2008年度地理B本試験[第6問]解説

2008年度地理B本試験[第6問]問1

[講評] 毎年この手の問題ってあるよね。こういった問題をスムーズに解けるかどうかっていうのが、地理で高得点が取れるかどうかの境界線だと思うんだよね。

難易度自体は低いとは思います。ポイントは、文章読解能力なんだよね。

[解法] 正解は1。住宅地図とはあくまで住宅の配置などをみるものであって、そこに住んでいる人たちの数やもちろん年齢構成などもわかるはずがない。

[学習対策] こういう問題って慣れしかないんじゃないかな。関連問題をひたすらマスターして、問題を解く感覚を身につけて欲しい。

2008年度地理B本試験[第6問]問2

[講評] 定番問題。過去問にもそのままのものがあるし、確実にゲットしないといけない。いかにもセンターらしい問題だね。

[解法] 統計地図に関する問題。君たちが必ず意識しないといけないのは「絶対的な数と相対的な数」の区分。絶対的な数というのは実数のことで、「多い」「少ない」という言い方で表されるもの。相対的な数とは割合のことで、実数を基準となるある数によって割ることによって求められる。割合なので「高い」「低い」などの言い方をする。具体的にいえば、「人口」は絶対的な数(実数)であり、これは多い少ないで表されるもの。それに対し「人口増加率」は相対的な数(割合)であり、これは人口の増加分を、基準となる数、つまり最初の人口で割ることによって求められる。

ここで重要なのが「相対的な数」。高低によって表されるので、面積の大小(円積図やカルトグラムなど)や数の多少(ドットマップ)を用いて表現するには不適当。色や模様(例えば「赤が高く、青が低い」「網目模様が高く、斜線が低い」など)によって表現しないといけない。この方法を用いた統計地図が「階級区分図」である。第5問問1の図1が階級区分図なので参照するといい。この図は「女性議員の割合」といった相対的な数を示したものであることを確認。さらに「10%未満」「10~20%未満」「20%以上」といった割合の高低を、灰色、黒色、斜線といった模様によって表している。「相対的な数(割合)=階級区分図」であることをしっかり印象づけよう。以上より1が正解となる。

他の選択肢についても検討していこう。

2 単なる「生産量」なので、例えば円積図を用いるのが適当だろう。この例は第2問問1の図1。こちらでも「ボーキサイトの産出量」「アルミニウムの生産量」「アルミニウムの消費量」など実数が表されている点に注目。

なお「流線図」は、貿易や観光など人や物の流れを表すのに適当。出発地域と到達地域がはっきりしている場合のみ使える。

3 「等値線図」は気温や降水量、標高など自然的事象を表現する際に多く用いられるもの。等値線の代表例としては「等高線」や「等温線」がある。春になると新聞やニュースなどでよくみかける「桜の開花前線」を示した図なども等値線図。「国ごとの観光客数」は実数であり、円積図を使用すれば最も当たり前だと思う。

4 「ドットマップ」は絶対的な数を表す統計地図だが、とくに「絶対分布」を表現するものであることを知っておこう。

[学習対策] 地理の勉強というと、とかく地名や都市名などの習得に力を注いでしまう人が多いけれど、実はそういったものはセンター試験では重視されていないのだ。本問における「等値線図」や「階級区分図」など、一見すると地理の専門用語ではなく、単なる一般名詞と思いがちな言葉の中にこそ、センターを解くカギが隠されていたりする。

また、地理には統計学の側面があって、統計が重視されることはもちろんなのだが、それと同時に、統計に関する(つまり数字に関する)ネタが出題対象とされることが多いのだ。本問についても「相対的な数=階級区分図」がポイントであったように、そもそも絶対的な数と相対的な数の性質の違いを認識していなければ問題そのものの意味すらわからなくなってしまう。

2008年度地理B本試験[第6問]問3

[講評] 地形図問題。このように「文」ではなく「語」を問うてくる地形図問題のパターンは、新課程になって特徴的なものである。

なお、ここでは三角州が問われているが、三角州が取り上げられた例はかなり珍しい。問題を作った方も頭を悩ましたのではないかな。

さらになぜか100年以上前につくられた昔の地形図が用いられている。これもめずらしい。

いろいろな点において、めずらしい地形図問題だと思うけれど、今後これがむしろスタンダードになる可能性もあるので、注意しないといけない。

[解法] 海岸地形は頻出なので必ず知らないといけない。本図において「元安川」や「天満川」の文字が描かれている、陸地からみて海方向に膨らんだ部分(内側に点々が描かれているが、わかるだろうか)が「干潟」である。干潟とは、干潮時には陸地となり、満潮時には海面下となる、浅海の砂泥の部分。潮干狩りをするような場所っていったらわかるかな。

以上より、本図にみられるのは4の干潟である。

1の砂州とは、今まで海だったところが砂の堆積によって陸地になった地形で、陸から海に突き出した細長い形状をしている。湾の口などに形成され、湾をふさぐように片方の岸から対岸までほとんど陸続きとなる。京都府北部の天橋立(あまのはしだて)などが有名。

2のリアス式海岸は、山地が刻んだV字谷が沈降し、複雑な入り江が連続した海岸地形。岩手県から宮城県の三陸海岸、三重県の志摩半島、福井県の若狭湾、長崎県の沿岸部など、日本の各地にみられる。風雨を避けられる入り江の奥には漁港が成立しやすい。なお、リアス式海岸にみられる一つ一つの入り江のことを「溺れ谷」という。山地が海に沈んで生じた深い湾なのだ。

3のラグーン(潟湖)とは、湾が入り口に砂州が発達した結果、ほぼ完全に海と切り離されることによって形成された湖。北海道のサロマ湖や青森県の十三湖、小川原湖、島根県の中海などが知られている。河川から流入する淡水と、海から入り込んでくる塩水が入り交じった汽水湖となっていることが多く、養殖などもさかんに行われている。

出題率が高いのは何といっても4の干潟であり、地形図からこれを読み取ることが必須。2のリアス式海岸については沈降による地形であること、断面がV字状であることが出題されやすい。

1と3についてはあまり重視されていないが、今後は出題も予想されるので注意。

[学習対策] 海岸や沿岸部にみられる地形は非常に出題率が高いので必ずチェックしていこう。

干潟・・・満潮時には海面下だが、干潮時には海面上に姿を現す砂地の部分。潮干狩りなどイメージしよう。

岩礁・・・満潮時には海面下だが、干潮時には海面上に姿を現す磯の部分。温暖な海域にこれがみられる場合は、サンゴ礁である。

以上の「干潟」と「岩礁」の区別は非常に重要だが、さらに「岩石海岸」と「砂浜海岸」なども読み取らせる問題も多いので、こちらも重要。

また本図ではおもしろい地形(というか人工的な地形なわけだが)もみられるので、そちらにも注目してみよう。それが「干拓地」。干潟にしばしばみられる地形で、沿岸部に堤防を設けて、内側の水を排水し、主に農地などに利用するもの。標高が極めて低い(というかそもそも海だったわけだしね)ので、浸水には弱い。

本図においては「新開」という地名が多くみられるが、これは江戸時代に成立した新しい集落のことで、これらはみな干拓地に立地した集落であることがわかる。例えば、図の左端にみられる「庚午新開」周辺の地形を観察してみよう。この付近全体が干拓地である。もともと(江戸時代以前)は、現在(っていうか1898年だけど)山陽本線の鉄道が通っている山麓の部分まで全て「干潟」であったと思われる。やがて堤防が建設され、付近一帯が干拓地として陸化された。ここで着目してほしいのは、「4.3」という標高が示されている細長い盛り土部すなわち「堤防」である。この堤防の外側は海(「川添川」という文字がある辺り)だが、内側は陸地となっている。この陸地が干拓地であり、標高は示されていないがおそらく低地である。

この庚午新開に典型的にみられるように、本図の範囲では各所に干拓地がみられる。とくに右側のエリアでは過去にはおそらく「比治山」の麓まで海(干潟)が広がっていたはずだが、「東新開」や「皆實」の範囲が初期に干拓され(「皆實」のやや南方に盛り土部すなわち堤防が建設されているのがわかるだろうか)、さらに後にその南側へと干拓地が広げられている(「京橋川」という文字の右側の海岸部に沿って堤防がみられる)。

以降余談。

ちなみに、今回は「三角州」が取り上げられたわけだが、この地形のセレクトも興味深いので、簡単に説明しておこう。

「平野」は「侵食平野」と「堆積平野」に分けられる。侵食平野に分類されるのが「構造平野」、堆積平野に分類されるのが「洪積台地」「海岸平野」「沖積平野」。このうち、構造平野は日本には存在しないので、日本にみられる平野は全て堆積平野ということになる。

洪積台地とは、洪積世(日本では旧石器時代や縄文時代に当たる)に低地だった部分が隆起し、現在標高数十mの台地となったもので、武蔵野台地や下総台地(ともに関東平野)などがこれに該当する。

海岸平野とは、洪積世に浅い海底だった部分が隆起し陸下したもので、海岸に沿った細長い砂浜海岸となる。九十九里浜(関東平野)などが例。

沖積平野は、河川の堆積作用によって形成された平野で(すなわち河川に沿っている)、「扇状地」「氾濫原」「三角州」がこれに含まれる。扇状地とは、山地と平地の間に形成される緩斜面のこと。氾濫減は河川の中下流部の低平な地形で、河川の流れは蛇行する。三角州は河口に形成される地形で、浅い海底だった部分に土砂が堆積し、陸化したもの。

つまり、特徴的な平野地形としては「洪積台地」「海岸平野」「扇状地」「氾濫原」「三角州」の5種類があるということになる。過去の地形図問題では、扇状地が取り上げられるケースが多く、氾濫原も比較的多い。洪積台地の出題も何回かみられ、また海岸平野も大きく取り上げられたことがある。これに対し、三角州っていうのは実はかなり珍しい。いや、実際には出題されてはいるんだが、それにしてもむしろ「干拓地」として登場したケースが主であり、このように典型的な三角州が取り上げられた例は今まで皆無だった。

ま、だからどうだっていうわけでもないんだけどさ(笑)。僕のようなセンター試験研究家(?)としては、「おっと、三角州が登場したじゃないか!?」って感じでちょっと熱くなっていたりするのだ。これはおもしろい傾向だなぁ。

2008年度地理B本試験[第6問]問4

[講評] さらに地形図問題。問題自体は簡単なんだけれど、ちょっとビックリ!今まで「地図記号」についての説明が含まれている選択肢が正解(正文指摘問題ならば正文、本問のような誤文指摘問題ならば誤文)になる可能性はほとんどゼロに等しかったわけだが、本問はその例外となってしまっている。本当にビックリした。

[解法] それぞれの選択肢を検討していこう。

1;図2より「広島城」を確認し、さらにその周辺に「県庁」や「高等裁判所」など官庁が位置していることも確認。同じ位置が図1ではどうなっているだろうか。「西練兵場」という文字がみられ、これはおそらく兵隊を鍛練する場所であると推測され、たしかに軍関係使節である。正文。なお「歩十一」ともあるが、これは「歩兵第十一師団」の根拠地であると考えられる。さらに「大本営跡」ともあり、これも軍関係であろう(しかし、まだ戦争は終わってないのに、なぜ「跡」なんだろうか)。

2;図1で「東練兵場」を確認。図の右上である。図2ではたして「工業団地」となっているだろうか。工場の地図記号もみられず、それらしきものも確認できない。これが誤文。

3;「相生橋」を確認。「本川町」や「十日市町」などの街区は「格子状」とみて問題ないだろう。正文。

4;図2で「平和記念公園」を確認。図1で同じ場所をみると、多くの寺院(「卍」の地図記号で表される)が位置していたことがわかる。正文。

一つ一つの選択肢をていねいに読み取っていけば判定はさほど難しくないと思う。新課程になって地形図問題はどちらかといえば易化の方向にあるので、本問についても落ち着いてゆっくり解けば必ず正解にたどり着けるはずだ。

[学習対策] 本問で特筆すべき点は「地図記号」が問われた点だ。これにはビックリなのだ!今まで地図記号が問われたケースはほとんどないし、もし問われたとしても解答を得る際には関係ない(つまり外れ選択肢に含まれているということ)ものばかりだったので、本問のようにそのものズバリの出題パターンには驚いたというわけなのだ。

もっとも、「工場」のようなベーシックな地図記号が問われただけであって、ほとんどの諸君は「そんなの常識だよ」とばかりにサクッと解いてくれたとは思うんだけど、ちょっとヤバい雰囲気も感じざるを得ないんだよなぁ。

特別な対策はいらないとは思うんだが、中学校の教科書に載っている程度の地図記号や、「工場」「寺院」「発電所・変電所」「灯台」などセンター過去問で問われたものについては、知っておいた方が無難かもね。

2008年度地理B本試験[第6問]問5

[講評] 卸売業に関する問題。ビンゴだな!

[解法] 卸売業はセンター頻出キーワードの一つなので、必ずその意味を知っておかなくてはいけない。基本的には「卸売業は大都市に集中」と考えればいい。工場でつくられた製品は、工場からそのままデパートやコンビニなど小売業者に渡るのではなく、それを仲介する卸売業者の存在が必須。

なかなか卸売業についてはイメージしにくいかもしれないけれど、「問屋さん」っていったらわかるかな。倉庫を有し、大量の商品を管理し、それぞれの小売業者はそういった卸売業者へと商品を仕入れにいくのだ。

とくに卸売業販売額については、単に大都市に集中するのではなく、その地方で中枢的な役割を果たす都市への集中の度合いが高いことも知っておけば完璧。例えば、日本における卸売業の約4割は東京に、約2割は大阪に、約1割が名古屋に集まり、つまり全体の7割が東京・大阪・名古屋の3大都市に集中している。そして、これに次ぐのは九州の中心である福岡と北海道の中心の札幌であり、合わせて1割程度。つまり全国の卸売業販売額の8割は、この5つの都市に集中しているのだ。逆にいくら大都市であっても横浜市のような東京の衛星都市的な役割を果たす都市では卸売業は発達しない。横浜のお店は、東京の問屋さんへと商品を仕入れに行ったらいいからね。

この点からすると、中国地方の中枢的な役割を果たしている広島においてこそ卸売業が発達しているはずである。何てったって広島にはプロ野球の球団(カープ)もJリーグのチーム(サンフレッチェ)も本拠地を起き、さらには広島大学だって西日本を代表する有名大学だ。中国地方だけでなく、四国地方を合わせた範囲で、最も重要性の高い都市と考えていい。

よって「1人当たりの卸売業年間商品販売額」がトップにある1をストレートに広島と考えればいい。

他の選択肢については不問。そもそも岡山も高松も松山もキャラ的にそんなに変わるわけではないよ。

[学習対策]

卸売業って意外に出題例が多い!センター地理的には非常に重要なキーワードの一つであるわけだ。

でも、その出題パターンは限られているので心配無用。解法でも述べているように「卸売業は、東京・大阪・名古屋の3大都市と、福岡や札幌など地方中枢都市で発達」ということを確実に印象づけておけば大丈夫。

とくに数字として頭に入れておこう。「東京・40%、大阪・20%、名古屋・10%、福岡と札幌・10%」という感じ。もちろんやはり地方中枢都市である広島の数値も、札幌の次ぐらいに高い。

おもしろいもので、各都市の卸売業販売額っていうのは、その都市に本拠を置くプロ野球チームの人気にも比例していたりする。だいたい読売ジャイアンツ(東京)と阪神タイガース(大阪)のファンで全プロ野球ファンの半分以上を占め、それに次ぐのは中日ドラゴンズ(名古屋)。さらにソフトバンクホークス(福岡)と日本ハムファイターズ(札幌)が続く感じ。観客動員もだいたいこの順番。広島カーブ(広島)や楽天イーグルス(仙台)もなかなか盛り上がってるよね。

逆に、日本で最大の人口を有する市である横浜市に本拠を置く横浜ベイスターズの試合にあまり客が入らなかったりする。所詮は横浜など東京のおまけなわけで、実際、横浜市に住んでいる人はベイスターズファンより巨人ファンが多いでしょ。同様の理由で、埼玉に本拠を置く西武ライオンズや千葉のロッテマリーンズも、同じ「東京圏の郊外」のチームだから厳しい。

もっと厳しいのがヤクルトスワローズとオリックスバファローズで、それぞれ東京の2番手チーム、大阪の2番手チームであり、存在理由そのものが薄い(僕はオリックスファンなので、あえてはっきりと言ってみましょう!)。この2チームが再生するためには、やっぱり地方に移転するしかないよ。候補は、北陸地方の地方中枢都市である金沢と、四国のどこかの都市(四国はどこが地方中枢都市っていうわけでもないんだけど)。残念ながら、北陸地方も四国地方も他の地方に比べれば人口も経済規模も小さくて、日本ハムや楽天のような盛り上がりはおそらく期待できないけれど、それでも「金沢スワローズ」や「松山バファローズ」の方が現状よりなんぼかマシだとは思うよ。

おっと、話が脱線しました。とにかく卸売業については、具体的な都市と数値を頭に入れておきましょう!

2008年度地理B本試験[第6問]問6

[講評] 「見るだけ」問題だよね。こうした問題を落としてはいけないぞ!

[解法] 「見るだけ」問題って1とか2が答えの可能性は低くて、3や4が正解の可能性が高い。だっていきなり1が正解だったら、どの受験生も選択肢を4まで読まないから問題を作っている側としては物足りないでしょ。でもだからといって4から1にさかのぼって選択肢を読んでいくとかえって混乱してしまうので、ここはしっかり1から順に読みましょう。

ちゅうわけで、まずは1。太平洋ベルトである神奈川県、静岡県、愛知県、広島県などに工場が多く、北関東の群馬県や栃木県にも多い。正文とみていい。京都府や兵庫県にも工場が多いが、北部の日本海側にあるわけではなく、南部の京都市や神戸市の周辺に工場が多くつくられていると考えるべきだろう。

続けて2。群馬県や栃木県、静岡県や愛知県などで増加している。正文。

さらに3。中国地方に該当するのは、鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県。このうち、1985年には岡山県に「1」、広島県に「2」、山口県に「1」工場がみられるが、これらは減少しているのだろうか。いや、1995年も同数の工場が存在する。よってこれが誤りである。

最後の4も一応検討しておこう。関東地方は群馬県・栃木県・茨城県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県。1995年には「20」の工場があったのだが、これが2006年には「12」に減少している。正文である。

[学習対策] こういった「見るだけ」問題は簡単な分だけ落とした時の精神的ショックは大きい。難しい問題ならばできなくても諦めがつくけど、簡単な問題ならば後悔ばかりが後を引きずる。確実に、丁寧に、読み解く習慣をつけておきましょう。

ついでなんで、図3についてちょっと解説を。

「1975年」とはわが国において高度経済成長期が終わった時期。工業化が進み、臨海部に多くの製鉄所や石油コンビナートが建設される一方、自動車など組立工場の内陸部への進出も行われた。

さらに「1985年」の図に注目。1975年から1985年はオイルショックの時期であり、鉄鋼や石油化学などエネルギー多消費型の工業は停滞した。しかし、世界的な省エネルギー化の流れの中で、コンパクトで燃費が良く、しかも壊れにくい日本車への評価が高まったことで、わが国の自動車工業はオイルショックという逆風に負けず、成長を続けた。この10年間に自動車工場の数は大きく増加した。なお、1985年の自動車生産は世界第1位が日本で、それまでの米国を逆転している。この自動車工場の多さをみれば、それが実感できるね。

そして「1995年」。1985年からこの年までに日本が直面した大きな問題は、貿易摩擦である。安くて高品質の日本の自動車はさかんに米国に輸出され、米国における自動車産業を圧迫した。このため、米国政府は日本の自動車企業に輸出規制をさせるなどし、わが国における自動車工業は停滞した。この影響により、1985年に比べ工場の数は減少している。なお、この時期、米国に工場を進出させ、現地生産を開始させた日本の自動車メーカーは多い。

最後に「2005年」。90年代の流れがそのままに、さらに神奈川県などでは自動車工場が減少している。しかし東北地方や九州などに新たに設立されているなど、新しい動きもみられる。

以上の様子から、「60年代;高度経済成長」「70年代;オイルショック」「80年代;日本の自動車工業の発達」「90年代;工場の海外移転」といった流れを理解しよう。