2025年地理総合[追試験]解説
<2025年地理総合追試験第3問問1解説>
正解;③
まずAから見てほしい。図の中央に大きな河川が流れ、その周辺には広く低地が広がる。河川沿いのこうした地形(小地形)を『氾濫原』という。氾濫原には微地形として「自然堤防」と「後背湿地」があり、Aは後背湿地に当たる。河川からやや離れたところに広がる低地であり、水捌けが悪く(水もちがよく)水田として利用される。土質は粘土(泥)。粘土は目が細かいため水を通さないよね。水田が水を蓄えている。土地利用記号の「田」を確認しよう。陰影図でも平坦な土地となっている。
それに対しCは何だろうか。河川沿いに集落が列状に並んでいる(いわゆる列村形態というもの)。「河川に沿う列村」をみたら反射的に「自然堤防」上の集落と思っちゃってください。氾濫原にみられる微地形で、こちらはやや目の大きな土砂が堆積しているので水捌けがよく、家屋が自然発生する。農地となる場合には水田ではなく畑や果樹園となる。自然堤防については自然「堤防」ではなく「自然堤防」という固有名詞として頭に入れておくこと。つまりみんなが一般的に考える「堤防」としての姿はなく、単なる土砂の盛り上がりなのだ。野球でピッチャーが投げるマウンドってあるよね。周囲より数十センチほど盛り上がった土の山。あれをイメージして欲しいのだ。
洪水の際に上流から目の粗い土砂が流されてきて、氾濫した際に河川の周囲に堆積する。周囲よりわずかに高い地形であり水害の被害が小さく家を建てるには最適の場所。
一見すると河川の近くなんてちょっと怖いって思うよね。もちろん大きな洪水が起こった場合には真っ先に水をかぶってしまう。でもその水はすぐに通り過ぎて、後ろ側の低地へと流れ込む(この低地が後背湿地)。いったんは水をかぶるけれどすぐに水は無くなってしまうのだから建物は無事だよね。さらにいえば長期間洪水が継続したとしてこの一帯が10センチほどの水浸しになったとしても、この自然堤防の上にはその水は及ばず、普通に生活できる。河川に沿っているところが逆に洪水の被害を避けられるというのがちょっと面白いね。
この自然堤防については本当に「ごくわずか」な土地の盛り上がりなので、陰影図で確認しておこう。決してみんなが想像する堤防つまり高い土手のようなものではないよね。洪水が生じないように防ぐ堤ではなく、単なる土砂の盛り上がり。「自然堤防」のビジュアル的にも理解しよう。
以上より、Aは②、Cは③に該当し③が正解。他の選択肢はとくに掘り下げる必要もないが一応確認してみよう(実はこういった「おまけ」ネタがテストに出たりするんですよね)。
Bに注目してみよう。地形図をみると明確に思うが、ここに「湾曲した」地形があるよね。これにそって細い道路が見られるので分かりやすいと思う。「河川沿いの湾曲した地形」は間違いなく「旧河道」である。こういった低平な地形においては河川は流れる方向が一定せず蛇行する。ぐるぐるとどこに行くでもなく惑いながら流れるわけだね。河川が蛇行していると、流量が増加し洪水が発生した際には周囲に河川水が流出し洪水のリスクが高くなる。洪水を防ぐために流路を直線化することが必要となる。実際この図に見られる河川はほぼ直線化されて流路を辿っていることが分かるだろう。蛇行している河川の流路がショートカットされ直線化された際に、かつて河道だった部分は外側に残される。はじめは水が残っており水溜まりのような感じだったが(一応「湖」なので三日月湖あるいは河跡湖と呼ばれた)やがて干上がってしまい陸化してしまう。湾曲した低地となり、これを「旧河道」と呼ぶ。Bが旧河道であることが分かるだろうか。①に該当する。地盤が水を大量に含んでおり液状化の危険性は高い。
これらとは全く異なる地形がDの「台地」。④に該当する。文章には「段丘」と示されているが台地と同じと思って構わない。いずれも土地が隆起して作られたもの。標高が高く水害の可能性は低い。
<2025年地理総合追試験第3問問2解説>
正解;⑤
アはダム湖。山間部を流れる河川がダムによって堰き止められる。ダムの上流側に谷の地形に沿ってダム湖が作られている。Hが該当。
イがため池。降水量が少ない香川県(讃岐平野)や奈良県(奈良盆地)に多い。小規模の水域が無数に点在している。
残ったウが扇状地である。左下が上流部で扇頂。右上に向かって河川が流れている。山地から平野に河川が流れ、網の目状に広がっている。図の中央部が扇央であり緩斜面となっている。目の粗い土砂(レキ)から成っており、河川水が副流する。地表面を水が流れず、これを補うため用水路が建設されることがある。水田耕作が行われる。
なお図の左上が扇端に該当。湧水帯となっている。
<2025年地理総合追試験第3問問3解説>
正解;②
これは面白い問題。過去にも関東大震災の火災の延焼が問われたことがある。正解(誤文)は②。図には風向が示されているが、図4中の矢印(風向)を見ると、全体的にバラバラであり、どちらかといえば北からの風が卓越しているように見える。明らかに南風となっているのは出火地点が集まっている最も色の濃いエリア(9月1日12時~16時)の南部ぐらいだろうか。他の場所では北よりの風が主に観測されている。
選択肢①について。これは一般論として考えていいんじゃないかな。台地の方が地盤が固く揺れは小さい。低地は地盤が軟弱で揺れが大きい。
選択肢③について。図4のエリアの南部では「9月2日12時~9月3日」まで延焼が続いていた。地震の発生(出火)が9月1日11時58分なので24時間以上。
選択肢④について。これはよくわからないが否定するところもないだろう。
<2025年地理総合追試験第3問問4解説>
正解;④
これちょっと難しいかな。可動堰は満潮時や豪雨の際の海面上昇時に、海水が河川を遡って周辺地域に洪水被害を及ぼすのを防ぐもの。通常の状態では河川の水面の方が海水面より高いのだが、上記のような時には海水面の方が高くなってしまう。可動堰によって海水が河川を逆流するのを防いでいる。
これは地理総合特有の問題だと思うよ。地理探究受験者は全く気にする必要はないと思う。ただし、防災の観点からは重要な施設でもあり、この機会にぜひ知っておこう。
カは地下貯水池。首都圏の地下に設けられた巨大な「空洞」であり、豪雨の際にはここに雨を流し込み洪水(内水氾濫)を防ぐ。平時はこのように見学をすることができる。
キは砂防ダム。山間部の急流に設けられる。土砂災害の際の土石流や火山噴火の際の火山噴出物の河川に沿った流下を防ぐ。水は通すしくみであり(キの写真からそのことはわかるね)、一般のダム(発電用・灌漑用)とは異なる。
クは雲仙普賢岳の爆発の際に火砕流によって消失した小学校の跡地であり、災害の恐怖を伝えるための史跡となっている。
いずれもネットで画像検索などしておこう。
<2025年地理総合追試験第4問問1解説>
正解;④
Dの位置が重要。中国北部からモンゴルにかけての地域。本来ならDのちょっと北側にバイカル湖(ロシア南部の湖)が描かれることになるので「D=モンゴル」と判定しやすいのだが、今回はそれがないので注意が必要。
モンゴルは半乾燥の気候がみられ草原(ステップ)が広がる。農耕は困難で、「遊牧」地域となっている。羊など乾燥に強い家畜のほか、馬の飼育に特徴がある。モンゴルの料理は穀物や野菜に乏しく、肉類や乳製品が中心。④が誤り。
Aはエクアドルかな。バナナ栽培が特徴的。主にアメリカ合衆国への輸出用に栽培されているはずだが、一部はこのように自給的に食料ともなっているのだろうか。
Bのヨーロッパ南部はアルプス山脈。「酪農」の一種である移牧が行われる。
Cはパキスタン。外来河川インダス川が流れる乾燥地域。ナンが食べられているね。
<2025年地理総合追試験第4問問2解説>
正解;?
写真がないのでちょっと分からないな。。。地理総合特有の問題のように思います。
<2025年地理総合追試験第4問問3解説>
正解;②
誤りは②でしょう。コーヒーは熱帯・亜熱帯の高原で栽培され、キーワードは「標高1000メートル」。ブラジル高原南部で肥沃な土壌テラローシャによって栽培されるね。原産地の東アフリカも高原。
マングローブ林伐採によって生産されているのはエビ。沿岸部の干潟にエビ養殖池が作られ、とくにベトナムでは日本向けの輸出が拡大している。
他の選択肢もちょっと分かりにくいものがあるけれど、②が決定的に違うので特に検討の必要もないかな。湿潤なシベリアで森林火災が多いのがちょっと意外だけど、冬は全く降水量がないし大気中の水分が少ない分だけ延焼しやすいのかな。
選択肢③はサヘル地帯の砂漠化に関する記述。
選択肢④の大豆が重要。ブラジル北部の熱帯草原(サバナ)を開墾して大豆畑が多く開かれていたが、近年はその北側のアマゾン盆地にまで範囲が拡大している。熱帯雨林の減少と結びつく。大豆は幅広い気候環境に適し、土地が痩せていても根付きやすい。熱帯雨林においても十分に栽培される。ブラジルの最大の輸出品目は大豆であり、輸入先は中国。
<2025年地理総合追試験第4問問4解説>
正解;②
距離的に考えオーストラリアで割合が高い①が中国や日本などのアジアだろう。スペインはラテンアメリカ地域を植民地としており、言語的文化的つながりが強い。スペインでのみ割合が高い④がラテンアメリカ。フランスはアフリカに植民地を多く有し、現在も経済的なつながりが多い国が多い。フランスのみ割合が高い③がアフリカ。
残った②がヨーロッパ。ドイツは1人当たりGNIが高い国であり、周辺ヨーロッパ諸国からも多くの留学生を受け入れている。中学生の移動の原則は「1人当たりGNIの高い国へ」である。