<[地理B]2025年/本試験・第5問問1解説>
たつじんオリジナル解説[地理B]2025年/本試験・第5問 |
<[地理B]2025年/本試験・第5問問1解説>
[ファーストインプレッション]シンプルな気候判定問題。本年は第5問問1にも気候グラフの問題があったが、そちらがtひょっと捻った形だったのに対し、こちらはオーソドックスな雨温図になっているね。
[解法]北海道の3地点での気候グラフ判定。北海道は広いので地域ごとの気候の違いが明確だね。
まず気温から。ウが特徴的で極めて夏の気温が低い。北海道の太平洋岸は寒流の千島海流が流れ、夏の気温が下がる。北海道東部は夏の気温が十分に上がらないので稲作が不可能になっているね。これが釧路市。
さらにイでは冬の気温がとくに低い。緯度から考えてもいいし(高緯度の旭川は寒いんじゃないか)、大陸性気候と結びつけるのがベストかな。寒暖の差が大きく夏の気温が高い代わりに冬の気温は大きく下がる。第5問問1でも大陸性気候は話題にされたね(シベリア内陸部は西ヨーロッパの沿岸部より冬の気温が低い)。イが旭川市。なお夏の気温が高いので稲の栽培は十分に行われている(北海道は米の生産は新潟県に次いで日本第2位なのだ)。正解は①。
[アフターアクション]
日本地理の問題とも言えるし、気候の基本的な理論を問うた問題ともいえる。あるいは海流の流れも重要かな。いずれにせよ「普通」の問題であるし、こういった問題をしっかり得点することが大切なんだね。
<[地理B]2025年/本試験・第5問問2解説>
[ファーストインプレッション]似たような問題が多いですね。市町村ごとの農産物の生産は地理総合・探究の第2問で豊橋市・東三河地区で登場しているし、土地利用に関する問題も先ほどの第5問で問われていたよね。悪く言えばあまり工夫のない問題だが、良い言い方をすれば過去問でより多くの問題に親しんでいる人にとってはオーソドックスな出題内容であり、経験値が生きる正統派の問題とも言えるね。
[解法]土地利用と農産物を組み合わせた問題。農産物については割合のみではなく実数も大切になるんじゃないないかな。実数すなわち量そのものを示す帯グラフになっている。
図1より3つの町の特徴を考えてみよう。土地利用というか、そのまま農産物の生産が予想されるものである。町境がちょっと読み取りにくいがとりあえず破線がそれに該当するよう。北東部が倶知安町、中央部がニセコ町、西部が蘭越町。倶知安町は「畑・草地など」が多いようだ。一部に「建物など」もみられるが、もちろんこれは農業とは関係ない。「水田」らしきものはないよね。
蘭越町を見てみようか。町の中央を東西に河川が流れているようだ。ここに多くの四角が集まっている。これ、何だろう?ちょっと見ると白い「湖沼など」のようにも思えるのだが、どうなんだろう?図の南東端に見られる四角の集合こそ白く見えないかな。これが「湖沼など」ではないかと思う。ここに地図外にかけて、円形の湖があるのでは?図の範囲ではその北側の半円の部分しか見えていないということで。日本の湖の多くはカルデラ湖(火口湖)であり円形なのだが、とくに火山の多い北海道にはこういった湖も多い。この「湖沼など」もそれに該当するのでは?
この色が「白」と判定できれば蘭越町の河川沿いの四角については「薄いグレー」と判別できるし、これは「水田」なんじゃないか。河川沿いに水田が広がる光景はイメージしやすい。また先ほどの気候グラフの問題(問1)でも触れたけれど、北海道は内陸部から東部にかけては夏の気温が高いので稲作が盛んになっている(これに対し釧路市など東部は寒流の影響によって夏の気温が低く稲作が不可)。河川沿いの沖積平野を中心に水田が広がっており、蘭越町では「米」の生産が多いと思われる。一方で蘭越町には畑など他の農地は少ない。
ニセコ町は「畑・草地など」が中心であるが、そもそも四角の数が少ない。農地の面積そのものが狭いということ。農業が盛んな町ではないのだろう(だからこそ観光業が発達しているのか)。
以上より、米の値が大きいキが蘭越町。残った二つのうち、総生産額が大きいカが倶知安町、少ないクがニセコ町。この二つはいずれも畑が多く、イモ類や野菜の生産が中心である。
[アフターアクション]オーソドックスな問題だからこその良問。過去問に習熟しておけば戸惑うことはなかったと思う。とくに重要だと思ったのは実数と割合の感覚。「稲作が盛ん」、「畑作が盛ん」だけでなく、そもそもの面積の広さ・狭さから生産量の多さ・少なさも考える。何気なく解いてしまっているかもしれないけれど、こういったことはひとつひとつ意識していこう。地理は数字の学問であるが、割合で考えること、実数で考えること、それぞれを意識的に行わないといけない。
ただ、図が見にくかったのはちょっと減点ポイントかな。「水田」と「畑・草地など」だけで良かったよね。「湖沼など」と「畑・草地など」の色が判別しにくかった。「森林・荒地」はそもそも不要だしね(全面を覆っているのかな?)。
<[地理B]2025年/本試験・第5問問3解説>
[ファーストインプレッション]地形図(地理院地図)が大胆に使われた問題。ただし、こういった形式の問題だからこそ出題内容自体はちょっとアバウトというか、簡単なものになっているんじゃないかな。というのも最近使われるようになった地理院地図はカラー印刷(たとえば建物がピンクで彩られる)であるがゆえに試験問題のようにモノクロ印刷になってしまうと判別が難しくなる。詳細な地形図読解は不可能となり、おのずと出題内容はアバウトなものになる。近年はこういった事情もあり地形図(地理院地図)を用いた問題は易化が著しい。
[解法]地形図(地理院地図)や写真が使われた複合的な問題。ちょっと掴みどころがないので、文章から検討してみよう。誤っているものは一つだけなので、いかにも怪しい選択肢や反対語を含むような選択肢(ひっくり返せば正文になるよね)を探してみよう。
まず選択肢①から。「この地形は溶岩が流れてできた」とある。これはちょっと判別が難しいな。おそらく正文なんじゃないかな。
さらに「スキー場の地点bは尾根上に位置している」とある。「尾根」には「谷」という反対語がある。kれはかなり怪しいよね。でもそもそもスキー場って尾根にあるんじゃない?見通しがいいような。谷の中にスキーコースが設けられたりリフトが置かれたりするのってかなり特殊なんじゃないかな。とかいいつつ僕はスキーなんかしないから全く分かりませんが(笑)
選択肢③は「計画的な開拓の歴史が反映」。「計画的」の反対は「自然発生」。これも誤り選択肢の可能性はある。しかし、北海道の代表的な村落(集落)として「屯田兵村」があり、これは計画的に建設されたもの。北海道の多くの都市や町の原型がこれにある。正文っぽいんだけどなぁ。ちなみに今回は集落の問題は第2問問6でもわかりやすい例が登場している。せっかくなので第2問問6も確認しておこう。自然発生の集落の例としてはサ(自然堤防上の集落)とス(扇状地の末端)がある。前者は「水害を受けやすいところでは水害を避けられる場所」に、後者は「水が得にくい場所では水が得やすい場所」にそれぞれ集落が立地している。我々の生活が稲作と結びついているからこそ「水」の存在が重要なのだ。水田に適した低地に住みたいけれど、それでは洪水時に危ない。だからちょっとだけ盛り上がった自然堤防の上に家屋を立てる。扇状地は水が得にくいのでその中央部(扇央)には住みにくい。だからこそ湧水が得られ、そして水田に近い末端(扇央)に村ができるのだ。
シは計画的な集落の例。新田集落だね。新田集落は江戸時代以降であり、それまで居住に適さなかった台地の上などに新しく耕地が開かれる。散村や路村の形を取り、自宅の周囲に耕地が位置することで農作業の利便性が図られている。シの集落は路村形態であるが、道路に添いながらも背後には耕地が近接している。
最後に選択肢④。「これらの木々な、住居を風から守るために植えられた」とある。たしかに樹林が綺麗に一列に並んでいる時(とくに針葉樹であることが多い。針葉樹は一般に背が高い)、防風林として植えられるケースが多々みられる。これはどうなのかな。「蛇行したように木々が連なっている」ことがちょっと気になるんだな。そもそも防風林ならば直接家屋の周囲に植樹してしまえばいい。以前富山県砺波平野のカイニョが出題されたことがあるが、垣根のように家屋を取り囲みいわゆる屋敷森(屋敷林)となっている。もちろん屋敷森にはさまざまな役割があり、夏には日差しを冬には雪を防ぎ、さらに薪炭材の供給源ともなる。とはいえやはり防風の効果も当然あり、富山県など日本海側の地域においては冬の強い季節風を防ぐために家屋の北西側にとくに背の高い樹木が密集して植えられていることが多い。
それに対し、dの写真にみられるような「蛇行したように」並んでいる樹木にどれだけの効果があるのだろうか。そもそもどの家屋を守っているというのだろうか。写真で見る限り、左手前の奥に向かってU字になっている黒い部分が樹木だと思うのだが(他の白い部分は一面の雪なのだろうか)、何に対する「防風」なのか。さらに言うならばDの地形図(地理院地図)についても防風林を示すような「針葉樹林」の土地利用記号は明確ではない(針葉樹だけでなく広葉樹林も見られない)。図5を参照するとDは北が山となっており、北からの風はその山によって防がれているんじゃないか。とくに強い風は冬の北西風であることを考えれば、北に位置する山地の存在は天然の「防風」施設となる。おそらくこれが誤りなんじゃないかな。どうもはっきりしないけれど。
[アフターアクション]曖昧な問題。いちおう正解(誤文)を④としたけれど、他の選択肢についても検討してみよう。
選択肢①について。これは地図(地理院地図)も写真もわかりにくい。北海道には火山が多く、それに関連した地形も多い。代表的なものはカルデラだが、これは爆発時に火口周辺が爆裂もしくは陥没することによって生じた凹地。とくに北海道にはこれに水が蓄えられたカルデラ湖が多いので地図帳がある人は確認しておくといい。屈斜路湖や洞爺湖など湖岸が円形を辿り、その内部の火口が想起される。「ニセコアンヌプリ」という名称があるが、これが火山の名前だろうか。山頂から溶岩が流れることで緩やかな斜面が形成されているようだ。
火口から溶岩や火砕流が流出する様子は2017年地理B本試験第1問問6でも取り扱われているので良かったら参考にしよう。
選択肢②について。「尾根」とあるね。尾根とはいわゆる山折りのこと。高所から等高線が凸の方向に降りていく。図4の地形図(地理院地図)で判定できるだろうか。印刷の都合上、ちょっとわかりにくいんですが、辛うじて読み取れるかな。bの→の先にいくつもの湾曲した等高線が重なっている。bと描かれた方が高所とすれば、高いところから低いところへと降りる際に等高線の凸の方向に向かっていると見ていいんじゃないかな。今ひとつはっきりしないけれど。
選択肢③について。こちらは第3問問6でも集落に関する問題が出題されていることに留意して欲しい。集落に関して出題されやすいのは「計画的」な集落(反対語は自然発生的な集落)。計画的な集落には「条里集落」、「新田集落」、「屯田兵村」の三つがあり、いずれも四方に直行する道路(街路)区画を有し、四角形の耕地区分がみられる。特徴を整理してみる。
条里・・・古代(奈良)/奈良盆地など/塊村/条や里の地名
新田・・・近世(江戸)/台地や扇央などの乏水地、干拓地など低湿地/路村あるいは散村・新田や新開などの地名
屯田兵・・・近代(明治)/北海道/散村/数字や方位を用いた道路名
このうち、Cの市街地は屯田兵村に由来するもの。北部を東西に横断する「北一線」の道路名が分かりやすい。現在は市街地化が進みもともとの村落の形態は分からないが、開発当時(明治初期)は散村形態であり家屋が広い範囲に散らばっていた。家屋の周囲に耕地(農地)が位置し農耕に便利である。なお、屯田兵村は米国中西部の開拓方式であるタウンシップ制を参考にしている。政府が主体となって開発し、四角形の広大な土地が用意される。入植者が送られ、彼らによって農業が営まれる。米国中西部も北海道も、こうした散村形態から発展した都市が多くみられる。
条里集落は古代の計画的集落。奈良時代に当時の朝廷の号令によって全国各地につくられたが、とくに奈良盆地に多い。家屋が無秩序に集まった塊村の形態をとる(集村の一種)。共同作業に適し、村落の中には共同の井戸など。周辺を濠(ほり)で囲む環濠集落のように防御機能を高めたものも。耕地は集落の外側に広がり、家屋と農地との間に距離がある点がデメリット。「条」や「里」などの地名。
新田集落は近世の計画的集落。江戸時代に人口増や税収負担のための米の増産の必要性から新たに耕地が開発された。それまで水が得にくかった扇状地の扇央や台地上の乏水地など。あるいは新たに作られた干拓地など。平和な時代であるので家屋は散在し散村形態となるが、一部には開拓道路沿いに家屋が並ぶ路村形態にも(これはヨーロッパの開拓村である「林地村」と同じ)。路村形態の場合、家屋の背後に短冊状に耕地が開かれ、居住地と農耕地が近接するというメリットがある。「新田」や「新開」などの地名。
<[地理B]2025年/本試験・第5問問4解説>
[ファーストインプレッション]考察問題とは思うのですが、こういった問題って曖昧なものが多いんですよね。判定に悩むような。さて本問はどうなんだろう?
[解法]図や写真などの資料が与えられた文章空欄補充問題。先に文章を読んでしまおうか。
「範囲( X )には外国人が多く利用する宿泊施設がある」と述べられている。具体的な宿泊施設のイメージはtであり、XはFかGのいずれか。
GはJRの倶知安駅があり、倶知安町の行政の中心だろうか。スキー場からはやや離れており、観光客が利用するホテルとしてはベストな立地とは言いにくい。外国人観光客がスキーを楽しむならば、やはりスキー場に接したFの場所の方が宿泊には適切だよね。XはFが入るんじゃないか。
さらに( Y )だけど、これはホテル代や飲食代がいわゆる観光地価格になっていることを受けてのものだね。
値段がいかに高いか。これだけ考えると我々一般人にはちょっと好ましく無い状況だけれども「経済効果」を考える上ではむしろ歓迎するべきことなんじゃないか。多くの外国人がやってきて、さらに多くのお金を落としてくれる。好景気というかちょっとしたバブル景気を想起させるね。このような状況を考えてみれば、Yに当てはまるのは「観光による利益を見込んで、土地の価格が上昇」なんじゃないかな。シが該当。当然、他の産業(建設や交通、小売業やサービス業)にも波及効果はあるだろうし、さらに(土地が取得されることで)新たな宿泊施設も建設されるだろう。
[アフターアクション]どうかな。かなり完成度の高い資料問題だけど、あいまいなところは少なくすっきりと答えが求められる問題と言えるんじゃないかな。最近のインバウンドの状況を盛り込んだ社会性もあり、良問ですね。
<[地理B]2025年/本試験・第5問問5解説>
[ファーストインプレッション]さらに資料を複数用いる考察問題。ただこちらは先ほどの問題とは異なり文章は登場しないので曖昧なところは少ないんじゃないかな。数字を正確に読み取る。
[解法]観光客数に関する問題だね。まずタとチだが、どちらかが日本人でどちらかが外国人。ただし、先に考慮に入れるべきことがあるよね。そう、それはもちろんコロナ禍。新型コロナはCovid-19と呼ばれているように2019年に発祥。それ以降世界中に広がり、数年にわたって人々の移動に大きな影響を及ぼした。とくに国境を超えた移動はほぼ完全にストップされたと言ってもいいぐらいじゃないかな。
本図を参照すると、いずれも2019年までは比較的大きな数値となっているが、2020年、2021年と数値がダウンしているグラフが多い。その傾向が特に顕著なものがチのグラフで、ニセコ町も倶知安町も2021年の値はほぼゼロである(蘭越町はもともと数値が確認できないほど少ない)。これを外国からの移動者に関する統計と考えるのは妥当なんじゃないかな。2020年や2021年は新型コロナが猛威を奮っていた時期であり、北海道はもとより日本全体における外国人旅行者はほとんどいなかった。ニセコ町や倶知安町に宿泊する外国人もほぼいなかったとみていいんじゃないか。チが外国人である。
一方のタが消去法で日本人となるが、倶知安町で大きく数字が落ち込んでいるもののその値はゼロではない。250千人ぐらいはいるようだ。なお、ニセコ町や蘭越町はこの時期も数字の落ち込みはなく、Covid-19の影響はなかったのかな。むしろニセコ町など2020年にはやや落ち込んだものの2021年には早くもV字回復している。国内の人口粒度はそれなりにあったということなのかな。
なおタの方では蘭越町の宿泊の統計も十分に読み取ることができる。人数は少ないながらも新型コロナの影響はほとんど見られなかったようで、値は100程度で一定である。「不要不急」の移動である観光客はそもそも少なく、ビジネス客などが中心なのだろうか。「宿泊者=観光客」と考えるのは早計で、ビジネス目的の企業の従業者であったり、公務を目的とした官公庁職員などの宿泊も当然考えるべきだろう。こちらについてはコロナ禍のダメージも少ない。
ではここからは図8の判定をしよう。PとQを比較してみよう。いずれも割合を表している図である。外国人と日本人の実数での比較はできない。しかし月ごとの分布は明確であり、これが判定材料となる。
まずPであるが、12月や1月、2月といった冬に圧倒的な流入がある。ニセコ地区の特徴を考えてみると、これは明らかにスキー客なんじゃないか。問1で雪が多いことが取り上げられ、問3では地形図によってスキー場が示され、問4でもやはりスキー場を中心とした開発の様子が取り上げられている。ここまで説明されれば、ニセコについて全く知識がない人であってもこの地区の売りがスキーであることはわかるよね(笑)。ウインタースポーツが盛んなところであり、冬はスキーを楽しむための人々が多数訪れる。Pで表されているのはほとんどが観光客であり、その目当てはウインタースポーツである。
一方のQはどうだろうか。こちらは年間を通じて月ごとの宿泊者数に大きな違いはない。たしかに冬が多いような気もするけれど、7月や8月の宿泊者こそ多くなっている。というか、どの月も大差はないね(笑)
これ、どういうことなんだろう?ちょっと考えてみるに、これ、観光客とは限らないんじゃないか。先ほども述べたけれど決して「宿泊者=観光客」ではない。業務や公務を目的としたビジネス客もそれなりに多いんじゃないか。ニセコ地区の全てが観光用ホテルというわけではないだろう。企業や官公庁も立地し、ビジネス目的でこの地域を訪れる人もいるはずで、そういった人たちが長期滞在するならばもちろん宿泊が必要となる。年間を通じてほぼ一定数であるとうことは、そういった業務や公務を目的とする人々なんじゃないか。
このことを踏まえて外国人と日本人を判定してみる。外国人の多くは観光客として日本を訪れているはず。もちろん一部にはビジネス客もいるだろうが、彼らは多数派ではないだろうし、外国企業の支店(あるいは日系企業の本社)が立地する大都市圏への訪問が主なのではないか。ニセコのような北海道の地方に多くの外国人ビジネスマンが訪れるとは考えにくい。彼らの多くはスキーを目的とした観光客と考え、当地を訪れるのも冬に集中する。12月から翌2月までの値が特に高いPが外国人である。
Qは日本人。季節による凹凸がなく観光客だけでなくビジネス客も多く含まれていることが想像される。ニセコ地区は世界的な企業はないだろうが、地方企業や官公庁は多くビジネス客の流入は一定数考えられ、その多くは日本人が中心だろう。
[アフターアクション]
これはちょっと驚いた。いよいよコロナ禍が出題の対象とされたか。他の問題では東日本大震災も関連する津波や原発の話題も登場し、いよいよこれまで(社会的状況を鑑み)避けられてきたトピックが出題の俎上に登ったことがわかる。今後はこういったコロナ禍の影響について考える問題も出題されるのかな。コロナ禍の影響といえば本問で典型的にみられる外国人観光客の減少だよね。
<[地理B]2025年/本試験・第5問問6解説>
[ファーストインプレッション]
いよいよ30年にわたる地理Bのラスト問題。心に沁みるものがあるね。とはいえ、実際に解く順番としては(地形図を含む)第5問は早めに解くべきであり、決して「最後の」問題というわけではないけどね(そういう意味では第1問問6が本当の「最後の問題」なんだろうね。難易度の高い第1問は他の大問を解き終わった最後に取り組むべきもの)。
ただあくまで形式的にはこちらが最後の問題であり、その存在感はある。新課程の内容が十分に意識された、地理総合・探究への「橋渡し」的な問題だと思う。思考による考察問題と言ってしまえば簡単だが、シンプルではあるが高い知性が求められる佳作だと思う。地理Bは最後まで素晴らしい科目だった。
[解法]
図は「住民意見の例」と「施策案」、「指標案」が示されている。問題は「住民意見に対する施策案と指導案としては適当でないもの」を答える。それぞれの関係性を考えてみよう。
まず「住民意見」としてはある課題・問題点が示される。その解決法が「施策」である。さらに「指標」がわかりにくいが、これは判断材料と考えていいんじゃないかな。問題文に「施策の効果を評価するため」という言葉がある。その施策が実施された場合、それがどれほど有効であるかについて指標に沿って考える。
例えば選択肢③で考えてみようか。ここでは住民意見の例として「観光客に地域のじゃがいも、米、乳製品を売り込みたい」という課題・問題点が挙げられている。そしてこの施策として「地元産農産物の加工・販売に対する補助」が考えられている(補助とあるが具体的には補助金の類だろうか)。この補助が実行された場合、果たしてそれが成功だったのか、失敗だったのか、その判断の基準として「地域産品の売上額」がある。
ニセコ地区において地域産品の売上額を調べてみよう。これが大きく伸びていたならば、加工・販売に対する補助は成功だったと言える。観光客に地域産品を売り込みたいという課題は解決した。
逆に地域産品の売上額が伸び悩んでいたならばこうした補助は全く有効ではなく、他の施策を考えないといけない。観光客に地域産品を売り込みたいという課題は果たされない。
さらに選択肢④についても見てみよう。住民意見として提示された課題・問題点は「観光産業で働く外国人を地域に受け入れたい」というもの。現状で外国人労働者は多いものの、地域の日本人との間であまり交流は進んでいないのではないか。それを達成するための方策として「各国の文化や言語を学べる場の創出」がある。学校であったり地域の自治体などのコミュニティにおいて積極的に外国文化を学ぶ機会を増やしていこうというもの。言語のみでなく料理や服飾など具体的な文化はいくらでも思い浮かぶ。それを学ぶためのイベントを開催していていこうというもの。その「施策の効果」が発揮されたかどうかについては指標案である「住民への各国への親しみ度」を調べることが適当だろう。さまざまなイベントを実施した後で住民にアンケートを取って、その国への親しみ度が上がったかどうかを調査する。アンケートの結果、「親しみ度が向上」となればこのイベント開催は十分に意義があったこととなり、問題点として提示されていた「外国人を地域に受け入れたい」という目標は達成される。これらの「問題点→それに対する方策→その成果を判断する基準」の流れは無理なところがない。実にスムーズである。これも正文だろう。
どうだろうか?わかりやすい選択肢として③と④があるが、「住民意見の例」と「施策案」、「指標案」の関係はなんとなくイメージできたのではないかな。頭の中で「物語」を作って欲しい。住民意見として提示された問題点を解決するために具体的な施策が実行されるが、本当にそれが意味があったものかどうかを判断する基準として指標案が提案されている。
ではこの考え方をベースとして選択肢①について考えてみよう。住民意見として「住民が賛同しない観光開発により自然や景観が壊れる」ということが問題点として挙げられている。これを解決するための方策として「開発業者に対する住民説明会の開催要求」がある。開発を担当する業者が直接住民に対して開発内容についてを説明する機会を設けるということだ。なるほど、これは納得だろう。
それについても評価基準として「住民説明会の開催回数と参加者数」があるがこれはどうだろうか。「説明会の開催要求」が有効に実施されているか、それを判断する基準がその説明会の回数と参加者数である。説明会の実施回数と参加者数を調べてみよう。その数が多いということは「開催要求」が十分に通って、より多くのそして大規模な説明会が行われているということ。施策案と指標案との間には直接的な関係があるtいえよう。例えば君が市役所の職員だったとして、上司から「説明会の要求がなされているが、説明会は果たして順調に行われているか」と問われたとする。君はその時に説明会の回数や参加者の人数を調べて上司に報告するよね。こういった具体的な物語(ストーリー)を作るとわかりやすいと思うよ。地理は生活の中にある科目であり、実際の状況をいかに想像できるかという点が重要だったりする。①は正文だね。
最後に選択肢②を検討しよう。ここでの「住民意見の例」は「観光客の増加により地域内の交通に支障が出る」である。いわゆるオーバーツーリズムによる交通に関する問題が解決すべき課題として挙げられている。渋滞であったり、バスへの乗客オーバーやタクシーやレンタカーの不足であったりなどが具体的な事例に考えられるだろう。
この問題点への対策として挙げられているのは「需要の季節的な偏りに該当した事業所の誘致」である。なるほど、バスの営業所を誘致してバス増便や路線の効率化を図ることは有効だろう。同じくタクシーの営業所も設置してタクシーの数を増やすこと、レンタカー会社の支店を招いてレンタカーをより利用しやすくするのも大切。とくにここでは「季節的な偏り」とある。スキー観光がさかんな地域なので冬の観光客がとくに多いはず。民間の力を活用しオーバーツーリズムに柔軟に対応し多くの観光客に渋滞や満員など交通ストレスを与えない。事業所を増やすことは有効な施策となる。
ではその「事業所の誘致」が上手く行われているかどうかについて判断する基準は何だろう。ここでは「指標案」として「地域内キャッシュレス化率」がある。クレジットカードやプリペイドカード、さらにはスマートフォンによるQRコード決済などがあるだろう。こういった比率が上がっているかどうかをチェックすることで、施策が有効に進んでいるかを確認することができる。
んんん???でも、これどうなんだろうろうね。例えばバスの支払いについて現金よりプリペイドカード(ICOCAのような)をみんなが使い始めたとする。たしかに乗降はスムーズになり交通ストレスは軽減されるかも知れない。でも、それが「事業所の誘致」と関係あるだろうか。
例えばこういった状況を考えればいい。それまでは自治体が運行する公営バスしかなく、便数が限られていたため観光客にとって不便であった。しかし「事業所の誘致」によって民間の活力が利用され(この事業所は民営の会社と思っていいだろう)、民営のバスが運行するようになり地域内のバスは増便される。これによって交通ストレスは大いに緩和されるね。
この時、プリペイドカードによる支払いができるのが民営バスだけならば「キャッシュレス化率=民間バスの割合」となり、なるほど全体のバスの運行数の増加と関係あるのかと思ってしまうのだが、でも実際は公営のバスも当たり前のようにキャッシュレスに対応していると考えられるよね。地域内のバスが全てキャッシュレスになったからといって、それが民間事業所の参入の指標にはならないし、もちろん地域内を運行するバスが増えたことの証拠にはならない。この「指標案」はこちらの「施策案」とは全く関係ないものなんじゃないか。バスやタクシー、レンタカーが全く増えない状況でキャッシュレスだけが進んでいることを想像して欲しい。あるいは従来の自治体による公営バスだけが運行している状態で、それらの全てキャッシュレスに対応していることを想像する。どうだろうか?キャッシュレス化と事業所の誘致は全く関係ないと言えるのではないか。この選択肢②が誤文で正解になるね。
どうだったかな?これ、かなり頭を使う問題だったと思う。「住民意見の例」と「施策案」、「指標案」おを結びつけ、その中で物語(ストーリー)を組み上げて欲しい。地理Bの問題だったけれど、将来の地理総合・探求につながる「未来の見える問題」だったように思う。
[アフターアクション]
地理Bラストの問題、どうだったかな?個人的にはかなり手強かった印象。これ、基本的には「なんとなく」解く問題だよね。「いやいやキャッシュレスが進んでも渋滞解消されないでしょ」みたいな。雰囲気だけで解く問題だったと思う。
だからこそ理論的に説明するのが骨が折れるんですよね(苦書)。一つ一つ文章によって、雰囲気というか感覚を言語化して伝えないといけない。難しい問題だったよなぁ。
君たちとしては「なんとなく」解ければそれで十分。っていうか、実際問題としてそうやって解くしかないし、感覚に頼るのがベストとも言えると思う。でも教える側の我々としてはこれを論理的に落とし込んで説明しないといけないんだよなぁ。これは難しい。授業では取り上げにくいなって考えちゃいますよ。
とにもかくにもこれで地理Bが終わりですね。長い間お世話になりました。最後まで素晴らしい問題でした。ありがとうございました。感謝の念でいっぱいです(^^)