<2025年/共通テスト[地理総合・探究]追試験・第4問解説>

<2025年地理探究第4問問1>


正解;②


良問ですね。かつてのセンター試験、地理Bにも似たような問題は何回も問われており、改めて地理は新課程になっても、そしてセンターから共テに形式が変わっても、本質は全く変化がないことがわかりますね。


「農民1人当たり穀物生産額」は労働生産性。農業就業人口割合が低い国で高くなる。農業就業人口割合は1人当たりGNIが高い国で低くなる。

・1人当たりGNIと農業就業人口割合は反比例

・農業就業人口割合と農民1人当たり穀物生産は反比例

以上より、1人当たりGNIと農民1人当たり穀物生産額は比例する。


農民1人当たり穀物生産額はグラフより「A>B>C」。1人当たりGNIはアメリカ合衆国・カナダとドイツ・フランスで高く、スリランカ・フィリピンで低いと思われる。よって、AとBの判定は難しいが、Cについては明確にスリランカ・フィリピンであると断定できる。


さらに言えばホイットルセー農業区分による農業形態に基づく考え方もダメ押しになる。スリランカとフィリピンはいずれも湿潤アジア(モンスーンの影響を受け降水量が多い)に位置し、集約的稲作農業地域と考えられる。アジアの集約農業の特徴は「自給的」、「集約的」(これについては土地生産性と対応。後述)、そして「家族中心の零細経営的」。経営規模が小さく、さらに資本力がないので機械を導入できず手作業に頼っている。1人当たりの収量は少ないものであり、労働生産性がとくに低いことが想像される。Cはまさしくモンスーンアジアの稲作であり、スリランカ・フィリピンである。


そしてここでホイットルセー農業区分の考え方をさらに押し進めるならば、アメリカ合衆国・カナダの農業は「企業的」である。大規模な資本投入がなされ、機械化も進む。いわゆる「雑」な農業になってしまうので土地生産性は低くなるが(これも後述。ちょっとだけ覚えておいて!)労働生産性は極めて高い。1人当たりの収穫量はアジアとは対照的に極めて大きくなる。アメリカ合衆国は世界最大の農産物輸出国といわれているが、第1次産業就業人口率は1%台と極めて低い(日本は3%台)。機械化による省力化が進み、大規模農業が行われているのだ。「農民1人当たり穀物生産額」も極大となり、Aがアメリカ合衆国・カナダと判定できるだろう。その金額は400~500百ドルに達する。消去法でBがヨーロッパのドイツ・フランス。こちらは200百ドル程度でアメリカ合衆国・カナダの半分ほどだが、それでも十分に高いね。なんといってもCのスリランカ・フィリピンなどせいぜい10百ドルほどにすぎないのだから。


せっかくなので横軸も検討しよう。「耕地1ha当たり穀物生産額」である。Aの北米なら小麦やトウモロコシ、Bのヨーロッパなら小麦やライ麦、Cのモンスーンアジアならば米だろうか。

先ほど挙げたホイットルセー農業区分の考え方に従って解釈しよう。C(モンスーンアジア)では集約的稲作農業が営まれる。集約的とは「労働集約」、「土地集約」の両方の意味を含む。労働集約については「多くの労働力を使う農業」であり1人当たりの生産額が小さくなる。一方、土地集約は土地を丁寧に使う農業であり、こちらは1ha当たりの生産額は高くなる。


ちょっとまとめておこうか。

・アジアの農業は集約的である・・・集約は「丁寧」という意味。人口密度の高いアジアでは多くの人口を支えるために丁寧に農業が行われる。労働集約と土地集約の両方の意味を含む。

・労働集約・・・労働力の重要性が高い。多くの労働力によって丁寧に農作業が行われる。1人当たりの生産は少ない。このことを「労働生産性が低い」という。

・土地集約・・・土地の重要性が高い。限られた土地を丁寧に扱い、農薬や肥料も多用される。1ha当たりの生産は多い。このことを「土地生産性が高い」という。

・つまりアジアの農業は集約的であり、労働生産性が「低く」、土地生産性が「高い」。二つの生産性において「低い」と「高い」と全く別の傾向を示すが、理論として理解してほしい。


これと対照的なのがいわゆる新大陸の農業形態。北米・南米・オセアニアである。「自給・集約・家族中心の零細経営」のアジアに対し、こちらは「商業・粗放・企業」である。輸出を前提に生産活動が行われ、大規模機械化によって「雑」な農業が行われている。


ここでは粗放に注目。粗放は集約の反対語。つまり「雑」である。土地がいくらでも余っているのだから雑に農業しちゃった方が効率がいいよね。アジアとは反対に「土地生産性が低く」なるのだが、これを少人数で行なっているため当然「労働生産性は高く」なる。


グラフを見てもAとCにはこの傾向が顕著。Aは労働生産性が高く土地生産性が低い。Cは労働生産性が低く土地生産性が高い。それにしてもCの国々は経済レベルが低く物価も低いのだが、それでも1ヘクタール当たりの生産学は10百ドルを余裕で超えている。物価が高いはずのAで2~4百ドル程度なのだからその差は歴然。いかに地域によって農業に対する考え方が異なっているかが分かるだろう。これが「文化」というものである。


ここからはア~ウの判定。A~Cについて国名を判定しなくても、直接記号同士をつなげることもできたかも知れないね。


アはAに該当。「広大な土地」がポイント。土地が広いのだから1ha当たりの生産額は小さくなる。粗放的な農業が行われるアメリカ合衆国・カナダである。高度に商業化された農業がみられ、穀物は「輸出向け」に生産される(*)。そのものスバリ「企業的」という言葉もあるね。


イはCに該当。「多くの労働力」が答えになっているね。労働者が多いのだから1人当たりの生産額は小さくなる。「水田」や「稲作」もキーワードになっているね。集約的稲作農業がみられるのはモンスーンアジアだけである(かつてブラジルの稲作について「集約的稲作農業である」という選択肢が問われたことがある。もちろんこれは誤り)。


残ったウがB。これは数字に関する内容は示されていない。「輪作による畑作農業」は混合農業だね。ライ麦とじゃがいもを輪作し地力を維持しつつ豚など家畜飼育を行う。ドイツなど中部ヨーロッパの農業形態。


(*)ただし、この傾向も少しずつ変化していることを意識しよう。第1問問1ではトウモロコシについて主な輸出元地域が「中央・南アメリカ」となっている。生産は圧倒的にアメリカ合衆国が多く、もちろん輸出もされているのだが、それ以上に国内で油脂やアルコール燃料に加工されることが多く、今後は輸出量が減ってくるのではないかと想像される。このことは第3問問2でも話題となっている。アメリカ合衆国のトウモロコシの多くは「燃料用」であり、アルコール燃料としてバイオマスエネルギーとして活用されている。



<2025年地理探究第4問問2>


正解;⑥


この問題めちゃくちゃおもしろいですよね。とくにトウモロコシについては第1問問1とネタ被りしている。アメリカ合衆国はトウモロコシの世界的な生産国であるが、近年は国内消費が拡大し輸出は抑えられている。その用途はもちろんわかるよね?それが本問の答えなのだが。


ただ考え方としてはナイジェリアにぜひとも注目して欲しい。ナイジェリアは北部が半乾燥の草原(サヘル地帯)南部が熱帯雨林(気候区分は雨季と乾季の明瞭なサバナ気候であるが、植生としては熱帯雨林と考えていい)の焼畑農業地域。自然環境は厳しく、豊かな農業は見込めない(おっと、このネタは第1問問3と重なっているね)。粗末なキャッサバや雑穀(ソルガム)などが栽培される程度。しかしそれが2億人を超える人口を支えているのだから驚かされる。


というわけでナイジェリアについては「焼畑農業=キャッサバ」を基本線として考えて欲しい。焼畑農業の特徴って何だろう?熱帯雨林は衛生環境が悪く、牛や馬、豚などの家畜を飼育することは困難。「無築」農業である(他に無築の農業形態としては同じ熱帯雨林の農業であるプランテーション農業と、土地が肥沃であるため家畜の排泄物に肥料を依存する必要のない企業的穀物農業がある)。家畜がいないのだからもちろん「飼料」として農作物を利用することはない。飼料用の割合が低いカがナイジェリアである。


さらにトウモロコシと麦類の区別。穀物は「大麦・ライ麦・小麦・トウモロコシ・米」の5つを知っておく(第1問問3では雑穀(ソルガム)も問われているが、これは質の悪い穀物であり優先度は低い。同様の雑穀としてはヒエやアワ、コウリャンがある)。最も厳しい自然環境(低温・少雨)で栽培されるものが大麦。順にライ麦、小麦、トウモロコシであり、最も恵まれた自然環境(高温・多雨)で栽培されるものが

米である。


大麦とライ麦は生産量が少なく、また雑穀については北米や欧州など経済レベルの高い地域(つまり豊かな食生活が人々によって営まれている国々)ではほぼ生産されていないだろう(第1問問3参照。雑穀は自然環境が厳しく、さらに経済レベルの低い貧困地域での栽培が主)。カ(ナイジェリア)はともかく、キ・ク(アメリカ合衆国かフランス)の麦類は「小麦」に限定して考えていいだろう。


さて主要穀物のうち、家畜の飼料として栽培されるものを知っておこう。大麦、ライ麦、トウモロコシは家畜飼料となり(*)、小麦と米はこれに該当しない。小麦と米はカロリーや栄養価が高く、これを家畜に食べさせてしまうとカロリー過多、栄養過多になってしまい死んでしまうのだ(人間も高カロリーで糖尿になったり、エナジードリンクを飲んで命を落とすこともあるよね)。先ほども述べたが大規模な小麦農業である企業的穀物農業が「無築」であるのは小麦が餌にならないため。日本でも米が余っているのに飼料としての利用はみられない(これ、うまく使ったらいいと思うんだけどね。米を家畜飼料に加工するのはそんなに難しいことなのか)。EとFを比較して「飼料用」の割合が全体に高いEがトウモロコシ、Fが小麦となる。そもそもナイジェリアで小麦なんか栽培しているのだろうか?第1問問3と照らし合わせてみるとそういった疑問も生じるね。


(*)ジャガイモと大豆も飼料となる。北部ヨーロッパではジャガイモとライ麦が輪作され豚の飼料となり、さらに豚の排泄物が肥料として使われる。欧州では有機農業が発達している。アメリカ合衆国コーンベルトではトウモロコシと大豆が輪作。集中肥育場(フィードロット)ではこれらが飼料として大量に家畜に与えられる。


では最後にキとクの判定。第1問問1とも合わせて考えてみよう。ここで最大のポイントになるのは「バイ燃料」である。アメリカ合衆国は世界最大のバイオマス大国であり、とくに液体亜ルール燃料の生産が圧倒的。その原料となっているのが「トウモロコシ」なのだ(これに対しブラジルではサトウキビからアルコール燃料が抽出されているね)。アメリカ合衆国は圧倒的なトウモロコシ生産国であり、日本も飼料としてそれを輸入しているが、アメリカ国内では飼料だけでなく燃料としての需要も拡大している。とくにトウモロコシの「燃料用」の割合が高くなっているクをアメリカ合衆国と判定するべきだろう。


それにしてもキのフランスでは麦類も結構飼料となっているんだね。先ほどはフランスの麦類については小麦限定と考えようと言ったけれど、これって案外「大麦」が含まれているのかも知れないね。フランスは大麦の主要生産国の一つ。



<2025年地理探究第4問問3>


正解;⑥


伐採については森林面積の広い国だと思う。少なくとも国自体の面積が小さい国はちょっとランキング上位には入りにくいですよね。気になるのがサのオーストリアやベルギー。これ、ヨーロッパの小国でありもちろん面積も小さいですよね。サは少なくとも伐採量ではないはず。

一方で面積の大きな国が並んでいるのがス。具体的な面積や世界における順位は知らなくていいけれど、なんとなく広そうな国が並んでいるでしょ?これが伐採量でしょうね。

残った二つならばもちろん注目するべきは中国。中国は基本的には資源や農産物については輸入に依存する国。木材は「資源」でもあり、農産物と同様に植物の一つである。中国で足りていないことは十分に想像できるんじゃないかな。これが輸入量となる。

残ったシが輸出国。ロシアやカナダが上位であることは納得。ドイツがちょっと微妙だけどこの国は輸入も多いのであくまで中継しているだけなのかも知れない(なるほど、そういえばドイツの隣国であるチェコやオーストリア、ベルギーも木材の貿易が盛んな国のようだ。やはり国内を木材が「通貨」しているだけなのかも知れない。ロシアから輸送された木材がチェコやドイツを通過し、西欧諸国へと送られている。

一方でニュージーランドは国内の森林率こそ低いけれど(国土面積の半分が牧場牧草地である)、日本と同じような気候であり木材は十分に存在している国。人口や経済規模が小さいため、輸出余力が大きいことが想像できる。



<2025年地理探究第4問問4>


正解;④


直接投資については具体的に「工場進出」を考える。対外直接投資という言い方があるが、これは自国から外国への投資つまり工場進出。日本など先進国でこの値が大きい。「1人当たりGNIが高い国は1人当たりGNIの低い国に向かって多くの投資をしている」。

一方、対内直接投資は外国から自国への工場進出。こちらは発展途上国で値が大きい。「1人当たりGNIの低い国は1人当たりGNIの高い国から多くの投資を受け入れている」。


ただ、本問の場合、問われているのは「外国企業からの直接投資の受け入れ」つまり「対内直接投資」だけであり、対外直接投資と対内直接投資の違いが問われているわけではない。さらに言えば登場している4カ国すべてが発展途上国であり、先進国と発展途上国の違いが問われているわけでもない。ここをメインに考えない方がいいかもしれない。


というわけで主体となるのは「国外出稼ぎ者からの送金額」である。多くの人口を労働者として国外に送り出し、家族の元への送金額が大きい国を考える。先ほども指摘したように今回登場している国はみな発展途上国であり、全ての国が外国へと多くの出稼ぎ労働者を送り出していることが想像される。だからこそ重要となるのはその内容である。どういった性質の労働者が外国へと流出しているのだろう。


例えば中国である。日本にも農業実習生として中国人が多く迎え入れられていることはみんなの中にも知っている人がいるだろうし、あるいはアメリカ合衆国のシリコンバレーで働く中国人エンジニアも多い(これはインド人の方が多いかな)。とはいえ、中国の国内に産業の発達した地域があり、国内の貧困地域からの出稼ぎはそちらに集中する。つまり中国の出稼ぎ労働者の移動は「国内」が中心である。内陸の農村部から沿海部の大都市へと多くの労働者が移動する。一方で海外へは極端な形での人口移動はない。かつては華僑として東南アジアなどへ多くの人口が流出したが、それとは異なった状況である。


それに対しインドはどうだろうか。インドというか南アジア全体と考えるべきだろうか。まず英語圏であるため(南アジアは全域がイギリス植民地だった)、イギリスをはじめとするヨーロッパへの出稼ぎが多い。出稼ぎというよりむしろ移民としてヨーロッパにそのまま住み続ける人こそ多いかも知れないが。イギリスの先先代の首相はインド系のヒンドゥー教徒だね。アメリカ合衆国の先の大統領候補のハリス氏もインド系。出稼ぎどころか移民として欧米社会で大きな影響力を発揮している。


さらにこれ以外では近隣の「富裕な地域」である西アジアへの移動が多い。西アジアはオイルマネーで潤う。労働集約型の工業が発達するわけではないので製造業の労働力ではないが、当地は莫大なオイルマネーを利用した都市施設の建設が急ピッチで進められている。カタールではワールドカップが開催され、そのスタジアムは日本人の我々が想像を絶するほど豪華である。アラブ首長国連邦のドバイは21世紀最高の観光都市であり、多様なリゾート施設が開発されている。これらの建設を担うのが低賃金の労働力であり、それは経済レベルの低い南アジアからの出稼ぎ労働者である。


どうだろうか?インドでとくに顕著なマネーの動きとしては「国外出稼ぎ者からの送金額」があるのではないか。インドで値の大きいチがこれに該当すると考える。


一方のタが「外国からの直接投資の受け入れ額」となる。なるほど、こちらは中国の値がとくに大きくなっているね。中国は世界2位のGNIを有する経済大国であり、そのスケールの大きさは分かるだろう。中国は「世界の市場」であると同時に「世界の工場」である。鉄鋼生産は圧倒的であるが、衣類や自動車、電気機械、そしてPCなど情報通信機器の生産や組み立ても世界を圧倒している。ただし、それらの全ての企業が中国国内のものだろうか。欧米や日本、台湾や韓国など研究開発に優れた国々の企業が安価な労働力を求めて中国国内へと製造拠点(工場)を進出され、豊富な中国人労働者によって生産活動を行なっている。例えば日系企業の進出数も国別で捉えると中国が最大。中国へと世界中から工場が集まっていることは「投資が集まる」ことと同義である。改めてタを「外国からの直接投資の受け入れ額」と考えよう。


最後にロシアとフィリピンの判定。でもちょっとロシアは分かりにくいよね?あまり出稼ぎ労働者や外国企業の進出というイメージはない。やっぱりカギになるのはフィリピンだと思う。とくに女性労働力だよね。


かつての日本ではフィリピンから多くの女性が「興行」目的で入国・就業していた。日本では原則として外国人の労働は制限され、何らかの専門的な資格を有さないと自由な経済活動はできない。その点、フィリピンは興行つまりエンターテイメントとして多くの女性が日本にやってきた。エンターテイメントといえば歌手やダンサーなどだが、実際には彼女たちは高度な能力を持っていたわけではなく、飲食店などで働くのみ。「法の目の穴」を掻い潜って日本で働いていたようなものなのだ。


さすがにこういった不正に近いことは許されないので現在は規制がされている。中年以上のフィリピン女性が日本国内に多いのはこの名残。しかし、とはいえフィリピンからの労働者の移入がなくなったわけではなく、現在は介護や看護の研修生として日本で働くフィリピン人が多い。介護・看護研修生には他にインドネシア人も多いのだが、インドネシア語を母語としムスリムであるインドネシア人は外国社会に馴染むまでにハードルが高い。その点、英語が母語でカトリック教徒であるフィリピン人は容易に現地社会に適応する。フィリピンで出稼ぎが「主産業」であるのはこういった文化的側面も大きい。「フィリピンの最大の輸出品目は女性労働力である」という言い方もしばしばされている。もちろん彼女たちが外国で稼いだお金は本国の家族に送られ、大切な生活資金となっている。フィリピンは「国外出稼ぎ者からの送金額」が大きい国である。


さらに言えば「英語」に堪能なことは大きい。シンガポール(英語を公用語する)やホンコン(公用語は中国語だがかつてイギリス領だったので英語が使える)ではフィリピン人の女性がハウスキーバー(家政婦)やベビーシッターとして働く。そもそもシンガポールやホンコンには中国系の人々が多く(というかホンコンはそのまま中国ですけど)中国人の家庭では家政婦を雇うことが一般的なんだそうだ。昔は中国の貧しい地域出身の女性がその役割を果たしていたわけだけど、現在はフィリピン女性が重用されているというわけだね。


英語が使えるので彼女たちの活躍の場は世界に広がる。アメリカ合衆国やオーストラリア、さらに西アジア(こちらも公用語はアラビア語だが国際的な地域であり英語が通用する)でもフィリピン女性の需要は拡大している。富裕な家庭を中心にフィリピン人家政婦やシッターが活躍する。国外出稼ぎ者からの送金額つまりチが大きいKがフィリピンとなる。


フィリピンなど地理的優位性(周辺を日本や台湾など研究開発力に優れた国に囲まれ、さらに中国のような

「世界の市場・世界の工場」に近接する)があるのだから、もっと外国からの工場進出があってもいいとは思うのだが、本問を見る限り投資額は決して多くない。出稼ぎからの送金に頼っているようでは、国全体の発展は見込めない。フィリピンの場合「英語・カトリック」という唯一無二の優位性が国自体の産業振興や工業化に結びついていない。現在の1人当たりGNIは後発の社会主義国であるベトナムに追い抜かれてしまっている。



<2025年地理探究第4問問5>


正解;⑥


クラシカルな形の問題だね。センター試験の時代もよくこの形の問題は問われた。「全国に分布するもの」と「三大都市や地方中枢都市に立地するもの」と「東京のみに過度に集中するもの」の3つ。比較的最近の問題では「新聞の出版」が地方中枢都市で比較的盛ん(東京だけに集まるのではなく)っていうネタが面白かった。たしかに地方新聞って意外に多かったりするよね。本問も生活に立脚した多様な視点に基づいて考察していこう。


さて最大のポイントは「社会福祉・介護事業」(以後単に「介護」とする)。介護は一人一人に対応する業種であり、いわば「最寄品」的な性格を有する。特定の大都市に集中するのではなく(これはデパートなど「買い回り品」の方だね)、全国に散らばっている。人が住んでいればそこに介護の需要や存在する。


町を歩けばコンビニやスーパーマーケットと同じような感じで高齢者用のデイサービス施設や老人ホームが並んでいる。まさに「最寄品」的なサービスであり、地域に住む人々に直接的にサービスを与えている。クリーニング店、小中学校、郵便局。このような商店・サービス・公共施設はいくらでも思い浮かぶね。その人が介護なのだ。全国にまんべんなく分布しているマが「社会福祉・介護事業」となる。もちろん全国的にみれば東京都や大阪府、愛知県などの値が大きく、さらに東北地方では宮城県、九州地方では福岡市など中心都市を有する県にも大きな円が絵かがれているが、これは人口に対応しているがゆえ。


さらに「インターネット関連サービス業」(以後「インターネット業」)と「研究開発業」。あれ?これって同じじゃないの?って思わず叫んじゃうよね?インターネット業にしても結局とところ研究や開発をしているわけだし。


っていうことはまずはこの2つを差別化しないといけない。ここではインターネット以外の研究開発ってことなんだと思う。それって一体何なんだ?ちょっと考えてみてほしい。ここでしっかりとアイデアが出るかどうかが地理で高得点が取れるかどうかの境目であるし、君たちがいかに地理を「リアル」に感じているかということ。


インターネット業がいわば「目に見えない」生産物を作るものであるのに対し、「目に見える」生産物って何だろう?それって例えば電気機械や輸送用機械であり、とくに「自動車」を考えるのは自然なことだろう。高度経済成長き以来日本経済を担ってきた日本の「お家芸」である。自動車の研究開発と製造組み立てが長く数十年もの間日本の繁栄を支えてきた(逆にいえばかれこれ半世紀もの間ずっと日本は産業構造の転換ができていないっていうこと。そりゃ日本もダメになりますわ。「失われた30年」どころの話じゃないよ。とっとと自動車工業を捨ててICTに全振りするべきだったんだろうね。1980年代の日本の優位性があれば少なくともOSはMacとWindowsに支配されなかったはず。SONY OSやNEC OSはなぜ出来なかったんだろうね)。


話を「自動車」に絞ってしまっていいと思う。自動車といえばどこだ?そう、それはもちろん愛知県だよね。愛知県は都道府県別の製造業出荷額ではトップにあるし、そして愛知県豊田市は市町村別の工業ランキングで首位。もちろん研究開発は自動車だけに限らないだろうけれど、しかし少なくとも自動車が含まれているのならば愛知県の地位は高いはず。ミとムを比較しよう。どうかな?愛知県の円の大きさを観察した場合、ミの方が大きくないかな。一方のムは東京都に集中し過ぎ。愛知県の値はそれに比べるとわずかなもの。ミの方が比較的全国に散らばっている感じがするし、その中で愛知県の値も小さいものではない。ミを「研究開発事業」とみていいんじゃないか。愛知県以外の県も大きいけれど(っていうかいっぱいあるね)先ほども言ったように研究開発は自動車に限定されるものではない。意外なほど茨城県の値が大きいがこれは筑波大学やJAXAの存在と結びついているのかな。この辺りもいろいろな考え方ができ、先ほども言ったけれど君たちの「生活」と関係するのだ。生活の中でいろいろな気づきを得て、それを問題を解く思考に利用してほしい。


残ったムが「インターネット関連サービス業」であり正解は⑥。東京圏というか東京都に過度に集中している。世界と直接的に結びつく都市が東京であり、その象徴がインターネットなのだろう。かつて(1990年代)のセンター試験でも似た様な問題が問われ、その際も東京都(東京圏)に過度に情報通信産業が集中していた。当時からインターネットの世界は東京への一極集中なのだ。


インターネット業のような「頭」を使う産業は居住環境のいい地域に集まる。つまり日本で言えば東京都なわけだ。都市機能が充実し「住みやすい」地域となっている。かつて渋谷を中心に「ビットバレー」(渋い谷=ビターバレー=ビットバレー)と呼ばれる日本版シリコンバレーが企図され、多くのITベンチャーが林立した(当時は「ICT」ではなくまだ「IT」って言っていましたね)。それは十分な成果を上げなかったけれど、現在渋谷は再開発の真っ最中でありビットバレー復活の動きもある。岸田さんが首相だった時にさかんにこのことを言っていたけれど、現在はどうなんだろう?「移民反対」の動きがある現政権じゃ無理かなぁ。日本に先端産業を誘致するということは優秀な外国人技術者も招くということになる。渋谷全域に外国人特区(世界各地から技術者を迎え入れる)ぐらいの大胆なプロジェクトを立ち上げないと日本はこのまま沈んでいくと思うんだけどな。。。


なお、参考までに。今回の研究開発事業やインターネット業はあくまで「頭を使う」産業であり、「手を使う」精密部品などの製造とは関係ないことに注意。例えば半導体(IC)ならば九州に工場が多い。IC部品は航空機で運ぶことができ、遠隔地での生産が不利にならない。現在も熊本県(台湾企業のTSMC)や北海道(日本企業合弁のラピダス)にIC生産の拠点が設けられている。こちらは「手」を使う工業。地方圏の安価な労働力が利用される。


また長野県にも注目。長野県は従来より精密機械の製造が盛んな地域であり、例えばセイコーの時計などは有名だろう。現在は長野県は「情報通信機器」の生産が国内1位となっている。PCやスマホなど情報通信機器の部品が実際には作られている。これらは中国へと移送され、そこで完成品のPCやスマホに組み上げられる。今回は長野県は重要なカギにならなかったが、ぜひこのことも知っておこう。


それにしてもこの問題は昔からある形の問題なのだが、時代によって亜様な切り口があって興味深いね。今回は「介護」が最大のテーマだったわけだが、こうしてみると地方では実に仕事が少ないことに気づくね。公務員を除けば地方に残された仕事は介護しかない。とくに高齢化が進む地方圏において主要産業とも考えられる。東京圏(というか東京都のみ)に全てが集中する歪(いびつ)な構造は改善されるべきなのだろうか。それとも不効率な地方は切り捨てるべきなのだろうか。そういえば地方都市では最近は葬儀業が増えてきているよね。老人介護を通り越してすでに葬儀の需要が拡大しているのだ。



<2025年地理探究第4問問6>


正解;⑤


おっと、これこそ自動車工業の問題だったね(笑)問5と重なっている。愛知県に注目。愛知県には▲の記号。これが自動車すなわち「輸送機械」を表すのは明確。

さらに●は全体的に少なく、しかも1950年代の地方圏が中心。農業が主産業の時代と地域であり、これが「食料品」なんじゃないかな。

残った□が消去法で電気機械。正解は⑤。

日本地理の問題だね。中学地理を復習して日本地理は完璧に!