2007年度地理B本試験[第1問]解説

2007年度地理B本試験[第1問]

 

2007年度地理B本試験[第1問]問1

 

[講評]大地形に関する問題。かつてはこのジャンルからの出題はほとんどなかったのだが、近年は1問ぐらいずつ取り上げられるようになってきた。比較的「ベタ」なオーソドックスな問題が例年出題されており、今回の傾向もそれにならったもの。安定陸塊、古期造山帯、新期造山帯の区分を明確に。

 

[解法]消去法というわけではなく、単純に「正文」ということで④を選択する。新期造山帯の形成されたのは数千万年前という新しい時期。「中生代後期以降」とは具体的にどの時代のことを指しているかを知る必要はないが、何となく「新しい」感じがするでしょ?また「大山脈」「弧状列島」もやはり新期造山帯のキーワードと考えていい。大山脈の例としてはヒマラヤ山脈やアンデス山脈があり、弧状列島とは弓なりの形をした一つながりの島のことをいうのだが、日本列島がその典型例。

 

他の選択肢についてはとくに検討する必要はないと思うが参考までにコメントを。

実は選択肢①~③に含まれている「楯状地」「卓状地」「構造平野」という言葉は今までほとんどセンターに登場しなかった言葉。今回が初の出現であり、ちょっとビックリしているのだが、だからといってこれらの言葉を重要視する必要もそんなにないんじゃないかな。外れ選択肢として登場しているだけだし、これらについて絶対知っておけっていうわけじゃないよね。

というわけで、ここからの説明については興味ある人だけ読んでください。

卓状地、楯状地、構造平野はいずれも「安定陸塊」。6億年以上の古い時代に造陸運動を受け形成されたもの。

卓状地の代表例としてアンガラランドやゴンドワナランドがある。かつて地球上には古大陸パンゲアが存在し、それが分裂してアンガラランドとゴンドワナランドになった。アンガラランドは北へ移動し、現在のシベリア中央高原を形成している。一方、南に移動したゴンドワナランドはさらに分裂し、南アメリカ大陸、アフリカ大陸、アラビア半島、インド半島、オーストラリア大陸、南極大陸などの主要部分となっている。これらは全体として台地状の地形をしており、とくにアフリカ大陸などは「高原大陸」ともよばれている(第4問問1参照)。

楯状地とは6億年以上前に形成された岩盤が露出した表面にやや凹凸のある平原地形であり、バルト楯状地とカナダ楯状地が主なもの。バルト楯状地はバルト海の周囲のスウェーデンやフィンランド、カナダ楯状地はカナダ東部のハドソン湾を中心としたラブラドル半島など。

構造平野は楯状地とは異なり、古い時代に形成された岩盤の上に地層が堆積し、それが長い年月の間に侵食され、ほぼ水平で平坦な大平原となったもの。北ドイツからロシア西部にかけてのヨーロッパ平原や、北アメリカ中央平原などがこれに該当する。

 

卓状地については「アフリカ大陸=ゴンドワナランド=卓状地=安定陸塊」だけ知っておけばいいだろう。

楯状地は共通一次の時代にさかのぼってもほとんど出題例がないので、安定陸塊であることだけ知っておけばいい。

構造平野も同様に安定陸塊であることが重要。

またいずれの地形も、新期造山帯である日本には存在しない。過去に日本のある地方を示す地形図問題で「構造平野」か否かを判定させる問題があった。日本である限り、これが構造平野の可能性はない。もちろん「非」である。

 

[関連問題]新期造山帯に関する問題を近年の過去問の中から紹介しよう。

06B本第3問問1参照。プレートテクトニクス関する問題。新期造山帯の多くは、Bで示されているプレートの狭まる境界に沿っている。

06B本第3問問2参照。ユーラシア大陸南部に沿って新期造山帯のアルプスヒマラヤ造山帯が横断している。断面図④に注目。北部のシベリアは安定陸塊なので平坦な地形となっているが、南部のチベット高原を中心とした地域は標高が6000m以上にも達するような大山脈となっている。

06B本第1問問4参照。全体として安定陸塊となっているアフリカ大陸であるが、北西部には新期造山帯の大山脈、南東部には古期造山帯の丘陵がみられる。Qで示されている地域は新期造山帯の大山脈であるアトラス山脈が海岸に沿って走っている。

05B本第1問問1参照。Cが新期造山帯。大きく、アルプスヒマラヤ造山帯と環太平洋造山帯の2つの系統があることを理解しよう。

04B本第1問問5参照。選択肢①参照。アフリカ大陸は主に安定陸塊だが、一部に新期造山帯もみられる。ただしそれは「南部」だろうか。選択肢②参照。オーストラリア大陸の東部には山脈が走る。これは「新期造山帯」か。選択肢③参照。南アメリカ大陸の地体構造。ブラジルなど東部はかつてゴンドワナランドの一部だった「安定陸塊」。太平洋岸はアンデス山脈など環太平洋造山帯に属する「新期造山帯」の山脈。選択肢④参照。ニュージーランドの地形は日本と類似している。高峻な山脈や、地熱発電も行われている火山など。

03B追第3問問3参照。ヨーロッパは「北で古期造山帯、南で新期造山帯」。

01B追第1問問1選択肢1参照。ロシアのような広大な国だから、「安定陸塊」も「古期造山帯」も新期造山帯による「火山」や「地震」もあって当然。

00B本第2問問4参照。選択肢①は安定陸塊の説明。ゴンドワナランドはかつて地球上に存在した古大陸。選択肢③は新期造山帯の説明。ユーラシア大陸を貫くアルプスヒマラヤ造山帯、太平洋沿岸地域の環太平洋造山帯。

 

[今後の学習]大地形に関しては深い知識は要らない。ベーシックな知識のみ知っておくべき。

まず「安定陸塊」「古期造山帯」「新期造山帯」という言葉を頭に入れよう。古い方から、安定陸塊→古期造山帯→新期造山帯の順。簡単に説明しておくが、少なくとも「 」の中の言葉をキーワードとしてチェックしておく。

安定陸塊とは、6億年以上前の先カンブリア代の造陸運動によって誕生した陸地のことで、現在は主に平坦な地形となっている。「卓状地」「楯状地」「構造平野」は全て安定陸塊。

古期造山帯とは、2~3億年前の古生代の造山運動によって誕生した山地とその周辺の地形を含み、その山地は現在は長期に渡る侵食によって丘陵状になっている。ヨーロッパ北半部の山脈やアフリカ大陸南東端の山脈など。また石炭紀の地層を含むことでとくに「石炭」資源の豊富な地域も多い。米国東部のアパラチア山脈やオーストラリア東岸に沿うグレートディバイディング山脈などをその代表例として押さえておこう。

新期造山帯とは、1億年より手前の中生代後期から新生代にかけての時期の造山運動によって誕生した山地とその周辺の地形。険しい大山脈となっていることが多く、現在でも不安定な地体構造であるため「地震」も頻発する。新期造山帯は大きく「アルプスヒマラヤ造山帯」と「環太平洋造山帯」の2つの系統に分けられ、ヨーロッパ南半分の山脈や南アジア北部の山脈は前者の系統に、日本列島や北米・南米の太平洋岸に沿う山脈は後者の系統に含まれる。またとくに環太平洋造山帯に沿う一帯には「海溝」も多くみられ、「火山」も多い。

 

2007年度地理B本試験[第1問]問2

 

[講評]問1に続いて大地形に関する問題だが、こちらはプレートテクトニクス。このネタの出題は昨年から連続。難しくはないね。

 

[解法]プレートテクトニクス理論について君たちに求められている知識は、3つの境界を区別すること。広がる境界、狭まる境界、ずれる境界がある。

広がる境界・・・地下のマントルで新しいプレートが形成され、地球の表面に押し出されるところ。広がる境界が海にあると、海嶺という巨大な2列の海底山脈がみられる。アイスランド島に沿う大西洋中央海嶺が代表例。

狭まる境界・・・プレート同士がぶつかるところ。大陸プレートの下に海洋プレートがもぐり込む一帯には海溝が形成され、太平洋の外縁などによくみられる。こういった付近には火山も多い。大陸プレート同士がぶつかる境界には巨大な褶曲山脈がみられる。お互いのプレートが持ち上げられるのだ。

ずれる境界・・・横にずれる断層。米国カリフォルニア州のものが有名。

 

以上のことを頭に入れてア~ウの文を検討していこう。

ア参照。「狭まるプレート境界に沿う活断層」とある。狭まるプレートに沿うのは海溝である。海溝も活断層の一種と考えることは十分可能であり、もちろん震源ともなる。ただしこれだけでは判定が難しい。保留。

イ参照。「ずれるプレート」とある。米国の太平洋岸を考える。というかそもそも「サンアンドレアス断層」っていうのがアメリカっぽいよね、英語だし(もっとも、アのフィリピンも英語の国だけど・笑)。

 

[関連問題]プレートテクトニクスを中心とした地球の内的営力(地震や火山活動)に関する問題。関連問題も多い。

06B本第3問問1参照。プレートテクトニクスそのままの問題。ただしここでは米国太平洋岸のサンアンドレアス断層が描かれていないが。「ずれる境界」として自分で書き加えておくといいだろう。ウの「狭まる境界」「海嶺」に注目。フィリピン近海はこれに該当。

05B本第1問問1参照。海嶺の位置が示されている。

05B本第4問問2参照。フィリピンからインドネシア地域が取り上げられ、「火山災害」「地震災害」の記述がある。

 

アイスランドは重要なので過去問でチェックしておこう。

02B本第1問問1選択肢①参照。「プレート境界」とはもちろん広がる境界のこと。ここから噴出した溶岩が陸地となったのがアイスランド島。「火山」の記述もあるが、どちらかといえば溶岩台地であり、強い勢いで噴火するものではない。

02B本第1問問5参照。チの記述に注意。「地熱発電」は火山の分布と対応する。

 

アンアンドレアス断層については初出。

 

[今後の学習]本当にベタな問題だと思う。個人的には「火山」に記述がなかったのが意外かな。普通ならこの手の問題は火山の有無がポイントになるんだが。

ベタすぎてセンターっぽくないような気もするが、しかし昨年の問題とリンクしている点は見逃せない。

 

2007年度地理B本試験[第1問]問3

 

[講評]やっぱり出てきた、コロラド川!この川が乾燥地域を流れる外来河川であることが分かれば簡単に解けると思う。後は雪解けに注目するだけだからね。

 

[解法]米国は「東側で多雨、西側で少雨」の国。年降水量500mmの等降水量線が国土中央を縦断し、これより東側では湿潤な気候、西側では主に乾燥気候がみられる。この500mmの等値線と西経100度の経線が一致していることや、この一帯が企業的穀物農業地域(小麦の専業的な栽培地域)となっていることは知っているだろう。

Mの河川は米国の乾燥地域を流れていることになる。河川流量は年間を通じて少ないだろう。クが該当。なおこの河川はコロラド川で、代表的な外来河川としてセンター試験でもしばしば登場している(外来河川とは乾燥地域を流れる川のこと)。グランドキャニオンを刻み、ダムが建設され開発も進む。

残ったカとキについてはやはりカがおもしろい。12月から4月ぐらいまでは流量は極めて少ないのだが、5月6月に一気に増水する。このようなパターンは寒冷地域の河川に多くみられるもの。冬季は凍結するため流量が極小となる。しかし春(というかこういった高緯度地域の春は遅いので初夏と言ったほうが適切かもしれないが)になり融雪期を迎えると、凍結していた河川水は解け出し、一気に増水する。この時期にとくに洪水が多いのも寒冷地の特徴である。グラフの形に注目し、カがユーコン川となる。

大きな特徴があるわけではないキはミシシッピ川。

とにかく「外来河川」と「寒冷地における融雪」のみ頭に叩き込んでおく!

 

[関連問題]河川流量に関する問題は多い。

99B追第1問問1参照。降水量も示されているが、河川流量を表す折れ線グラフの方に注目しよう。④がレナ川である。寒冷地域であるため、1月から5月までは凍結しているため流量は極めて小さい。しかし融雪期である春(っていうか初夏か)に一気に増水する。シベリアに大洪水が起きるのはこの時期。コロラド川も取り上げられている。

03B本第1問問6参照。Y川(オビ川)は寒冷地域を流れる河川であるため、冬季は凍結するため流量は極小となるが、融雪期には一気に増水する。選択肢②が該当。なお、このように寒冷地域を低緯度から高緯度に向かって流れる河川は、下流部はまだ凍結しているにも関わらず上流部のみ融解するため、増水した流水が行き場所をなくし、大規模な洪水を引き起こすことがある。また、本問で取り上げられたミシシッピ川の流量グラフはこちらでも登場している。

 

また代表的な外来河川であるコロラド川に関する出題も多いのでチェックしておこう。

99B追第1問問1参照。⑤がコロラド川である。砂漠を含む乾燥地域を流れる外来河川であり、流域の降水量は少ない。なお、流量は相対値であるため、この図だけ見るとあまり少ないように見えるが、おそらく年間を通じ平均的に少ないのだろう。

99B追第1問問4参照。コロラド川そのものが問われている。

01B追第3問問1参照。コロラド川が大地を刻む、グランドキャニオンの断面図。

01B追第3問問2参照。コロラド川の判別。外来河川なので「灌漑」は重要。灌漑とは乾燥地域において農地などに散水すること。雨水に頼れないのだから、こういった乾燥地域においては外来河川は「命の川」となる。

 

日本の豪雪地帯の河川流量図とも比較しよう。

04B追第1問問6参照。アのグラフに注目。これが日本の日本海側を流れる河川の流量図。ユーコン川と同様に春の融雪期に一気に流量が増加しているという共通項があるが、ただし日本の本州の河川は原則として凍結しないので、1月や2月の流量もそれなりにある。冬季に完全に凍結してしまうユーコン川のような河川とはこの部分が異なる。

このことは混乱しやすいので、必ず整理しておくこと。

シベリアやカナダの河川・・・1月から4月ぐらいまでは凍結しているので流量はほぼゼロ。春(というか初夏といった方がいいか)の5月や6月に一気に増水。

日本の日本海側の河川・・・1月から3月ぐらいまではやや少なめではあるが、流量はゼロではない。春(こちらは4月を目安にしていいだろう)に一気に増水。

 

[今後の学習]ある程度「常識」的な問題なんだけどね。でも意外に失点した者が多かった。外来河川(コロラド川)で流量が少ないことは容易に想像できるとしても、寒冷地域の河川で春から初夏において一気に増水することがイメージしにくく、さらにそれがグラフでどのように表されるのかわからない人が多かったのかもしれない。今回のグラフや、関連問題でも取り上げたが99B追第1問問1や03B本第1問問6のグラフを見て、流量変化が具体的にどの時期にどのように生じているのか、ビジュアル的に印象付けておくことが大事。

 

2007年度地理B本試験[第1問]問4

 

[講評]気候グラフ判定。ケッペンの気候区分が問われないという傾向は今年も変化なし。南アジアにおける季節風を意識したらいい。

 

[解法]東アジアから南アジアにかけての地域は季節風の影響が強い地域。いわゆる「モンスーン・アジア」である。インドにおける季節風の風向は、夏季には南西風、冬季には北東風。

インド洋からの湿った風が吹き込み、6月から9月の短い期間に集中して降水がある地域を考える。本図においてはQの地点がそれに該当。半島南西岸に沿って、北西から南東にかけて山脈が縦走している。夏季のモンスーンが吹き込み、地形性降雨が生じる。シがQである。

残った2つについてはシンプルに考えたらいい。大陸の内部で海からの水分が届きにくいPで降水量が少なく、スが該当。Rが残ったサ。こちらは降水量が多い。

 

[関連問題]季節風とインド半島南西岸における降水パターンに関する問題について。

05B追第1問問4参照。東アジアから南アジアにかけてのモンスーン(季節風)の風向変化。

05B追第1問問1参照。問題を解く際には季節風は意識しなくてもいいが、一応デリーのグラフを参照しておこう。インドは雨季と乾季の差が明瞭な国。

05A追第1問問5参照。東アジアの季節風がテーマとなっている。冬季にシベリアから吹き出す北西モンスーンの影響によって、日本海上空に雲が生じ、日本列島の日本海側に多量の降雪がもたらされる。

03B本第1問問6参照。Zの河川に注目(ブラマプトラ川である)。夏の南西モンスーンの影響によって6月から9月の間にとくに降水が集中する。流量グラフもこの4ヶ月間にとくに河川水が増えるものを選択する。

03B本第1問問1参照。南西モンスーンの影響がとくに強いのがインド半島の南西岸。図1でいえばムンバイが含まれる地域。海から湿った風が吹き込み、海岸線に並行に走る山脈に当たって地形性降雨を生じる。6月から9月の間のみに降水が集中する傾向が明らかであるCがムンバイのグラフ。

02B本第3問問2参照。南アジアの7月における風向は南西。

00B本第2問問3参照。南アジアの7月における風向は南西、1月は北東。

00B本第5問問1参照。問題を解く際には関係ないが、④のカトマンズに注目。ヒマラヤ山脈の南麓に位置するネパールは南西モンスーンの卓越する夏季にとくに降水量が大きくなる。なお、①はチベット高原のラサ。同じく南アジアに位置するが、ヒマラヤ山脈の北側なので湿った空気が届きにくく、降水量はネパールに比べて少ない。

99B追第1問問2参照。バングラデシュの問題。「南西モンスーン」という記述がある。

98B追第5問問7参照。スリランカの問題。「南西モンスーン」の影響。

 

[今後の学習]問題自体は簡単だったと思う。本問を踏まえて、今後の気候グラフ判定問題の傾向を探りたいと思う。下に過去4年間分の気候グラフ問題とその特徴を挙げてみた。参考にしてほしい。

 

07B本第6問問1参照。青森県の気候グラフ。緯度的には近似。日本海側(雪が多い)、太平洋沿岸(雪が少ない)、内陸部(気温年較差が大きい)の判定。

06B本第3問問3参照。カナダとシベリアの気候グラフ。ほぼ同緯度の3地点。シベリア高気圧の影響を受けるイルクーツクが重要。エドモントンとモントリオールについては、大陸性の前者と海洋性の後者。

05B本第1問問3参照。南米大陸における降水量変化。太平洋沿岸の降水分布(低緯度で乾燥、高緯度で湿潤)、アルゼンチン南部の乾燥(偏西風の風下斜面であるため)。

05B本第3問問3参照。ピョンヤン・ランチョウ・ホンコンの判定。低緯度に位置し温暖なホンコン、内陸部に位置し降水が少ないランチョウ。

05B追第1問問1参照。アジア南部の気候グラフ。ほぼ同緯度の3地点。南アジアは西部で乾燥(カンダハル)、インドは雨季乾季(デリー)、中国内陸部は高原である(図から読み取れる)ので気温が低い。

05B追第3問問1参照。ヨーロッパの降水量。風上斜面のノルウェーで多雨。地中海沿岸は夏季乾燥。

05B追第5問問1参照。東北地方の気候グラフ。ほぼ同緯度の3地点。日本海側(雪が多いので冬の日照時間が短い)、太平洋沿岸(雪が少ないので冬の日照時間が長い。夏季の気温が低いため、気温年較差が小さくなる)、内陸部(気温年較差が大きい)。

05A本第1問問3参照。ユーラシア大陸各地点の気候グラフ。ほぼ同緯度の3地点。西岸(リスボン)は気温年較差が小さい。内陸部(ウルムチ)は気温年較差が大きく、降水量が少ない。東岸(ウラジオストク)は気温年較差は両者の中間、降水量は季節風の影響などで多い。

04B本第1問問4参照。南極海周辺。ほぼ同緯度の3地点。アフリカ大陸南西端(ケープタウン)は夏季乾燥型の気候。アルゼンチン南部は少雨。オーストラリア南東部は日本と類似した気候。

04B本第5問問4参照。日本の各地点の気候。日本海側(山形県)で雪が多く、内陸部で高原の長野県でやや気温が低く降水量が少ない。

04B追第2問問2参照。南米大陸低緯度各地の気候グラフ。北半球と南半球を区別し、さらに特別な降水パターン(砂漠である)リマが分かれば、消去法でブラジリアを特定できる。

 

「赤道に近ければ暑く、極に近ければ寒い」「大陸内部で気温年較差が大きく、沿岸部で気温年較差が小さい」「風上斜面側で降水が多い地形性降雨を考える」など基本的な事項が理解できていれば、十分に解答可能な問題ばかり。気候は「常識」問題ばかりだから、得点源にしてね。

 

2007年度地理B本試験[第1問]問5

 

[講評]日本地理に関する問題。フォッサマグナなど目新しい言葉が登場。やはり中学の勉強を通じて日本地理をガッチリ固めておくことが必要か。

 

[解法]基本的には消去法で解く。

①「沖合いのプレート境界」は海溝だよね。問2とかぶる選択肢。

②「海溝に直交する向き」とある。海溝は北から南に東北地方沿岸を縦断しているのだが、これと「直交」なのだから東西に横断するということになる。東北地方の主な山脈の向きは、東西方向ではなく、南北方向である。また主に火山がみられるのも秋田県から山形県にかけての一帯なので、ここはむしろ「平行」と考えるべきだろう。

④「日本の東北地方では、冬に寒冷な季節風が吹くと、日本海側では雪害」までは正しい。しかし「冷害」が誤り。冷害は夏の季語(変な表現だけどこうやって頭に入れておいてくれ・笑)。冷害というのは植物の成長時期である夏季に十分に気温が上がらないことを言い、この影響で稲が生育不良なるなど農作物の収穫に大打撃を与えることもある。

以上、残った③が正解。とくに疑問点はないだろう。

 

ここでとりあえずフォッサマグナについて説明しておこう。

フォッサマグナとは「大地溝帯」と訳されるもの。地溝って分かるかな?「溝」のようにその一帯が周囲よりも一段低くなってしまっているところのことなんだが、日本列島の「腹」の部分にはこの大地溝帯がある。

よかったら地図帳で日本の中部地方を広げてください。

新潟県に糸魚川っていう地名があるよね。ここから姫川っていう名前の川に沿ってずっと南下していってください。やがて川はなくなるけれど、そのまま南に行くと諏訪湖がある。その諏訪湖の南西側を通って、赤石山脈っていう山脈があるからそちらの方にさらに南下して行き、静岡県の山梨県の県境に沿って移動していくと、最後には太平洋岸の静岡市に着く。どうかな?完全な直線っていうわけではないけれど、このラインに沿って「断層」があるような気がしないかな。断層っていうのはカッターナイフで切った線なんかをイメージするといいかもしれない。この断層が、そのフォッサマグナの西端に当たるのだ。つまりこの断層の東側は西側に比べて一段低い。たしかに東側には飛騨山脈や赤石山脈などの高峻な地形がみられ、西側には諏訪湖や富士川(笛吹川)などの低地地形がみられる。そしてその低地地形こそまさにフォッサマグナに沿うものなのだ。

では、西端というのだから東端だってあるはずだ。この地溝帯の東端の線はどこなのだろう?それが実は「不明」なのだ。比較的はっきりとした線(しかもほぼ直線に近い)として認識される西端に比べ、東端は明瞭ではない。浅間山(長野県と群馬県の県境)、八ヶ岳(長野県と山梨県の県境)、富士山(山梨県と静岡県の県境)などかつて活発な火山活動をしていた山々が並んでいるが、フォッサマグナの東端である断層がそれらの火山がもたらす火山灰や溶岩、そして複雑な地殻変動によって消えてしまったのだ。

フォッサマグナの出題は地理Bでは本問が初出。複雑な問われ方はされないと思うので、その位置だけ確認しておこう。本州の腰の部分を北から南に縦断する帯状の低地(地溝)なのだ。

 

[関連問題]非常に興味深い関連問題がある。かなり古いのだが、96本第2問を参照してほしい。東北地方の断面図が取り上げられている。

96本第2問問1参照。東北地方においてはCの地域すなわち秋田県から山形県にかけての一帯に火山が多く分布する。火山帯の位置はこのように、プレートの狭まる境界である海溝からやや大陸寄り(この場合はユーラシア大陸に寄った側)である。

96本第2問問2参照。海溝の位置が示され、その形成要因が問われている。

96本第2問問4参照。黒ボク土というのは岩手県の北上高地を覆っている土壌(北上高地の位置については図を参照)。奥羽山脈や出羽山地の火山が爆発した際に噴出された火山灰が上空の偏西風によって東方へと流され、積もったことによって形成された。

96本第2問問5参照。選択肢①について。地震の発生源として最も重要なものは海溝であるが、東北地方は火山も多く、各地で地震災害はみられる。選択肢②参照。津波は海底地震によるもので、海溝で発生した地震によって太平洋沿岸地域は世界で最も津波被害が大きいところの一つでもある。ただし津波は波動エネルギーであり、遠隔地や、大きく海域を回り込んだ反対側の陸地へも達することもある。太平洋側で発生した地震が原因で、津波被害が日本海側に及ぶことは珍しいことではない。

 

海溝について。

06B本第3問問1参照。Bは海洋プレートが大陸プレートの下にもぐり込む狭まる境界であり、海溝とほぼ一致している。

03B本第5問問2参照。海溝の位置について。

01B本第1問問1参照。東南アジアにおける海溝の位置。

 

冷害について。

05A本第2問問3選択肢③参照。「やませは、日本の東北地方の太平洋側で夏季に吹く冷涼湿潤な風であり、稲の生育に悪影響をもたらす」とある。

 

フォッサマグナについて。

01A追第2問問5参照。フォッサマグナが登場。中部地方を日本海岸から太平洋岸へと縦断する地溝帯である。ただしフォッサマグナが出題された例はこれ一回のみ。

 

[今後の学習]海溝や冷害といったセンター試験ではおなじみのキーワードが出題される一方、フォッサマグナのような新顔も登場している。フォッサマグナ自体は高校地理の教科書でも取り上げられる内容ではあるけれど、やっぱり日本地理のキーワードとして中学地理の学習の中でマスターしておいて欲しいところ。

 

またフォッサマグナと並んで、「糸魚川静岡構造線」と「中央構造線」という2つの断層も知っておくといいだろう。糸魚川静岡構造線は上でも説明しているが、新潟県糸魚川~飛騨山脈の東麓沿い~諏訪湖南西側~赤石山脈東麓沿い~静岡市までを貫く断層で、フォッサマグナの西端となっている。

中央構造線は日本列島の西半分を東西に縦断する断層。諏訪湖をスタートし、天竜川~知多半島~志摩半島~和歌山県紀ノ川~淡路島南岸~徳島県吉野川~愛媛県佐田岬半島~阿蘇山へと通じる。多くの半島や河川が直線状に連なっているが、まさにこの断層に沿った地形なのだ。

過去に出題例はないが、一応知っておいてもいいだろう。中学レベルの学習範囲であり、高校地理の教科書でも取り上げられている。

 

2007年度地理B本試験[第1問]問6

 

[講評]こういう問題って実は結構難しいんじゃない?正解できた人が多かったみたいだけど、講師の目からみると説明しにくいという意味で「難問」なんだよね。

 

[解法]「地盤沈下」は地下水のくみ上げすぎによって生じる。地震に関するキーワードではない。そもそも「地下水面の低下量」って地下水が減少することによって生じることで、地震と全く関係ないじゃないか。

 

[関連問題]「地盤沈下=地下水のくみ上げすぎ」であり「地盤沈下=地震」ではない。このようにスムーズに考えることって難しいと思うんだが、実は前年にそのままズバリの関連問題がある。

06B本第6問問3参照。全体的に本問との関連性が強い問題だが、注目は選択肢④。どう?そのまんまでしょ?「日本では、東京など、沖積平野にある大都市域で、工業用水として大量に地下水が用水された。その結果、地下水位が低下し、地盤沈下が生じた」という文章。沖積平野については単なる平野と考えていい。そのような地域で地下水が過剰にくみ上げられ、地下水が減少するとどのような現象が起きるか。「地下水位の低下」と「地盤沈下」がその正解。

この選択肢をしっかり解釈し、頭に焼き付けておけば、本問にも適応できたということ。

 

また、個人的な印象として何となく似たイメージがある問題として05B本第1問問7がある。こちらは「火山」の問題なんだけれど、解答を求める判断基準があいまいという点で重なる印象があるんだよなぁ。まぁあくまで主観的な意見なんで、そう感じるのは僕だけかもしれないから、無視していいけどね(笑)。

 

これ以外に、いわゆる「地図」の利用について問うた問題を挙げてみる。いずれも何だかはっきりしない「もやっと」問題ばかりなんだね(涙)。

05B本第5問問3参照。主題図とはあるデータだけ取り出し、地図の形式(必ずしも実際の地図ではなく、デフォルメしたりするだが)に整理して示したもの。どれが誤っているでしょう?

05B本第5問問7参照。GISっていうのは、一般の地図に特定のデータを組み込んだものなんだけど、答えはわかるかな。

04B本第5問問1参照。地図の問題ではないけれど、やっぱりちょっとあいまいだ。

04B追第5問問2参照。地形図の使用について問われている。

01B追第5問問3参照。GPSの問題。僕はよくわからないんですけど。。。

99B本第5問問5参照。統計地図の問題。2つある正解のうち、1つは明確なんだが、もう1つがあいまいでね。

99B本第5問問6参照。GISの問題。微妙な問題だよね。

99B追第3問問3参照。地形図を比較することで何がわかるか。言われてみりゃ当たり前なんだが、なかなか文章を読むだけでは判定が難しかったりするわけだ。

 

[今後の学習]というわけで、決して僕の好みの問題じゃない。何だかスッキリしないわけだよ。ただし解法としてはハッキリしている。それは「過去問の研究」ということ。受験生によく言うんだけれども、例えばセンターの前日や試験時間の間の休み時間なんかに何をすればいいかといえば、それは「前年の問題をひたすら読む」ことなんだよね。今さら新しく勉強することはないし、今さら知識を植えつけたってそれが試験で使えるかなんて無理。それよりもこうやって前年のネタをそのまま引用した問題が登場することがあるのだから、ひたすら問題文を読み返してそこから何かを得るというやり方が最善だと思う。ホント、このことは意識しておいてくださいね。