2007年度地理B追試験解説

たつじんオリジナル解説 [2007年 地理B 追試験]                            

2007年度地理B追試験[第1問]

ぶっちゃけ全然わからないんですけど(笑)。センターレベルではないという話どころではなく、私大地理でも問われたことがない問題ばかり。おそらく、追試は本試より平均点が低くてはいけないみたいな鉄の掟があって、この第1問は全体の得点を抑えるための得点調整の意味があるんじゃないかな。

問1 ハイサーグラフは最近のセンター試験ではひんぱんに登場するよね。しっかり読み取れるようにしましょう。ウのニュージーランドは南半球なので、1月を中心とした時期が高温(つまり夏)となっているものをチェック。2と4にしぼられる。低緯度のウが気温の高い2で、高緯度のエが気温の低い4。

1がア、3がイ。とくにイタリアのローマは出題率が高いので注意。

問2 これ難しいよな。僕は答えを見てないんですが、3が正解かな。

1についてのツッコミどころは「暖かい風」だわな。アルプス山脈を越えてくる風なら「北風」なので、高緯度側から吹く風が「暖かい風」である可能性は低いよね。誤りでしょう。

2は全然違う。イタリア南部は典型的な地中海性気候がみられるところで、こういった地域の植生は「硬葉樹」。「熱帯雨林」ではないよね。

4も違う。ニュージーランドは地中海性気候ではないので「硬葉樹」は適さない。またここは「高山」ともあるので、気温が低いことを考え「針葉樹」でいいと思う。

問3~問5 意味がわからん。

問6 1;ホルンは山の斜面が氷河によって取り残されてできた尖った山頂の部分。エンピツを削った状態と考えればいい(笑)。「地層の褶曲」は関係ない。「氷河の侵食」なのだ。

2;これはオッケイじゃないっすか。正解です。カップのアイスクリームを、大きめの丸いスプーンですくったような感じ。

3;「氷河の谷=U字谷」「河川の谷=V字谷」なのだ。氷河のような固体の流動で削られた谷は、断面がU字形となる。V字谷は、河川(つまり液体)の侵食によるもの。しばしばU字谷はフィヨルドのキーワード、V字谷はリアス式海岸のキーワードとして利用される。刃の形がUの字に近い彫刻刀と、Vの字に近い彫刻刀の違いですな。

4;消しゴムのカスがたまったような感じです。

って、結構たとえが微妙だな(笑)。伝わったかな~。

2007年度地理B追試験[第2問]

新課程が好きだよね、この産業っていうやつ。ジャンルの境界があいまいで問題をつくりやすいっていうのはあるんだろうね。当たり触りがないような。難易度は低いよ。

問1 判定が難しいんだが、1が正解かな。これはツッコミどころがない。

2;「民間の企業を国有化」っていうのがおかしいんだわ。「国有→民有」っていうのが普通のベクトルだよね。これは逆の方向。

3;米国は経済規模が大きく経済レベルも高い国なので「海外からの資本」っていうのがおかしい。また現在でも生産量世界1位の「自動車」はともかく、「造船」に関しては日本と韓国が世界全体の8割の生産を占めているわけで、米国が造船国ということはありえない。

4;「半導体工業」が怪しいんだよな。こうした先端産業は、一部の例外を除き、先進国でこそこの工業が発達する。一般的にみて、ラテンアメリカのような発展途上国ではこうした工業はありえない。

問2 これは単純に消費量が伸びているイをアジアと判定すればいいでしょ。他は不問。っていうか、生産の多いエがチリを含むラテンアメリカであるのは問題ないと思うんだけどね。

問3 これは4でしょ。経済レベルの高いシンガポールは比較的早い段階から工業化が進んだが、現在は賃金水準が高いことから電気機械工業のような労働集約型工業については地位が低下している。1が中国で、2がタイで、3がマレーシアと思われる。1人当たりGNIが低い順。

問4 1が誤りですね。IC部品の工場が九州に多いからといって、誤解してはいけない。この場合は「ソフトウェア」であり、IC部品のような機械組立工業ではない。

問5 いずれも人口の多さにキャラクターのある国だよね。僕は「新車登録台数」に注目しました。新車の登録が多いということはすなわち、それだけ買う人が多いっていうことだし、これを人口規模と結び付けるのは何の問題もないでしょ。

人口最大の中国がC。ブラジルとロシアはブラジルの方が人口が多いのでB。そしてロシアがA。これでいいでしょ?もしかして違ってたりして(笑)。

問6 最大のポイントはM。「インドのシリコンバレー」ことバンガロール。クが該当。

さらにカの「綿花」がポイントになる。インドにおける綿花の主生産地はインド半島のデカン高原。08年には本試験でもインドでの綿花の生産地域が問われたので、ぜひそちらも参照しよう。綿花の生産地域を背景としているのは、Lのムンバイなので、カがLとなる。

消去法でKはキとなるので、正解は3です。

2007年度地理B追試験[第3問]

都市に関するジャンルっていうのは実はセンターで最も重要視されるものなんだけど、意外とこのジャンルを軽視する受験生は多い。ちょっとこうした問題を徹底的に研究して、より精度を上げてほしいもんやと僕は考えます。かわった言葉が登場している問2にしても、消去法で十分解けるので決して難しくない。個人的に好きなのは、買い回り品と最寄り品のキャラの違いがテーマとなっている問4かな。これは今回のベスト問題の一つでしょう。

問1 たしかにパリはたいへんよく取り上げられる都市なのだが、ここでは特別な知識は求められていない。しっかり文章を読めば確実に解答できる。

2;「広い」っていうのがちょっと気になるのだ。東京大都市圏の図とパリ大都市圏の図の縮尺が同じ(下に20kmの目盛りがあるよね)ことを確認する。図を見るだけで、そのまま面積の大小が比較できることを意識しょう。パリ大都市圏の方が「低位」の部分が広いね。これは正文。

3;東京大都市圏ではたしかに最も外縁部にまで「中位」の部分がみられる。

4;東京大都市圏では都心部だけではなく、都心から数十km離れたところにも「高位」の場所がみられる。

残った1が正解。ちょっと判定しにくいんだが、2から4までが絶対に正文なので、1が誤りとみていいだろう。パリでは都心部は「高位」がほとんどで一部に「低位」がみられるだけだが、東京では「高位」に囲まれた都心中央部に「中位」や「低位」の場所が比較的広くみられる。地価が高いので、(常住)人口が流出し、人口密度が低いエリアが存在するのだ。

問2 ちょっと珍しい用語問題。とくにジェントリフィケーションなどといった特殊な用語が問われていることに驚き。これはセンター初出ワード。とはいえ他のキーワードはそれほどヤバくないので、消去法で十分に解けると思うよ。

1;「無秩序」がポイント。これはスプロール現象。郊外における虫食い状の乱開発のことで、住宅地と工場、農地などが無秩序に混在することで様々な不都合を生じる。

3;プライメートシティ。発展途上国では特定の大都市のみが巨大化するが、これを首位都市(プライメートシティ)という。発展途上国は経済規模が小さいので、限られた資本力が全て一つの都市に集中することとなる。道路や港湾、空港などの整備が行われ、工業地域が誘致される。結果として人口もそこに集中し、多くの都市問題が生じる場所でもある。タイのバンコクやナイジェリアのラゴス、メキシコのメキシコシティが頻出。

4;具体的には米国の大西洋岸を考える。ボストンからニューヨーク、ワシントンをつなぐ一帯。百万都市が連続し、それらが交通機関や通信網で結ばれ、その国における中枢的な地区となっている。メガロポリスである。日本でも東京~名古屋~大阪などは「東海道メガロポリス」とよばれている。

以上より、正解は2。ちなみに僕はジェントリフィケーションという言葉を英和辞典で引いたら何という意味なのかは全然知りません(笑)。ま、いいんじゃないですか。他の3つの言葉の意味を確実に知っておく方がはるかに大事!

問3 これ、実は難しいと思うんだわ。なぜならここでポイントになっているアトランタという都市がセンター初出であるから。

アトランタはオリンピックが開催されたことでも知られる米国の都市。日本人にはコカ・コーラの本社がある都市として有名かもしれない。でも具体的にどこにあるかって言えば、答えられない人が多いよね。

アトランタの位置するのはいわゆる「南部」とよばれる米国南東部。かつて綿花プランテーションが開かれた地域で、多くの黒人奴隷がアフリカ大陸から連れて来られた。現在でも黒人の占める割合が高く、アトランタはCに該当。

AとCについては、サンフランシスコが太平洋に面したカリフォルニア州の都市であることに注目。アジアへの玄関口として米国の太平洋岸ではアジアからの移民が多いのだが、サンフランシスコも例外ではない(っていうか、むしろ典型的な都市)。アジア系の住民の割合が高いAをサンフランシスコにする。

ニューヨークは大西洋岸なのでどうでもいい。正解は4ですね。

問4 デパートが「買い回り品」、スーパーマーケットが「最寄り品」。

買い回り品とは、「選んで買う」品の意味で高級品や耐久消費財(電化製品など)のこと。交通の便が良く、買物客が集りやすい駅前などに立地する。そういった場所は普通は地価が高いのだが、高級品や耐久消費財は価格が高いので、十分に採算が取れるのだ。都心部のど真ん中に多くみられるPがデパートでしょう。

最寄り品とは、日用雑貨や生鮮食料品のこと。都心部や郊外を問わず、いや大都市圏に含まれるか非大都市圏であるかに関わらず、人が住むところならば必ず存在するもの。コンビニや郵便局(郵政民営化で状況はちょっとかわってしまったけどね)、公立学校などもそうだよね。図をみて、鉄道沿線だけでなく、広い範囲に分散しているものが最寄り品を扱う店で、つまりスーパーマーケット。Rが該当。

残ったQがホームセンターというやつでしょう。正解は4。

この問4もそうだし、問3もそうなんだが、いわゆる「3点止め」の問題を解くコツは、3つのものを平行に考えるのではなく「2つのものを確実に考え、残った1つは消去法」という感じで考えてほしいのだ。出題者側もそうやって作っているよ。だから本問についても、キャラクターの明確なデパートとスーパーマーケットだけ意識して、よくわからないホームセンターは無視すること。

問5 いわゆるエンゲル係数っていうやつ?経済レベルが低いインドは「飲食」の割合が高いでしょう。Zがインド。

日本と米国はいずれも経済レベルの高い国なのでちょっと判定が難しい。ここは「住宅」がわかりやすいかな。この割合が高いYが日本と考えていいでしょう。地価が高い日本は、住宅事情は悪いのだ。正解は2。

とか何とかいいながら、実はこの問題のポイントって「保険・医療」なんだろうね。基本的に健康保険に全国民が加入している日本っていうのは、給料から保険などが国におさめる分が天引きされているので、この表には表されないのだけれど、米国の場合はそういった国民皆保険制度がないので、個人個人で普通の保険会社にお金を払い込んで、保険に加入しないといけない。そのため、こうした「家計消費支出」の統計において「保険」の割合が極めて高くなってしまうのだ。そういう感じだね。

問6 日本はM字カーブなのです。3が正解。女性が結婚後に、出産や育児で仕事を離れるのです。他の国はよくわからないけど、別にいいでしょ。日本の形がとにかく個性的。

2007年度地理B追試験[第4問]

ついに解禁!EU加盟記念だろうか、東ヨーロッパが出題された。とはいえ、こんなマイナーな地域はさすが追試験特有って感じでもあるけどね(笑)。問題自体は結構ベタなところを狙っている。しかし、難易度調整だろうか、問4は問6なんかはすごく解きにくいから、意外と得点率は低いかもしれない。ま、これも追試験だから仕方ないかな。気にすることでもないね。

問1 ヨーロッパ東部ってのがやっかいな気がするけれど、決して困難な問題じゃないぞ。Bはルーマニア北部の山脈であるカルパティア山脈だが、これは新期造山帯の代表例。その「弓なり」の形で目に焼きつけておこう。センター過去問にも出題例がある。

ヨーロッパの山脈は、北部が古期造山帯、南部が新期造山帯なのだが、その新期造山帯の中で最も北にあるのがこのカルパティア山脈。これより北が古期造山帯、南が新期造山帯。

問2 地中海性気候は鉄板なんでガッチリ判定しましょう。イが地中海沿岸のM。おおよそ緯度40度付近に位置し、夏季には北上してくる中緯度高圧帯の影響で少雨となる。

残ったアとイについては、海洋性気候と大陸性気候で判定すればいいんじゃないかな。気温年較差の大きなアが内陸部のLで、小さなウは(どちらかといえば)海に近いKに該当。正解は4かな。

問3 pはポーランドですね。ジャガイモ・ライ麦・豚による混合農業がポイントになるのでストレートに4が該当。

1は地中海式農業っていうやつで、地中海沿岸のS。2は企業的穀物農業でウクライナのQ。あ、ここでは「商業的穀物農業」という名称が登場していますが、企業的穀物農業はこのように言う場合もあるので知っておいてもいいかな。同じ意味です。3は残ったRでしょう。ちょっとよくわかりません。

問4 これ、ちょっと難しいよね。答えを知らないんでカンで解きますが、おそらくキがドイツでしょう。経済規模の大きな国であり、直接投資額についても他に比べて圧倒的に大きな値になるんじゃないかな。もっとも、これは「受け入れ」なんで、フランスやイギリスなど周辺国からドイツへと企業が進出している様子を考えればいいと思う。カとクが難しいんだよな。カとクで決定的に違うのは「1990~1995年」の数値なんだけど、どうなんだろう。ソ連の崩壊が1991年なんで、ちょうどその頃っていえばその頃なんだよな。「-9.1」っていえば尋常でないとんでもない減少率なわけで、これって何かすごいことが起きたってことだよね。これこそまさにソ連の崩壊っていう歴史的な出来事なのじゃないかな。カをロシアと判定し、ポーランドをクと判定する。それしか考えられないんだわ。というわけで正解を5としてみたけど、どうなんかな。違ってる?

問5 おもしろい問題。「5歳未満児の死亡率」すなわち乳幼児死亡率について君たちが絶対に知っておくことは「1人当たりGNIに反比例する」こと。この階級区分図ってすごくおもしろいんだよね。サとスで正反対になっている。サで高いところがスでは低く、スで高いところがサでは低い。もちろん作成者が意図を持ってこうした階級区分をしたわけだけれど、何かメッセージのようなものを感じない?北欧などが高いサが「1人当たりGNI」で、その裏返しになっているスが「5歳未満児の死亡率」。経済レベルと子供の死亡率については密接な関係があるのだ。

あぶれたシが「1人当たりエネルギー消費量」。ロシアが高いのがおもしろいね。さすがエネルギー大国!ロシアは世界的な原油・天然ガス産出国なのだ。

問6 Zはブルガリアっていう国なんですが、民族的にはスラブ系、宗教的には東方正教会ということで、ロシアとの関係性が深い国。ここでは単純に「東方正教」で絞るしかない。2が正解。難しいかな。

ブルガリアが東方正教会っていうことだけ知っておけばいいので、他は不要。wのリトアニアも、Yのポーランドも、Xのチェコも、いずれもカトリック国なので、東方正教会がキーワードとなるのはブルガリアしかないのだ。一応1・3・4の選択肢についても解説しておきますが、覚えなくていいですよ。

1はY。ポーランドは実はアウシュビッツなんだよね。地図を見る機会があったら確認しておいて欲しいんだけど、ポーランド南部にオシビエンチムっていう都市がある。ここがかつてのアウシュビッツ収容所があったところ。古期造山帯の炭田地帯に接し、かつては石炭産出とそれによる鉄鋼業が栄えた場所。最初は炭田労働者が収容されていた施設が、やがてユダヤ人大量虐殺の地となった。

3はX。チェコの首都プラハは神聖ローマ帝国の都で、パリとローマに並ぶヨーロッパ3大古都の一つ。映画「ミッション・インポッシブル」の最初の方の舞台がプラハで結構驚いた。

4はw。バルト3国はドイツの影響が強かった地域でもある。

2007年度地理B追試験[第5問]

これも第2問に続いて新課程になってよく登場するジャンルで、何だかあいまい。問題もオーソドックスなものが多く、ここでしっかり得点しないと厳しいぞ。

問1 Aがエチオピアであることには間違いない。BとCが難しいんだわ。人口増加について「3%;アフリカ、2%;ラテンアメリカ・南アジア、1%;東アジア・アングロアメリカ・オセアニア、0%;日本・ヨーロッパ・ロシア」という数値を知っておくべきなだが、そうなるとアングロアメリカの米国と東アジアの韓国はいずれも1%でその判別は難しい。ここではこんな風に考えましょう。米国は先進国としては人口増加率が高いのは、多くの移民を迎え入れているから。今後も移民の流入は続くであろうし、また低所得国から流入した移民たちの間では出生率が高く、自然増加率も高くなるだろう。このことから考え、米国で将来的に人口が減るとは考えにくいんだわ。Bを米国と判定。

残ったCが韓国で、正解は3。ちなみに、僕は君たちに日本の人口を1億2500万人で覚えなさいと言っているが、それは日本の人口が1億3千万人になることは有り得ず、その手前で減少に転ずる(転じた?)から。実は韓国についても同様で、韓国の人口は4500万人という半端は数値で覚えておいてください。これにしても、韓国の人口は将来的に5000万人に達することはなく、その手前で減少に転換するとみられているから。日本やヨーロッパだけでなく、韓国も人口が将来的に減少すると予測されているのだ。

問2 よくわからないが、とりあえずツッコミどころとしては1の「農村」。前半の「工業化の進展により国民の所得水準が向上した」ことは正しい。でも後半が気になるんだわ。工業化が進展したのはあくまで「都市部」においてのことであり、むしろ農村との経済較差は拡大しているとみていい。都市部で出生率が低下ならば、すごく納得できるんだけど、これが「農村」となってしまったらどうか。そんなことはないと思うんだよね。よってこれが誤りです。「農村・都市」のような対になる言葉を含む選択肢には要注意ということだね。

他の選択肢については不問。っていうか4なんか僕もよく知らんよ(笑)。具体的に書いてくれなきゃ意味がわからんよね。あいまいな内容だからツッコミどころもないや。

問3 1;アラブの範囲を厳密に知る必要はないけれど、一応、東はイラク、西はモロッコまでの西アジアから北アフリカ。自給率は低いが、供給量は多い。

2;たしかにオセアニアは高い。しかしこの文章自体にツッコミどころがあるんだわ。それは「稲作」なんだよね。オセアニアはヨーロッパ系の住民が多いところで、しかも降水量がそもそも少ない地域が多いのだから、ちょっと稲作とは縁遠いよね。これが誤文。

3と4についてはとくに問題ないでしょう。

問4 いい問題だね(笑)。ベストワンではないけれど、今回の問題ランキングならば絶対に上位に入るな。この問題ができた人はかなり頭が柔らかいし、センターマスターといえる。そうでない人は残念だけど、まぁ反省が必要って感じでしょうか。

もちろん注目はDだね。だっておかしいもん。カタールみたいな意味の分からない国が入っている。こんな国、どうせ小さい国だよ。人口だって絶対少ないはずだ。さぁこんなマイナーな小国で数値が大きくなるものって何だ?まさか「実数」であるわけがないんだよ。実数は母数(この場合は人口)にある程度比例する指標であるし、本問の場合ならば、普通に人口大国でこそ「エネルギー消費量」が多くなるだろうし、「エネルギー消費量」もある程度は国のサイズに比例するだろう。

で、ここでポイントは指標の中に一つだけ「割合」が混ざっていることなんだわ。とくに「1人当たり」とあるわけだから、つまり人口規模で割るのだから、要するに人口が分母になるのだから、そう、どちらかといえば「人口規模に反比例」する傾向さえあるということだ。

このことから、カタールとかいうマイナーな国がトップにあるDを「1人当たりエネルギー消費量」と考えることは妥当だろう。

EとFに関してはベタな統計だと思います。米国が異常な数値をみせているEが「エネルギー消費量」、米国やロシア、中国のような大国に加え、サウジアラビアがランクインしているFが「1次エネルギー生産量」ですね。

とにかく「1人当たり」に敏感になれ!「実数」と「割合」の違いなのだ。

問5 「潮力」っていう時点で沿岸部だよね。アが「潮力」。「地熱」についてはやっぱり大分県を絶対に知っておこうよ。くじゅうで地熱発電が盛んに行われているのです。イが「地熱」。正解は3。

問6 ややヤバ。カは「オランダ」からインドネシアを考えるしかない。Xがカ。Yは知っておいてもいいと思うんだよね。ナンシャー諸島というところで、ここは海底油田の存在が確認されているため、周辺の中国やフィリピン、ベトナムなどの間で領有を巡ってちょっといざこざが続いてしまっている地域なのだ。このことから正解は2。Zについてはどうでもいいでしょう。フィジーって国のことじゃないの?先住民とイギリス人が連れていったインド人の子孫との間で対立が起きているそうだが、私大入試でもほとんど出題されません。とりあえず鉄板ネタとして「インドネシア=オランダ」を知っておきましょう。

2007年度地理B追試験[第6問]

また雪国かよ!?06年に新課程が導入されてから、06B本では北海道、06B追では山形県、07B本では青森県、07B追(本問)では富山県、08B追では石川県っていう感じで雪国ばかりが問われている。唯一08B本だけが広島県なんだけどね。しかも、当たり前だけど雪がらみの問題が毎回登場している。新課程=雪っていうことか?

問1 今回もっともやっかいだった問題みたいだね。でも、僕に言われればこれこそ正統派センター地理Bのド本命問題なのだ!つまり「知識」ではなく「思考」っていうことね。思考力さえあれば解ける。思考力がなければとけない。

まず「年平均気温」から行きましょう。標高によって気温が低減されることさえわかればいい。え、ちょっと難しいから簡単な言葉で言えって?簡単だよ。低いところで暖かく、山の上で寒いっていうことだよ。当たり前でしょ?

暖かいところ=低いところってどこだ?普通に考えれば沿岸部だよね。沿岸部で「濃い色」となっており、内陸の山地の方で(日本は山岳国だから内陸部は山地になっているはずだよね)「薄い色」になっているものはどれだ?もちろんウが該当。沿岸の低地で気温が高く、内陸の山地で寒冷になっている様子を想像する。標高が高ければ寒いっていうことだわな。

さぁ、ここからがマックスで思考力を要する部分。っていうか、すごく簡単な思考なんだけれど、知識に凝り固まってしまうとこの簡単なはずの思考力が失われてしまう。「堅い頭」じゃ解けないってことだよ。「柔らかい頭」を君は持っているか。

ポイントは「1月の降水量」と「最深積雪」の違いが何かっていうこと。1月の降水量って普通は雪じゃない?っていうことは、普通に考えて1月の降水量が多いところは積雪も深いっていう風になるよね。でもこの2つを区分しなくてはいけない。この2つにはある明確な違いがあるのだ。

積雪が深いってどういうことだ?一生懸命考えろ。わかるか?そう、それは「融けない」っていうことなのだ。雪が降るよね。すぐに融けてしまえば、雪は深くは積もらない。一旦雪が降って、そしてそれが融けなくて、さらに雪が降り積もって行ったならば、次第に雪の深さは大きくなっていくわけだ。「融けずに重なっていく」こと、これが最重要なのだ。

これでわかるんじゃないかな。要するに、雪がどんなに降ろうと、どんどん融けてしまうので、積雪量はたいしたことない地域もあれば、その逆で、雪が降ったら、それが全く融けないものだから、雪が降った分だけ積雪量は増えていく地域もある。さぁ、この違いって何なんだ?

昨日雪が降った。今日になったら融けていた。これは今日の気温が高いっていうことだよ。暖かいから融けてしまった。同様に、昨日雪が降った。今日になってもそれが残っている。これは今日の気温が低いってことだよな。寒いから融けずに残った。

以上、これでこの問題の種明かしが終わりました。ここからは自分で考えなさい。気温と積雪量は反比例の関係にあるということなのだ。美しい思考問題じゃないか。でも簡単とも思わないけどね。なかなかこうしたスマートな思考はできない(笑)。

問2 2;「50」の等高線がわかりにくいかな。1961年の図では南西部に「50」とあるので、この線をたどってみよう。1996年の図では中央近くに「50」とあるので、これに沿う線をたどってみる。どうかな。もちろん少しは変化しているんだが、極端に「移動」というわけでもないと思うんだよね。誤文。

3;1961年の図では北西から南にかけて鉄道がみられる。現在はそれは廃止されている。道路については1996年の図で最も西側を南北に縦断している。しかし、それは必ずしも鉄道が通っていた場所とは一致しないよね。関係ないけど、地形図問題ってこういった感じで鉄道ネタってすごい多いんだけど、鉄道マニアが作成者に多いんやろね。仕方ないかぁ(笑)。

4;土地利用記号は鉄板で!桑畑はございません。

消去法で1を正解にしましょう。

問3 これがよくわからないんだが、もしかして3が正解なのかな。ちょっと本試験では考えにくい問題パターンではあります。クの住宅の形っていうのは、一辺に普通の住居があって、L字型に曲がったもう一つの辺は家畜小屋になっているっていう形式なんだよね。だから「前庭で作業」のためじゃないっていうこと。

問4 これも実は難問だと思うよ。1はちょっと考えにくいんだわ。1960年代って高度経済成長でしょ。1人当たりGNIが急上昇した時期であり、それに連れて物価も絶対に上がってるはずなんだよな。物の値段が全体的に上昇している時期に米だけ価格が落ちるかなぁ。そんな不自然なことはあり得ないと僕は思うわけで。誤文。

2にしてもどうなんだろう?現代社会の日本において我々の食生活は大きく変化した。1人当たりの米の消費量は大きく落ち込み、パンなど小麦が増加した。こういったことを考え、わが国で米の収穫量が大きく増大したなんてことが考えられるだろうか。米がたくさんとれても、国民はそれを食べないのだから、米が余ってしまう。そういったちょっと弱った問題まで生じることになってしまうよね。誤文。

3ははっきりしている。土壌流出は米国のキーワードと決めつけてしまっていい。米国のコーンベルトやグレートプレーンズでは、雨や風によって土壌が流され、耕作が困難になっている地域もある。日本のキーワードではない。誤文。

で、4が正文だと思うよ。生産調整っていうのはいわゆる「減反」っていう言葉でよく知られる政策で、水田をつぶして、米のつくり過ぎを防ぐこと。国としては国民の主食である米の生産は確実に保護したい。でも保護しすぎたことによって農家はどんどん米の生産に力を入れて、結果として米余りの状態となってしまった。まさに高度経済成長期の話。日本人の食事も米中心から次第に小麦の消費も増えていった時代で、米そのものの消費量も減じてしまった。政府としては、いよいよそれまで保護していた米作に対する政策を転換させ、全国の水田のうち、何割かを休耕もしくは転作させることによって米の生産量を抑えてしまったのだ。選択肢4の文章にあるように、経営耕地面積の減少はさほどでもないのに、水稲作付面積の減少の度合いが極めて大きいのはそれが原因。

ただ、本問はちょっと難しい問題だよね。まさに「生産調整」ならぬ、追試験が本試験より簡単になるのを防ぐための「得点調整」の問題なんじゃないかな。どうでもいいっす。

問5 1は正文ですね。2も正文ですね。3と4がやっかい。

1事業所当たり製造品出荷額とは「製造品出荷額÷事業所数」によって表されるもの。製造品出荷額に比例し、事業所数に反比例する。

高岡市の非鉄金属工場は、事業数は比較的多いが、出荷額が小さい。それに対し、化学工場は、事業所数はたいへん少ないものの、出荷額は非鉄金属よりはるかに大きい。このことから、1事業所当たりの出荷額は、化学工場の方が非鉄金属工場より大きいということがわかる。3が誤り。

4についても同様に観察してみよう。富山市のグラフにおいて、一般機械は「事業所数<製造品出荷額」になっている。同じく金属製品は「事業所数>製造品出荷額」である。もうかっているのは一般機械なのだ。正文。

こうした「○○当たりの△△」というような言葉には最大限注意してください。

問6 スゴくヤバい問題。どうする?メチャ大事だとは思うんだが、ちょっと難易度高いぞ!

まず和歌山がヤバいんだわ。センター試験初出。でも実は、高度経済成長期に新しく製鉄所がつくられ鉄鋼業が栄えた都市の代表例だったりする。1960年代は太平洋沿岸地域にいくつか新しい製鉄所が建設されたが、この例としては茨城県の鹿島が最も有名。それ以外には、九州の大分なんかも重要なんだが、実はこの和歌山も近畿地方の新しい鉄鋼業の中心地として重要なところ。難しいな。石炭や鉄鉱石など鉄鋼業の必須アイテムの輸入割合が高いので、Zが和歌山になる。

さらに水島。ただしこちらは過去問で取り上げられたことがあるので、何とかなるかな。岡山県倉敷市の水島地区は、やはり高度経済成長期に大規模な開発が行われ、石油化学コンビナートが設けられた。原油の割合が高いXが該当。

さらに伏木について。こんな都市名まず知らないよね(笑)。とりあえず日本海沿岸であることだけがポイントとなる。日本海沿岸の港湾ならば、どういった国と貿易しているだろう。実はこれが最大の手がかり。石炭や鉄鉱石ならばオーストラリア、原油ならばサウジアラビアといったように、太平洋岸に位置している方が輸入には適しているわけだ。それに対し、いわば「日陰」の存在の日本海側の港湾が持っている有利点とは何だろう?それはズパリ「ロシア」なんだわ。日本海をはさんで対岸に位置するロシアとの貿易に関しては、圧倒的に有利な位置を占めているのが日本海側の港湾というわけ。

で、我々が考えなくてはいけないのがロシアからの輸入品。君たちにぜひ知っておいてほしいのは「木材・魚介類・アルミニウム」だ。やっぱりYでは「非鉄金属」って気になるんだよね。鉄じゃない金属って何だろう?そう、これがアルミニウムなのだ。わが国がその多くの割合をロシアに依存しているものとしてアルミニウムは絶対に知っておこう。バイカル湖の豊富な水力を利用して得た電気によってアルミニウムが精錬され、その多くがわが国へと運ばれ、一円玉になる。どうだろう?「非鉄金属=アルミニウム」「アルミニウム=ロシア」「ロシア=日本海側」と結び付けることができれば、むしろYが伏木港であることが真っ先に判断できたりするわけだ。普段からアルミニウムには敏感になっておいて、鉄以外の金属なんてそんなにたくさんはないのだから、ぶっちゃけ「非鉄金属=アルミニウム」ってそのまま決めつけてしまったらいいよ。

というわけで3が正解。

いわゆる3点止めの問題なんだが、本問の場合は確実に分かるところがなく、3つともあいまいな知識で考えていかないといけない。やっぱりすごく苦しいと思う。せめて水島については石油化学コンビナートというネタを知っておいては欲しいんだが。でもこれは中学レベルの知識でもあるんだよね。「センター地理で必要な知識は中学地理」という法則がここでも当てはまっているわけで。