2005年度地理B追試験[第1問]解説
2005年地理B追試験[第1問]
問1 [講評]非常にオーソドックスな気候判定問題。
[解法]南アジア西部は乾燥気候がみられる。このことから最も降水量が少ないアをカンダハルと判定する。
イとウについては降水量では判定しにくく、気温で考える。デリーは図1を参照すると、平坦な地形に位置し、標高による気温の低減などは考えられないのではないかな。それに対しチョンツーは周囲を山に囲まれた盆地中央に位置し、やや標高が高いと見られる。このことから、全体の気温が高いイをデリー、高原の分だけやや気温が低いウをチョンツーとする。
さらにここから。チョンツーだけ気温が低いというのも納得できないかもしれない。そもそも中国内陸部(おっと、この図1からは判断しにくいけれど、実はチョンツーは中国の都市なのだ)って夏なんか気温がかなり上がりそうなんだが。でもちょっと待ってくれ。ウのグラフでも夏の気温(っていうか最暖月平均気温だけどね、正確には)は25℃に達し、これはお世辞にも涼しい気候なんていえないぞ。いや、暑いぐらいだ。日本の標準的な気候を考えてくれ。東京で最暖月平均気温が25℃をやや上回る程度であることと比べたら、まさにチョンツーは日本と同じような気温というわけで、これはむしろ「暑い」というべきものだろう。
っていうか、要するに、最暖月平均気温が30℃を超えてしまうっていうのはかなり異常な状態なわけで、「チョンツーが涼しい」のではなく「デリーやカンダハルが暑すぎる」っていうことなのだと解釈してほしいのだ。ま、こんな風に気候については常に日本と対照させることによってイメージすることを忘れないでね。
問2 [講評]過去問そのまんまじゃないですかっ!
[解法]「南アジアに火山は存在しない」というセオリーがある。火山の位置というのはセンター試験においてはしばしば出題されるネタではあるのだが、その中でも最大のポイントとなっているのは南アジア。インド半島はもともと安定陸塊であり火山は存在しにくいのだが、一般的に火山が多く形成されると思われている新期造山帯であっても、南アジアのヒマラヤ山脈やチベット高原というのは褶曲山脈(大地がグニャっと押しつぶされ盛り上がることにより形成された山脈)であり、火山はみられない。世界最高峰のエベレストはじめ多くの高峻な山岳が位置し、世界の屋根とも呼ばれる地域ではあるが、意外にも火山は存在しないのだ。
で、先にも述べたようにこのネタを応用した問題はいくつもあるのだが、本問もその典型。③がそのまんま誤り。簡単ですな~。
ちなみに他の選択肢についても。
①「急峻な山脈」は確かに多い。新期造山帯であり、標高は4000メートルをはるかに超えている山々が連続する。「侵食」についてはあまり深く考えなくていいよ。そもそも標高が高い分だけ、河川の流れも急になるわけで、その流れによってさかんに侵食されるのは当然のこと。
②プレートの境界部に位置し(地学に詳しい人は知ってるよね。インドオーストラリアプレートが北上し、ユーラシアプレートにぶつかっているのだ。狭まる境界というやつ)、変動帯となっている。地殻の変動が激しく、地震も頻発。これは新期造山帯の特徴の一つでもある。
④U字谷、カールともに氷河による侵食地形。南アジアは大陸氷河とは関係ないが、高山であるため山岳氷河が発達し、これによってさまざまな地形が形成されている。カールの具体例は、02B本第1問問3図4のP付近、03B本第1問問1図1のB付近など。山岳氷河については、03B本第1問問4など。氷河に関する問題は実はかなり多いので、決して出題頻度の高いジャンルではない「小地形」ではあるが、氷河が形成した小地形であるこれらのU字谷やカールについてはチェックしておくべきだろう。
問3 [講評]来ましたね~ホイットルセー農業区分。センター試験では本当によく出るネタだよね。ただしこの問題は難しいので無理に解く必要はない。
[解法]①焼畑農業は熱帯雨林地域で行われる。A付近は緯度的に考えて熱帯ということはないだろう。ヤクもチベット高原やヒマラヤ山脈特有のもの。
③針葉樹林は冷帯気候下に広く分布しているが、C付近はどうだろうか。高山であり、樹木の生育はみられないのではないか。また馬もどうだろう?チベットで主に遊牧されている家畜はヤクである。第1問問5選択肢④でもヤクが取り上げられている。
④D付近で主に栽培されているのは茶。アッサム地方は季節風の風上斜面であるため非常に降水量が多く、排水の良い丘陵斜面を利用して茶がさかんに栽培され、輸出もされている。第1問問5選択肢③参照。
以上より消去法で②を正解とする。乾燥地域であるので、「灌漑」「オアシス農業」は適当。小麦もこういった地域では灌漑によって栽培されることが多い作物(そもそも原産地はイランなのだ)。ブドウが不審かもしれないが、これも少雨気候に適応した作物であり、こういった内陸部の乾燥地域で栽培されていたとしてもおかしくはないだろう(生産量はさほど多くないかもしれないが)。
問4 [講評]季節風の風向に関する問題は多いが、このように文章正誤問題で出題されることは少ないので注意。ちょっと文章をしっかり読み込まないと解けないかもね。
正解は②。インドシナ半島とはどこのことだろうか。これがわかれば簡単とは思うがどうかな。ベトナムやタイ、ミャンマーが含まれる半島がインドシナ半島であるが、たしかに1月は北東から風が吹いているようだ。ただしちょっと考えてほしい。果たして「多雪」は正しいだろうか。東南アジアは全体的に熱帯気候であり、特別な場合を除けば雪が降るようなところではない。いくら冬とはいえ「多雪」となるとは考えられない。
他の選択肢についてはとくにチェックする必要はないが、一応コメントを。
①これは問題ないでしょう。風上斜面側の南斜面で多雨となり、反対側は少雨である。
③「雨季の終わるころ」かは不明だが、インド洋に発生する熱帯低気圧は「サイクロン」であり、とくに不適切な文ではないだろう。
④「モンスーンの交代期」が具体的にいつかはわからないが、初夏に梅雨となるのは確かな話。またそれに続く7月や8月の日本は「多湿な夏」であり、ここも間違いではない。
問5 [講評]以前にもこういったヒマラヤ地域の生活の近代化に関する問題は出題された。ただし本問は農産物の栽培限界が大きなキーワードとなっている。
[解法]①伝統的な生活形態を維持している地域に、「金」が入り込むことによって彼らのそれまでの生活様式が大きく変化することがある。経済的な効果はあるが、環境問題なども当然生じるだろう。
②米は温暖で湿潤な気候環境下でのみ生育可能なもの。「常住限界」ギリギリの地域で栽培できることはないだろう。そういったところに対応できるものは、大麦やエン麦、そしてバレイショなど。
③「トウモロコシ」は新大陸では商業的に栽培されているが、そもそも自給的な農業形態を特徴とするアジアにおいては自給作物として栽培されている。ここには「茶」が入る。ヒマラヤ山脈の南麓は雨量の多い地域であり、世界的な茶の産地となっている(茶の生産量はインドが世界1位)。
④ヤクは標高の高い地域で遊牧されている家畜。「高地ではヤク」と改めるべき。低地においては、湿潤な地域では水牛など、乾燥気候下においてはラクダや羊など。
問6 [講評]河川に関する問題はこのように固有名詞で問われることが多く要注意。インダス川は初出だが、外来河川であり、当然出題が予想されていた。ガンジス川やメコン川はこれまでは名称だけが登場していたが、重要な河川であり、こちらも意外性のある出題ではない。
[解法]キに注目。「乾燥地域」「灌漑」などのキーワードがある。外来河川であるインダス川が該当。パキスタンを流れ(この国は乾燥国である)、古代文明インダス川の成立を支えた。
さらにクに注目。「ジュート」という農作物名が登場している。これはインド東部やバングラデシュでの生産が多いもので、このことからクをガンジス川と判断する。ガンジス川のデルタで栽培される作物で、穀物を入れる袋などに利用される。
残ったカがメコン川。多くの国を流れる国際河川で、一部が国境ともなっている点だけは知っておこう(ちなみにこのメコン川のデルタに位置する都市がホーチミンで、第4問問5で登場している)。
問7 [講評]まさかブータンが登場するなんて!?どんなイメージがある?
[解法]土地利用割合を問う問題はしばしば出題されるのだが、森林面積割合がポイントになるのは結構珍しいかな。
まずXから。60%を超えるというのはかなり高い割合。日本や北欧の国々など世界でもっとも森林割合の高い国のグループである。このような特殊な国はどこだろうか。ヒマラヤ山中に位置し、自然環境が保全されているブータンであると考える。
Yは極端に割合を低下させている。このようなケースは熱帯林を持つ国ではしばしば見られるものだが、とくに東南アジアの事例を考えたい。輸出用木材の過剰な伐採によって多くの森林が失われた国としてはフィリピンやインドネシア、マレーシアなどがあり、位置的に近いタイでも似たような事態が生じているとみておかしくないだろう。ゆえにYをタイとする。
残ったZがインド。インドは農業がさかんな国で(さらに人口密度も高く)耕地の割合が高いと思われ、さらに西部には広く乾燥地域が分布し、その分だけ森林の割合は限られるだろう。20%程度とみてとくに矛盾はしない。
なお、第4問問2でも熱帯林の減少に関する問題が取り上げられているが、それだけ森林というのはセンターで最も重要視されるジャンルの一つであるの