<[地理A]2025年/本試験・第4問>
たつじんオリジナル解説[地理A]2025年/本試験・第4問 |
<第4問問1>
選択肢はインドネシアとオーストラリア、オランダ。このうち明らかに国土面積が狭いのはオランダ。この国に住む動物の種類は少ないだろう。オランダがCとなる。
さらにオランダはヨーロッパの先進国であり、さらに人口密度も高い。国土のほとんどが市街地などとして開発されていることは間違いない。ウがオランダとなる。
インドネシアとオーストラリアについては、高温多雨の熱帯雨林と乾燥した砂漠やステップの違いを考えよう。熱帯林は遺伝子の宝庫である。植物や昆虫類が豊富であることは容易に想像つくだろうが、猿など哺乳類の種類も多いのではないか。豊かな自然環境を有するインドネシアで哺乳類の数が多く、哺乳類の種類そのものが多いのだから「絶滅が危惧される」と条件を限定してもやはりその種類は多いものと考えられる。Aがインドネシアである。さらに文章については「熱帯雨林」がキーワードでアがインドネシアとなる。
残ったBとウがオーストラリアである。乾燥地域が多くそもそもの哺乳類の種類が(熱帯雨林のインドネシアに比べ)少ないと考えられる。「絶滅が危惧される」種類も多くはない。注目すべきはイに「独特な生態系がみられる」とある。独特の生態系とはもちろん固有種のこと。古い時代に他大陸から切り離されたオーストラリアは数千万年もの間「孤立した大陸」として動植物が独自の進化を遂げてきた。カンガルーやコアラ、カモノハシなどオーストラリアにしか生息しない動物は多いね(カモノハシは卵を産むんだけど、これ、たしか哺乳類だったよね)。「うち固有種の種類」を比較するとBは57でAの131より少ない。しかし割合を考えてみよう。Aは212のうち131であり6割程度。Bは69のうち57で80%を超える。オーストラリアの動植物そのものに固有種が多いとも考えられ、それがこの数値に反映されているのだ。
<第4問問2>
まず天然林と人工林を比較してみよう。いずれの地域でも開発が進み、次第に天然林が減少していくことが想像される。一方で木材は重要な天然資源であり、森林が伐採される一方で植林も進み、商業的な管理がなされることになる。減少しているものが天然林、増えているものが人工林と思っていいのではないか。1990年と2020年の値を比べてみて、カとキのいずれも数字が増えているEが「人工林」、減っているFが「天然林」とする。
2020年の値を見るとカの国では人工林が7.7%、天然林が64.2%と天然林の値が圧倒的。日本では天然林は失われほとんどが人工林に植え替えられているが、東南アジアは開発が進んでおらずまだ天然林が多く残されているということだろう(それでも次第に減っていく方向にはあるが)。
さらにカとキだが、両者の違いは森林面積とくにF(天然林)の面積の違いである。2020年のFの数値を比較してみるとカは64.2%の高率となる一方で、キはその半分の32.0%。キの値はベトナム←カンボジアと近い。
これについてどう思うだろうか?資料1の上の図を参照してみよう。ここにはおおまかな地形が示されている。例えばカンボジアは空白の部分が広い。ここは標高が低い土地であり、東南アジアの特徴を考えた場合、ここは広く水田として利用されているのではないか。高温多雨の東南アジアは集約的稲作農業地域であり、低地では稲が栽培される。タイも比較的空白部が多くなっている。カンボジア同様に国内の広い範囲が水田として利用されているのではないかと想像される。なるほど、タイは全体として土地生産性が高いモンスーンアジア(湿潤アジア。東アジアから東南アジア、南アジアを含む多雨地域)の中では例外的に土地生産性が低い国。粗放的な農業が行われる。しかしこれは決してネガティブなことではなく、土地生産性を示す指標である「1ha当たり収量」が「収量÷農地面積」で計算されることを思い出してほしい。収量に比例すると同時に、面積に反比例するのだ。タイは稲作に適した土地に恵まれる(大河川沿いの広大な低湿地)ため、国内に広く水田が展開される。国土面積に占める耕地(農地)面積割合が高く、そのことがこちらの図の標高の低い地域が広いことからも想像される。森林面積はあまり高くないのではないだろうか。カンボジアと同じぐらいの値と考え、とくに不自然なところはないだろう。
一方のラオスはとくに北部は色が濃く、標高の高い高原となっていることがわかる。日本でも一般に標高の高い高原や山地は森林に覆われていることが多い。ラオスでも同じような光景が広がっていることが想像できるのではないか。木々に覆われた山々が広がる高原、それがラオスの一般的な風景ならばラオスでこそ森林面積割合が高いことには納得なのだ。以上より、カをラオス、キをタイと判定する。
なお、タイについては大きく森林面積割合を低下された国として知っておくといいだろう。かつて日本の主な木材の輸入国はフィリピンとタイであった。大規模で無秩序な伐採が行われた結果、両国の森林は大きく縮小した。いずれも国土面積に占める森林割合が60%を超える国(日本や、今回取り上げられているラオスがこれに該当)だったが、現在は30%台にまで低下している。日本が東南アジアに対して行った「罪」である。
両国で木をさんざん切り尽くしてしまった日本や次なるターゲットとしてマレーシアとインドネシアに狙いを定めた。しかしこちらの両国としては日本の過剰な伐採を許してはいけない。森林を国の管理下に置き、計画的な伐採(そして植林)を行う。原木(丸太)での輸出を原則として禁止し、国内で加工してから合板として輸出することで国内の産業育成にも努める。これによりマレーシアやインドネシアでは現在も森林面積割合は50%以上が保たれている。インドネシアではアグロフォレストリーもよく知られているね。森林を伐採したあとで植林を行うのだが、その成長の過程で農作物の栽培も同時に行う。
<第4問問3>
グラフと表によって統計が与えられている。文章から検討しよう。選択肢①について。「食用としての乱獲」が個体数を減らす要因となっているようだ。これ自体はとくに不審な点はないと思う。正文ではないか。とりあえず保留。さらに選択肢②。「沿岸国による管理」も当然行われているのではないか。これも正文だと思う。同じく保留。
選択肢③はどうだろう。「大西洋クロマグロ」と「太平洋クロマグロ」を比べている。こういった「比較の構造」を含む文は怪しいよね。容易に誤り選択肢をつくりやすい。会話文では太平洋クロマグロの方が多いとされているが本当だろうか。大西洋クロマグロの方が多いのではないか。話題にされているのは輸入量である。
表を参照。輸入量についてはヨーロッパからが圧倒的に多く14.4千トン。ヨーロッパは太平洋に面しておらず、これらヨーロッパから輸入されるのが太平洋クロマグロであるはずはないだろう。ヨーロッパは大西洋に面し、主に大西洋クロマグロが漁獲され輸出されていると考える(あるいは地中海クロマグロかも)。この選択肢が誤りだね。
選択肢④はとくに検討の必要はないでしょう。文章もとくに間違ったことは言っていないと思う。
<第4問問4>
化石燃料とは石炭・石油・天然ガスのことで、燃焼によって二酸化炭素を排出する。
フランスは現在も原子力発電への依存が高い国(原子力発電量そのものは減少しているが)。化石燃料への依存度は低く④が該当。さらに二酸化炭素排出量についてはおもらくその国のエネルギー供給(消費)量そのものと比例すると考えられ、つまりGNIと比例すると考えていい。アメリカ合衆国と中国はGNIが極めて大きく、エネルギー供給量も多くそして二酸化炭素排出量も多いだろう。韓国は人口が少ないこともありGNIは小さい。①~③のうち最も二酸化炭素排出量が少ない③が韓国。なお、人口が5000万人しかいない(アメリカ合衆国の7分の1、中国の30分の1)ことを考えると、1人当たりの値に換算した場合、決して二酸化炭素排出量の少ない国と言えるわけではないこともこの表から読み取っておこう。
②が中国。GNIの拡大によってエネルギー消費も増加。二酸化炭素排出量も急増している。一方で水力発電を含む再生可能エネルギーの開発に熱心な国であり化石燃料による発電量の割合は低下。
①がアメリカ合衆国。先進国では脱炭素が進んでいる。
<第4問問5>
キーワードを拾っていこう。
サでは「都市開発」とある。写真から周辺が市街地化しているのはJの枠内のみである。なおJの地形図からは海岸線が幾何学的に直線化されていることがわかる。これは埋立地であろう。人工的に都市開発がなされている。
スでは「土地利用の制約」とある。これは陸地の面積が狭いため、渡り鳥たちが羽を休める場所が限定されているということだろう。破線の枠内がほとんど水域となっているLが該当するのではないか。
残ったシがKとなる。内陸の土地であり、KやLに比べて地形の改変は少ないだろう。Jは埋め立てによって人工的に地形が変化している。Lは沿岸流(海岸に並行する小規模な海水の流れ)によって土砂が運ばれるなどして土砂の堆積地形がつくられている。やはり地形の変化は大きい。逆に内陸の凹地であるので、流域の降水量の増加などによって河川水が氾濫しこの地に大きな「水たまり」ができることもあるだろう。「水面の上昇」の可能性は、JやLに示されている海に比べれば大きい。
なお、スは実は北海道東部なのだが、この地域に「水田」があるのかは不明。寒流などの影響で夏の気温が低く、主に畑作や酪農が行われているのが北海道東部の特徴なのだが。一部には水田がみられるのかな。
<第4問問6>
先ほどの問2がヒントになる。最初の会話で野生動物が個体数を減らす原因として「乱獲」が挙げられている。漁業そのものは問題ないものの、しかし過剰に漁獲を進めることで個体数が大きく減少してしまい、それが種の保全を脅かすものになる。いくら公海とはいえ、特定の種の漁獲を「推進」したら将来的に漁獲量が減少してしまうだけでなく、いつしかその種の絶滅という生態系に大きなダメージを与える状況に及ぶ可能性もある。とくに問2で扱われているクロマグロなどはおそらく陸地から離れた公海に多く分布するものではないか。排他的経済水域はもちろんだが、公海であってもある程度は制限されるべきものであろう。それが「持続的」(現在だけでなく将来においても安定的な漁獲が得られる)漁業につながっていく。