「地理総合、歴史総合、公共」試作問題・第3問/第4問解説

第3問 3つの問題が用意されているが、ちょっと質が低いと思う。解きにくいし、判定に頭を悩ませる選択肢もある。出題の意図も見えにくいんですよね。もっとブラッシュアップが必要だったんじゃないかな。

問1 ②

おもしろい問題ですね。かなり考えないといけない。

「建築面積に占める割合」とあるが、「中庭」と「半屋外空間」を合わせても100%に達しないということは、他は「建物」の割合なのかな。図を参照すると、なるほどこちらの建築物は「建物」、「中庭」、「半屋外」に分けられている。表の上から、「中庭:半屋外:建物」の比率は「11:46:43」、「20、3、77」、「49、2、49」、「69、0、31」といった感じなのかな。かなり建物以外の部分が多い建築もあるんだね。

それはともかくとして、問題に戻ろうか。ここで注目するべきは「小」である。半屋外空間がやたらと広い。文章を確認すると「雨が多い地域では屋根をつけ、半屋外空間を設けている場合もある」とあり、半屋外空間の屋根は雨対策としてつけられているようだ。

でも、ここで短絡的に「ア」を「年間降水量」としてはいけない。年降水量が「小さい」と半屋内空間の割合が高くなるのだろうか?これ、逆だよね。雨が多くて、雨をしのげるように半屋内空間が広くなるのだから、これは「小」と「大」が反対。

ではどうやって考えよう?ここでポイントになる言葉を文章から拾うと「暑い地域では日陰をもたらすよう工夫されている」とある。なるほど、これ、間違いなく屋根の設置すなわち半屋外空間を関係あるよね。暑いところでは屋根を大きくつけ、半屋内空間を増やし、逆に寒いところは日光が欲しいから屋根は不要で、半屋内空間の割合は下がる。

ただ、ここでさらに「えっ?」と思うのだ。これも「小」と「大」が逆なんじゃない???気温が「小」つまり寒い方が半屋外空間の割合は高く、気温が「大」つまり暑いと半屋内空間がなくなってしまう。これ、逆だよね?これは困った。。。

というわけで答えは1か2なのだろうか。難しいな。緯度で考えてみようか。緯度は太陽からの受熱量を決めるものである。高緯度ならば受熱量は小さく寒冷となり、低緯度ならば受熱量が大きく高温となる。緯度と気温の関係は、基本的には反比例となる。「緯度が高ければ気温は低く、緯度が低ければ気温は高い」。

アを緯度と考えると、緯度が「小」すなわち低緯度は気温が高く、日陰が多いことが望まれるので半屋外空間の割合は高くなる。半外に、緯度が「大」すなわち高緯度は気温が低く、日陰は不要(できるだけ太陽光線を浴びたいのだから)。そうなると、なるほど、アが「緯度」だとするとこれは納得できる。一応これが答えなんじゃないかな。一方の「経度」は東西方向の違いなので、これは気温は変わらないね、同じ緯度上で、経度の違う2点があったとして(例えば、東京・大阪・福岡など)太陽からの受熱量は変わらないので、気温の違いもない。2の「経度」は関係ない。

なるほど、この建物がみられる地域が「中国」であることがポイントになるのだな(なお、僕は最初「中国地方」だと思って解いていたので、混乱してしまった。中国でしたね。ややこしいな。やっぱり文章はしっかり読まないとあかんね)。緯度つまり南北の違いで考えるならば、中国は「北で少雨、南で多雨」という降水量の差がある。華北(黄河流域)と華中(長江流域)を分けるラインが「年降水量1000ミリ」の等値線とほぼ一致。これより北の東北地方や華北では少雨となり、夏の稲作が不可能であるため、主に冬小麦の栽培地域となる(集約的畑作農業)。これより南の華中や華南は主に夏に海洋から入り込む季節風の影響で多雨となり、稲作地帯となっている(集約的稲作農業)。高緯度で降水量が「小」となり、低緯度で降水量が「大」となる。

緯度で判定するならば、地球上のいずれの地域でも「緯度と気温は反比例」するのだが、とくにこれを中国に当てはめるならば「緯度と降水量も反比例」するのだ。

(ア)を「緯度」と考えると、要するに緯度が「小」であるのは気温が高く降水量が多いということになるので、半屋外空間が広くなる。日除けや雨除けのため屋根を大きくつけるということ。逆に緯度が「大」ならば気温が低く降水量も少なくなるので、こちらは屋根は不要。半屋外空間は少なくなる。できるだけ太陽の日差しは受けたいし、雨はあまり降らないのでそれを避ける必要もない。なるほど、アは「降水量」と考えるのが妥当だし、2が正解となる。

このように最終的には辻褄は合うのだが、それにしても解きにくい問題だったな。例えば中国の地図を問題に入れておくなどすればもっとイメージが容易で解きやすくなったんじゃないかな。もうちょっと工夫が欲しい問題でした。

問2 ④

喫煙より飲酒を考えるといいだろう。イスラームではアルコールの摂取は禁じられているので、1人当たりアルコール消費量が高いのは非イスラーム地域。「中東」という言い方は地理ではあまり出てこないが(ヨーロッパからみて「中ぐらいの東」という意味だね。地理ではとくにヨーロッパを基準に考えることなく、そもそも中東という言い方自体がナンセンス。近東がトルコ、極東が日本だったりするけど、そんな表現は普通はしないよね)、注釈から判定し「アフガニスタン、イラン、トルコは含まない」とわざわざ断るぐらいなので、その周辺地域と考えていいだろう。つまり「西アジア」だね。サウジアラビアを考えればいい。サウジアラビアを含む西アジアから、北アフリカには広くアラビア語を使用する人々が住んでいる。アラブ人である。イスラームの聖典コーランがアラビア語で記述されていることもあり、アラビア語を用いるアラブ系の人々にはムスリム(イスラーム教徒)が多い。彼らはアルコールを摂取しない。

一方の「サハラ以南アフリカ」も比較的よくイスラームが広まっている地域であり、例えばナイジェリアは人口に占めるムスリムの割合は高い。しかし南部アフリカまで含む全体を考えれば、アラブ世界ほどイスラームの割合が高いとは言えないだろう。比較的アルコールはよく摂取され、1人当たりアルコール消費量が全般に高いキが「サハラ以南アフリカ」。この値が極めて低い国ばかりが並んでいるカが「中東・北アフリカ」。こちらは喫煙率が高いね。イスラームではタバコを吸うことは禁じられていない。というのも、ムハンマドがイスラームを開いた時点では、彼自身タバコの存在を知らなかったのだ。タバコは南北アメリカ原産であり、ユーラシアやアフリカに入ってきたのは大航海時代以降(16世紀以降)。日本でも戦国時代にもたらされた。キセルで喫煙する習慣が広まったのは江戸時代以降だね。

Aとbの判定は問題ないと思う。最もわかりやすいサウジアラビアに注目すればいい。サウジアラビアが「低位」となっているaが「1人当たりアルコール消費量」である。それはそうと、グラフから見るにヨーロッパって喫煙者比率が高いんだね。ちょっと驚いた。とはいえ、僕らが若いころって男性の喫煙率がほぼ100%だったことを考えれば、現在高い国でも35%程度っていうのはかなり低い値と言えるかも知れないね。

問3 ③

これ、難しいな。判定に迷う。「地理総合、歴史総合、公共」における地理総合の問題ってちょっと質が悪いんじゃないかな。

1の判定が何ともいえない。沖積平野とは「沖積世」つまり現在つくられつつある平野のことで、とくに河川の作用によって形成されている平野を考えればいい。河川が急流である上流部で土砂を侵食し、そして運搬し、下流側に堆積させる。河川沿いの平野地形であり、具体的には「扇状地」、「氾濫原」、「三角州」のこと。高峻な山地に水源を発し、土砂の侵食量の多い河川沿いにこの地形は広がる。図の範囲ではインド北部のガンジス川が典型例で、他には華中の長江沿いなど。インドシナ半島の河川も河口に大きな三角州が形成されている。

さて、米について判定しよう。インド北部や華中で広く栽培され、さらにはベトナムやタイにも栽培地域がみられる。ここまでは「沖積平野」に該当するようだ。しかし、他にもインド半島の沿岸部や華南、そしてインドネシアなど島嶼部にも栽培地域が分布している。これ、どうなんだろう?「主な産地」は沖積平野に限定されるのだろうか。

さらに言えば小麦はどうだろう?農業用水を多く求める稲(米)の栽培は水利のいい沖積平野が中心となるが、小麦についてはその限りではない。むしろ根が腐ってしまうので低湿地での栽培には本来適さない。水捌けのよい土壌が適する。とはいえ、たしかに図をみるとインド北部では小麦の栽培が盛んになされており、この部分は沖積平野といえよう。しかし、先ほど指摘した華中の長江沿いや東南アジアの三角州では小麦の分布はみられず、こちらは「沖積平野で栽培されている」とは言いがたい。逆に中国の華北、さらにインドからパキスタンにかけての乾燥地域でも栽培が盛んで、沖積平野に限定されているわけでもなさそうだ。どうなんだろう?選択肢1は完全には否定できないものの、だからと言って手放しで「正文」とも言い難いような気がするのだが。とりあえず保留だろうか。

さらに選択肢2。「米と小麦の二毛作」であるが、図をみて米と小麦の栽培が重なっている地域を考えればいい。中国ではこの二つの作物の栽培地域は比較的よく分離している。東南アジアも米のみである。両者がともに栽培されているのはインドからパキスタンにかけての地域だろうか。なるほど、南アジアは雨季と乾季の明瞭な地域であり、この選択肢は正しい内容と考えていいんじゃないかな。

問題はこの選択肢3なんだよね。。。ケッペンの気候区分が登場している。もちろん細かい知識は不要であり、「サバナ気候=熱帯」ぐらいのイメージさえ持っておけばいい。サバナは熱帯草原であり、丈の長い草原が広がる中に疎らに樹木が点在する。野生動物が住むケニアの草原を思い浮かべるとちょうどいい。サバナは熱帯であり「湿潤」である。これに対し、未は乾燥地域で飼育される家畜。羊の毛は体表面からの水分蒸発を防ぐものである。「羊=乾燥」であり、湿潤ではないことからこれが誤りとなる。答えは3。

でもどうなんだろうね?選択肢1が曖昧すぎるし、選択肢3ではケッペン気候区分が登場している。地理総合に特化した問題なので、若干問題の詰めが甘いのかな。

選択肢4はどうだろう。これは正文と思うのだが、たしかに豚の飼育頭数はインドで少なく、そしてイスラーム圏(パキスタン以西、中央アジア)でも少ない。インドは殺生を嫌う文化があるので、そもそも肉用の家畜の飼育が少ないのだ。

丁寧な図が用いられているわりには問題の完成度は低かったと思う。あくまで参考程度って感じなのかな。選択肢1がどうしても気になるんだよなぁ。。。

問4 ④

「牛肉」が使われていることからインドは除外される(なお、インドではタブー(禁忌)の少ないチキンは少しずつ食べられつつある)。「ココナッツ」や「ヤシ」から熱帯であることがわかるね。インドネシアの4が正解。「辛い」については中国から東南アジア、南アジアは全体的にスパイシーな料理が多い(香辛料が使われる)からヒントにはならない。インドネシアはイスラームの国なので、たしかに豚は使われていないね。アルコールも使われていないんじゃないかな。

第4問 第3問に比べれば質が高く、おもしろい問題が揃っていると思う。問4などちょっと曖昧な問題もあるけれど、裏を読もうとせず、素直にシンプルに考えればいいんじゃないかな。問5のような文章ごとの正誤を問う問題など、ストレートに解いた方が簡単に解ける。

問1 ①

アはAだろうか。中心駅に近い市街地であり、CBDとなっていることが想像される。地価が高く土地利用が集約的となる。高層ビルが建つ。

Cに注目する。ここ。「工業専用地域」ってあるよね。イとウで工場っぽいのってどっちだろう?ウの建物がどうもそれっぽく見えるんだよなぁ。大きな建物だけれども、窓やベランダがみられず集合住宅(マンション)でもないだろうし、無骨な雰囲気はショッピングモールというわけでもなさそうだ。これ、工場なんじゃないかな。工場ならばもっと平屋の建造物になりそうなんだけれど、巨大な倉庫のような施設なのかな。工場の一部を成す建物と考えると妥当だと思う。「工業専用地域」のCに該当。

残ったBがイとなる。中央に巨大な幹線道路があり、都心部と郊外を結ぶ者だろう。左手にはショッピングモール的な建物が確認できるね(ウの建物と比較してみよう)。駐車場も広く備えられている。自家用車を利用して人々が買い物に来るのだ。右側には戸建の住宅がみられる。こういった戸建は郊外に特徴的にみられる。図から判定するにBは「人口集中地区」の縁辺部に位置しているが、都心部に対する郊外に相当するエリアとみていいんじゃないかな。

問2 ⑤

E;これは誤りなんじゃないかな。1909年の図を確認すると「宇都宮城」の北側に市街地が広がり、そこでは道路は直交し、城を中心とした環状の街路区画がみられるものではない。同心円状の街路区画はモスクワに典型的みられるので、画像検索などで確認しておくといい。

なお、宇都宮市街地にはなるほど城下町特有の街路がみられる。それが「鉤(かぎ)型」街路や「丁(てい)字型」街路。いずれも見通しを悪くして、防御機能を高めたもの。

F;カの範囲を確認してみよう。ここは古い時代より市街地だったエリアである。最初の図1を見ると、この部分にも(短いけれど)ライトレールは敷設されている。県庁や市役所へのアクセスが良くなっているね。Aの写真もこの付近で撮影されてものであり、CBDとなっていることが想像される。これは正文なんじゃないかな。

G;これも正文なんじゃないかな。駅からまっすぐと東に伸びる幹線道路があり、それと交差する道路も直線化されたものが多い。色がついた道路(これは国道なのだが)が、やや北北東から南南西の方向に斜めに交わっているけれど、この道路にしても「直線」であることには変わらない。一部に「陽東(三)」付近に湾曲した道路があるけれど、これは小さな川に沿ったものなのかな。この駅の東側の地域は(1909年の図をみればわかるように)水田や畑地となっており(短い横棒の上に小さな棒が二つ立っている記号は現在の水田を表している。またキの中央やや東側の空白部は畑である。古い地図では畑の記号が存在せず、空白部が畑となる)。

問3 ④

図を読解する問題。人口が多い宇都宮市と小さな芳賀町が比較されている。

注意するべき選択肢は3。割合と実数は常に意識しないといけない。まずは地の文である「第2次産業就業者の割合は、芳賀町が宇都宮市を上回っていた」ことを確認しよう。70年から20年間であるので、対象となるのは「70~74」年、「75~79」、「80~84」、「85~89」の4つ期間の棒グラフ。宇都宮市では20~30%ぐらいの値だろうか。それに対し、芳賀町は「70~74」こそ15%程度だが、それからの伸びは著しい。「85~89」では30%を超えているのではないか。(下線が施されていない)地の文であり、確実に正しいことを述べているので判定の必要はないものの、一応確認しておこう。

選択肢3では「就業者の総数は、宇都宮市が芳賀町を上回っていた」とある。この場合の「就業者」は全ての産業を合わせた総就業者数なのか、それとも第2次産業だけの就業者なのか、ちょっとわからないので両者について検討した方がいいだろう。ただ、そういった細かいことに気を取られずともグラフから簡単に判定できる。宇都宮市が「85~89」の時期で40万人を超える大都市であるのに対し、同時期の芳賀町の人口は2万人に達していない(折れ線グラフから判定)。総就業者数も同じ時期の宇都宮市では20万人に達しているのに対し、芳賀町は1万人ほど。宇都宮市の方が多い。第2次産業のみに絞ってみても、宇都宮市では軽く5万人を超えているようだが、芳賀町は3千人ぐらいだろうか。そもそも人口規模が両者の間で全く違いので、比較すること自体がナンセンスかもね。「割合」と「実数」の違いを意識しよう。

さらに選択肢4を検討しよう。まず地の文だが「宇都宮市では人口が増加し続けている」ことを確認。一貫して人口が減っている時期はない。「宇都宮市における製造業の雇用も大きく増加し続けている」とあるが、これはどうだろうか。第2次産業とは鉱工業のことで、工業は建設業と製造業。鉱業の従事者は極めて少ないので無視していい。さらに国内においては製造業が主であり、建設業はさほど多くない。2:1ぐらいのバランスで考えていいだろう。「第2次産業就業者≒製造業就業者」とみていいんじゃないか。ここで宇都宮市の90年以降の帯グラフに注目。どうだろうか?現在までの間に少しずつだけど、第2次産業の値は減少し続けているのではないだろうか。2000年ごろが最多であり、そこからは減少傾向にあるように見える。少なくとも「大きく増加」というわけではないね。第2次産業に就業する者が減っているのだから、もちろん「製造業の雇用」も減っているとみていいと思う。選択肢4が誤りで、これが答えとなる。

1と2も検討してみようか。1については図3を参照。古い年代の工業団地は宇都宮駅に近いのに対し、波賀町の工業団地は新しい年代。正文だね。

2についても問題ないだろう。芳賀町は人口が減少した時期が多かったが、70年から89年まではぞうっかしている。高度経済成長が終わった時期ではあるが、芳賀街に工場が進出したのはこの時期であり、雇用の増大とともに総人口が増加した(第2次産業の就業者がとくに増加している)。

問4 ①

これ、ちょっと迷ったんですよね。自信がなかったので答えも確認しました(一応正解ではあったけれど)。

聞き取り調査の結果を一つずつ確認していこう。

まずは「ライトレールの建設により、働いている人の通勤がもっと便利になることが期待される」とある。これ、どっちの話なんだ?って疑問に思わないかな。ライトレールが通勤の足となるわけで、「都心部」と「郊外」を結んでいる。その際、この文章は都心部のことを言っているのか、郊外のことを言っているのかが不明なのだ。君はどっちだと思う?つまりこういうこと。都心部ならば「ライトレールの建設により、この地域で働いている人が、郊外から通勤してくることがもっと便利になる」ということであり、郊外ならば「ライトレールの建設によって、この地域に住んでいて、都心部で働いている人の通勤がもっと便利になる」ということ。これ、どちらでも成立すると思わない?この文章では、CBDが形成され昼間人口の多い都心部、住宅地となっており昼間人口の少なくなる郊外、これ、どっちの状況を述べているのだろう?不明なのだ。

それに対し、わかりやすいのは2つ目。「この地区は商店が多く、ライトレールの建設によって人通りが増え、商店のお客さんも増えることが期待される」となる。「卸売・小売業従業者数」が多いエリアがそれに該当すると思う。このデータも詳細な基準はわからないけれど、共通テストでそんな捻くれたデータは登場しないので、シンプルに考えてしまっていいと思う。商業(卸売・小売業)が発達したところではその従業者も多い。ようするに「商店が多い」ということ。そうなると候補は1か2となる。いちおう中位の4も候補に入れておいてもいいだろう。低位の3は完全に消してしまっていい。

さらに3つめ。「この地区の住民には高齢者が多い」とある。これは老年人口率をみればいいんじゃないか。これ、実数ではなく割合なのがちょっと気になるね。例えば、3のエリアは老年人口率が高い(高位になっている)けれど、もしもここがあまり人の住んでいないような田園地帯だったりしたら、老人の数自体は少なくなるよね(人口×老年人口率=老年人口だね)。ただ、こちらのデータにしても先ほどの卸売・小売従業者数と同じように、共通テストはそんなに意地悪な試験ではない。エリアごとの人口に関するデータがない以上、シンプルに「老年人口率が高い=老年人口が多い」とみなしていいんじゃないかな。そうなると最も該当するのは高位である1と3。中位の4は一応可能性があるとしても、低位の2はいくらなんでも外れるだろう。

そうなると2つ目と3つ目の聞き取り調査の結果をいずれも高いレベルで満たしているものとして1が炙り出されてくる。これを正解とみていいのだろうか。

1は、問1のア=A地区に近い、都心部。CBDとして多くの官公庁や企業オフィスが集中しているとみていいだろう。デパートなど商業施設もありそうで、昼間人口はかなり大きくなりそう。

そうなると一つ目の結果についても、この文章が「都心部」のことを述べていると考えれば納得できるのだ。ライトレールの建設により、このエリアで働いている人の通勤が便利になる。彼らは郊外からやってきているのだ。

以上より1を正解と判定する。それにしても「あいまい」な部分が多い問題だったな。一つ目の文章では、これが都心部と郊外どちらを説明したものかが分からない。ふたつ目の文章でも、従業者の数の多さから商店の数の多さを想像しないといけない。三つ目の文章でも、実数と割合の関係を本来考えるべきだったのだ。割合が高いからといって実数も多いわけではない。地理でこんなに曖昧な問題は珍しかったと思う。