2008年度地理B本試験[第2問]解説

2008年度地理B本試験[第2問]問1

 

[講評] 工業ネタって新課程になって多くなっているんだが、本問もその例。また、統計を重視した問題も増加しているのだが、その例にも当てはまる。オーソドックスな良問だと思います。

[解法] 最近アルミニウムに関する問題って増えているんだよね。アルミニウムについて必ず知っておかないといけないネタは「日本の最大のアルミニウム輸入先はロシアである」ということ。日本では現在アルミニウムの生産はほとんどみられず、世界的なアルミニウム生産国の1つであるロシアから主に輸入している。ロシアでは、水量豊富な世界最深のバイカル湖付近で水力発電を利用したアルミニウム工業が発達している。

このことから、ロシアに比較的大きな円がみられるアを「アルミニウムの生産量」とし、残ったイとウについては、人口も多く国民の生活水準も高い日本でアルミニウムの消費量が小さいとは思えず、日本に大きな円のみられるウを「アルミニウムの消費量」と考える。

残ったイが「ボーキサイトの産出量」である。ボーキサイトとはアルミニウムの水酸化化合物のことで、熱帯の土壌に多く分布している。イを参照すると、オーストラリアやアフリカ、ブラジルなど熱帯気候を含む地域において円が大きく描かれている。熱帯の土壌をラトソルというが、「ラトソル=ボーキサイト」として知っておくべきだろう。

[学習対策] 本図は非常におもしろいので、細かいところまでみていこう。

まず「ボーキサイトの産出量」を示すイについて。ボーキサイトの産出量は、世界第1位がオーストラリア、次いでギニア(アフリカ西部の国)、さらにジャマイカ、ブラジルと続く。図イにおいても、オーストラリア、ギニア、ブラジル、ジャマイカなどの国で円が大きく描かれており、産出上位国であることが明らかである。とくにジャマイカに注目しておこう。これまで出題頻度の高い国ではなかったが、このようにある年に出題されると、何年か続けて「連発」で出題されることがある。ジャマイカの位置を確認しておいて、「ジャマイカ=ボーキサイト」と印象づける。なお、ボーキサイトから取り出された物質をアルミナというが(ボーキサイトはアルミニウムの水酸化合物、アルミナは酸化アルミニウム)、「ジャマイカ=アルミナ」としても押さえておきたい。

さらに「アルミニウムの生産量」を示す図アに注目。アルミニウムの精錬は、その原料であるボーキサイト(アルミナ)の産出地域とはむしろ離れた地域で行われているので、そこに注目する。オーストラリアや中国、ブラジルなどボーキサイト産出もアルミニウム生産もともに非常にさかんに行われている国々はノーチェックで構わないので、ここではヨーロッパのノルウェーとロシアを最重要の国として押さえておくべき。またカナダや米国も知っておくといい。

ノルウェーは人口約500万人の小国(西ヨーロッパの大半の国は人口1000万人に満たない)であるが、実はヨーロッパ最大のアルミニウム生産国である。降水量が多く、山がちな国土の急傾斜の連続する地形を利用して水力発電がさかんで、そこで得られた電力がアルミニウム精錬にいかされている。

ロシアはシベリア東部のバイカル湖周辺がアルミニウム工業が発達した地域。世界で最も深いこの湖の豊かな湖水を利用した水力発電による電力を用いてアルミニウム精錬がさかんに行われている。とくにロシアについては、わが国にとって最大のアルミニウム輸入先であることを確実に知っておこう。

米国については、航空機工業と関連させて押さえておくべき。米国で最も重要なアルミニウム精錬地域は北西部のシアトル周辺。ノルウェーと同様に豊富な降水量を利用しての水力発電がさかんな地域であり、ここで精錬されたアルミニウムはシアトルなどで発達する航空機工業を支える基盤ともなっている。

なお、米国は消費量もたいへん大きいが、これは人口規模が大きいだけでなく、航空機の世界最大の生産国であることとも関連している。

2008年度地理B本試験[第2問]問2

[講評] その重要度の割にセンター地理Bの本試験で出題率が低いのがオーストラリアだったりする。本年もさほど大きくフューチュアされているわけでもない。しかし、そんなオーストラリアが堂々メインを張っている問題が本問なのです。オーストラリアのキャラクターを読め!

[解法] 1次エネルギー消費に関する問題。定番として知っておくべきは以下の通り。

・固体燃料(石炭)に依存する割合が高いのは中国とポーランド。

・液体燃料(原油)に依存する割合が高いのはOPEC諸国。

・ガス体燃料(天然ガス)に依存する割合が高いのはロシア。

・日本は比較的液体燃料に依存する割合が高い国で、その依存率は約50%。

・電力(原子力・水力)に依存する割合が高いのは原子力国のフランス、水力国のノルウェー・ブラジル。

おおよそこんな感じで頭に入れておくといい。要するに、石炭や原油、天然ガスの産出に関する統計を頭に入れておけということ。

さて、ここで「石炭」である。イギリスは古い時代から炭田開発が進み世界で最も産業革命が早い時期に生じた国であり、ドイツも国土西部のルール工業地域はヨーロッパ最大規模の炭田の上に成立したもの。とはいえ、やはりこの3か国において最も石炭のキャラクターが強い国はオーストラリアだろう。石炭の産出統計では第1位中国、第2位米国であるが、何といってもオーストラリアは石炭の輸出量世界第1位である。こんな国が石炭をメインのエネルギー源に使っていないわけがないよね。よってオーストラリアで最も高い割合を占めている3を石炭と判定する。

一応石炭以外のものも指摘しておきましょう。

オーストラリアとドイツで石炭に次ぐ高い割合を占めている2が原油。イギリスは原油産出国であるが、天然ガスの産出量も多いので、1がイギリス。っていうか、1と2については微妙な違いなんで、判定の必要はないでしょ。

むしろ重要なのが4で、これが原子力。イギリスやドイツではそれなりに原子力発電は行われているのだが、オーストラリアでは皆無である。ヨーロッパも近年は脱原発の流れがみられるようだが、逆にいえば、過去にそれだけ多くの電力供給を原子力に依存してきたということ。これに対し、オーストラリアは非核が徹底しており、過去から現在まで原子力発電所は1つも建設されていない。とはいえ、原子力発電に必要な資源であるウランの産出はオーストラリアが世界最大だったりするんだけどね(笑)。

[学習対策]

ちょっと気になるのはオーストラリアの原子力発電の関係なんだよね。オーストラリアっていうのは、世界有数のウラン産出国でありながら、非核が徹底していて、原子力発電は全く行われていないのだ。原子力発電を巡る状況って日々刻々と移り変わるものがあって、なかなかセンターで出題しにくかったりするんだけど、「オーストラリアでは原子力発電所は存在しない」っていうのは絶対的なことなので、これは鉄板ネタとしてぜひ知っておいてほしい。オーストラリアと同様に原発がない国には、オーストラリアと共に非核を徹底しているニュージーランドと、火山と地震の国であるため原子力発電所の建設が避けられているイタリアが代表例。「オーストラリア・ニュージーランド・イタリアには原発がない」として知っておこう。

2008年度地理B本試験[第2問]問3

[講評] ちょっとした難問の一つだったと思う。ネタ自体はそうでもないんだが、言葉が難しい。「輸入依存度」っていうのがわかりにくいんだよね。おそらくこの言葉はセンター地理B初出。もちろん、ちょっと考えれば、輸入依存度とは輸入に依存する割合のことで、つまり自給率の反対語だってことはわかるはず。とはいえ、そこまで考える冷静さを君たちに要求するのはちょっと酷だと思う。

言葉の難解さはさておき、ネタ自体は「ロシア=原油」というベーシックなもの。これそのものは簡単でしょ?

[解法] エネルギーに関する問題は定番なんだが、出題形式がやや特殊なんで注意してほしい。

問題文参照。「一次エネルギー」とは固体燃料(主に石炭)、液体燃料(主に原油)、気体燃料(主に天然ガス)、電力(主に原子力と水力)のことで、この語の定義は容易。ポイントになるのは「輸入依存度」という言葉であるが、文字通りに解釈して「輸入に頼る割合」という意味。これだけじゃわかりにくいので、これと反対の意味を表す言葉を考えてみる。輸入に頼る割合が低いものは国内での生産が多いものであり、逆に輸入に頼る割合が高いものは国内でほとんど生産されていないものである。つまり「自給率」の反対語と定義づけるのが最も適切だろう。例えば、わが国では石炭は自給率が低く石灰石は自給率が高いのだが、これを言い換えれば「石炭の輸入依存度は高く、石灰石の輸入依存度は低い」というようになる。

以上より、輸入依存度と自給率を反対の概念ととらえて考えてみよう。

図を参照。1次エネルギー、原油ともに輸入依存度が最も低いのが1であるので、この1の国こそ両方の自給率が4か国中で最も高いと思われる。逆に3や4の自給率は低い。

解答が要求されているのはロシアなので、ロシアの特徴のみを考える。ロシアは世界最大のエネルギー産出国の一つで、とくに原油は世界第2位、天然ガスは世界第1位の産出量を誇っている。よって1がロシアとなる。

[学習対策] 「ロシア=原油」っていうイメージは難しくないと思う。これはセンターでもしばしば登場してきたもの。ここで難しいのはやっぱり「輸入依存度」っていう言葉なのだ。ずいぶん昔に一回登場しただけの言葉であり、君たちにとってはずいぶん馴染みのない言葉だったかもしれない。本問の正解率がかなり低かったこともいたしかたないだろう。

2008年度地理B本試験[第2問]問4

 

[講評] ある特定の国や地域において、3つの都市や工業地域を取り出し、その説明文の組合せを答えさせるという「3点決め」の問題。最近はすっかり定番になりましたね。今かでも、イタリアやヨーロッパ全体などがその対象となっている。僕は今年はロシアかブラジルが来るんじゃないかと予想していたら、案の定ロシアが来ましたね。来年はブラジルなんちゃうんかな?

ただし難易度は決して低くないと思うよ。モスクワの特定は難しくないんだが、他の2つが難しい。ここは考えないといけないんだよなぁ。

[解法] Aの都市に注目。これは首都のモスクワである。ロシア最大の都市であるばかりでなく、ヨーロッパ全体においても、ロンドン(イギリス)、パリ(フランス)、イスタンブール(トルコ)などと並ぶ巨大都市となっている。さらにロンドンやパリと同様に、国内最大の工業都市としても重要性が高い。このことから、さまざまな工業が「総合的に発達している」と説明されているクが該当する。

残る2つはなかなかやっかいなのだ。説明の手間を省くために先に都市名を挙げておきます。Bがノボシビルスクという都市で、シベリア最大の人口を有する街。Cはヤクーツクというところで、少数民族のヤクート人が住んでいる。

ここでカとキの文章を比べてみよう。カには「露天掘り炭田」とありキには「炭田、天然ガス」とあるが、しかしともに資源埋蔵が豊かであるという点においては共通しているため、これはヒントとはとらえにくい。残った部分で特徴的な語としてはカの「鉄鋼業」とキの「毛皮」があるが、もちろん注目すべきは「毛皮」の方だろう。毛皮をいかした皮革工業が発達しているのは、BとC、はたしてどちらだろうか。ここは素直に、シベリアのど真ん中のCでこそ、熊などの野生動物が多いだけでなく、トナカイなどの家畜も多く、毛皮の加工業などが発達していると考えていいだろう。

残ったBがカとなる。

[学習対策] 本問については、モスクワは必須としても、他の2つの都市についてはその場で考えて解くしかない。知識問題としては難度が高いと言えるのだが、しかし思考で何とかなると考えれば、さほどやっかいな問題でもないかもしれない。一見、ガチガチの知識問題と思えるようなものであっても、本問に典型的にみられるように1つのキーワード(例えば「毛皮」)から解答を導き出すタイプの問題があるということは心にとめておこう。

2008年度地理B本試験[第5問]問5

[講評] 新課程になって目立つ出題形式です。統計に関する話題が、文章正誤問題の形式で出題される。みんなは戸惑わなかったかな。

普通の文章正誤問題として読解するのではなく、工業製品や貿易の統計を思い浮かべながら解いてください。

[解法] 文中から統計に関する語を取り出しながら検討していこう。

1 「航空機」の生産は、米国とフランス。アルゼンチンは該当しない。誤りである。

2 チリの最大の輸出品目は「銅鉱」。チリは世界最大の銅鉱産出国でもある。誤り。

3 ブラジルは南半球最大の工業国であり、主要輸出品目も機械類や自動車、鉄鋼などの工業製品である。これが正文であり、正解となる。今どきブラジルが鉄鉱石やコーヒーだけの国だなんて思ってないよね?ちなみに自動車にしても、生産上位国こそ第1位米国、第2位日本、第3位ドイツというように先進国に集中しているが、これ以外に中国やインド、ブラジルなど人口上位国(国内市場が大きいのだ)でも生産が急上昇している。「ブラジル=自動車」のイメージも間違いではない。また「外国資本」という語があるが、これについては深く考える必要はない。ブラジルのような低賃金国に外国から工場が進出するのは当たり前のことだろう。とくに自動車工業は「多国籍企業」がキーワードであるように、国境を超えた生産活動が主流となっている。

4 そもそも発展途上国において、高度な技術力を活かした先端産業が発達することはありえない(インドのバンガロールのような例外はあるけれど)。まさかメキシコで「宇宙産業」しかも「研究開発」がさかんであるわけがない。誤りである。なお、宇宙産業で知っておきべき都市は米国テキサス州のヒューストン。メキシコ湾岸油田に接する石油産業の街であるが、NASA(米国航空宇宙局)の本部があるなど宇宙産業の中心地でもある。「ヒューストン=宇宙産業」は知っておいてもいいかもしれない。

[学習対策] 統計が重要であるのはいうまでもないね。ただし、それぞれの統計について、一面的な理解ではなく、双方向的な理解が必要になってくる。双方向とは、例えば選択肢1については、「航空機の生産が多いのは米国とフランスである」というネタと「アルゼンチンの主な輸出品目は農産物である」というネタを、ともに意識しないといけないのだ。つまり「アルゼンチン」の産業と「航空機」の生産国について両方とも理解しておかなくてはいけないということ。もちろんどちらか一つのネタのみ知っておいても選択肢1が誤りであることは容易に判定できるのだが、せっかくなのだから双方向的に理解しておいた方が今後の役に立つと思う。

双方向的な理解を意識して、次の統計についても確認しておこう(ヒューストンは統計じゃないけどね)。

・チリの最大の輸出品目は銅鉱である。

・銅鉱の最大の産出国はチリである。

・ブラジルの主要輸出品目は、機械類・自動車・鉄鋼などの工業製品である。

・自動車の主要生産国の中にブラジルが含まれている。

・メキシコの主要輸出品目は電気機械などの組み立て工業製品である。

・宇宙産業がとくに発達しているのは、米国のヒューストンである。

2008年度地理B本試験[第2問]問6

 

[講評] 工業立地の問題は定番やねんけど、これはちょっと雰囲気の変わった問題やなぁ。今までに登場しなかったネタが出題されているんだよね、注意!

誤文指摘問題ではあるけれど、ちょっと解き方が違う。普通なら誤っている選択肢を一つだけ指摘して、それをそのまま答えにすればいいが、本問の場合は、正文を3つ指摘して、残った一つのあいまいな選択肢が誤文すなわち正解となる。そういった手間がある分だけ、本問は解きにくかったりするのだが。

[解法] 工業立地の問題である。

1 大都市に立地すなわち市場立地型工業。これには2種類あって、ビール工業のように原料に比べ製品の重量が大きくなるものは輸送コストを考慮し、消費地である大都市近郊に工場がつくられる。もう一つは、ファッション産業や印刷・出版業のような大都市に情報が集中するという有利性を活かして成立する工業。消費者の要求や嗜好にもすぐに対応できる。アパレルのデザイン部門はこの後者の例に当てはまり、ゆえに本選択肢は正文。

2 これはよくわからない。後回し。

3 工業は大きく「資本集約型工業」と「労働集約型工業」とに分けられ、資本集約型工業の例として「鉄鋼業」「石油化学工業」「セメント工業」などがあり、労働集約型工業には「機械組立工業」「繊維工業」などがある。労働集約型工業は労働力の存在が重要であるのに対し、資本集約型工業は原料となる資源の存在が重要となる。鉄鋼業(原料は鉄鉱石や石炭)や石油化学工業(原料は原油)は原料を海外からの輸入に依存するため「臨海立地」となり、セメント工業(原料はセメント)は原料が国内自給できているため「原料立地」となっている。

このことを意識し、選択肢3は正文であると判定できる。「石油化学=臨海」である。

4 選択肢3とは反対の状況。「電気製品の組立部門」はまさに「労働集約型工業」である。東南アジアや中国など1人当たりのGNIが低い発展途上地域に、日本から工場が多く進出していることを想像すればいいだろう。正文。

よって、あいまいな選択肢である2が誤文(つまり正解)となる。もう一度、この文を解釈してみよう。

魚を水揚げした場合、現地で缶詰にしてしまった方がいいのか、それとも大都市まで運んでからの方がいいのか。大都市まで運んだ場合、港湾から輸送する途中で魚の新鮮さが失われ、時には腐ってしまうかもしれない。一方、現地で加工するならば、獲りたての状態で魚の鮮度を保ったまま缶詰にすることができる。そう考えれば、缶詰工業は「原料立地」型の工業とみなすことが適当だろう。よってたしかに2は誤文となるのだ。

選択肢1・3・4の話題はセンター過去問でもしばしば登場するネタであり、判定は容易なんだが、選択肢2は初出なのでわかりにくい。もちろん一般常識の範囲内の問題でもあるんだが、それでもこの問題で失点してしまったらそれはそれで仕方ないような気もするな。

[学習対策] 工業立地についてまとめよう。

工業立地について考える際に最も重要となる概念が「資本集約型工業と労働集約型工業の違い」。資本集約型工業とは、鉄鋼業や石油化学工業、セメント工業のことで、労働力は必要としないが、原料の入手方法が重要となるもの。原料を輸入に依存する鉄鋼業や石油化学工業は「臨海立地」となり、原料が国内で産出されているセメント工業については「原料立地」となる。とくにセメント工業については、製品の方が原料より軽い「重量減損タイプ」の工業である点にも注目。原料である石灰石のままで輸送するより、製品のセメントに加工してから輸送する方がコスト的に得するのだ。労働集約型工業とは、労働力に依存する工業のことで、具体的には繊維工業や機械工業が挙げられる。衣類の縫製や簡単な機械組み立てなど労働者の単純作業による工業種は、できるだけ安価な労働力が得られる地域へと立地する。また、労働集約型工業は資本集約型工業の反対語なので、「資本集約型工業イコール臨海部」ならば「労働集約型工業ノットイコール臨海部」となり、つまり「労働集約型工業は、どちらかといえば内陸部に立地しやすい」という定理が導き出される。繊維工業や機械工業は「内陸立地」と考えてもいい。

上記のことを基本として、それ以外の工業種に関しては個々に考えていく。

・パルプ工業・・・原料立地。セメントと同様に、原料(木材)より製品(パルプ)の方が輸送しやすいので、原料が得られる針葉樹地帯などにこの工業は成立しやすい。

・製紙工業・・・用水立地。パルプを加工して紙にする場合、製品処理用水が大量に必要となる(和紙を「すく」ことをイメージする。水で洗い流しながら、紙をつくるのだ)。

・ビール工業・・・市場立地。セメントやパルプとは反対に、原料(大麦)より製品(ビール)の方が重量が大きいため、できるだけ消費地の近くに工場が立地しようとする。

・ファッション産業・・・市場立地。情報や流行の中心地である都市部においてこそ発達する工業。

・アルミニウム工業・・・電力立地。アルミナ(ボーキサイトから取り出される物質)をアルミニウムに精錬する際に大量の電力を必要とする。とくに安価な電力が得られる水力発電所付近に立地する。

・IC工業・・・臨空・臨インターチェンジ立地。軽量高付加価値であるため、地方の賃金水準や工場用地の安価な地域で生産し、航空機や高速道路を利用するトラックなどによって大都市圏に近い組み立て工場へと輸送する。九州の空港近くや、東北地方の自動車道路のインターチェンジ付近に立地するIC工場は多い。

・砂糖精製業・・・原料立地。原料であるサトウキビは長期保存に適さず、収穫してできるだけ早く砂糖へと加工しないといけない。よって砂糖精製業はサトウキビの産地付近に立地する。本問選択肢2における水産加工業も似たようなものである。