2024年地理B本試験[第3問]解説
【第3問問1】
[ファーストインプレッション]おっと、都市構造の問題なんじゃないかな。共通テスト地理において最も出題率の高いジャンルこそ都市構造。さらにここからの出題は理論に基づいた思考問題が多いので、解いていてとても参考になります。心して取り組もう。
またここでは「1960年代」からの変化がテーマとされている。これも共通テストが本当に好きなネタだね。地理は高度経済成長期から現在までの変化について学ぶ科目でもある。
[解法]写真のAが欠けているけれど、これは想像するしかないかな。「日本のある大都市圏における都心、郊外、臨海部」のいずれかの写真であるという。まず注目するべきは「都心」と「郊外」。都心を含むエリアを「都心部」とする。これは都市圏(通勤圏)の中央部を占め、昼間人口が夜間人口(常住人口)より大きい(官公庁や企業のオフィスがあつまっている)。その周辺が「郊外」だね。都市圏の外縁部であり、都心部を取り囲んでいる。こちらは昼間人口が夜間人口より少ない。主に住宅地になっており、都心部への通勤者が住んでいる。「都市圏=都心部+郊外」であり、この中で日常的な人口移動が生じていることを理解する。
一方で「臨海地域」という言い方は都市圏構造のキーワードとはならない。そもそも内陸の都市ならば臨海地域はないわけだからね。ただ、周囲を海で囲まれ、さらに港に適する場所の多い(あるいは埋め立てなどの人工的な工事によって港をつくりだす)日本においては、臨海地域を基礎として発展してきた都市は少なくない。実際、三大都市圏である東京、名古屋、大阪の都心部には港がある(東京港、名古屋港、大阪港。ただし、東京港は横浜港より小さく、大阪港は神戸港より小さいが)。日本の都市の場合、都心部の一部が臨海地域となっていることはスタンダードな形と思っていいんじゃないかな。
写真を判定してみよう。Bはビルが林立し、多くの建物が密集している。これは「都心部」とみていいと思う。1960年代という時代背景から、超高燥ビルといったようなものはみられないけれど。
Cは団地とみられる建物が並んでいるね。これは「郊外」の典型的なニュータウンの風景だろう。近年のニュータウンは、土地に余裕のある一戸建て中心のものも多いけれど、当時はこういった団地が一般的だったんだろうね。
このことからAについては「臨海地域」の写真であったことが想像される。そもそもBにもCにも海が示されていないのだから、Aの写真にはおそらく海が写されているのだろう。1960年当時の臨海地区ってどういった感じなのだろう?高度経済成長期であることをもちろん考えて欲しい。日本では重工業化が進み、資源を輸入に依存する鉄鋼業や石油化学工業が発達した。臨海地域にも製鉄所や石油化学コンビナートが設けられている。日本がより古い時代から盛んだった造船所も残されているかもしれない。いずれにせよ、臨海地域に工業地域が成立した状況は想像しやすいだろう。この写真にも工業地域が示されていたのかもしれない。
ここで文章を検討しよう。
まずアだが、高度経済成長期には地価が上昇し、人口が減少したとある。これはまさに都心部の状況なのではないだろうか。地価高騰だけではなく、騒音や大気汚染などの公害も深刻になった時代である。居住環境の悪化により、都心部から人々が流出した。都心部のBに該当。
さらにイだが、こちらは逆に高度経済成長期に人口が流入している。主にファミリー層のようで単身者(単独世帯)ではないようだ。郊外の住宅団地にみられる状況なんじゃないかな。郊外のCに該当。
残ったウが臨海地域だろうか。1060年代当時多くの人が働いていたというのは工場があったということだろう(ただ、臨海地区に立地する工業種は鉄鋼業や石油化学工業といった資本集約型工業であり、衣服や自動車などの労働集約型工業ほどには働き手は必要としないが)。
以上より、正解は4となり、問題そのものは簡単。ただ、ここからなんですよ(笑)共通テストの問題は質が高いので、どんなに簡単な問題であっても(というか、簡単な問題だからこそ)分析と研究の価値があるのです。難しい問題などどうせ悪問だし、そんなものは放っておけばいい。誰でもできるような一般的な問題だからこそ、今後も似た傾向の問題が続けて出題される可能性は高いし、とくに今回のような頻出ジャンル(都市構造)ならばそれは尚更。
ア(都心部)の文章を検討しよう。1990年代後半以降(おおよそ21世紀になってから、と考えていいと思う)は「地価下落や通勤の利便性を背景に、人口が増加に転じた」とある。1990年代初頭にバブル経済が崩壊し、地価が下落し、都心部でも土地を取得することがさほど困難でなくなった。タワーマンションの高さ規制が緩和されたこともあり、都心部では再開発による集合住宅建設が盛んに行われるようになった。この結果、都心部へと人口が回帰する現象が生じ、現在は極めて人口増加率の高いエリアに変貌している。
都心部の人口増減の動きとしては、こちらのように頭に入れておく。「1960年代から1999年代;人口減少」「2000年代以降;人口増加」。
イの郊外も同様に、世紀の変わり目を境に人口動態が変化したと考えよう。1960年代を中心とした高度経済成長期に郊外化が進み、都心部から郊外への人口移動が生じた。これはいわゆる「ドーナツ化現象」と呼ばれるもの。しかし、都心部と同様に21世紀に入り、新しい人口問題が生じる。それが「高齢化」である。ニュータウンは、それが集合住宅(団地)であるか一戸建てが並ぶ地域であるかに関わらず、住民の人口構成に偏りがあることが最大の問題点となる。入居当時は若い世代ばかりだからいいのだが、それが40年、50年を経ることで一気に高齢化が進む。かつての若者の街が老人の街になってしまったのだ。高齢者用の施設や医療機関の整備、あるいはバリアフリーなどリフォームの必要性も生じ、新たな問題となっている。かつて高かった人口増加率も下がり、奈良県や千葉県など人口が減少に転じた「かつてのニュータウン地域」もある。
最後にアも確認しておこう。写真がないので何とも言えないが、これは臨海部の工業地域であり、とくに労働力を必要とする造船所を考えるといいだろう(同じく臨海工業地域である製鉄所や石油化学コンビナートについては、高度経済成長期の1960年代に設けられたものが多く、比較的施設が新しいこともあり、21世紀の現在でも盛んに生産活動を行なっている)。
かつての造船地域が采配発され、現在は新しい都市へと生まれ変わっているところに横浜市の「みなとみらい21」がある。横浜駅に近接し、都心部に近いエリアが工業地域だったのだから、これは土地の「無駄遣い」だよね。造船所はつぶされ、高層ビルの林立するオフィス街や集合住宅地区へと変貌した未来型の都市である。商業施設やコンサートホール、遊園地などレジャー施設も備えられている。代表的な「ウォーターフロント再開発」の例。現在では工業地域だったことが想像すらできないみなとみらい21だが、その名残はある。ドックヤードというところが保存されており、みんなも横浜に行った際には訪れてみて欲しい。船舶を造る際のドックが当時のまま残されている。いかに巨大な船舶がつくられていたのかを思い知る重要な文化遺産である。
ただ、ちょっとだけ気になるのはウの「大規模」っていうところなんだよね。たしかにみらとみらいには遊園地があるんだけれども、それは決して「大規模」と呼べるような大きなものではないような気もするのだが。。。この写真、もしかしたら横浜の造船所じゃないのかな。可能性があるのは北九州の八幡製鉄所だよね。日露戦争の時代(20世紀初頭)に操業を始めた日本最初の巨大な製鉄所であり、近隣で採掘される石炭と中国から輸入される鉄鉱石を原料として長く日本の重工業を担ってきた。巨大な高炉を備えた製鉄基地が複数あったのだが、日本における鉄鋼地域の移動(原料指向型から、オーストラリアからの輸入に適した太平洋沿岸の臨海型へと鉄鋼業のスタイルが変化)によって北九州も優位性を失っていく。やがて一つの製鉄所が閉鎖され、その広大な跡地は再開発され、スペースワールドという九州最大の遊園地へと建て替えられた。北九州の製鉄所が減ったことは第2問問2でも問われているね(今回の問題は全体として同じネタが何回も出題されているように感じる。日照時間やオーストラリアと中国の貿易関係など。ちょっと手抜きなんじゃないかな???)。「大規模」っていうのはこのことなのかな。とは言うものの、実はこのスペースワールドについてはすでに閉鎖となっており、現在はアウトレットになっているんじゃなかったかな。遊園地の閉鎖の経緯や現在の利用についてはまた検索でもして調べておいてください。時代の流れは慌ただしいものだね。常に変化している。
【第3問問2】
[ファーストインプレッション]良問ですね。日本の都道府県が登場し、それが明確なキャラクターを有し、それに従って理論にあてはめながら解いていく。ある程度は「一般常識」の範囲でもあるけれど、しかしやはり括弧とした「理論的裏付け」があるから解ける問題なのですね。
[解法]候補は秋田県、東京都心の中央区、東京郊外の調布市、そして福岡市。それぞれ「地方(農村)」、「大都市圏の都心部」、「大都市圏の郊外」、「地方中枢都市」というキャラクターを有している、もはや古典的というべき問題パターンだね。
まずは昼夜間人口比。大都市圏に含まれる二つのキャラクター(都心部と郊外)に注目しよう。都心部は官公庁や企業のオフィスが集まり、昼間に多くの通勤者が集まる。明確な「昼間人口>夜間人口」のバランスとなる。それに対し、郊外は都心部への通勤者が住む住宅地が広がり、昼間は都心部への人口流動がみられる。こちらは「昼間人口<夜間人口」。昼夜間人口比率が100%を割り込んでいる4が郊外の調布市になるね。一方で、極端にこの値が高い1がおそらく中央区なんじゃないかな。東京大都市圏は世界最大の規模を持ち、その分だけ都心部への通勤者の集中は極端なものとなる。
残った2と4はどうだろうか。地方中枢都市として「その地方の首都」である福岡市ならばより明確に昼夜間人口比率が高くなりそうなものだが、2(109.8)と3(103。7)とであまり差はないよね。そもそも福岡市は人口も大きく(150万人規模)、母数が大きいことも思ったより昼夜間人口比率が高くならない理由なんだろうね(例えば中央区は高地価などを理由に高度経済成長期以降は人口が流出し、夜間人口(常住人口)が少ないことが、昼夜間人口比率が456という超高率になる理由の一つになっているね)。
よって福岡市と秋田市の判定は他の要因で考える。地方中枢都市は上述のようにその地方の首都であるので、都心部的なキャラクターはある程度はみられる。どうだろうか?1を見比べてみて、2と3、どちらが「都心部」的だろうか。やはり鉄道に注目するべきだと思うよ。東京都は世帯当たりの自家用車保有率の最も低い都道府県だが、地価の高さ(駐車スペースの確保)や過密の度合い(渋滞)を考えれば納得できるね。一方で、都心を中心に郊外に向かって放射状にJRや地下鉄、私鉄などの鉄道網が整備されており、通勤者をはじめとする人々の足となっている。「地方の首都」である福岡においてもこういった傾向がみられるのではないか。2と3を比較し、鉄道の割合が高い(そして自家用車の割合が低い)2こそ、福岡市とみていいんじゃないか。
残った3が秋田市となる。「地方(農村)」の典型的なスタイル。大都市圏外に位置し、鉄道など公共交通機関の整備は進まない。人々の足は主に自家用車である。日本の大都市圏外の地方では、従来の中心地であったはずの駅前地区は衰退し、商店街もシャッター通りと揶揄されるほどに店舗の閉鎖が目立つ。その一方で、郊外の幹線道路沿いには広い駐車場を備えたショッピングセンターが設けられ、人々は自家用車でそういった店舗を訪れる。商業活動の中心はそちらとなる。
私もかつて福井市を訪れた時に、駅前が寂れていることにも驚いたが、それ以上の郊外のショッピングセンターに客があふれていて「どこから人が湧いてきたんだ!?」ということにも驚いた。地方は衰退しているのではなく、人々のライフスタイルが明らかに大都市圏と違うのだ。自動車の運転が苦手な運動音痴で方向音痴のたつじん氏は、地方では暮らせません(苦笑)
【第3問問2(別バージョン)】
[ファーストインプレッション]オーソドックスな問題なのだが、そこにちょっとした「思考」のエッセンスが含まれている点が今時の問題っぽい。思考っていうと大袈裟かもしれないが、要するに君たちが生活の中で肌で感じていること。都心部ってこうだよね、農村ってこうだよね、っていう大まかなイメージを持つことが有効になっている。
[解法]日本の地域について4つに区分して出題されるパターンの問題は多い。
まず日本全体を「大都市圏」と「非大都市圏」に分ける。大都市圏は東京大都市圏、京阪神大都市圏、名古屋大都市圏の3つだが、多くの場合、東京大都市圏がクローズアップされる。非大都市圏はこの3つの都市圏から離れたところ。
さらに大都市圏は「都心部」と「郊外」に分かれる。もちろん全ての都市圏が都心部と郊外を有するわけだが、先にも述べたように基本的には東京大都市圏を考えて欲しい。都心部は東京の特別区部を指し、郊外はその周辺の東京都西部、埼玉県南部、千葉県西部、神奈川県東部。単体でもそれなりの規模の都市圏を持っているだろう横浜市であるが、ここでは東京大都市圏の郊外を成す地域と考えて欲しい。実際、横浜市は「昼間人口<夜間人口」である。
非大都市圏はさらに「地方中枢都市」と「地方」に分けられる。地方中枢都市は具体的に考えてしまっていい。北海道地方の札幌市、東北地方の仙台市、中国地方の広島市、九州地方の福岡市の出題率が高い。その地域の「首都」であり、行政や経済、文化の中心。行政についてはさまざまな公的機関の支部が置かれ、経済については企業や銀行(金融業)が集中、文化については大学を考えたらいいんじゃないかな。非大都市圏のうち、地方中枢都市から外れるものは「地方」であり、「農村」をイメージするといい。経済活動は停滞し、雇用も十分ではない(役所で働く公務員ぐらいか)。過疎化する農村地域を抱え、人口が減少している。
こういった4つの地域区分を考慮し、選択肢を判定。「都心部」は東京都心の中央区、「郊外」は東京郊外の調布市、「地方中枢都市」は福岡市、「地方(農村)」は秋田市となる。
最もはっきりしているのは「郊外」。郊外は都心部への通勤者が多く、昼間人口が夜間人口より少ない。昼夜間人口比率が100を下回っている4が郊外となる。
さらに「都心部」もわかりやすいんじゃないかな。巨大な東京大都市圏の中心に位置し、周辺部から多くの通勤者が集まる。昼間人口は極めて大きくなり、昼夜間人口比率が極端に高い1が都心部となる。それにしてもさすがに450%は高すぎる値とも思うが、ここで取り上げられている中央区の場合、夜間人口が少ないことの影響もあるのだろう。地価の高騰によってかつて多くの人口が流出した。現在は人口の都心回帰もみられるが、それでもさほど人口は多くない。夜間人口が少ない分だけ、とくに昼夜間人口比率が極端な値に跳ね上がっているのだろう。
以上より、1と4を合わせて「大都市圏」とも言える。大都市圏の傾向って何だろう?1と4はいずれも鉄道の割合が高く、自家用車の割合が低い。大都市圏内の移動については地下鉄やJR、私鉄など鉄道を利用するのが便利だよね。自動車の移動では交通渋滞にはまる危険性があるし、そもそも駐車場料金も高いので自家用車の保有率も低い(人口が多いので実数としては自動車の数は多い。そのこともさらに渋滞を深刻化させる)。大都市圏内の人々の移動をイメージしよう。
さらに2と3の判定。昼夜間人口比率に大きな違いはないけれど、あえていえば値の高い2が「九州の首都」である福岡市かな。都心部と同様に多くの通勤者が周辺地域から流入する。なお、福岡市の通勤行動の様子は2021年地理B第2日程(追試)第5問問2で登場しているのでぜひ参照しよう。ちなみにこの大問(福岡市の地域調査)はおもしろいのでぜひ解いておくことをお勧めする。とくに良問であるのは問4。福岡市が比較的規模の大きな都市圏を有する「小さな東京」として成り立っている様子がよくわかる。都心部に近いところは再開発によってマンションが多く建設され、郊外では高度経済成長期に開発されたニュータウンがみられる。そして遠方の都市圏外(通勤するには困難な場所)には農村が広がり、人口が減少している。東京大都市圏でみられる状況が、やや規模を小さくしながらも地方中枢都市でも観察される様子がよくわかる。
さらに決定的なのは主要な交通手段だろう。福岡市は「小さな東京」なのだ。やはり中心市街地の道路では交通渋滞がみられ、自動車の利用はちょっと難しい。鉄道など公共交通機関を使っての移動こそ、人々の足になっているのだ。2と3を比較し、東京大都市圏と同様に鉄道の割合が高い(そして自家用車の割合が低い)3こそが「地方中枢都市」である福岡市なのだろう。
残った3が秋田市。というか、むしろ真っ先にこれから判定してしまった人も多いかもしれないね。何と言っても目立つのは「自家用車」の割合で70%を超えている。他の都市に比べ極端な値になっている。公共交通機関が整備されないこと、面積に余裕があり交通渋滞のリスクや駐車料金の高さに悩まされないことなどが要因となっている。地方における「クルマ社会」の実像がよくわかるね。
昼夜間人口比率についてはさほど重視しなくていいだろう。秋田市も秋田県の中心的な都市であり、ある程度は周辺市町村からの通勤者の流入もある。しかし、さほど経済活動が活発な地域ではないので、その数は限られる。103.7という数字については、限りなく「100」に近いと解釈してほしい。昼も夜も人口は変わらない。秋田市内で通勤者の移動は原則として完結している。
一方で、福岡市の昼夜間人口比率については意外に高くないなと思った人もいるかも知れない。でもこれはミスリードであり、福岡市の人口(常住人口つまり夜間人口)が大きいことに理由があると思うよ。計算する際の分母となる数字が大きいので、昼夜間人口比率についてはさほど高くならない(逆に言えば、人口が大きいのに、昼夜間人口比率が110近くになるっていうのも凄いことなんだけどね)。
【第3問問3】
[ファーストインプレッション]こういった問題は具体的な都市名をイメージして僕は解いてしまうんだろけど、本問はそれが有効なのかな。単なる「都市」の人口ではなく「都市圏」の人口となっているのも注目ポイント。東京都は特別区部なら900万人、東京都ならば1200万人だが、東京大都市圏を考えると埼玉県や千葉県、神奈川県なども含み、その人口規模な圧倒的なものになるよね。こういったことも想像して解いてみて欲しい。
ちょっと気になるのはBRiCSという括り。BRiCSは国際組織というわけでもなく(たしかに最近はBRiCSによる会議も開かれてはいるが)、こういった問題においてまとめて取り扱うにはどうかなってちょっと思ったりはするのです。
[解法]グラフの読解が重要。横軸が1990年の人口、縦軸2015年の人口。こういったグラフは曖昧に捉えるのではなく、具体的な数字を用いて定義づけすることが大切。たとえばグラフの右上に飛び出したカの点。1990年は3.1千万人程度だったが、2015年には3.8千万人ほどに増加している。しかしそれより顕著な都市(都市圏)がキの四角には存在する。1990年には0.9千万人ほどだったが、2015年には2.6千人に急増。ほぼ3倍増の極めて高い人口増加率を誇っている。
さらに1990年の段階では上位4つまでの都市圏がカで占められており、キの最大の都市圏でも人口は1.5千万人程度。それに対し、2015年の都市圏人口をみると、最大はカであるが、2位と3位はキの都市圏であり、ほぼ同数で4位のカと5位のキが並んでいる。
これ、どうだろうか。全体としてキのグループの方が、カのグループより人口増加率が高いということにならないだろうか。また、もともと人口が多かった傾向のあるカに比べ、世界の主要都市に躍り出た都市(都市圏)がキには多いということにもなる。
より早い段階で都市化したのが先進国。18世紀の産業革命を経て、ヨーロッパや北米には工業都市が成立し、さらに商業や貿易が発達することでそれらは巨大都市へと成長していった。
これに対し、発展途上地域の都市は形成年代が新しく、整備されたのも20世紀後半以降。その分だけ都心部には高層ビルが林立し、先進国の都市以上の「未来都市」となっているのだが、そもそもの資本力が乏しいため(この点は問4の「発展途上国にプライメートシティが誕生する」システムと重ね合わせて考えてほしい)、都市施設(インフラ)の整備も十分ではない。「未来都市」である都心部は電気や水道、ガスに加え、道路など交通網(信号機や橋、トンネルなども含む)、商業施設や空港(沿岸部ならば港湾やビーチなど)も整備されるのだが、そこから一歩離れた周辺部にはスラムが広がっている(この部分は問5のメキシコシティの図と重ね合わせて考えてみよう)。大都市のみが経済成長を果たし、貧しい農村から多くの人口が流入する。スラムの拡大とともに、発展途上国のプライメートシティは莫大な人口を抱えることになる。これが20世紀後半から顕著になった人口動態の傾向である。
これを考えるとどうなるだろう。1990年の時点では先進国の都市こそ巨大であったが、そこから21世紀にかけては発展途上国の大都市こそ人口の急増がみられ、世界上位にランクインする都市も生まれたのではないだろうか(しかしその人口の多くはスラムの住民なのかもしれない)。先進国の都市に比べ、発展途上国の都市の方が成長率が著しい。
選択肢は「先進国」と「BRICS」。この問題でちょっと驚いたのはBRICSに注釈がないこと。もうすでにBRICSという言葉は当たり前のものとして必ず知っておくべきものになったということだろうか。僕はちょっとそれはどうかと思うんですよね。BRICSってそもそも民間の投資会社(ゴールドマンサックス社)が投資家の関心を煽るための「営業用の決まり文句」として普及させたものに過ぎない。
「お客さん、BRICSって知ってますか」「なんや、それ?めっちゃ凄そうやな」「ええ、今注目を浴びる4つの国(*)なんですよ」「おお、そうか。ほなぜひとも投資させてもらいますわ」「まいどあり~」って感じなもんです(笑)。
正式な地理用語でもないし、BRICSという国際組織があるものでもない。なんだか「凄そうだな」って印象を与えるための決まり文句なだけです。今でこそ「BRICS会議」という国際会議もあるけれど、それもどうなんだろうね。
そもそもブラジルとロシア、インド、中国、南アフリカに共通点はない。いちおう「豊富な人口と資源を有し、工業化によって経済成長が顕著な国々」という定義はあるけれど、1人当たりGNIはブラジルやロシア、中国が1万ドル/人に達するのに対し、インドは極端に低い。GNIは中国が圧倒的に大きく、他の国と同じレベルで語るわけにはいかない。中国と経済規模において比肩できる国はアメリカ合衆国と日本ぐらい。さらに「工業」についてもロシアはむしろ「資源」国と考えるべきで、これはOPEC諸国と近い。中国やインドの工業力は世界最大規模だね。ブラジルにしても今や南半球最大の工業国として独自の地位を築いている。これらの国を「ひとまとめ」にして考えるのはどうなんだろうね。同じように最近「グローバルサウス」という言葉も登場してきたけれど、これも定義はよくわからない。
ただ、唯一言えるのはBRICSは全体的には1人当たりGNIの低い発展途上国の集合であるということ。1人当たりGNIで考えるならば、先進国はおおよそ30000ドル/人を超える国々。韓国は余裕で入り、スペインがギリギリ。東ヨーロッパ諸国は先進地域とは言えない。こういったイメージ。
だから1人当たりGNIが1万ドル程度のBRICS諸国は「発展途上国」に分類される。図1ではなぜか「先進国」、「BRICS」、「発展途上国」の3つに区分してあるけれど、これってBRICSと発展途上国って同じじゃないの?
(*)当時はブラジル・ロシア・インド・中国の4つの国であり、BRICsと表記されたが、いつの間にか南アフリカが入ってきてBRICS表記になってしまった。いい加減なもんですね(笑)
とりあえず図1の読解をしてみようか。すでに述べたように、1990年の段階では上位5カ国にカが多く、2020年ではキの方が多い。人口の伸び方を考えてみてもキの方が高いことになる。
グラフで考えてみるならば、「1990年の人口」をX、「2020年の人口」をYと置いて、破線の直線を「Y=aX」とする。比例定数がa。
カの人口最大の都市と「0」を結んだ直線を設定。「Y=1.2×X」ぐらいだろうか。30年間で人口が1.2倍ほどになっている。一方で、2015年の人口が最大であるキの都市。「0」とこの□を結んだ線は、「Y=2.5×X」ぐらいだろうか。この30年間で人口が2.5倍へと膨らんでいる。グラフの傾きが人口増加率の高さと対応していることも考えよう。
以上より、カが「先進国」であり、キが発展途上国つまり「BRICS」。
さらに文章に該当する言葉を考えよう。現在発展途上地域でみられる人口流動の目的である。仕事を求めて彼らは移動するわけだが、彼らが就業する仕事って何だろう(もちろん仕事にありつけず、失業者としてスラムに住む人こそ多いのだが)。
たとえば同じような人口流動がみられた高度経済成長期の日本を考えてみよう。当時は日本の出生率も高く、とくに農村には余剰となる労働力に溢れていた(とはいえ、彼らは終戦間もない時期に生まれた中学生であるが)。仕事が十分でない農村から、当時工業化が著しく雇用が豊富だった(つまり労働力に不足していた)大都市圏へと多くの労働力が流入した。若い労働力の存在が日本の経済成長を支えた。この時期、こうした若い労働力が就いた仕事は何だっただろうか。十分な教育も受けていない人々である。高度な知識や術を要する仕事ができるとは思えない。誰でもできるような単純労働であり、その多くは工業であっただろうが、一部には都市での商業活動もあっただろう。商業活動と言ってしまうと大袈裟だが、お店の売子であったり、食べ物屋さんの給餌係であったり。つまり「小売業・サービス業」が該当する。
これは現在の発展途上国にも言えるんじゃないか。都市では工業が発達し、工場の労働者としての流入も多いはずだが、そうした労働者の特徴は「単純労働」である点。特殊な教育を受けた高度人材や熟練労働者が必要な専門的な仕事ではないはずだ。「金融業」はスキルが必要な仕事であり、高度人材を必要とする。農村からやってくる人々がそういった仕事をこなすことができるだろうか。工場労働者と同様、単純労働である「小売業・サービス業」が該当するね。
なお、発展途上国(BRICSも含め)ではそうした単純労働であっても、流入する労働力に対して十分な雇用は無い。過剰となった労働者は失業者となり、スラムの住民となる。多少も仕事はあってもそれは低賃金であり、あるいはインフォーマルセクター(非公式分野。政府によって正式に登録されたわけではない低賃金労働。廃品回収など)の仕事に就くしかない。都市周辺へとスラムが拡大していく(この様子は問5でも示されているね)。
【第3問問4】
[ファーストインプレッション]さらに都市の人口に関する問題。このジャンルって本当に出題率が高いでしょ?ケッペン気候区分や民族宗教のジャンルばっか勉強してる人いるけど、そんなん出ないからね。受験は情報戦なので、正しい情報を得たものが常に勝利するのです。さらに言えば、都市ジャンルとは言っても都市名は問われていないことにも注目。
[解法]都市(というか正確には都市圏)の問題。都市人口が1000万人に及ぶ「メガシティ」については必ず知っておくべき。特にヨーロッパは重要で、西ヨーロッパはロンドンのみ(都市圏まで含めるとパリも1000万都市となる)。
ただ、本問は都市の人口を実数で取り上げる問題ではないね。人口最大都市を100として、他の都市の人口を指数で表している。イタリア、オーストラリア、バングラデシュは国自体の人口規模も大きな差があり(イタリア6000万人、オーストラリア2500万人、バングラ1.4億人)、「実数」がテーマとなる問題ならばこれも手がかりになったのだろうが、今回はその手は使えないようだ。
なので、ここは「プライメートシティ」の法則を考えよう。経済レベル(1人当たりGNI)の低い発展途上国は、国全体に十分に投資を行うことができず、投資は特定の都市に偏る。都市インフラ、道路や鉄道、港湾←空港、工業地域などの整備は「一つ」の都市にのみ集中する。その都市はそもそも人口が大きい都市なのだが(そして多くの場合は首都でもある)、開発が集中することによって産業や経済、工業化が過度に集まることになり、さらに農村から多くの人口も集中する。発展途上国ではこのような首位都市が成り立ちやすく、これをプライメートシティと言う。単に「国際最大の都市」をプライメートシティと呼ぶのならば、日本の東京もその一つとなるのだが、先進国の場合は経済レベルが高く、人口当たりの資本力も十分であるため、国内に複数の拠点をつくることができる。投資は特定の都市に集中するのではなく、第二、第三の都市にも及び、広い国土に大都市が分散することになる。日本の場合は、東京以外にも大阪(京阪神)や名古屋、札幌、福岡など各地に拠点となる大都市が成り立っている。国にとって「使えるお金」に余裕があるかどうかということは非常に重要なのだ。豊かな国は投資額も豊かなものとなり、多くの都市が栄えることになる。逆に貧困な国は、複数の都市を開発する余裕がないからこそ、プライメートシティが成立しやすいのだ。
さて、このセオリーを応用するとバングラが判定できるのではないか。3カ国中、バングラのみ際立って1人当たりGNIが低い。発展途上国であり、プライメートシティが生まれやすい。2位以下の都市と人口規模が大きく異なっているスがバングラとみていいだろう。
さらにここからはちょっとだけ都市に関する知識が必要になるけれど、有名な都市だからみんな知っているんじゃないかな。中学でも登場するし、海外旅行で訪れたことがある人もいるかもしれない。オーストラリアの大都市としては2つの都市を必ず知っておこう。一つがシドニーで人口は約500万人。そしてもう一つはメルボルンでこちらは500万人にちょっと及ばないぐらい。この二つの都市の人口規模はほぼ等しい。オーストラリアの総人口は2500万人なので、この2つの都市に全人口の5分の2が集中していることになる。首都キャンベラがこの二つの都市の中間である山間部に建設されていることはよく知られているんじゃかな。この2つの都市およびキャンベラは以前にもよく出題されており、過去問に習熟していれば必ず理解できるはず。上位2つの都市の人口がほとんど変わらないサがオーストラリアとなり、残ったシがイタリア。正解は3となる。
ヨーロッパはほとんどの国が「人口最大都市=首都」なので、イタリアの人口最大都市も首都のローマ。ただ、イタリアやドイツ、スペインはか中世までに存在した多くの小国が、近代以降に一つにまとまって成立した国家。イタリアも教皇が支配していたローマの他、ミラノやベネチア、フィレンツェ、ナポリなどの小国がくっついて一つの国となった。ローマが最大であるものの、ミラノやナポリなどの都市の規模もそれなりに大きい。このような都市の規模バランスはもちろん日本でもみられるし、先進国では一般的なもの。発展途上国のプライメートシティのパターンとは異なっている。
なお、発展途上国だから全ての国でプライメートシティが成立するかといえば、もちろんそんなことはない。広い国土を有する国は、いわば「複数の国が形式的に一つの国のふりをしている」だけであり、そういった国ならば地域ごとに巨大都市が成り立つ。みんながよく知っている例としてはブラジルがあるかな。サンパウロとリオデジャネイロという有名な都市が存在しており、いずれも人口が大きいね(メガシティであるのはサンパウロだけだが、リオデジャネイロも規模が大きい)。
ただ、このように考えることもできる。中国の場合、ペキン、シャンハイ、チョンチン、ホンコン/シェンチェンがいずれも1000万規模の都市(メガシティ)であり、国内に複数の巨大都市が存在する例であるが、それぞれが別の地域に位置している。華北のプライメートシティがペキン、長江下流がシェンチェン、長江上流がチョンチン、華南がホンコン/シェンチェンと考えれば、地域ごとにプライメートシティが位置しているとみることができる。
インドも同様で、国内に4つのメガシティがあるが、北部のデリー、東部のコルカタ、西部のムンバイ、南部のベンガルール(バンガロール)と、地域ごとに首位都市が成り立っているとも考えることができる。
発展途上国でありながら、国内に複数の大都市がある例としてベトナムがある。北部の首都ハノイは大都市だが、南部のホーチミンはそれ以上に人口が大きい。南北それぞれに巨大な都市があるのだ。これはベトナムがかつて二つの国に分離していたことによる。太平洋戦争後フランスの植民地支配を脱した仏領ベトナムは、北にソ連の影響を受けた社会主義国北ベトナム、南に米国の影響を受けた資本主義国の南ベトナムが成立し、それぞれハノイとサイゴンを首都とした。いずれも大都市であり、この時点では「一つの国に一つの巨大都市」という、わかりやすいプライメートシティだったわけだ。しかしやがて両者は対立し、戦争が勃発する。ベトナム戦争である。戦争は長く続いたが、結論として北ベトナムが南ベトナムを打倒し、社会主義国家である統一ベトナムが誕生した。勝利側であるハノイが新首都となり、南部のサイゴンは北ベトナムの支配下に入り、名前をホーチミンと改められた(ホーチミンは北ベトナムの指導者の名前)。二つの都市の違いは現在でも明確であり、それぞれに発展を遂げている。ベトナムは「規模の小さい発展途上国でありながら、国内に二つの大都市を有する」特殊な例である。
【第3問問5】
[ファーストインプレッション]またメキシコシティか。ここ、よく出るんですよね。2013年地理B本試験第3問問4をチェックしておこう。10年単位で同じネタが出るのが共通テスト(センター試験)なんですよね。
[解法]図が用いられた問題。フィラデルフィアはアメリカ合衆国。先進国の都市だね。それに対しメキシコシティはメキシコ。こちらは発展途上国の都市。図では「貧困が問題となっている地区」とある。これはスラムと考えていいんじゃないかな。不良住宅地区であり、仕事に恵まれない労働者が勝手に住み着いてしまっているイメージ。もともとの住民が逃げ出してしまった廃アパートであったり、空き地を不法占拠して掘立小屋をつくってしまったり。
スラムのセオリーは「先進国は都心付近の旧市街地に、発展途上国は都市周辺に拡大」。先進国と発展途上国とでスラムの作られ方が異なっているので、理論的に理解しよう。
先進国(欧米)の都市は歴史が古い。建設以来数百年の時代を経て、一番最初につくられた都心部(旧市街地)は老朽化が著しい。そもそもは富裕層が住んでいた都心部であるが、人々はより快適な居住環境を求め、郊外へ流出。それに伴い企業や商業施設などの産業も都心部から流出する(*)。旧市街地には空き家や借り手のいないアパートが増えることになるが、そういった家屋や部屋に低い家賃や時によっては勝手に住み始める失業者が増え、治安の悪い地区が生じる。これがスラムである。失業者の多くは、国内の少数民族や移民であり、彼らは社会的地位が低いことから仕事には恵まれない。都市内部に移り住み、彼ら民族による集住地区を形成する。いわゆるチャイナタウンや黒人街、ヒスパニック地区、ユダヤ人街、コリアンタウンなどなど。
発展途上国の場合は、都市が建設されたのが最近であるため都心部の都市施設は近代的な街並みとなる。一方で、農村部との経済格差は大きく地方からの人口流入は大きい(問3でも「発展途上国の都市圏において」、「農村部から人々が都市圏に流入したこと」で、「人口が急増」したとある。このように同じ話題が何度も重複して問われていることを認識しておこう)。しかし、都市内部に十分な雇用はなく、仕事にあぶれた人々は失業者となり、空き地を不法占拠して石や木で簡素な家をつくり、住み着くことになる。そういった空き地は線路脇や河川沿いの低地など都市内部にも時々はみられるものの、その多くが都市の外側である。市街地の周辺部の荒地や山地に次々とこうした家屋が建てられ、それらはスラムを形成する。教育や医療も行き届かず、治安や衛生環境の極端に悪いエリアとなる。さらに農村から多くの人々が流入し、発展途上国ではスラムは都市の周辺へと拡大の一途である。
(*)日本の都市は比較的新しく(戦争の際にほとんどの都市が破壊されており、そこから復興している)、古い市街地であっても欧米ほどに施設の劣化はみられない。また駅を中心に発展した都市が多いため、駅前の地価の高いエリアで再開発が進み、建物が新しく建て替えられている。欧米のように「都市施設の老朽化や荒廃」によって人口が流出するケースは一般的でなく、「地価の高さ」が理由になって都心部からの人口流出がみられる。欧米ではむしろ(再開発前の)旧市街地では地価や家賃が下落することが多い(だからこそ、再開発後の住宅地の整備によって家賃が上がり、それまでの住民が退去を迫られるという問題が生じやすいのだ)。
以上のような「スラムのセオリー」を理解したうえで、それぞれの図と文章を対応させて、誤っている箇所を炙り出していこう。
まずは選択肢1から。フィラデルフィア都市圏において貧困が問題となっている地区(つまりスラム)は、先進国であるため「旧市街地」である。ここは「早期から都市化した」ところであり(**)、「住宅の老朽化」はもちろんみられるだろうし、ここに製造業の地区があったとしたら、そうした工場施設も老朽化するだろうし、労働力となるはずの住民が転居してしまったのだから、「衰退」していることも当然考えられる。そもそも都市内部で発達する工業そのものが小規模な零細的なものだろうし(フィラデルフィアは目立った工業がある都市ではない)、大量生産が行われている他の工業地域との競争には敗れてしまうだろう。この選択肢は妥当なことばかり述べられている。正文とみていいだろう。
(**)「都市化」という言葉がしばしば登場するが、これについても定義しておこうか。都市とは人口が集まっているところであり、都市化についてもシンプルに「人口が増える」ことと考えていい。人口が増えれば当然彼らが住む家が必要である。つまり都市化は「住宅地がつくられる」ことと解釈していい。ここでは「早期から都市化」とあるが、「早期から人々が住み始めた地域=住宅地となった地域」と考えればいい。歴史が古いのだから老朽化も進むだろう。
さらに選択肢2。メキシコシティにおいてスラム(貧困が問題となっている地区)は、都市の外側に向かって広がっている(ここは2012年の問題も参考にしてほしい)。発展途上国では資本力が十分でないので(この内容は問4のプライメートシティの形成理由とも重なる)、都市が整備されている範囲は限定され、市街地の中心部のみである。周辺部には劣悪な住宅地が広がり、当然そういった地区ではインフラ整備も進まない。この選択肢も妥当である。
選択肢3について。スラムの位置の比較。「先進国(フィラデルフィア)は都心付近、発展途上国(メキシコシティ)は都市周辺」なので、フィラデルフィアの方が「都市圏中心部に集中」していることは正しい。正文だろう。
というわけで正解(誤り)は4なのだろうか。「両都市圏とも放射状に広がっている」とある。老朽化した旧市街地に貧困層が移り住む先進国と、整備された市街地の範囲が狭く外側に貧困層が居住地を拡大する発展途上国とで、スラムが形成される背景は異なっている。同じような分布パターンになるとは思えない。これが誤りでしょう。4が正解。
一応、図も確認しておこうか(このタイミングで図を見れば十分なのだ)。いずれの都市圏についても高速道路は示されており、とくにフィラデルフィアには都心部から放射状に周辺に向けて高速道路が走っているところもみられるが、とくにそれに沿って貧困地区が分布しているわけでもないようだ。
【第3問問6】
[ファーストインプレッション]ここで「民族」に関する問題が登場。ただ、民族ではなく「言語」になっている点にも注目しておこう。コンプライアンスに煩い昨今、露骨に「民族」を区分するような問題は取り上げにくい。民族を言語に置き換えて考えるのが、実に今っぽい問題だね。
[解法]ヒスパニックが最大のポイントになっている。ヒスパニックとは一般に民族名と思われているけれど、正確にはそれは誤り。例えば日本はジャパンだし、日本語はジャパニーズ、そして日本人もジャパニーズだね。ヒスパニックは直訳すれば「スペイン語」であり、スペイン語話者と定義されるべきだが、実際にはメキシコからの移民とその子孫のことだよね。スペイン語を母語とし、
ちなみにメキシコは、メスチソと呼ばれるヨーロッパ系と先住民(インディオ)の混血が多く、むしろ見かけ上は「白人」にみられる人もいる。しかしあくまで言語はスペイン語であり、「ヒスパニック」と呼ばれるのだ。アメリカ社会において、ヒスパニックは人種や民族を表す言葉ではなく、あくまで言語使用者を示す言葉であることに注意。
こういったスペイン語話者はどこに多いだろうか。カリブ海地域からのヒスパニックはフロリダ半島に、メキシコからの流入者はテキサス州からカリフォルニア州までの国境地帯に、それぞれ多い。マイアミやロサンゼルスではヒスパニックの割合が高いと考え、この二つが3と4のいずれかに該当する。
さらにアジア系について考えよう。これはシンプルに太平洋沿岸に移住者が多く、現在でも彼らの言語を母語とする人が少なく無いことを考えよう(つまり家庭では中国語やヒンディー語、ハングルが使われているということ)。シアトルとロサンゼルスが該当するね。アジア系の割合が高い2と3がこの2都市に該当。さきほどロサンゼルスは3か4のいずれかと判定している。スペイン語とアジア系言語の両方が多い3がロサンゼルス、アジア系が特徴的な2がシアトル、スペイン語が多い(3分の2を占めている!)4がマイアミ。