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2014.04.25
牛について
地理A追試験で興味深い問題が。問題文は省略しますが、カッコで示した部分の正誤判定をしてください。
牛どうしが角を突き合う様子が描かれている。この地域を中心とした一帯では、「牛は聖なる動物とされ、農耕や食用には使われてこなかった」。
これ、誤文なんですよ。たしかに牛を神聖視する宗教はあるのですが、それはそもそも古来より培われてきた牛を大切にする文化の上に立脚したもの。なぜ大切かといえば、それは牛ほど使い勝手がいい家畜はいないからですよ。鋤(すき)を体に結わえ付け、田畑を耕すために利用する。乳は貴重な動物性タンパク源となる。排泄物は肥料となるほか、乾燥させて家庭で使用する燃料ともなる。角や革は工芸品の材料ともなりえる。たしかに高温湿潤の気候環境下では(腐敗や寄生虫を恐れ)食用とはなりません。しかし、それ以上に生活を支える「糧」として、いかに牛が重要視されているか、我々は想像しないといけません。上のカッコ内、「農耕」が誤っています。
2014.04.25
2014年度地理A追試験解説
2014年度地理A追試験
<第1問 自然環境>
問1 スカンジナビア半島の南部を通る緯線は北緯60度.北緯60度一周は20000kmである。A・Bの経度差は90度(マス目一つ分の経度差は30度である。これはロンドンが経度0度、日本が東経135度であることを考えれば、求めることができる)。20000を4で割って、正解は5000km。なお、A・Bは本来曲線である北緯60度の緯線に沿っているので、やはりこれも曲線である。問題が「およその距離」を求めるもので、直線距離を求めるものではないことにも注意してみよう。
問2 「現在のプレート境界」とは新期造山帯のこと。ウのヒマラヤ山脈が該当。他は古期造山帯。
問3 これ、難しいな、有機物に富む肥沃な土壌って黒土のことで、チェルノーゼムとプレーリー土が一般的で、ややマイナーなものにパンパ土がある。で、今回はそのパンパ土が問われている。アルゼンチンからウルグアイの草原に広がる土壌であり、Lが正解。
問4 カは降水量。赤道低圧帯でとくに高く、中緯度高圧帯で低い。キは蒸発量。気温におおよそ比例している。残ったクが気温年較差。こちらは緯度に比例。
問5 小麦が正解。ヨーロッパにおける小麦の栽培北限はバルト海の南部。
問6 年降水量のような、ある地点で観測できるデータを表すものは等値線図。流線図は貿易(輸出先と輸入先が示される)や人口移動(移動の方向がわかる)など。
問7 Pについて。標高550mより高いところを着色してみよう。PからXの方向を眺めると、標高550mを超える高所がそびえ立ち、Pが北西向きの斜面に位置していることがわかる。Pに降った雨水は北西方向へと流れ落ちる。
Rについて。やはり550mより高いところを着色してみよう。RからXを眺めると、550mより高い山稜が切り立ち、Rは北東向きの斜面に位置している。Rに降った雨水は北東側に向かって流れ落ちる。
Sについて。450mより高いところを塗ってみよう。SからXを眺めると、この450mを超える高所が障害となる。Sは南東向きの斜面に位置し、雨水も南東に向かって流下する。
Qが正解。「水垣内山」の山頂を着色し、さらにその周囲の標高650mより高いところも塗ってみよう。Qは水垣内山の南西側の斜面に位置し、個々に降った雨水はそのまま南西方向つまりXへ向かって流れ落ちる。
問8 地理A特有の問題であるが。④が誤り。光ケーブルは陸上もしくは海中(太平洋や大西洋を横断する巨大なケーブルもある)に敷設されている。
<第2問 貿易・人口移動・交通など>
問1 オーストラリアは石炭、ドイツは自動車、ブラジルは鉄鉱石、ベトナムは衣類。①がベトナム、②がドイツ、③がブラジル、④がオーストラリア。
問2 北東部が誤り。国境を直接越えてくるので、アメリカ合衆国においてメキシコからの移住者が多いのは南西部。
問3 かつての宗主国と植民地の関係、言語の共通性などを考える。Aにはイギリスが含まれ、インド。インドは旧イギリス領であり、また英語使用者が多い。Cはフランス。近接する国が多く、とくにベルギーの公用語の一つにフランス語がある。なお、韓国の旧宗主国は日本であり、高齢者には日本語を不自由なく話す人々も多いが、これらは日本への留学生が多いことと派とくに関係ないかも。
問4 労働力が必要とされる工業なので、労働集約型工業の自動車工業。ブラジルは旧ポルトガル領であり、公用語もポルトガル語。
問5 旅客?ってことは人口には比例しそうだね。さらに単位は「百万人キロ」だから、人数だけでなく距離も重要な要素であり、国の面積にも比例すると思う。面積の小さなルクセンブルクは⑤でいいと思うよ。
ベルギーも比較的小さな国だし、④が該当すると思っていいでしょう。
一方、他の3つの国はいずれも人口が多い国なのだが、ポイントはイギリス。離れ小島であり、(フランスとの間に海底トンネルはあるが)原則として他の国と鉄道は通じていない。国際輸送量が極端に小さな③がイギリスでしょう。
さらに①と②だが、これははっきり言ってわかりにくい。だからもう一度基本に戻って人口と面積で考える。フランスは人口6500万人、面積55万平方キロ。スペインは4500万人、45万平方キロ。ベタに考えてしまっていいと思う。①がフランス、②がスペイン。
問6 ③が誤り。モンゴルを含めユーラシア大陸東部は当時、ソ連の存在により航空路として使用しにくかった。ヨーロッパ行きの航空機はアメリカ合衆国アラスカ州のアンカレジを中継地としていた。
問7 距離がヒントにはなると思うんだな。最も近い二がマレーシアのクアラルンプールでしょう。次いで近い、さらに便数も多い(日本人が最も多く訪れる外国はアメリカ合衆国である)ナがハワイのホノルル。
さらに遠距離ではあるが、やはり便数の多いネがロサンゼルス。つながりが薄いヨーロッパのフランクフルトがヌ。
<第3問 東南アジア地誌>
問1 シンガポールを当てる問題なので簡単かな.赤道直下なので気温年較差が小さい①が正解。他の3地点は北半球であり、明らかな季節差がある。降水量は考慮しなくていいが、シンガポールは年間を通して一定の降水量がみられる。
問2 これ、ちょっと難しいですね。地理A特有の問題。
Mは津波。ジャワ島の南には海溝が走り、海底地震が発生した。アが該当。
Kはサイクロン。三角州の低地であり、サイクロンの被害。イが該当。
残ったLが火山となる。ウが該当。
問3 カンボジアな地理Bで問われる国ではないが、地理Aではアンコールワットが登場したことがある。ヒンドゥー・仏教寺院で、世界遺産ではあるが、荒廃が激しく危険リストに掲載されている。③が正解。「国際河川」はメコン川。
①はシンガポール、②はタイ、④はブルネイ。タイの天然ゴムやブルネイの天然ガスに注目。
問4 いいですね。やみくもに牛を聖なる動物とみなさないように。あくまで食用にはしないだけで、農耕用(使役用)には重要視されていた。乳は貴重な動物性タンパク源となり、排泄物は燃料となる。「使える」動物なのだ。③が誤り。
問5 宗教のベタな問題。フィリピンで割合の高い②がカトリック。ベトナムの①が仏教。マレーシアで過半数を占めるマレー系住民が信仰するのがイスラム教で、④が正解。
問6 難しい。おそらく①だと思う。かつてタイの関する問題で「農村の過疎化」というキーワードが登場し、誤りであった。東南アジアはそもそもの農村人口が大きく、第1次産業就業人口割合も高いので、過疎化や廃村といった状況にはまだなってないんじゃないかな。
問7 これも普通に難しい。地理Aってこういうパターンがあるから厄介やねんな。とりあえず、②が誤文でしょう。シンガポールはたしか自家用車の交通規制をしていたはず。ナンバープレートが基数、偶数で使用できる曜日が限定される。これにより過剰な自動車交通を緩和する。公共交通機関を使用する人の方が多いと思うよ。
さらに⑥も違うね、東南アジアは高温多雨の自然環境で、米の栽培が中心であり、小麦は栽培されない。
<第4問 人口・生活環境など>
問1 出生から死亡をマイナスすれば人口(自然)増加率が出る。原則として、死亡率の差は出生率ほど大きくないので(グラフの目盛りをみればわかるでしょ?死亡率の方はマックスが20だけど、出生率の方は50になっている)、基本的には出生率だけみたらいい。最も出生率が高いウのグループがアフリカなどの後発発展途上国となる。ウがB。
アとイについてはいずれも出生が低いことがポイント。ただし興味深いのはアで、これは「出生率<死亡率」となっており、つまり人口が自然減少している。このような場所は世界全体を見回しても、社会・経済不安が人口の減少につながった東ヨーロッパ地域のみ(日本にしても、人口が減少しているとはいえ、20万人程度であり、全体の割合からみればわずか。「人口は変化していない」と解釈するのが正しい)。アがCとなる。
問2 「世界最大のダム」は長江に建設されたサンシャダム。Rがク。灌漑が原因となる湖面縮小はアラル海。Pがキ。カ・Qは消去法。
問3 写真がないけど、強引に当ててやろう。おそらく①でしょう。写真ではっきりとわかるスラムって、先進国じゃなくて発展途上国に違いないよ。おそらく高層ビル群の横にバラックのような掘建て小屋が並んでいるんだろうな。
問4 「緑の革命」はアフリカでは行われない。緑の革命はアジアやラテンアメリカで行われた農業の近代化で、自給作物(穀物)の増産が目的。アフリカではそのようなことはない。
問5 これ、全然わからない!何なんだろう、一体?とりあえず『非政府組織』なので、①の「警察」は違っていそうだな。また④についても違うんじゃないかな。下線部は引かれていないものの、実は「津波」っていう部分がちょっと気になる。モルディブで本当に問題なっているのは津波より海面上昇であり、それは防波堤によって防げるものなのか。島全体を堤防で囲むようなことをしないといけない。サンゴ礁の島だけに環境破壊も怖いし、そこまで大規模な土木工事は行われていないんじゃないか。④も誤りでしょう。
2014.04.24
2014年度地理B追試験解説[第6問]
第6問 地域調査の問題.桜島だけにサクラさん?(笑)地形図や図表を作った問題、さらにラストの調査方法に関する正誤問題等内容はかなりオーソドックス。一部に難問もあるが、全体には難易度は低めで、ここでしっかり得点しよう。
問1 [インプレッション]写真判定問題。こうした問題って模試ではなかなか作りにくいので憧れるなぁ(笑)。視線判定なので、矢印を延長して自分の視界を明確にすることが重要。
『解法』ア〜ウ、それぞれの矢印を延長してみよう。それが視線となる。またそれぞれの写真について、中心に縦線を引いてみよう。それが先ほど書いた視線と一致している。中央に何がみえるか、左右に何がみえるか。
ポイントになるのは海。視線が海に入り込んでいるものがアとイであるのに対し、ウは視線の先には山がある。A〜Cの写真を判定し、海が見えるものはBとC(なお、海が右側にみえることも確認。アとイの視線はいずれも右側に海が位置している)。正面が山となっているのはAであり、これがウとなる。
さらにアとイ。視線の先に何がみえるだろうか。アの正面には市街地がみえ、イの正面には小高い山がある。このことから、Bがア、イがCとなる。
[アフターアクション]写真判定問題は視線を確定させること。矢印を延長して、自分がみている中心線をはっきりさせてから解こう!セオリーに忠実な問題でした。
問2 [インプレッション]地形図問題.火山噴火を取り上げた問題はかつて1999年度に雲仙普賢岳が出題された例がある。独特の地形図だね。
[解法]①;赤生原は海岸線に沿う北部の集落。現在でも家屋はみられ、溶岩によって覆われたわけではなさそうだ。誤文。
②;1902年の地形図を確認。御岳の西側の斜面に果樹園の記号はみられない.針葉樹がみられる程度。誤文。
③;なるほど、たしかに溶岩によって浅海が埋め立てられ、広い範囲が陸化している。正文。
④;三角州は沖積平野の一種で、河川による堆積地形。溶岩によるものではない。誤文。なお、三角州については第1問問5選択肢4でも取り上げられている。確認しておこう。
[アフターアクション]それにしても最近、地形図問題の難易度が低下しているような気がする。本問も、ちょっと三角州の定義が難しいぐらい。地形図問題に妙な苦手意識を持たず、確実に得点しよう。
問3 [インプレッション]何これ?簡単すぎない?
[解法]そのまま①が正解なんじゃないの?2月において最も降灰量が小さかったのは、南岳の南西側。
[アフターアクション]変な問題(笑)。これだけ立派な図をつくったのだから、もっとそれを活用する問題ができたはずなんじゃ。ボーナス問題ですね。
問4 [インプレッション]雪国の対策っていうネタが数年前の追試験で出題されたが、それと同じパターン。でもこちらの方が楽。なぜなら、誤り選択肢についても過去に出題例があるから。
[解法]2006年度の追試験で茶畑のファンが出題されている(2012年の本試験でも写真にチラッと登場しているのだが、こちらは問題の対象となっていない)。これは霜対策。空気をかき混ぜ、冷気が地表面付近にたまらないようしている。降灰や噴石の対策ではない。
[アフターアクション]茶畑のファンって中学の問題で登場するのかな。高校地理ではおそらく取り上げられていないよね。ボクは茶の産地の出身なので、このファンが遅霜を防ぐためのものであることはよく知っているんだけど。いずれにせよ、2006年に問われているネタなので、やっぱり過去問研究は重要ってことだね。
問5 [インプレッション]一転してこちらは難しいな。以前佐賀県を対象にこうした問題が出題された例があったが、そちらでは地形がヒントとして与えられ、稲(低地に適応するからね)が真っ先にわかった。今回は手強いな。
[解法]一番気になるのはJの「75%以上」の地域の広さなんだわ.農地のほとんどが特定の作物のために使われているって言うパターン、めずらしくない?これ、おそらく稲だと思うんだわ。わが国の主穀であり、栽培面積も当然広い。とくに東北地方や日本海側では顕著なのだが、鹿児島でもそういった地域は存在するのでは。Jが稲となる。
さらにL.シラスの分布地域と最も対応しているのはこれでは。火山灰は比喩ではないし、水もちも悪い。大隅半島(桜島の東の方の半島)を中心に栽培されているのは、厳しい自然環境でも生育できるイモ類なのではないだろうか。地面深くに根を張り、厳しい自然環境でも生育できる。根や地下茎に養分を貯えることでイモが育つ。Lをイモ類とみていいだろう。
Kが野菜類。桜島の西側の鹿児島市で比較的値が高いが、近郊農業として野菜が栽培されているのだろう。
[アフターアクション]これは難しいと思う。最大のポイントは「75%以上」という数字。これに注目できないと、なかなか解けない。センター地理は数字の学問という鉄則。これ大事!
問6 [インプレッション]ラストはありがちな問題。調査方法に関する問題だが、たいていインタビューとかアンケートの重要性が問われているんだよね。
[解法]①について、インターネットで衛星画像は手に入る。でもそれで観光施設ってわかるもんなのかな。建物の形状などはわかっても、その機能まではなかなかわからないんじゃない?これが誤文でしょう。他はたしかにその通りだもの。
[アフターアクション]意外とこういった問題を苦手にしている人、いるんじゃない?幸い、出題例は多いし、慣れることはできる。選択肢②や④のように聞き取り調査やアンケートっていうのは、調査方法としては非常に有効。
2014.04.24
2014年度地理B追試験解説[第5問]
第5問 問2にはちょっとビックリ。でもGNIまで考える必要がある問4、細かい部分を注視しないと解けない問5など、おもしろい問題が多い。
問1 [インプレッション]実は問2でも難民ネタが取り上げられているんだよね。そちらがちょっとヒントになっているんじゃないかなっていう感じもある。
[解法]①や②は図から読み取れることであり、これは正文とみていいと思う。もちろんアフガニスタンやイラクの位置がわからなければ判定はできないけれど、この機会に覚えておこう。もっとも、こうしたマイナーな国が重要となることは少ないけれど。
一方、③や④は図からは判定できない、ある程度の知識が必要となってくるもの。ただし、④のNGOについては、そもそもセンター地理で問われるものではない。別に知らなくてもいいと思う。ここでのポイントはもちろん選択肢③。このように「決めつけている」選択肢って要注意でしょ?本当に砂漠化の進行や水、食料の不足が原因なのかって。問2や問3①をみてもわかるように、難民が生じる主要な理由として戦争(内戦や紛争)がある。アフリカは政治的に最も不安定な地域の一つであり、さまざまな民族・部族、宗教が混在することによって内戦の可能性も大きいだろう。もちろん砂漠化のような自然条件が起因して生じた難民も少なくないとは思うのだけれども、やはり戦争によってこそ多くの難民が生じているのではないか。アフリカだけでなく、これは世界全体に言えることだが。以上より、③が正解。
[アフターアクション]決して難しい問題ではない。問2や問3が難しいので、ここで点を落とすようでは高得点は狙えない。でもこういった問題が苦手な人っているよね.解法でも述べているけれど、選択肢①②と選択肢③④とで性格が異なる。また文章のニュアンス(決めつけるような文章になっている)ことも大きなヒントの一つになる。センター試験の特徴というかクセのようなものが明確に出た問題であり、慣れていないと解答しにくいと思う。「習うより慣れよ」というわけで、センター地理は過去問をたくさん解くことによって、その雰囲気を掴み、それを解法に結びつけて欲しいとは思っているのだ。
問2 [インプレッション]セルビアってどこやねん?っていう国名でまず躓(つまず)く。消去法で考えれば何とかなるけど、コロンビアも微妙かな。センターに出た国名ぐらいは知っておこうって感じかな。セルビアが旧ユーゴっていうことがわかれば解答が難しい問題ではない。
[解法]セルビアやコロンビアなどちょっとマイナーな国が問われているが、まず最も明確な選択肢としてベトナムを特定しよう。
Bの「東西の冷戦を背景とした戦争」とはベトナム戦争のことか。ソ連の支援を受けた社会主義の北ベトナムが、アメリカ合衆国の支援を受けた資本主義の南ベトナムを駆逐し、社会主義国である統一されたベトナムが誕生した.ベトナムについては「社会主義」もキーワードである。Bがベトナム。
セルビアは旧ユーゴの構成国。旧ユーゴスラビアについては詳しい状況を知る必要はないし、かつての連邦国家が民族や宗教の対立によって多くの国に分裂したことだけ知っておけばいい。このような複雑な状況を述べているAをセルビアとみていいだろう。「民族紛争」に注目すればいい。
なお、さらに将来に説明を加えるならば、これはセルビアのコソボ問題を説明した文章である。セルビア南部のコソボ自治州にはイスラム教徒であるアルバニア系住民が居住し、キリスト東方正教徒であるセルビア人と対立していた。セルビア政府によりコソボ弾圧などもあり、事態は深刻化したが、やがて西ヨーロッパ諸国が主であるNATO軍の介入もあり、ようやく争いは収まった。現在はコソボは独立し、セルビアから分離している。隣国アルバニアに流出した難民の多くも帰還を果たしている。
残ったCがコロンビア。コロンビアは麻薬の生産が噂されている国でもある。
[アクターアクション]さすがに「麻薬」にはビックリした。こんな話題、教科書で扱うわけもなく、授業でも取り上げないでしょ。さらにコソボ問題もちょっとマイナーな話題。一般常識というわけでもないし、なかなか勉強が難しい部分ではあるね。こういった問題で失点するのは致し方無し、かな。戦争と社会主義で特徴づけられるベトナムの事例だけ、絶対押さえておこう。
問3 [インプレッション]複数の解答を求める問題。選択肢が5つしかないのはちょっとうれしいね。ネタとしては民族が入ってくるだけにもしかしたら厄介かもしれない。
[解法]人の移動に関する問題だが、理論よりも知識が問われている。厄介な問題だけど、確実にポイントを押さえよう。
①;ユダヤとパレスチナの関係は重要。戦前までパレスチナ地方に住んでいたのはアラブ系パレスチナ人(イスラム教徒)。世界中から移住してきたユダヤ人によって彼らは住む場所を追われ、難民となった。ユダヤ人が建設した国がイスラエル。ユダヤ人やユダヤ教徒でもあり、民族・宗教的な対立も生じている。「ユダヤ」と「パレスチナ」の用法は間違っていないので、これは正文かな。
②;現在のEUについてこんなことがあるだろうか。もちろん域内の労働力の移動は自由なのだが、域外からの流入も(自由度は低いかも知れないが)禁止されているとは思えない。移民を制限していていた白豪政策やアパルトヘイトは国際的な非難によって、すでに撤廃されている。EUでこんな時代錯誤なことは行われていないだろう。誤文。
③;「初期に流入」かどうかはわからない。ここは無視しよう。ポイントは「フランス」と「ケベック」。カナダ東部のケベック州にはフランス系住民が多く、フランス語を使用するなど他の地域とは違った文化を有している。現在は沈静化しているが、かつてはテロなども勃発していたそうだ。正文。
以上より、①と③が正解。ユダヤとパレスチナ、フランスとケペックなど、固有名詞が問われているが、いずれもセンターでは狙われるワードなので、しっかり覚えておこう。
④と⑤は不問となるが、一応確認。
④;シンガポールのみならず、東南アジア一帯で最も経済的な実権を有しているのは中国系住民(華人)。とくにシンガポールは人口の4分の3が中国系住民によって占められており(これはぜひ知っておこう!)、とくに中国系住民の影響力が強い国であるはずだ。インド系はそうでもないと思うよ。誤文。
⑤;これ、難しいよね。追試ならではの特殊なネタと考えていいと思う。知らなくても大丈夫。中国では、主に内陸部の農村から、主に沿海部の都市へと労働力の移動がみられた。しかしあまりに無軌道で過剰な移動であるため、近年はやや制限されることになった。具体的には、農村で生まれた人は農村戸籍、都市で生まれた人は都市戸籍といって、生涯にわたりそれは変更できない。都市である程度働いた人は、いずれ故郷の農村に帰らなくてはいけない。決して「奨励」されているわけではない。
[アフターアクション]やっぱり難しい問題だと思う。選択肢5については、受験生のレベルで知っておくべきものとも思えないし、そもそもが最近このような戸籍制度による縛りも緩和されているので、この文章内容自体が過去のものとなっている。とりあえず正文判定問題として、選択肢1と3をしっかり理解できていればいいと思うよ。いずれもセンター頻出のメジャーなネタであるし、絶対に知っておかないといけない。ユダヤとパレスチナ、フランスとケペック、いずれも重要。
問4 [インプレッション]変わった問題。でもおもしろそうだな。1人当たりGNIは当然だけど、GNIも大切になってくるんじゃない?経済レベルと経済規模の両方を考慮しつつ、問題に取り組みましょう。
[解法]出稼ぎは発展途上国から先進国へと向かう。別の言い方をするなら、1人当たりGNIが低い国から高い国へ。発展途上国の人が先進国内でお金を稼ぎ、それを本国へ送金するのだから、「送金受取額>送金支払額」が発展途上国で、「送金受取額<送金支払額」が先進国。①と②が発展途上国でインドとナイジェリアのどちらか、③と④が先進国で日本とスペインのどちらか。
インドとナイジェリアの判定だが、これは国としての大きさで考えたらいいと思うよ。人口が多く、GNIも大きい(GNIは1人当たりGNIと人口の積)インドの方が、そもそもの金額の規模は大きくなると思う。インドもナイジェリアもいずれも低所得国ではあるけれど、インドは14億、ナイジェリアは2億という人口の大きさの違いは①と②の値の違いに明確に反映されている。①がインド、②がナイジェリア。
[アフターアクション]非常に頭を使う問題でしたね。まるで推理小説を読むような。とにかく困ったら1人当たりGNIとGNIで考えること。インドの特徴は、1人当たりGNIの低い低賃金国ではあるものの、GNIについては比較的規模の大きな「大国」であるということ。このキャラクター設定を間違えなければ何とかなる問題だと思う。
問5 [インプレッション]さりげないな〜。思わず見落としちゃうよ。ドサクサに紛れて、気づかない内に誤りワードを通過させようとしているような。言われてみれば決して難しい問題ではないんだが、それに気づくかどうかっていうと別問題だわな.知識の有無より、注意力を試しているような問題。
[解法]「西アジア諸国とホンコンでは、夫婦共働きが一般的である」が引っかかりポイント。いや、ホンコンは確かに共働きが多いんだわ。だから一瞬迷ってしまう。当然注目するべきは「西アジア」だよね。西アジアのアラブ圏を中心とした地域では、古い時代より女性の権利が制限され、社会で活躍する女性も少ない。仕事をするのは男であり、女性は家庭から出られない。この表からは職種はわかるものの、その数はわからないよね。おそらく実際に働いている女性の人数ってスゴく少ないんじゃないかな。以上より②がアウトです。
[アクターアクション]単に「イスラム地域は女性の権利が制限されている」と覚えておいたらいいよ。でも厳密にはイスラム地域だけでなく、南アジアのヒンドゥー教地域でも同様のことはみられ、むしろこうした女性差別は宗教的なものが原因とは思えないんだよね。そもそもイスラム教なんかせいぜい1500年ほど前にできた新しい宗教であるし、当然イスラム教誕生以前から女性の立場は苦しいものであった。例えば幼児婚なんていって、女性は小さな子どものうちに結婚させられたりする。当然学校にも行けないし、読み書きができないから、まともな仕事もできるわけがない。こうした西アジアや南アジアにおける状況は理解しておこう。
2014.04.24
2014年度地理B追試験解説[第4問]
第4問 太平洋地域の地誌
今回の地誌問題のテーマは「太平洋」。ずいぶん広い範囲が取り上げられたものだが、かつてはインド洋っていうテーマもあったし、とくにめちゃめちゃなこともないかな。工業に特徴のある国が少なく、どうしても自然地理に出題が偏るのは致し方無し。第1問でスルーされていた気候グラフも、こちらでは登場している。
問1 [インプレッション]海流は必須ネタ。しかし暖流や寒流の影響などではなく、単に流れ方を問うとはシンプル。ボーナス問題ですね。
[解法]海流は風(恒常風)によって生じる。低緯度海域では貿易風の影響によって海水は東から西に運ばれ、中緯度では偏西風によって西から東へと流れる.北半球では時計回り(高緯度に小さな環流があるので、厳密には「8」の字だが)、南半球では反時計回りになる。
[アフターアクション]かつて海流の流れ方は地理Aではっきりと問われたことがある。地理Bでは流れ方そのものより、寒流(例えば南アメリカ大陸西岸に沿うペルー海流)と暖流の区分がよく問われていた。流れ方も重要であるが、寒流と暖流の区分にも注意しておこう。高緯度から低緯度へと冷たい海水を運ぶのが寒流で、夏季冷涼な気候、少雨気候の原因となる。低緯度から高緯度へと暖かい海水を運ぶのが暖流で、冬季温暖な気候、多雨気候の原因となる。
問2 [インプレッション]ここで気候グラフか!しかもハイサーグラフ。オーソドックスではあるけれど、読み取りに注意。とくに今回のように北半球と南半球が混在している場合は気をつけないと。
[解法]まず南半球を判定しよう。明らかに7月を中心とした時期が高温(つまり夏)である③は除外する。北半球中緯度のサンフランシスコと思われる。残った3つのうちでも①と④は気温年較差が極めて小さく、低緯度地域であると考えられる(原則として緯度と気温年較差は比例するので)。これがグアムとラパスだろう。残った②が、南半球中緯度のオークランドとなる。
[アフターアクション]サンフランシスコとかラパスとか、非常に特徴的な都市の気候グラフが問われているのだが、そんなことには全く無関係に、単に南半球の中緯度地域の気候を特定しさえすればいい。気温年較差がもちろん重要なキーワードになっているのだが、それ以外はハイサーグラフ自体の読解が最大のポイントっていうこと。
問3 [インプレッション]食文化だが、明確なキーワードが含まれている。一般常識に近い問題でもあるんだが、それだけに逆に難しかったりするのかな。
[解法]アはアザラシで決定でしょ。最も寒冷な地域のKが該当。エスキモー(イヌイット)でしょうか。
ウがわかりやすい。ぜひトルティーヤは覚えておこう。メキシコの主食の一つであり、トウモロコシ(メキシコが原産地といわれている)を原料としている。Mが該当。
残ったウがLとなる。タロイモやヤムイモは熱帯の多雨地域に適応。焼畑農業など、
[アフターアクション]トルティーヤ、覚えておいていいかも。メキシコ=トウモロコシ=トルティーヤ(あるいはタコス)。食文化は意外に出題されるので、ベタに覚えておいた方がいい可能性もある。
問4 [インプレッション]産業に関する問題。太平洋地域は結構マイナーだから厳しいかもね。
[解法]これ、結構難しいんだよね。①の「カボチャ」って実は超重要キーワード。本来野菜は国内自給率が高く、輸入するとしても中国や韓国など近隣国からが中心なのだが、カボチャだけは例外。表皮が厚く、保存や輸送が容易であるため、南半球からの輸入量が増加している。ただ、ここでは「激減」ってあるんだよね。これ、悩むなぁ。トンガだけに限定してみるともしかしてそういう可能性も無きにしもあらず。ニュージーランドなど他の輸入先もあることだし。ひとまず保留としておきましょうか。
そして②を見る。なるほど、ナウルか。えっ、ニッケルだって?いや、太平洋地域でニッケル鉱の産出に特徴があるのはニューカレドニア島。オーストラリア大陸東方のサンゴ海に浮かぶ島で、フランスの一部である。ナウルで採掘される鉱石資源は「リン鉱」なのだ。リンはモロッコなど北アフリカ諸国で広く採掘される鉱石資源で、化学肥料の原料となる。ただし、太平洋の小さな島国であるナウルでも実は多く採掘されている(採掘されていた)のだ。「過剰な採掘」はどうでもいい。「ニッケル鉱石」が誤りで、正しくは「リン鉱石」である。
②が解答なので、③と④はどうでもいいです。
[アフターアクション]ナウルのリン鉱はかつて地理Aで一回出題されたのみ。地理Bではモロッコやチュニジアの資源として登場した例がある程度。追試特有の問題ということで、あまり意識しなくていいんじゃないかな。それに①の「輸出量が減少」とか②の「過剰な採掘」とか、ちょっとあいまいで判定に困る部分については、読み飛ばしてしまえばいいよね。明確なキーワードにしっかり反応していこう。
問5 [インプレッション]ネタとしては結構メジャーで、模試でもしばしば取り上げているんだけれども、こうしてグラフで登場すると新鮮な気がするね。グラフをみたら分かる問題と思いきや、「適当でない」ものを選ぶ誤文判定問題、どこかに間違いワードが入っているはずなのだ。
[解法]グラフが提示された問題。こうした問題には2つのパターンがあって、グラフをそのまま読み取るパターン。何の事前知識がなくても、各選択肢の内容とグラフの数値を対象されて観察していけば、自ずと解答が導き出せる問題。もう一つは、ちょっとした知識が含まれているパターン。とくにこうした誤文判定問題に多く、明らかな誤りワードが含まれている。それを間違い探しのように、全体の中から拾い出せばいいのだ。さらにいうならば、こうした誤りワードは得てして、問題そのもののテーマとは関係ない事も多い。さて、本問はどちらのパターンだろうか。
①の判定。20世紀初頭ならば1901年や1921年だろうか。たしかにイギリス生まれが大半を占めている。「旧宗主国イギリス」という部分も間違いではない。正文でしょう。
②の判定。そもそも第二次世界大戦が何年に終わったか知らないといけないね。意外とこういうのを知らない人っているんじゃない?1945年なのです。だから第二次世界大戦後っていえば厳密には1947年なんだけれど、広く捉えれば1961年とか1971年も含まれると思う。両年度のデータを観察すれば、イギリス以外のヨーロッパ生まれの数は増加している(なお、ここでは「増加」といっているので、実数で考えること。選択肢①のように「大半を占める」という場合は割合を考えなくてはいけない)。これも正文かな。
③の判定。あっ、ここで間違いを見つけた!それは白豪政策についての記述。いや、白豪政策自体は正解ですよ、ここで問題になっているのはその年代。白豪主義政策が撤廃されたのは「1990年代」ではなく、「1970年代」。よってこれが誤りとなって、③が正解!地理は世界史じゃないんだから、こんな年代が出題されるのはおかしいって?いや、もちろんその考えはその通りなんだけれど、白豪主義政策については実は年代が重要視される。ヨーロッパ以外からの移民を制限する白豪政策については国際的な非難が大きく、1970年代に撤廃され、当時勃発していたベトナム戦争からの難民を受け入れた経緯がある。1990年代に撤廃されたのは南アフリカの人種隔離政策であるアパルトヘイト。この両者は似て異なるものであるので、とくに撤廃の年代については混乱しないでおこう、
すでに③が正解であるので④については検討の必要はないが、とりあえず。1901年の値は80万ほどであろうか。2010年の値は600万に達しようとしている。6倍以上である。
[アクターアクション]移民数の変化の話と思いきや、白豪主義政策の撤廃の年代に関する問題だったわけだ。このようにセンター試験というのは、正面から話題を振ってこない、変化球が得意な試験なのだ。
問6 [インプレッション]定番の貿易に関する問題。最重要はマレーシアかな。ニュージーランドの貿易はセンター史上初登場。気をつけましょう。
[解法]マレーシアという国のキャラクターをしっかり整理しておく。人口3000万人程度の小国ながら、非常に工業力があり、電気機械の生産が多い。ただしこの国は単なる工業国ではなく、農業(アブラヤシの栽培からのパーム油の生産)や鉱業(原油や天然ガスの産出。とくに天然ガスについてはわが国にとって上位輸出国となっている)の面においても優れており、農業および鉱工業においてバランスがとれた国となっているのだ。このことをふまえて考えると、やはりXの「天然ガス」に目が行く。日本の主な天然ガスの輸入地域は東南アジアであり、国でいうならブルネイ、インドネシア、そしてマレーシアなのだ。Xがマレーシア。
さらにニュージーランドについて。この国ははっきりとした農畜産国であり、鉱工業の面においては特筆するべきことはない。そもそも人口が500万人に満たないという極端な小国であり、経済規模(GNIが目安)も小さい。原則としてGNIと貿易額は比例し、その観点からするとわずか「2768」しか輸出額がないZをニュージーランドと考えるのは妥当だろう。貿易品目に酪農製品もあるし。
残ったYがカナダ。こちらは人口3000万人で、なるほどニュージーランドに比べ輸出額は圧倒的に多い。ただし、同じ3000万人のマレーシアと比べるとその値は半分以下。カナダはNAFTAの一員であり、アメリカ合衆国とのつながりがとくに強い。輸出の大半はアメリカ合衆国相手のものであり、日本向けの輸出は相対的に少なくなっている。日本向けの主な輸出品目に、資源(石炭)や農畜産物(肉類)、木材があるが、これはいずれも納得だね、
[アフターアクション]とにかくニュージーランドの初登場に驚いた。主な国の輸出品目についてはベタに知っておくべきなので、当然ニュージーランドも。この国の最大の貿易品目は、乳加工品に代表される「酪農製品」である。多くの国と違って、工業製品や資源、あるいは商品作物がトップに来ないことが最大の特徴。本問ではZの輸出品目としてアルミニウムがあるが、ニュージーランドは水力発電の盛んな国であり、一部ではアルミニウムの製錬も行われている。木材についても、そもそも温帯の国なので森林に恵まれていないわけではないのだ。ニュージーランドに牧場(草原)のイメージがあるかもしれないが、それは本来の森林をイギリス人たちが伐採し、牧場に変えてしまったため。大きな自然破壊が植民地時代には行われていたのだ。
いずれにせよ。絶対に覚えておくのは酪農製品であり、一応アルミニウムと木材も輸出されている、というぐらいに覚えておいてください。
2014.04.24
2014年度地理B追試験解説[第3問]
第3問 都市に関する大問。これも最近の定番、マストアイテムだね。東京都心における人口増加率の高さが問われた問3が印象的であり、全体的にもバランスがとれた良問が並ぶように思う。問1、問④選択肢①④。問5。問6など、過去問の内容が十分に反映されている。
問1 [インプレッション]定番の問題。過去問で何回も登場したネタが今回も登場。そりゃイスタンブールは重要ですよ!
[解法]人口1000万人に達するような巨大都市は知っておくべきだろう。メキシコシティはメキシコの首都であり、人口規模も大きい。標高の高い高原に位置する。アの右端がメキシコシティに該当し、アがメキシコ。
トルコの人口最大都市(首都ではない)イスタンブールも人口1000万規模.海峡に面する港湾都市であり、標高は低い。ウの右端がイスタンブールと思われ、ウがトルコとなる。
消去法でイがドイツ。首都ベルリンが人口最大都市だが、人口規模はさほどでもない。
[アフターアクション]イスタンブールやメキシコシティは出題率が高い都市であり、いずれも1000万人都市の代表例。それにしても今回はメキシコ絡みの問題がとくに多いような。第1問問1でも、メキシコシティが乾燥地域にあるという話題が登場している。
問2 [インプレッション]アムステルダムって!?近年コペンハーゲンが出たので驚いたことがあったが、今度はオランダの首都が登場。でもネタとしては消去法で解けるから大丈夫かな。
[解法]東京は鉄道が中心。JRや私鉄、地下鉄によって多くの人々が通勤・通学をする。「公共交通」の割合が高いクが東京。
シカゴはアメリカ合衆国の都市であるが、自家用車が中心。カがシカゴ。
残ったアムステルダムがキ。なるほど、環境への意識が高いヨーロッパでは自転車通勤・通学の割合が高いわけか。とくにオランダは起伏の小さい平坦な国土であるので、自転車が快適なのだ。
[アフターアクション]アムステルダムが難しい?たしかに地理Aで一回登場したことがある地名であるのだが。いずれにせよ、今回クローズアップされているのだから、少なくともオランダの首都であることだけは知っておこう。
問3 [インプレッション]よく見る図なんだけれど、このパターンの図が登場した問題って意外な難問が多い。さて、本問はどうかな。
[解法]東京大都市圏における市町村ごとの階級区分図が示されている。とくに年代別に示されるこのパターン、センター試験でよくみかけるものなんだわなぁ。
今回は戦後すぐに生まれた人々の割合に関するもの。具体的な年齢を考えながら解いてみようか。
①;これはその通りだと思う.戦争が終わり、出生率が急上昇した時期である
②;50年生まれなら70年には20歳。就職や進学の年代である。妥当。
③;同じく40歳。一戸建ての住居を構える年代。郊外の住宅地を考える。妥当。
④;同じく60歳。まず引っかかるワードが「東京圏外」。都市圏とはいわゆる通勤圏のことで、東京ならば都心を中心とした半径50km2の円がその目安となる範囲。そもそもが高齢者(60歳なら高齢者でもないが)は転居することが少ないし、いきなり東京圏外というのも考えにくい.生活の基盤が大きく変化することは普通避けるのではないか。さらに「人口減少」が気になる。たしかに都心部の旧市街地においては人口増加率は高くないが、一部では再開発によるマンション建設などによって人口の都心回帰が生じている地域もあり、実際、東京都の人口増加割合は全国1位である。これらを考え合わせ、④が誤りとみていいんじゃないか、
[アフターアクション]
なるほど、やっぱり21世紀の人口移動のポイントとして「都心への人口回帰」は絶対に知っておいて欲しいのだ。そして、日本で最も人口増加割合が高い都道府県として東京都。データに関する情報は確実に知っておく、
問4 [インプレッション]都市に関する問題だが、都市名が問われるケースは稀。とはいえ、こうしたメジャーな都市についてはある程度のことは知っておいてほしいな。もちろん地図帳を使った勉強っていう意味じゃなくて、過去のセンター試験で何がどのように問われたかっていう「経験則」として。
[解法]都市というよりもそれぞれの国や地域における一般的な状況が問われており、①は典型的。アメリカ合衆国社会は「人種のモザイク」と異名を持つ。モザイクのようにそれぞれの人種や民族が別個に存在し、混じり合うことがない。彼らは都市内部にそれぞれの居住区を形成している。「居住地の住み分けは解消」されていない。これは誤り。
さらに④について
発展途上国のスラムの位置。先進国のスラムが都心近くに形成されるのに対し、発展途上国のスラムが都市周辺に広がる。「郊外」のような都市周辺部はむしろスラムが形成されるところであり、低所得者が主に居住する。高級住宅地は都心部に。誤り。
さて、これで残った選択肢は2つ。実はここからが難しい。これ、かなり判定に迷うぞ。
③って別に間違ってないと思うんだわ。このような状況は世界中のいずれの都市でもみられる状況であり、否定しにくい。当たり前なんじゃない?
では②が違うのか?パリでは郊外のラデファンス地区が副都心としての開発をされており、マンション群が建設されるとともに、オフィス街なども設けられ、都市機能の一部が移転している。『大規模な都市開発事業』は問題ないと思う。「中心部の建物の改修は全面的に禁じられている」という部分がどうなるかっていうことなんだよね、結局。たしかにパリには歴史的な観光名所が多く存在し、それらについては観光資源として重要なため、保全がなされている。でもここでちょっと迷うのだ。そういった歴史的価値の高い街区については開発は制限されているんだろうけれど、さすがに「全面的」なのだろうか.パリ中心部に近いエリアでも、CBDのように都市管理機能が集中しているエリアがあるだろうし、そういったところについては「建物の改修」ぐらいはなされているのではないか。「全面的」がやっぱり気になるんだな。っていうか、ここしかポイントがないよ。②を誤文として、③が正解となる。
[アフターアクション]②と③の判定は無理。これは難しい。ここは①と④の選択肢に注目。こちらは非常に重要だと思う。アメリカ合衆国のモザイク社会、発展途上国の大都市におけるスラムの位置、いずれも非常に重要!
問5 [インプレッション]こういう部分に地形図問題が入ってくるのは珍しい。しかしこのパターンって良問が多かったりする。この問題にも期待するのですが。
[解法]八郎潟干拓地。名前だけは知ってるんじゃないかな。戦後間もない時期に、米の生産確保の為の耕地拡大を目指して、国内第2位の湖である八郎潟の干拓が始められた。しかし干拓が終わった1970年代にはすでに米余りの状況となり、思ったように農家の入植が進まず、結果として失敗に終わった。現在なら考えられないほどの、大規模な『自然破壊』でもあるのだ。
①;
②;干拓地であることが絶対的なポイント。浅海(この場合は湖だけど)に堤防を建設し、内側を排水する。よって干拓地そのものの標高は極めて低く、海面下であることが多い。このような干拓地の特徴を考えた場合、「標高が高くなっており」は明らかな誤りだろう。また、田の土地利用記号がみられることから、水田が広がっていることがわかり、このような土地において「水はけの良い」ということは有り得ない。誤文である。
[アフターアクション]干拓地の特徴を捉えた良問に思う。地形図問題であるけれど、干拓についての知識が問われている。過去問が手に入る人は、2004年度地理B追試験第5問問7を参照しておこう。やはり干拓地の標高が問われている。
問6 [インプレッション]このような問題は一般常識的な部分もあれば、特定の言葉の知識が問われる場合もある。何となく解くのではなく、根拠を持って確実に。
[解法]なるほど、センターで比較的よく出題されるワードについての知識が問われているね。最も、「パーク」は駐車だし、「ライド」は乗るっていう意味だし、簡単な英語の組合せと考えれば、特殊な知識っていうわけでもないんだけどね。そう、正解は②。パークアンドライドはヨーロッパのいくつかの都市で行われている交通の工夫で、都市外から自動車で移動してきた人が、都市周辺の駐車場に自家用車を停め、そこからは路面電車などの公共交通機関に乗り換え、市街地へとやってくること。都市内部の渋滞が防がれるなど交通の円滑化になるばかりではなく、都市内部の排気ガスの量も減少し、環境対策となる。
他の①、③、④の選択肢については、まさにその通りでしょ。一般常識として捉えていいんじゃない?
[アフターアクション]「パークアンドライド」、センター試験で何回も登場した言葉。過去問絶対主義で行きましょう!
2014.04.24
2014年度地理B追試験解説[第2問]
第2問 エネルギーに関する大問。これ、やばいよ。センター地理の「反原発」の姿勢が明らかにされている。欧米諸国は原発に慎重的な姿勢である(問1)。日本は火山国であるのに、なぜか地熱の有効利用が進まない(問2)。そもそも日本に薪炭材を利用する文化があったのに、現在それは顧みられていない(問4)。どうなんだろう?将来の日本のエネルギー政策についての提言が、センター地理の問題の中で行われていることには、ボクらは気づかないといけない。
問1 [インプレッション]非常に興味深い!センター地理の基本概念として、晃中「反原発」がある。もちろん教科書にはこんなことは書かれていないし、授業でも扱われないだろう。でもセンター試験という舞台においては、根底的に反原発の思考が貫かれているような気がする。本問にしても、能天気に原発の再稼働に一生懸命な日本を差し置いて、既に欧米では古い時期より脱原発の流れは明らかにあり、将来的に原発は廃止されることが確定路線である。日本人が知らないこのことが、センター地理では明確に叫ばれている。
[解法]原油の生産量に関する問題。グラフの読み取りというより、そのような動きがなぜ生じたか、知識が問われている。知識といってももちろん地名や都市名のような地図帳的な知識ではないけれど。
再重要は選択肢①。さて、アメリカ合衆国で本当に「原子力エネルギーへの依存度が高まった」のか。そもそもが、日本を除く先進国において積極的に原発建設に取組む国はない。とくにアメリカ合衆国については、スリーマイル島原発事故という十字架をかかえている。1980年代に生じたこの事故によって、国内の原発推進の世論にかげりがみえ、これ以降は新たな原発の開発に慎重となった。アメリカ合衆国において、原子力エネルギーの依存度が高まるわけはないのだ。①が誤り。
スリーマイル島の原発事故からの原発政策の転換なんていうネタは世界史か現代社会であって、地理的な要素は少ない。でもセンター地理ではこうして真正面から取り上げられているのだ。センター地理の原発に対する見方が伺える、非常に興味深い問題。
[アフターアクション]とりあえず欧米においては原発は縮小の流れにあると考えていいんじゃないかな。ロシアや中国など発展途上国はともかくとして、先進国で今だに原発原発と騒いでいるのは日本だけっていうこと。
問2 [インプレッション]ベタな統計問題の雰囲気。確実に得点し、さらに時間も節約する。
[解法]最初に。アメリカ合衆国や中国、日本のようなそもそもの発電量が大きな国に注目するのは得策ではない。特色ある発電が行われている、比較的規模の小さな国がポイントとなってくる。
最も分かりやすいものが地熱。イタリア、アイスランド、そして環太平洋。火山国で行われている。フィリピンとインドネシアに着目。アが地熱。
風力は偏西風の影響が強い西ヨーロッパの大西洋沿岸諸国。なるほど、イではドイツ、スペイン、ウではドイツ、スペイン、イタリアと判定が難しい。でも、ここで考えてみよう。たしかに西ヨーロッパではあるのだけれど、イタリアは大西洋に面している国ではなく、偏西風の影響は明確にみられるものか?新期造山帯の山岳国であり、さほど風力発電に有利とは思えない。このことから、イタリアが含まれているウを太陽光と判定し、残ったイを風力とする。イタリアがポイントでした。
[アクターアクション]第一印象とは異なり、実は難しい問題だった!絶対的なポイントはイタリアだよね。晴天日数が多いことも太陽光発電にとっては有利な条件となる。なお、日本は世界で最も火山密度が高い国の一つでありながら、地熱発電は有効に行われていない。むしろ世界的にみて降水量が多い国であるのに(つまり晴天日数が少ない)太陽光では3位にランクインしている。どうなんだろうね、日本の発電に対する考え方、ちょっとおかしいような気がするな。
問3 [インプレッション]「農業にも電気やガソリンなど多くのエネルギーが使用される」っていう導入の文章がいいなぁ(笑)。内容的にはベタな農業に関する問題。こういう問題って、北海道や関東地方がポイントになったりするんだよね。これはどうかな。
[解法]「農業産出額当たりのエネルギー使用量」っていうのがキテるね。おそらくビニルハウス栽培を考えたらいいんだろうけれど、宮崎県や高知県では野菜の促成栽培にビニルハウスを利用し、当然電気代やガス代がかかる。カとキのどちらかが「農業産出額当たりのエネルギー使用量」。
さらに北海道に注目。「農家1戸当たりの耕地面積」は絶対北海道が広いでしょ?カとクのいずれかが「農家1戸当たりの耕地面積」となる。
「耕地面積当たりの農業産出額」っていうことは要するに土地生産性なわけだ。「収穫量÷耕地面積」であり、北海道のようは広い土地で農業を行う地域ならば、この値は必然的に下がる。また、農産物の種類で言うならば、穀物など比較的安い作物を栽培している地域ならばこの値は低くなるし、野菜など高価格の作物が中心なら値は高くなる。近郊農業がイメージしやすいんじゃないかな。都市周辺は地価も高いし、価格の高い野菜を生産して、東京のような大都市に出荷する。関東地方で典型的な農業。このことからキを「耕地面積当たりの農業産出額」と考える。
以上より、カが「農業産出額当たりのエネルギー使用量」、クが「農家1戸当たりの耕地面積」となる。なるほど、北海道の農家って機械化も進むし、電気とかガスは結構使っているんだね。
[アフターアクション]これ、おもしろいね。歯ごたえがある問題だった。頭をスゴく使う。こうした問題を通して、センター地理のおもしろさに気づいてほしいな。
問4 [インプレッション]バイオマスを正面から取り上げた問題。本当に最近のセンター地理はこうしたエコに関する問題が多い。とくに追試で。逆にいえば、本試験ではないのは何か意味があるんだろうか。
[解法]正解は③だね。これは結構ベタな問題だと思う。ブラジルで主にバイオエタノールを採取しているのはサトウキビである。世界最大のバイオエタノール生産国であるアメリカ合衆国(そもそも母数である全体のエネルギー生産・消費量が大きいので、割合としては小さいが)では主にトウモロコシが使用されているようだが、それにしても栽培時に多くの燃料(石油など)を使用しているので、効率は悪いんだそうだ。それに対し、ブラジルのサトウキビによるバイオエタノールは効率が良く、模範的なエネルギーともいわれている。
①のネタなんか良いよね。バイオマスは植物性と動物性があるんだが、植物性に関しては成長時に光合成によって取り込む二酸化炭素が、燃焼時に発生する二酸化炭素とある程度相殺される(これをカーボンニュートラルという)ので、①のような状況となる。
②も結構好き。最近はバイオマスについても要するに薪炭材のことだよねっていう考えがセンター地理でも大きく取り上げられている。森林のこうした効能にもっと注目してもいいかな。
また、たしかに④のようなこともいえるので、良かったら知っておいて。でも、個人的な見解としてはこうしたリスクもありながら、それでもやっぱりバイオマス(バイオエタノール)には未来があると思う。
[アフターアクション]ちょっと前の問題で、アラル海の縮小の話題が取り上げられた。アラル海周辺では灌漑によって綿花が栽培され、そのことで湖水減少という環境問題が生じている。この綿花が「サトウキビ」と取り違えられ、間違い選択肢として出題されている。農作物の種類の違いって本当に頻出なので、最重要チェック項目としてください、
問5 [インプレッション]ブリックスはともかくとして、製造業の中の内訳を聞いてくるとはぶっ込んでくるね〜(笑)。例えば西アジアにおいて、建設業が製造業より多いっていうネタは結構出題されているんだけど、さらに製造業を区分してくるのだから、これは手強い.幸いブリックス諸国は個性派揃いなので、取りつく島は多いとは思う。
[解法]製造業の中の内訳を問う問題。選択肢は機械、食料・飲料、繊維。
製造業についてはとりあえず1人当たりGNIを中心に考えるのがセオリーなわけだ。労働集約型工業については、賃金水準の目安となる1人当たりGNIの高低によって特色づけられる。
さらに工業種が問われているわけだから、統計と中心に考えてもいいだろう。機械については範囲が広すぎるだろうか、しかし繊維ならば衣類の生産に対応させればいい。食料・飲料は(ビールなどを除けば)比較的原料立地になりやすいものであるし、農業や畜産業と関連させて考えられるだろう。
では、これだけのことを頭に入れて、表を観察し、推理する。
サについて。ブラジルが高く、中国が圧倒的に低いのだ。
シについて、これは中国が高い。インドがやや低いかな。
スについて。インドが飛び抜けていて、逆にロシアやブラジルは皆無に近い。
まず最も明確なものとして繊維を考えてみよう。衣類の2大生産国は中国とインド。いずれも低賃金(1人当たりGNI)で安価な労働力が得やすく、衣類工業には有利。また綿花の世界的な生産国(中国1位、インド2位)であり、これを利用した繊維工業は発達しやすいはず。比較的賃金が高いロシア、ブラジル(ともに1人当たりGNIは約10000ドル)では衣類工業つまり繊維工業は成立しにくいだろう。スが繊維となる。
さらに機械について。先に具体的なものは考えにくいとは言ったが、とりあえず自動車や電気機械全般をイメージするべきだろう。現在世界最大の自動車生産国は中国。もちろんインドやブラジルも世界10位までに入る自動車生産大国ではあるが、中国には及ばない。それ以外の機械類についても日本などから多くの工場が進出し、中国は世界で最も製造業の集積した国となっている。このことから、シを機械と考えて妥当だろう。
残ったサが食料・飲料。どうだろう?ブラジルで割合が高くなっているが、これには納得じゃない?ブラジルはサトウキビやコーヒーのような工芸作物(加工が必要な作物)の生産が多いし、さらに牛の飼育等数も世界一であり、食肉加工業も発達しているはず。もちろん他の国も農業の盛んな国ではあるけれど、こうした状況を考えればブラジルに一日の長があるんじゃないかな。とくにつじつまの合わないところもないし、これで正解と思います。
[アフターアクション]実に歯ごたえがある問題だった。模試でこのレベルの問題は(難易度的に)作りにくいとは思う。ブリックス4か国の1人当たりGNIは覚えておいて(ロシアとブラジルが約10000ドル、中国が5000ドル、インドが2000ドル)、それぞれの賃金水準と工業種を結びつける。さらに今回は衣類生産国としてインドが2位であることがポイントとなったように、工業製品の統計については深くコミットしておくこと。1位の国は当然必須なのだが、できれば2位以降の特徴的な国も知っておこう。そもそも中国が1位の工業製品統計が多すぎるからね(笑)
問6 [インプレッション]地味な問題(笑)。日本企業の立地の変化。1人当たりGNIなど、経済を中心に考えてみよう。
[解法]①;自動車工業は、単純労働力に依存する労働集約型工業。安価な労働賃金を求め、中国やタイ(いずれも1人当たりGNIは5000ドル程度であり、賃金水準は低い)へと生産の拠点が移動することは妥当。ここでは「新たな市場開拓」とあるが、あまり気にしなくてもいいかな。現在中国は世界最大の自動車販売台数を誇る国であり、市場としての魅力も大きい(人口が大きい、つまりGNIが大きいからね)。
②;研究施設はたしかに大都市圏に集まりやすいんだわ。でも、生産施設はどうだろう?「集積回路の工場」とあるけれど、集積回路(IC)のような軽量高付加価値の機械製品というのは、遠方から輸送してもコストがかからないため、九州や東北地方の空港・高速道路の近くで生産が行われることがある。誤文とみていいね。
③;たしかに原油価格は高騰しているのだが、だからといって国内の石油化学コンビナートが閉鎖しているだろうか。例えば日本はプラスティックについては世界5位の生産国であり、石油価格工業が衰退しているわけでもない。統計に基づいて考えればいいんじゃないかな。これも誤文。
④;情報が集積する東京周辺に、出版・印刷業は集まる。地方には分散しない。誤文。
以上より、①が正解。いきなり①を正文としてしまってもいいけれど、②〜④の誤文判定も確実に行うと、正解率が上がる。
[アクターアクション]やはり第一印象通りの地味な問題。特殊な事例が問われているわけではなく、とくに①や④の内容などは絶対に知っておくこと。③はちょっと悩むんだが、製鉄所については戦前から稼働していたような古い施設については取り壊されているものの、石油化学コンビナートはそもそもそういった古い施設は存在しないしね(高度経済成長以降につくられたものばかりなので)。若干②の話題が古いような気がして悩むのだが(最近は大都市周辺に工場も多いように思う)、あくまでセンター地理の中での真理として「IC工場は地方に立地」で覚えておいていいんじゃないかな。
2014.04.24
2014年度地理B追試験解説[第1問]
たつじんオリジナル解説[2014年地理B追試験]
解答数は36個だが、2つの解答を求める問題が一つあるため、問題数は35問。また第2問については冒頭にリード文が設けられており、近年では珍しい形である。
第1問 世界の自然環境
第1問が自然環境に関する大問であるのはいつものパターン。ただし、問1で植生が大きくフューチャーされていたり、何らかの形の気候グラフが問われていない点が目新しい。
問1 [インプレッション]冒頭で植生の問題!形式も含め、目新しい。土壌についても言及されており、どちらで考えてもいいと思う。
[解法]植生と土壌と両方のヒントが示されているので、じっくり考えてみよう。ヒントが多い問題だからこそ、直感で解いてはいけない。
最も気になるのはツンドラ(ツンドラ土)。ツンドラというのは、通常は雪氷に覆われ、短い夏の間だけ地表面に地衣や蘚苔が繁茂する荒地のことで、北極海や南極海沿岸などに典型的にみられる。まずエが外れる。エの北端のノルウェー南部は偏西風や暖流(北大西洋海流)の影響によって緯度に比して温暖であり、決してツンドラではない。温帯に含まれ、都市も立地している。
さらにポイントは熱帯林とラトソル。これは赤道に近い低緯度地域にみられる植生と土壌である。これによりアが外れる。アの南端はメキシコ中部であるが、この地域には乾燥気候が広がる(例えばメキシコシティなど、降水量が少ないことが特徴の都市である)。中緯度高圧帯の影響によって少雨となることも考慮しよう。
そして最後のポイントとして亜寒帯針葉樹林(タイガ)とポドゾルがある。これは冷帯の植生と土壌。針葉樹は冷涼な地域にみられ、とくにシベリアやカナダには樹種が単純な(例えばモミだけ、あるいはトウヒだけ、といったように)森林が広がり、タイガと呼ばれている。冷帯は蒸発量が少なく、水分が地下に浸透する際に色素を溶脱し、灰白色の土壌が形成される。これがポドゾル。冷帯の特徴として冬季の極端な低温がある。冬季の平均気温が極めて低く、湖沼や河川、海岸などの凍結がみられるのが冷帯。海洋からの影響が強い地域(海洋性気候)ではこのような事象は生じず、冷帯気候となる絶対的な条件として大陸の影響が強い(大陸性気候)ことが上げられる。南極を除けば(南極は寒帯気候であり、冷帯より寒冷。そもそも植生がみられず、土壌も大陸氷河の下に隠れている)、高緯度地域に陸地がほとんど存在しない南半球においては冷帯気候も分布せず、タイガやポドゾルもみられない。このことからウが消える。
残ったイが正解!消去法かよ、疲れた(笑)。
[アフターアクション]これ、難しいわ。消去法で徹底的に考えた。君たちは最低限「南半球に冷帯は存在しない」だけは知っておいて、冷帯が存在しないのだから、冷帯の土壌であるポドゾルも存在しないのだ。
問2 [インプレッション]河川流量を問う問題は定番ネタであるものの、本問はちょっと雰囲気が異なる。問1に続いて難問ですよ!
[解法]Aを当てないといけない。例えばBはすごく簡単。Bのような寒冷地域を流れている河川は春(初夏)の融雪・融氷期に一気に増水する。冬季は凍結しているため、流量は最小。④がBになるのは簡単に判定できる。
さて、それに対してAはどうなんだろうか。難しい問題だからこそ、深読みはせず(そんなにセンター試験はひねくれたテストではないよ)素直に考えよう。Aはアアマゾン川だろうか、熱帯雨林の広がる低地を流域に収めている。赤道直下のエリアであり、年間を通じ降水量は多いだろう。高温の地域であるので、融雪や融氷、凍結といった要素は考慮する必要がなく、降水量と流量をそのまま対応させればいい.年間を通じて渇水期がなく、流量も比較的安定している②が正解となる。
CやDはいずれも乾燥地域を流れる外来河川であり、とくに降水量が少ない時期には流量が激減する。モンスーンの影響によって夏季に降水量が多い地域を流れるCが③、南半球の初夏に融雪によって流量がやや増加するDが①となる。
[アフターアクション]Bが④であることをしっかり覚えておいて!こっちのネタの方が使えるはず。
問3 [インプレッション]うわー、これ、おもしろいわ。ちょっと厄介だけど、解答可能と思う。消去法で考える方がベターかな。
[解法]熱帯低気圧の発生のための最大の条件、それは海水温。一般に海水温が27度以上の海域においてのみ熱帯低気圧は発生する。ただし、転向力が働かない赤道直下においては生じないことも知っておくといいかも。ただし本問の場合は赤道直下のエリアはないので、この条件は無視していいね。
海水温にこだわるならば、2つの海域において妥当でないことがわかる。南アメリカ大陸の太平洋岸、アフリカ大陸の大西洋岸はそれぞれ寒流が流れており(寒流とは高緯度方向から低緯度方向へと冷たい海水を運ぶ流れ)海水温は低い。熱帯低気圧の発生海域としてKとLは不適であり、残った2つが正解となる。
[アフターアクション]海流の流れは第4問でも登場している。同じネタが出題されることは珍しくないものの、元々の出題率がとくに高いわけでもない海流ネタが連発されたことにはちょっと驚き。それだけ大事だってことでもあるんだけどね。
問4 [インプレッション]大地形の問題。このように大地形が文章の形で出題されるときは難問になるパターンが多いのだが、本問はどうだろう?細かいことは聞かれないものの、確実は知識は必要となる。
[解法]①;地溝について。アフリカ地溝帯はプレートの広がる境界である。誤文。同じ「溝」であっても、地溝は広がる境界、海溝は狭まる境界。
②;アンデス山脈は新期造山帯。古生代に造山運動を受けたのは古期造山帯であり、該当しない。誤文。もちろん「古生代から現在まで」数億年間にわたり継続して活発な造山運動を受けているような地域は存在しない。
④;ヨーロッパの火山は、イタリアなど地中海沿岸とアイスランド(大西洋中央海嶺)。東ヨーロッパ平原にはみられない.誤文。
正解は消去法で③。楯状地の説明であるが、とくに知らなくていい。
[アフターアクション]「楯状地」なんていうマイナーなものが解答になっているというめずらしいパターン。でもこれについて特別な知識はいらないと思う。とりあえず安定陸塊(6億年以上前につくられた地形)であることだけ知っておけばいい。本問にしても消去法で解くべき問題。
問5 [インプレッション]見慣れない図が登場。不穏な空気だが?はてさてどんな問題なのだろう。
[解法]ちょっと読み取りにくい図だな。海面の高さっていうのは、現在と比較してっていう意味だよね。つまり15000年前は現在より100mほど海面が低かったということで、海水が少なかった時代ってことだね。氷河期で大陸氷河が発達していたことが想像できればいい。
で、氷河期の地球を想像して欲しいんだけど、いわゆる「グレートジャーニー」が生じた。モンゴロイド(黄色人種)のユーラシア大陸からアメリカ大陸への移動がみられたのだが、これは現在のベーリング海峡が陸化していたために、徒歩によって行われたのだ。このことを考えるに、1万5千年間(つまり氷河期)の世界において、現在の浅海底は陸化し、人々が歩くことによって移動や交流をしていたという歴史があるのだ。「現在大陸だなになっている範囲」はむしろほとんどが陸地だったんじゃないか。
[アフターアクション] いや、これ、難しいや。たしかにちょこちょこ氷河期に陸地がつながっていたっていうネタは登場しているんだが、それにしても解答は困難。氷河期という時代について、もっと授業で取り上げていこうかな。ここが盲点になっている気がする。
問6 [インプレッション]マングローブの問題か。環境破壊ネタなら一般常識で解けるかな。
[解法]あ、簡単じゃないですか。エビの養殖池の拡大だよね。実際、ベトナムやインドネシアからのエビの輸入は増加しているわけで、その多くはマングローブ林の破壊の上に成り立っている。図は関係なかったね。
[アフターアクション]マングローブの問題は結構よく出てくる。熱帯の干潟にみられる植生で、河口付近の汽水域にしばしばみられる。満潮時は樹木の頭まで海水につかり、干潮時には根までが海面上に現れる。泥地で豊富な生態系を有しているが、近年はエビの養殖池の開発などにより失われるものも多い。
2014.04.23
『東京難民』観ました
2014.04.23
久々に大分に降り立って
大分市民に媚びるわけではないけれど、全国いろんな街をめぐったたつじん的には、住むなら大分だ な、と。公共施設や官公庁などが駅から歩ける範囲に揃っていて、ショッピングや飲食にも不自由しない。また、今日職員さんとしゃべったんですが、これまで 何もなかった駅南地区が再開発され、住宅地や道路などの整備により、さらに利便性が増すよう。JRの駅を中心とした都市計画がはっきりしている点におい て、大分市は効率的な街づくりがうまく進められていると思います。