2017年度地理B本試験[第6問]解説
たつじんオリジナル解説[2017年度地理B本試験]第6問
長崎でノゾミさん。模試で長崎をテーマにしたから(とくに問6の階級区分図はかなり似た問題を作りました)内容的には的中なんだが、しかしノゾミさんは当てられなかったな(笑)
問1〜3の地形図(地勢図)問題は例年より難しい印象。ただ、他が比較的簡単なんで、1問ミスぐらいで全体を乗り切れるといいと思うんだが、どないなもんなんでしょう。
問1[ファーストインプレッション]最近増えてきた、地形図問題ならぬ「地勢図」問題。地形図は、縮尺が1/25000と1/50000の地図。それに対し、地勢図は、1/200000。センターレベルでは別に区別する必要はないんだが、とりあえず参考までに。
[解法]こういった問題って「数字」が最重要。おそらく①が間違ってるんじゃないかな、ってヤマ張ってしまっていい。なるほど、「壱岐島」と「壱岐市」という字の間に「100」という数字が書かれ、これが等高線の高さを表していることがわかる。ということは、この等高線のどちらかは、100メートルより高いっていうことだよね。
さらに、「壱岐島」の「壱」の字のちょっと上の三角点の標高が「149」と読めるし、さらに南部には明らかに「212」という数字が読み取れ、これも高所を表しているのだろう。100メートル以上の場所は島内の至るところにある。①が正解。
他の選択肢は検討の必要がないが、参考までに。
②;「流域」とは「集水域」と同義で、雨水が河川に入り込む範囲。Xに降った雨は、すぐ北を西から東に流れる河川(モノクロ印刷なので黒い線になってしまっているが、本来の地勢図では青く描かれている)に流れ込み、そのまま内海湾へと注ぐ。
③;リアス海岸の本来の定義は、「山地が沈降し、谷に海水が浸入することで複雑な形状になった海岸線」のこと。海岸線は岩石海岸になっていることが多い。島の西岸をみると、なるほど複雑な海岸線はみられ、岩石海岸となっている(海岸線がゴツゴツとした形に描かれているね。これが「岩石海岸」。反対語は「砂浜海岸」だが、ちょっとそれはこの地勢図の中では確認できない)。「山地」というほどの地形ではないし、明確な「谷」に海水が浸入したってほどでもないけれど、リアス海岸と判定して、とくに問題はないでしょう。
④;海岸線がゴツゴツしているね。岩石海岸なのです。波の侵食によって削られたのでしょうか。
[難易度]「数字に目をつける」というセオリー。★☆☆
[関連問題]2009年度地理B本試験第2問問1。同じ地勢図を用いて各種地形を問うている問題として、この問題を紹介しておきますね。島根半島の北側にリアス海岸がみられ、岩石海岸となっていることを確認しておいてください。さらに「弓ヶ浜」に沿って滑らかな海岸線がみられる。こちらが「砂浜海岸」。両者の違いは確実に!
問2[ファーストインプレッション]正文判定の地形図問題っていうのがやっかいやなぁ。近年は地形図問題の易化が顕著なんだが、正文判定っていうだけで難しいよね。ただでさえ時間がかかる地形図問題、慎重に解いてください。
[解法]地形図問題。正文判定問題なので、3つの誤りを指摘しないといけない。それぞれの選択肢を検討しよう。
①;古い地形図で「芦辺」と「当田触」を確認し、両者を結ぶ道路も確認。芦辺から海岸沿いを通り、丘の北斜面に沿いながら、やがて水田へ。水田では「盛り土」の上を通過しているようだ。そのまま橋を渡り(この橋には川がみられないのだが、なぜ存在しているのだろうか)当田触に到着する。
現在の図をみてみよう。埋め立て地の造成によって、陸地の面積が増え、さらに集落や道路の配置にも大きな変化がみられる。昔の地図で「芦辺」となっている地区は、現在は「芦辺町芦辺浦」となっている。ここから西へと道路を辿ってみよう。かつて海岸に沿っていた丘陵の北麓の道路は、現在もほとんど拡張されていないようだが、決して寸断はされていない。「芦辺町諸吉大石触」まで出ると、あとは広い道路がしっかりと西方へと伸びている。誤り選択肢である。
②;北側はわかりやすいね。土地が広がって、「田」の記号がみられる。干拓されたのかな?干拓の場合は、堤防が作られているはずなんだが、なるほどそれっぽい地図記号が、「芦辺大橋」の西側の海岸線にみられる。堤防を作って内側を排水し、耕地とした。ちょっとだけ堤防の内側に水域が残っているね。
こんな感じで、今度は南側に目を移してみよう。どうかな、陸地は広がっているかな。もちろん、芦辺大橋周辺から東にかけての地域は土地が造成されているが、こちらは「田」として利用されているわけではない。おそらく、工事によって埋め立てられたのではないか。それに対し、その西側の「田」が広がっている地域はどうだろう?この部分に関しては、変化がないのではないか。川岸から海岸にかけて堤防が作られている様子は、昔の地形図でもはっきりわかる。「川江谷」という字に平行するように、弧状に堤防が作られ、その内側の扇型の低地が「田」となっている(あ、この付近にみられる土地利用記号は「湿田」であって、現在の「田」と同じと考えてください。縦線2本の下に、一本線が引いてあるパターンね)。現在に目を移すと、その扇型の低地はそのままで、むしろ堤防の内側の水域は若干広がっているようだ。河川南岸の干拓は、明治大正時代に終わってしまい、それ以降ずっと水田が広がっているのだ。誤文です。
③;まずは昔の地形図で「渡船」を確認。なるほど、「芦辺港」という文字を南北に切る形で点線が描かれている。よく見ると(見えるかな)、点線の起点と終点には船のようなマークが描かれている。北の港と南の港を結ぶ「渡船」が就航していたことがわかる。
これに対し、現在の地形図に目を写そう。船舶はたしかに就航しているんだわ。よく見ると「フェリー発着所」とあるし。でもどうかな。問題はそのルート。点線がおそらく「航路」を示すものであると予想され、それが南北両岸を結ぶものではなく、湾の外の海へと向かっている。この島と九州本土を結ぶ連絡船みたいなものなのではないだろうか。「南北を結んでいた渡船」が現在はみられないので、この選択肢が正文となる。
④;いい選択肢ですね。地図記号で頻出は「発電所・変電所」。入手できる人は、2005年度地理B地理B本試験第5問問5選択肢3を参照してほしい、本問と似たパターン。原則として地図記号が出題されないセンター地理であるが「発電所・変電所」は例外。なぜなら、見つけやすいから(時間が限られているセンター試験で、さすがに時間がかかる問題を出してしまったら不親切だよね)。ほら、「送電線」って見つけやすいでしょ。図を直前で横切っているし、目立つ。そして発電所・変電所はほとんどの場合、送電線を伴うものなので、この施設が図中に存在するとすれば、まず送電線を探し、それを辿って行ったらいい。本問についてもそれが当てはまり、まず送電線を探し、そこから発電所・変電所を探したらいい。っていうか、「梅の木ダム」周辺を直接探したらいいか。送電線もないし、発電所・変電所もない。このダムが発電用ではないのは明らか。水田灌漑(かんがい)用のダムとみなすのが最も無難かな。
ちなみに、送電線は図の右下にちょこっと見えています。この先に発電所・変電所があって、そこからこの地域へと電気が送られているのでしょう。で、そこから細かい電線によって各集落へとさらに送電される(こちらの電線については地図記号では表されない。次の問題の写真Bでも電線がはっきり見えていますが、問題を解く手がかりにはなっていない)。
[難易度]最近地形図問題って易化が進んでいるんだけどね。でも本問はちょっと難しい印象が。とくに選択肢2が厄介だったんじゃないかな。★★☆
[参考問題]2013年度地理B本試験第6問問3。渡船(渡し船)って結構珍しいと思うんだが、こちらの地域では現在もみられるので、確認しておこう。さらに土地造成の様子も。海岸線が直線で区切られている場合は、工事による「埋め立て」とみていい。堤防(土手)を伴う「干拓」とは異なっているので注意。ここでは、昔は主に干拓によって土地が造成されていたが、現在それらは埋め立てれ、工業用地などに利用されている。
問3 [ファーストインプレッション]写真判定問題。これ、難しいことは間違いないんだけど、丁寧に考えれば、絶対に解ける問題なので、確信をもって解こう。
[解法]難しいなぁ。写真が正直よくわからない。センター試験もカラー印刷にするべきだよね(笑)。ま、そんなグチを言っても始まらないので、じっくり解いてみよう。
本問のように矢印によって視線が表されている問題の場合は。まずその視線を明確にしてから解く。地形図を参照し、ア〜ウについて、矢印に沿って「正確に」直線を引いてみよう。これが「視線」となる。この位置から、この方向に向かってカメラを構えたということ。
さらに写真に注目。A〜Cの各写真の中央に縦線を引いて、写真の中央線を示す。これが視線となり、さきほどの矢印の延長線と重ねてみよう。最大のポイントは、視線の先、中央に何がみえるか、ということ。
ではそれぞれの写真から判定していこう。Aは広く平地が広がっており(畑や水田かは判定ができないが)、奥になだらかな丘陵がみられる。Bは小高い山がやや複雑な稜線を描き、手前には畑(盛り上がった土地にみえるので、水田ではないだろう)がみえる。奥にちょっと複雑な地形がみえるようなのだが、よくわからない。なお、電線がみられるが、これはヒントになるだろうか。「送電線」ならば地図記号で描かれるのでわかりやすいのだが、これは単なる電信柱と電線っていう感じ。Cが最も特徴的だろう。手前に低平な土地が広がり、奥の山々の稜線は、中央が低いカーブを描いている。これは明確に等高線で読み取れるはずだ。
では、目を地形図に移し、ア〜ウの判定を。アの矢印の先には水田が広がり、やがて河川を越えて、山にぶつかる。河川およびそれに沿って描かれている堤防(土手)はさほど高低差のある地形ではないので、写真には写っていないだろう。奥の山地については、地形図上の他の山々に比べ等高線間隔が疎らであるので、山というよりむしろ「丘陵」というべきものだろう。どうかな、これをAと判定するのは簡単じゃないかな。そう思ってみると、Aの山の麓に沿って、川が左右に流れているようにも見えるし。
さらにB。まず目の前に山があるんだわな、これって。そしてそこには畑がある。2006年の図がわかりにくかったら、地形は改変されていないようだし、1926年の図を参考にしてくれてもいい。ちょっと複雑な形の丘陵になっているのが読み取れたらいい、ただ、イで問題になるのは、矢印の先(視線)がそのまま海に入ってしまっているってことなのだ。写真を判定しても、中央が海になっているものはない。では、イの視線の延長上に何があるかっていうのを、図2の地勢図で調べてみるんだが、四角で囲んだYの範囲で、イの場所を見当をつけて確認すると、入江の外は果てしなく海が続くだけなんだよな。この矢印、間違ってないかなぁ。。。
仕方ないのでCを判定しよう。矢印の先には「田」がみられているが、この部分が低い地形になっているのはわかるだろう。左側(北側)は(おそらく60メートルの)等高線がみられ、高所が「広葉樹林」となっている。右側(南側)にも等高線がみられ、とくにここでは「土の崖」の記号に注目してほしい。「崖」とは名ばかりで、実際には「斜面」程度のものなのだが、それでも高低差のはっきりとした地形である。等高線から、短いケバケバ線(わかりにくい表現かな?「まつげ」みたいな感じの線のことなんだが、わかるかな)等高線からケバケバが伸びる方向に向かって土地が低くなっている(斜面になっている)。ウから見て、右手にやや高い地形が存在していることをイメージしよう。
ここまで来れば判定は難しくないだろう。左右が高く、中央が低いという稜線の形に注目して、ウがCとなる。Cの写真の中央に何か建物のようなものがあるのだが、これがちょっとよくわからない。まぁ、気にしなくていいのかな。正解は①。
ちなみに、そうなるとBがイということになる。Bの写真をよく見ると、手前がやや盛り上がった地形で畑になっているのだろうが、その奥が低くなっており、そしてさらに奥が山となっている。イの矢印ってちょっと角度がズレてないかい?矢印の起点はそのままとして、時計回りに30度ぐらい回転させたぐらいがちょうどいいような。矢印の先が「浦」って漢字の方を向く感じ。少なくとも、海を方を向いて写真を撮影してはいないよね。
[難易度]イの矢印が間違っているような気がするんだよなぁ。解答が非常に困難。★★★
[参考問題]2014年度地理B追試験第6問問1。写真判定の雰囲気が似ている。正面に何がみえているか、山の形はどうか。観察するポイントは多い。
問4[ファーストインプレッション]2012年に大井川下流にみられる特徴的な家屋が登場したけれど、それと似た印象。ただ、問題としては家屋そのものに関係ないかな。
[解法]いかにも地域調査的な内容だが、問題そのものは「風」の問題。家屋や集落の北側に樹林が設けられていることが最大のポイントだね。
まず、大外れなのは④。「やませ」は固有名詞であり、東北地方の太平洋側の地域に夏に吹き込む冷風。夏の気温が十分に上がらず、米などの作物不良を生じる。「冷害」の原因であるのはみんな知っているね。まずこれが消えます。
さらに風向について考える。フェーン現象は、風が山脈を越える時に、風下側の地域に高温乾燥の気候がもたらされること。理論的にいえば、冬の風によってもフェーン現象は生じるのだが、寒い時に気温が上がるのはかえって好都合だよね。誰もそれを「災害」とは言わない。夏にフェーン現象が生じて、気温が異常に上昇することこそ「災害」なのであり、これが問題とされるべきだ。フェーン現象は原則として「夏」限定のものと考えるべき。そうなると、日本が含まれる東アジア地域の場合、夏の季節風の風向は「南東」である。この風を防ごうとすれば、防風林となる樹林を植えるならば、家屋の南側となるはずである。これも誤り。
よって、北からの風を考えるべき。東アジアの冬の季節風は「北西」から吹く。シベリアに発生した高気圧から寒冷な風が吹き出すのだ。この季節風の影響を強く受ける地域が日本列島の日本海側であるが、広い意味で捉えると、この壱岐島も「日本海側」と言っていいのではないか。大陸からの強い風に備えて、家屋や畑の北側に樹林が設けられたのであろう。正解は③。この季節風は、北海道や本州の日本海側地域に雪をもたらす原因となるのだが、もしかしたらこの壱岐島でも雪が降るのかもしれない。その際はこの樹林が防雪林ともなるのだろう。
選択肢①の竜巻については、風向は関係ないから削除でいいね。
[難易度]冬の季節風の風向については知っているね。やませやフェーンは消せるとして、意外と竜巻で迷った人もいるのかも。★★☆
[参考問題]2007年度地理B本試験第1問問5。選択肢④で「冷害」が登場。冷害は、「夏」に「やませ」の影響によって東北地方の「太平洋側」で生じるものなのだ。
問5[ファーストインプレッション]これ、意地悪問題やなぁ(涙)。寒流と暖流の判定は厳しいぞ。経営規模については表から読み取るだけなんだが、結構時間かかったりして。センター試験特有の難問ですなぁ。
[解法]まず( カ )が難しい。一般的に栄養分が豊富で漁獲に恵まれるのは「寒流」なんだが、果たして壱岐島がそれに当てはまるか。日本地理の知識が必要となるのだが、太平洋を北上する日本海流(黒潮)から分岐するかたちで、日本海へと流れ込むのが対馬海流。図でも壱岐島のすぐ近くに対馬があるから、わかりやすいとは思う。南方から暖かい海水をもたらす暖流である。この作用で日本海の水温が高く、水分供給が活発であるため、日本列島の日本海側に多くの雪が降るという理屈があるね。
文章をよく読むと、「好漁場」の原因はあくまで「浅堆(バンク)」であっって、( カ )については「真珠の養殖」に適するということが述べられているに過ぎない。真珠で有名なのは三重県の志摩半島や愛媛県の宇和島など。いずれも暖かい水域であり、実は真珠って海水温が暖かいことが重要なんじゃない?(同じ養殖でもカキなんかは、三陸海岸(東北地方)で養殖されていたりして、寒いイメージがあるけどね)
さらに言えば、暖流は暖かい海水が海水面近くにあり、海水が対流しない(*)ので透明度が高い。この透明度の高さこそ真珠養殖には有利なのかもしれないね。とにかく対馬海流が流れていることは絶対なので、ここは「暖流」とする。
さらに表を参照。「1経営体当たり漁船数」をみると、壱岐島は1隻が90%を超え、5隻以上はほとんどない。こちらは「小さい」とみていいんじゃないかな。「漁業種区分」については参照の必要ないと思う。
(*)海流によって、海中の様子が異なるのはわかるかな。海流とはあくまで海の表面を流れるもの。寒流の場合は、海中より表面の方が水温が冷たい。重さで考えるならば、(収縮して)密度の高い海水が上方にあるということ。海水は不安定な状態となり、対流が生じる。「軽い」海中や海底の水が上へと移動し、「重い」表面の水が下に潜る。この際に、海底に積もっている勇気塩類(魚の死骸による)が海表面近くに持ち上げられ、日光や酸素と結びつくことでプランクトンの発生の要因となる。暖流はこの反対。上方に暖かい(つまり「軽い」)水が存在し、下方に冷たい(つまり「重い」)水がある。海水は安定し、対流を生じない。濁りの少ない透明度の高い海水の状態となるわけだ。暖流の流れる海域でサンゴ礁がつくられやすいのは、透明度の高さも一つの理由。
[難易度]言われてみれば簡単なんだが、センター試験のプレッシャーの中でこうした冷静な判断ができるだろうか。いうほど簡単じゃないと思うよ。★★☆
[参考問題]2014年度地理B本試験第5問問6。地理的思考を問う問題と、図表読解問題との組み合わせという点において、こちらの問題との類似性が高い。
問6 [ファーストインプレッション]非常に変わった統計をテーマとした階級区分図。でも、そんなに難しくないと思うよ。「知らない」から解けないのではなく、知らないのならば「想像して」解くのです。それにしても「上位」と「下位」の2段階だけの階級区分図とは、作り手もずいぶんサボったもんやね(笑)
[解法]階級区分図を用いた問題。各地域のキャラクターを抑えれば、さほど難しくはない。今回は「居住する市町村内で買い物をする割合」(以下「買い物」)、小学校の複式学級率」(以下「複式学級」)、「人口1000人当たりの医師数」(以下「医師」)という変わった指標が登場しているが、だからといってサジを投げてはいけない。想像力をふくらませ、それぞれの指標がどんな意味があるのか考えないといけない。
まず「買い物」について。これは都市圏に関連づけたらいい。都市圏とは通勤圏のことで、東京大都市圏ならば半径50キロにもなる巨大なものとなる。郊外に住む人々が都心部の会社に通う様子を考える。大きい都市ならば大きな都市圏、小さな町ならば小さな都市圏。長崎県の場合、圧倒的に大きい長崎市の都市圏の規模は大きいと思われるが、それ以外の都市圏は小さいだろう。
上記のように、都心部と郊外との組合せからなる都市圏であるが、これを「通勤圏」だけでなく、「商圏」と考えることも可能だろう。つまり、郊外に住む人々が都心部へ買い物に出かける。近所のスーパーマーケットで手に入らないような高級品や耐久消費財(これらを「買い周り品」という)については、都心部のデパートや大規模店までわざわざ足を運んで買いに行くのではないか、「都市圏=通勤圏=商圏」ならば、さらに「昼間人口」と「夜間人口」も考えてみよう。昼間人口の大きい都心部地域は、通勤してくる人も、買い物にやってくる人も多い。その反対に、郊外地域は、人々は通勤や買い物で都心部に移動するのだから、昼間人口が小さい。都市圏の考え方を応用すれば、「買い物」はわかるはず。
さらに「複式学級」について。聞きなれない言葉だが、説明をしっかり読めば意味はわかると思う。要するに、子ども(児童)数が少なくて学年ごとニクラスを組めない小学校のこと。こういう学校ってどこにあるだろう?人口規模の大きな自治体には少ないんじゃないかな。過疎地域にこうした学校が目立つと思う。人口規模が少ないところ、そして過疎地域と考えられるところで「高」となっているはず。
3つ組み合わせ問題なので、2つはしっかり、1つは消去法。「医師数」については後回しにしていい。
では、「買い物」から。これについては、昼間人口との関係で考える。昼間人口が夜間人口を大きく上回る都心部では「買い物」は高くなるだろうし、その反対の郊外では低くなるはず。一方で、昼間人口と夜間人口に大きな差がない大都市圏から離れた地域においては「中」と考えるのがベターだろう。図より、長崎県で、市域を超えて大きな都市圏を形成しているのは長崎市と考える。長崎市(都心部)で高く、それに隣接する市町村(郊外)で低くなっているものを探すと、EとGが候補となる。さて、どちらだろう?
ポイントはやっぱり「離島」なんじゃないかと考えるのだ。Eでは、対馬や五島列島、壱岐島など離島が全て「上位」となっているのに対し、Gでは「下位」。離島の住民は、交通手段が限られている(船舶だけかな。飛行機の路線はあるのだろうか)だけに、おいそれと本土へ渡るわけにはいかない。購買活動も、自分の住んでいる島の中で行うことが当たり前なのではないだろうか。他の市町村への移動が簡単な地域に比べ、「買い物」を自分の市町村でする割合は絶対に高いはずだ。長崎市および離島で「上位」となっているEが「買い物」と判定する。
それに対し「複式学級」については、長崎市で「低く」、離島で「高い」ことは確実。Fが該当し、正解は①。
なお、「医師数」はGとなっているが、これについても検討してみよう。最近は過疎地域での医師不足が問題となっており、全国には医師や医療機関のない「無医村」が増えているという。過疎地域が「下位」となっている点を図から読み取り、さらにFとGが対照的(上位と下位が反転している)ことも確認しよう。「複式」は都市部で低く、過疎地域で高くなる指標、「医師数」は都市部で高く、過疎地域で低くなる指標。
[難易度]思考問題として非常に完成度が高いと思うよ。それに、君がもし医師や教員を目指しているのならば、過疎地域でどういった問題が生じているかについて、こうした問題を通じて実感しないといけない。ぜひ正解してほしいな。★☆☆
[参考問題]2009年度地理B本試験第4問問5。「都心部」的な仙台(昼間人口が大きい)、「郊外」的な千葉(昼間人口が少ない)に加え、巨大な都市圏に属さない都市として浜松(昼間人口と夜間人口があまり変わらない)の特徴が問われている。郊外地域が都心部に経済的に依存している様子を読み取ろう。
問7[ファーストインプレッション]あれ、この大問は問題が7つもあるにんや。イレギュラーなパターンだなぁ。とはいえ、この「余分な一問」はオーソドックスな問題なので、解答には苦労しないでしょう。
[解法]これは感覚的に解くべき問題でしょう。正解(誤文)はもちろん③。気象観測のための装置がアメダスなのだから、これで災害の記録はわからない。
[参考問題]2008年度地理B本試験第5問問1。この手の問題は多いけれど、雰囲気的にはこれが最も近いかな。調査項目とその方法に関するものだが、こちらの問題では「人口構成」ついて「住宅地図」を使おうとしている。そもそも地図では人口はわからないよね。当たり前のことを尋ねているんだけど、それを当たり前に正誤判定できる感覚を身につけてほしいかな。