2024年地理B本試験[第4問]解説
【第4問問1】
[ファーストインプレッション]いわゆる「地誌」の大問だね。ただ、地誌だからといって地名や都市名、その地域の歴史的背景、現在の国際的な状況などが問われるわけではない。オーソドックスな「系統地理」の問題が問われているだけなのだ。本問も、大地形ジャンルで頻出の「海底地形」や「火山」に関する問題が問われている。
[解法]海底地形に関する問題と思いきや、実は火山に関する問題だったりする。
とはいえ、やはり海溝や海嶺を中心とした海底地形は基本中の基本なので、まずはこれに相当する問題から解いてみよう。
Aに注目。日本列島の東岸から南に向かって、一連の海溝が走行している。本州東部に沿う「日本開港」、その南には伊豆・小笠原諸島に沿う「伊豆・小笠原海溝」、そしてその南にはグアム島やサイパン島に沿う「マリアナ海溝」。マリアナ海溝は地球上で最も低い土地。海面下1万メートルの世界。緯度的にはフィリピン諸島付近(フィリピン西岸にフィリピン海溝が走行し、それがフィリピン海プレートの西縁である。マリアナ海溝はそれと向かい合うフィリピン海プレートの東縁)。Aがマリアナ海溝を横切っていることがわかる。水深が9000mにも達するような、極めて深い「溝」がみられる1がAとなる。凸となっている箇所も多いが、海底火山だろうか。一部は海面に達し、陸地(島)となっている。
さらにDだが、これはオーストラリアのグレートバリアリーフ。西端(白丸)が陸地付近から始まっており、この箇所の水深は浅いことが想像される。これは2に該当するのではないか。
さらに特徴的なものは4の断面図。多くの凸がみられ、海面に達するものもいくつかある。島が並んでいると思われ、これは海底火山によるものだろうか(断面図1と同じような雰囲気だね)。さて、BとC、より多くの火山が連なっているのはどちらだろうか。ちょっと迷うかも知れないけれど、ここをハワイ諸島と判定するのは決して無理なことではないね。Bの方が火山島の連続する海域であると考えてみよう。Bは2に該当し、これが正解。
本問で重要なのは上述の「海溝・海嶺」の位置と「火山」の位置。大地形ジャンルではこのように「どこに何があるか」が重要であり、例えば「この地形がどうやって形成されたか」といった成因についてはほとんど出題されない(専門的な話になるが「地形学」が大切であり、「地質学」は不要ということ)。火山の位置についてまとめておこう。
まず火山は「環太平洋地域」に分布。これは「海溝」とも一致している。海底プレートが大陸プレートの下に潜り込むことによって海溝が形成され、同時に火山も生まれると考えていいと思う。
環太平洋地域には新期造山帯の環太平洋造山帯がみられ、海溝が太平洋外苑部を周回している。海溝と地域名の組み合わせは以下の通り。「アリューシャン海溝=ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の間の島嶼」、「千島カムチャッカ海溝・日本海溝・伊豆小笠原海溝=日本列島と周辺の島々」、「マリアナ海溝=グアム島・サイパン島」、「フィリピン海溝=フィリビン」、「トンガ・ケルマデック海溝=ニュージーランド」、「ペルー・チリ海溝=南米大陸太平洋岸」、「中央アメリカ海溝=メキシコ」。以上が典型的な例だが、さらに追加。
「プエルトリコ海溝=カリブ海の島々」。実は環太平洋造山帯は分岐しており、一部が大西洋側を通過している。カリブ海の島々が含まれ、これに沿って海溝や火山が分布している。
「アメリカ合衆国太平洋岸」。アメリカ合衆国太平洋岸には海溝はみられないが、火山は分ぷ。シアトルなど。ハリウッド映画にはしばしば火山パニック映画もあり、それらはシアトルやカリフォルニアが舞台とされているので興味ある人はどうぞ。「ボルケーノ」や「ダンテズピーク」など。(後述するが)ハワイ諸島と同じようにホットスポットに形成された火山と考えられている。
ここでAを判定してみよう。経度的には日本列島の南であり、緯度的にはフィリピンの東。この海底に走行するものは「マリアナ海溝」なのである。巨大な海底の「切り込み」がみられるのではないか。中央の大きな凹みがある1がAに該当する。これが海溝。海溝の周辺に多くの突起があるが、これは何だろうか。海溝とセットになるもの、わかるよね。そう「火山」である。多くは海底からの比高が水深より低く、海底火山となっているが、一つだけ海面上に達しているものもある。火山島がつくられている。
さらに火山の分布も確認しよう。まずは「環太平洋造山帯」である。北のアリューシャン諸島、カムチャッカ半島。日本付近は、千島列島、日本列島、伊豆・小笠原諸島。そして赤道に近づいてグアムやサイパンなどマリアナ諸島、フィリピン諸島。インドネシアの島々があり、南半球のニュージーランド。中南米ではメキシコからチリにかけての太平洋岸に火山が並ぶ。要するに先ほど述べた「海溝」の場所t一致しているっていうこと。簡単でしょ?だから大西洋側のカリブ海の島々も火山。菅太平洋造山帯の分岐であり、プエルトリコ海溝もある。
インドネシアの島々の火山もスンダ海溝(インド洋側。アルプスヒマラヤ造山帯に沿う海溝)に沿うと考えれば「海溝=火山」とすんなり腑に落ちるね。
海溝とはなっていないものの、アフリカのプレートとヨーロッパのプレートがぶつかっている地中海も火山が多いところ。多くの火山島があるが、とくにイタリア半島を知っておこう。イタリア北部のアルプス山脈は火山はみられないが、南部のイタリア半島や島嶼部には大きな火山がある。古代にはナポリの火山噴火で古代都市ポンペイが滅亡してしまったという伝説がある。
さらにプレートの広がる境界につくられた火山がある。地質学でいえば新期造山帯とはプレートの狭まる境界に沿う地形であるので、広がる境界は新期造山帯ではないのだけれど、プレート境界という特徴は同じであるし、変動帯として火山や地震も多い。アフリカ地溝帯に沿う東アフリカ地域(キリマンジャロ山やケニア山)、大西洋中央海嶺のアイスランド島が火山。
以上、ここまでが火山分布であり、大まかに「プレート境界」として考えればいい。プレート境界でも大陸プレート同士がぶつかる南アジアなどには火山がないね。
ここで「唯一」の例外的な火山を知っておこう。それが「ハワイ諸島」である。他の火山がプレートの周辺縁辺部)に位置しているのに対し、ハワイ諸島のみはプレートの中央部にみられる火山。「ホットスポット
に形成された火山なのだ。ホットスポットとは地下のマントル対流が上昇しプレートに当たる地点。この影響によってプレート中央部にマントルが突き上げられる形で火山が形成されるのだ。
ちょっとおもしろいのは、この火山が「連続して作られている」点。工場の流れ作業というか、ベルトコンベアを想像してほしい。君が工場で作業をしていて、ベルトコンベアで流れてくる製品について一つ一つ部品をつけていく。完成した製品はそのままベルトコンベアの下流側に流れていき、上流側から次々と新しい未完成の製品が流れてくる。君はベルトコンベアの同じ場所に立って、黙々と同じ作業を繰り返す。
君の立っている場所がホットスポットであり、製品がハワイの島々、そしてベルトコンベアが太平洋プレートなのだ。太平洋プレートは西北西の方向に向かって少しずつ移動する。北北西に移動するベルトコンベアに沿って、ハワイ諸島という完成品がキレイに並んでいるのだ。図2のB付近をみてみよう。●の当たりにハワイ諸島がみられる。これ、東南東から北北西に向かって並んでいるよね。最も東南東のちょっとサイズの大きな島が最も新しい。今まさにつくられつつある火山島。この地下にホットスポットがあるのだ(先ほどのベルトコンベアの例でいえば、君が作業を粛々と行なっている地点なのだ)。完成した火山は少しずつ西北西へと移動していく。ハワイ諸島の西北西端の島が最も古いということになる。侵食されるなどしてちょっと面積が小さくなってしまっているね。そしてこのベルトコンベアの列はさらに西北西すなわちBの白丸の方向へとつらなっているのだ。多くの火山が並び、それらは形成年代が古い(プレートの移動のスピードはごく遅いものなのだ。本当に少しずつ少しずつ西北西の方向に進んでいる)ので、侵食されていく。小さくなってしまったもの、海面下に沈んでしまったものもあるだろう。しかし、その島々は断面図においてははっきりとみられるのではないだろうか。そう、複数の突起が海面に重なっている。これらは火山島であり、ハワイ諸島から連続するものだね。たしか太平洋戦戦争の時代に米軍が日本攻撃用の基地をおいたミッドウェイ島がここにあるんじゃないかな。「ミッドウェイ=中途」であり、なるほど、アメリカ本土と日本列島のちょうど中間地点にあるね。
ちなみにこのハワイ諸島がホットスポットから西北西の方向に並んでいるというネタは東大の2017年の入試問題に登場している。東大の問題を研究すると共通テストの出題予想ができてしまうのだが、この重要な「秘密」は誰にも言わないで、君の心の中にソッとしまっておこう(笑)。
これで答えは出たので他は判定の必要はないかな。2がD。白丸が沿岸にあるので、この箇所の水深が浅くなっているね。3がC。この付近に海嶺があると思うのだが、それは現れていないようだね。水深は4000mほど。海洋の大部分は「大洋底」という地形であり、深さは4000mほど。
【第4問問2】
[ファーストインプレッション]最初にこの問題を見た時、真っ先にハイサーグラフが目に入り、「なるほど、気候グラフの問題なんだな」と思ったものの、文章を読んだらなぜか「民族衣装」について語られていて「なんでやねん???』と不思議に思ってしまった。あ、そうか、これはシンプルな気候グラフの問題ではなく、そこに服装という人々の暮らしに関する内容を組み合わせた複合的な問題だっただな。こういったパターン、昔は無かったわけではないものの、とくに共通テストになってから顕著になった傾向だよね。単一のジャンルからの出題ではなく、複数のジャンルからの嗜好を結びつけた重層的な問題と言える。
[解法]気候グラフと説明文を組み合わせた「3点止め」の問題。こういった問題は先に文章から片付けてしまうのが正解。まずはアから。アルパカって何だろう?アンデス山脈で飼育(遊牧)されている家畜であり、毛が得られるだけでなく荷物を運ぶ荷役用にも使われる。アンデス山脈そのものは南米大陸の西岸の広い範囲に及び、低緯度から高緯度まで広がっている。ただ、標高はかなり高く、高緯度であるチリやアルゼンチンの南部はさすがに居住に適さない氷の世界。山岳氷河や万年雪がみられる。人々の生活がみられる範囲のアンデス高原は、コロンビアからエクアドル、ペルー、ボリビアまでの低緯度一帯に限られる。「アンデス高原=低緯度」であるならば、標高が高い分だけ気温は低いものの、緯度の低さゆえ気温年較差は小さい(*)。全体の気温は低く、しかし気温年較差が小さいGが該当する。降水量は考えなくていい(雨季と乾季がみられるようだが、これは低緯度地域においては一般的なもの)。
さらにイではトナカイという言葉がある。トナカイを知らない人はいないと思うけれど、トナカイは漢字で書くと「馴鹿」。十分に家畜化された動物なのだ。農耕に適さず樹木に恵まれないツンドラ地域(北極海沿岸の荒地。雪氷に覆われ、夏の間のみ表面が融解し苔に覆われる)で飼育(遊牧)されている。気温の極めて低いFが該当する。ちなみに、月平均気温が10℃より低いことがツンドラ気候の定義だが、このグラフでは10℃を超える時期があり、それには該当しないね。とはいえ、もちろん寒冷な気候がみられるわけで、トナカイの飼育は行われているだろう。厳密なケッペンの気候区分に従う必要はないってことだね。
残ったウがGとなる。こちらは特定の動物(家畜)の名称が登場せず、ちょっと曖昧な文章になっている。とくに気にする必要はないね。
ただ、こちらの問題については最低限チェックして欲しい言い回しがあり、ちょっとわかりにくいところもあるので、必ずチェックしておこう。それが衣服の特徴に関するキーワード。「防寒性」、「保温性」、「断熱性」、「通気性」、「吸湿性」。
「防寒性」はわかりやすいね。寒さを防ぐのだから、寒冷地域の衣服の特徴。「保湿性」はどうだろう?湿気を維持するのだが、これは乾燥地域など少雨地域の衣服の特徴とみていいんじゃないか。なるほど、Gのグラフは全体的に降水量が少ない。さらに「断熱性」。これがわかりにくいので確実に理解しておくこと。Gは最暖月でも15℃に達せず、かなり涼しい地域と言える。断熱性は寒い地域のキーワードと考えるべきだろう。さらに「通気性」と「吸湿性」。これは風通しの良さを考えればよく、つまり「多湿」であるということ。降水量が多い地域。とくに「蒸し暑い」気候がイメージできるんじゃないかな。Hのグラフから考えられる気候は、雨季と乾季ははっきりしているものの、雨季には高温で降水量が多く、まさしく「蒸し暑い」気候となる。木綿のような素材によって衣服が作られているのだろうね。毛や皮はさすがに暑いし、通気性も悪い(だからこそ寒い地域では重用されるのだが)。
(*)緯度と気温年較差の関係はわかるよね。地球が太陽の周りを公転しているわけだが、地軸を傾けたまま周回しているので、極地方など高緯度においては季節による太陽からの受熱量が大きく異なる。高緯度地域では夏は極端に昼が長く、冬は極端に昼が短くなる。一方で、低緯度地域ではいかに地球が傾いていようとも年間を通じての昼の長さには大きな変化はなく、太陽からの受熱量は夏も冬もさほど変わらない。最暖月平均気温と最寒月平均気温の差である気温年較差は極小となる。
【第4問問3】
[ファーストインプレッション]食料供給の問題。地域の食文化は気候環境と結びつき、さらに経済レベル(1人当たりGNI)も考慮に入れたら、さほど難問ではないと思う。
[解法]「1人1日当たりのたんぱく質供給量」の問題だが、ストレートにその地域の食文化を考えればいい。候補になっている国は日本とベトナム、カナダなので紛らわしい国はないと思う。日本とベトナムはともにアジアの国だが、経済レベル(1人当たりGNI)が全く異なり、それが食の西洋化と関連しているはず。
まず総量を考えてみよう。どうだろうか。欧米の食生活の方が一般にカロリー過多である。肥満などの生活習慣病も多い。まずはカをカナダと推測してみる。欧州の文化が伝わり、食は西洋化している。肉類や牛乳が多いことに特徴がある。カはカナダで確実だろう。
キとクはベトナムか日本となるが、なるほど魚が重要なたんぱく源となっている点が、欧米様式の食文化がみられるカナダとは明確に異なる。東アジアや東南アジアでは魚介類の供給量(消費量)が多い。ここからは1人当たりGNIの高低で考えよう。1人当たりGNIの高い先進国の日本では食文化はより多様化し、肉や乳製品といった西洋の文化も多く採り入れられている。カとキは肉の値は変わらないが、牛乳の値が大きく異なり、これが大きいキが日本で、小さいクがベトナムではないだろうか。
キについては大豆の値が大きいことも特徴の一つ。大豆の利用法は主に飼料であるが、我々の口に直接入ってくるものではないので、この表の大豆の値にはそういった飼料用の利用は含まれていないだろう。飼料意外の大豆の利用といえば、やはり豆腐や納豆、醤油ではないだろうか。日本固有の食文化というわけでもないだろうが、いずれも日本人の食卓には欠かせないものである。日本人が大豆からたんぱく質を多く得ていることは、まさにその通りなのではないだろうか。キを日本と判定して妥当だろう。
ベトナムでも醤油に近い魚醤があるが、魚が原料であり、大豆は関係ないね。
【第4問問4】
[ファーストインプレッション]これ、ちょっと難しいなと思ったんだけど、図4を見るとサ~スの値が全然違っていて、これは区別しやすいんじゃないかな。もちろん地名に関する知識は不要であるし、提示された資料(今回は図5。それぞれの島の位置が示されている)を絶対的な手がかりとして解けばいい。思考力は知識より常に優先される。
[解法]観光に関する問題。ビジネスや労働者の移動ではなく、観光なのでちょっとそこは意識して欲しいかな。選択肢はグアム、ハワイ、フィジーであるが、特別な知識は問われていない。そもそもフィジーなんて知らないよね(笑)図5にそれらの位置が示されており、さらにタヒチの値がヒントにもなっている。思考力で乗り切ろう。
先にタヒチを分析しておこうか。Jの値がとくに低い。北アメリカの値は比較的高いが、オセアニアは低い。一方で、Kの値が極端に高くなっている(というか、Kについては他の島々の値が極めて低いというべきか)。
図5を参照すると、タヒチは絶海の孤島である。他の大陸からの距離は極めて低い。距離的な関係による観光客数の大小はないのではないか。しかし、他の地域に比べ圧倒的にヨーロッパの割合が高い。これってどういうことなのだろう?わかるかな?これについては後から考えてみよう。
やはり優先して考えるべきは「距離」なのではないか。例えばスは圧倒的にオセアニアの割合が高い。オセアニアは主にオーストラリアとニュージーランドであり、人口が少ない。母数が少ないのだから観光客も少ないはずなのだが、しかしスへの観光客数は他の地域からに比べかなり多くなっているね。こういった特殊な状況が生じることについては距離を考えてみよう。グアムとハワイに比べ、フィジーはオーストラリアやニュージーランドからの距離が近い。これら両国からの観光客が多数を占めていると思って問題ないと思いう。スがフィジーである。
さらにサとシだが、これがグアムとハワイ。北アメリカとの距離を考えれば、ハワイこそアメリカ合衆国やカナダに近いね。アメリカ人やカナダ人からすれば、わざわざ遠いグアムに行くより、ハワイへの観光を優先させるだろう。北アメリカの値が圧倒的に高いシがハワイとなる。
残ったサがグアムなんじゃないかな。ここはほとんどの観光客がJである。Jは何だろうか。選択肢はアジアかヨーロッパ。これも場所で見たらいいと思うよ。日本や中国、韓国、台湾といった多くのリゾート客を送り出している東アジアの国々から近い位置にあり、お手軽な観光地と考えられているんじゃないかな。
なお、グアムはマリアナ諸島の一部。「マリアナ」でピンときたかな?図5を参照するとグアム島から北に向かって弧状に小さい島が並んでいるね。これがマリアナ諸島なのだが、これらの島々はマリアナ海溝に並行している。マリアナ海溝は第1問問1でも登場している。プレートがぶつかり合い、海底に深い凹地が形成されている。世界で最も深い土地(海底)である。
よって消去法で残ったKがヨーロッパと考えられる。タヒチで割合が高いね。実はタヒチは独立した国ではなく、現在でもフランスの一部なのだ。フランスに支配され、フランス語が使用される。タヒチの先住の人々は彼ら独自の文化を維持しつつも、本国フランスとの関係は強いのだ。ヨーロッパというか、とくにフランスからの観光客が多いのではないか。
【第4問問5】
[ファーストインプレッション]最近やたら強調されているのは、オーストラリアから中国への輸出
。世界的な資源輸出国であるオーストラリアと世界最大の資源輸入国である中国は、鉄鉱石や石炭の貿易において強く結びついている。
[解法]貿易の問題だね。21世紀に入り世界の貿易構造はどのように変化しただろうか。こういった問題は漠然と全体を捉えてはいけない。特定の国の、特定の品目に着目し、それを絶対的な手がかりとして問題に相対するべきなのだ。
とくに君たちに知っておいて欲しいのはオーストラリアの貿易。独立からしばらくの間はあくまでイギリスの旧植民地としてヨーロッパとの関係が強かった。羊毛が輸出されていた。ヨーロッパは寒いから羊毛の需要が高く、その消費量が多いね。しかし、日本の高度経済成長の時代、オーストラリアと日本との関係が強化される。日本は工業化により臨海部に多くの製鉄所が設けられる。ただし、日本は鉄鉱石資源や石炭資源に乏しい国であり(国内の炭鉱はこの時期に次々と廃坑になっている)、その多くをオーストリアからの輸入に頼っていた。オーストラリアの最大の輸出相手国が日本になった時代である。
しかし、現在は中国が世界最大の工業国に成長し、世界全体の鉄鋼(粗鋼)生産の半分以上を占めるまでになった。中国は鉄鉱石や石炭の世界的な産出国であるが(鉄鉱石の生産や貿易に関する統計は第2問問1でも出題されているね。このように共通テストは(わずか30問しかないにも関わらず)同じネタが何回も登場することがあるのです)、それだけでは国内の供給(消費)を賄うことができず、多くをオーストラリアから輸入している。「資源輸出国」であるオーストラリアと「資源輸入国」である中国との結びつきを意識しよう。
ではこのことを意識しながら問題を解いてみよう。図6では各国間の貿易額が示されている。(日本や欧州など他の国や地域への金額も含む総貿易額はわからないが、4カ国間だけの貿易でも全体の総貿易額は想像できるだろう。例えば2019年ならば、Pの輸出は「600億ドル以上」が1つ、「100~600億ドル」が1つ、「10~100億ドル」が一つ、輸入も同じく「600億ドル以上」が1つ、「100~600億ドル」が1つ、「10~100億ドル」が1つとなっている(「輸出先」が実質的に「輸入額」を示していることがわかるだろうか)。
Qも輸出はPと同じだが、輸入については「600億ドル以上」が2つ、「100~600億ドル」が1つである。一方でSは輸出が「100~600億ドル」が1つ、「10~100億ドル」が1つ、「10億ドル」が1つとなっており、輸入が「10~100億ドル」が2つ、「10億ドル未満」が1つである。
ここで一つセオリーを思い出して欲しい。「経済規模と貿易額は比例する」というセオリーがあるね。経済規模とはGNIのこと。GNIは要するに国が持っているお金だと思ってくれたらいいけれど、たくさんお金を持っている国はその分だけ貿易額も大きくなるということ。これは簡単で当たり前のことだね。
GNIの順位はわかるだろうか。1位アメリカ合衆国、2位中国、3位日本、4位ドイツ、5位インドである。オーストラリアは経済レベル(1人当たりGNI)は高いものの、人口が極めて少ないため、GNIは小さい。ペルーは経済レベルと人口ともに大きな値ではなく、GNIも小さくなる。
このことを意識してグラフを解析するとどうかな。P~Sの4カ国中、貿易額が大きいのはPとQであり、この2カ国をGNI(経済規模)が大きいアメリカ合衆国と中国のいずれかとみていいだろう。貿易額が小さいRとSはオーストラリアかペルーのいずれか。
さて、中国はPとSのいずれかだろうか。例えばここではみんなも知っている簡単な事項から推理してみよう。それは「中国の経済成長」である。中国は経済成長がキーワードになる国で、20世紀の後半に市場開放を進め、外国企業の進出を促す(工場の進出など)ことによって経済規模が大きく拡大していった。21世紀に入ると、GNIにおいて日本を抜き去り世界2位へと躍進し、さらに鉄鋼や自動車の生産は世界最大となった。これを考慮に入れ、1999年から2019年にかけてより大きく経済成長したとみられるのはPとQのいずれだろうか。工業化による経済成長で経済規模が拡大し(GNIが大きくなり)貿易額も増加しているはず。
例えば輸出を比べてみると、1999年のPは「100~600億ドル」が2つ、「10億ドル未満」が1つであるのに対し、1999年のQは「100~600億ドル」が1つ、「10~100億ドル」が1つ、「10億ドル未満」が1つであり、貿易額は「P>Q」であると考えられる。
これに対し、2019年のPは「600億ドル以上」が1つ、「100~600億ドル」が1つ、「10~100億ドル」が1つ。Qも全く同じで「600億ドル以上」が1つ、「100~600億ドル」が1つ、「10~100億ドル」が1つ。図から判断できる範囲ならば「P=Q」であり、PがQに追いつかれている。伸び率を考えるならば、Qの方が大きく伸びていると考えられる。
輸入をみてみよう。1999年のPは「100~600億ドル」が1つ、「10億ドル未満」が2つ。1999年のQは「100~600億ドル」が1つ、「10~100億ドル」が1つ、「10億ドル未満」が1つ。全体としては「P>Q」だろう。それに対し、2019年のPは「600億ドル以上」が1つ、「100~600億ドル」が1つ、「10~100億ドル」が1つ。Qは「600億ドル以上」が2つとなっており、他は「100~600億ドル」が1つ。どうだろう?図から判定する限りだが、おそらく全体の貿易額も「P<Q」となっているのではないだろうか。成長の度合いはQでこそ高い。
20世紀前半から世界最大の経済大国として君臨してきたアメリカ合衆国に対し、中国は1980年の改革開放政策を契機に21世紀に入りようやく本格的な成長を見せてきた国である。貿易額の増加率の高いQを中国と判定し、ついにアメリカ合衆国に貿易規模において追いついた(もしくは逆転)と考えていいだろう。中国はQであり、正解は2。
ただ、個人的には本問の最大のポイントはアメリカ合衆国と中国の比較ではないと思う。カギはオーストラリアである。オーストラリアはかつてはイギリスの影響が強い国であり、その主な貿易相手国もイギリスであったが、日本が高度経済成長を迎えるあたり多くの鉱産資源を必要としたことから日本との鉱産資源の輸出を介した経済関係が強化された(また高度経済成長期が本問でも話題とされているね。第2問問2の1970年台における製鉄所の新設の様子を確認しておこう。オーストラリアからの石炭と鉄鉱石の輸入が増え、太平洋の臨海地域に製鉄所が設けられた)。この時期より主要輸出品目が鉱産資源となったのだが、21世紀を迎えた現在、世界で最も鉄鉱石や石炭などの資源を欲している国はどこだろう?これについては第2問問1でも取り上げられているね。そう、もちろん中国。「オーストラリア→中国」の貿易関係がとくに強固となっている21世紀なのだ。図6においてはRがオーストラリアなのだが、2019年のRからSへの輸出額は600億ドルを超えている。輸出元のオーストラリアと輸出先の中国との経済関係を想像してみよう。
(おまけ)みなさんの中には勘違いしている人も多いと思いますが、「先進国=工業生産、発展途上国=資源輸出」ではないので注意。むしろ先進国には食料を輸出している国が多く、時にはオーストラリアのように資源輸出が多い国もある。発展途上国は低賃金を背景に(そして中国の場合は巨大な国内市場を背景に)工業によって経済発展を図る国が多く、製造業が発達する国が多い。むしろ先進国で「時代遅れ」の工業化を推進している日本こそ、世界的には特殊な立ち位置にある国なのだ。
ちなみに、詳しい年代は知らなくていいが、オーストラリアの貿易相手国の変化も過去に出題されているので参考までに。
独立以来長い間はイギリスが最大の貿易相手国。主に羊毛など農畜産物が輸出されていた。ただし、イギリスの経済的地位はさほど高くなく、ヨーロッパへの依存を高めていった。いよいよ1970年台にはEC(現EU)に加盟し、オーストラリアとの関係は弱まる。
オーストラリアも親ヨーロッパ路線から親アジア路線へと政策を変更。イギリス系中心の国づくりを指向した白豪主義政策を廃棄し、近隣諸国との関係を深める多文化主義に転換した。経済的にもアジア地域とのつながりが深まり、日本が最大の貿易相手国となる。高度経済成長期の日本に石炭や鉄鉱石などの資源を大量に輸出した。
さらに20世紀末期から21世紀に入ると、世界経済において中国が台頭。現在の鉄鋼生産の50%以上を中国を占めるなど世界最大の工業国へと成長。現在はオーストラリアにとって最大の輸出相手国は中国であり、鉄鉱石や石炭が主な輸出品目となっている。
国内マーケットの小さい(GNIの小さい)オーストラリアは工業生産は少ないが、資源の輸出によって大きく経済発展w測ってきた。第2問問3でも日本のオーストラリアからの石炭輸入がテーマとされている。たとえば「オージービーフ」など食料品の輸入も日本人の我々からすると豪州のイメージであるが、やはりそれ以上に鉄鉱石や石炭の供給国としての重要性が高いのだ。
(解き終わってみての感想)これ、名作ですね。めちゃくちゃいい問題だわ。過去問でも頻出の話題「オーストラリアから中国への鉄鉱石輸出」がメインテーマとされ(というか、過去問どころか同じ回の第2問問1でも登場しているネタですよね)が問題を解く鍵となっており、それに重ねて「貿易額とGNIは比例する」というセオリーが登場。そして現代社会の最も重要な事例である「中国の経済成長」までポイントとされている。もちろんグラフの正確な読解も必要。これ、隙のない名作だと思います。こういった問題に出会えるのも共通テスト地理の魅力。
【第4問問6】
[ファーストインプレッション]図を見て解くだけの考察問題でしょうか。そんな雰囲気があるけどね。
[解法]図を漠然とみても注目するべき箇所がわからないので、こういった問題は直接文章を読んで、一つ一つ検討していこう。
まず選択肢1から。中国がわかりやすいかな。円の大きさが急激に拡大している。アジアの方が多くなっているね。正文。
選択肢2について。割合を考えてみよう。地理は数字の学問なのだ。アジアの最もわかりやすい国として中国を考える。1999年は中国において製造業の割合は4分の3ほど。それに対し2019年は半分程度に割合が低下している。この文章が誤りなんじゃないかな。
他の選択肢は検討の必要はないが、一応チェックしておこう。選択肢3だが文末が「~含まれる」とある。ソフトウェアやAIの開発に関わる企業も一つぐらいはあるんじゃないかな。誤りとは判定できない。
最後に選択肢4。「アジアに進出している日本の製造業として自動車産業がある」とあるので、アジア各地で日本の工場が自動車生産をしていることは間違いない。なるほど、部品についても可能な限り、現地で調達しているのだろうか。この選択肢の正誤はよくわからないが、選択肢2が確実に誤っているので、こちらは正文なのだろう。