2024年地理B追試験[第2問]解説

<第2問>

 

[7][インプレッション]「第2問問1」お得意のストレートな統計問題だね。ストレートであることが簡単かどうかっていうのは別の話だけど、解きにくいってことはないんじゃないかな。

 

[解法]世界における上位国を問うシンプルな問題。問われているのは「石油生産量」、「二酸化炭素排出量」、「農産物の生産量」のいずれかである。なお、冒頭に「工業出荷額」の上位国も示されている。これは見る必要はあるのかな。工業出荷額は国の経済規模、要するに「持っているお金の量」に比例するのだ。つまり「GNI」だよね。GNIは米国、中国、日本、ドイツ、インドの順。なるほど、これらの国がきちんとランクインしている。

 

では3つの指標について検討していこう。こういった問題で真っ先に注目するべきは日本。日本が含まれているか、否か。日本が空白となっているのはcの図だけだよね。3つの指標のうち、確実に日本が上位ではないといえるのは「農産物の生産量」ではないかな。cが農産物生産量に該当する。日本は米はともかくとして、小麦やトウモロコシの生産は少なく、肉類やイモ類についても決して生産が多いとは言えない、輸入に依存する農畜産物も多い。世界的な農産物の生産国とは言えないね。逆にcにはオーストラリアが含まれているのが興味深い。人口は少ない(そしてGNIも小さい)ものの、農畜産物の世界的な輸出国であり、当然上位20位までにはランクインしてくるだろう。他にはアルゼンチンもあるね。大豆や小麦、肉類などの農畜産物が主要輸出国であるという珍しい国。

 指標の中で最もわかりやすいのは「石油生産量」じゃないかな。これこそストレートにOPEC加盟国を考えればいい。アラブ主張高連邦のように細かい国もあるから、ここはわかりやすいところでアラビア半島の広い範囲を占めるサウジアラビアに注目すればいいだろう。aが石油生産量になるね。

 

では、改めて図を解析し、注目するべき国をチェックしていこう。

 

「工業出荷額」はGNIに比例。過去には「工業付加価値額」という言葉で登場したけれど、同じものと思っていい。付加価値は、衣類より自動車が高く、そして自動車よりコンピュータ製品が高い。要するに価格と同じなので「出荷額=付加価値額」の関係が成り立つのだ。GNIの上位は、米国、中国、日本、ドイツ、インド、イギリス、フランス、カナダ、イタリア、韓国、ブラジル、スペインなど。これらは当然全部含まれている。

ただし、他の国が興味深い。トルコ、ポーランド、タイ、メキシコ、スイス、オランダなど。これらは国の規模(GNI)は小さいものの、工業製品の生産に特徴がある国々ということ。なるほど、トルコやポーランド、タイ、メキシコは近隣の先進国から安価な労働力を求めてさかんに工場が進出している国だね。とくに自動車工場など。その分だけ工業製品の出荷額が大きく、つまり工業付加価値額が高いということ。

スイスは純粋に精密機械の生産が多いので、その分だけ付加価値額も大きくなっているのだろう。高価格の時計の生産など。

オランダはどう考えたらいいのかな。商業国であり、工業製品については中継している割合が高い(他の国から輸入し、港に留め置いて、そこからさらに輸出する)と思うのだが、ユーロポートの石油化学工業など、工業生産力も大きいのかもしれない。

ロシアも上位20までに含まれている。それなりにGNIは大きい国であり、工業生産力が大きいと思ってもとくに不思議ではないかな。資源も豊富であり、原料指向型の工業も発達している。

ただし、この図で最もびっくりしたのはオーストラリア。えっ、オーストラリアで成り立つ工業なんてあるの???オーストラリアは賃金水準が高いことから外国から安価な労働力を期待しての工場は進出しないし、GNIの小さい国(人口も少ない)であることからオーストラリア国内での販売を目的とした工業も発達しない(現地生産を目的とした外国からの工場進出はないってことね)。それなのに、工業出荷額でベスト20に入っているのはかなり意外。ちょっと調べてみないとわからないけれど、20位ギリギリにランクインしているってことなのかな。個人的な感覚としては、チェコやインドネシア、南アフリカの方が工業出荷額が大きくなりそうなんだけれどね。

 

aは石油産出量。

まずはOPEC加盟国が多い。とくにペルシャ湾岸のアラブ産油国だけ。国が小さいから図では確認しにくいけれど、この地域はイラクとサウジアラビアの他にもアラブ首長国連邦、クウェート、カタール(この国はOPEC脱退していますが)がランクインしている。他にもOPECにはイラン、ベネズエラ、リビア、アルジェリア、アンゴラがある(もしかして脱退している国もあるかもしれませんが、、、まぁ、細かいところは気にしなくていいでしょう・笑)

他には世界最大規模の産油量を誇るロシアと米国は鉄板。米国周辺の二つの訓(カナダとメキシコ)も原油産出が多く、米国に輸出している。ヨーロッパでは北海油田を有するイギリスとノルウェー。

世界最大の原油輸入国である中国も産出が多くなっているね。それからブラジルが興味深い。近年沿岸部に油田開発がなされている国。

 

bは二酸化炭素排出量。まずGNIの大きい国はエネルギー(一次エネルギー)である化石燃料の消費が多いので、上位にランクインする。GNI上位の米国、中国、日本、ドイツ、インド、イギリス、フランス、イタリア、ブラジル。オランダもここに入れていいかな(人口は1500万人程度で、西ヨーロッパ5大国(ドイツ・イギリス・フランス・イタリア・スペインに次ぐ規模)。

さらに資源国、国内の化石燃料資源に余裕があるので、省エネが進まず、過剰に消費してしまうのだ。原油のロシアとサウジアラビア、イラン、カナダ、メキシコ、石炭のインドネシアとオーストラリア、ポーランド、南アフリカ。

そうなると一つだけ残るのがトルコなんですよね。トルコは資源産出が多い国ではなく、人口やGNIも際立って大きい国ではない。工業生産力は世界有数であるので、それだけエネルギー消費(輸入に依存sいている)も大きくなっているのだろうか。

cは農産物の生産量。穀物の生産上位穀を挙げてみよう。米は中国、インド、バングラデシュ、インドネシア、タイ。小麦は中国、インド、ロシア、米国、フランス、カナダ、オーストラリア、ウクライナ、アルゼンチン。トウモロコシは米国、中国、ブラジル、アルゼンチン、メキシコ。大豆はブラジル、米国、アルゼンチン。なるほど、上位20カ国のほとんどはこれらの穀物の生産が多い国となっている。

ドイツは人口が多い国(8000万人)であり、冷涼な気候であるが多様な農産物の生産が多いのだろう。小麦や大麦、ライ麦そしてジャガイモなど。

タイは人口は決して多い国ではないが(7000万人)、米については輸出余力があり、人口を超える生産量を有し、その分だけ生産が多いとみていい。タイの米の生産量は世界7位。

パキスタンがおもしろいね。パキスタンは2億人を超える人口大国であり、もちろんその分だけ農産物の生産は多い。小麦(ナン)が主食。米の輸出も比較的多い。乾燥気候であるが、灌漑によって稲作が行われている(パキスタン人は食べないけれど、バングラデシュや西アジアに輸出されている)。

ナイジェリアにも注目。こちらも人口大国。熱帯雨林での焼畑農業によってキャッサバ(タピオカ)が栽培されている。ナイジェリアの人々の主食となるイモである。

そうなるとここでもやっぱりトルコがあるのがおもしろいね。トルコは世界一のパンの国であり、1人当たりのパンの消費量が世界最大なんだそうな。隠れた小麦栽培国なのかな?地中海に面し、果樹栽培が盛んで果実をヨーロッパに輸出しているのだろうか。

 

果実といえばフィリピンがランクインしているのがかなり意外(工業出荷額のオーストラリアのように、20位までに範囲を広げると、「あれ?なぜこの国が?」っていう国もランキングに入ってくるみたいだね)。人口1億人に達する人口大国の一つだが、国土は山がちで水田に恵まれず、米は輸入に依存している。米の生産は多くない。やっぱりバナナなのかな。日本や米国の企業が大農園を開き、バナナを生産している。その分がカウントされているのだろうか。

 

 

[8][ファーストインプレッション]

よく見る形のグラフなので読解は難しくなさそう。アメリカ合衆国の原油生産というタイムリーな話題。文章正誤だが、その場で考える問題になっているんじゃないかな。

 

[解法]選択肢1から。まず「1980年頃に消費量が急減」している様子を読み取る。この部分は下線部から外れているのでそもそも正しいのだが、一応確認ね。たしかに1980年付近の消費量に大きな窪みがある。問題はここから。「需要増加に対し国内の生産量の増加が追いつかなかった」からなのだろうか。国内の生産量は横ばい。それに対し消費量と同じようなグラフの窪みがみられるのが「輸入量」の方。たとえば原油価格高騰や産油国の減産などにより輸入量が大きく減少し、その影響が全体の消費量にも表れていると考えるのが妥当なんじゃないか。何らかの理由で輸入が困難な状況になったことが想像される。1は誤り。

 

さらに選択肢2。こちらも下線部外の文章から確認。なるほど、たしかに2000年代から2010年代にかけて輸入量が大きく減少している。ただ、下線部にあるように、その理由として「再生可能エネルギーが石油を代替するようになった」からなのだろうか。しかし、それならば、石油の消費量そのものが減少するんっじゃない?石油の代わりに代替エネルギーが使われるようになるのだから。でもこちらのグラフでは消費量はほぼ横ばいで、減少しているわけではない。これは誤りだね。輸入量が減ったのは、(やはりグラフから判定するに)生産量が急増したからでしょう。

 

そして選択肢3。2000年代後半から生産量が急増しているね。ただ、下線部の内容はグラフからは判定できない。保留にしておこう。

 

最後に選択肢4。おっと、これはグラフからは判定できないな。統計の知識が必要。やっぱ統計は大切ってことだよ。日本は世界的な原油(石油)の輸入国だが、その主な輸入先は西アジアのアラブ産油国。サウジアラビアやアラブ首長国連邦が中心。一部は東南アジアやロシアなどからの輸入もあるが、ほとんどをペルシャ湾岸の産油国に依存している。アメリカ合衆国からの輸入はみられない。さらにいえば「貿易摩擦の解消」というのもわからない。貿易摩擦は1980年代から指摘されていることで、日本の輸出超過、アメリカ合衆国の輸入超過。これは主に自動車の輸出によるもの。日本から自動車がアメリカ合衆国に過度に輸出されたのだ。この解消に行われたものは、石油など一次産品の輸入ではなく、日本企業のアメリカ合衆国への工場設立。自動車メーカーがアメリカ国内で生産をすることで、日本からアメリカ合衆国への輸出量が減少した(そして貿易摩擦も緩和された)。石油の貿易とは関係ないね。この文章も誤り。

 

というわけで、正解(正文)は3となる。下線部の「それまで採掘できなかった場所の原油が、採掘技術の進歩により採掘可能となった」というのは、シェールオイルのことだろう。地下の頁岩層に含まれる原油資源について、水の圧力によって岩盤を破砕し、原油を掘り出すというかなり乱暴な(?)技術。天然ガスのシェールガスとともに「シェール革命」が進み、アメリカ合衆国は世界最大の原油産出国となっている。

 

 

[9][ファーストインプレッション]選択肢が日本、インド、オーストラリアって言うのが極端ですね。工業生産の問題なんだけど、みんなのなかに「先進国=工業、発展途上国=農業」っていう誤ったイメージがあって、これに沿って考えると間違えるよって問題なんじゃないかな。1人当たりGNI(賃金水準)を考慮に入れ、発展途上港ではどういった工業化がみられるのかを考える問題ですね。

 

[解法]はじめに。こういった問題って二つ考え方があって、一つは「国名を判定しない」パターンと「国名を判定する」パターン。前者ならば、国名にはこだわらずA~Cのグラフをア~ウの文章と直接くっつけてしまう。これ、かなりスマートな解き方で僕は好きです。後者の場合、国名判定というワンクッションが入る。例えばA~Cについて、どれがどの国か(日本?インド?オーストラリア?)を判定。続けてア~ウの文章についても国名を判定する。最後に、国名を媒介としてア~ウとA~Cを対応させ答えを出す。これはかなり慎重派の解き方と言え、確実性は高いと思う。

 

さて、どちらがいいのだろう?結論から言ってしまえば、どちらでもいいんですよね(笑)。実際解いてみて、解きやすい方で考えればいい。ただ、本問の場合は、僕は解いてみて思ったのは、前者じゃちょっと解きにくい。本問の場合、問題を解くカギはAの食料品の高さであったり、Cの繊維の高さだったりするのだが、ア~ウの文章中に「食料品」や「繊維」という言葉がないので、直接的なヒントに乏しい。さらに言えば、せっかく問題文の方に日本・インド・オーストラリアという具体的な国名が挙げられているのだから、これを利用してしまった方がいい。時々この手の問題で国名を明らかにしていない形もあり、そういった場合はこちらで具体的な国名を想像しないといけない。それに比べれば今回は国名がしっかり示されているので、これに沿って考えなさいよという出題者側からのメッセージなのかもしれない。

 

では、こういった形式的な特徴をふまえて、問題を解いてみよう。工業と1人当たりGNI(賃金水準)との関係を考える。当然ポイントは「繊維」。繊維については具体的に衣類を考えればいいんだが、その特徴は「安価」な「労働集約型」の工業製品であるということ。多くの労働力に依存する一方で、その製品価格は安いので、とくに賃金の安い労働力が必要となる。

A~Cは「工業付加価値額」を示したものである。工業付加価値額については注釈があり「生産額から賃金以外の生産に必要な経費を引いた、新たに作り出された価値の金額」とあるけれど、これ、意味わからないよね(笑)ただ、「賃金」は引かれていないので、賃金水準が重要な要素ってことは想像できる。とりあえず普通の「工業生産額」って考えちゃってください。「付加価値」に特別な意味はありません。

 

というわけで、もちろん最初にみるべき箇所は「繊維」。この生産(というか付加価値=金額)の割合が高いわけだよね。低賃金の労働力が豊富であると考える。Cがインドとみていいだろう。

 

AとBが日本かオーストラリア。ともに1人当たりGNIは高い先進国であり、賃金水準は高い。人口規模が違うのでGNIは日本の方が圧倒的に大きいが、このグラフは「割合」を示したものであり、GNIとは関係ない。「1人当たりGNI=割合」、「GNI=実数」だよね。割合は割合と相関関係があり、実数は実数と相関関係がある。たとえば、GNIと工業生産力(つまり工業付加価値額)は比例し、工業製品の生産額でいえば日本(とインド)が大きくてオーストラリアが小さいんだろうけれど、それはこのグラフではわからない。

 

Aの特徴は食料品だね。それに対し、Bで割合が高いのは輸送用機械。どうだろう?これだけで素直に判定してしまっていいと思うよ。農畜産物の生産が多くその加工業が発達しているであろう(つまり食料品)Aがオーストラリアであり、世界的な自動車生産国である日本が輸送用機器の割合の高いBと判定していいだろう。

 

どうだろうか?国名を先に判定してしまった方が簡単だし、確実と言えるんじゃないかな。ではさらにア~ウの判定をしてみよう。1人当たりGNIやGNIを頭に入れながら考えてみよう。日本がもっともわかりやすいんじゃないかな。

 

イが日本になるね。日本は「原料や燃料を輸入し工業製品を輸出する」国だよね。これを加工貿易といいます。ただ、経済成長によって賃金水準が上昇し、国内で工業製品を生産するのはコスト高となってしまった。いわゆる「国際競争力が落ちる」という状態。高賃金国である日本は、より付加価値の高い(単に「価格が高い」と考えてしまっていいですよ)製品の製造へと重点を移す必要が生じてきた。「手ではなく、頭を使う」産業といえばイメージしやすいかな。自動車工業など労働集約型の工業から、ICTなど知識集約型の先端技術産業への転換が求められている。1人当たりGNIの高い先進国の産業モデル。

 

ウでは「国内市場は小さい」が最大のポイント。「市場規模=GNI」なので、この国はGNIが小さい。GNIは1人当たりGNIと人口の積(GNI=1人当たりGNI×人口)だね。オーストラリアは1人当たりGNIは高いけれど人口が少なく、GNIの規模も小さくなる。ちなみにインドのGNIは、人口大国であるだけに巨大なものになるね。GNIの順位は、1位アメリカ合衆国、2位中国、3位日本、4位ドイツ、5位インド。オーストラリアの順位はかなり低い。日本やインドで「国内市場が小さい」ということはない。

 

ウをオーストラリアと見ると、文章の他の部分も全て納得できる。「多様な豊富な資源」を有し、そしてかつてはヨーロッパとの関係が深かった(旧宗主国イギリスなど)が、近年は太平洋地域とくに「近隣」のアジア地域との結びつきが強くなっている。

 

残ったアがインドになる。最後の「急速に工業化が進んできた」という辺りが発展途上国っぽいね(中国でもよくこういった言い方をするでしょ)。「多くの人口」はもちろんインドだからこそ言えることでオーストラリアが該当しない。「豊富な資源」は実はちょっとクエスチョンであったりするんだけどね。インドは原油は世界2位の輸入国であり、生産は決して多くない。鉄鉱石や石炭についてはたしかに国土東部には大きな鉄山や炭田が立地し、付近は原料指向型の鉄鋼業が発達した歴史もあるが(インドの鉄鋼業の歴史は古く、20世紀初頭に遡る。シャムシェドプルの製鉄所が操業を始めたのは、日本の八幡製鉄所と同じ年。ただし、近年はインドで鉄鋼生産が拡大したこともあり、国内生産だけでは需要が満たさなくなっている。インドは鉄鉱石と石炭の輸入国へと転換した。

 

ここでとくに興味深い言葉に「輸入代替型」と「輸出指向型」があるので、ぜひチェックしておこう。一般的には、発展途上国において工業化が進む場合、工業化初期の段階が「輸入代替型」、そこから発展して「輸出指向型」と変化していくとしてインプットしておこう。ベクトルの向きは「輸入代替型→輸出指向型」であり、この向きは逆流しない。文章正誤問題でよく「輸出指向型工業から輸入代替型工業へと変化した」というセンテンスが登場することがあるが、これはもちろん誤り。

 

輸入代替型とは、それまで外国から輸入していた工業製品について、国内で生産を始めること。発展途上国は最初は工業化がみられないので、最初の段階として「製品輸入」があるわけだね。輸入に頼っていた製品について国内生産に切り替える(つまり「代替」する)ので、輸入代替という。

 

ただ、発展途上国であるので、技術もなければ巨大な資本もない。軽工業とくに繊維工業(衣服工業)から輸入代替型工業がスタートすることが多い。

 

やがてこの状況が変化する。工業化によって技術水準が上がり、さらに資本力も備え、大きな工場施設をつくることができるようになる。さらにその頃には、工業生産力が国内の市場の規模を超え、「過剰」になった工業製品を輸出することで利益を得ようとする。輸出指向型工業への発展である。工業の種類も、(安価な労働力を生かした労働集約型工業である点は共通するが)繊維工業のような軽工業から、機械組み立てなど重工業へと変化する。またそういった工業は多くが先進国からの工場進出によるもの。先進国が工場を進出され、発展途上国の安価な労働力で組み立て製品が完成し、それが改めて先進国へと輸出されている。これらの工業製品が、発展途上国の市場向けでないことがわかるだろうか、巨大な市場である欧米や日本への輸出を前提に生産されることが多い。こういった状況は十分に理解できるだろう。こういった工業の一般的な法則とともに、輸入代替型工業から輸出指向型工業へのベクトルの向きを意識しておこう。

 

ここからはちょっとおまけ。興味ある人は読んでください。

 

上記のように輸入代替型工業についてはあくまで輸出指向型の前の段階と考えてくれたら十分だが、これとはちょっと異なり、特定の国のキャラクターを表すキーワードとしてこの言葉が登場する場合がある。その国とは「インド」と「ブラジル」なのだ。韓国やASEAN諸国が最初から輸出指向型工業によって発展したのに対し、インドやブラジルは輸入代替型工業の期間が長かった(アの選択肢にあるように、輸出指向型工業に転換したのは近年なのだ)。

 

インドとブラジルはいずれも人口が多く、1人当たりGNIは低いもののGNIの規模は大きくなる。現在、GNIはインドが世界5位であり、ブラジルもたしか10位以内に入っていたんじゃないかな。過去ももちろんそれなりに大きなGNIを有していたわけで、要するに国内の市場規模が大きいということなのだ。国内向けの工業生産が中心であっても、十分に経済成長ができる(これに対し、GNIが小さい韓国やASEANは生産を国内向けに限定していれば、生産量は増えず、経済も停滞する)。インドやブラジルは内需型の工業すなわち輸入代替型の工業製作がしばらくの間取られていた2カ国なのだ。

 

外国向けの生産がないので、外国の市場は意識する必要はないし、外国企業と結びつく必要もない。インドでは独立(終戦直後)以来、混合経済体制による経済活動が行われてきた。混合経済体制とは、国営企業と民族資本の企業による生産を中心とした体制。国営企業はわかると思うが、民族資本というのはインド国内の財閥であるタタ家によるもの。巨大な資本力を有するタタが多くの企業を経営し、外国からの企業進出はなかった。インドは自動車工業が早い段階から発達した国の一つでありが、国内の主要メーカーが国営のインディアと民族資本のタタ。

 

しかし、外資をシャットアウトした「鎖国」経済が高い成長率を示すわけもなく、インド経済は世界の流れから取り残されてしまう。中国(1980年代初頭)、ベトナム(1980年代後半)に続き、1990年代に入りインドも経済の自由化を図り、外国からの企業進出をさかんに受け入れるようになった。これにより、あくまで国内向けの生産体制であった輸入代替による工業化は終焉し、輸出指向型工業による経済成長を目指すことになった(アの文章で「近年」というのは、この1990年代以降の時期を指す)。現在、輸入代替型の工業国はないので、とりあえず(今は違うけれど)輸入代替という言葉が登場したら、インドに当てはまるのだと考えてほしい。

 

さらにブラジルもインド同様に長く輸入代替型の工業化を図っていた国であったが、やはりさらなる経済成長を狙って輸出試行型工業に転換した国。ブラジルの輸入代替型工業の時代を象徴する工業品目は航空機。ブラジルは面積が広いので(そして人口密度が低いので)、国内各地に航空路で赴くことが多く、航空機が人々の一般的な足となった。ただ、当時は外国との交流が薄く、例えば日本のように航空機を全てアメリカ合衆国からの輸入によって賄うといったようなことができない。そのため、ブラジルでは比較的早い段階から航空機産業が発達し、現在でも航空機の世界的な生産国の一つになっている(とくに国内線の小型機の生産が多い)。輸入代替型工業国として外国からの輸入に依存できない経済体制ゆえの特徴である。

 

現在はブラジルも積極的に外国企業を受け入れ、さらに輸出用の工業製品の生産にも力を入れる輸出指向型の工業国へと転換している。経済成長も著しい。

 

 

[10][ファーストインプレッション]貿易の問題ですね。先ほどの問題でも日本の原油輸入先について問う問題があったが、「日本の輸入先」は非常に重要。本問も日本を中心に見ていけばいい。ただ、クは日本に矢印はないんですよね(笑)

 

[解法]世界全体を表した図については「日本」に注目。カとキはいずれも日本が世界的な輸入国となっているが(食品については日本は輸入する側だね)、カはアメリカ合衆国からの輸入が圧倒的であり、一部がブラジル。キはオーストラリアが最大で、次点がアメリカ合衆国。果実類、牛肉、穀物、さぁ、どれに当てはまるんだろう?

 

カが穀物なんじゃないか。穀物は主に米、小麦、とうもろこしがある。米については輸入量が少ないから無視するとしても(それでも日本にとって最大の米の輸入相手国はアメリカ合衆国なのだが)、とくにとうもろこしについては国内の自給率がほぼ0%であるのでほとんど全てを輸入に依存しているわけだが、その輸入先としては世界ダントツのとうもろこしの国であるアメリカ合衆国が挙げられる。五大湖の南側のコーンベルトは世界最大のとうもろこし地帯。小麦ももちろん輸入先の筆頭はアメリカ合衆国。統計の知識は必須。

ちなみに、この「穀物」には大豆は含まれないみたいだね。大豆も穀物に数える場合もあるけれど、共通テストではそういった扱いではないみたい。大豆を含めると「ブラジルから中国へ」の貿易額が極めて大きくなる。ブラジルは世界最大の大豆生産国であり輸出国でもある。中国は世界最大の大豆輸入国である。食生活の多様化によって、油脂や飼料用の大豆需要が拡大しているのだ。本図に示されているブラジルから日本への矢印はとうもろこしかな?ブラジルは世界的なとうもろこし生産国の一つ。米はそもそも日本はほとんど輸入していないし、小麦はブラジルでは栽培されていない(むしろ輸入する側)。

  

さらにキは牛肉かな。これはオーストラリアからの輸入が多いことからわかる。農畜産物はほとんどアメリカ合衆国から輸入されているが、牛肉は数少ない例外の一つ(もう一つの例外が野菜。鮮度が重要なので、中国や韓国からの輸入が多い。近隣国からの輸入が主)。かつてはアメリカ合衆国が最大の輸入相手国だったが、BSE(狂牛病)の発生に関連し、アメリカ合衆国からの輸入が禁止された。BSE自体はヨーロッパに感染源があるが、やがてアメリカ合衆国、そして日本へと北半球の各地へと広まった。牛が感染するばかりではなく、それを食べた人体への影響も懸念されている。

そのため、牛肉についてはBSEの伝染のない南半球の国からの輸入が主となった。現在の最大の輸入相手国はオーストラリアとなっている。ニュージーランドからの輸入量も多い。

 

残ったクが果実類となる。日本もフィリピンからのバナナなど果実類の輸入量は多いはずだが、世界の上位にはランクインしていなかったのだろう。メキシコからアメリカ合衆国への輸出など、暖かい国から寒い国への輸出がわかりやすい。よく見ると、スペインも輸出国となっている。ヨーロッパ唯一のオレンジ栽培国であり、冷涼な他の欧州諸国へとオレンジが輸出されている。

 

 

[11][ファーストインプレッション]光化学スモッグが出題されたのは初めて。知識が問われているのだろうか。基本的には図と文章を見るだけで解ける考察問題だと思うのだが。光化学スモッグの発生が日本でよく見られたのは高度経済成長期。自動車の排ガスに含まれる窒素酸化物が太陽光線によって化学変化を起こし、スモッグ(スモークとフォッグの合成語であることからわかるように、大気が白く霞む)が発生。目への刺激や立ちくらみなどの人体への影響がみられる。

 

[解法]図やグラフと対応させながら文章を検討していこう。

選択肢1から。「沿岸地域の工場からの排煙が多い」とある。なるほど、地図をみると東京湾の沿岸部に「重度」地域があり、ここは高度経済成長期に臨海型の工業地域として開発されたところ。正文でしょう。

選択肢2について。原因物質が海からの風によって運ばれた」とあるが、図を見る限り、たしかに東京湾から北西側の内陸部に「重度」地域が広がっている。夏の南東季節風によって大気汚染物質が運ばれたのだと思うと、納得。正文でしょう。

選択肢3について。「発生源に対し強い規制がかかった」とある。地理は政治や法律の話はわからないので、この選択肢は無視していいでしょう。答えにはならないと思います。この問題は誤文判定問題なので「答えにならない=正文」ということ。おそらくこの選択肢は正しいんじゃないかな。

最後に選択肢4。1から3まで全て正文なので、これが怪しいと思う。「2011年以降、光化学スモッグが発生していない」とあるが、被害者数こそ0であるものの、注意報は発令されているし、光化学スモッグは発生しているとみていいと思う。4が誤りですね。

 

 

[12][ファーストインプレッション]会話文から読解する文章正誤問題。「誤り」を一つだけ探せばいいので、おそらく文章を読むうちに明らかにおかしい箇所にぶち当たるんじゃないかな。

 

[解法]選択肢1から。んんん?これ、おかしいんじゃない???「化石燃料を利用する工場」を先進国から発展途上国へと移転させるよね。先進国で使われる化石燃料の量は減るだろうけど、工場が新しくできた分だけ発展途上国での化石燃料の消費量は増えるよね。トータルとしては変化がない。化石燃料の燃焼によって二酸化炭素が排出されるのだから、化石燃料の使われる場所すなわち二酸化炭素の排出される地域が移動しただけであって、「量」は減らないんじゃない?これが誤りでしょ。

 

2から4については、いずれも適切なことを述べているような気がします。明らかに「誤っている」ワードはないよね。やっぱり選択肢1の「二酸化炭素排出量の削減」という箇所は「数字」によって計量されるものであり、白黒つけやすいものでしょ?やっぱりこういった「誤っていることがわかりやすい」箇所が解答のポイントになるよ。