<[地理B]2025年/本試験・第2問解説>
たつじんオリジナル解説[地理B]2025年/本試験・第2問 |
<[地理B]2025年/本試験・第2問問1解説>
[ファーストインプレッション]センター試験時代から継続して地理Bの第2問は統計問題であり、とくに問1は難易度が低い傾向があり、それは最後のこの問題まで引き継がれているね。統計に基づいて考える。この姿勢こそ地理の本質である。
[解法]木材の問題だが、用途に注目するのはわかりやすい。用途には二種類あり「用材」と「薪炭材」。用材はパルプ材などであり生活水準が高く紙の使用が多い先進国。薪炭材は燃料であり、ガスや電気の代わり。発展途上国で多い。
アフリカに注目。経済レベルが低い地域であり、「用材<薪炭材」。ここで値の大きいアが薪炭材であり、小さいイが用材。
これをAとBに当てはめる。Aは薪炭材が多く経済レベルの低い地域。中国やインドなど「アジア」だろう。Bは用材が多く経済レベルが高い地域。アメリカ合衆国など「北・中央アメリカ」だろう。
なお「実数」にも注目すると、Aのアジアは12億と大陸別で第1位。人口規模が圧倒的に多いので、その分だけ木材の使用も増えるのだろう。
[アフターアクション]オーソドックスな問題。センター試験/共通テスト地理Bでは一貫して第2問問1は統計を用いる問題であり、だからこそ難易度が低いのだが最後までそのパターンは踏襲された。「割合」だけを問うのではなく「実数」も考慮に入れられているのがさらに地理的。アジアの人口の多さ(故に消費や生産も多い)ことが大切だった。
<[地理B]2025年/本試験・第2問問2解説>
[ファーストインプレッション]おっと菜種が登場!これは驚いた!菜種油は極めて重要性が高い生産物でありながら、なぜか地理のテストには出題されない(僕が知る限り、東大で1回だけ登場したことがあるのみ)。我々にとって非常に重要な食品である植物油。このうち、世界で使用されている最大の割合を占めるのが菜種油。つまりアブラナ(菜の花)の油だね。
[解法]植物性油脂の問題は頻出なのだが、菜種油は初登場。非常に重要性が高いのになぜかテストで問われることはほとんどない。だからもちろん君たちも知らないよね。
ここは「パーム油」を主に考えよう。パーム油は油ヤシから抽出される油脂。昔のテストでは「石鹸や洗剤の原料」として登場していたが、最近はむしろ「食用油」として主に使われるようになってきている。さらに将来的には間違いなく「バイオマス燃料」の主力となる。まるで出世魚のように用途が次々とアップデートされていく。
パーム油の生産国は油ヤシの栽培国と一致するとシンプルに考えてしまっていいだろう。「油ヤシ・天然ゴム・カカオ」は高温多雨3人組。熱帯雨林の極めて高温多雨の自然環境下でこそ栽培される。日本も温暖多雨な国だが、さすがにこれらの作物は栽培できない。ちなみに天然ゴムの原産地はアマゾン盆地、カカオは中南アメリカの低地、油ヤシは西アフリカのギニア湾岸。いずれも熱帯雨林が繁茂している。
パーム油の生産統計は確実に知っておこう。上位2カ国はインドネシアとマレーシア。マレーシアではイギリス植民地時代に天然ゴムのプランテーションが開かれた。独立後、それらのプランテーションは国営やマレー系の経営になり油ヤシへの植え替えが進んだ。労働力に依存し収益性の低い天然ゴムより、省力化が可能で収益性の高いパーム油の方が、人口が少なく経済レベル(1人当たりGNI=賃金水準)の高いマレーシアの状況に適しているのだ。インドネシアでは熱帯雨林の開き油ヤシ農園が開発されたが森林伐採が問題視された。現在はアグロフォレストリーによって森林育成と農作物の栽培を両立させている。
カとキのうち、インドネシアとマレーシアで大きな値となっているキがパーム油。国名がわからなくとも、油ヤシの栽培条件(高温多雨)を考えれば赤道付近での値が大きいことから推測は可能。一方のカが菜種油。
Eとfについてはfがパーム油となる。「食用」はeとfで共通しているが、ここは昔のテストでよく出題されていた「洗剤・石鹸」を手がかりとしたらいいんじゃないかな。「やし油せっけん」はよく知られているんじゃないか。それからもう一点必ず知っておいてほしいこととして「近年は生産量が急増」もチェック。東南アジア地域に生産が集中しているパーム油だが、世界規模で捉えてみてもその生産量の伸びは著しい。2017年のセンター試験でも同じ内容が問われている(10年以内に同じネタが出るというセンター・共通テストの法則とも合致しているね)。
たしか現在日本のマレーシアからの最大輸入品目がパーム油じゃなかったかな。ICT産業の発達もみられる工業国マレーシアだが、むしろ日本は「農産物」を主に輸入しているということ。インドネシアからも同様にパーム油が上位輸入品目。それほどまでにパーム油の需要は大きい。サラダ油のような高級油脂ではないけれど、菓子類や冷凍食品などさまざまな加工食品の製造にパーム油は必須である。おそらく日本人にとって今無くなったら困る食品の1位は米としても2位はこのパーム油じゃないかな。それほどまでにパーム油は我々の生活を支えている。
[アフターアクション]菜種油については知っておくべきなのだろうか。世界の植物性の食用油としてはメインの存在であり、原料のアブラナ(菜の花)はカナダで栽培が多く、そして製品としての菜種油の世界最大の生産国は中国である。
さらにパーム油については近年世界で生産が拡大していること、さらに将来的にはバイオマスの原料として石油の代替品になることすら期待されていることを知っておこう。
<[地理B]2025年/本試験・第2問問2解説>
[ファーストインプレッション]おっと菜種が登場!これは驚いた!菜種油は極めて重要性が高い生産物でありながら、なぜか地理のテストには出題されない(僕が知る限り、東大で1回だけ登場したことがあるのみ)。我々にとって非常に重要な食品である植物油。このうち、世界で使用されている最大の割合を占めるのが菜種油。つまりアブラナ(菜の花)の油だね。
[解法]植物性油脂の問題は頻出なのだが、菜種油は初登場。非常に重要性が高いのになぜかテストで問われることはほとんどない。だからもちろん君たちも知らないよね。
ここは「パーム油」を主に考えよう。パーム油は油ヤシから抽出される油脂。昔のテストでは「石鹸や洗剤の原料」として登場していたが、最近はむしろ「食用油」として主に使われるようになってきている。さらに将来的には間違いなく「バイオマス燃料」の主力となる。まるで出世魚のように用途が次々とアップデートされていく。
パーム油の生産国は油ヤシの栽培国と一致するとシンプルに考えてしまっていいだろう。「油ヤシ・天然ゴム・カカオ」は高温多雨3人組。熱帯雨林の極めて高温多雨の自然環境下でこそ栽培される。日本も温暖多雨な国だが、さすがにこれらの作物は栽培できない。ちなみに天然ゴムの原産地はアマゾン盆地、カカオは中南アメリカの低地、油ヤシは西アフリカのギニア湾岸。いずれも熱帯雨林が繁茂している。
パーム油の生産統計は確実に知っておこう。上位2カ国はインドネシアとマレーシア。マレーシアではイギリス植民地時代に天然ゴムのプランテーションが開かれた。独立後、それらのプランテーションは国営やマレー系の経営になり油ヤシへの植え替えが進んだ。労働力に依存し収益性の低い天然ゴムより、省力化が可能で収益性の高いパーム油の方が、人口が少なく経済レベル(1人当たりGNI=賃金水準)の高いマレーシアの状況に適しているのだ。インドネシアでは熱帯雨林の開き油ヤシ農園が開発されたが森林伐採が問題視された。現在はアグロフォレストリーによって森林育成と農作物の栽培を両立させている。
カとキのうち、インドネシアとマレーシアで大きな値となっているキがパーム油。国名がわからなくとも、油ヤシの栽培条件(高温多雨)を考えれば赤道付近での値が大きいことから推測は可能。一方のカが菜種油。
Eとfについてはfがパーム油となる。「食用」はeとfで共通しているが、ここは昔のテストでよく出題されていた「洗剤・石鹸」を手がかりとしたらいいんじゃないかな。「やし油せっけん」はよく知られているんじゃないか。それからもう一点必ず知っておいてほしいこととして「近年は生産量が急増」もチェック。東南アジア地域に生産が集中しているパーム油だが、世界規模で捉えてみてもその生産量の伸びは著しい。2017年のセンター試験でも同じ内容が問われている(10年以内に同じネタが出るというセンター・共通テストの法則とも合致しているね)。
たしか現在日本のマレーシアからの最大輸入品目がパーム油じゃなかったかな。ICT産業の発達もみられる工業国マレーシアだが、むしろ日本は「農産物」を主に輸入しているということ。インドネシアからも同様にパーム油が上位輸入品目。それほどまでにパーム油の需要は大きい。サラダ油のような高級油脂ではないけれど、菓子類や冷凍食品などさまざまな加工食品の製造にパーム油は必須である。おそらく日本人にとって今無くなったら困る食品の1位は米としても2位はこのパーム油じゃないかな。それほどまでにパーム油は我々の生活を支えている。
[アフターアクション]菜種油については知っておくべきなのだろうか。世界の植物性の食用油としてはメインの存在であり、原料のアブラナ(菜の花)はカナダで栽培が多く、そして製品としての菜種油の世界最大の生産国は中国である。
さらにパーム油については近年世界で生産が拡大していること、さらに将来的にはバイオマスの原料として石油の代替品になることすら期待されていることを知っておこう。
<[地理B]2025年/本試験・第2問問3解説>
[ファーストインプレッション]共通テスト以降定番の形式を有する問題。地理A・Bの歴史は終わるけれど、地理総合・探究にもこの形式は引き継がれるんじゃないかな。
とにかく地理は地図帳を使ったような問題は出ない。国を認識する場合には地図上の位置ではなく、こういった経済的指標によって「マッピング(割り当て)」を行うこと。地理は数字の学問であり、そして国は数字によって表されるのだ。
問題自体は難しい。原油産出の特徴を理解しないといけない。しかし、難しい問題だからこそ開き直ってしまえばいい。問題文の中に必ずヒントがある。問題文に沿って「推理」を進めればいい。
[解法]登場する国は日本以外はオーストラリア、ブラジル、ベトナム。指標は「1人当たり1次エネルギー供給量」と「1次エネルギー自給率」。1次エネルギーについては石油、石炭、天然ガスを考えよう。以後、単に「エネルギー」とする。地理においては供給と消費は同じ意味なので注意。こちらも「消費」という言葉を使う。
1次エネルギー供給量つまり「エネルギー消費量」はGNIに比例。経済規模が大きい国はエネルギーをそれだけたくさん使っているということ。これを人口で割って「1人当たり」の値を求める。1人当たり1次エネルギー供給量(1人当たりエネルギー消費量)は1人当たりGNIに比例する。経済レベル(物価、賃金水準)が高い国では人々は多くのエネルギーに依存する。
3か国を1人当たりGNIで並べる。「オーストラリア>ブラジル>ベトナム」だね。先進国オーストラリアは1人当たりGNIが高い。製造業の発達はみられないが、資源輸出により外貨を稼ぎ、人口も少ないため「1人当たり」の値は高い。ブラジルとベトナムはいずれも発展途上国ですが、工業が発達したブラジルは発展途上国としては1人当たりGNIが高いレベル(10000ドル/人ほど)。べtナムは社会主義国であり、市場開放の時期が遅れたこともあり未だに1人当たりGNIは低い(4000ドル/人ほど)。しかし経済は急激な成長期にある。
1人当たり1次エネルギー供給量の大きいRをオーストラリアとして問題ないだろう。この値が2トンに達しないPとQがブラジルかベトナムだが、ここからは判定が難しい。1次エネルギー自給率が100%未満(つまり輸入)がP、100%以上(つまり輸出)がQ。これはどちらだろう?
文章について考えてみよう。最も特徴的なのはスではないかな。「1人当たり1次エネルギー供給量は減少した」とある。このキーワードから君たちは「脱炭素」を考えないといけないし、それと結びつく考え方として「脱工業」がある。オーストラリアはもともと工業が発達していない国であるが、それでも先進国であるので人々の生活を支える日用品の生産や豊富な資源を利用した素材工業などはある程度発展したいたと考えられる。しかし21世紀に入り「先進国の工業(製造業)」はどのように変化しただろうか。製造業は発展途上国へと流出し、かつての衣類や電気機械だけでなく自動車生産も発展途上国で大きな伸びを示している。さらには鉄鋼業や石油化学工業など労働力に依存しない工業も主な生産国は途上国となっている(中国やインドはもちろんだが、近年はトルコの鉄鋼生産やサウジアラビアのプラスチック生産も拡大している)。さらに先進国ではエネルギー使用の効率化や再生可能エネルギーの利用も進み、化石燃料の使用は抑えられる傾向にある。脱工業そして脱炭素が先進国のキーワードであり、ここではオーストラリアがそれに該当する。スがオーストラリアでRに該当する。
サとシは難しい。でも難しかったなら開き直ってしまえ。地理の場合、難しい問題であればあるほど教科書的な知識には頼らず、問題の中から(文章や図表、写真など)ヒントを探しそれに従って考えれば(こじつければ?)正解に達することができる。本問もそのアプローチで無理やりこじつけて。。。いや、しっかりと考えて解いてみよう。
サで特徴的な部分は「1人当たり1次エネルギー供給量はほぼ変わらない」とある。人口増加率を考慮しないと(両国とも人口増加率は低くないとは思うが、逆にいえばさほど人口増加率は変わらないので、人口について考えることは両国を判定するヒントとはならない)、国全体の1次エネルギー供給量も大きな変化はなく、つまり必要なエネルギーも変わらない。
それに対しシはどうだろう。こちらは「1人当たり1次エネルギー供給量が2倍」となっている。つまり国全体で消費するエネルギー量も2倍になっているのだ(というか、人口が増えていることを考えれば2倍以上の増え方である)。エネルギー消費とGNIは比例するので、この期間にこの国はGNIが大幅に増加し、さらに1人当たりGNIも高くなっている。急激な経済成長を成し遂げた20年間であったと予想される。
エネルギー消費が変化していないサ、大きく増加したシ。現在、エネルギーの輸出余力があるのはどちらだろう?国内でのエネルギーが不足し輸入に頼っている国はどちらだろう?
何回も言うが、本問は難しい。しかし「難しいことはチャンス」なのだ。問題の中におそらくヒントがあり、それに沿って素直に考えれば正解に達する。エネルギー供給(消費)がほぼ変わらないサではさほどエネルギーが必要とされないので輸入に依存する必要はないだろう。むしろ国内で産出されるエネルギー資源で十分であり、それらは輸出されているかも知れない。「100%以上」であるQが当てはまると予想してしまっていいんじゃないか。
それに対しシではエネルギー消費量が急増している。国内の産出のみで間に合わず、輸入の必要が生じているのではないか。「100%未満」であるRが該当する。
[アフターアクション]本問はブラジルとベトナムを特定する必要はなかった。しかし今後はこの問題に関する内容が繰り返し出題されるケースも予想されるので、両国の経済やエネルギー事情について掘り下げてみよう。
とくにブラジルが重要。次の問4でも南米の産業・貿易品目について触れているが、基本的に南米は一次産品の輸出がメインである地域。ブラジルは南半球最大の工業国であり、鉄鋼や自動車の生産が多い。実は小型のプロペラ機であるが米国やフランス(EU)に次ぐ航空機の生産国でもある(航空機の開発については日本より上ですね)。しかし近年は大豆が最大の輸出品目になっている。中国向けの輸出量が拡大し(中国では経済成長によって食生活が多様化し油脂や肉類の供給(消費)が急増している。大豆は油脂原料や飼料となる)、ブラジル国内では大豆の栽培地域が熱帯林へと広がり、それが熱帯林減少の問題にも結びついているほど。ただし、注目すべきは大豆でだけではなく本問にも登場した原油。ブラジルでは沿岸の浅海を中心に多くの油田が開発されており、近年特に原油の生産量が増えた国として注目を集めている。そもそもブラジルは「電力は水力発電による」、「自動車はサトウキビから得たエタノールで走行」というエコ大国であるが(1人当たりの二酸化炭素排出量が少ない)、同時に原油の産出量も増えていることからその輸出も増加している。ブラジルの統計を確認し、かつてメイン輸出品目だった鉄鋼や自動車の地位が低下し、大豆や原油が上位となっていることをぜひチェックしておこう。
<[地理B]2025年/本試験・第2問問4解説>
[ファーストインプレッション]オーソドックスな問題って感じかな。登場する国は定番の国ばかり。シンガポールのキャラクターははっきりしているし、インドネシアとペルーについてはそれぞれ東南アジアと南米の代表的な国として捉えれば十分。
[解法]「GDPの産業別割合」に関する問題。タ~ツの三つのグラフがあるが、特徴的なものはタとツであり、チはその中間。タとツをしっかり決めれば答えは出るね。チは消去法。
農業に注目するといいんじゃないかな。タとツが特徴的。タは割合が高く、ツは極めて低い。シンガポールは中継貿易の商業国であり、面積が限られていることもあり農業はほとんど行なわれていない。ツをシンガポールとみていいだろう。
インドネシアとペルーについてはそれぞれ東南アジアと南米の代表的な国として考えればいいんじゃないかな。東南アジアの場合、日本などから工場が進出し工業化が著しい地域。たとえばタイは今や世界第10位の自動車生産国である。日本と自動車や自動車部品について自由貿易協定が結ばれ、関税がかからない。日本から部品が輸出されタイで組み立て品に加工され、さらに日本へと再輸出される。
東南アジアが工業地域であることは十分に想像できるだろう。工業の割合が高いタをインドネシアとしていいだろう。インドネシアはエネルギー資源の産出・輸出国でもあるが(石炭は産出量世界2位で輸出量1位。原油についてはかつてのOPEC加盟国である。天然ガスは日本向けの輸出が多い。
残ったチがペルーだろう。ペルーは銀鉱など鉱産資源の産出が多い国(銀鉱については統計を確認。ペルーとメキシコの産出量が多い)。もっとも、インドネシアも石炭などエネルギー資源の産出が多いので本問については「鉱業・エネルギー業」の割合で判断することは難しいのだが、ペルーが鉱業国であることはぜひ知っておこう。
なおペルーについては世界有数の漁獲量を誇る国として認識している人も多いんじゃないかな。巨大な寒流であるペルー海流に面し、沿岸ではアンチョビーの漁獲が多い。アンチョビーは食用ではなく飼料用の魚粉(フィッシュミール)に加工されてアメリカ合衆国に輸出されている。ただし貿易統計を参照するにペルーの上位輸出品目に魚介類や魚粉などは登場していない。これ、何でなんだろうね?ちょっと僕にもわからない。おそらくペルーの最大の輸出品目って銅鉱じゃなかったかな?とはいえ銅鉱の輸出ではむしろチリこそ重要であるので、ペルーについては全く知らなくていいと思うよ。本問についても消去法でいい。
[アフターアクション]南アメリカの貿易は2024年にも出題されている。その際は貿易相手国がポイントとなっており、日本はチリから多くの品目を輸入しているのだという話題が問われた。チリからの主な輸入品目に銅鉱や果実、魚介類がある。果実はブドウ(チリ中部は「緯度35度、大陸西岸」の条件を満たし、夏季乾燥の気候がみられブドウの栽培とワインの醸造が盛ん)、魚介類はサーモン(かつて南米大陸南部は大陸氷河で覆われ沿岸にはフィヨルドが広がる。波の静かな入江でサーモンの養殖が行われる)。一次産品が主であり、工業製品は少ない。南半球最大の工業国であるブラジルですら、現在の最大の輸出品目は大豆(中国向けの飼料用)である。
東南アジアは発展途上地域(つまり1人当たりGNIが低い)であるがゆえの工業国が多いのに対し(インドネシアが典型だが、タイは自動車生産台数世界10位であるし、近年のベトナムの成長も目覚ましい)、南米ではそういったことは見られない(中央アメリカのメキシコは工業が主な輸出品目となっているが)。ASEANの工業化をしっかりと印象付けると同時に、南米がいまだに一次産品の輸出に依存する地域であることも知っておこう。
<[地理B]2025年/本試験・第2問問5解説>
[ファーストインプレッション]そのまま統計問題と思いきや、そこから文章正誤に移行するという2段階の問題。とはいえ誤文判定であるし工業ジャンルは理論に沿った問題が多いので、丁寧に文章を読めば全く問題ないでしょう。
[解法]統計と文章を組み合わせた問題。表を漠然と眺めていても始まらないので文章を読解して答えをみつけよう。
まず選択肢①。織物業について「労働集約型の工業」とあるが、これはまさにその通り。工業は大きく「資本集約型工業」と「労働集約型工業」があるが、前者は労働力に依存せず鉄鋼業や石油加賀工業、セメント工業などが例。後者は単純労働力が利用され繊維工業(織物工業や衣類縫製など)や機械工業(電気機械や自動車など)が該当する。さらにこうした労働集約型工業は安価な労働力’を求め発展途上国へと工場が進出。1人当たりGNIが低い国での生産が増えている。
さらに②。「デカン高原」という固有名詞が誤りということは稀なので、これは無視してしまっていい(答えではない=正しいということ)。「綿花が綿糸に加工され」も問題ないだろう。インドは綿花の生産も多い国。統計を確認しておこう。
選択肢③。これはまさに最近の工業の流れ。地理総合・探究でも出題されたファブレス企業が例。先進国では従来の「手」を使う工業から「頭」を使う産業への転換が進む。高度な研究・開発によって製品の価値を高め、より高価格で販売する。付加価値を高める。これも正文だね。
残った④が誤りなのだろう。と思って文章を読んだら、なんだ、これ、めっちゃ簡単やん(笑)。単にサードイタリーを問う問題だったのね。もともとイタリアは南北格差の大きな地域であり、豊かな北部と貧しい南部とのコンストラクトが明確。北部は降水も多く大河川沿いに広い沖積平野もみられる。アルプス山脈からの豊かな湧水も得られ、さらに水力発電も行われる。自動車のトリノ、ブランドファッションのミラノなど工業が発達した都市や経済力の大きな都市が並ぶ。近年は北東部を中心にサードイタリーという地域が注目を集めている。イタリアは伝統的に衣服や装飾品の製造に高い技術水準を有する地域であり、熟練の技をもつ職人が多い。中小企業のネットワークを生かした生産活動によって(つまり大資本に依存しない)「一点もの」の服やアクセサリーを少量多品種生産する。価値の高いそれらの製品は世界的な注目を集め、サードイタリーはヨーロッパで最も重要な産業/工業地域となっている。選択肢④の「熟練工による付加価値の高い織物業」は北部に集中。
なお、南部は経済レベルの低い地域であり、とくにこれといった産業は発達していない。有名な都市としてはナポリがあるが、アメリカ合衆国への移民や彼らを祖とするマフィアと呼ばれる反社勢力で知られているね。ナポリ自体は目の前にヴェズヴィオ火山が望まれ、世界三大美港として有名だが、人々の暮らしは決して豊かではない。
イタリアで行われた南北格差是正のためのプロジェクトがバノー二計画。国土を縦断する幹線道路が建設され、さらに半島南端のタラントに資源を輸入に依存する臨海型の製鉄所が建設された。しかしこのような政策にも関わらず現在でも南北の経済格差は開いたままである。
[アフターアクション]
正解は④だけど、あまりおもしろい選択肢ではないよね。最重要の選択肢は④。先進国では「手」を使った工業から「頭」を使った産業に転換が進んでいる。製品の製造を発展途上国にまかせてしまうのだから、当然先進国では脱工業が進み、それに伴ってエネルギーの使用も減少するので脱炭素も進むことになる。先進国では研究・開発やマーケティングに特化したファブレス企業が活動し、実際の製品の製造は発展途上国のEMS(電子機器製造受託)企業が行うことになる。この「先進国の脱工業・脱炭素」と「ファブレス企業」は共通テスト地理の最新の出題傾向。
これに比べるとちょっと古典的な内容になるけれど、選択肢①についても確実に理解しておこう。綿織物工業など繊維工業は労働コストの安い発展途上国に成り立つ。これは基本だね。
<[地理B]2025年/本試験・第2問問6解説>
[ファーストインプレッション]こういうグラフをレーダーチャートっていうんですね。覚えておこう。それぞれの値の大小が比較しやすく、わかりやすいグラフだと思う。工業に関する問題だけど、今年はこのネタが多かったよね。とくにテーマとされている年は1965年であり、高度経済成長期。21世紀もかなり進んだ現代でもやはり高度経済成長期の日本の様子が問われているわけだね。これは地理という科目の最大の特徴の一つ。地理とは高度経済成長期と現代との時代の変化を考える科目なのだ。
[解法]日本の工業に関する問題。高度経済成長期と現代との違いを問うている。まずはXとYについてどちらが過去でどちらが現在かを考えてみよう。ここはもちろん「繊維」工業がポイントになるね。工業化初期の段階で発達するのは軽工業であり、綿織物や衣服縫製など繊維工業が主。経済レベルが上昇するにつれてこれらの低賃金労働力に依存する工業は衰退し(工場が海外に転出するなど)、重工業化が進んでいく。日本の高度経済成長期はまさに軽工業から重工業への転換の時期に該当。この時期までは繊維工業の割合もそれなりに高かったが、現在ではほとんどみられなくなった。XとYの「繊維」の値を比較し、Xが高度経済成長期の1965年、Yが現在の2015年。
さらにマとミに注目しよう。マもミも増えているので、これだけでは判別できない。ここは絶対的な値から考えてみよう。2015年の値に注目。マが45%、金属が15%、ミが20%、食料品が10%、繊維が0%、その他が10%。現在の日本の工業において最大の生産額を誇っているのはマということ。これを自動車工業を中心とした機械とみていいのではないか。精密機械なども含めれば、プラスチックなど素材が中心の化学工業に比べて付加価値も高い。金額が大きいのも納得だろう。マが機械となる。
[アフターアクション]特殊な知識が求められる問題というわけでもないだろう。「日本の主産業=自動車工業」というイメージは十分に持てると思うし、それを機械工業と結びつけることも容易だろう。
それよりやはり本問で面白いのはいつまで経っても「高度経済成長期」が出題の柱となっていること。高度経済成長期の日本で何が起こっていたのかを知ることこそ地理の本髄である。
ただ、あらためて思うのだが他の先進国についてはすでに「脱工業」が話題とされており、ドイツのようなバリバリの工業国だけでなく、オーストラリアのような工業があまり盛んでない国や韓国のように経済レベルがやや低い国においても同じく脱工業がテーマとされている。それなのに相変わらず「日本=自動車工業」なのか。これ、どういうことなんだろうね。