<[地理A]2025年/本試験・第5問>

たつじんオリジナル解説[地理A]2025年/本試験・第5問

 

(第5問問1〜問5は地理Bと共通)

 

<第5問問6>

良問。考察問題として優れている。

左段に示された「住民意見」について、それに対応する「施策」と「指標」が中段と右段に示されているが、そのうち不適当なものを選ぶ問題。

選択肢①から。「住民が賛同しない観光開発による自然は景観が壊れる」とある。自然が開発される際にどのような方策が取られ、どのような環境に対する配慮が行われるのか、それを主導する業者による説明は当然必要になるだろう。「開発業者に対する住民説明会の開催要求」はその通りだと思う。「住民説明会の開催回数」もそれなりに多いことが求められるし、「参加者数」もそれによって増えるだろう。これは誤っていないのでは?

選択肢②について。住民意見として「観光客の増加による地域内の交通に支障が出る」とある。いわゆるオーバーツーリズムだろうか。たとえば京都市内では外国人観光客が過剰に押し寄せることによって深刻な渋滞が生じており、一般市民の移動にも大きな影響が与えられているようだ。このような状況をイメージすればいいだろう。

これに対する施策として「需要の季節的な偏りに対応した事業所の誘致」とある。なるほど、ニセコのようなスキー場ならばウインタースポーツの盛んな冬にこそ多くの観光着が訪れるはず。しかし、そもそもの住民意見として季節の違いは意識されているだろうか。もちろん冬の観光客を夏に分散させることで短期間に観光客が集中することによるオーバーツーリズムは解消される可能性はある。しかし、そもそも観光客はスキーリゾートにやってくることを目的としているのであり、彼らが夏に訪れる観光地としてニセコを選ぶだろうか?夏の観光客を増やす努力を続けたところで冬のオーバーツーリズムは解消されず、問題の解決は「季節的な偏り」にはないと思われる。これが誤りだろう。なお「地域内交通のキャッシュレス化率」についてもちょっとどうかなとは思う。キャッシュレスにすればバスの乗降時の時間や手間を減らすことになり、客のスムーズな流れによってバスの運行も時間通りに進むことになるんじゃないかな。しかし、渋滞そのものは緩和されないと思う。客そのものが多いのだから乗り降りの時間ロスを減らしたところでバスの本数は変わらない。例えば道路を拡張したり、路線を増やすなどの施策を行えば有効なのだが、ここではそういったことについては言及されていない。

選択肢②が答えとわかったので他は検討の必要はないが、参考までに。

選択肢③について。「観光客に」地域の農産物を売り込む」ことについては「地元農産物の加工・販売に対する補助」は有効だろう。もちろん「地域産品の売上額」も考慮されることになる。さらに選択肢④だが「観光産業に働く外国人」が多くなれば当然ニセコ町に住む外国人居住者も増える。そうした場合には「各国の文化や言語を学ぶ場」も創出される」だろうし、結果として「住民の各国への親しみ」も増すことになるね。選択肢③と④は正しいことを言っていると思う。