2013年度地理B追試験[第2問]解説

<2013年度 地理B 追試験 第2問>

 

[7] [インプレッション]また油ヤシ!?本当に徹底的に出題されてるよね。最重要!

[解法]①は重要!資本主義化する世界経済の中で企業経営は「国有→民営」のベクトルにあるのだが(郵政民営化とかね)、プランテーションは例外。最初は欧米の資本家が植民地や保護国に開いたものが、独立や革命によって「国有化」される。また国有とまではいかなくとも、現地資本による経営となり(たとえばマレーシアのプランテーションは、イギリス人の手からマレー人の手に渡った)、彼らは資本力が弱いため、農園の規模はやや小さくなる。①は正文。

②は問題ないわね。インドやスリランカは旧イギリス植民地であり、イギリス人によってプランテーションが開かれた。プランテーション農業は商業的な農業形態であり、商品作物が単一栽培される。

ポイントは③やね。やっぱりパーム油が重要となっている。パーム油すなわち油ヤシの栽培条件は高温「多雨」。高温「乾燥」のナツメヤシを区別しなければいけない。イランやパキスタンは乾燥国であり、油ヤシの栽培国とはならない。これが誤り!

以下に3種類のヤシについてまとめたので確認しておこう。食料であるナツメヤシと、燃料となるパーム油の違い。

 

 

ナツメヤシ

油ヤシ(パーム油)

ココヤシ(コプラ)

栽培条件

乾燥

湿潤

農業区分

オアシス農業

プランテーション農業

自給or商業

自給的(食料)

商業的(油脂)

主要生産国

イラン・サウジアラビア

インドネシア・マレーシア

フィリピン

栽培地域

砂漠。外来河川や地下水路による灌漑。

熱帯の低地。

熱帯の沿岸部

 

④は確認の必要はない。パイナップルはたまに登場するが、とくにポイントとはならない。

[ひとこと]バイオマス(生物エネルギー)として世界的に注目を浴びているパーム油.その原料である油ヤシの生産が現在異常に増加しているという事実を、日本人だけが知らない。なぜ日本はそこまでバイオマスを無視するのだ?メタンハイドレートなんてやめとけよ。本当に日本のエネルギー政策は意味がわからないの。

 

[8] [インプレッション]ホイットルセー農業区分の問題として捉えたらいいんじゃないかな。

[解法]アンデス高原の農業区分は「遊牧」。リャマやアルパカが高地で遊牧されている。遊牧ということは自然に生えている草を食べて生育しているのであり、人為的にトウモロコシが飼料として与えられることはないだろう。また遊牧は伝統的な農業(牧業)形態であり、「機械化」されているとはちょっと考えにくい。④が誤文で正解。

[ひとこと]やっぱホイットルセーだね。

 

[9] [インプレッション]日本地理の問題は難しいね。中学までの学習が重要ってことだね。

[解法]消去法でいくしかないんじゃないかな。わかりやすいのは②。沖縄にこんなに集中している統計データもめずらしい。これ、サトウキビを主原料とする砂糖でしょ。サトウキビは切断した断面から糖分を含んだ液がこぼれ落ちるので輸送に適さず、収獲地の近くで製糖業が立地しやすい。北海道はテンサイ(ビート)かな。

残った3つが本当に難しい。いや、ここで消去法を放棄しよう。配合飼料を一発で当てよう。注釈にあるように配合飼料とは「トウモロコシなど」のこと。わが国ではトウモロコシの自給率はほぼ0%であり、海外(とくにアメリカ合衆国)からの輸入に依存している。主な家畜には牛、羊、豚があるが、とくに飼料が重要となるのは豚。牛や羊は牧草で生育する(もっとも、日本にはほとんど羊はいないが)。外国からトウモロコシを輸入し、そこで配合飼料に加工し、豚に食べさせる。このことを考えると、豚の飼育に特徴がある地域でこそ配合飼料に生産は盛んなはずで、自動的に鹿児島県がクローズアップされるはず。なるほど、①・③・④の中で九州南部に点が分布するものはたった一つしかない。③が正解となる。北海道東部の酪農地域にも点が分布し、こちらは牛の飼育に配合飼料が使用されているのだろう。①と④は不問。

[ひとこと]日本地理はやっておこうね。

 

[10] [インプレッション]液体バイオ燃料に関する問題。これ、実はおもしろい傾向なんだが、[8]の油ヤシしかり、本問しかり、バイオマスに関する問題ってことごとく追試に回されているのだ。ここ数年バイオマスの出題は増えているのだが、全て追試で本試には全く登場していない。なんやろう?何らかの圧力がかかっているのだろうか?受験者数の少ない追試でしかバイオマスは話題にできないのか?

[解法]2010年代はブラジルの時代。ブラジルはバイオマス先進国である。サトウキビから採取したバイオエタノールは、ガソリンの代用品として実用化されており、すでにブラジルではガソリンを使わないバイオマス車が一般に普及している。日本人の思う以上に世界のバイオマスは進んでいるのだ。今すぐトヨタでもニッサンでもブラジルに頭を下げてバイオマス技術を学んで来ないと。

さらにブラジルは電力のほとんどを水力によって得ているという、こちらもエコ大国である。オイルショックによって日本は原子力発電を未来のエネルギー源として位置づけ開発を進めたのに対し、ブラジルは火力発電から水力発電へと大きくシフトした。現在国内電力のほとんど全ては水力発電によるものである。またもともと石炭の産出量が少ないことなどから、相対的に化石燃料の使用は少ない国でもある。「1人当たり1次エネルギー供給量」に注目。「供給」とは消費と同じ意味。一次エネルギーとは主に石炭や石油、天然ガスなど化石燃料のことであり、工業化が進んだ先進国でこの値が高くなる。とくに世界最大の無駄遣い国であるアメリカ合衆国の値は、極端に高い。「7.47」の①をアメリカ合衆国とし、それに次いで高い③と④を先進国のドイツ、フランス。残った②をブラジルと考える。ブラジルは4か国中最も1人当たりGNIが低く、1人当たり1次エネルギー供給量も最低と考えて妥当だろう。さらに前述のように、ブラジルは世界でも特徴的なエコ大国である。石炭や石油の消費は人口規模に比して少ないはず。

さらに②をブラジルと考えると「液体バイオ燃料の生産量」がアメリカ合衆国と並んで多いことも納得できる。アメリカ合衆国が「30339」、ブラジルが「21376」であるが、人口規模(アメリカ合衆国が3億、ブラジルが2億)、1人当たりGNI(アメリカ合衆国が45000ドル、ブラジルが10000ドル)、さらにそれらの積であるGNI(アメリカ合衆国:ブラジル=7:1)という国の大きさの違いを考えれば、むしろブラジルこそ世界最大のバイオマス国といえるのではないだろうか。ちなみに、アメリカ合衆国のバイオマス原料はトウモロコシだが、結局トウモロコシの栽培に大量の石油を使っているため(機械化や化学肥料など)バイオエタノールを採取したところで、実は効率はすごく悪いのだそうだ。それに対しブラジルのサトウキビはあまり手間をかけずに栽培しているため、本当の意味での石油の節約につながっているのだそうだ。ブラジルに学ぶことは多い。

[ひとこと]それにしても、ブラジルがここまではっきりと出題されていることに今さらながら驚かされるよね。エコ大国ブラジルを意識するのだ!

 

[11][インプレッション]うわっ、ベタな問題。輸出加工区の意味が問われたのは初めてだな。しかし、よく読んでみると深い読解力が必要な良問となっている。つくづくあらどれないと思うよ、センター試験は。

[解法]輸出加工区とは。発展途上国に設けられた政府指定の工業地域(都市)であり、税制の優遇措置などによって外国企業の進出が盛んとなっている。発展途上国の安価な労働力を目的とした労働集約型の工場(機械組立や繊維)の進出が顕著であり、日本や欧米の企業がこぞって中国などに生産拠点を移動している。工業製品は原則として輸出(つまり日本や欧米に送り返す)が前提として生産されており、発展途上国の国内市場を荒らすものではない。

①は「原材料」が誤り。先進国から機械部品が送られ、輸出加工区で組み立てられ、製品が送り返される。原材料が重要となる鉄鋼業や石油化学工業は資本集約型工業といい、こちらは先進国にとどまる。

②は「自国産の農産物」が誤り。食品加工業ではない。

④は「内陸部」が誤り。輸出入に適した臨海部。また豊富な労働力を得るため、「農村」ではなく都市となる。

よって③が正解。

[ひとこと]これ、すごく好きな問題!言葉の使い方に注意。

 

[12][インプレッション]これ、難問だなぁ。できるかな。海外直接投資に関する問題は多く出題されているんだが、原則論だけで解いてしまっていいだろうか。

[解法]直接投資については単純に「工場進出」と考えてしまっていい。例えば日本から中国への直接投資は非常に多い。たくさんの工場が進出しているよね。逆に日本へは外国からの直接投資は少ない。賃金水準の高い日本に進出する外国企業は少ないでしょ?

大原則として、「直接投資は1人当たりGNIが高い国から低い国へ」、「1人当たりGNIが高い国ほど対内直接投資は少なく、対外直接投資は多い。1人当たりGNIが低い国ほど対内直接投資は多く、対外直接投資は少ない」となる。本問は「海外直接投資の」流入」の問題であるので、この3カ国の対内直接投資が問われていることになる。1人当たりGNIと対内直接投資の関係を考えながら解いてみよう。

ただ、ここで一つポイントになる事項がある。それがベトナムの特殊性である。ベトナムは社会主義国であり、長い間海外からの投資は行われていなかった。しかしドイモイ(刷新)政策によって市場経済化を推し進め、外国からの投資を積極的に受け入れるようになった。これにより2000年代以降とくに日本などからの工場進出が急増している。1990年まで海外直接投資の流入(すなわち対内直接投資)がほとんどゼロであったクがベトナムとなる。とくに2000年代後半以降急激に伸びているのもいかにもベトナムである。

カとキについては素直に考えたらいいと思うよ。1人当たりGNIが高いシンガポールに工場を進出させる企業は少ないので、海外直接投資の流入額が小さいキがシンガポール。

1人当たりGNIが低いタイにはより多くの外国企業が生産拠点を移し、カに該当。もちろん政治的混乱や経済の動向、あるいは病気の流行などが原因となり年度ごとの投資額の変化は大きいが、大まかな値で捉えれば十分。

[ひとこと]日系企業数世界3位のタイってやっぱ鉄板なんやなぁ。それからベトナムの特殊性も重要やね。

 

スイマセン(涙)。後で解答を確認したら正解は①でした!ってことは、ベトナムがクは合っていたとして、カとキが反対だったってわけか。カがシンガポール、キがタイ。うわ〜、お手上げです。タイの場合、実は1997年7月に発生したバーツ・ショックが非常に重要なキーワードになる国でもあるのです。バーツはタイの通貨であり、この時期、タイの通貨が大暴落し、国内経済が大混乱になるだけでなく、東南アジア全体にその経済危機は広がっていったのです(アジア通貨危機)。ほら、カって、1998年の値が急激に落ち込んでいるでしょ?これこそバーツ・ショックの影響であると思っていたんだがなぁ、それも違うのか。むしろ、キがタイということなら、1998年の値は上昇しているのだが、この意味がわからない。

一応、後付けで解説を試みるならば、この問題のポイントは過去にあるんだろうね。最も最初の段階(1980年以前)から投資がなされていたカがシンガポール、1980年代後半からのタイ、そして1990年代以降のベトナムと、時代を追うにつれ、東南アジアで投資が進んで行った様子を観察するしかないかな。それでもやっぱりよくわからないのですが。

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