遅い。GMT(世界標準時)と比べて9時間進んでいる。(GMT+9)である。

一方、bの経線は西経120度。(GMTー8)である。こちらは8時間遅れている。

両者の差を計算し、(+9)ー(-8)=17 となる。17時間aの方が進んでいる。

 

航空機を介する時差の問題はまず出発地点の時刻を目的地の時刻に改めてしまう。a12月1日17時なので、bはこれより17時間遅れており12月1日0時となる。到着時刻が9時50分なので航空機に乗っていた時間は9時間50分になる。

 

<第1問問2>

アから。北に位置するスタート地点から山頂へと南へと向かっている。進行方向に対し左の崖とは東側の斜面のこと。しかし、アから東へと広がるこの斜面は「下り坂」ではないだろうか。密となっている等高線に示される「950」や「850」の数字に注目。西から東に向かって下っている斜面である。こちらが高くなっている崖ならば岩石が落ちてくる可能性もあるが、下り坂なのでそういった危険性はないだろう。誤りと考えられ、これが正解。

他の選択肢は検討の必要はないが、参考までに。まずイ。谷の反対語は尾根。折り紙でいえば谷折りが谷であり、山折りが尾根。山折りと山折りの間が谷折りとなるように、尾根と尾根の間には谷がある。

尾根や谷の判定は高所から低所に向かって眺めるとわかりやすい。高所からみて、等高線が凸となっている方向に降りていくルートが尾根、逆に凹となっている方向に降りていくのが谷。高所である1253の山頂に目を移してみよう。たとえばここから北に向かうルート(ア)と南に向かうルート(ウ)がいずれも等高線の出っ張った方に向かっていることがわかるだろうか。「等高線が凸となっている方向」に降りる経路となっている。これが尾根。山折りとなっている。

これに対しイのルートはどうかな(問題の指示では登る方のルートだが、下るルートとしてみても問題ないよね)。1253から東へルートは進むが、凸の方向には降りていない。むしろ凹なんじゃないかな。標高1000mまでは急斜面が続くが、そこから下はやや等高線の密度が粗くなっている。この部分ならばイのルートが明らかに「谷折り」を通過しているのがわかるのではないだろうか。北の1026の峰と南の936の峰。それらの尾根の間を通る谷、それがイの経路である。上方から見て等高線の凹の方向へとひたすら下っている。イは谷線であり、これが正文。

ウも見てみよう。こちらは「尾根」となっているようで、さらに「登り」と「下り」がある様子を確認。先にも述べたように尾根は高所からみて等高線が凸の方向に降りていく。1253の山頂から下るルートを確認。さらに南向きだったルートが東へ折れるところにある何重かの閉じた等高線。これも小さな山頂になっているね。小さい文字で何て書いてあるかわからないけれど標高が書かれているようだ。この山頂から、北へ下るルート(1253の山頂方面に向かう)と東に向かうルート(「ウ」の文字の方向に向かうルート)はいずれも等高線が凸の方向に降りており尾根である。山折りだね。

さらに「ウ」という文字とスタート地点の黒点との間にも閉曲線となっている等高線がみられ、やはりここも小さな山頂になっていることがわかる。標高を表す数字や三角点がこの閉曲線の中に示されているね。ここから北西に向かうルート、南東に向かうルート、いずれも下り坂であるが高所からみて等高線が凸の方向に降りており、いずれも尾根であることがわかる。ウの文章の前半「尾根に沿って」は正しい(尾根についてはこのように常に高所から低所に降りていくルートを設定して考えるとわかりやすいよ)。

さらに「登りと下りを繰り返す」ことは問題ないと思う。ウのルートには1253の山頂を含め3つの高所(凸となっている地形)が存在する。ウのスタート地点からまず登り坂となり最初の山頂(閉じた等高線となっているので判別できるね)を越える。しばらく下り坂となるがやがてルートは再び登り坂となり二つ目の山頂に達する。そこを越えると少しだけ道は下り、すぐに三度登り坂となり長い急勾配を登って最後にゴールに達する。これは正文だね。

ラストは選択肢④だが、これは他の選択肢と異なり尾根や谷の判別は不要。単に標高に注目する。4つのルートのゴールである「山頂」は同じなので、比高を考える場合には「始点」だけが大事になる。エから1253の山頂へと至るルートは(ウとは異なり)途中に凸となる地形(山頂)はみられないので、一貫して登り坂であることが分かる。始点の標高についてウを確認してみよう。ウの始点について点のすぐ下の計曲線(太く描かれている等高線。普通の等高線(主曲線)5本ごとに描かれている)をエの方向に辿ってみると、この計曲線とエのルートとの交点は1253の山頂と「エ」と書かれた文字との間となる。エの視点からみれば上方。始点の標高はエが低くウが高い。

さらにここからは数字で判定してみよう。エの始点の南側に「685」の数字がありこれは標高を示す。付近の標高は650mほどだろう。アの始点のすぐそばには「101?」(最後の一桁が読み取れないが、とくに問題ないね)の数字があり、この始点を取り巻く計曲線は1000mだろう。イの始点の北には800mを示す計曲線があり、この計曲線を目安とするとイの付近の標高は700~800mだろうか。始点で比べるとエが最も低く、始点と山頂との比高はエのルートが最も大きい。正文である。

 

<第1問問3>

おもしろい問題。良問ですね。全ての地理学習者にお勧めです。

最もわかりやすいのは12月だろうか。季節は冬であり北西からの季節風が卓越し、日本列島の日本海側は厚い雪雲に覆われる。日本海側地域の日照時間が短くカが該当。また地軸の傾きにより高緯度地域ではとくに昼が短くなり、雪の影響が少ない北海道中部から東部にかけても日照時間が比較的短い。

同じく地軸の傾きを考慮に入れるならば6月は北日本で日照時間が長くなるはず。9月の図も含め4つの図の中で北日本での日照時間の長さに特徴があるのはクなんじゃないかな。北海道東部(これについては後で説明します)で「120~160」がみられるけれど、北海道西部や東北地方の広い範囲で日照時間が最長の「160以上」になっている。これを6月とみていいんじゃないか。またこの時期は梅雨の始まりであり、南日本は梅雨前線に覆われる。九州南部で日照時間が短くなっているのは梅雨のため(沖縄はよくわからないが、おそらく短い数値になっているのでは。沖縄の梅雨は5月後半から6月前半)。

残ったキが3月。全体で北日本でやや短く、南日本で高めの値となっている。9月と共通しているね。なお、9月は秋の長雨や台風の上陸によって多雨であり(日本で最も降水量が多い月は9月である)、キと同じような分布でありながら全体的にはやや日照時間が短めになっているね。

(*)夏の北海道東部で意外に日照時間が短い理由の一つに寒流がある。寒流の影響によって海霧が生じ、日光が遮られることがある。その影響もこちらの図には表れているのだろう。

 

<第1問問4>

文章を解析しよう。①から。「人工の堤防」とある。「人工の堤防」の反対語は「自然堤防」だろうが、自然堤防はわずかに土砂が積み重なっただけの地形でありこういった陰影図においては判別できない(地形図ではたとえば河川の周囲に列状に家屋が並んでいるならば、それが自然堤防の上に自然発生したものであると判定できるが)。シンプルに河川の周囲に盛り上がっている箇所があれば、それを堤防(土手)と考えてしまっていいだろう。後から判定してみよう。

②について。「河川が伏流し、水無川となっている」とある。この図で水無川が判定できるのかな。もし可能ならばこちらも後で河川の表面に水が流れているかどうかを判定しよう。一般にこういった河川は扇状地にみられるので、扇状地が発達している様子を読み取ってもいい。扇状地とは山地と斜面に間にみられる緩い斜面。

③について。「人工的に改変」はよくわからないけれど「丘陵」と「平坦地」を観察すればいいね。

④について。これはどうなのかな。河川の侵食による「崖」は河岸段丘などにみられるね。河川に並行して急斜面が走行している様子を読み取る。河川の上流域にしばしばみられる(河川の流れが急なので土地を侵食する力が強いのだ)。

 

一番怪しいのは④かな。このような陰影図においては土地の起伏がはっきりした地形こそ表現されやすいもので、傾斜地はその代表例。しかも「河川s」の侵食ということは河川sに沿う地形であるはず。

Eに注目してみよう。あれ、ここはそもそも河川sに沿ったものではないよね。遠く離れているし、河川sとEのエリアは並行しているわけではない(むしろ垂直?)。Eの範囲にはたしかにやや起伏のある土地がみられ、これがもしかしたら崖なのかもしれないが、河川sの作用によって形成されたものとは考えにくいんじゃないかな。これが誤り。

 

他の選択肢も検討。そもそも平坦な土地を流れる河川は流路が一定せず蛇行することが一般的。流路が直線化されている時点で少なくともこちらの河川は人工的な流路改変が行われたことは間違いない。どうだろうか?河川sの右岸(下流側を向いて右側。西側の岸)には流れに沿ってはっきりと陰影がみられ、これが堤防なんじゃないかな。①は正文。

また河川sは矢印の下流側では流れが途絶えていないが、それより上流側では「水域」は点在し表面に河川水が流れていない部分が多いことがわかる。②も正文。ここは扇状地なのだろうか。扇状地は目の粗い土砂が堆積した緩い斜面だが、傾斜角度が小さいためこのような陰影図においてははっきりと明示されない。

Dの部分はわかりやすいかな。周囲は丘陵であるが、中央に長方形の平坦な土地がみられる。人工的に削り取られたものであろう。住宅地なのかな。③も正文。

 

<第1問問5>

地盤の液状化は土地が水分を多く含んでいる場合に生じやすい。地震の振動によって地下の水分が表面に持ち上げられる。泥土となり一部では水が噴き上がる。地盤が緩くなるため建物の倒壊も生じる。地下に設けられた土管などのインフラが破壊されることも。

サ~セのうち、明らかに土地が水分を帯びていないところはシである。現在の図ではわかりにくいけrど、過去の地形図ならば明確に等高線が密に描かれており丘陵地であることが分かる。高燥な地形であり、土地は水分を含まない。

 

<第1問問6>

問題文を読解してみよう。図6は日本のある地域である。「流域」とは河川にとって雨水が流入する範囲。周囲を山(尾根)で囲まれており、その内側の水が河川に流れ込む。図6の「ある河川」とは中央の太い黒線で流路が示された河川のことだろう。「地形」も示されている。ただ、地形については先ほども述べたように周囲が山で囲まれていることは明確であり、流域内の山地や高原はさほど規模の大きなものではないだろう。河川は西(北西)から東(南東)に向かって流れているようだ。Xが上流側、Yが下流側。この河川のXに流れ込む水量はあまり多くないはず。Xにおけるこの河川の流域は狭い。少なくともXより標高が高いところからでないと雨水は流れ込まないし、支流が少ないこともこの図から判定できる。

それに対しこの河川のYにおける流域(つまり雨水がYに流れ込む範囲)は広い。ほぼこの図の全域に当たる。Yより標高が高く、さらに周囲を尾根に囲まれた範囲。支流の数も多い。ただ、本問はXとYの流量の違いが問われているわけではないので、あくまで参考程度に。

さらに文章を読み進める。図6中の破線の範囲を中心に大雨が降ったのだそうだ。Xはこの大雨が直撃している。それに対しYは雨に見舞われていない。あくまで上流側で豪雨になったに過ぎない。

これを踏まえて図7を参照。「洪水の危険度の時間変化」が示されている。XとYで先に「危険」な状態になるのはどちらだろう?

それは実際に大雨に見舞われているXだよね。雨が降り始めた瞬間から危ない状態になる。「時間の経過」に注目し、早い段階から「注意・警戒・危険」などの状態になっているチをXと考える。遅れて警戒となるタがYである。ただ、雨は降っていないのに時間を経て「極めて危険」な状態になるのだからよほどの豪雨だったのだろう。

さらに文章を読解。「河川本流」とは図6中の太線でありXもYもこれに沿う。その「水量変化」について「支流からの流入」も大きく関わるのだそうだ。支流を数えてみると源流からXまでは少ないのだが、XからYの間では多くの支流が本流へと流れ込んでくることが分かる。本流の水量もXからYに向かうにつれ、少しずつ増えていくのだろう。なるほど、先ほどの図7でY地点でのみ「極めて危険」な状態となることにはこういった原因があったのだろう。雨が降ったのはX付近だが、莫大な水量が襲いかかるのはY地点なのだ。

さてここからは右岸と左岸の判別である。「中流の地点からYの区間」に限定し、この区間の支流について調べてみる。なお右岸と左岸の違いは「上流から下流を見て」向かって右か左かという意味である。「中流の地点からY」までなら西側が右岸、東側が左岸。右岸からは4本の支流が、左岸からは2本(3本かな?Yの黒点と重なっていて判別しにくい)の支流が、それぞれ本流に流れ込んでいる。

各支流の流れ方を確認しよう。それぞれの支流がどの範囲から雨水を集めているか、つまり流域はどの範囲まで及んでいるかを考えながら図を読解する。

まず左岸。「Y」の文字が書かれている側だね。2本の支流の源流(スタート地点)は「中流」の文字が書かれている辺り。おそらくこの付近にちょっとした小高い地形(凸となっている)があって、「中流」の文字のところで南北に分けられている。北に降った雨は北の川(支流)へと、そして南に降った雨はこの2つの支流へと流れ込む。3つ目の支流(黒点と一致しているので分かりにくいが)は極めて小さな河川。これら支流の流域を全て合わせたとしてもその面積は限られたものになるね。

それに対し右岸(西側)はどうだろう?こちらは支流の数も多いが、そもそも規模の大きな支流もいくつかある。図の南西端の山地を源流とする支流もあり、流路はかなり長い。流域面積も広くなっているね。もちろんこれら支流の流域を合計した面積も極めて大きいものとなり、左岸(東側)より広いことは明らか。流域面積が大きいのは「右岸側」だね。