2006年度地理B追試験[第4問]解説

20006年度地理B追試験[第4問]

新課程になってからやたら工業ネタが多いんだよな。何でなんだろう?まぁ、もっとも大問のテーマが「資源と産業」だから工業だけじゃないんだけどね、でもなぜか工業が目立ってしまうんだよな。全体としては統計を意識させたオーソドックスな形式を持つ反面、内容的にはかなりひねくれている。例えば問1は、薪炭材と用材というありがちなネタでありながら、インドネシアと中国の判定は激ムズ!ぶっちゃけ、わけのわからん問題ばかり並んでいるし、得点率は低いでしょ。正直言って、センター試験の傾向を理解している人が作っているとは思えない。駄問の類に入るでしょう。

問1 [講評] 木材伐採と製紙業に関する問題。木材伐採は地理Aではしばしば登場するネタだが、地理Bでは初出だと思う。製紙業については、07B本で出題されているんだが、それはおそらく前年度の追試(つまりこの問題ってことね)を受けてのことだろう。地理Aで出題されたネタが地理Bに昇格し、追試で出題されたネタが本試にさらに昇格する。こういった流れがはっきりわかったおもしろいと思うわけです。

[解法] 「薪炭材が発展途上国、用材が先進国」というセオリーは絶対的。とくに薪炭材というのは燃料としての利用ということだから、電気やガスなどの普及の度合いが低い発展途上国でこそ、その用途が主となりえることは簡単に理解できるよね。

選択肢の4つの国を分類すると、インドネシアと中国が発展途上国、日本とフランスが先進国。

表中の1~4については、薪炭材の方が多い1と2が発展途上国、用材が多い3と4が先進国である。インドネシアを特定する問題なので、この時点で正解の候補から3と4を消去する。

残った1と2が、インドネシアか中国のいずれか。ここからは国のサイズを考えればいいと思う。中国は人口13億の超大国であるのに対し、インドネシアも人口は2億と多いが、それでも中国にはさすがに及ばない。このことからそれぞれの数値が大きい1が中国、小さい2がインドネシアであるとみて問題ないだろう。

3と4については不問。

[学習対策] 「解法」の説明ではいかにも簡単に解けたように書かれているが、実はメッチャ迷った問題だったりするのだ。1と2がインドネシアと中国、3と4が日本とフランスとしぼるまでは簡単なんだが、ここからが実は悩んだ。

例えば1と2。インドネシアは赤道直下に位置する熱帯国であり、森林面積割合も高い。林業が非常にさかんであり、木材伐採量も多いはず。だから一瞬、1がインドネシアかとも思ったりするわけだ。でも「紙・板紙の生産量」に注目すると、1が2を圧倒している。人口規模の小さなインドネシアの方が、紙の生産量が多いなんてことがありえるんだろうか。すごく悩むのだ。まあ、でも中国とインドネシアでは人口も面積も5倍ぐらい違うわけだし、そう考えてみると「薪炭材」や「用材」については1と2の違いがせいぜい2~3倍程度なんだから、一人当りの伐採量を考えてみると、インドネシアの方が上ってことになるよね。そう考えれば、「森林国としての性格を有するのはインドネシアであるが、それでも全体的な量でみれば面積、人口ともに圧倒的に巨大な中国にはかなわない」と解釈してできるよね。1が中国、2がインドネシアで問題ないでしょう。

とりあえずこんな風に、迷ったらとにかく「国のサイズ」を意識することは重要だと思う。サイズとは、面積であったり、人口であったり、GNIであったり。もちろん中国の方が、インドネシアより「サイズの大きな」国である。

問2 [講評] ホイットルセー農業区分が登場。このようにホイットルセー農業区分はセンターで問われるので、必ず知っておくことが重要。とはいえ、実はこの問題を解くポイントはホイットルセー農業区分以外のところにある。う~ん、説得力に欠けるなぁ(苦笑)。

[解法] ホイットルセー農業区分に注目してみよう。

1 グレートプレーンズとは北米中央平原のこと。具体的にはロッキー山脈から西経100度の経線(年降水量500mmの等降水量線と一致することは知っているよね)にかけて広がる半乾燥の台地。米国の西部は企業的牧畜地帯であり、本選択肢の内容と合致している。

2 五大湖周辺は、米国における酪農地域。正文である。

3 プレーリーとは五大湖南部から西経100度の経線の東側を含む一帯(このエリアを中西部という)に広がる温帯草原のこと。肥沃なプレーリー土が分布している。農業区分としては、混合農業や企業的穀物農業地域に当たる。本選択肢もとくに誤りではないだろう。

4 この選択肢には農業区分名が示されていないが、ここでは「ブラジル」に注目しよう。カリフォルニア州など米国南西部一帯はヒスパニックとよばれるスペイン語圏からの移民が多いが、彼らの多くは国境を接するメキシコからの移住者。「ブラジル」ではない。

 [学習対策] 本問については問題を解くカギではなかったものの、それでもやっぱりホイットルセー農業区分は大切だと思うよ。とくに米国においては、適地適作(自然環境によって地域ごとの農業の特性が明確)が徹底しているため、農業区分が非常に出題されやすい。本問においても、西部の乾燥地域では牧牛を中心とした「企業的牧畜」、ニューイングランド地方や五大湖沿岸など北東部では「酪農」、西経100度線に沿った中央平原では「企業的穀物農業」とよばれる小麦の大規模栽培が、それぞれ行われていることと知っておこう。

それからついでに「ブラジル=ポルトガル語」っていうのも知っておいてね。他の多くのラテンアメリカの国々とは異なり、ポルトガルの植民地支配を受けていたブラジルではポルトガル語が公用語となっている。ブラジルからの移民ならばポルトガル語を使っているわけで、どんなにひっくり返っても彼らはヒスパニックつまりスペイン語使用者とは呼ばれるわけがないのです。

問3 [講評] 農業の問題としてはオーソドックスな印象もあるんだが、「メキシコ=トウモロコシ」というネタは初めて出た。その点がちょっと目新しいのだ。

[解法] 「タイ=米」というイメージは持てるだろう。もっとも、タイは輸出量が世界最大であるだけで米の生産自体はそんなに多くないのだが。とはいえ、他の二つが乾燥国(パキスタンとメキシコ)であることを考えれば、湿潤国タイでこそ米作がさかんであることがわかるだろう。Cがタイ。

さて、ここからが厄介。パキスタンもメキシコも気候環境が似ていて(温暖で乾燥している)ため、植物の生育条件や農産物の栽培条件で考えるのは不適当。だからここは単純に統計で考えるのがベター。

重要となるのはトウモロコシの生産。世界最大の生産額を誇るのは米国、第2位は中国であるが、これ以降、第3位ブラジル、第4位アルゼンチン、第5位メキシコと続く。このことから「メキシコ=トウモロコシ」とイメージし、その生産が多いBがメキシコとなる。

残ったパキスタンがA。

[学習対策] やっぱり統計が大切なのだ!というように僕は思っているわけだが、今ちょっとひらめいた。これって、農産物の問題なんじゃなくて、もしかして「料理」の問題なのかもしれない。だってパキスタンといえば「ナン」だぜ!メキシコとくれば「トルティーヤ」じゃない?ナンはもちろん小麦だし、トルティーヤはトウモロコシの粉末が原料だ。そう考えてみると、「パキスタン=小麦」、「メキシコ=トウモロコシ」ってすごく自然なことのように思えてきた。うん、これでしょ。

とはいえやっぱりトウモロコシの統計も確認しておいてください。メキシコはトウモロコシの原産地でもあり、伝統的にトウモロコシが彼らの食生活を支えているのだ。

問4 [講評] これ、よくわからないんですけど、いやマジで。おそらくロシアが原油産出国であるっていうネタではあると思うんだが。

[解法] 正直よくわからん。でもおそらく生産率の上昇が顕著なのが、ロシアなんでしょう。それにこういった形式の問題って、どうせ「最も動きの激しいもの」が正解に決まってるよ。素直に1を選べばいいんじゃない?

[学習対策] やっぱりよくわからん。とりあえず統計要覧を開いて、ロシアが世界的な天然ガスや原油の産出国であること(天然ガスは世界第1位、原油は世界第2位)、ロシアの輸出品目上位がエネルギー関係であること(第1位原油、第2位石油がス、第3位石油製品)はチェックしておこう。

[追記] というわけで1を答えにしたんですけれど、実は4が答えだったんだって!?すんません、ガチで間違えました。

問5 [講評]これがわからないのだ。出題意図が不明。難しいのもさることながら、そもそもこういった問題をなぜ作ろうとしたのが目的が見えない。

[解法] ぶっちゃけ知識なんてありませんが、がんばって推理してみます。

まず気になるのがZ。北西端のエリアでも生産が行われている。ここはシルクロード沿いの乾燥地域。旧ソ連の中央アジアの国々(ウズベキスタンなど)に通じるところである。常識で考えて、こんなところで工業が発達するわけがない。でも、こうした場所でも成立する工業が3つの選択肢の中に一つあるはずなのだ。乾燥地域では灌漑によって綿花が栽培されることがある(前述のウズベキスタンなどはその代表例。外来河川からの取水によって綿花栽培が行われている)。この綿花を利用して、紡績糸の生産が行われている可能性は十分にある。Zが「紡績糸」である。そう考えてみると、Zで生産が多いエリアは黄河に沿った地域であり、たしかに黄河流域では綿花の栽培がさかんに行われているのだ。つじつまが合う。

さぁ、ここからが難しいんだ(涙)。「紡績糸」は軽工業であり一つだけキャラクターが違うのだが、残る2つはともに機械工業であり、分類上は重工業。キャラがかぶっているのですごく難しい。

でもこう考えるしかないと思うよ。これは中国の問題ではないのだ。「カラーテレビ」と「集積回路」の工場立地に関する問題なのだ。とくに集積回路とくればピンと来ないかな?集積回路つまりIC部品は、日本では九州の空港近くや東北道路の自動車道路のインターチェンジ付近に工場がしばしばみられる。軽量高付加価値であるため、遠方から航空機やトラックで輸送したとしても十分に採算がとれるのだ。

このことから、一般的に工業が発達していると考えていい沿岸部で生産が多いものが「カラーテレビ」であり、そこから遠隔地である内陸部でも生産されているものが「集積回路」と考える。内陸部(たとえばスーチョワン省)で小さな部品をつくり、それを航空機などで沿岸部の工業地域へと運び、カラーテレビが組み上げられ、そして日本などへ輸出されているのだ。

[学習対策] やっぱりあまりいい問題と思わないんだよね。07B本の中国の工業化に関する問題で「内陸部では(中略)先端産業の集積が進んでいる」という誤り選択肢が登場しているわけだが、その内容と食い違う気がするんだよな。そりゃ、解法にあるようにIC工業の立地条件から考察することは十分に可能なわけだけれど、でもそれは「こじつけ」のようにも思えるんだよ。何だかセンター試験の焦点がボケてしまっているような気がする。

まぁそれはともかくとして、「中国」の問題として解くよりも、「綿花の栽培条件」「IC工業の立地条件」をメインに考えるということ。センター地理は決して地図帳を開いて勉強するような学問ではなく、人間のさまざまな活動(もちろん農業や工業を含む)について科学的に理論付けて考えていく学問なのだ。国名にこだわるな、法則性にこだわれ!

問6 [講評] 微妙な問題だ。こうした「正文指摘」問題は、3つの選択肢の誤りを指摘しないといけないため、「誤文指摘」問題に比べ3倍難しい。しかしこの問題についてはその「誤り」を立証するのが大変難しい。ストレートに「正しい文」を探して、他の選択肢は省みず、それを解答とするしかない。ちょっと確信が持ちにくい問題である。スマートじゃないな。

[解法] それぞれの選択肢を検討していこう。

1 工作機械はよくわからない。こういったマイナーなネタが解答になることはないと思う。正文指摘問題なので、おそらくこれは誤文でしょう。

2 日本で繊維工業が衰退しているのは事実である。先進国である日本では、重工業化が進み、軽工業の割合は低下している。これは正文とみていいと思うよ。これが正解。

3 2が正解なので、これはとくに検討しなくていいよね。でもさすがに「アフリカで鉄鋼業」はないでしょ。鉄鋼(粗鋼)の生産は、第1位中国、第2位日本、第3位米国だが、中国の急成長ぶりが著しい。日本の鉄鋼生産量そのものは横ばいだが、中国の割合が高くなっているため、「世界に占める生産額の割合が低下した」という部分は間違ってはいない。だから本選択肢については「アフリカ」を「中国」と変えてあげらば正文になると思う。

4 よくわからん。2が正解だからいいでしょ。精密機械とは時計やカメラなど「電気を使わない機械」のこと(コンピュータは「電子機械」という。こちらは精密機械とは呼ばないので注意)。熟練労働者の高度な技術力に依存する度合いが高く、労働集約型の機械工業の中では例外的に、先進国(1人当たりGNIの高い高賃金国ということ)での生産が今だに多い工業種なのである。やっぱり日本は今だに世界を代表するカメラや時計の生産国なんじゃないかな。

と思って今統計要覧を確認したら、カメラの生産は圧倒的に中国が第1位なんだね!ちょっとビックリ。でも腕時計は日本がまだまだダントツ世界第1位なわけです。さすが技術大国日本。カメラにしたって、レンズの部分なんかは日本で作ってるんじゃないのかな。職人さんの技だよね。

[学習対策] こういった手抜きっぽい正文指摘問題は、誤文についてはあまり深く考えず、正文がみつかったらサクっとそれを正解にしちゃえばいいってことじゃないのかな。もちろん一つ一つの選択肢はしっかり読んで欲しいんだけどさ。