2012年度地理B本試験[第2問]解説

<第2問>

 

問1 [ファーストインプレッション]なんだよ、大豆って!?大豆ってセンターで過去にほとんど話題とされていないのだ。それなのにいきなりここで主役となっている?これってどういうことなのだ。

[解法]大豆やライ麦といったあまりセンターでは一般的ではない作物が登場している。また綿花については気温よりも降水量(花が咲いたら雨がダメとかね)がポイントになる作物でもあり、気温と密接な関係のある緯度から栽培地域を特定するのはどうかと思うが。とりあえず解いてみましょうか。

まず赤道直下。この中で明らかな熱帯作物はバナナ。例えばわが国はフィリピンからバナナを輸入しているよね。①と②のいずれかがバナナなわけだが、北緯35度の日本でバナナが栽培されていないことから、①をバナナと判定する。

さらにもう一つ熱帯作物があるようだが、とりあえず保留。比較的温暖な気候が必要なものが綿花であるが、ちょっとまだ断言できない。よって今度は高緯度側に注目しよう。②の生育は北緯45度付近まで、③は北緯55度、④は北緯60度を越える。④が特徴的だと思う。ライ麦は穀物の中でも、とくに寒冷な気候に耐えるものの一つ。(寒い方から、大麦>ライ麦>小麦>トウモロコシ>米の順)よって④をライ麦。

で、②と③で迷うわけだ。綿花と大豆でしょ。緯度で考える。例えば両方の作物が盛んに栽培されているアメリカ合衆国を考えてみようか。綿花はかつての綿花地帯である南部(アメリカ合衆国南東部)や現在の主生産地であるテキサスやカリフォルニアが該当するわけだが、アメリカ合衆国南半部がその栽培地域となる。緯度で言えば、日本のちょっと南側なので北緯30度ぐらいだろうか。一方、大豆についてはコーンベルトでの栽培がさかん。トウモロコシや大豆など飼料差九mつを栽培し、豚や牛の飼料とする「混合農業」。綿花の栽培地帯の北側であり、緯度は北緯40度ほどだろうか。このことから、綿花が低緯度側、大豆が高緯度側となり、②が綿花、③が大豆となる。

(補足)基本的にはこの解き方でいいと思う。しかし実は決定的な問題点があって、それは近年のアメリカ合衆国南部の農業形態の変化。前述のようにアメリカ合衆国南部(実際にはテキサス州以西は含まれず、アメリカ合衆国南東部となるわけだが)は綿花地帯であったのだが、最近は混合農業地帯にも変化してきており、大豆の栽培がさかんになっているのだ。つまり綿花栽培地域と大豆栽培地域が重なっているわけで、本問のように栽培地域を区分する問題はもはや成立しなくなっているわけだ。どうなんだろうね。問題として不適切だと僕は思いますよ。ただ、大豆の栽培地域としてはアメリカ合衆国以外に中国の東北地方もあげられる。中国の地域ごとの農作物については、東北地方が大豆と春小麦、華北が冬小麦、華中が米、華南が米の二期作といったように区分できる。このことを考えると、大豆がかなり高緯度で栽培される作物であることもわかると思う。アメリカ合衆国の綿花地域と大豆地域が重なってしまっている現在、「大豆=高緯度」を印象づけるのはこの中国しかないというわけだが。

[今後の学習]あ、やっぱこの問題ダメですね。中国の東北地方で大豆が栽培されているという特殊な知識に従って解かせている。これは理論でも何でもない。酷いです。

 

問2 [ファーストインプレッション]農業区分の問題と思いきや、そうでもないなあ。

[解法]Bのアマゾン低地は米作地帯ではないでしょう。②が誤り。④の二毛作がちょっと気になるかもしれないが、たしかにその通りではあるんだな。でもこれもちょっとマイナーな知識であるし、そもそもホイットルセー農牧業区分に沿うものでもない。適切な問題とはいえないと思います。

[今後の学習]どうかな、あまりたいした問題でもないでしょう。

 

問3 [ファーストインプレッション]本当に今回の試験問題は質が低い。これにしても、もうちょっとどうにかならなかったのかな。

[解法]中央アジアでは灌漑によって綿花が栽培されている。過剰な灌漑によってアラル海が縮小してしまったのは有名な話だろう。

[今後の学習]問題にセンスがないよなぁ。改めて言うべきことはありません。

 

問4 [ファーストインプレッション]ネタとしてはオーソドックスでいいと思う。たしか模試で同じような問題を作ったような。

[解法]統計に基づいて考えていこう。豚の飼育頭数は中国が1位。牛の飼育頭数はブラジル、インドが1位と2位。ただしインドでは牛の肉は食されないので、ここではブラジルを中心に考えればいいと思う。中国の値が圧倒的に大きな①が豚肉の生産ではないか。やはりブラジルに大きな円が描かれている③が牛肉とみていいのでは。

一方、②と④は日本に円が描かれている。この2つは輸入だろう。区別は不要。一応、②が牛肉、④が豚肉と思うが。イスラム国であるエジプトで豚肉を輸入するわけはないよね。

[今後の学習]結局、中国とブラジルだけで解けてしまうのです(笑)。牛肉、豚肉について、直接的に牛の飼育頭数、豚の飼育頭数に結びつけること。補足的事項としては、インドで牛の肉が、イスラム圏で豚の肉が、それぞれ食されないことも考慮しよう。

 

本問については以下のような質問も寄せられましたので、回答しておきますね。

 

Q;牛を食用としないはずのインドが生産国に含まれているにも関わらず、③が牛肉生産最大の国を表していました。①と③を生産に絞り込み、あとはインドで判断して間違えたので混乱しています。この点について教えてください。

 

A;インドは多様性の国です。決して全てのインド人が牛肉を食さないわけでもないのです。もちろんヒンドゥー教の文化のもとでは牛は神聖視され殺されることはありませんが、インドにおけるヒンドゥー教徒の割合は80%であり、20%がイスラームなどです。実に(全人口13億人として)2億人以上が他の宗教を信仰しています。イスラームに関して言えば、インドネシアに次ぐ世界2位の信者数を有しています。牛肉の生産があったとしてもおかしくはないのです。

ただ、人口(13億人)にしては円の大きさは小さい。やはり伝統的な食文化が維持され、そもそもの家畜の肉を食べる習慣はあまりないこともわかりますね。

 

問5 [ファーストインプレッション] なるほど、土地生産性の問題なわけですね。農業就業者人口割合も考慮すべき問題。これはいいんじゃないですか。

[解法]1ha当たり小麦収量については土地生産性を考える。土地生産性とは、収量を栽培面積で割った値で、一般に面積が狭く人口密度が高い地域でこの値は高くなる。アジアやヨーロッパなど。すでに国名がわかっている範囲でも、中国で確かに比較的この値が高くなっているようだ。

一方、農業従事者1人当たり農地面積。農地面積を農業従事者の数で割ったもの。農地面積に比例し、農業従事者の数に反比例する。広大な農地を持つのは北アメリカだろう。またアメリカ合衆国は第1次産業人口割合も低く、農業従事者の数は相対的に少ない。Xを北アメリカと判定するのは問題ないと思う。

で、残ったYとZ。こちらも農業従事者1人当たり農地面積を決定的なものにしていいと思う。南アジアたとえばインドは、経済レベル(1人当たりGNI)も低く、第1次産業人口割合が極めて高い。農民の数も相対的に大きい。一方、先進地域のヨーロッパでは機械化も進み、第1次産業就業人口割合は低く、農民の数は相対的に少ない。農業従事者1人当たり農地面積が極めて小さい値であるYを南アジアと判定する。

[今後の学習]う~ん、最初は期待したんだが、やはりこの問題も今ひとつ釈然としないなぁ。センター地理における農業は、ホイットルセー農業区分に基づいて考えるのが基本なんだが、これってそうでもないんだよね。中学の問題って気がする。要するに、何となく、その地域のイメージだけと解けちゃうんだよね。逆にイメージに頼って解かないといけないので、感覚的に解くのが苦手な人(理系の生徒には結構いると思いますよ)には手強かったんじゃないかな。

 

問6 [ファーストインプレッション]わからん。現代社会の問題じゃん。百歩ゆずって地理Aの問題かもしれない。でも地理Bじゃないよなぁ。

[解法]解法も何も、加工食品には遺伝子組み換え作物が使用されているんです。お菓子とかの表示で見たことないかな。

[今後の学習]どうなんだろう?お菓子の表示はマメに見ましょうってか。いや、例外的な問題としてあきらめるしかないっしょ。