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2014.04.24
2014年度地理B追試験解説[第2問]
第2問 エネルギーに関する大問。これ、やばいよ。センター地理の「反原発」の姿勢が明らかにされている。欧米諸国は原発に慎重的な姿勢である(問1)。日本は火山国であるのに、なぜか地熱の有効利用が進まない(問2)。そもそも日本に薪炭材を利用する文化があったのに、現在それは顧みられていない(問4)。どうなんだろう?将来の日本のエネルギー政策についての提言が、センター地理の問題の中で行われていることには、ボクらは気づかないといけない。
問1 [インプレッション]非常に興味深い!センター地理の基本概念として、晃中「反原発」がある。もちろん教科書にはこんなことは書かれていないし、授業でも扱われないだろう。でもセンター試験という舞台においては、根底的に反原発の思考が貫かれているような気がする。本問にしても、能天気に原発の再稼働に一生懸命な日本を差し置いて、既に欧米では古い時期より脱原発の流れは明らかにあり、将来的に原発は廃止されることが確定路線である。日本人が知らないこのことが、センター地理では明確に叫ばれている。
[解法]原油の生産量に関する問題。グラフの読み取りというより、そのような動きがなぜ生じたか、知識が問われている。知識といってももちろん地名や都市名のような地図帳的な知識ではないけれど。
再重要は選択肢①。さて、アメリカ合衆国で本当に「原子力エネルギーへの依存度が高まった」のか。そもそもが、日本を除く先進国において積極的に原発建設に取組む国はない。とくにアメリカ合衆国については、スリーマイル島原発事故という十字架をかかえている。1980年代に生じたこの事故によって、国内の原発推進の世論にかげりがみえ、これ以降は新たな原発の開発に慎重となった。アメリカ合衆国において、原子力エネルギーの依存度が高まるわけはないのだ。①が誤り。
スリーマイル島の原発事故からの原発政策の転換なんていうネタは世界史か現代社会であって、地理的な要素は少ない。でもセンター地理ではこうして真正面から取り上げられているのだ。センター地理の原発に対する見方が伺える、非常に興味深い問題。
[アフターアクション]とりあえず欧米においては原発は縮小の流れにあると考えていいんじゃないかな。ロシアや中国など発展途上国はともかくとして、先進国で今だに原発原発と騒いでいるのは日本だけっていうこと。
問2 [インプレッション]ベタな統計問題の雰囲気。確実に得点し、さらに時間も節約する。
[解法]最初に。アメリカ合衆国や中国、日本のようなそもそもの発電量が大きな国に注目するのは得策ではない。特色ある発電が行われている、比較的規模の小さな国がポイントとなってくる。
最も分かりやすいものが地熱。イタリア、アイスランド、そして環太平洋。火山国で行われている。フィリピンとインドネシアに着目。アが地熱。
風力は偏西風の影響が強い西ヨーロッパの大西洋沿岸諸国。なるほど、イではドイツ、スペイン、ウではドイツ、スペイン、イタリアと判定が難しい。でも、ここで考えてみよう。たしかに西ヨーロッパではあるのだけれど、イタリアは大西洋に面している国ではなく、偏西風の影響は明確にみられるものか?新期造山帯の山岳国であり、さほど風力発電に有利とは思えない。このことから、イタリアが含まれているウを太陽光と判定し、残ったイを風力とする。イタリアがポイントでした。
[アクターアクション]第一印象とは異なり、実は難しい問題だった!絶対的なポイントはイタリアだよね。晴天日数が多いことも太陽光発電にとっては有利な条件となる。なお、日本は世界で最も火山密度が高い国の一つでありながら、地熱発電は有効に行われていない。むしろ世界的にみて降水量が多い国であるのに(つまり晴天日数が少ない)太陽光では3位にランクインしている。どうなんだろうね、日本の発電に対する考え方、ちょっとおかしいような気がするな。
問3 [インプレッション]「農業にも電気やガソリンなど多くのエネルギーが使用される」っていう導入の文章がいいなぁ(笑)。内容的にはベタな農業に関する問題。こういう問題って、北海道や関東地方がポイントになったりするんだよね。これはどうかな。
[解法]「農業産出額当たりのエネルギー使用量」っていうのがキテるね。おそらくビニルハウス栽培を考えたらいいんだろうけれど、宮崎県や高知県では野菜の促成栽培にビニルハウスを利用し、当然電気代やガス代がかかる。カとキのどちらかが「農業産出額当たりのエネルギー使用量」。
さらに北海道に注目。「農家1戸当たりの耕地面積」は絶対北海道が広いでしょ?カとクのいずれかが「農家1戸当たりの耕地面積」となる。
「耕地面積当たりの農業産出額」っていうことは要するに土地生産性なわけだ。「収穫量÷耕地面積」であり、北海道のようは広い土地で農業を行う地域ならば、この値は必然的に下がる。また、農産物の種類で言うならば、穀物など比較的安い作物を栽培している地域ならばこの値は低くなるし、野菜など高価格の作物が中心なら値は高くなる。近郊農業がイメージしやすいんじゃないかな。都市周辺は地価も高いし、価格の高い野菜を生産して、東京のような大都市に出荷する。関東地方で典型的な農業。このことからキを「耕地面積当たりの農業産出額」と考える。
以上より、カが「農業産出額当たりのエネルギー使用量」、クが「農家1戸当たりの耕地面積」となる。なるほど、北海道の農家って機械化も進むし、電気とかガスは結構使っているんだね。
[アフターアクション]これ、おもしろいね。歯ごたえがある問題だった。頭をスゴく使う。こうした問題を通して、センター地理のおもしろさに気づいてほしいな。
問4 [インプレッション]バイオマスを正面から取り上げた問題。本当に最近のセンター地理はこうしたエコに関する問題が多い。とくに追試で。逆にいえば、本試験ではないのは何か意味があるんだろうか。
[解法]正解は③だね。これは結構ベタな問題だと思う。ブラジルで主にバイオエタノールを採取しているのはサトウキビである。世界最大のバイオエタノール生産国であるアメリカ合衆国(そもそも母数である全体のエネルギー生産・消費量が大きいので、割合としては小さいが)では主にトウモロコシが使用されているようだが、それにしても栽培時に多くの燃料(石油など)を使用しているので、効率は悪いんだそうだ。それに対し、ブラジルのサトウキビによるバイオエタノールは効率が良く、模範的なエネルギーともいわれている。
①のネタなんか良いよね。バイオマスは植物性と動物性があるんだが、植物性に関しては成長時に光合成によって取り込む二酸化炭素が、燃焼時に発生する二酸化炭素とある程度相殺される(これをカーボンニュートラルという)ので、①のような状況となる。
②も結構好き。最近はバイオマスについても要するに薪炭材のことだよねっていう考えがセンター地理でも大きく取り上げられている。森林のこうした効能にもっと注目してもいいかな。
また、たしかに④のようなこともいえるので、良かったら知っておいて。でも、個人的な見解としてはこうしたリスクもありながら、それでもやっぱりバイオマス(バイオエタノール)には未来があると思う。
[アフターアクション]ちょっと前の問題で、アラル海の縮小の話題が取り上げられた。アラル海周辺では灌漑によって綿花が栽培され、そのことで湖水減少という環境問題が生じている。この綿花が「サトウキビ」と取り違えられ、間違い選択肢として出題されている。農作物の種類の違いって本当に頻出なので、最重要チェック項目としてください、
問5 [インプレッション]ブリックスはともかくとして、製造業の中の内訳を聞いてくるとはぶっ込んでくるね〜(笑)。例えば西アジアにおいて、建設業が製造業より多いっていうネタは結構出題されているんだけど、さらに製造業を区分してくるのだから、これは手強い.幸いブリックス諸国は個性派揃いなので、取りつく島は多いとは思う。
[解法]製造業の中の内訳を問う問題。選択肢は機械、食料・飲料、繊維。
製造業についてはとりあえず1人当たりGNIを中心に考えるのがセオリーなわけだ。労働集約型工業については、賃金水準の目安となる1人当たりGNIの高低によって特色づけられる。
さらに工業種が問われているわけだから、統計と中心に考えてもいいだろう。機械については範囲が広すぎるだろうか、しかし繊維ならば衣類の生産に対応させればいい。食料・飲料は(ビールなどを除けば)比較的原料立地になりやすいものであるし、農業や畜産業と関連させて考えられるだろう。
では、これだけのことを頭に入れて、表を観察し、推理する。
サについて。ブラジルが高く、中国が圧倒的に低いのだ。
シについて、これは中国が高い。インドがやや低いかな。
スについて。インドが飛び抜けていて、逆にロシアやブラジルは皆無に近い。
まず最も明確なものとして繊維を考えてみよう。衣類の2大生産国は中国とインド。いずれも低賃金(1人当たりGNI)で安価な労働力が得やすく、衣類工業には有利。また綿花の世界的な生産国(中国1位、インド2位)であり、これを利用した繊維工業は発達しやすいはず。比較的賃金が高いロシア、ブラジル(ともに1人当たりGNIは約10000ドル)では衣類工業つまり繊維工業は成立しにくいだろう。スが繊維となる。
さらに機械について。先に具体的なものは考えにくいとは言ったが、とりあえず自動車や電気機械全般をイメージするべきだろう。現在世界最大の自動車生産国は中国。もちろんインドやブラジルも世界10位までに入る自動車生産大国ではあるが、中国には及ばない。それ以外の機械類についても日本などから多くの工場が進出し、中国は世界で最も製造業の集積した国となっている。このことから、シを機械と考えて妥当だろう。
残ったサが食料・飲料。どうだろう?ブラジルで割合が高くなっているが、これには納得じゃない?ブラジルはサトウキビやコーヒーのような工芸作物(加工が必要な作物)の生産が多いし、さらに牛の飼育等数も世界一であり、食肉加工業も発達しているはず。もちろん他の国も農業の盛んな国ではあるけれど、こうした状況を考えればブラジルに一日の長があるんじゃないかな。とくにつじつまの合わないところもないし、これで正解と思います。
[アフターアクション]実に歯ごたえがある問題だった。模試でこのレベルの問題は(難易度的に)作りにくいとは思う。ブリックス4か国の1人当たりGNIは覚えておいて(ロシアとブラジルが約10000ドル、中国が5000ドル、インドが2000ドル)、それぞれの賃金水準と工業種を結びつける。さらに今回は衣類生産国としてインドが2位であることがポイントとなったように、工業製品の統計については深くコミットしておくこと。1位の国は当然必須なのだが、できれば2位以降の特徴的な国も知っておこう。そもそも中国が1位の工業製品統計が多すぎるからね(笑)
問6 [インプレッション]地味な問題(笑)。日本企業の立地の変化。1人当たりGNIなど、経済を中心に考えてみよう。
[解法]①;自動車工業は、単純労働力に依存する労働集約型工業。安価な労働賃金を求め、中国やタイ(いずれも1人当たりGNIは5000ドル程度であり、賃金水準は低い)へと生産の拠点が移動することは妥当。ここでは「新たな市場開拓」とあるが、あまり気にしなくてもいいかな。現在中国は世界最大の自動車販売台数を誇る国であり、市場としての魅力も大きい(人口が大きい、つまりGNIが大きいからね)。
②;研究施設はたしかに大都市圏に集まりやすいんだわ。でも、生産施設はどうだろう?「集積回路の工場」とあるけれど、集積回路(IC)のような軽量高付加価値の機械製品というのは、遠方から輸送してもコストがかからないため、九州や東北地方の空港・高速道路の近くで生産が行われることがある。誤文とみていいね。
③;たしかに原油価格は高騰しているのだが、だからといって国内の石油化学コンビナートが閉鎖しているだろうか。例えば日本はプラスティックについては世界5位の生産国であり、石油価格工業が衰退しているわけでもない。統計に基づいて考えればいいんじゃないかな。これも誤文。
④;情報が集積する東京周辺に、出版・印刷業は集まる。地方には分散しない。誤文。
以上より、①が正解。いきなり①を正文としてしまってもいいけれど、②〜④の誤文判定も確実に行うと、正解率が上がる。
[アクターアクション]やはり第一印象通りの地味な問題。特殊な事例が問われているわけではなく、とくに①や④の内容などは絶対に知っておくこと。③はちょっと悩むんだが、製鉄所については戦前から稼働していたような古い施設については取り壊されているものの、石油化学コンビナートはそもそもそういった古い施設は存在しないしね(高度経済成長以降につくられたものばかりなので)。若干②の話題が古いような気がして悩むのだが(最近は大都市周辺に工場も多いように思う)、あくまでセンター地理の中での真理として「IC工場は地方に立地」で覚えておいていいんじゃないかな。
2014.04.24
2014年度地理B追試験解説[第1問]
たつじんオリジナル解説[2014年地理B追試験]
解答数は36個だが、2つの解答を求める問題が一つあるため、問題数は35問。また第2問については冒頭にリード文が設けられており、近年では珍しい形である。
第1問 世界の自然環境
第1問が自然環境に関する大問であるのはいつものパターン。ただし、問1で植生が大きくフューチャーされていたり、何らかの形の気候グラフが問われていない点が目新しい。
問1 [インプレッション]冒頭で植生の問題!形式も含め、目新しい。土壌についても言及されており、どちらで考えてもいいと思う。
[解法]植生と土壌と両方のヒントが示されているので、じっくり考えてみよう。ヒントが多い問題だからこそ、直感で解いてはいけない。
最も気になるのはツンドラ(ツンドラ土)。ツンドラというのは、通常は雪氷に覆われ、短い夏の間だけ地表面に地衣や蘚苔が繁茂する荒地のことで、北極海や南極海沿岸などに典型的にみられる。まずエが外れる。エの北端のノルウェー南部は偏西風や暖流(北大西洋海流)の影響によって緯度に比して温暖であり、決してツンドラではない。温帯に含まれ、都市も立地している。
さらにポイントは熱帯林とラトソル。これは赤道に近い低緯度地域にみられる植生と土壌である。これによりアが外れる。アの南端はメキシコ中部であるが、この地域には乾燥気候が広がる(例えばメキシコシティなど、降水量が少ないことが特徴の都市である)。中緯度高圧帯の影響によって少雨となることも考慮しよう。
そして最後のポイントとして亜寒帯針葉樹林(タイガ)とポドゾルがある。これは冷帯の植生と土壌。針葉樹は冷涼な地域にみられ、とくにシベリアやカナダには樹種が単純な(例えばモミだけ、あるいはトウヒだけ、といったように)森林が広がり、タイガと呼ばれている。冷帯は蒸発量が少なく、水分が地下に浸透する際に色素を溶脱し、灰白色の土壌が形成される。これがポドゾル。冷帯の特徴として冬季の極端な低温がある。冬季の平均気温が極めて低く、湖沼や河川、海岸などの凍結がみられるのが冷帯。海洋からの影響が強い地域(海洋性気候)ではこのような事象は生じず、冷帯気候となる絶対的な条件として大陸の影響が強い(大陸性気候)ことが上げられる。南極を除けば(南極は寒帯気候であり、冷帯より寒冷。そもそも植生がみられず、土壌も大陸氷河の下に隠れている)、高緯度地域に陸地がほとんど存在しない南半球においては冷帯気候も分布せず、タイガやポドゾルもみられない。このことからウが消える。
残ったイが正解!消去法かよ、疲れた(笑)。
[アフターアクション]これ、難しいわ。消去法で徹底的に考えた。君たちは最低限「南半球に冷帯は存在しない」だけは知っておいて、冷帯が存在しないのだから、冷帯の土壌であるポドゾルも存在しないのだ。
問2 [インプレッション]河川流量を問う問題は定番ネタであるものの、本問はちょっと雰囲気が異なる。問1に続いて難問ですよ!
[解法]Aを当てないといけない。例えばBはすごく簡単。Bのような寒冷地域を流れている河川は春(初夏)の融雪・融氷期に一気に増水する。冬季は凍結しているため、流量は最小。④がBになるのは簡単に判定できる。
さて、それに対してAはどうなんだろうか。難しい問題だからこそ、深読みはせず(そんなにセンター試験はひねくれたテストではないよ)素直に考えよう。Aはアアマゾン川だろうか、熱帯雨林の広がる低地を流域に収めている。赤道直下のエリアであり、年間を通じ降水量は多いだろう。高温の地域であるので、融雪や融氷、凍結といった要素は考慮する必要がなく、降水量と流量をそのまま対応させればいい.年間を通じて渇水期がなく、流量も比較的安定している②が正解となる。
CやDはいずれも乾燥地域を流れる外来河川であり、とくに降水量が少ない時期には流量が激減する。モンスーンの影響によって夏季に降水量が多い地域を流れるCが③、南半球の初夏に融雪によって流量がやや増加するDが①となる。
[アフターアクション]Bが④であることをしっかり覚えておいて!こっちのネタの方が使えるはず。
問3 [インプレッション]うわー、これ、おもしろいわ。ちょっと厄介だけど、解答可能と思う。消去法で考える方がベターかな。
[解法]熱帯低気圧の発生のための最大の条件、それは海水温。一般に海水温が27度以上の海域においてのみ熱帯低気圧は発生する。ただし、転向力が働かない赤道直下においては生じないことも知っておくといいかも。ただし本問の場合は赤道直下のエリアはないので、この条件は無視していいね。
海水温にこだわるならば、2つの海域において妥当でないことがわかる。南アメリカ大陸の太平洋岸、アフリカ大陸の大西洋岸はそれぞれ寒流が流れており(寒流とは高緯度方向から低緯度方向へと冷たい海水を運ぶ流れ)海水温は低い。熱帯低気圧の発生海域としてKとLは不適であり、残った2つが正解となる。
[アフターアクション]海流の流れは第4問でも登場している。同じネタが出題されることは珍しくないものの、元々の出題率がとくに高いわけでもない海流ネタが連発されたことにはちょっと驚き。それだけ大事だってことでもあるんだけどね。
問4 [インプレッション]大地形の問題。このように大地形が文章の形で出題されるときは難問になるパターンが多いのだが、本問はどうだろう?細かいことは聞かれないものの、確実は知識は必要となる。
[解法]①;地溝について。アフリカ地溝帯はプレートの広がる境界である。誤文。同じ「溝」であっても、地溝は広がる境界、海溝は狭まる境界。
②;アンデス山脈は新期造山帯。古生代に造山運動を受けたのは古期造山帯であり、該当しない。誤文。もちろん「古生代から現在まで」数億年間にわたり継続して活発な造山運動を受けているような地域は存在しない。
④;ヨーロッパの火山は、イタリアなど地中海沿岸とアイスランド(大西洋中央海嶺)。東ヨーロッパ平原にはみられない.誤文。
正解は消去法で③。楯状地の説明であるが、とくに知らなくていい。
[アフターアクション]「楯状地」なんていうマイナーなものが解答になっているというめずらしいパターン。でもこれについて特別な知識はいらないと思う。とりあえず安定陸塊(6億年以上前につくられた地形)であることだけ知っておけばいい。本問にしても消去法で解くべき問題。
問5 [インプレッション]見慣れない図が登場。不穏な空気だが?はてさてどんな問題なのだろう。
[解法]ちょっと読み取りにくい図だな。海面の高さっていうのは、現在と比較してっていう意味だよね。つまり15000年前は現在より100mほど海面が低かったということで、海水が少なかった時代ってことだね。氷河期で大陸氷河が発達していたことが想像できればいい。
で、氷河期の地球を想像して欲しいんだけど、いわゆる「グレートジャーニー」が生じた。モンゴロイド(黄色人種)のユーラシア大陸からアメリカ大陸への移動がみられたのだが、これは現在のベーリング海峡が陸化していたために、徒歩によって行われたのだ。このことを考えるに、1万5千年間(つまり氷河期)の世界において、現在の浅海底は陸化し、人々が歩くことによって移動や交流をしていたという歴史があるのだ。「現在大陸だなになっている範囲」はむしろほとんどが陸地だったんじゃないか。
[アフターアクション] いや、これ、難しいや。たしかにちょこちょこ氷河期に陸地がつながっていたっていうネタは登場しているんだが、それにしても解答は困難。氷河期という時代について、もっと授業で取り上げていこうかな。ここが盲点になっている気がする。
問6 [インプレッション]マングローブの問題か。環境破壊ネタなら一般常識で解けるかな。
[解法]あ、簡単じゃないですか。エビの養殖池の拡大だよね。実際、ベトナムやインドネシアからのエビの輸入は増加しているわけで、その多くはマングローブ林の破壊の上に成り立っている。図は関係なかったね。
[アフターアクション]マングローブの問題は結構よく出てくる。熱帯の干潟にみられる植生で、河口付近の汽水域にしばしばみられる。満潮時は樹木の頭まで海水につかり、干潮時には根までが海面上に現れる。泥地で豊富な生態系を有しているが、近年はエビの養殖池の開発などにより失われるものも多い。
2014.04.23
『東京難民』観ました
2014.04.23
久々に大分に降り立って
大分市民に媚びるわけではないけれど、全国いろんな街をめぐったたつじん的には、住むなら大分だ な、と。公共施設や官公庁などが駅から歩ける範囲に揃っていて、ショッピングや飲食にも不自由しない。また、今日職員さんとしゃべったんですが、これまで 何もなかった駅南地区が再開発され、住宅地や道路などの整備により、さらに利便性が増すよう。JRの駅を中心とした都市計画がはっきりしている点におい て、大分市は効率的な街づくりがうまく進められていると思います。
2014.04.23
授業スタート!
授業スタート!土曜の授業では楽しさのみが先走ったわけだが、今日についてはもっと冷静な感じで。
慎重に授業を進めようという気持ちが一点、今日授業に出てくれている生徒たちの何割かは来週はいないのだろうなという冷めた見方がもう一点。
聞くところによると、裏番組の科目のいくつかが理系にとって重要な科目で、しかも週にこの時間にしか開講されていないものもあるんだそうだ。
時間割がそうなっているなら仕方ない、ほとんどの生徒にとってはどうしてもそちらを優先して受講することになるよね。
なるほど、こういう時のためのDVDなんだろうが、あいにくボクは今年はDVDを担当していないのも悔しいところ。
ライブ授業にどれだけの生徒が集まってくれるのか予想もつかないが、現実問題として、廃講にならない程度の数がキープできればそれで御の字かな。
さて、授業後は多くの生徒が質問に来てくれてありがたかったものの、全員がメンズだったというオチはついとります(笑)
2014.04.22
中国の戸籍問題
2014年度地理B追試験より。興味深い問題シリーズ。次の文の正誤判定を求める問題が問われていました。
中国では、都市部における労働力需要を満たすため、農村から都市への移動が奨励されている。
受験生にはちょっと難しいネタではあるのですが、これは誤文なのです。中国では都市戸籍と農村戸籍が厳密に管理されていて、例えば農村戸籍の者が出稼ぎのために都市に居住したとしても、いくつかの行政サービスや社会保険の適用外となってしまうようで(それでも出稼ぎ者は多いんですけどね)。
でも最近はこうした都市戸籍と農村戸籍の間の差別って結構緩和されているなんていう話もあるし、農村から都市への転籍も比較的頻繁に行われているそうで。今ネットで検索して中国の戸籍問題に関するトピックをいくつか読んだのですが、やはり以前とは状況が変化しているそう。
そういう意味では、この問題は決してアップ・トゥ・デートではないわけで、結局「過去の真実」を言及するにとどまってしまう。もちろん、学問的真実ではなくテストに出る形を教えるのが我々の仕事なのだが、その落としどころというか、どうやって折り合いをつけていくかっていうことに、頭を悩ませるんだな。
2014.04.21
2014年度追試験解説
今日明日とヒマなので、早速ですが2014年度地理B追試験の解説と作ります。サイトの方にアップ(PDF含め)はもう少し後になりますが、とりあえずできた分からブログに上げていきます。校正はまだしていませんので、誤字脱字はかなりあると思いますが、おいおい修正していきますので、今回はご容赦!ということで。
2014.04.21
たつじんオリジナル解説 2014年度地理B追試験[第4問]
たつじんオリジナル解説 2014年度地理B追試験[第4問]
第4問 太平洋地域の地誌
今回の地誌問題のテーマは「太平洋」。ずいぶん広い範囲が取り上げられたものだが、かつてはインド洋っていうテーマもあったし、とくにめちゃめちゃなこともないかな。工業に特徴のある国が少なく、どうしても自然地理に出題が偏るのは致し方無し。第1問でスルーされていた気候グラフも、こちらでは登場している。
問1 [インプレッション]海流は必須ネタ。しかし暖流や寒流の影響などではなく、単に流れ方を問うとはシンプル。ボーナス問題ですね。
[解法]海流は風(恒常風)によって生じる。低緯度海域では貿易風の影響によって海水は東から西に運ばれ、中緯度では偏西風によって西から東へと流れる.北半球では時計回り(高緯度に小さな環流があるので、厳密には「8」の字だが)、南半球では反時計回りになる。
[アフターアクション]かつて海流の流れ方は地理Aではっきりと問われたことがある。地理Bでは流れ方そのものより、寒流(例えば南アメリカ大陸西岸に沿うペルー海流)と暖流の区分がよく問われていた。流れ方も重要であるが、寒流と暖流の区分にも注意しておこう。高緯度から低緯度へと冷たい海水を運ぶのが寒流で、夏季冷涼な気候、少雨気候の原因となる。低緯度から高緯度へと暖かい海水を運ぶのが暖流で、冬季温暖な気候、多雨気候の原因となる。
問2 [インプレッション]ここで気候グラフか!しかもハイサーグラフ。オーソドックスではあるけれど、読み取りに注意。とくに今回のように北半球と南半球が混在している場合は気をつけないと。
[解法]まず南半球を判定しよう。明らかに7月を中心とした時期が高温(つまり夏)である③は除外する。北半球中緯度のサンフランシスコと思われる。残った3つのうちでも①と④は気温年較差が極めて小さく、低緯度地域であると考えられる(原則として緯度と気温年較差は比例するので)。これがグアムとラパスだろう。残った②が、南半球中緯度のオークランドとなる。
[アフターアクション]サンフランシスコとかラパスとか、非常に特徴的な都市の気候グラフが問われているのだが、そんなことには全く無関係に、単に南半球の中緯度地域の気候を特定しさえすればいい。気温年較差がもちろん重要なキーワードになっているのだが、それ以外はハイサーグラフ自体の読解が最大のポイントっていうこと。
問3 [インプレッション]食文化だが、明確なキーワードが含まれている。一般常識に近い問題でもあるんだが、それだけに逆に難しかったりするのかな。
[解法]アはアザラシで決定でしょ。最も寒冷な地域のKが該当。エスキモー(イヌイット)でしょうか。
ウがわかりやすい。ぜひトルティーヤは覚えておこう。メキシコの主食の一つであり、トウモロコシ(メキシコが原産地といわれている)を原料としている。Mが該当。
残ったウがLとなる。タロイモやヤムイモは熱帯の多雨地域に適応。焼畑農業など、
[アフターアクション]トルティーヤ、覚えておいていいかも。メキシコ=トウモロコシ=トルティーヤ(あるいはタコス)。食文化は意外に出題されるので、ベタに覚えておいた方がいい可能性もある。
問4 [インプレッション]産業に関する問題。太平洋地域は結構マイナーだから厳しいかもね。
[解法]これ、結構難しいんだよね。①の「カボチャ」って実は超重要キーワード。本来野菜は国内自給率が高く、輸入するとしても中国や韓国など近隣国からが中心なのだが、カボチャだけは例外。表皮が厚く、保存や輸送が容易であるため、南半球からの輸入量が増加している。ただ、ここでは「激減」ってあるんだよね。これ、悩むなぁ。トンガだけに限定してみるともしかしてそういう可能性も無きにしもあらず。ニュージーランドなど他の輸入先もあることだし。ひとまず保留としておきましょうか。
そして②を見る。なるほど、ナウルか。えっ、ニッケルだって?いや、太平洋地域でニッケル鉱の産出に特徴があるのはニューカレドニア島。オーストラリア大陸東方のサンゴ海に浮かぶ島で、フランスの一部である。ナウルで採掘される鉱石資源は「リン鉱」なのだ。リンはモロッコなど北アフリカ諸国で広く採掘される鉱石資源で、化学肥料の原料となる。ただし、太平洋の小さな島国であるナウルでも実は多く採掘されている(採掘されていた)のだ。「過剰な採掘」はどうでもいい。「ニッケル鉱石」が誤りで、正しくは「リン鉱石」である。
②が解答なので、③と④はどうでもいいです。
[アフターアクション]ナウルのリン鉱はかつて地理Aで一回出題されたのみ。地理Bではモロッコやチュニジアの資源として登場した例がある程度。追試特有の問題ということで、あまり意識しなくていいんじゃないかな。それに①の「輸出量が減少」とか②の「過剰な採掘」とか、ちょっとあいまいで判定に困る部分については、読み飛ばしてしまえばいいよね。明確なキーワードにしっかり反応していこう。
第4問問5[23]
[インプレッション]ネタとしては結構メジャーで、模試でもしばしば取り上げているんだけれども、こうしてグラフで登場すると新鮮な気がするね。グラフをみたら分かる問題と思いきや、「適当でない」ものを選ぶ誤文判定問題、どこかに間違いワードが入っているはずなのだ。
[解法]グラフが提示された問題。こうした問題には2つのパターンがあって、グラフをそのまま読み取るパターン。何の事前知識がなくても、各選択肢の内容とグラフの数値を対象されて観察していけば、自ずと解答が導き出せる問題。もう一つは、ちょっとした知識が含まれているパターン。とくにこうした誤文判定問題に多く、明らかな誤りワードが含まれている。それを間違い探しのように、全体の中から拾い出せばいいのだ。さらにいうならば、こうした誤りワードは得てして、問題そのもののテーマとは関係ない事も多い。さて、本問はどちらのパターンだろうか。
①の判定。20世紀初頭ならば1901年や1921年だろうか。たしかにイギリス生まれが大半を占めている。「旧宗主国イギリス」という部分も間違いではない。正文でしょう。
②の判定。そもそも第二次世界大戦が何年に終わったか知らないといけないね。意外とこういうのを知らない人っているんじゃない?1945年なのです。だから第二次世界大戦後っていえば厳密には1947年なんだけれど、広く捉えれば1961年とか1971年も含まれると思う。両年度のデータを観察すれば、イギリス以外のヨーロッパ生まれの数は増加している(なお、ここでは「増加」といっているので、実数で考えること。選択肢①のように「大半を占める」という場合は割合を考えなくてはいけない)。これも正文かな。
③の判定。あっ、ここで間違いを見つけた!それは白豪政策についての記述。いや、白豪政策自体は正解ですよ、ここで問題になっているのはその年代。白豪主義政策が撤廃されたのは「1990年代」ではなく、「1970年代」。よってこれが誤りとなって、③が正解!地理は世界史じゃないんだから、こんな年代が出題されるのはおかしいって?いや、もちろんその考えはその通りなんだけれど、白豪主義政策については実は年代が重要視される。ヨーロッパ以外からの移民を制限する白豪政策については国際的な非難が大きく、1970年代に撤廃され、当時勃発していたベトナム戦争からの難民を受け入れた経緯がある。1990年代に撤廃されたのは南アフリカの人種隔離政策であるアパルトヘイト。この両者は似て異なるものであるので、とくに撤廃の年代については混乱しないでおこう、
すでに③が正解であるので④については検討の必要はないが、とりあえず。1901年の値は80万ほどであろうか。2010年の値は600万に達しようとしている。6倍以上である。
[アクターアクション]移民数の変化の話と思いきや、白豪主義政策の撤廃の年代に関する問題だったわけだ。このようにセンター試験というのは、正面から話題を振ってこない、変化球が得意な試験なのだ。
問6[24]
[インプレッション]定番の貿易に関する問題。最重要はマレーシアかな。ニュージーランドの貿易はセンター史上初登場。気をつけましょう。
[解法]マレーシアという国のキャラクターをしっかり整理しておく。人口3000万人程度の小国ながら、非常に工業力があり、電気機械の生産が多い。ただしこの国は単なる工業国ではなく、農業(アブラヤシの栽培からのパーム油の生産)や鉱業(原油や天然ガスの産出。とくに天然ガスについてはわが国にとって上位輸出国となっている)の面においても優れており、農業および鉱工業においてバランスがとれた国となっているのだ。このことをふまえて考えると、やはりXの「天然ガス」に目が行く。日本の主な天然ガスの輸入地域は東南アジアであり、国でいうならブルネイ、インドネシア、そしてマレーシアなのだ。Xがマレーシア。
さらにニュージーランドについて。この国ははっきりとした農畜産国であり、鉱工業の面においては特筆するべきことはない。そもそも人口が500万人に満たないという極端な小国であり、経済規模(GNIが目安)も小さい。原則としてGNIと貿易額は比例し、その観点からするとわずか「2768」しか輸出額がないZをニュージーランドと考えるのは妥当だろう。貿易品目に酪農製品もあるし。
残ったYがカナダ。こちらは人口3000万人で、なるほどニュージーランドに比べ輸出額は圧倒的に多い。ただし、同じ3000万人のマレーシアと比べるとその値は半分以下。カナダはNAFTAの一員であり、アメリカ合衆国とのつながりがとくに強い。輸出の大半はアメリカ合衆国相手のものであり、日本向けの輸出は相対的に少なくなっている。日本向けの主な輸出品目に、資源(石炭)や農畜産物(肉類)、木材があるが、これはいずれも納得だね、
[アフターアクション]とにかくニュージーランドの初登場に驚いた。主な国の輸出品目についてはベタに知っておくべきなので、当然ニュージーランドも。この国の最大の貿易品目は、乳加工品に代表される「酪農製品」である。多くの国と違って、工業製品や資源、あるいは商品作物がトップに来ないことが最大の特徴。本問ではZの輸出品目としてアルミニウムがあるが、ニュージーランドは水力発電の盛んな国であり、一部ではアルミニウムの製錬も行われている。木材についても、そもそも温帯の国なので森林に恵まれていないわけではないのだ。ニュージーランドに牧場(草原)のイメージがあるかもしれないが、それは本来の森林をイギリス人たちが伐採し、牧場に変えてしまったため。大きな自然破壊が植民地時代には行われていたのだ。
いずれにせよ。絶対に覚えておくのは酪農製品であり、一応アルミニウムと木材も輸出されている、というぐらいに覚えておいてください。
2014.04.18
2014追試験より
今、今年のセンター追試験の分析をしているのですが、全体の解説はまた後日アップするとして、ちょっと興味深い問題が。
最近のトレンドとして原発や再生可能エネルギーに関する問題の出題率が高くなっているわけで、こうした側面からも地理という科目の重要性は高いように思います。その中で今回はこういった選択肢が登場。
全体の問題は省略しますが(興味ある人は大学入試センターのホムペからダウンロードしてください)、要するに次の文章の下線部の正誤判定をせよということ(下線が引けないので、カッコで示しています)。
アメリカ合衆国では1980年代後半から(石油の)生産量の減少傾向が続いているが、これは「原子力エネルギーへの依存度が高まったため」である。
これ、わかります?要するにスリーマイル島の話なんですが、原発事故以来アメリカ合衆国は新規の原発の着工は行われていないんです。この事実に照らし合わせて考えれば、この選択肢については「依存度は高くなっていない」ということで誤文となります。アメリカで石油の生産量が減少したのには他の理由があるんでしょう。
このようにアメリカやヨーロッパで20世紀後半以降、原子力発電所の建設は進められておらず、むしろ脱原発の流れにあるんですよ。これは意外と日本では知られていないことじゃないですか?フクシマの悲劇にぶち当たるまで、日本が原発を拡大する方向にあったのと対照的ではありませんか。
教科書ではこの「欧米の脱原発」ネタは語られていません。あえていえばフランスが原子力への依存度が高いっていう話題だけですが、これについてはまた後日どこかでお話しします。もちろん地理学習者の中にも原発推進派・容認派はいると思いますが、しかしセンター地理の世界観の中では原発はネガティブな意味しか有さないことを知っておくべきでしょう。