<2025年/共通テスト[地理総合・探究]追試験・第5問解説>
<2025年地理探究第5問問1>
正解;②
「都市圏」がポイント。都市圏とは通勤圏のこと。東京の場合、その都市圏(巨大であるため「東京大都市圏」という固有名詞で呼ばれる)は半径50キロの円にほぼ等しく、埼玉県東部、千葉県西部、神奈川県東部を含む。
世界の大都市についてはおおまかに「人口1000万人」と考える。日本も首都を「東京特別区部」とした場合、人口はほぼ1000万人。東京都(多摩地区も含む)で1400万人。言うまでもなく多くの県にまたがる東京大都市圏の人口は極めて大きい。東京都のほとんどが該当し(西部の奥多摩地区は大都市圏の外側。通勤圏ではない)、埼玉県や千葉県、神奈川県の人口密度の高い地域もその範囲に含まれるとすればその人口規模は3000~4000万人となるのではないだろうか。なお神奈川県全体の人口は900万人、埼玉県や千葉県もそれぞれ県全体の人口は700万人ほど。
日本の総人口が1.2億人であり、東京大都市圏の人口が3000~4000万人とすればその割合は30%に達する。Aを日本とみていいだろう。
なお今回登場している国はいずれも人口大国。アメリカ合衆国が3.5億人、インドネシアが2.5億人。これらの国がもしもAだとするならば(つまり国内人口の30%が最大の都市圏に集中)、それぞれ1億人、8千万人の超巨大都市圏が存在することになってしまう。さすがにこれは考えにくいだろう。
残った二つの判定だが、Bが重要。というか、最初に(A=日本ではなく)Bを判定するべきだったかな。とても分かりやすい特徴がある。それはどこだろう?ヒントはプライメートシティだね。
鋭いキミならばすでに分かっているよね。「発展途上国では特定の大都市のみが発展し、2番目以降の都市は規模が小さい」というセオリーがあるよね。発展途上国は国の規模に比して経済力が弱い(GNIが十分ではない)。限られた資本は特定の都市に集中して投資されることになり、国内には唯一の大都市が形成されることになる。産業や経済、文化が過度に集中し、とくに人口が巨大化する。タイのバンコクが典型的な例。タイの場合、総人口7000万のうち、1割の700万人が首都のバンコクに集中するものの(これだけを取り上げれば日本も東京都に人口の1割が集まっているが)、バンコクのみに投資がなされるため、他の都市が発展しない。バンコクのとくに中心部は先進国以上の「未来都市」であり、各種インフラも充実。しかしそれ以外の都市への投資はわずかであり、インフラは整備されない。タイに存在する都市は「たった一つ」なのだ。
これに沿って考えると、注目すべきは国内第2位の都市(都市圏)。図から判定するに、AやCでは2番手の都市もそれなりの規模(とくにCは最大の都市と第2位の都市とでさほど差がない)なのだが、Bでは書くさが大きい。1位の都市圏に総人口の13%が集まるのに対し、2いの都市圏は2%程度。明確にプライメートシティが形成されていると言えよう。発展途上国のインドネシアでは、国の大きさに対して経済規模が小さく、乏しいお金は全て最大都市であるジャカルタの都市づくりに投資されるのだ。ジャカルタ以外に大都市がないインドネシアがB。
残ったCがアメリカ合衆国。1位の都市の値が低く、ニューヨークはこの程度の都市なのか?と驚くかもしれないが、実数を計算してみたらそんなことはないよね。アメリカ合衆国の人口が3.5億人。1位の値が7%であるため、実数を計算すると2000万人。東京には及ばないもののニューヨーク市は世界最大の都市(そして都市圏)の一つ。ニューヨーク市で1000万、周辺を含めたニューヨーク都市圏で2000万というイメージ。
<2025年地理探究第5問問2>
正解;③
これは難問。これはできなくていいんじゃないかな。今後これと同じ解き方をする問題が出るとは思えないので再現性が低いでしょ。ここでは「横浜市」のキャラクターのみ重要。
横浜市は日本最大の市だが(東京特別区部は「市」ではないので、自治体としての市の人口は横浜市が最大)、東京大都市圏の一部であるに過ぎない。「郊外」のキャラクターを有し、昼間人口は夜間人口より少ない。東京大都市圏内では都心部の東京特別区部に経済機能が集中し、たとえば卸売業販売額は都心部で極めて大きいのに対し郊外では小さい。横浜市もその人口規模に比して卸売業販売額は小さい。また郊外では金融業が発達しにくいという話題も過去に出題されており、それは具体的には銀行の数で表された。もちろん横浜市で全く商業・金融機能が発達していないというわけではないが、都心部である東京特別区部への依存の度合いは高く、あくまで「その他大勢」の立ち位置なのだ。
それに対し他の都市は錚々たるメンバーが揃っている。大阪市と名古屋市はそれぞれ巨大な都市圏(京阪神大都市圏、名古屋大都市圏)の都心部を構成する都市であり、東京特別区部と似たキャラクターを有するだろう。一方の福岡市と札幌市もそれぞれ「南日本の首都」と「北日本の首都」であり、地方中枢都市あるいは広域中心都市と呼ばれる。
表1を参照。東京都区部と札幌市がオープンになっている。それぞれ特徴を探ろう。まず東京都区部であるが本社数が圧倒的に多い。まさに日本の(というか世界の)経済や産業の中心である。さらに①>②>③>④>札幌市の順である。
ここでちょっとおもしろいのが問1との相関性。問1の図1を見直してほしいのだが、日本で突出しているのは上位3つまでの都市圏。Aが日本だが、1位が30%ととくに大きいが、2位も13%、3位も8%というように、おしなべて2%程度が並んでいる4位以下の都市圏とは規模が全く違う。2位が京阪神(大阪)大都市圏であり、3位が名古屋大都市圏であろう。
これを問2の表1に当てはめてみよう。東京都区部に次いで多くの企業が本社を置く①が大阪、それに次ぐ②が名古屋と考えていいだろう。支所も多くなっている点が特徴的。たとえば東京都に本社がある企業がそれぞれ西日本支店・近畿支店を大阪市に、中部支店・東海支店を名古屋市に置いているのではないか。なお、支所の数も東京都区部が多いが「本社数:支所数」の比を考えると、東京都区部は相対的に支所数は少ないともいえる(本社数の1.5倍程度。②の大阪市は4倍以上)。多くの企業が東京都区部に本社を置いて、他の都市に支所(支社)を置いていることが想像できる。
これに対し札幌市はどうだろう?こちらは本社数はかなり少ない。札幌市も人口200万人を誇る巨大都市なのだが、日本では地方分権や多極分散はあまり進んでいないのかなとも思う。一方で支所数はどうだろう?実数としては832とさほど多いようには思えないが、本社数との比を考えるとその値は極めて高い。「本社数:支所数」は20:1ほどにも及ぶ。札幌市は「日本の中心」というわけではないが、「北日本の中心」、「北海道の中心」としては圧倒的な存在感を誇っている。東京都区部に本社を持つ企業が札幌に北日本支店あるいは札幌支店を置いている。
札幌市と似た特徴を有する都市はどこだろう?それはもちろん「福岡市」だね。南日本の中心、 九州の中心である。札幌市と同じく「地方圏の首都」的な立ち位置にある。本社や支社の立地については札幌市と同じような傾向があるのでは。決して「日本の中心」というわけではなくここに本社を置く企業は少ないだろう。しかし東京に本社を置く企業が北海道や九州に支社を設ける場合には確実に札幌市や福岡市がその目的地となる。福岡市は札幌市と同じように「本社数は少ないが、支社数は本社数の数十倍である」という傾向があるとすれば、間違いなく④が福岡市となるだろう。
以上より残った③が横浜市となる。すでに述べたように今回の選択肢の中では唯一「郊外」のキャラクターを持つ。そのことはこの統計にどのように表れているだろうか。
まず「本社数」であるが75も存在しておりこれはかなり多いように思えるが、しかし横浜市の人口規模(350万人)を考えた場合必ずしも多いとは言い切れないだろう。人口が少ない大阪市や名古屋市の方が本社数は多い。福岡市についても人口比が横浜市の半分以下(150万人)であることを考えれば、本社数は相対的に多いといえる。横浜市が東京大都市圏に含まれ、横浜市自体の都市圏(横浜市の都心部に通勤する人がどの範囲に住んでいるかを考えよう)は限定されたものになってしまっている。企業による経済活動もさほど活発ではない。
さらに注目するべきは支所数の少なさだろう。全都市中最小。大阪市や名古屋市に本社を置く企業が関東方面に支所を設ける際、その場所は東京となる。東日本支店、関東支店は東京都区部につくられるだろう。東京大都市圏の郊外、つまり衛星都市に過ぎない横浜市にわざわざ支所を設けることはない。横浜市にある支所もあくまで「横浜支店」であり、東日本や関東地方全体を統括するものではない。大阪の企業ならば、先に東京支店(関東支店)を作り、その上で改めて小規模な支所として横浜支店を作るようなイメージ。
<2025年地理探究第5問問3>
正解;⑥
超良問!これ、いい問題ですね。
都市圏構造の問題。「都市圏=通勤圏」であり、東京都心部へと通勤する人々が住む範囲。都市圏は二重円で示され、中央の狭い円が「都心部」。昼間人口が夜間人口より多く、経済活動の中心として卸売業販売額が大きい。その周囲が「郊外」。昼間人口が夜間人口より少ない。ニュータウンなど住宅地が広がり、商店は最寄り品を扱う。
さらに都市圏構造については3つ目の存在を考える。それは「都市圏外」。都市圏の外側。東京の場合は巨大な東京大都市圏を形成するので「非大都市圏」と言ってもいい(本問の解説では以降こちらの言葉を用いる)。
この3地域をたとえば東京都で考えると、都心部に該当するのはおおまかに東京特別区部。東京都の中部から西部にかけての多摩地区は郊外ごなる。山梨県に接する奥多摩地方など最西部は非大都市圏。東京大都市圏の範囲は、都心を中心とした半径50キロメートルの円で表される。Eの下に「50キロメートル」の目盛りが示されているが、もちろんこの数字は意図されたものである。これを目安に東京大都市圏の範囲を大まかに掴みなさい、という意味があるのだ。
よかったらそれぞれの図に東京大都市圏の範囲を書き込もう。東京都東部の特別区部を都心部とする半径50キロメートルの円である。
さらにインディケーターを見ていこうか。本図は階級区分図なので3つのインディケーターは全て「割合(相対的な値)」である。直接は書かれていないが、分母となるのはその市町村の全ての世帯数(戸数)であろう。
・共同住宅の戸数の割合・・・アパートやマンションなど。
・持ち家戸建て住宅の戸数・・・こちらは一戸建て。共同住宅の反対。
・単身世帯・・・これが非常に重要!具体的にどういった人々なのか考えてみよう。以前は「単独世帯」という言い方でテストに登場していたが、単身世帯の方がわかりやすい言い方だと思う。
インディケーターを考える際に「比例・反比例」関係がないかどうかをまず判定する。本問の場合は明らかだよね。「共同住宅の割合」と「一戸建ての割合」は反比例するはず。そもそも世帯の全ては共同住宅か一戸建てかに分けられるのだから、両者を合わせて100%のはず。共同住宅の割合が高いところは一戸建ての割合が低いだろうし、共同住宅の割合が低いところは一戸建ての割合が高いだろう。
E~Gの中で高低が「ひっくり返って」いるものを探そう。どうかな?FとGがそれに該当するんじゃない?Fで高いところはGでは低く、Fで低いところはGで高い傾向がある。さらにこれを都市圏構造に当てはめた場合、以下のようなことが言える。
(F)都心部;高い 郊外;中 非大都市圏;低い
(G)都心部;低い 郊外;中 非大都市圏;高い
都心部は地価が高く、郊外や安い。非大都市圏はもっと安い。面積が確保しにくい都心部では建物は高層化しマンションやアパートが増える。もちろん延べ床面積も狭い。都心部で高いFが「共同住宅の戸数の割合」、都心部で低いGが「戸建ての戸数の割合」。正解は④。
非大都市圏は主に農村部であり過疎化も進むところもあるだろう。こういった地域には賃貸の共同住宅はみられず、持ち家の戸建て住宅がほとんど。
さらに深掘りしていこう。ここで最大限に注目してほしいのがEである。他の2つに比べておもしろい傾向が見つからないかな?その傾向を示すとこんな感じになるね。
(E)都心部;高い 郊外;中・低い 非大都市圏;高い
どうだろう?東京大都市圏の都心部で高くなっているのだが、その一方で大都市圏の外側でも高くなっている。これってどういうこと?君は説明できるか?
そう、もう分かったよね。単身世帯(過去問では「単独世帯」という言葉で登場している。こちらの言い方もぜひ知っておこう。もちろん同じ意味)の「単身」って何だろう?都心部と非大都市圏とで「単身」の中身が違うのだ。
都心部は賃貸のマンションやアパートが多い。結婚前のサラリーマンを中心とした若い世代である。新たに都会で一人暮らしをしている。マンションやアパートから仕事先に通勤しているのだ。それに対し、非大都市圏はどうだろう?都市圏の外であり、つまり通勤には適さない。若年層が流出する農村であり一部では過疎化も進んでいるだろう。老年人口割合は高い。昔ながらの持ち家に住み、もちろん一戸建て。子供世代が去り、配偶者がなくなるなどして独り取り残された老人なのだ。
同じ「単身世帯」という表現はされるものの両者で状況は全く異なる。都心部の新しい賃貸マンションでの一人暮らしと、農村の古びた一戸建ての独り暮らし。むしろ相反する状況がこういった統計数値では同じ現象として表されている。統計はそのまま受け取りのではなく、常に自分なりの解釈を入れより深い理解につなげないといけない。
さらにいえば最近の共通テストのトレンドとして「空き家」の問題がある。都心部にはマンションやアパートがあふれ、人の出入りは流動的。数年で退去し、他の町へと移る人も多いだろうし、あるいは結婚して郊外に一戸建てを作るかもしれない。都心部には「空き部屋」が多く、もちろんこれは空き家として数えられる。
農村では独居老人が亡くなったり、あるいは施設に入ったり、都市部の子供世代に引き取られたりして「空き家」が増加している。こちらは空き家というより「廃屋」と言った方がいいかも知れない。
都市でも農村でも等しく空き家問題が発生しているし、現在の単身世帯の状況を考えるにさらに空き家は増加していくだろう。都心部では過剰につくられた新築マンションに誰も入居してくれないという空き家問題が生じ、非大都市圏では長く住んだ住人が去り多くの廃屋が残されるという空き家問題が生じている。
<2025年地理探究第5問問4>
正解;②
①;高度経済成長は1960年代。社会増減がマイナスであり転出数が超過していることが分かる。若年層が向かったのは当然「大都市圏」。経済レベルの低い地域から高い地域への人口移動はセオリー通り。正文。
②;1970年代後半なので1976年から1980年あたりを観察しよう。この時期は社会増減のマイナスの数字は少なく、かつてより人口流出が多くないことが想像される。その一方で自然増減については1960年代に比べればやや下がってはいるものの、依然として高いレベルを維持し年間に1.0~1.5万人程度ずつ増加している。「自然増減+社会増減」の値は大きくプラスであり、長野県の人口は増加していることが分かる。「横ばい」とは言えないだろう。これが誤りで正解。
③;グラフを読み取ると、詳しい年次はわからないが1985年や1986年付近は社会増減がプラスとなっている。正文。
④;2000年以降は人口の社会減に引っ張られる形で自然減ともなっている。若年層の流出によってさらに出生率も低下。高齢者だけが取り残され、社会生活を営む上で多様な問題点が生じている。正文。
<2025年地理探究第5問問5>
正解;④
①と④がフランス、②と③がドイツについての説明。①と④から確認してみよう。
①;図から判定。フランスの人口1位の都市はパリのようだ。中央銀行、中央官庁、大企業本社の全てがパリに集まっている。
②;フランスの首都はパリであるが、選択肢①でも指摘されているように人口だけでなく各種の経済・行政機能がパリに集まっている。こういった状況を想像するに、例えば日本の東京と似たイメージを持っていいと思う。狭い都市に多くの人口が集中するのだから過密問題や住宅不足は深刻になるはず。「緩和」はされない。これが誤りで答えとなる。
④が正解(誤文)なので②と③はいずれも答えではないが(つまり正文)一応確認。
②;たしかに図を見る限り、西部や南部にも大企業の本社はある。
③;首都はベルリンだが、ベルリンが機能不全となったとしても他の都市に銀行や企業本社は多く、さらに中央官庁も分散しているので、国全体が麻痺することはない。リスクヘッジ(リスク分散)ができているなんて投資の世界だね。共通テスト地理にはこういった経済や金融、経営などの考え方がちょっとずつ見えてとても興味深いですね。