たつじんオリジナル解説【1995年度地理本試験】

たつじんオリジナル解説【1995年度地理本試験】                 

<第1問;気候と植物の関係>

問1 正解は②。

柑橘類とは具体的にミカンやオレンジを考えてみたらいい。日本とヨーロッパがわかりやすい。日本においてミカンの栽培地域は西日本に限られ、図を参照するに「4000」より値が大きい地域である。ヨーロッパでオレンジが栽培されるのはスペインやイタリアなど地中海沿岸地域であり、同じく「4000」より値が大きい地域。

①;小麦の栽培北限はスカンジナビア半島。図では「1000」の等値線付近。

③;米については日本では確かに「2500」の北海道でも栽培されているが、ヨーロッパはどうだろうか。ヨーロッパの米の栽培地域は地中海沿岸(あくまで気温。降水量は少ないので、灌漑によって水を供給している)地域に限定され、この付近の数値は「4000」。「2500」ならばフランス北部やイギリスが含まれ、冷涼であるため米の栽培はみられない。

④;これはよくわからない。ただ、バナナなそもそも高温多雨の気候に適応するものであり、「10000」を越えたからといって栽培ができなくなるとは考えにくい。

問2 正解は④。

ケッペンの気候区分を知っておく必要はないが、ツンドラという言葉はぜひ理解しておいて欲しい。北極海沿岸に典型的にみられる荒れ地で、短い夏の間のみ地表面の氷雪が融け、地衣や蘚苔類が繁茂する。図の「300」未満のエリアはほぼツンドラ地域に対応する。

問3 正解は①。

北緯20〜30°付近を観察してみると、アフリカ大陸の北部には乾燥地域が広がっている。同じ緯度帯の大陸東岸(日本から中国南部など)には乾燥気候がみられず、この地域の多雨の気候について考えればいい。

いわゆるモンスーンアジアに該当し、季節風の影響によってとくに夏には多雨となるため、湿潤気候となる。

誤りは①。貿易風は恒常風であり、年間を通じて風向は一定。また、スコールは熱帯収束帯によるもので、赤道周辺の降水パターン。

問4 X;④ Y;③

Xはアフリカ大陸の北緯10〜15°付近に位置し、サヘル地帯に位置することがわかる。全体としては降水量が少ないものの、夏の間のみまとまった降水がみられる。この時期、低緯度方向より北上してくる熱帯収束帯の影響である。それ以外の時期は亜熱帯高圧帯の支配下に入り、降水量が少ない。

<第2問;沈水海岸>

問1 正解は③。

エスチュアリーとは河口付近の土地が沈降して形成されたラッパ状の入り江。「切り込み」の形をしているので、図から直接判断することもできるね。たしかに、①や②、④の河口はそうなっているようだ。逆に③の河口はちょっと膨らんだ形になっていて、他とは異なっている。これが正解。

なお、①はテムズ川で、港湾都市ロンドンを要する。同じく④のエルベ川はハンブルク。③はライン川で、河口付近は三角州となっている。河口付近を掘削し、人工港のユーロポートが建設されている。

問2 正解は④。

これは知らなくていいと思います。さすがに今の傾向とは違うでしょう。こういった都市名そのものの知識が問われることはありません。

問3 正解は③。

氷河によって削られた谷は、断面の形状より「U字谷」と呼ばれる。フィヨルドの断面はU字型であり、水深が十分であるため天然の良港となる。

問4 正解は①。

問3とは対照的にこちらは河川の侵食谷であるV字谷が沈水してできた深い入り江が連続する海岸線で、リアス海岸と呼ばれる。一つ一つの入り江は

「溺れ谷」と呼ばれる。溺れ谷の集合体がリアス海岸と考えよう。

問5 正解は①。

問題文に「隆起」地形とある。海岸が隆起して形成されるのは海岸段丘である。海岸に沿った階段状の地形であり、Yのような段丘面と急斜面である段丘崖(等高線が密になっている部分がわかるだろうか)からなる。波の侵食によって海岸に沿って海食崖がみられる(「岩のがけ」の記号がみられる)。

<第3問;中央アンデスの生活>

問1 正解は②。

中央アメリカ・カリブ地域から南アメリカまでのいわゆるラテンアメリカにおいて、先住民はインディオと総称されている。

イヌイットは北アメリカ大陸の北極海沿岸、サモエードはシベリア地域、マオリはニュージーランドの、それぞれ先住民である少数民族。

問2 正解は②。

エは熱帯の低地が栽培最適地となる作物。4つの作物のうち、最も気温の高い地域で栽培される作物としてサトウキビを選ぼう。

最も寒い地域がジャガイモ、次いで小麦、トウモロコシの順。アがジャガイモ、イが小麦、ウがトウモロコシ。

問3 正解は③。

ヤクはチベット高原とその周辺地域で遊牧されている家畜。

南アメリカ・アンデス高原でみられる代表的な家畜がリャマとアルパカ。羊については世界各地にさまざまな種類がいるので、アンデス地域にいたとしてもとくにおかしくはないかな。ちなみに、ヤクは水牛の仲間で、リャマとアルパカはラクダ科。

問4 正解は①。

ジャガイモに限定した話ではなく、一般に休閑期を設ける理由について考えればいい。「地力の維持」が目的。連作(同じ作物を作り続ける)による地力の消耗を禦ぐ。

問5 正解は②。

これ、おもしろい問題ですね。古さを感じない。

誤りは②。衛生環境が悪く伝染病が蔓延する熱帯の低地を避け、冷涼な高原に多くの都市がつくられている。ボリビアのラパス(標高4000m)は代表例。インカ帝国もペルーからボリビアにかけての高原地帯に版図を広げていた。

①の選択肢もおもしろい。②と同様に中央アンデスの状況。生産物が異なる様子は問1の図をみたらわかるね。低い高度帯ではトウモロコシが栽培され、高い高度帯ではジャガイモが栽培。それらを交易する町が、両方の高度帯の間につくられる。

<第4問;水産業>

問1 正解は④。

バンクとは、海底のとくに浅い部分。太陽光が海底まで達し、海藻類が繁茂することで、多くの魚の生息域となっている。好漁場となる。

①;海溝は、プレートの境界(海洋プレートが大陸プレートの下にもぐり込む一帯)に形成される、溝状の海底の特に深い部分。

②;海嶺は、プレートの広がる境界。二列に並び、海底を走行する巨大な山脈。

③;大陸に接する海底の浅い部分が大陸棚(深さ200mまで)、海洋の広い範囲を占める深海の平坦な部分が大洋底(深さ4000〜5000m)であるが、両者を結ぶ海底の傾斜した部分を大陸斜面という。

問2 正解は④。

トロール漁法はいわゆる底引き網。日本での伝統的な底引き網では2隻の船で網を引くのに対し、トロールでは巨大な船舶一隻で網を引き、海底の魚(カレイなど)を文字通り一網打尽にする。

問3 正解は①。

日本の遠洋漁業は1970年代に大きく漁獲量を下げた。主な理由は2つ。1つは「200カイリ漁業専管水域の設定」。領土から200カイリ(約360km)までの範囲が漁業専管水域(経済水域)に設定され、沿岸国の独占的な漁業および鉱産資源の開発権が保障された。このため、それまで東南アジアやアフリカの沿岸域で操業していた日本の遠洋漁業船は漁業権を失い、漁獲量が大きく減じられた。「入船料(入漁料)」を支払えば外国の沿岸でも操業できるが、それだけのコストをかけるならば、外国に漁獲してもらって輸入した方がいい。1970年代以降、マグロなどそれまで遠洋漁業で漁獲されていた魚種の輸入が増加した。

もう1つは「オイルショックによる燃料代の高騰」。1970年代なかばに勃発した第4次中東戦争に起因するオイルショックにより、原油価格が高騰し、船舶の燃料となる重油の価格も上がった。燃料を大量に使用する遠洋漁業は採算割れを起こし、操業を取りやめることが多くなった。

なお、この時期、沖合漁業の漁獲量が増加したため全体としての漁獲量は下がらなかったものの、1980年代に入るとその沖合漁業も衰退傾向となった。乱獲による漁業資源の枯渇や、海外からの安価な魚介類の流入などがその要因である。

問4 正解は④。

問3の内容とも関連している。④は1970年代に遠洋漁業が衰退した理由。

選択肢①のマイワシの不漁は主に乱獲が原因。②と③についてはノーチェックでいい。

問5 正解は②。

写真がわかりにくいので参考にならないかも。②では海上に「桶」のようなものが多数みられるが、これは佐渡でみられる伝統的な漁法である「たらい舟」。小回りが効く船で、海底のあわびなどを捕る。

①・②・④の写真はよくわからないが、真珠の英虞湾、カキの広島湾、ノリの松島湾はいずれも養殖のさかんなところ。

問6 正解は②。

1980年代以降、内水面漁業(河川や湖)を中心として中国の漁獲量は伸びている。現在は世界最大の水産国であり、養殖業も発達。

<第5問;世界の工業化>

問1 正解は③。

①;イギリスは冷涼な気候であり、綿花の生産はなされない。当時植民地だったインドから綿花を輸入していた。

②;オーストラリアは「綿花の主な産地」ではない。労働力が少ないため、綿花栽培は広まらなかった。

④;発展途上国は「単純労働力」。

以上より正解は③。合成繊維(化学繊維)は、かつて先進国が生産の中心だったが、20世紀後半以降はアジアNIEs(韓国や台湾など)を主とした新興工業国・地域での生産が拡大した。なお、現在は中国やインドなど発展途上国での生産量が際立っている。

問2 正解は、アメリカ合衆国が②、旧西ドイツが③。

①;日本。東京圏(首都圏)から西に伸びる太平洋ベルトの工業地域が展開する。とくに愛知県は日本の自動車工業の中心地。

②;アメリカ合衆国。五大湖周辺の中西部が自動車工業の中心地。現地生産を行う日系企業も多く進出している。最大の自動車工業都市であるデトロイトは五大湖に接する都市であり、その南に位置するオハイオ州に日系企業が多い。

③;ドイツ(旧西ドイツ)。ヨーロッパ最大の自動車生産国。北部のブレーメンやウォルフスブルク、南部のミュンヘンやインゴルシュタットに自動車工場。

④;フランス。パリへの一極集中がキーワードになる国。

⑤;イギリス。首都ロンドンは国土の南部に位置する。

なお、グラフについては①の日本に注目しよう。高度経済成長期より生産台数が急増し、オイルショックを経て、1980年代に世界最大の自動車生産国となった。

問3 正解は②。

安価な労働力を目的としてアジアNIEsへと工場が展開したわけだが、繊維や機械組立といった労働集約型工業であることを考えよう。

工業は大きく2つに分けられる。

・労働集約型工業・・・生産コストに占める労働力の割合が高い。繊維や機械組立など単純労働力に依存する労働集約型工業は、安価な労働力の得られる発展途上地域へ。精密機械など熟練労働力が必要な労働集約型工業は、専門の技術者が存在する先進国の伝統的な工業地域に。

・資本集約型工業・・・生産コストに占める労働力の割合が低い。資本投下によって巨大な工場施設を用いて生産を行う。鉄鋼業や石油化学工業、セメント工業など、原材料の確保が重要。

以上を考えると、選択肢②が不適当ということがわかる。「豊富な天然資源」とは石炭や鉄鉱石、原油、石灰などのことだが、これらの存在が重要となるのは資本集約型工業の方である。

問4 正解は③。

旧ソ連の工業はコンビナート方式で進められた。各地に広がる資源産地を結びつけ、広範な地域において工業地域の開発を行った。「西部の消費地」にはモスクワやボルガ・ウラル地域など重要な工業地域があるが、シベリアなど東部地域にも、クズネツク(ノボシビルスク)やアンガラ・バイカル(イルクーツク)、極東(ウラジオストク)などコンビナートは多く存在する。

①;インドでは、東部のジャムシェドプルなどに国内の石炭や鉄鉱石資源を活用した製鉄所がつくられた。

②;サウジアラビアなどペルシャ湾岸の産油国の多くでは、国内の原油資源を基として石油化学工業に力が入れられている。

④;中国では1980年代以降、経済特区や経済技術開発区を設けて、外資の導入を進めている。なお、経済技術開発区はセンター地理のレベルにおいては必要な知識ではない。

<第6問;人口と都市>

問1 正解は①。

秋田県は人口の流出が際立っている県の一つ。社会増加率が大きくマイナスとなっている。なお本問の時点では自然増加率がプラスとなっているが、現在はこちらもマイナスである。県全体の人口は減少しても、県内人口最大都市である県庁所在地の人口は増加するのが一般的だが(特定に都市に人口が集まるということ)、造船不況により労働者が転出した長崎市と、経済の衰退によって若年層が多く流出した秋田市は、比較的早い段階から人口減少が生じた、数少ない県庁所在地である。

問2 正解は④。

高度経済成長期から21世紀初頭まで、都心部は地価の高騰や巨樹環境の悪化によって人口が継続して減少した。ドーナツ化現象という言葉でこの状況は理解されている。東京大都市圏において人口増加率がマイナスとなっている④が都心部を含む「0〜10km帯」である。

他は、①が10〜20km帯、②が20〜30km帯、③が30〜40km帯。東京大都市圏は半径50kmの円の範囲に及び、外縁に近づくほど人口増加率は高くなる。

なお、この人口変化の様子は現在とは異なっている。現在は都心部の再開発が進み「都心への人口回帰」がみられる。むしろ0〜10km帯の人口増加率が極めて高くなっている。あくまで本問については、高度経済成長期以来数十年間の人口変化と捉えてほしい。

問3 正解は③。

東京大都市圏の郊外に当たる神奈川県と千葉県、大阪大都市圏の郊外に当たる奈良県は、いずれも中心都市に該当する東京都や大阪府への通勤者が多く、昼間人口は夜間人口より少ない。「県外に通勤・通学する人より、県外から通勤してくる人の方が少ない」のだ。

問4 正解は③。

単なる都市圏ではなく大都市圏。日本ならば、東京大都市圏、名古屋大都市圏、大阪大都市圏。鉄道や高速道路で結ばれ、国内における産業や経済、文化活動の中枢を成している。東海道メガロポリスという言葉はよく知られているだろう。アメリカ合衆国の場合は、大西洋岸北部から中部にかけての地域で、ボストンやニューヨークが含まれる。

他はノーチェックで問題ない。

問5 正解は④。

熱海は温泉で有名、カンヌは地中海沿岸のリゾート地で、それぞれ観光地である保養都市。

A群は工業都市、B群は学術都市。

エッセン・・・ドイツ西部ルール工業地域の鉄鋼都市。

デトロイト・・・アメリカ合衆国五大湖に面する自動車工業都市、

日立・・・茨城県北部。銅山を中心に発達。金属工業、電気機械工業など。

ケンブリッジ・・・イギリス。王族も学ぶ名門大学がある。

つくば・・・茨城県南部。筑波研究学園都市。

バークレー・・・カリフォルニア州。シリコンバレーに近接する大学が位置。

<第7問;西アジアと北アフリカ>

問1 正解は②・③。

②;イはナイル川沿岸で砂漠が広がる。灌漑によって穀物やナツメヤシの栽培など。熱帯草原のサバナではない。焼畑農業も熱帯雨林において行われるものであり、ナイル川沿岸は該当しない。

③;プスタはハンガリー盆地の温帯草原。牧牛が行われている。ウのトルコ中部は、新期造山帯の高原が広がる。

問2 正解は①。

aのジブラルタル海峡は③。大西洋と地中海を結ぶ。

bのボスポラス海峡は②。イスタンブールに面し、日本が協力した橋が架けられている。

cのバベルマンデブ海峡は④。航海の南端。

dのホルムズ海峡は①。ペルシャ湾の出口に当たる。世界の石油輸送ルートの要衝である。

問3 正解は②。

まず国を確認。①がアルジェリア、②がエジプト、③がイスラエル、④がトルコ。

Bはイスラエル。ダイヤモンド流通の中心地の1つ。アメリカ合衆国との関係が強いユダヤ人国家。

Cはトルコ。ヨーロッパとのつながりが強く、軽工業や組立工業が発達。本問の年次では衣類が最大の輸出品目だが、近年は電気機械や自動車の輸出も増加している。

Dはアルジェリア。OPECに加盟する産油国で、輸出に占める原油の割合がとくに高い。

残ったAがエジプトに該当する。原油の産出がみられ、最大の輸出品目となっている。ナイル川沿岸で商業的に綿花栽培が行われ、さらにアスワンハイダムで水力発電が行われ、アルミニウムの精錬もみられる。

問4 正解は⑥。

イタリアが旧宗主国であることが最大のカギ。⑥のリビアが該当。砂漠国であり、耕地は少ない(人口も少ない)。アラブ系の民族から構成され、イスラム教が信仰されている。OPECに加盟する産油国。