2017年度地理B追試験[第6問]解説
2017年度地理B追試験第6問解説
地域調査に関する問題。取り上げられている地域は茨城県の北部。どうしてここをセレクトしたのだろう?っていうぐらい意外な場所なんだが、とくに理由もないんだろうな(笑)
とはいえ、日立市などある程度日本地理に関する知識も必要となっているので、やはり中学地理の学習を徹底しておかないといけないことは、例年通りの傾向。
形式的には、いずれも「どこかで見たことがあるパターン」であるので、意外性はない。しかし問4のように極端に難しい問題もあり、簡単に解ける問題ばかりではない。とくに問1のような鳥瞰図(立体図)を用いた問題は、例年簡単なんだが、今年は難しいと思う。問6もかなり考えないといけない。問7は、「そこが間違いポイントなんか〜(涙)」というぐらいの意外性のある問題なので、よほどしっかり文章を読まないと正解はおぼつかない。
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[ファーストインプレッション] こういう図ってどうやってつくったらいいんだろうね。ソフトがあるのかな。最近よくみる問題パターンですね。
[解法] GIS(地理情報システム)によって作成された鳥瞰図(鳥のように高いところから見た風景ってことね)を用いた問題。土地の起伏を捉えることが重要となる。
まずAがわかりやすいと思うんだな。地図の上方から覗き込んで、Aの矢印に沿ってどんな地形がみえるのか、目を近づけてみよう。Aの矢印の先には険しい山々がそびえている。陰影が濃くなっている様子をとらえよう。
選択肢の4枚の図のうち、中央に高い山がみられる(しかも、矢印の方向に沿って手前から億に向かって)のは④である。Aを④とする。
で、この④の図はちょっとおもしろい。右手の奥の方向(④の図は手前が北、奥が南なので、右奥は南東となる)に平坦な土地が広がっているが、これは地図においては「常陸大宮市」の市街地が広がる平坦地に該当するのだろう。④の図が思ったより広い範囲をカバーしていることに驚かされる。また、同じく左手を手前から奥に向かって、断面がVである明確な谷が走っている。これはおそらく山田川に沿う谷なんじゃないかな。地図からは読み取りにくいけれど、実際にはかなりはっきりとした地形となっているようだ。
これがBの判定には重要な手がかりとなる。Bの矢印に沿って、地図を覗き込んでみよう。山田川の刻む谷が、視界を左右へと横断しているはず。なるほど、②がそれっぽく見えないかな。②の写真の、ちょっと手前側の広い谷が「里川」の谷。その奥を横断する、白線が一本通ったような尾根線があり、その向こう側が深い谷となっているように想像できる。これが「山田川」の谷だとみていいだろう。②が正解。
CとDはよくわからないな。こういった問題が得意な人はその判定までがんばってください。僕はちょっと無理っぽいです(笑)
[アフターアクション] こういった視線判定問題は、実際に「覗き込む」ことが大切なのです。とくに中央に何が見えているかがポイント。Aの矢印に沿って覗き込むと、矢印に沿って(つまり中心に)険しい山があって、尾根が連なっている。この地形に注目できるだろうか。
これさえわかれば、その右側の谷「山田川」がわかるし、Bからみて、この谷が目の前を右から左に向かって横切っている様子も想像できるはず。
とにかく、覗き込みましょう!
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[ファーストインプレッション] 常陸太田市とは、またマイナーな街を取り上げたもんだわ(関係者のかた、すいません。たつじんは茨城県の知識がほとんどありません・涙)。ただ、市街地の大きさや平地、山地(というか丘陵地、台地といった方がいいぐらいの緩やかな起伏のようんだけどね)のバランスもいいし、非常にみやすい地形図ではある。2万5千分の1の地形図って、50000分の1の地形図に比べ大縮尺であるので、こうした地形図問題で取り上げた場合、「全体が市街地」とか「全体が山地」みたいなパターンが多いんだが、その点で常陸太田市は見事なバランスだと言える。問題としてここをセレクトした作問者は目のつけどころがスゴいよね。
[解法] 新旧地形図の対比。定番の問題でもあり、確実に解きましょう。それにしても、2017年の試験に2001年とはかなり古い時代の地形図なんか使わなくてもいいじゃないかっていうツッコミもあるんだが、それ以上に注意しないといけないのは、この2枚の地形図がカバーしている範囲って完全に一致しているわけではないところ。それぞれの図の左上に「学校」がみられるんだが、1932年の方がちょっと右にずれていて、2001年は左にずれている感じがしない?ほんの些細なズレなんだけれど、それだけでずいぶん違和感があったりするから、もっと精密につくってほしいだけどね。
ではそれぞれの選択肢について検討していこう。
①について。1932年の地図で「太田町」となる左側に沿う黒い部分が家屋の集まりであり、これを「旧市街地」とみていいだろう。「2001年」の図をみてみると、なるほど旧市街地は住宅密集地となっているけれど、その東側はどうだろうか。「市役所」もつくられ、その周辺にかけて多くの建物が建設されている。単なる住宅地で「市街地」なんて大げさなもんじゃないぞ、という見方もあるかもしれないが、これぐらいの建物の密集の仕方でも市街地とみることは可能と思う。許容範囲でしょう。
②について。2001年の地形図で「源氏川」を探し、その西側の「運動公園」をみつける、1932年の地形図で同じ場所を確認してみよう。そこにみられるのは「針葉樹」ではなく、これが誤りであることがわかる。②が正解。なお、この土地利用記号は「湿田」を意味する。現在の「田」の土地利用記号の下に、それを支える下線が施されている。ただ、湿田といっても特別なものではなく、普通の田と考えて構わない。実は古い地形図でも「田」と同じような2つの縦線が表される土地利用記号があり、そちらは「乾田」。ただし、こちらも普通の田とみて何も問題はない。
要するに、昔は湿田と乾田の2種類に分けられていたのだが、現在は単なる田に統一されてしまったということ。本当はもっと詳しい話もありませんが、センターレベルではこれで十分でしょう。
一応他の選択肢にも触れておこう。
③について。「地形の改変」は、等高線に注目する。等高線が密になっている丘陵地域において、土地が削られて、平坦化された様子を読み取ろう。それがわかりにくかったとしても、広く住宅地がつくられているとすれば、そもそも険しい斜面に建物がつくられるわけはないのだから、平坦化されたことがわかる。「里川」の東の「四季の丘」はまさにそういう場所である。
④について。南部の「三才町」周辺では、かつては田の区画を分ける境界(あぜ道のようなものだろうか)が不規則な線となっていたが、現在はそれら境界は直線化され、それぞれの耕地も長方形となっている。「区画整理」されていると考えていいだろう。
[アフターアクション] 実は地形図には「2010年問題」というものがある。2010年以降に発行される地形図は、新しいバージョンとなり、さらにカラフルで写実的となり、地形「図」というより地形「絵」ともいうべき、美しい仕上がりとなっている。その進化は素晴らしいのだが、しかし、唯一の欠点として、白黒コピーした際に読み取りにくくなってしまうのだ。様々な色が用いられており、カラーで見た場合にはたいへんわかりやすいものになっているのだが、白黒にするとそれらの色彩の境界があいまいとなり、判読しにくい。現在、日本全体の地形図が少しずつ新しいバージョンとして発売されており、やがて全てがカラフルなものに入れ替わるのだろう。
ただし、そうなるとセンター試験でそれらをどうやって使うかという課題が生じる。
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[ファーストインプレッション] 文章をしっかり読まないといけないから(さらに表から計算もしないといけない)ややこしいよね。とくに実際のセンター試験で、時間の足りない中でこういう問題にぶち当たったら焦ってしまう。厄介な問題だと思う。冷静に解きましょう。
[解法] 商業に関する問題ではあるが、正確な文章読解が必要。総合科目としての地理を意識づける問題ではある。
まず(ア)について考察しよう。「商店街」には「古い蔵や倉庫」が残されているそうだ。商品が集められ「卸売業者」によって使われたと説明されている。「近世」とは江戸時代のことだが、平和で交易の盛んな時代でもあり、卸売だけではく「小売」の店も増え始め、「より多くの店舗が立地」できるようになったのだそうだ。道路に沿って多くの家屋(つまり商店)が密集し、奥に向かって細長い敷地となっている。なるほど、そういえば、昔はこんな商店街がたくさんあったよなぁ。通りに面した間口は「狭く」なって、各商店が軒を連ねている。そんな光景を想像してみよう。(ア)は「狭く」でいいと思う。
さらに(イ)について。「1事業所当たりの売り場面積」なので、「売り場面積÷事業所数」で計算できる。1994年は「44941÷753」で、2014年は「39995÷315」で、その値は大きくなっている。売り場面積は「拡大」傾向である。正解は①である。
かつては、商店街に集中して店舗が立地していたので、それぞれの店の売り場面積は限られていた。現在は、「小売業が郊外に進出」したことで、面積に余裕が出てきて、一つ一つの商店が大きくなった。自家用車の普及によって、郊外の店に自動車で訪れる客が多くなったのだろう。
[アフターアクション] 問題文が長ければ長いほど、図表やグラフが細ければ細かいほど、実は問題は解きやすい。必ず文章や図表のなかにヒントが含まれている。こういった問題は時間はかかるけれど(というか、そもそもセンター地理は時間がかかる試験なのです)、読めば必ず解ける!ラッキーアイテムと思って、確実に得点しようぜ。
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[ファーストインプレッション] こういう図ってスゴいと思うわけよ。調べるのも面倒だし、作図はさらに面倒くさい(涙)。センター作問者ってがんばってるなあって思うよ。分布地域の違いもさることながら、数(戸数)そのものにも注目してほしいな。そしてもちろん時代(現代)も考慮。
[解法] 農家(畜産農家も含む)の分布に関する問題。「常陸太田市について」とあるけれど、そもそも図1において常陸太田市の範囲が具体的にどこからどこまでなのかわからない。一応、問6の図6は目安になるような気もするけれど、詳細はわからず。大雑把に捉えないといけない。
「稲」の判定は簡単だと思う。稲すなわち米は日本において最も重要な農作物であり、日本の総農牧業生産に占める米の割合も極めて高い。水田は主に低湿地に開かれるのだが、地図をみても(正確な位置はわからないけれど)全体として南部に低平な地形が広がっているようであり、水田がこの地域に集まっているとみて正しいだろう。カが稲となる。
問題はキとク。キは南西部に比較的多く分布しているのに対し、クは北部に点在する程度。ただし、そもそもの常陸太田市の範囲がわからないので、どんな条件(河川沿いであるとか、道路に沿っているとか、山地であるとか、市街地であるとか)なのかが不明。つまり、ここって「数」そのもので判定しないといけない。それなりに戸数が多いキに対し、ほとんどゼロであるク。さぁどうする???
ここからはカンでやらんとどうしようもない気がするんだわ。例えば、現在の日本において雑穀栽培ってどれぐらいされているんだろう?たしかにソバを食べる機会があるとはいえ、その生産量ってそんなに多くないと思うよ。それに対し、肉牛ならば、日本にはそもそも高品質の牛肉をつくる技術もあるし、意外に肉牛を飼育する畜産農家ってあるんじゃないか。本当にカンに頼ることになってしまうけれど、キが「肉牛」、クが「雑穀」と判断し、正解は②とする。どうだ?これで当たってるのか?
[アフターアクション] 2011年度地理B本試験の第6問でも似たような問題が出題されていた。佐賀県における、米と大麦とミカンの生産。過去問を入手できる人はぜひとも参照してみよう。山地でミカンであることはわかるのだが、米と大麦の栽培地域の違いを地形から読み取ることは極めて困難。よって、生産量で見るしかないのだ。生産量の多い方が米、少ない方が小麦と判定する。
どうなんだろう?本当に難しいし、最後は感覺に頼らないといけないのだが、少なくとも「生産量」そのものに注目することの有効性はわかるだろう。図を用いた物台は、情報量が多く、そしてヒントも多いので、図の隅々からさまざまな手がかりを探して、解いてみよう。
[間違えました!] すいません、最後の2つに絞ってから思いっきり間違っていますね。とにかく、「雑穀」と「牛肉」の判定が難しい!っていうか無理(涙)。
そもそも常陸太田市の範囲が、図1から判定できないので、地形と対照させて考えることができないのだ。図4で示された常陸太田市の範囲の、西側の境界は「山田川」なんだろうか。なるほど、そう考えるとこの一帯に沿って「稲」の栽培地域が広がっており、河川沿いの低地と考えることも可能なのだ。そうすると、そういった低地は肉牛の放牧地にはなりにくいだろうから、「雑穀」の値が市域の西端に沿って大きくなっているのは納得でもあるんだが。
いや、でもこれ、わかりませんわ。もう仕方ないでしょ。本当にすいません。
[言い訳] 問題が悪すぎるわ。せめて、図1において常陸太田市の範囲を示しておいてくれよ。たしかに、よーく見たら市境みたいな線はあるんだよね(Aの矢印の先)。でも、これで判定せいっていうのも、無理がある気がするなぁ。。。
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[ファーストインプレッション] 水戸が茨城県の県庁所在都市であることは絶対に知らないといけないし、日立も電気機械メーカーの日立の発祥地であることも知らないといけない。日本地理の知識が問われている。こういう問題って却って難しいね。
[解法] 3都市の工業の種類を問う問題。工業出荷「額」ではなく、その内訳(割合)が問われていることが特徴。
水戸は有名だろう。茨城県の県庁所在都市。いわゆる「茨城県の首都」であり、物流(卸売業)の中心となり、金融業も発達し、そして情報が集積し、文化をリードする都市ともなる。こういう都市において印刷・出版業が発達するのは当然だろう。もちろん東京に比べたらわずかなものだが、例えば、茨城県の地方新聞などは水戸で印刷されているはずである。水戸市で割合が高いスが「印刷・印刷業」。
さらに日立市に注目してみよう。「日立」という名称にピンとくるんじゃないかな。電気機械メーカー大手の日立製作所の発祥地であり、現在でもその工場が置かれていると考えていいと思う。日立市で割合が高いシが「電気機械器具」であり、正解は⑥。
常陸太田市で割合が高いサは「木材・木製品」のようだ。これについては判定の必要はない。山地に覆われ、豊かな森林に恵まれた自然豊かな街が常陸太田市なのだろう。
[アフターアクション] 結局のところ、水戸市や日立市を知っているかどうかって問題になっているんだわ。日本地理が大切ってことなのかな。高校の学習内容ではないので、中学の問題集をつかって、日本地理は整理しておこう。ときには小学校の地理(中学受験なんかめちゃめちゃ難しいから、とても勉強になるよ)を利用するのもいいと思う。日本地理の知識が、センター地理で高得点を取れるかどうかの決め手となるのだ。
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[ファーストインプレッション] 階級区分図を使った問題。階級区分図は「割合」の高低を示す時に用いられる統計地図。ここで取り上げられている3つの指標である「人口減少率」、「第3次産業就業者率」、「通勤・通学者数に占める他市町村への通勤・通学者数の割合」がいずれも割合であることを認識しておこう。それにしても、人口増加率じゃなくて減少率なのね。ややこしいな。注意しないとね。なお、割合の反対は「実数」。人口を示した左上の図は図形の面積で数値の大小を示したもので、図形表現図(円積図)という。
[解法] 人口に関する指標を階級区分図で示している。特徴的な市に注目しよう。最大のポイントは水戸市、茨城県の県庁所在都市で、人口も多い。企業や公的機関も多く置かれており、それに従事する人も多いはず。商業や金融の中心地であり、デパートなど商業施設も多いだろうし、銀行も集中しているはず。間違いなく第3次産業に就く人の割合は高いだろう。水戸市が「高」となっているチが「第3次産業就業者率」である。
その一報で、水戸市はタでもチでも「低」となっている。水戸市に仕事は多いので、他の市町村に通勤する人は少ないだろうし、総人口も大きく減っているわけはない。タとチとで違っているのは、主に北部の市町村。タでは北部はほとんど「高」となっているが、チでは中央に帯状に「高」のエリアが広がるが、それ以外は全体的に「低」が多い。どうだろうか?鉄道や幹線道路が整備されているので水戸市に通勤しやすい条件が、チの帯状の「高」の地域に揃っているのではないだろうか。なるほど、水戸市と並ぶ、中心土地の一つである日立市が「低」となっているのも、この都市には働き場所である工場が多く存在しているということではないか(なお、日立市は第3次産業就業者率は「中」であり、商業都市というより、工業都市というべきなのだろう)。よってツが「通勤・通学者数に占める他市町村への通勤・通学者数の割合」となり、正解は①。
チは「人口減少率」だが、北部地域で特に人口減少が著しいようだ。過疎化もみられるのだろう。
[アフターアクション] 水戸市が茨城県の県庁所在地であることを知っておけば解きやすかったんじゃないかな。人口増加率じゃなくて「人口減少率」なんていうのがちょっとフェイントなんだが、比較的オーソドックスな階級区分図だったと思う。昨年の本試験の岩手県のやつなんか、めちゃめちゃ難しかった(っていうか解答不能)だったもんね。
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[ファーストインプレッション] 災害の問題が最近は多くなっていますね。とくに本問はフィールドワーク(野外学習)と組み合わされた、かなりの力作。それにしても、アオイさん、めちゃめちゃ絵が上手いね(笑)
[解法] フィールドワークに題材を取った災害に関する問題。知識より思考が問われる問題であり、図や写真、そしてレポートの読み取りが大切。
①について。さまざまな「土砂災害」があり、「崖くずれ」や「地すべり」、「土石流」がその例である。それぞれの災害がイメージできるだろうか。「崖くずれ」はわかるよね。崖の上から岩石が転がり落ちるイメージでいいと思う。道路なんかが塞がれて、交通が遮断されるなんてことはよくあるよね。「地すべり」はその土砂バージョンって感じかな。大量の降水によって地盤が軟弱化し、高所の土砂が下方へと滑り落ちる。台風の被害を伝えるニュースなんかで、斜面のふもとの家屋が土砂の中に埋もれてしまっているような映像ってあるじゃない?あれが地すべり。夜に発生すれば、家の中で寝ていた人がそのまま生き埋めになってしまうことも。。。恐ろしい災害です。
さらに「土石流」。これが一番難しいかな?これは谷や河川に沿って、上流側から土砂が押し流されてきて、下流側の地域を埋め尽くしてしまうこと。この被害を防ぐために、砂防ダムという防災設備が造られている。小規模のダムのような建造物で、河川の流れをせき止めている。一般のダムは農業用水・生活用水の確保、発電など多様な目的に使用されることがあるが(多目的ダム)、砂防ダムはあくまで防災設備であり、上流側からの土石流や火砕流をせき止め、下流側に被害が及ぶのを防ぐ。なお、火砕流とは火山噴火によって生じるもので、火口から噴出した溶岩がマグマが山地斜面を転がりながら周囲の土者を巻き込んで、谷(河川)に沿って流れ落ちる流動物である。
②について。「ハザードマップ」は超重要。防災地図のことで、主に自治体によって作られている。
③について。このコンクリートについては図にも描かれているね(それにしても、上手い絵やな〜)。これは何を防ぐものなのだろうか?果たして「土石流」なのだろうか。「急斜面がコンクリートで覆われている!」のだが、むき出しになった崖を補強するものであり、これによって防がれるのは「崖くずれ」なのではないか。「地すべり」を防ぐ効果もあるかも知れないが、しかし、河川に沿って流れ落ちてくる「土石流」については無関係と思われる。土石流を防ぐものは砂防ダムである。これが誤りとなり、③が正解。
④についてはとくに検討の必要もないが、とくに間違ったことは言っていないだろう。樹木は地中に深く根を張ることによって、土砂が流れ出すことを防ぐ。これを「治山」という、しかし、森林の管理不足で、木が枯れてしまってハゲ山になってしまったら、どうなるだろうか。樹木の根によってキープされていた土砂が流れ落ち、土砂災害を誘発することになる。とくに日本の場合、いつまでも伐採されない老木が多く、林業従事者が減少していることもあり、森林が失われる危険性は十分に高い。治山効果を高め、防災の観点から、森林は保護されるべきものなのである。
[アフターアクション] 本問のおもしろいのは。先行する選択肢で「土石流」というキーワードが登場し、後続の選択肢でそれを受けて正誤判定を行うというパターンがみられること。選択肢②において、「崖崩れ」と「地すべり」と「土石流」という言葉はそれぞれ別個のものなのだという定義をしておいて、選択肢④で「土石流」ではなく「崖崩れ」が正解なのだ、と反応している。このパターンの問題って初めてみたが、実に興味深い。形式的なことであるが、このようなところまで分析を進めると、非常に有効だと思うよ。
ところで、「土石流」を防ぐのが「砂防ダム」。1998年度地理B本試験でも登場する重要ワードだが、教科書や資料集では取り上げられていないと思うので、よかったら画像検索でもしておいてください。その1998年の問題では、砂防ダムのはたらきについて「火山の噴出物が河川により運ばれ、下流域に被害をもたらすことを防ぐため」(火砕流)、「大雨の際の山崩れなどにより、大量の土砂が短時間で下流域に運ばれることによって起こる被害を防ぐため」(土石流)と説明されている。