2024年地理B共通テスト[第1問]解説
【第1問問1]
[ファーストインプレッション]ちょっと変わった立ち上がり。ほぼ毎回のように最初の問題は世界全体をテーマ(世界地図が登場することが多い)とするものだったのだが、今回は違いますね。
[解法]イギリスは古期造山帯で全体として侵食が進んだなだらかな山容。ニュージーランドは変動帯に位置し、新期造山帯の急峻な山々。標高が高い地形がみられるイがニュージーランドで、低いアがイギリス。
土地利用についてはイギリスもニュージーランドも牧場・牧草地が卓越する。イギリスはかつてこの地域を覆っていた大陸氷河の影響で地表面が削られ、岩だらけの土地が広がる、岩の隙間から草が生えており、これをもって「牧草地」と呼ぶ。決して青々とした牧場を想像してはいけない。荒れ果てた土地が広がる国なのだ。ニュージーランドは人為的に森林が伐採された国。イギリスがこの地域を侵略した際に、牧草地に転用しようとして森林を切り開いた。国土の半分が「樹木のない土地」に帰られてしまったのだ。イギリスとニュージーランドのいずれでも割合の高いAが牧場・牧草地となる。
なぜ資源がないニュージーランドをイギリスは植民地にしようとしたのか。ニュージーランドには「気候」があったのだ。年間を通じて変化の少ない気候であり、年間を通じて牧草が生育できる自然環境。イギリス人たちは、外来種である家畜と牧羊犬を持ち込み、森林を伐採すると同時に、固有種である動物たちも絶滅に追い込んだ。
(参考)本当は「覚える」ことに意味はないけれど、みんなこういうの欲しいんでしょ(笑)ホントはダメだけど、テストに出る「土地利用」を一覧にしたので、「丸暗記」が好きな思考停止のみなさんは参考にしください(土地利用についての詳しい説明はYouTube「たつじんチャンネル」の中にあるので、チャンネル内から検索するといいですよ)
<森林面積割合が高い国>
・赤道直下の熱帯国・・・インドネシア・コンゴ民主・ブラジル・ペルー
樹高が高い熱帯雨林(常緑広葉樹)。ペルーが意外かもしれないけれど、国土の広い範囲がアマゾン川の流域に含まれ、熱帯林が繁茂する。
・温帯の国・・・日本・韓国
温帯は古い時代から人々の生活の場であり、薪炭材や耕地開発によって森林が伐採。ヨーロッパやアメリカ合衆国は温帯ではあるが、森林面積割合は低い。
・亜寒帯の国・・・スウェーデン・フィンランド
針葉樹林に恵まれ、パルプ工業が盛ん。
<耕地面積割合が高い国>
・インド・バングラデシュ・デンマーク
低地国のバングラは国土の広い範囲が水田となっている。高い人口密度が支えられる。インドも同じく人口密度が高い国。多雨地域では稲作、少雨地域では小麦作。また高原では綿花も栽培される(綿花畑も耕地にカウントされている)
デンマークは大陸氷河に削られたやせた土地が広がる国。協同組合による農業振興の結果、国土の半分を耕地に開発し、小麦が盛んに栽培されている(小麦の輸出国である)。酪農国というイメージがあるかもしれないが、牧草地の割合は低い(家畜は畜舎で飼われており、放牧ではない。耕地で飼料が栽培され、それによって育てられている)。
<牧場・牧草地面積割合が高い国>
・ステップの国・・・モンゴル・カザフスタン・オーストラリア・メキシコ
半乾燥の国土を持ち、樹木は生育しないが、草原が広がる。とくにモンゴルは国土の4分の3が牧草地。
・熱帯草原・・・ケニア
赤道直下であるが、高原でありやや降水量が少ないため、草原となる。サバンナ。
・温帯の国・・・イギリス・アイルランド・ニュージーランド・アルゼンチン
イギリスとアイルランドは大陸氷河に削られ荒地が広がる。樹木がみられる草が一部にみられる荒地が「牧草地」である。
ニュージーランドはイギリス植民地時代に牧草地として開発するために森林が多く伐採された。
アルゼンチンは温帯草原であるパンパが広がる。農牧業が営まれる。
【第1問問2】
[ファーストインプレッション]これも変わった図。ちょっと見たことないな。かなり戸惑うけれど、丁寧に読み取って欲しい。誤文判定問題なので、文章だけ読めば十分に解答の見当はつくだろう。
[解法]見慣れない図だね。ちょっと読解が難しそうだ。こういう時は文章を先に読んでしまって、ポイントを絞った方がいい。
まず選択肢1から。「北緯30度から45度」といえば日本が含まれる緯度帯。「永久凍土」というのは地下が凍り付いていて、それが夏でも融けない状態。冬の気温が極端に低いので、地面が硬く凍りつく。夏はさすがに表面だけは融けるけれど、地面を掘り下げていったら地下が凍っている。シベリアや北極海沿岸にみられるが、この地域に住む人は夏になると地面を掘って、天然の冷凍庫にしているみたい。
そういった特殊な状況だが、もちろん日本にはみられない。しかし、日本と同じような緯度であっても標高が極めて高いチベットやヒマラヤならば冬は極めて寒冷となるし、夏もさほど気温が上がらないので、地下に氷の層が維持されているとしてもおかしくないよね。これは正文でしょう。
さらに選択肢2。「北緯45度から70度」ってかなり高緯度だよね。シベリアやカナダだろうか。緯度が高いために太陽光度は低くなり、日射量は少なくなる(太陽光線が斜めに当たるので、面積当たりの受熱量が小さくなる。懐中電灯で垂直に地面を照らしたら光の面積は小さいものの明るくなるが、斜めに地面に当てると光の面積は広くなるが全体として暗くなる。光源の角度によって光の「密度」が違ってくるのだ)。もちろん年平均気温も低くなる。これも正文とみていいんじゃないかな。
そして選択肢3。「北緯60度から80度」はさらに高緯度だね。「高緯度側ほど降雪量が多くなる」とあるが、これはどうだろう?第5問問1を先に解いてみようか。日本列島の日本海側の地域で冬は日照時間が短くなることが問われる問題だが、もちろんこれは「雪雲」の発生によるものだよね。雪が生じる理由は「気温が低い」からではない。むしろ、日本海が「暖かい」ことが原因だよね。シベリアから吹き出す北西季節風は大陸内部では水分を含まず乾いている。しかし、それが日本海上空を通過する際に「暖かい海」から大量の水分の供給を受け、湿った風となる。日本列島にぶつかり地形性降雨を生じ、風上側斜面である日本列島の日本海側に雪雲を生じる。「冷たい風」、「暖かい海」、「急傾斜となる山脈」の3つの要因が奇跡的に揃った日本列島は地球上の「特異点」であり、世界最大の豪雪地帯となっている。
どうだろうか。気温が低いだけでは雪は降らない。というか、むしろ気温が低いことによって大気が収縮し気圧が上がるため(下降気流が卓越するね)、雲を生じにくい大気の状態となり、雪は全く降らない。「低温=収縮=高気圧=下降気流」の因果関係がわかればオッケイです。降雪量は多くならず、この選択肢が誤り。
選択肢4は検討の必要はない。「北緯70~80度」ってそもそもほとんど陸地なんかないんじゃないかな。北極周辺は海だよね。氷河・氷床はグリーンランド内陸部にみられ、巨大な氷の塊が陸地を押し潰している。氷河・氷床に覆われていない部分は沿岸部だが、やはり寒冷な気候がみられるため、夏になっても地下には氷の層があるっていうことだろうか。これはとくにおかしなことではないと思う。納得だね。
【第1問問3】
[ファーストインプレッション]これはよく出るパターンだね。地理における地形は「地形学」であり、現在どこにどのような地形が分布しているのか、その形状と位置が問われるのみ。成因など副次的なことがらについての知識は最小限でいい(そちらは「地質学」のジャンル)。
[解法]Eを当てる問題だからわかりやすいんじゃないかな。Eは葉脈のように細く伸びた入江が陸地の方向へと入り込んでいる。狭湾と呼ばれるもの。なぜこんな地形ができたのだろうか。一般に河川が侵食した谷は「V字谷」と呼ばれる。断面がVのような形になっているからだ。「水」という液体によって削られるため、大地は深く鋭く削られることになる。ウォータージェット(ウォーターカッター)なんていう工具もあるよね(よかったら検索してください)。水がいかに鋭く物体を切り刻むか。
これに対し、氷河が削った谷は「U字谷」と呼ばれる。断面がUのような形になっているからだ。氷河は水が凍った河川。氷という固体が少しずつ、這うように谷を降りていく。水による侵食が「彫刻刀の三角刀」ならば、氷による侵食は同じく「彫刻刀の丸刀」である。半円形に土地を削りながら、氷が流れ落ちていく。
この際に氷自体の重さも重要なものとなる。氷が土地を削り、そして氷の重量によって土地を押し潰すことで、U字谷は極めて深い大地の溝となるのだ。やがて地球全体の気温が上がり、標高が低い土地の氷が全て溶け、氷河も消えてしまう。しかし、氷河が削ったU字谷は大地に刻まれたままであり、海水面が上昇することで海が谷へと侵入し、深い入江(狭湾)となる。この狭湾のこと、なんていうか分かるよね。そう、フィヨルド。日本にはみられない地形(日本はそもそも地球の寒冷期であっても低地には氷河がみられなかった)。ノルウェー語で「入江」をフィヨルドと言う。
「氷食谷」がキーワードで正解は4となる。「氷食谷」は文字通り、氷河によって侵食された谷のこと。。「沈水」は「沈降」と同じ意味。陸地に対して海水面が相対的に上昇する。地殻変動によって陸地が沈み込むか、地球の気温が上昇することで(氷河期が終わり)海水面が上昇する。
他は判定の必要はないが、参考までに。
Dがリアス海岸。ノコギリ状の海岸線。山地が沈降(沈水)し、V字谷に海水が侵入。日本では三陸海岸や志摩半島、若狭湾など。2が該当。
Fがエスチュアリー(三角江)。河口部にみられるラッパ状の入江。海水面が今より低かった時代(氷河期)に谷が削られ、海水面上昇とともに海水が侵入し入江となった。波が静かであり、水深も十分であるため、エスチュアリーの沿岸や河川を遡ったところなどに港湾が発達する。日本にはみられない。3が該当。
Gはラグーン(潟湖)。かつて入江だった海域の、湾口に土砂が堆積することで(砂州や沿岸州)外海と切り離され湖となったもの。海と一部つながっているため、塩水と淡水が入り混じった汽水となる。サロマ湖(北海道)、阿蘇海(天橋立・京都府)、中海(島根県)など。1が該当。沿岸流とは海岸線に並行に流れる小さな海水の流れ。沿岸流が土砂を運び、湾口の浅い海底に堆積した。なお、Gはイタリア北部のベネチア。
本問同様に海岸地形の図を用いた問題はこれまでにもいくつか出題されている。
2002年地理B本試験第1問問2。エスチュアリー(フランス北部)、リアス海岸(スペイン北西部)、フィヨルド(ノルウェー)の上空からみた略図およびV字谷とU字谷の断面図が出題されている。フィヨルドの形状と断面を問う問題。
2014年地理B追試験第1問問5。エスチュアリーの成因が問われている(とはいえ、外れ選択肢なので重要性は低い)。「約1万年前から8000年前にかけて急速な海面上昇がみられ、海面低下期に形成された谷に海水が侵入し、三角江(エスチュアリー)が拡大した」という説明がされている(正文)。イメージとしては、台地から低地に流れ出る時に、台地の麓に谷が形成される。海面上昇によって低地が水没し、台地だった部分の標高が下がり低地となる。谷として刻まれた部分はラッパ状の入江となる(つまりエスチュアリー)。水深が十分で波が静かなので天然の良港となる。イギリス南部(テムズ川・ロンドン)、ドイツ北部(エルベ川・ハンブルク)、カナダ東部(セントローレンス川・ケベック)、アルゼンチン東部(ラプラタ川・ブエノスアイレス)。いずれも大都市と港湾のセットになっている。後背地(都市や港の背後の平野)が広いので農業が営まれるなど人口が増えやすい。大西洋に面する都市・港であり、他の地域特に日本にはみられない地形。
2017年地理B本試験第1問問4。ラグーンが登場。ベネチアはアドリア海の沿岸のラグーン内につくられた人工島の上に成り立つ都市。図中のカは砂の堆積地形で沿岸州と呼ばれるもの(なぜか問題では「砂州」となっており、しかもこれが正文。ちょっと意味がわからない。陸から突き出したものが砂州であり、独立した島になっているものが沿岸州であるはずなのだが)。沿岸州など砂の堆積地形によって外海と切り離されて形成された水域がラグーン(潟湖)。かつてベネチアの人々は、潟湖の中央の浅い海底に多くの杭を打ち立て、その上に館を建て街をつくった。敵からの侵略に耐え、ベネチア王国は長く繁栄した。ベネチア市街が乗る人工島が図中のケの部分である。
2021年地理B本試験第5問問3。ラグーンである阿蘇海が登場。陸地から突き出し、対岸へと達しようとする砂の堆積地形すなわち砂州が確認できる。我々はこれを「天橋立」と呼んでいる。
【第1問問4】
[ファーストインプレッション]これ、めっちゃいい問題ですね。今回のフェリバリットかも。日照時間が問われている点においては第5問問1と同じだけど、そちらは日本の狭い範囲の比較であり、緯度による季節ごとの昼の長さの違いは考慮されなかった。これまでは日照時間については日本国内の「雪」のみをテーマとする問題ばかりが出題されてきたが、ここにきて「緯度」もポイントになっている。ムンバイを特定する問題なのでなんとなく正解に辿り着いてしまう問題なのだが、せっかくなので全ての地点について判定してほしい。それほどまでに「深い」問題。
[解法]日照時間の定義については第5問問1の解説を見てほしい(この解説、第2問~第5問、最後に第1問という順番で作っているので、第5問問1の解説はすでに作ってあるのです)。基本的には「雲」の存在を考える。とくに日本列島をテーマとした気候(日照時間)判定問題では「日本海側」の地域が特徴的なものとして登場する。1月は雪雲に覆われるため、日照時間が極端に短くなる。1か月間で40時間ほどであり、1週間当たり10時間。週に1日は晴れ(つまり太陽光が注ぐ)の日があるが、他の6日間は雲に覆われ、雨や雪に見舞われることも。
また日照時間が日本国内で問われる場合には「梅雨」も気をつけるべき要素。2013年地理B本試験第6問問2参照。沖縄は梅雨の時期が早く、5月の日照時間が短い。九州以北は梅雨が6月以降であり、この時期の日照時間が短い。梅雨前線の移動と曇りの日(そして日照時間)を対応させる。
これが日照時間の問題についての基本的な考え方なのだが、地球全体と考えると要因が変わってくる。「雲」の存在ではなく、そもそもの「太陽が出ている時間」の違いを考えるべきなのだ。便宜上、日の出から日の入りまでの時間を「昼」と定義する。反対が「夜」。赤道直下の地域では年間を通じて昼が12時間、夜も12時間と考えてほしい(実際には、日の出のタイミングは「太陽の上部が地平線の上に出た瞬間」であり、日の入りのタイミングは「太陽が完全に地平線の下に沈んだ状態」なので、太陽の幅の分だけ昼の方が長くなるのだが、ここではそれは無視してほしい)。
地球が太陽の周囲を地軸を傾けた状態で公転していることを考えよう。7月を中心とした時期(北半球の夏、南半球の冬)は北極圏で白夜(昼が24時間)、南極圏で極夜(昼が0時間)となる。1月を中心とした時期(北半球の冬、南半球の夏)は北極圏で極夜(昼が0時間)、南極圏で白夜(昼が24時間)となる。シンプルな考え方としては「7月は北に向かうほど昼が長くなり、1月は南に向かうほど昼が長くなる」というセオリーがある。このことから「高緯度地域は季節による昼の長さの差が極端に大きく、低緯度地域は季節による昼の長さにほとんど差がない」という結論が導き出される。
例えば、北海道と沖縄を比べた場合、夏は北海道の方が昼が長く、冬は沖縄の方が昼が長いということになるね。この形で頭に入れておくと使いやすいんじゃないかな。
では日照時間に関するセオリーを2点(雲の存在と昼の長さ)整理したところで、問題を検討してみよう。テーマはムンバイである。ムンバイは重要な都市なのでぜひ知っておいてほしい。インド半島西岸の都市で、世界最大規模の都市圏人口、そして世界最大規模の工業生産力を有する「地球最大の街」である。
シンプルに「雲」を考えてしまっていいと思う。ムンバイは季節風の影響が極めて強い地域に位置している。夏はインド洋からの南西季節風によって極めて多雨となる一方、冬は大陸からの乾いた北東季節風によってほとんど雨が降らない。雨季と乾季の極端な気候。7月の日照時間は短く、1月の日照時間は長くなる。選択肢1から4のうちで明確に「7月<1月」となっているのは4のみ。これが正解となる。
というわけでこのように問題そのものは簡単に解けるのだが、実はここからが重要。1から3がどの都市か判定してみよう。ムンバイに比べ知名度が低い都市ばかりなので、紹介しておこう(1から3を判定するために必要なので紹介するだけです。問題を解く際にはもちろんムンバイ以外の知識は不要ですよ)。
オスロはノルウェーの首都。ノルウェー南部に位置するがそもそもノルウェー自体が高緯度に位置する国であり、もちろんオスロも緯度が高い。北緯60度ぐらいかな。
ローマはイタリアの首都。イタリア半島南部に位置し、バチカンを有する宗教都市の側面がある。緯度的には日本と同じぐらいかな。北緯40度ほど。
シドニーはメルボルンと2トップを成すオーストラリアの都市。第2問問4でも隠れキャラ(?)として登場しているね(それにしても、共通テストってわずか30問しかないのに、日照時間やらシドニーやら同じネタばっか出てるよね。他の科目でこんなことってあるのかな)。東京と似たような気候と考えておくといいよ。乾燥大陸オーストラリアの中では例外的に「暮らしやすい」環境であるため、人口が多いのだ。
季節が逆転しているけれど、東京と似た数字になっているのがシドニーじゃないかな。1日当たりの日照時間は、東京で夏(7月)が4.5時間、冬(1月)が5.5時間、シドニーで夏(1月)が7.5時間、7月が7時間。いずれの都市も極端な雨季や乾燥する時期があるわけではなく、常にそれなりに日照時間は長い。シドニーの方がちょっと雨が少ないのかな。たしかに日本は温帯としてはとくに雨が多い国の一つ(東京の年間降水量は1500ミリ)。
1と2はどうだろう?これ、とにかく悩むんだわ。ローマについてはみんなは地中海性気候という言い方で認識しているんじゃないかな。亜熱帯高圧帯の影響が強い夏は晴天に恵まれ、偏西風や前線の影響が強い冬は一定の降水がある。夏の日照時間が長く、冬は短いことが想像される。
それに対しオスロはどうだろう?ノルウェーは年間を通じ偏西風の影響を受け、西ヨーロッパでもとくに湖水量が多い国である(水力発電が行われるね)。しかしポイントは高緯度であること。夏は昼が極端に長くなり、冬は極端に短くなる。そもそもの「昼」の長さの違いで日照時間にも季節差が生じるんじゃないか。
これ、どっちがどっちだと思う?
数字に注目するべきだと思うんだよね。最も気になるのは1において1月の日照時間がわずか1時間であるということ。例えば日本列島日本海側の豪雪地帯で1ヶ月間の日照時間って40時間ほど(第5問問1の浜田市の日照時間も参照。ここは島根県でやや雪が少ないので、冬の日照時間は東北や北陸の豪雪地帯ほど短くはない)。1日当たり1時間ちょっと。どうだろう?冬の日照時間を比較した場合、これだけ大量の雪が降る地域とイタリアのローマとで同じってことがあるかな。先にも述べたように緯度はあまり変わらないので、昼の時間の長さの違いによる日照時間の違いはない。
ローマは地中海性気候なのだが、これは大陸西岸・緯度35度周辺に見られる気候パターン(大陸東岸は季節風や暖流の影響で夏でも雨が多い)。夏は低緯度側から移動してくる亜熱帯高圧帯の支配下となり、ほとんど雨が降らない。一方で冬は偏西風帯や寒帯前線(亜寒帯低圧帯)の影響に入り、低気圧や前線の影響で一定の雨がある。しかし降水量自体はさほど多くない。日本の太平洋側も1月の降水量は少ないと言われるが実際には50ミリぐらいはある。ローマなど地中海沿岸も1月の降水量はそれとほぼ変わらない。夏と比較すれば「多雨」といえるが、絶対的な値としてはさほど雨が降るわけでもない。
これを考えるとどうなんだろうね?さすがにローマで「1週間のほとんど」が雲も覆われる季節があるとは思えないのだ。冬であってもある程度は晴天の日があり、それが4時間程度っていうのは納得の範囲だと思う。東京の1月の日照時間が5.5時間であることに比べれば、4時間という値はほぼ近似しているし、先ほども言ったようにローマで冬に極端に雨が多いわけではないので、これは納得の数字だと思う。2をローマと考えていいんじゃないか。
これによりオスロは1となる。北緯60度に位置し、夏は昼が極端に長く、冬は極端に短い。北緯66.6度以北の北極圏で1月の日照時間は1日当たりほぼゼロとなるのだから、オスロの冬で1時間というのは納得の範囲。ただ、ちょっと気になるのは夏の日照時間の短さ。8時間っていうのはどうなんだろう?おそらくオスロの夏の昼の長さって20時間近くになると思う。日照時間がその半分ぐらいってのはどうなんだろう?ノルウェーが降水量の多い国と考えればこんなものなのだろうか。偏西風の影響で雨が多く、緯度的に考えてもこの季節は寒帯前線(亜寒帯低圧帯)の支配下となるのだから、曇りの日が多くてもおかしくないのだが。
逆にどうなんだろう?先ほど2がローマといったけれど、夏の日照時間が1日当たり11時間っていうのはおかしい?いや、夏は昼が13~14時間はあるだろうから(日本と同じぐらい)、そのうちの11時間っていうのは、亜熱帯高圧帯の影響がとくに強くなることを考えれば納得の範囲か。判断に迷うけれど、おそらくこれで正しいんじゃないかな(違っていたらゴメンなさい・・・)。
というわけで。問題そのものは簡単であり、正解した人も多かったと思う。でも、どうだったかな?簡単な問題であっても、そこから「思考」を深めることができるでしょ?そしてこの思考の過程こそ、これから色々な問題を解く際に必要になってくること。共通テストの問題は一つ一つが「孤高」の存在であり、それを極めることで地理の世界がさらに広がる。みんなは「間違えた問題を復習」してしまうけれど、実はそれは間違ったアプローチであり、正しくは「正解した問題を深める」ことにあるのだ。
【第1問問5】
[ファーストインプレッション]災害の問題と思いきや、これ、実は気候の問題というか、気圧帯の移動による多雨地域の移動に関する問題なんじゃないかな。理論をどれだけ理解できているかという問題ですね。
[解法]洪水の発生時期に関する問題。月は3ヶ月ごとに区分されている。「3~5月」(北半球春・南半球冬)、「6~8月」(北半球夏・南半球冬)、「9~11月」(北半球秋・南半球春)、「12~2月』(北半球冬・南半球夏)。
「洪水=多雨」なので、要するに雨が多い季節を考えればいい。ただ、寒冷な地域では「融氷」による洪水があるので、それもちょっと考えておかないと。
まずは赤道直下の国(コロンビア)に注目。4つの季節のバランスがいい(そもそも赤道直下には季節の変化はないが)。年間を通じて熱帯収束帯の影響が強く、常にスコールが降る気候条件だからだろう。南半球低緯度の国(ボリビア)に注目。ここで雨が多いのはいつ?地球全体の気圧帯が軟化する12~2月だろう。赤道付近の熱帯収束帯が南半球低緯度に移動し、この緯度帯にスコールをもたらす。割合が高いサが「12~2月」になる。
逆に北半球低緯度(メキシコ)はどうだろう?この緯度帯で降水量が多いのは北半球側の受熱量が大きい「6~8月」。熱帯収束帯が北上する季節。ただ、たしかに6~8月の割合も高いのだが、最高の割合となっているのはむしろスだったりする。これってどういうことだろう?
降水パターンが4つあるのは知っているね(詳しくは第5問問1の解説で説明しています)。熱帯収束帯のスコールなど「対流性降雨」、熱帯低気圧など「低気圧性降雨」、梅雨前線など「前線性降雨」、季節風などの「地形性降雨」。ここまで挙げてきたスコールは対流性降雨だが、それ以外にピンとくるものがないかな。
そう、「低気圧性降雨」だよね。とくに熱帯低気圧。北アメリカの低緯度海域であるカリブ海やメキシコ湾は水温が高く(東アジア・東南アジアの南シナ海・フィリピン周辺と同じ)熱帯低気圧が発生すやすく、その巨大なものはハリケーンと呼ばれる。海で発生したハリケーンは勢力を増し、メキシコやアメリカ合衆国の沿岸部に襲来する。これによる洪水がカウントされているのではないだろうか。日本でも台風がやってくる時期は意外に9月も多い。ハリケーンも同様に9月に発生するものも少なくないのではないだろうか。これによる洪水を考え、メキシコで割合の高いスを「9~11月」とする。正解は4。
ということで一応検討しておくが、シが「3~5月」になる。シの割合が高いのは北半球の高緯度地域(カナダ)。これはなぜだろう?この時期に降水量が多くなる要因があるのあ?
いや。そうではないね。洪水は多雨によってのみ生じるのではない。春になって氷が解け(大陸内部では雪は降らないので「融雪」より「融氷」が適切です)、河川が一気に増水することで氾濫を起こし、洪水被害が拡大するのだ。ロシアでも似たような状況があるね。日本のような中緯度地域ならば春は3月後半かr4月にかけての時期と考えていいが、高緯度地域ならばもうちょっと春は遅くなるね。4月から5月が遅い春の到来であり、この時期に河川の流量はピークとなる。
なお、カナダ南部にウィニペグという都市がある。春小麦の産地として知られているね。北アメリカ大陸のちょうとど真ん中に位置し、典型的な大陸性気候(寒暖の差が大きく、冬は降水がみられない)となる。ウィニペグは先住のネイティブアメリカン(ファーストネイション、アメリカインディアン)の言葉で「泥」を表すのだそうだ。春になって融氷し、河川水が一気に増水することで周囲の土砂を巻き込み、下流側に「泥水」が押し寄せる。つまり泥水は「春の訪れ」の目印ということ。ウィニペグは直訳すれば「泥」なのだが、そこには春の到来を待ち侘びる先住民たちの気持ちが表れているのだ。冬の間は氷に閉ざされていたウィニペグは、春から夏にかけては気温が上がり、豊かな農耕の時期を迎える。
ところで、もしかしたら過去問集の解説では、真っ先に「カナダの雪解けを考えよう」なんて書かれていて(そもそもカナダは雪は降らないので融雪は間違いなんですけどね。正しくは「融氷」)カナダで割合の高いシから考える(雪解け=4~5月)ことが推奨されているかもしれないけれど、それはちょっと危ないと思うよ。そういったピンポイントの知識より、やっぱり気候の基本は「気圧帯の移動」にあると思う。地球と太陽の関係があり、季節によって太陽からの受熱量が異なり(これに関するセオリーは問4でも登場しているね。緯度によって昼の長さに差が生じるのだ)、そのため熱帯収束帯が移動することで低緯度地域には多雨となる時期が生まれる。数学でいえば三平方の定理にも相当するような、基本中の基本であり、そして究極でもある「気圧帯の移動」のセオリーを優先して考えてほしいのだ。
そしてそれだけではわからない場合は、本問のように「熱帯低気圧」であったり「融氷」であったり、付帯的な事柄を思考に加えつつ、理論を展開すればいい。
【第1問問6】
[ファーストインプレッション]あ、この手の問題、実は難しいんですよね。日本列島は決して広いとは言えないのにも関われず、地域によって多様な個性があり、それは気候にもあてはまる。漠然と眺めるのではなく、キチンとターゲットを絞って図を捉えていけば必ず正解に辿り着くだろう。
[解法]さて、どこから解いていこうかな。手がかりはたくさんありそうなんだが。選択肢は「最高気温」、「最大風速」、「日降水量」の三つ。なんとなく風がわかりやすそうな気がするんだよね。山間部の盆地では周囲の山地に遮られ風は弱い。沿岸部の季節風を直接受けるところや、あるいは台風の通り道となっている地域でこそ風が強くなるんだと思う。これを見ると埼玉県や岐阜県(みんな、日本の都道府県は大丈夫かな?中学校の知識(っていうかむしろ小学校か!)なので、これは確実に勉強しておこうね)にチやツがみられ、タはない。タは全体的に沿岸部に多く、一部に滋賀県にもあるようだがこれは例外的なものだろう。誤差の範囲。タを「最大風速」とみていいんじゃないか。なるほど、沖縄に圧倒的な数が集中しているね。先ほど風の強さについては「季節風」とも言ってしまったけれど、よく考えたらこれは関係ないか。やっぱり「暴風」を考えるべきであり、そうなると台風などの巨大な低気圧を考えるべきだね。沖縄の他は長崎や高知、伊豆諸島など、たしかに台風がやってきそうな地域にタがみられる。
さらに「最高気温」と「日降水量」だが、これはどちらかな。降水量こそ季節風を考えるべきかも。夏の空気は気温が高く飽和水蒸気量も大きいので豊富に水分を含んでいる。とくに太平洋から吹き込む風なれば、とくに湿っているとみていいね。太平洋からの南東季節風が紀伊半島や四国へと吹き込み、大量の雨を生じる。季節風でなくとも、台風が襲来する場合、その東側の地域において「南より」の風が吹き(台風のまわりを反時計回りに風が吹いていることを意識しよう)、その際に海から大量の水分が持ち込まれ、激しい降雨となる。四国や本州の太平洋岸でとくに雨が多くなる場合があるのはそういった台風の影響もあるだろう。チが「日降水量」であり、正解は5。紀伊半島南部の尾鷲市や大台ヶ原が日本で最も降水量の多い場所であることを知っておくと答えやすかったんじゃないかな。
参考までに、ツが「最高気温」。こちらはほとんど内陸部だね。たしかに気温が上がりそうな。新潟県にも多いが、これはフェーン現象によるものかな。南東季節風が、風上斜面側の日本列島太平洋側に降水をもたらす一方で、風下斜面側の日本海側には乾いた空気が吹き下ろす。この際に気温逓減率の違い(湿った空気は気温が変化しにくい。乾いた空気は気温が大きく変化する)によって、風下斜面側の風は熱風となる。このフェーン現象によって異常な高温が内陸部や日本海側地域で観測されることになる。
なお、参考までに。日本で唯一「猛暑日とならない都道府県」はどこだろう?これはわかるよね。そう、沖縄県。周囲を海で囲まれており、海洋性気候となるため、夏は極端な高温とはならない。もちろん30度以上には上がるので「真夏日」は多いのだが、35度まで上がることは稀でほとんど「猛暑日」は観測されない。一方で、北日本であっても内陸部では気温の異常な上昇がみられやすく、長い間日本の最高気温の記録をもっていたのは山形県だったりする。現在はどこだったかな?ちょっと忘れてしまったけれど、いずれにせよ内陸部だよね。埼玉県熊谷市や岐阜県多治見市は「暑い」ことでよく知られる街だね。
沖縄も涼しいけれど、ハワイなんかもっと涼しいからね。