たつじんもこんな問題を間違えているのです(涙) [8]

[4]次の①〜④の文は、図1中のバンクーバー(ヴァンクーヴァー)、エドモントン、トロント、モントリオールのいずれかの都市の産業について述べたものである。トロントについて述べた文として最も適当なものを、次の①〜④のうちから一つ選べ。(2009年度地理B本試験)

① 内陸水運の起点に位置する港湾都市であり、繊維をはじめとする多様な工業が発達した。

② 豊富な石油・天然ガスなどの資源が周辺にあり、化学工業が発達したほか、穀物の集散地ともなっている。

③ カナダ最大の人口を有し、金融・保険業の中心地となっている。

④ 水運・陸運の要衝であり、農林水産物・鉱産物の集散地として発展した。

 

まずバンクーバーから行きましょうか。国境線を挟んで、アメリカ合衆国シアトルと相対する都市で、シアトルとの共通性を意識すればいいでしょう。両都市は暖流に面し、冬季の気温が温暖(不凍港なのです)であるだけでなく、降水量が多いことも特徴です。後背地(背後の地域)は森林地帯となっており、木材の輸出港として発展してきました。農林水産業の「林」がやっぱり気になるのですよ。④がバンクーバーとなります。「水運」はもちろん太平洋に面する港湾であること、「陸運」についてはこの地まで大陸横断鉄道が通じていることを説明しているのでしょう。「鉱産物」がちょっとわからないのですが、もしかして金鉱なのかな?自信ありませんが。

さらにエドモントンは②に該当します。後で説明する参考問題にもエドモントンが登場してきます。この地域は油田やガス田、炭田に恵まれており、北アメリカ最大の資源産出地となっているのです。なお、「穀物」については、Fの範囲が春小麦地帯であることを考えれば、小麦の集散地という点においてはとくに否定することもないような。妥当でしょう。

で、ここからなのです。僕の場合、単純に「カナダの人口最大都市はモントリオールであえる」と丸暗記していたのが仇となりました。「カナダ最大の人口」から③をモントリオールと判定し、残った①をトロントとしてしまったのです。実は、答えは反対でした(涙)。今、むしろトロントの方が人口が多いのですね!最新統計で調べたら、トロントの人口が600万、モントリオールが400万(いずれも都市圏人口)とのことです。僕の情報が古かった。たしかにトロントはアメリカ合衆国に近接し、多くの自動車工場が進出するなど経済成長がめざましい都市。そりゃ人口も増えますわ。それに対しモントリオールは、フランス語圏であるケベック州に位置する都市で、この地域はアメリカ合衆国との関係が薄れたことによって経済が停滞している地域。モントリオールの人口も大きくは伸びていない(もしくは減少しているかも)と考えられますよね。

実はこの問題のポイントは、その経済レベルにあったように思うのです。英語圏であるトロント周辺は経済レベルが上昇するのに対し、フランス語圏であるモントリオール周辺は経済レベルが停滞します。経済レベルとはすなわち1人当たりGNIのこと。この値が高いと経済の中心となり銀行が集まり、低いと(安価な労働力が得られるため)労働集約型の工業が発達します。なるほど、経済レベルの高いトロントが「金融・保険業」、経済レベルの低いモントリオールが、労働集約型工業の中でもとくに経済レベルの低い地域に立地する「繊維」工業であるのは非常に納得するのです。正解は③となります。

 

なお、2004年に極めて類似した問題が出題されていましたので、参考にしてください。

 

[参考2]次の図3中のW〜Zは、カナダにおける主要な4都市を示したものであり、ウィニペグ、オタワ、カルガリー、トロントのいずれかである。都市W〜Zについて述べた文として適当でないものを、下の①〜④のうちから一つ選べ。

 

① 都市Wは、新規造山帯に属する山脈の東麓に位置し、石油や天然ガスの主要な産出地になっている。

② 都市Xは、春小麦地帯の東端に位置し、小麦の集散地や鉄道交通の要衝となっている。

③ 都市Yは、カナダのフランス語圏における最大の都市であり、この国における経済活動の中心となっている。

④ 都市Zは、ケベック州とオンタリオ州との境界付近に位置しており、カナダにおける政治の中心となっている。

 

 

正解は③です。これはトロントなのですが、「フランス語圏」が誤りで「英語圏」が正しいです。人口規模が大きいこともぜひチェックしておいて欲しいのですが、やはり注目は「経済活動の中心」という言葉でしょう。先の問題では「金融・保険業」となっていますが、まさにこれこそが「経済活動」に該当します。アメリカ合衆国から工場が進出し、経済レベルが上昇した都市として、五大湖に面したトロントをぜひ知っておいてください。

①、②、④はみな正文なので、こちらも読み込んでおいてくださいね。①はカルガリーですが、エドモントンと同様に鉱産資源の産出が盛んな都市です。②がウィニペグで、春小麦地帯の東端に位置し、小麦の集散地として発展しています。なお、北アメリカ大陸の中央部に位置し、典型的な大陸性気候がみられる都市でもあり、「最暖月平均気温20℃、最寒月平均気温マイナス20℃」、「年間降水量500ミリ、とくに冬季は高気圧の影響でほとんど降水がみられない」といった気候の特徴を知っておくといいでしょう。

④はオタワです。そもそもはビーバーの皮取引で栄えた小さな町だったのですが、たまたま西側の英語圏と東側のフランス語圏の境界に位置していたため首都となってしまった都市です。(計画的に建設された都市ではありませんが)人口規模の小さい政治都市として知っておきましょう。