2024年地理B追試験[第4問]解説
<第4問>
[19][ファーストインプレッション]一見するとよくある気候グラフ問題と思えたのだが、実はこれ、難しいんじゃないか?ちょっと特殊な思考が必要となる。
[解法]ほぼ同緯度の3つの地点における気候。太陽からの受熱量が等しいため、気温にはほとんど差がないはず。降水量の様子で考えるのが妥当。
最もわかりやすいのがA。沿岸を長得る寒流の影響で大気が安定し、上昇気流が生じない。年間を通じ降水量が少ないイが該当。大陸西岸では低緯度地域の沿岸を寒流が流れる場合がある。周辺の気温は高いのに(低緯度であるため)、地表面付近の空気のみが冷やされ、密度を増し、逆転層を生じる(通常の状態は「上空が低温、地表面が高温」で上昇気流が生じる。逆転層は「上空が高温、地表面が低温」であり、上昇気流が生じない)。気温についても、寒流の影響がみられ他のグラフよりやや低くなっている。
残ったアとウの判定が難しい。ここはある程度は知識に頼ることになるであろうか。Bは広大なアマゾン盆地の中央に位置し、アマゾン川流域の広大な低地となっている。熱帯雨林が繁茂し、極めて高温多雨の気候であることが想像される。風向の変化などにより雨季と乾季のみられる気候ではあるが、全体としての降水量は極めて多い。アがアマゾン流域のBとなる。植生は熱帯雨林。
残ったウがCとなる。高原中央部に位置し、周辺から湿った風が入りにくい地形となる。荒地が広がり、降水量は少ない。正解は3。
というわけで、一応このように何とか解けるわけだが、問題としてはどうなんだろうね。AとBの位置の気候はこれまでも何回も出題されているので「過去問準拠」の問題としてはとくに支障ない。ただ、さすがにCの場所はどうなんだろう?ここは過去には出題例はない。たしかに「少雨=寒流沿岸、多雨=アマゾン盆地」であるので、この2つさえ分かれば答えは出るわけだが、問題としてはどうなんだろう。悪問・捨て問の一つなんじゃないかな。逆に言えば、この問題を拾うことができた人は大きなアドバンテージを得たことになる。
なお、アマゾン盆地の降水量については、2018年共通テスト試行調査第1問問3でも取り上げられている。アマゾン川流域の内陸部に位置するEでは、月による降水量の違いはあるものの、全体の降水量が多い湿潤気候がみられる。高温多雨の熱帯雨林気候となる。グラフのサがEに該当するが、1月は300ミリ、7月は100ミリの降水量がみられる(一見すると7月の降水量が少ないように思えるが、100ミリ近いということは実はかなりの雨が降っている)。
サの説明文は正文であり、それを示しておこう。「1月に降水量が多く7月にも降水がみられることから、北東貿易風と南東貿易風の収束隊などの影響を受ける」と説明されている。北東貿易風と南東貿易風の収束隊とは、赤道付近に形成される「熱帯収束帯」である。これは赤道低圧帯、低緯度低圧帯、赤道無風帯とも呼ばれるもので、激しい上昇気流によって毎日午後にスコールをもたらしている。極めて降水量の多い気候をもたらす。ペルー東部からブラジル北部を貫くアマゾン川の流域は全体に低地であり高温となり、さらに熱帯収束帯の影響によって極めて降水量の多い気候がみられる。
このように過去問に習熟しておくことは極めて重要(試行試験は2017年と2018年に実施されているが、もちろん「過去問」の一つとして深く分析しておくべきアイテムである)。それ以降に出題される問題について大きなヒントが提供されているのだ。
[20][ファーストインプレッション]これ、良問ですね。こういった「3点留め」の統計地図の問題では、階級区分図が使われることが多く、指標は「割合」だった。このように「実数」が指標として用いられるのはちょっと珍しい印象だし、だからこそおもしろいなって僕は思います。また、このような図をカルトグラム(変形地図)というのだが、面積によって実数の大小を示している。南米は国の数が少ないので、こういった図をつくりやすいね。アフリカやヨーロッパでカルトグラムを作ろうとした国の数が多すぎて、つくりにくいし、読み取りにくい。
[解法]南米各国をテーマとしたカルトグラム。南米は国の数が限られているので、こういった図はつくりやすい。東南アジアも国の数が少ないのでカルトグラムを作ったらおもしろそう。
カルトグラムは絶対的な数(実数)を表現するもの。本問で問われている指標も「人口」「森林面積」「日本への輸出総額」である点に注目。いずれも実数。「人口密度」や「森林面積割合」、「総輸出額に占める日本への割合」などになっていないことに注意しよう。
南米で最大の人口と面積を有するのはブラジル。「人口」ももちろんだが、「森林面積」もそもそもの面積が大きいブラジルでこそ大きくなりそう。またブラジルはGNIも大きい。GNIが大きいと貿易額も大きくなり、「日本への輸出総額」も大きくなるんじゃないかと考えられる。でも、ここでちょっとおもしろい現象があり、クではブラジルが最大ではない。むしろチリこそが最大の値となっているよね。これ、何だと思う?人口はもちろんブラジルが最大。また森林面積にしても、広大なアマゾン盆地を含むブラジルはとくに森林面積割合が高い国と思われるし、もちろん森林面積そのものも世界規模で極めて広いだろう。ブラジルが首位でない可能性があるのは唯一「日本への輸出総額」なのだ。チリと日本の貿易関係って太いものがあると思うよ。例えば日本では銅鉱は全く産出されない(銅山は鉱毒が流出するため、降水量が多い日本では国内の全ての銅山が閉じられている)。「都市鉱山」の利用によって銅のリサイクルも進むが、もちろんそれでは十分ではなく、銅鉱の多くをチリから輸入している(言うまでもなくチリは世界最大の銅鉱産出国だね)。さらにサーモンの輸入もよく知られていると思う。チリ南部の高緯度地域はかつて大陸氷河に覆われており、現在は大陸氷河による地形であるフィヨルドが沿岸にみられる。波の静かな入江を利用してサーモンの養殖が行われ、日本への輸出も多い。おそらく我々の口にするサーモンのほとんどはメイド・イン・チリだと思うよ。ちなみに日本とチリはFTA(自由貿易協定)が結ばれており、貿易は自由化されている。チリ産のワインはヨーロッパ産に比べ格安だったりする。チリの値が最大であるクを「日本への輸出総額」とみて間違いないだろう。
残ったカとキはどうかな、土地利用で非常に重要であるのが「牧草・牧草地」。樹木が生育できず、草原なっている状態であるので、基本的にステップが広がる乾燥・半乾燥国で割合が高くなる。とくに牧場・牧草地面積割合の高い国として「モンゴル」があり、国土の80%ほどが草原となっている。中央アジアの「カザフスタン」も草原が広がり、その割合は50%程度(この国は北部がやや湿潤で小麦栽培がなされる耕地となっている。チェルノーゼム地帯)。他にはやはりステップの国であるオーストラリアも割合が高い。
赤道直下の熱帯ながら、標高がやや高いことから気温が低く降水量が少なく、熱帯雨林とならない国として「ケニア」がある。熱帯草原(サバナ)が広がり、やはり牧場・牧草地の割合が高い。
温帯にも草原国はある。まずはヨーロッパの「イギリス」と「アイルランド」。大陸氷河によって地表面の土壌を削られ、岩だらけの大地となっている。樹木は生育できない。岩の隙間から雑草が生えている程度。でも、これでも「牧場・牧草地」って言うんですよね。イギリスとアイルランドは岩だらけの荒地が広がる国であり、牧場・牧草地の割合が高い国。
さらに「ニュージーランド」。この国は海洋や偏西風の影響によって穏やかな気候がみられ、年間を通じて牧草が青々と生育する土地。入植したイギリス人たちが牧場を開くために、森林を大きく伐採し(温帯の国なので本来は森林が茂っている)、その多くを牧草地へと転換した。企業的牧畜が行われ、大規模に牛や未が飼育されるようになった。人為的な影響によりニュージーランドは「牧場・牧草地面積」割合が高い国となっている。
そして、このアルゼンチンとウルグアイなのだ。ウルグアイからアルゼンチン東部にかけての広い範囲がパンパと呼ばれる草原。東側の降水量が多い地域が湿潤パンパ、西側の降水量の少ない地域が乾燥パンパ(半乾燥パンパ)と呼ばれている。日本と同じような気候がみられる地域だが、やや降水量が少なく(日本の平均降水量が年1500ミリ、湿潤パンパと乾燥パンパの境界が年550ミリ)、樹木の生育はさほど活発ではなく、また全体が平坦な地形であるため排水性が悪く、樹木の根が腐ってしまいやすいため、広大な森林地域とはなりにくい(日本の場合は山地など傾斜地が多く、そのほとんどが森林となっている。降水量が多く、さらに水捌けもいいため、樹木が根付きやすいのだ)。全体に草原が広がり、「牧場・牧草地」面積割合の高い2つの国となっている。
以上より、温帯でありながら(本来は森林国となるはずなのに)牧場・牧草地面積割合が高い国は必ずチェックkしておこう。いずれも国土の50%近くが牧場や牧草地となっている。イギリス・アイルランド、ニュージーランド、アルゼンチン・ウルグアイである。
このことからアルゼンチンに注目。アルゼンチンは牧場・牧草地面積割合がとくに高い国である。それに押し出されるように、森林面積割合は低いものとなっている。森林があまり見られない国なのだ。カとクを比較し、アルゼンチンの「国土面積」に対し値がとくに小さいものとなっているカが「森林面積」とみていいのではないだろうか。カにおいては、ブラジルの値がとくに大きくなっている(もっとも、キもブラジルが大きいのですが)。ブラジルは北部を中心に森林に覆われた国である。アマゾン川流域には熱帯雨林のセルバが広がっている。なお、アマゾン川はペルーから流れ出る河川であり、ペルー東部の広い範囲もセルバである。
残ったキが「人口」。アルゼンチンは農業が盛んな国であり、輸出用の生産も多いが、もちろん穀物は国内向けにも作られているはず。それなりに多い人口が養われているだろう。キにおいてアルゼンチンの値が他のカやクより大きくなっている点にも注目していこう。他に人口で特徴的な国はボリビアかな。内陸部に位置し、国土の広い範囲がアンデス高原である。耕地に恵まれず、人口密度は低いと予想されるんじゃないかな。ボリビアはカやクに比べキの値が小さい。
[21][インプレッション]大豆だね。南米(というかブラジル)で最も特徴的は大豆。原産地は東アジアだが、日本から農業移民がブラジルに持ち込み、急速に栽培が拡大した。大豆は温帯地域を中心に厳しい土壌条件でも栽培される作物であり、ブラジル高原北部の荒地・熱帯草原(一般にはカンポセラードと呼ばれますね)を開発し、大豆畑が広がった。現在はさらに北の熱帯雨林地域へも大豆の栽培地域が拡大し、ブラジルは世界最大の大豆生産国へと成長している。一方で、アマゾン盆地の森林が伐採され、熱帯林減少の原因ともなってしまっている。
[解法]ブラジルは現在世界最大の大豆生産国へと成長した。ちょっと前まではアメリカ合衆国の方が生産が多かったんですけどね。コーンベルトでトウモロコシと輪作されている。ブラジルの生産拡大の背景には中国における需要の増加がある。中国では生活水準の向上による食生活の変化によって大豆の需要が大きく増えた。家畜の飼料あるいは食用油脂原料としての利用である。中国では大豆の生産は多くない(原産地なんですけどね)。不足する需要を国外からの輸入に依存し、その主な輸入先がブラジルだったのだ。ブラジルは南半球最大の工業国として、かつては機械類や鉄鋼などの輸出が多かったが、やがて最大の輸出品目は鉄鉱石となり、現在は大豆となっている。鉄鉱石も大豆もとくに中国が必要としているものであることに注目。ブラジルにとって最大の貿易相手国が中国であることも十分に想像できるだろう(先ほどの問2とも重なるのですが、ブラジルは国の規模のわりには日本向けの輸出は多くない)。このことから、FとGについてはFを大豆とみていいだろう。
サとシは一般的な農産物の生産統計として解いて欲しいし、あるいは生育環境と国名を対応させてもいいだdろう。統計でいえば、大豆の生産攘夷国はブラジル・アメリカ合衆国・アルゼンチンであり、コーヒー豆はブラジル・ベトナム・コロンビア。アルゼンチンが含まれるサが大豆であり、コロンビアが含まれるシがコーヒー豆となる。
コーヒー豆は栽培環境に特徴がある作物なので、ぜひチェックしておこう。コーヒー豆は「熱帯・亜熱帯の湿潤な高原」で栽培されるものである。原産地はアフリカ東部の低緯度地域のエチオピア高原。雨季と乾季はみられるものの、エチオピア高原は湿潤地域であり、コーヒー豆の栽培に的する。ブラジルでは南部のブラジル高原の、そのまた南部が栽培地域。こちらも雨季と乾季はあるが全体としては湿潤な熱帯地域である。
ここではコロンビアをぜひ知っておこう。コロンビアは赤道直下の位置する国。コーヒーの理想的な栽培地域がブラジル南部(南緯20~25度)であることを考えると、これでは「暑すぎる」。ただ、コロンビアは極めて標高の高い地域を国内に有する。ブラジル高原におけるコーヒー栽培地域の標高が1000mほどであるのに対し、コロンビアでは2000~3000mに達する。赤道直下で低地は極めて高温となるのだが、アンデス高原のコロンビアでは、それより標高の高い地域で栽培され、それは気温環境としては極めて適切なのだろう。
さらにいえば、コーヒー豆の栽培には気温日較差が必要。年平均気温だけが条件ならば、日本の南部でも十部に栽培可能なのだが、日本が産地とならない理由が気温日較差の小ささが原因。低緯度地域は気温日較差が大きく、とくにコロンビアではそういった気候がみられる。コロンビアで高級豆が採られるのも納得だsろう。一方のブラジルはやや気温日較差は大きいが、これはこれでいいみたいだね。クセのない平均的な味のコーヒー豆となり、ブレンドする際の基本的な豆種になる。ブラジル豆をベースとして、そこにクセの強いコロンビア豆やインドネシア豆、エチオピア豆などを加えるんだそうだ。
なお、近年生産が急増しているベトナム豆は安いので(ベトナムは1人当たりGNIが低い国だね)、アメリカ合衆国や日本でインスタントコーヒーの原料になっているとのこと。コーヒーが好きな人はいろいろと調べてみてくださいね。
大豆の栽培条件は上述のように温帯地域が中心。アルゼンチンは日本の「裏側」の国であり、日本と同じ様な気候がみられることは十分に想像できるよね。温帯の温暖湿潤な気候がみられ、大豆の栽培がさかん。また大豆は主に家畜の飼料となる点にも注目。アルゼンチンは牛の飼育頭数が多い国であり、飼料として(牧草にも恵まれる国であるが)大豆が利用されているはず。
なお先ほど大豆がブラジル高原北部やアマゾン低地の熱帯雨林で栽培されているとも言ったけれど、これは大豆のさまざまな環境に適応する特殊性によるもの。たとえば中国では大豆は東北地方で多く栽培されている。夏の気温は十分に上がるものの、それでも全体として冷涼であることは間違いない。大豆は温帯を中心に熱帯から亜寒帯(冷帯)まで栽培されうる。
それよりも実は大豆の栽培において重要であるのは、土壌が悪くても栽培が可能であること。というか、土壌が失われているような荒地において、大豆を栽培することで土を作り、農業を広く展開することができる。これ、どういうことかといえば、秘密は「根」にあるのだ。大豆の根は太くて頑丈。岩場であっても、表面の岩盤を打ち砕き、深く根を張る。岩を砕いて生じた微細な土砂がいつしかさらに細かく砕かれ、やがて土壌となる。大豆を植えることで、岩だらけの土地が農業可能な土壌に覆われた土地になるのだ。熱帯の土壌はラトソルというのだが、これが実にやっかいなもので、表面が硬化している。激しい降水によって土壌の水溶性の部分は流れ出してしまい、表面に金属(酸化鉄や酸化アルミニウム)が残される。熱帯の土壌は表面が金属で覆われ硬化し、草木の生育ができない裸地をつくる要因となってしまうのだ。一旦失われた熱帯林が再生できないのはこれが理由。
しかし、こうした硬化した地表面を砕き、栽培が可能な作物がある。そう、それが大豆だね。大豆が栽培されるだけでなく、栽培地では土壌がつくられるため、後から大豆以外の作物が栽培できたりする。大豆は「天然の鍬(くわ)」とも呼ばれ、アマゾン盆地で栽培が広がっている。ただし、栽培地の過剰な拡大によって、熱帯林の減少につながってしまっているのも皮肉なことではある。
[22][ファーストインプレッション]貿易ジャンルの問題としてはベタな感じがするのだが、この図はちょっと見たことがない。慌てて解かず、一旦立ち止まってゆっくりと図を眺める余裕が必要かな。
[解法]決して難しいことを聞いているわけではなさそうなのだが、見慣れない図なのでしっかり読み解こう。まず選択肢はアルゼンチン、コロンビア、ボリビア。いずれもさほどメジャーな国ではないものの、南米は比較的マイナーな国まで出題の対象となるので注意。これは国の数が少ないからであり、東南アジアも同じような感じになるね。東南アジアもミャンマーやラオスが登場したことがあるし。
さらに図の意味を読み取ろう。Lに注目してみる。「自国以外の南アメリカ」との貿易が圧倒的であり、アメリカ合衆国やEUは決して多くない。それに対し、Mはアメリカ合衆国相手の貿易が多く、Nは自国意外の南アメリカの値が高いものの、その偏り方はLほどではない。
ここでちょっと考えてみよう。上述したようにアルゼンチン、コロンビア、ボリビアはさほどメジャーな国ではないし、経済規模もさほど大きくない。これらの国の違いってどういったところにはっきりと現れているのだろう?僕はそれは「位置」だと思うのだ。どの国も輸出品目は一次産品が中心である。問3でも登場していたようにコロンビアやコーヒー豆、アルゼンチンは大豆であったり、そしていずれの国も資源の輸出が多い。輸出品目によってキャラクター分けすることはちょっと難しい。
ただ「位置」だけは明確に異なっているのだ。問2の図が参考になるね。コロンビアは南米大陸の北西端に位置し、中央アメリカと接している。カリブ海をはさんでアメリカ合衆国とは近い関係にある。ボリビアは内陸国であり、海洋に面する港をもたない。貿易は制限されるはず。アルゼンチンは南東部に位置し、こちらは重要な港湾を有している。大西洋に面する海洋国の側面も見られるだろう。
この位置関係から類推するに、アメリカ合衆国との貿易がメインであるMがコロンビアであることが想像される。さらにボリビアについては内陸国であり、例えば資源を輸出する際にもまず隣国へと鉄道へと輸送し(これは輸出に該当するね)、その隣国の港湾を用いて、船舶でアメリカ合衆国やEUへと輸出するのではないか。ボリビアからペルーへ輸出し、さらにペルーから太平洋航路によってアメリカ合衆国に輸出。ボリビアからブラジルに輸出し、さらにプラジルから大西洋航路によってEUに輸出。こういった構図が見えてこないかな。ボリビアの貿易は「自国以外の南アメリカ」相手がほとんどになるはず。Lがボリビアで、正解は6となる。
アルゼンチンはNとなるが、これはどうなんだろうね。自国以外の南アメリカの値は高いものの、Lほどの極端な偏りはなく、EUとの割合が高い。大西洋に面する巨大な港湾(ラプラタ川の河口のエスチュアリーに面するブエノスアイレス港)を持ち、大西洋を経由してのEUへの輸出入は盛んに行われているんじゃないかな。もちろん、その一方で国境を接する「南米最大の経済規模」を誇るブラジルとの貿易もそれなるに多い。両国は地域経済組織であるメルコスール(南米南部共同市場)の中心メンバーである。
[23][インプレッション]南米の資源に関する問題だね。この手の問題は銅鉱が問われることが多いんだけど、この問題はどんなもんなんだろう???と思ったら、やっぱり銅でしたね(笑)
[解法]銅に関する問題。銅の生産国としてはもちろん君たちはチリをチェックしているね。世界全体で圧倒的な産出量を占めている。本問でもシンプルに1を正解としていいんじゃないかな。
チリ北部は世界で最も降水量の少ない乾燥地域。沿岸を流れる寒流の影響に加え、南緯25度付近に位置し亜熱帯高圧帯の影響が年間を通じて強い。雲ができず空気が澄んでいるので、世界中から多くの天体観測状がこの地に設けられているね。雨が降らないので露天掘りが可能。表面の銅鉱を含んだ土砂を掘削し、地面には巨大な凹地がつくられる。コストが安く、国際競争力が高い。
古い時代より銅鉱の産出が盛んだったので、増加率については標準的な値と考えていいと思う(それでも2000年から2018年までの短い期間に63.6%も増加していることには驚きますが)。1が銅。
他については判定の必要はないが、参考までに。2はおそらくリチウムだと思う。伸び方がエゲツないでしょ!?これ、携帯電話(スマートフォン)の充電池に利用されているんですよね。世界最大の産出国はオーストラリアですが、世界的な需要増を受けて生産量が急増していることが特徴。
3はおそらく原油だと思うんですよね。とくにブラジルは近年原油の産出量の増加が著しい国としてぜひチェックしておこう。以前はブラジルの輸出品目としては、南半球最大の工業国として機械類や自動車、鉄鋼を考えれば良かったのだが、中国の経済成長と工業化によって中国向けの資源輸出が増え、鉄鉱石が最大の輸出品目となった。そして、同じく中国の生活水準の向上による食生活の変化によって大豆(家畜飼料や油脂)の生産が拡大し、その輸出がとくに大きくなった。現在のブラジルの主な輸出品目としては「大豆」と「鉄鉱石」を知っておこう。そしてそれに続く輸出品目として「原油」が急上昇中である。こちらも統計資料で確認しておいてほしい。ブラジルの場合は沿岸の浅海底での油田開発が盛んであり、こちらからの産油量が増加している。
ブラジルは化石燃料への依存度が低い国というキャラクターがあるが(1人当たり1次エネルギー供給量、1人当たり二酸化炭素排出量がいずれも低い)、近年はその傾向もやや弱まりつつある。自動車はサトウキビから抽出したバイオ燃料で走り、発電はほとんどが水力。しかし、それに化石燃料(原油)という持ち札が加わったのだ。
残った4がボーキサイトかな。こちらも最大の産出国はオーストラリアだが、ブラジル北部などには重要なボーキサイト鉱山もある。他の資源に比べ、増加しているという話は聞かないな。
[24][インプレッション]この大問、初の(そして唯一の)考察問題かな?共通テストでは知識がほとんど問われない考察問題が多く取り上げられているのだけれども、この大問は珍しくそうした問題が問1から問5まで見られなかった。いずれもちょっとした知識が求められている(そしてなぜか貿易に関する問題が多かったね。ちょっと偏っているな)。本問は共通テスト本来の「その場で考える」問題になっているんじゃないかな(違っていたらゴメンなさい)。
[解法]こういった問題は先に文章を読んでしまって、怪しいところを逐一チェックしていく。あらかじめ図を見てしまうとタイムパフォーマンスが悪い。正文判定問題なので、誤文を3つ炙り出す。
まず1から。これはどうなんだろうね。都市の中心部にある街路であるし、後から敷設されたとはちょっと考えにくいのだが。おそらく誤文じゃないかな。保留しましょう。
さらに2。あれ?この選択肢は民族構成が問われているじゃないか???先ほどファーストインプレッションで、本問は考察問題で知識は不要なんじゃないかと予想したのだが、全然そんなことなかったね。むしろガッツリと知識が問われている。
改めてじっくり解いてみよう。まず問題文より「アルゼンチンとブラジルの首都」とある。これを断定しておかないと。主な国の首都についてはぜひ知っておくべきだし、その「主な国」の中に当然ブラジルもアルゼンチンも含まれる。とくにブラジルは「人口最大都市と首都が一致しない」国であり、非常に出題率が高い。
ブラジルの首都はブラジリア。ブラジル高原北部の荒地・熱帯草原(問3の解説でも指摘したが、ここはカンポセラードというところ)を切り開いて開発された計画的な都市。周辺も大豆やとうもろこしの畑地として開発されている。計画的に開発されたことによる特殊な街路区画構造に特徴がある。その形は「翼を広げた鳥」や「飛行機」に形容される。こちらの図で言えば、Pがそれに該当する。丘陵地に作られているため、街路区画の広がり方に制限があり、かえってそれを利用して幾何学的な美しい都市が形成されたのだ。ブラジリアは都市全体が世界遺産となっている。ただし、人口規模はあまり大きくなく、数百万人程度。1000万人規模のサンパウロや、それに次ぐリオデジャネイロよりは小さい。
アルゼンチンの首都はブエノスアイレス。大西洋に望む港湾都市で、ヨーロッパから多くの移民を迎え入れた歴史がある。ラプラタ川の河口のエスチュアリーに面する巨大な港湾を有している。後背地(背後の土地のこと。とくに平坦な開けた地域)が広く、豊かな農業地域となっていることから、植民地成立以来、重要な農産物や畜産物の輸出港として栄えた。人口規模は大きく、アルゼンチンの総人口の4分の1ほどが集中。1,000万人規模のメガシティである。
このことからPとQを判定してみよう。もちろん注目するべきはP。どうかな、右側を頭にして、翼を広げた鳥や飛行機の形に街路が見えないかな。これがブラジリア。山間部に計画的に建設された都市であり、地形的制約からこのような興味深い形に街路網が構築されている。凹地に水をためて湖としても利用しているようだ。このことからQがブエノスアイレス、北東側に水域があり、これはラプラタ川のエスチュアリーだろうか。河口が沈降してできたラッパ状の入江であり、水深が十分であり波も静かであるため、良港となる。
ここで選択肢2に戻る。Qの都市はブエノスアイレスであり、この国はアルゼンチンである。アルゼンチンの民族構成が問われている。南アメリカの国ごとの民族構成は簡単なので(そして出題される範囲も限られているので)、ここでまとめてしまおう。
まずアルゼンチンとウルグアイであるが、大西洋に面する良港を有し、ヨーロッパから多くの移民を迎え入れた。現在でもその子孫がこれらの国の主要民族となっており、「ヨーロッパ系」の2カ国である。
さらにペルーとボリビア。いずれもアンデス高原に国土を有し、かつてインカ帝国が版図を広げた地域。高度な文明が栄え、ジャガイモやトウモロコシの栽培がさかんな地域だった。やがてカトリック化されスペインの植民地となったが、先住民インディオの文化も残り、現在でも人口の半分程度は先住民によって構成されている。山岳地帯であり、スペインからの移民もさほど進まなかったことが背景にある。
そしてインディオとヨーロッパ系の人々の混血をメスチソ(メスチーソ)と呼ぶのだが、ヨーロッパ系の多い地域とインディオの多い地域との境界こそ、メスチソの割合が高い。アルゼンチン・ウルグアイとペルー・ボリビアに接するパラグアイとチリがメスチソの国となる。
このことから、アルゼンチンはヨーロッパ系の国である、ブエノスアイレスでもヨーロッパ系が多いだろう。選択肢2は正文となる。
さらに3について。「空港」とあるが、その利用者が多いということは2つの利用が考えられる。まずはその都市の人口が多いことが一つ。そして、その都市が国内において商工業が発達した都市として、経済の中心を成しているということ。アルゼンチンのブエノスアイレスはともなくとして、ブラジルのブラジリアはどうだろうか。計画的な都市として、そもそも人口が少なく開発の進まないブラジル高原北部の荒地(三圃セラード)に作られたものである。主要都市は旧首都であり港湾都市のリオでジャネイロ、そして人口最大でありコーヒーの集散地として発展したサンパウロ。これらの都市の方が経済的にはブラジリアより上位であり、より巨大な空港が立地しているのではないか。3は誤りとみていいだろう。
そして4。上述のようにブラジリアはブラジル高原北部の内陸部に建設された都市。例えば内陸部であってもアマゾン盆地に位置するマナウスのように、河港を有する都市もあるが、それは例外的。ブラジル高原にはそういった大きな河川はないし、ブラジリアも港湾を有さない。これも誤り。
以上より正しい文は2となる。あれ?この問題、意外と知識が必要だし、結構難しいぞ。ブラジリアの図がセンター・共通テストに登場するのは今回が初めてであり、メジャーな話題ではない。またブエノスアイレスもこれまでこのように問われたことはなかった。民族構成が問われるのも、最近は珍しい(やっぱコンプラ的にあまり民族について突っ込んで問うのはダメなんじゃないのかな)。とりあえずここではブラジリアに関連して、計画的に建設された政治都市について理解を深めておこう。とくに街路区画については特徴的なものばかり。「放射直交路型」街路区画を有するワシントンD.C.(アメリカ合衆国)、「放射環状路型」の街路区画を有するキャンベラ(オーストラリア)、そして航空機のブラジリア。