たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう

2019年地理A本試験解説

たつじんオリジナル解説【2019年地理A本試験】          

 

【1】[インプレッション]なぜ、いきなり「D〜G」から始まっているんだ?ACはどこに行ったの?

それはともかく、自然環境の問題。地理Aで冒頭が自然環境って結構珍しいんじゃないかな。いつもは図法に関する問題が多い印象なんだが。これ、おそらく本当の問1があって、そちらで「AC」の記号を使っていたのに、急遽とりやめになったパターンなんだろうね。DからGはそのまま使って。

問題としては非常に質が高いと思う。ここで取り上げられている4つの地域は地形、気候環境的に非常に興味深いところ。本問がスムーズに解ければ、地理有段者といった感じかな。

 

[解法]4つの地域の自然環境が問われている。いずれも非常に興味深い地域。

海流が重要。海流の流れは「北半球が時計回り、南半球が反時計回り」である(より詳しく「北半球は数字の8の字」と覚えておいてもいいけどね)。海流は海表面の恒常的な海水の流れであり、低緯度では貿易風によって「東から西へ」と流れる動きとなり、中緯度では偏西風によって「西から東へ」と流れる動きとなる。これゆえ、北半球では時計回り、南半球では反時計回りになるんだね。風(とくに恒常風)によって海流が生じるメカニズムを理解しよう。

さて、注目すべきはE。海洋の東部、大陸の西岸であり、南半球の海流の流れが反時計回りであることを考えると、この沿岸を「南から北へ」と流れる海流が存在することがわかる。高緯度から低緯度へと、冷たい海水を暖かい海域へと運ぶ流れは「寒流」である。海表面や地表面に接する低空域の大気を冷却し、逆転層を形成(通常の空気は、地表面付近で高温、上空で低温。これとは逆に、地表面付近の方が気温が低い大気の状態を「逆転層」という)。上昇気流が生じにくく、降水量が少ない。比較的緯度が低いため気温が高く、蒸発量は多い。「降水量<蒸発量」のバランスから乾燥し、植生がみられず砂漠が形成される。これを海岸冷涼砂漠という。

このことから④が正解。南アメリカ太平洋岸の低〜中緯度にも同様の乾燥地域(海岸冷涼砂漠)が形成されているのだが、本図をみれば「大陸西岸」という同じ条件の下で同じような植生環境(「砂漠」とは地表面を覆う植生がみられないという植生を表す言葉なのだ)であるのは明らか。

他は、Dが①。旧ユーゴスラビア西部のカルスト地形。Fが②。オーストラリア東部は古期造山帯でなだらかな山容。Gが④。高緯度の沿岸部にはフィヨルド。

 

[今後の学習]やっぱり寒流と乾燥気候の関係は非常に重要ってことだね。こうした海岸冷涼砂漠が典型的にみられる地域として、Eで示されたアフリカ大陸南西部、それから南米大陸のペルーからチリ北部を必ずチェックしておこう。いずれも「大陸西岸・緯度25度」付近の条件を満たす。

 

【2】[インプレッション]いい問題ですね。降水量が取り上げられた良問。地理Aらしくないな(笑)

降水量を示す数字にもちろん注目して欲しいが、それ以前の問題として②や④のように極端なパターンを示す選択肢もあり、その違いは一目瞭然といった感じかな。

 

[解法]同一緯線上の降水量(年降水量)について、世界の4つの地域を比較している。北アフリカ、ユーラシア大陸中緯度東部、インドネシア、北米大陸中緯度。

明らかなのかアとウかな。アはサハラ砂漠を通過する線で、北アフリカは大西洋沿岸(西端)から紅海沿岸(東端)まで全体が乾燥地域。亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)の影響が年間を通して強い地域だね。②に該当。

それに対し、ウのインドネシア。赤道直下の地域であり、こちらは年間を通じ熱帯収束帯(赤道低圧帯)の影響が強く、スコールに見舞われる。降水量がとくに多いと思われ、④に該当。④については縦軸の降水量を表す数字にも注目しておこう。いずれの地点も2000ミリを超え、3000ミリを超える地点も多い。日本は、温帯地域としては降水量の多い国であるが、全体の降水量の平均は年間1500ミリ。赤道付近の降水量の多さは圧倒的である。

残ったイとエ。これが①と③のいずれかに該当する。内陸部の中央アジアがそもそも雨の多い地域であるはずがないので何となくわかるんだが、あえてエに注目してみようか。エの西端、太平洋岸に位置する都市はヴァンクーヴァーやシアトルなど。ともに地中海性気候がみられる都市だが、他の地中海性気候の地域と異なっているのは、ここの降水量が多いということ。本来、地中海性気候は夏に少雨となるだけでなく、年間の降水量も決して多くない。だからこそ、喉の渇きを潤すためにブドウの栽培(そしてワインの醸造)が行われているのだが、ヴァンクーヴァー、シアトル周辺はブドウ栽培地域ではなく、森林が広がっており、製材業が発達している。沿岸を暖流であるアラスカ海流が北上し、豊富な水分が大気中に供給されることで、この地域は世界で唯一の「降水量が多い地中海性気候」となっている。北米大陸は、西経100度の経線が年降水量500ミリの等値線とほぼ一致し、これより東側が湿潤、西側が乾燥となっているが、このシアトル以北の太平洋岸のみ例外。アラスカ海流の影響により、むしろカナダやアメリカ合衆国において最も降水量の多いエリアとなっている。

以上より、西端が1000ミリに達する③がエに該当、残った①がイとなり、これが正解。

参考までに①=イについても確認しておこう。西半分の中央アジアは全体として砂漠が広がる乾燥地域。降水量は少ない。中国の華北地方も少雨地域。年間降水量は500ミリ程度(中国においては、チンリン山脈とホワイ川を結んだラインが年間降水量1000ミリの等降水量線に相当し、これより北では少雨となり小麦作が行われ、南では多雨となり米作が行われる)。東端の日本の東北地方では年降水量が1000ミリを超える。日本の降水量については、札幌で年降水量1000ミリ、東京で1500ミリ、那覇で2000ミリという数値を直接覚えておくといい。

 

[今後の学習]良問です。解法を結構長く書いたので(笑)必ずチェックしておいてください。やっぱり、ヴァンクーバー、シアトルの「降水量の多い地中海性気候」はポイントだと思うなぁ。シアトルの冬は雨の日だらけなのです。日本よりはるか高緯度ながら雪にならないのも特徴です。

 

【3】[インプレッション]文章正誤問題の誤文判定問題。とくに判定箇所には下線が引かれているので、解きやすいんじゃないかな。ジャンルは「国家や領域」。地理Bでは出題されない、いかにも地理A特有の問題。

 

[解法]地理Bではあまり出題がみられないジャンルだが、決して高度な知識ではないので、これぐらいは知っておいて欲しいかな。

①;国家の3要素は「領域(領土・領海・領空)」、「国民」、「主権」。正文。

②;国境には大きく、「自然的国境」と「人為的国境」がある。地形によって境界が定められるものが自然的国境であり、例えば日本の国境は全て海洋であり、自然的国境。山岳国境や河川国境などがある。

これに対し、非自然的な要素によって定められた国境が人為的国境。壁や人工的な水路によるものも一部にはあるが、やはり最も一般的にみられるのは経線や緯線に基づいた直線状の国境だろう。砂漠の中の非居住地域に引かれるものが多く見受けられるが、アメリカ合衆国やカナダの国境などそれに該当しないものもある。また、とくに中南アフリカにおける経緯線に沿った人為的国境はかつての植民地支配の名残りであり、例えばイギリスの支配地域とフランスの支配地域を機械的に区分してしまったもの。欧米の都合によって設定されたものであり、民族や部族の分布が無視されている。ニジェールとナイジェリアに分断されてしまったハウサ族など。

③;これは多いですね。インドとパキスタンが帰属を争うカシミール地方などは代表例でしょう。

④;というわけで、これが正解。数字に従って解釈したらいい。排他的経済水域は漁業専管水域と同じもので、沿岸(厳密には干潮時の海岸線)から200カイリ(約370k m)の範囲までは、その国の独占的な資源開発(漁獲も「資源」ですね)が可能。ただし、その国が支配しているわけでないので、外国船の自由な航行は可能。

これに対し、領海とは選択肢①にもあったように、領域の一部で、国家の主権が及ぶ範囲。国によって解釈はまちまちだが、一般に「12カイリ」と覚えておけばいい。沿岸から12カイリ(おおよそ20k mと考えておけばいい)の範囲は、その国の支配下にあり、資源の開発はもちろんだが、外国船の航行も当該国の許可がないと不可能(例外はあるが、ここでは無視しましょう)。

以上から考察するに、「排他的経済水域は領海に含まれ」という箇所が不適切なことがわかるだろうか。排他的水域は沿岸から200カイリの範囲で広大である。領海は沿岸から12カイリであり、その範囲は狭い。領海が排他的経済水域に含まれるのであって、排他的経済水域が領海に含まれるのではない。これが誤りである。

なお、排他的経済水域の外側は「公海」。沿岸から200カイリ以上離れた海域で。このエリアの海底資源についてはどの国の所有物でもなく、国際条約などによる共同管理が行われている。船舶の航行はもちろん自由。

 

[今後の学習]

地理A的な問題であるので、さほど意識はしなくていいと思う。排他的経済水域が「200」、領海が「12」という、数字が過去に何回か出題されたことがあるので、これだけ知っておいたらいいんじゃないかな。

 

【4】[インプレッション]いい問題ですね。昼(日の出から日の入りまで)と夜(日の入りから日の出まで)の長さを図によって問う問題は、2002年地理B本試験、2007年地理B追試験などでも取り上げられており、定番問題の一つ。地球の傾きを意識する理系的な思考が必要ですね。

 

[解法]日の出は太陽が地平線(水平線)からちょっとだけ顔を出した瞬間、日の入りは太陽が地平線(水平線)の下に完全に隠れてしまった瞬間。日の出からの日の入りまでの時間が「昼」、それ以外の時間が「夜」となるわけで、例えば春分や秋分の日であっても実はちょっとだけ(太陽の直径の分だけ)昼の方が長くなるんですが、地理の場合そこまで厳密に考える必要もないので、微妙な部分は無視してしまいましょう。とりあえず、春分と秋分の日は昼と夜の長さは等しく12時間ずつである!と。

余談はそこまでにして(余談だったんかい!?)、図を見ていこう。カは12月や1月の「昼」の長さの平均が24時間、6月や7月が0時間。何と極端なことか。さて、昼が24時間、夜が0時間の状態を何という?そう、「白夜」だよね。緯度66.6度より高緯度側の極圏では夏の間、太陽が地平線の下に沈まず、いわゆる「真夜中の太陽」が出現する(白夜は英語に訳すと「Midnight Sun」というのだ)。冬はその逆で全く太陽が観測できない。12月や1月が夏、6月や7月が冬というわけだ。これ、南極圏であるはず。南半球高緯度のRが該当。

クのその逆になるのはわかるよね。12月と1月の「昼」が0時間、6月と7月が24時間。6月や7月が夏となる北半球の地点である。この時期に白夜となるのはもちろん北半球高緯度のP。北極圏の地点。

さて、キはどうだろう?年間を通じて「昼」の長さが変わらず、常に12時間。地球は地軸を傾けながら自転しているので、4月から9月は北半球、10月から3月までは南半球で、昼の時間が長くなる。もちろんこれによる太陽からの受熱量の違いが季節や気温年較差の生じる理由となっているのはわかるね。それに対し、赤道直下の地域では常に昼の時間が12時間であり、太陽からの受熱量は変化しない。キがQになるのは明らか。

 

[今後の学習]地球と太陽の関係は中学3年の理科の範囲なんですが、それが直接出題されているわけで、決して難しくないと思う。ただし、この理論をそのまま利用し、北半球と南半球における昼と夜の長さの変化、白夜と極夜の成因について考えないといけないし、さらにそれを発展させて地球全体の気圧帯の季節的な移動に結びつけて、雨季と乾季の生じるシステムを理解しないといけない。地理の根幹をなす、非常に重要な考え方を本問は含んでいるということなのだ。

 

【5】[インプレッション]GISは新課程で重視されるジャンルであり、共通テストでも出題が予想される。必ずチェックしておかないと!

 

[解法]とりあえず「市区町村名」って「位置」ではないよね。これが間違っているんでしょう。

 

[今後の学習]本問ではGISについて「位置情報」を強調して取り上げているけれど、位置情報は本来はGPSだからね。ちょっと誤解が生じそうな感じ。GISについてはキチンと「地理情報システム」という日本語で頭に入れておいて、さらに「情報処理のシステム」として、多様な情報をコンピュータ画像により図示化するということであると覚えておこう。本問で言えば、選択肢①なんかは典型的なGISの利用法だと思うよ。地図の上に店舗の場所を、コンピュータの画像によって示す。

 

(すいません。。。間違えました)

 

答えをみたら正解は④でした。つまり「方位」が違うってこと。よくわらかんなぁ。。。Google マップなんかで検索するワードってことなのかな。たしかに「市町村名」を検索欄に入れたら、Google マップはどこか示してくれますよね。でも東西南北みたいな方位を検索しても意味がない。そういうことなんでしょうか。お手上げの問題です(涙)

 

【6】[インプレッション]おっと、初めて見るパターンの問題。でも我々の生活に密着した話題でもあるし、落ち着いて図や数字と解釈していけば大丈夫なんじゃないかな。いわゆる「紅葉前線」は「桜前線」とは逆に、北から南に下りてくるものですね。

 

[解法]「イチョウの黄葉日」に関する問題。こうした落葉広葉樹は秋が深まると色づく。北国ほど秋が深まるのが早いのだから、黄葉日が早いのも当然北日本である。逆に温暖な地域ならば葉が色づくのは遅い。北海道の帯広市が④、九州の熊本市が①となる。残った2つは緯度的にはほぼ同じなのだが、標高差があるので、気温も異なっていると考えられる。低地の水戸市が比較的温暖であるのに対し、高原の長野市は冷涼な気候がみられるはず。黄葉日が早いのが長野市で③、水戸市は遅く②が該当。

 

[今後の学習]とくに問題ないなと思います。高緯度だが低地の帯広市と、中緯度だが高地の長野市でどちらが寒いかっていう判断が難しい(つまりどちらが早く黄葉が色づくか)けれど、水戸市を当てるのだからとくに問題なかったでしょう。

たしかによくみると、①と思われる帯広市と、②と思われる長野市で5日間しか差がないから、そもそもこの2つの都市は悩ましかったわけだが。

南から上がってくる「桜の開花前線」と、北から下がってくる「黄葉・黄葉前線」との違いには十分気をつけてください。

 

【7】[インプレッション]GISの問題。GISとは地理情報システムのことで、地理Bの教科書でも取り上げられてはいるが、センターでの出題は地理Aに限られている。しかし、新課程の地理探求においては大きくGISがフューチャーされる予定で、共通テストでも必ず出題されるはず。本問に習熟し、感覚を養っておくべきだろう。

 

[解法]GISすなわち地理情報システムの問題。GISはこのように災害の状況を把握し、それを可視化する際に用いられることが多い。

災害の「予防」期、「発生直後」、そして「復興」。時系列に従ってキーワードを拾っていけばさほど難解でもないだろう。

各選択肢の文章を検討していく。

サ;「被害箇所」を把握し、「被害状況」マップを作成するのだから、少なくとも災害が起こった後である。

シ;ズバリ「復旧」状況と述べられている。これは復興期とみていいだろう

ス;この文章にはキーワードが含まれていない。

しかし、サが災害発生後、シが「復興」期とわかっているので。サを「発生直後」、スを「予防」期とする。正解は⑤。

 

[今後の学習]問題そのものは簡単だと思う。しかし、GISについての理解は今後の地理学習において非常に重要になる。選択肢の文章をしっかり読み込み、GISの役割とは何かについて考えをまとめておいてほしい。

多様な地理情報を可視化し、マップに示す。GISの利用法として重要なものの一つである。

 

【8】[インプレッション]テーマは災害であり、そしてその備えである。近年のセンター試験で重要視されるところであり、今後の共通テストでの出題も大いに考えられる。写真は使われているが、下に文字も書き添えられており、写真自体の判別は不要だろう。

 

[解法]災害・防災に関するテーマからの出題は近年増加している。非常に重要な問題。

さて、「津波」対策であるのは「堰堤」、「調整池」、「道路沿いの柵」、「避難階段」のいずれだろう。

津波の特徴は、海から陸に向かって逆流する巨大な水流であるという点。例えば、狭く入り込んだ海岸の奥でこそ津波被害が大きくなることはよく知られているだろう。海岸の集落を飲み込み、細い谷を駆け上るように水流が襲いかかる。津波が生じた場合に、最も有効な対策は「高所に登る」ことである。低地や谷筋は津波に巻き込まれ、家屋、車両、船舶、そして人間が押し流される。数十メートルの高さの地域にまで津波被害は及び、谷あいの道路に沿って逃げていればすぐに水流に飲み込まれる。

これを避けるために、とにかく丘陵などの高台に逃げることが必要となる。幸いなことに、海底地震によって発生した津波が沿岸に到達するまでにはそれなりのタイムラグがある。20〜30分の時間があれば十分だろう。そもそも津波が巨大化するのは、リアス海岸のような周囲を山地に囲まれた地域なのである。すぐに山地や丘陵へと登り、津波をやり過ごすのである。選択肢中、高所への避難のためにつくられた施設は一つしかない。そう、④の「避難階段」が正解。なるほど、写真の背後には山地というか丘陵というか高台となる地形がみられる。標高は数十メートルに達するだろうか。これならば津波は達しないだろう。

 

[今後の学習]津波に対する認識を明確に。津波は「波動」であり、「水流」である。沖合の海底で地震が生じる。その衝撃が波動となり、沿岸に押し寄せる。例えば平坦な砂浜海岸ならば力が分散し、また浅い海底の摩擦によって波の力が弱まり、さほど高い波とはならないが、リアス海岸のように複雑な入江の場合は奥の一点に力が集中することで、極めて巨大な波となる。こうした入江は水深も深いので、波動の勢いがそのままの力でやってくる。

湾から陸地へ這い上がった水流は、谷を駆け上っていく。あたかも激しい川の流れが逆流するかのように。川沿いの土地は極めて危険となり、とにかく少しでも高いところへと逃げ伸びるしかない。幸いというべきか、震源が遠ければ津波が達するまでにはそれなりの時間があり、そのタイムラグを利用して避難は十分に可能である。

なお、他の選択肢についても一応コメントをば。

①の「堰堤」については、写真から判定するに砂防ダムのようなものと思われる。上流から流れ落ちてくる土石流を食い止め、下流へと被害が及ばないようにする。急流が多い日本においては、山間部を中心に多くみられる施設。

②の「調整池」は集中豪雨による洪水対策。河川の水があふれないように、水を溜め置く場所。これも国内に多くみられる。

③の道路沿いの柵は、防音対策ちゃうんかな?高速道路に沿って写真のような壁(パネル)が張ってあるよね。

 

【9】[インプレッション]写真判定問題。第1問問8とは異なり、こちらは写真に何の説明も加えられていないため、ちょっと難しいかな。というか、著作権の問題で写真が公開されておらず(大学入試センターのホームページ)、残念ながら解答不能となってしまっています。悪しからず。

 

[解法]写真②と③が未公開なので解答できませんが、それ以外について考察していきましょう。

Aはドイツ南部だろうか。ヨーロッパの伝統的な祝祭の様子が表されているはず。ミュンヘンならビール祭りなんだが(笑)どうなんでしょう。

Bはアラビア半島の紅海沿岸で、ここはメッカ。イスラム教最大の聖地であるカーバ神殿が位置。商人の宗教であるイスラム教(開祖のムハンマドはそもそも商人であった)であり、その聖地もこうした交易の便利な港の近くにあるのも納得なのだ。決して山の中の隔離された場所ではないからね。

Cはチベット高原。中国南西部のチベット自治区なのだが、むしろインドの北東側というか、バングラデシュのちょうど北の場所にあるので。その位置をちゃんと目で捉えてほしい。内陸部の地点って判定が難しいので、注意が必要なのだ。チベット族は仏教の一種であるラマ教(チベット仏教)を信仰。標高3000mを超える高原には聖地ラサが位置し、ポタラ宮が信仰の中心。

Dはハワイ。ポリネシア系の文化がみられ、フラダンスの写真が使われているのかな。

写真をみていこう。①は何だろう?全身を白い衣服で覆った男性の集団。北アフリカや西アジアの炎暑となる乾燥地域ではこうした服装が一般的である。体を太陽光線や外気から遮断した方が涼しい。これ、Bと思っていいんじゃないかな。メッカは関係なかったね。というか、イスラム教はそもそも男女平等の宗教であるし、女性もメッカへの巡礼が教義とされている。チャドルと呼ばれる黒い装束をまとった女性を描いた方がイスラム地域としてはわかりやすかったかな。もっとも、サウジアラビアはイスラム教国である以前に、女性の権利が虐げられている国としても知られる。産油国で経済レベルは高い(1人当たりGNIは韓国と同じ水準)ので教育水準は高いものの、西アジアの伝統的な考え方に支配され女性の社会進出は進まない。男性だけのこうしたイベントがあるのも、サウジならではなのかもしれないね。

②と③はないので、④について。どうだろうか、ヨーロッパ系の白い肌をもつ少年少女たちに見えるのだが。服装もなるほど、牧歌的というか、いかにもヨーロッパの伝統的な雰囲気がある。これはAでしょう。

本問はCと特定する問題なので、答えは②か③になったわけですね。いずれかは、ポタラ宮でのラマ教の祭典、いずれかはフラダンスでしょうか。写真が手に入らないので、各自「ポタラ宮」や「ラマ教」で画像検索しておいてくださいね(便利な時代になったもんです・笑)。ポタラ宮が正解になります。

 

[今後の学習]地理Bではあまり宗教について深く問われることはないが、地理Aはそうはいかないんですよね。チベット仏教も当然出題範囲になるし、特徴はしっかり覚えておかないといけない。「解法」でも述べたように、ポタラ宮については画像でしっかり覚えておいて。チベット仏教の聖地です。

 

【10】[インプレッション]国章を用いた問題。日本にはこういうのないよね(あえていえば日章旗なのかな)。図そのものより、添えられた説明文に注目したらいいね。キーワードを拾っていきましょう。それにしてもラオスなんていうマイナーな国が登場している点にビックリ。もちろん、パキスタンがわかれば消去法でラオスは判定できるので問題ないのだが(パキスタンは人口世界6位の超メジャー国だから知らないといけなよ)、やっぱり東南アジアは10カ国全てが出題対象となるのですね。

 

[解法]国章を用いた問題だが、そこに添えられた解説からキーワードのみピックアップしていこう。なお、国はFがパキスタン、Gがラオス。流石にラオスはマイナーであり、これを知らない人は多いと思うが、パキスタンは世界人口6位の超メジャー国であり、こちらは必須。統計を中心とした適切な地理の勉強をしている受験生なら余裕で知っているね。地理を勉強している人とそうでない人の差が出るのが、このパキスタンという国の認識である。

アでは「ダム、宗教施設、森林、歯車、稲穂」とある。自然地理に関するキーワードこそ重要であるので、「森林」や「稲穂」がポイントかな。森林は降水量が多くないといけないし、稲はそれに加えて温暖なことが必要となる。温暖で降水量の多い地域だろうか。

イ は「綿花」、「茶」、「麦」、「ジュート」。綿花は降水量の少ない地域。乾燥気候において灌漑によって栽培されるもの。「麦」も小麦や大麦や稲(米)に比べれば乾燥気候に耐えうる作物。少雨地域のものと言っていい。なるほど、パキスタンは乾燥した国土を持つ国であり、綿花の世界的な栽培国である(生産は中国、インド、アメリカ合衆国に次ぐ世界4位)。小麦の生産も多く、主食は小麦を原料したナン。ただ、茶やジュートは多雨地域に適応する作物。同じ南アジアでも茶はスリランカやインド東部、ジュートはバングラデシュ。ちょっと自然環境が違うような。ただ、南アジアの農業文化全体を考えた場合、茶やジュートはメジャーな作物であり、パキスタンでも灌漑などによって豊富な水が得られる地域では茶やジュートの栽培も見られるのかもしれない。実際、パキスタンはインダス川の下流域では灌漑による稲の栽培が盛んであり、米は重要な輸出品目の一つともなっている。イをパキスタンすなわちFと判定しよう。

さらにXYの判定。こちらはより露骨というか、シンプルなキーワードがある。それはもちろんYの「乾燥」だね。パキスタンは乾燥気候に覆われた砂漠国。巨大な外来河川インダス川の流れによって灌漑農業が成り立ち、2億人に達する巨大な人口を支えている。YFに該当し、正解は④。GのラオスはアとXとなる。

せっかくなので、もうちょっと分析してみましょう。

まず国章のイについて。上の方に「月と星」の組み合わせが描かれているね。これ、イスラームの象徴なのです。南アジアは宗教の違いによって国境線が引かれ、パキスタンとバングラデシュはイスラーム。両国はイギリスの植民地支配から脱して独立した当初は連邦国家を形成していた(やがて東パキスタンがバングラデシュとして分離独立)。この国章の色はわからないけれど、パキスタンの国旗は全面が緑の中に白くこの月と星が描かれている。緑はイスラームの象徴色。ちなみに、バングラデシュの国旗は緑地に赤い太陽。緑はもちろんイスラーム、太陽は東を意味する(かつての東パキスタン)。さらにおまけに、インドの国旗はオレンジと白、緑の三色旗で、中心の白地には紋章が描かれる。オレンジはヒンドゥー教で、緑のイスラームとの融合が示されている。

さらにこの国章には下のリボン状の帯の中に文字が描かれていることにも注目。右から左に読む西アジアの伝統的な文字であり、パキスタンのウルドゥー語を表現する。アラブのアラビア語、イランのペルシャ語の文字と同じ系統。

アはラオスの国章だが、どうだろうか。なるほど、「ダム」は納得。内陸国ラオスであるが、国際河川のメコン川に面し、船舶交通は活発。メコン川の支流の一つに巨大なダムが作られ、そこで得られた電力はラオスの輸出品の一つとなっている。遠方まで輸送するとロスが大きい電力の輸出とは珍しいが、ラオスは人口や経済規模に比べ極端に発電量が大きいということ(南アメリカのパキスタンも同様。こちらはブラジルとの国境に巨大ダム)。「宗教施設」とあるが、国章の中央奥にそびえる建造物が該当。このように中央に尖塔を有する形は仏教のパゴタ。日本における五重の塔と同じものと考えていいんじゃないかな。いわゆる仏舎利塔で、仏様の骨を祀っている。ラオスを含むインドシナ半島は仏教地域。国章の下には独自の文字が描かれているが、これについてはとくに知らなくていいかな。

Xの文章についてはさほど気にする必要はない。「雨季と乾季」の差が明瞭であるのは、季節風の影響が強いインドシナ半島の気候の特徴。内陸国なので「山がち」も納得だろう。焼畑で陸稲を栽培しているが、これはノーチェックで」構いません。

 

[今後の学習]徹底的にパキスタンをマーク!パキスタンは非常に重要な国であるのは言うまでもない。人口世界6位ということは、世界で6番目に大事な国であり、そしてセンター試験において6番目に出題される率が高い国っていうことだぞ!

この問題がスムーズに解けた人は自身を持っていい。地理の勉強が適切に行えている。そうでなかった人は、統計を中心とした学習を徹底し、パキスタンのみでなく、統計上位国をチェックしていく。

僕が考えるに、おそらく地理素人と地理プロフェッショナルの差はパキスタンの認識に現れる。「パキスタンはインダス川が国土中央を流れる砂漠国である」とスムーズに思い浮かべることができる人は地理プロフェッショナルであり、何の心配も要らない。

 

【11】[インプレッション]なるほど、「淡水化水」については地理Bでサウジアラビアをテーマに出題されたことがあるが。さすが地理A、よりマイナーなアルジェリアを登場させている。この辺りが地理Aの方が地理Bより難しいっていう根拠なんだわね。

水資源の年間「使用」量なので、人口や経済規模に比例するんじゃないかな。そんなイメージが持てれば勝ちです。単なる「水量」ならば、国の面積とか関係しそうだけどね。

 

[解法]「水資源の年間使用量」に関する問題。あまり見慣れないパターンなのでちょっとやっかいかな。ゆっくり考えていこう。

アルジェリアって知ってるかな。同じアフリカではナイジェリアの方が有名だけれども、アルジェリアも重要なのでこの機会にしっかり覚えてしまおう。

北アフリカのアラブ国家で、地中海に面している。広大な国土は、北部の沿岸地域では地中海性気候がみられるものの、そのほとんどが乾燥気候で、サハラ砂漠に覆われている。OPEC(石油輸出国機構)に加盟する産油国であり、原油や天然ガスの産出が多く、それらは地中海を挟んだヨーロッパ地域へと輸出されている。

地中海を挟んでフランスと相対していることからも分かるように、かつてのフランス植民地。ただし、公用語としてはフランス語は用いられておらず、国内の多くの人々の母語であるアラビア語が公用語となっている。

人口規模についてはどうだろう?アフリカ最大の人口を有するのはナイジェリアであり、現在世界上位ベスト10に入っているのはこの国のみ。そもそも国土のほとんどが乾燥地域であるアルジェリアの人口がさほど多いとは思えない。もちろん日本やメキシコよりはるかに人口は小さく、水資源の年間使用量(「淡水化水」、「地下水」、「地表水」の合計)が最少であるカをアルジェリアとみていいだろう。「淡水火水」もポイントで、サウジアラビアのような乾燥した国土を有する産油国は、豊富なオイルマネーを生かして海水の淡水化を行い、生活用水などを確保している。もちろん、アルジェリアもそうした砂漠の産油国である。わずか「6」ではあるものの、3カ国中このような海水の淡水化事業が行われている可能性が最も高いのはアルジェリアだろう。

さて、ここからが重要。日本とメキシコはGNI(経済規模)には大きな違いがあるが(もちろん日本の方が大きい)、人口は近似している(メキシコ1.3億人、日本1.25億人)。なるほど、キとクの水資源の年間使用量を比較してみると、キが828億mでクが813億mと、数字は近い。では、どこが違う?「地下水」と「地表水」のバランスだ。キは地下水の割合が高く、クは低い。これってどういうことだろう?

ここでポイントになるのは、すでに判明しているアルジェリアなのだ。アルジェリアの値は地下水が「30」、地表水が「48」。地下水の割合がとても高くなっているね。アルジェリアの特徴は何だっただろう?そう。乾燥した国土を有しているということだ。乾燥とは「降水量<蒸発量」の状態。降った雨が全部蒸発してしまう。こういった地域を流れる河川は干上がり、水流はほとんどみられない(*)。砂漠地域で行われる伝統的な灌漑農業を「オアシス農業」といい、遠方から地下水を導く地下用水路(カナートなど)はよく知られているだろう。こうした乾燥国において地下水の有効利用が図られていると考えていいんじゃないか。

ここで日本とメキシコの気候環境を考える。日本はもちろん国土全体が湿潤である。十分に降水量はある。それに対しメキシコは南部は熱帯気候で降水量が多いが、中部から北部にかけては乾燥気候であり、一部に砂漠もみられる。「乾燥気候=地下水の利用」と考えるならば、国土に乾燥気候を含むメキシコこそ、「地下水」の割合が高くなるのではないか。キをメキシコとし、残ったクが日本である。

日本については地下水利用が少なくなっているが、意外だろうか。なるほど、沿岸の工業地帯では地下水の汲み上げ過ぎによって地盤沈下が生じているといった環境問題も生じている。しかし、日本における主な水の使用が水田耕作用の農業用水と考えると、地下水の利用は限定的ではないか。もちろん工業国である日本においては工業用水の需要は少なくない。しかし、それでもやはり河川や湖沼から水田へと水を流し込むのが普通のパターンなんじゃないかな。つまりほとんど地表水で賄っているということ。

(*)乾燥地域を流れる河川にはワジと外来河川がある。ワジは涸れ川であり、雨が降った時のみ一時的に水流がみられる。通常時は「溝」であり、通行路して使われることがある。外来河川は、湿潤地域から乾燥地域に流れ込む河川。上流部で十分に水を蓄えて、乾燥地域を貫くのだ。インダス川やナイル川、ニジェール川、コロラド川など。

 

[今後の学習]これ、難しかったと思う。水資源の問題ってあまり出題されないけれど、難問が多い。日本のような水田が多い国においてはとくに農業用水が重要であることをイメージし、水田に対し河川などから主に水を引いていることを考えれば何とか解答ができたんじゃないかな。

アルジェリアは速攻で決められると思うので、そのアルジェリアで「地下水」の割合が高いことを考え、それを「乾燥」と結びつけることが重要だった。テクニカルな問題でもあるよね。

 

【12】[インプレッション]おっ、ブームのキャッサバ登場ですね(笑)。正統派の統計問題。3点どめの問題だが、こういう形式は「2つは絶対、1つは消去法」で。本問ならキャッサバとジャガイモは絶対に生産上位国を知らないといけないけれど、もう一つの何とかイモはいらないっていうこと。

 

[解法]生産統計に関する問題。非常にオーソドックスといえるのだが、同じカテゴリーの生産物(今回はイモが3つ)っていうのは意外と珍しいような気もする。

形式は3つの組み合わせ。この形の問題は、「2つは絶対、1つは消去法」である。センターによく出題されるキャッサバとジャガイモについては正確に統計を読み取り、確実に正解を出す。逆にタロイモについては過去にほとんど出題例がないマイナー作物であり、こちらは消去法。3つを並行に扱うのではなく、1つは除外して残る2つで考える。こうした解法にも習熟しよう。

まずキャッサバ。焼畑農業で栽培される熱帯雨林地域の自給作物だったね。毒を含むので生食はされず、毒抜きをしてタピオカに加工してから食される。さて、生産世界Ⅰ位はどこだっただろう?そう、ナイジェリアだね。熱帯雨林地域に国土を有する国でアフリカ最大の人口2億人を誇る。場所は西アフリカのギニア湾奥。なるほど、ここに大きな円があるね。シがキャッサバ。ナイジェリア周辺の国(カメルーンやガーナだろうか)にも大きな円がある。西アジアの低地国での生産が圧倒的。ただし、中国の値も大きいのが興味深い。とはいえ、莫大な人口を持つ中国は多くの統計(農産物にとどまらず、工業製品や資源など)において上位の座にあるので、こうした生産統計の問題においてポイントになる国ではない。

さらにジャガイモ。実はこれこそ生産Ⅰ位が中国なんですが(笑)、ポイントにはならない、注目はヨーロッパ。ドイツやポーランドでは、ジャガイモとライ麦の輪作によって豚を飼育する混合農業が行われている。ジャガイモの栽培に特徴があるのは北部ヨーロッパである。細かすぎてよくわからないが、ドイツやポーランド付近に円が描かれているように思われるサがジャガイモである。インドやロシアも多いし、ウクライナもそうなのかな。でもそれらよりとにかくドイツおよびポーランドに注目しましょう。以上より正解は③。

タロイモについては考慮しない。

 

[今後の学習]生産統計は確実に。

キャッサバの主要生産国としてはナイジェリアが絶対的。アマゾン低地原産の高温多雨である生育環境を有する作物であり、全体として低緯度の低地(つまり熱帯雨林)での栽培が盛ん。ナイジェリアをはじめとする西アフリカのギニア湾岸地域に生産が集中している。この地域で人口最大であるナイジェリアが生産1位となる。

ジャガイモの生産上位国は中国やインド、ロシア、アメリカ合衆国など。でもこれらは重要ではない。いずれも人口が多い国であり、農産物の生産が多いのも当たり前。混合農業との結びつきにおいて、北部ヨーロッパ、国で言えば、ドイツとポーランドが重要。とくに(ドイツは他の統計でもよく登場するので)ポーランドを確実に押さえておくこと。大陸氷河によって地表面に形成されていた肥沃な土壌が削られ、やせた土地となってしまった北部ヨーロッパ。新大陸から伝えられたジャガイモは「貧者のパン」とも呼ばれ、冷涼な、そしてやせた土地であっても十分に栽培できる。ポーランドではジャガイモとライ麦(これまた冷涼な気候に適応する)を輪作し、豚を飼育して混合農業を行った。

タロイモについては逆に知らない方がいいんじゃないかな。本問も他の2つを特定すれば解答できる。一応参考までに。東南アジア原産のイモで、伝統的菜焼畑農業などによって栽培。東南アジアから太平洋地域へと広まった。タロイモと類するものにヤムイモがあり、こちらも東南アジア原産。他のイモ類(ジャガイモ、サツマイモ。キャッサバ)がいずれも新大陸原産であるのと対照的。別に覚えなくていいと思います(笑)

 

【13】[インプレッション]第6問の問題かと一瞬思ってしまいましたよ。地域調査の問題っぽいもんね。こうした問題って、グラフをみるだけで解けてしまう考察問題であるケースと、グラフとは全く関係ない知識が問われるケースとに分けられるんですけど、今回はどういったパターンなんでしょうか。

 

[解法]旅行に関する問題。地理Aで出題が多いが、だからといって地理Bでも軽視はできない。とくにこうしたグラフの読解は地理Bでこそ重要になる能力である。

グラフ参照。10年間という短いスパンにおいて、訪日外国人旅行者数は3倍ほどの急増している。これは驚くべきデータだね。

選択肢をチェック。まず①から。「移動時間も相対的に短い」東アジアとある。「相対的」ということは何かと比べて短いと言っているわけだ。グラフには「その他」を除けば5つの国と地域が示されているのだが、このうち東アジアに該当するのはホンコン、中国、台湾、韓国。比較する対象はアメリカ合衆国である。なるほど、アメリカ合衆国に比べて「相対的に」移動時間が短いことは正しいだろう。距離を考えればいい。

さらに②。「台湾」からの旅行者について、増加数が最多となっている。増加率ではなく、増加数であることにも注意しておこう、念のため。2007年の台湾からの旅行者数は150万人程度だろうか。2016年は400万人ほどになっている。増加数は250万人。かなり増加しているね。

でも、これが「最多」と言えるか。中国を見てみようか。2007年にはせいぜい100万人といったところ。これが2016年には600万人近くに達している。増加数は500万人! 中国こそが最多なんじゃないか。グラフをそのまま読み取ればいい。邪念(?)は全く不要。これが誤りで、正解は②となる。

この時点で③と④は検討の必要もないが、参考までに。

③では、英語のほか、「中国語やハングル」とある。ハングルとはもちろん朝鮮半島の言語であり、韓国人が使っているね。なるほど、国際的な観光地ならば多様な言語による案内が必要にはなるだろう。そして④では「イスラーム(イスラム教)」とある。イスラームの教えは、豚を嫌悪する。豚を食材(肉や油)とした料理は避けられなくてはいけない。その一方で、彼らは羊を中心とした肉をよく食べているのだが(インド人が肉を食さないとは対象的。西アジアの人々は肉をたくさん食べるぞ)、しかしそれは無造作に家畜を殺して得た肉ではいけない。イスラム教徒がコーランを唱えながら、メッカの方向を向いて家畜の首を切り、そして血抜きをする。正当な処理(これをハラールという)による肉のみが、彼らの属することのできるものである。外国人に多いイスラム教徒向けに、ハラールフードを扱う店舗も必要になってくる。

 

[解法]グラフの読解問題だが、グラフをそのまま読み取れば回答が得られるケース、グラフと無関係の知識が問われるケースの両方があるので注意する。いずれのパターンにも対応できる柔軟な取り組みが必要。

本問は②が正解だったわけだが、これは前者のケースに当てはまる。簡単な問題であるが、だからこそ絶対に落としてはいけない。

他の選択肢についてはとくに問題ないだろう。よかったら知識として、以下のことは知っておいてもいい。

(1)近年、日本を訪れる外国人旅行者の数は急増している。

(2)増加数、増加率ともに最も大きいのは中国である。

(3)東アジア地域からの旅行者が圧倒的に割合が高い。

 

【14】[インプレッション]文章も短いし、シンプルな文章正誤問題のような気がするんだが、どんなもんなんでしょう。

 

[解法]正文判定問題。誤文を3つ指摘しないといけないので大変なんですが、一つ一つ選択肢をチェックしていこう。

まず①から。なるほど、これはEUには見られるものだね。パスポートを見せる必要もなく、素通りできる。国境が、日本でいえば県境であるかのごとく。これが正解。

いきなり正解がわかってしまったが、念の為、他の選択肢についてもそれが誤文であるか検討していこう。

③を参照してほしい。例えばアフリカでは民族(部族)分布を無視して国境線が策定された例があるね。欧米の植民地化の過程で、宗主国の支配地域を定める際に直線状に境界線が設定され、それが現在の国境線となっている。ナイジェリア北部のハウサ族は、その北に隣接するニジェールの主要部族でもある。つまり、ハウサ族の分布地域の中央に植民地の境界線がつくられ。北側がフランス領、南側がイギリス領。北側がニジェール、南側がナイジェリア。このような例がいくらでもある以上。国境線の確定が民族(部族)分布を決定するわけではないことがわかる。誤文である。

そして②。そのナイジェリアこそ多民族(多部族)国家であるのだ。上記のように、北部にハウサ族、南西部にヨルバ族、南東部にイボ族。国境線が確定されて、同じ「ナイジェリア人」になったからといって、彼らの生活様式が統一されることがあるだろうか。彼らにはそれぞれに伝統的な生活文化があり、独自のアイデンティティを有しているはず。この選択肢は誤りであると思う。

最後に④。宗主国の都合によって引かれた直線状の国境線(これを人為的国境という)が民族や部族を分断し、民族問題が生じる温床となることはすでに理解した。しかし、だからといって自然的国境ならそういった問題は起きないのだろうか。

河川や山脈など自然の地形による国境が「自然的国境」。スペインとフランスの間のピレネー山脈、ルーマニアとブルガリアの間のドナウ川など。

世界には多くの民族問題や領土問題が生じ、自然的国境を挟んだ複数の国の間にもその例は多い。南アジアのカシミール地方は山岳がインドとパキスタンの国境となっているはずなのだが、両国の主張する国境線が食い違い、帰属が争われている。アメリカ合衆国とメキシコの間の国境線はリオグランデ川の流れを利用しているのだが、肝心の河川の流れが豪雨などの影響によって変化してしまうこともあり、その都度、国境を廻る問題が生じて来た。フランス東部のアルザス地方は、ドイツ系住民が居住し、かつてドイツに含まれていた地域。アルザス地方とドイツとの間にはライン川が流れており、これが現在の国境線となっているのだが、かつてはライン川を越えてドイツとフランスが対立した歴史もある。山脈や河川など明確な国境線となりえる地形があったとしても、領土問題や民族問題は生じるのだ。

 

[今後の学習]EUNAFTAの対比がよく出題される。いずれも複数の国にまたがる自由貿易圏であるが、EUが将来的な政治的統一をも視野に入れたより密接な国家間連携であるのに対し、NAFTAはあくまで貿易だけが目的であり、人的交流などについてはむしり厳格な制限を設けている。

EUはヨーロッパ連合。28カ国から構成され、人口は5億人を上回る。域内総生産(全ての国のGDPを合計したもの。GNIと同じ意味)は、NAFTAより小さい。「モノ」、「ヒト」、「カネ」の移動が自由であり、国境を越える人の移動についても検問は廃止されている(シェンゲン協定)。

NAFTAは北アメリカ自由貿易協定。アメリカ合衆国を中心にカナダとメキシコの間に調印され、モノの移動が自由となっている(自由貿易)。人口は5億人弱でEUより小さいが、域内総生産はEUをしのぐ世界最大の自由貿易圏であり、いわゆる「1人当たりGNI」はEUより高い。ただし、人の移動には制限があり、パスポート提示を含め検問でのチェックがある。とくに近年はメキシコ人のアメリカ合衆国への入国については厳密な審査が課されるようになり、容易ではない(しかし、入国する人の数については増加している。国家間の取り決めという「政治」的状況を、仕事を求め移動するという「経済」的事情が超越している)。

 

【15】[インプレッション]フェイントだよなぁ、これ、一瞬わからんかったもん。えっ、どこ間違ってるの!?みたいに。

いやいや。それは僕の軽率さゆえの誤判断でした。選択肢①〜③で言及されている、都市や民族、言語などの人文地理的な内容と思って、そこばかりに注目してしまったんだわね。いや、これは引っ掛けだわ。実はポイントはそこじゃなくむしろ自然地理的な内容に基づく部分にカギがあったのですね。嫌らしい問題だね。

 

[解法]誤文判定問題。曖昧な選択肢はスルーして、明らかに間違っている選択肢のみ指摘する。もちろん「対立する概念を持つ言葉」に注目。

まず①から。「植民地時代に定められた英語」とあるが、インド(を含む南アジア全域)がイギリスの植民地であったことは間違いない。他の部分は曖昧なので放置しましょう。

さらに②。このようなことは世界中のどこでもみられるんじゃないか。日本でも京都は典型的だし、ヨーロッパでもパリは有名。アメリカ合衆国みたいにそもそも歴史が浅い都市ならともかくとして、韓国は古い伝統文化を持つ国であるしね。間違いないんじゃないか。ただ、曖昧ではあるので、こちらもスルー。

③は重要。ニュージーランドでは、かつて差別の対象であったマオリの文化が、現在は高く尊重されるようになり、英語のほかにマオリ語も公用語とされた。オーストラリアやカナダでは、多文化主義を標榜しながらも先住民の言語が公用語とされていないことと対照的。

そして④。いきなり農業に関する内容で戸惑うのだが、ひとまず「緑の革命」が実施されたことは間違いないだろう。東南アジアや南アジア、ラテンアメリカにおける農業改革が緑の革命。フィリピンも該当するはず。

ただ、問題はその内容。緑の革命は農業の近代化である。品種改良、灌漑の普及、農薬や肥料の大量使用によって、自給作物の増産に成功した。とくにインドでは、米についてはそれまでの輸入国から輸出国に転化し、小麦についてはアメリカ合衆国を抜き去り世界2位の生産国へと成長した(ただし、その利益は富裕農にのみ偏り、貧富の差が拡大したことは大きな問題点となった)。どうだろうか。本選択肢では「伝統的な栽培方法を守ろう」と述べられている。あくまで緑の革命は高い技術や巨大な資本を投入した農業改革である。それは「伝統的」なものではない。これが誤り。

 

[今後の学習]選択肢②についてはノーチェックでいい。こうした動きは特定の国に限定されず、世界の至る国でみられる。選択肢①についてもとくに知る必要はない。たしかに、現在ムンバイという名称で知られるインドの都市は、植民地時代にはボンベイと呼ばれていた。しかし、だからといってどうということはない。

選択肢③の内容は確実に知っておく。先住民の言語が公用語とされる例は少なくない。ニュージーランドでは英語の他にマオリ語も公用語とされる。マオリはポリネシア系(ハワイと同じ)の民族で独自の文化を有する。ニュージーランドでは彼らの文化は否定され、迫害によって多くの命も奪われたが、現在は多文化主義へと方向転換がなされ、マオリの文化は尊重されるようになった。激減した人口も回復傾向にある。

なお、同じ多文化であってもオーストラリアやカナダでは先住民の言語は公用語となっていないので注意。オーストラリアの公用語は英語のみ、カナダの公用語は英語とフランス語(ただし、ヌナプト準州ではイヌイットの言語が用いられている)。

本問で正解(つまり誤文)であった選択肢④については「緑の革命=近代的な農業改革」という定義を確実に。発展途上地域を中心に展開したため、ついつい「伝統的」と思ってしまうのだが、品種改良や肥料、農薬の多消費など近代的な技術を十分に用いたものである。それだけに、その導入には大資本が必要となり、富裕層のみが恩恵を享受できるという状況も生じたわけである。貧富の差が開いた。

 

【16】[インプレッション]極めてオードソックス。南米大陸をテーマとした気候グラフ判定問題は頻出。それぞれのグラフの数値を覚えてしまってもいい。

 

[解法]雨温図を用いた気候判定問題。このタイプの気候グラフは分かりやすくていいですね。

気温のポイントは2つ。一つは気温年較差。赤道が通過する南米大陸だが、赤道付近では年間を通じて太陽からの受熱量が変化しないので、気温年較差も極小。たまに「沿岸部は気温年較差が小さく、内陸部は大きい」と機械的に覚えている人がいるが、それではいけない。例えばその緯度における平均的な気温年較差がα℃とすれば、沿岸部においてはそれは縮小し、(1/2)α℃が目安。内陸部ではそれは倍加され、2α℃が目安。緯度40℃の気温年較差の平均が20℃とすれば、東京でまさにその値となるが、典型的な海洋性気候となる西ヨーロッパやアメリカ合衆国太平洋岸で気温年較差は10℃、中央アジアや西アジアの内陸部で40℃となる。

このように、海洋と大陸の作用は、あくまで気温年較差の値を高低する「比例係数」のようなものであると解釈しておくといい。

 

これに従って考える。赤道直下の気温年較差は0℃である。前述のように

年間を通じて太陽からの受熱量が変化しない。日の出から日の入りまでの、いわゆる「昼」の時間の長さは12時間で年間変化しない。

沿岸部の気温年較差は、これを(1/2)倍する。内陸部の気温年較差は同じく2倍する。しかし、もとの値が0であるので、半分にしようが倍にしようが、0には変わらない。赤道周辺の低緯度地域の気温年較差についえは。沿岸部と内陸部の違いを無視して考えていいということ。

最大の注目はイ。赤道直下の地点である(南アメリカ大陸のどこを赤道が通るかっていうのは大丈夫だよね。わかってるよね)。赤道直下ならば、沿岸部だろうが、内陸部だろうが、山の上だろうが、年間を通じて気温は変わらない。選択肢①と④がそれっぽく見えるんだが、どうかな、④はちょっとだけど7月の気温が高くないかな。同じく低緯度ではあるけれど、明らかにこれは北半球のモデルだよね。④をア、①をイと判定するのが自然だろう。正解は④。降水量が少ないのが意外なのだが、とくに考慮しなくてもいいかな。年間を通じてみれば500ミリぐらい降っていそうだし、乾燥気候ということはないだろう。また、1月を中心とした時期に乾季があるようで、これは亜熱帯高圧帯がこの時期に南下してくる影響だろう。北半球の低緯度の典型的なモデル図。

②と③の比較。これがウとエのいずれかとなる。シンプルにみて、高緯度のエでとくに低温となるとみていいんじゃないかな。ウがもし高原上の都市ならば、エよりも寒冷となる可能性もあるが、図を見る限り、沿岸部の都市であり、高原上とは思えないね。

よって、②をエ 、③をウとする。いずれも、7月を中心とした時期の気温が低く、南半球であることが明確。②の降水量が少ないのは、低温なので上昇気流が生じにくく、また大気中の水蒸気量も少ないといった理由だろう。③の降水パターンはおもしろいので注目しておこうか。夏に乾季となる地中海性気候。地中海性気候は、緯度35度付近の大陸西岸に現れる。なるほど、ウの場所はそれよりちょっと高緯度っぽいけれど(南緯37〜8度ぐらいかな)、一応地中海性気候のみられる典型的な地域と考えていいんじゃないかな。

 

[今後の学習]アが問われている問題だが、他の3地点の方がおもしろい。一つ一つ見ていこう。

まずイ。ここはほぼ赤道直下であることに加え、アマゾンの低地に位置していることが非常に重要。南アメリカの分水嶺(流域を分ける山脈の意味。南米の場合は、太平洋側に流出する河川と大西洋側の流出する河川の境界と考えて欲しい)であるアンデス山脈は、大陸のほぼ西岸に沿っており(このため、流域の面積で考えた場合、「太平洋側」の面積は極めて狭く、「大西洋側」の面積は大変大きい)、イの地点も「大西洋側」に含まれる。アマゾン川はペルー西部に水源を発し、ブラジル北部を貫いて大西洋に注ぐ。勾配は非常に緩やかで、盆地や台地がみられるものの、全体としては低平な地形と考えていい。アマゾン川の上流域に位置するイも標高は低く、周囲は高温であると考えていいだろう。

そんなイの雨温図が①である。月平均気温は1年中変化がなく、28℃。日本の最暖月の平均気温もこのぐらいであるし、日本に例えていえば7月から8月の盛夏の気温が通年続く感じ。なお、熱帯地域だからと行って月平均気温が30℃に達するわけではないことにも注意。月平均気温が30℃に達するのは、昼間の気温が極端に上昇(40〜50℃!)するような内陸部の砂漠地域ぐらいである。サハラ砂漠やアラビア半島など。

降水量については、熱帯収束帯の影響によって年間を通じ多雨となる。積乱雲が発達し、毎日午後になると一時的な集中豪雨すなわちおスコールが生じる。アマゾン川流域は実は雨季と乾季の明瞭な地域もあり、河川流量も季節的な変化があったりするのだが、イの地点に関しては常に降水量が多くなっているようだ。

さらにウ。チリの中部には地中海性気候が広がる。地中海性気候の現れるエリアは「大陸西岸・緯度35度付近」だったね。緯度35度は夏になると亜熱帯高圧帯に覆われる。北緯35度の地中海沿岸(南ヨーロッパ、北アフリカ、西アジア)やアメリカ合衆国カリフォルニア州は7月に北上してくる(北半球の)亜熱帯高圧帯の影響で少雨となり、南緯35度の南アフリカ・ケープタウン、南米・チリ中央部は一月に南下してくる(南半球の)亜熱帯高圧帯の影響で少雨となる。同じ緯度35度でも、日本のような大陸東岸はモンスーンの影響や熱帯低気圧(台風)の発生などにより、むしろ夏に雨が多くなるので、区別しておこう。

ウの地点は南緯35度よりやや南にあるようだ。南緯35度のラインはラプラタ川河のエスチュアリー(「アルゼンチン」という文字の右にある入江になっている部分)を通過する。それでも「緯度35度付近」と捉えることはできるだろう。地中海性気候が現れ、ブドウの栽培がさかんな地域となっている。

最後にエ。南極に近く、極めて寒冷。最暖月の平均気温も10度程度であり、農業には適さない。ただし、最寒月の平均気温も氷点下というわけではなく、一応気候区分的には温帯気候に分類されるだろう。

なお、参考までに。ケッペンの気候区分にあてはめると②は温帯の西岸海洋性気候となる。でも、みんなわかるよね。夏の気温が低いのだから農業は不可能であるし、極めて厳しい生活環境。人だって住んでいるんだろうか?このような状況であっても「温帯」に区分されてしまうのだから、そもそもケッペンの気候区分は無理があるっていうこと。必ずしもその地域の自然環境を反映したものではない。

 

【17】[インプレッション]写真が一部しか公開されていないが、いずれも特徴的な地域。画像検索などして補っておいて欲しいな。

 

[解法]Aはガラパゴス諸島、Bはアンデス高原、Cはイに近いことからわかるようにアマゾン低地(アマゾン低地については問2の解説を参照のこと)。

写真はキのみ公開になっている。一面に樹木が広がり、これは熱帯雨林なんじゃないかな。よく目をこらして見ると、写真の上方に蛇行する河川がみられる。低平かつ降水量が多い熱帯雨林においては、こうした蛇行する巨大河川がしばしばみられる。アマゾン川など。これはCでしょう。

他は判定できないが、ガラパゴス諸島ならばゾウガメやウミイグアナなど固有種である生物が、アンデス高原ならば高峻な山岳と特徴的な服装をしたインディオの人々(ツバの広い帽子やポンチョ)が、それぞれ現されていたのではないか。

 

[今後の学習]こうした写真問題は今後も出題の可能性が高い。ガラパゴス諸島、アンデス高原、アマゾン低地などで画像検索をしておくといいんじゃないかな。

 

【18】[インプレッション]オーソドックスな問題。アンデス高原における高度別の(つまり気温別の)作物の栽培の様子に関する問題。アンデス地域は低緯度であり年間を通じてほとんど気温が変わらない。季節ではなく、高度によって作物の分布が異なっている点が特徴。「暑い」か、「寒い」かにターゲットを絞って考えればいい。

 

[解法]アンデス高原では高度によって多様な作物が栽培されたり、放牧地となったりしている。低緯度のアンデス高原では年間を通じて気温に大きな変化はない。季節ではなく、高度差によって作物が栽培し分けられている。

選択肢は4つ。「放牧地」、「キャッサバ」、「ジャガイモ」、「トウモロコシ」。カギとなるのは放牧地。いわゆる草地、草原のことだが、これについて正しいイメージが持てるだろうか。

通常の温暖多雨の自然環境化では樹木が生育し、森林となる。低温あるいは少雨などの条件によって樹木が生育できない状態となった時のみ、草原となる。

アンデス高原については標高が極めて高く、高温となる低地に対し、高地においては寒冷な気候がみられるはず。低温のため、樹木が生育できない状況を考えてみよう。いわゆる「森林限界」である。山岳地域においては一定の高度までは樹木が繁茂するが、森林限界を超えた高度帯では草原となる。ヨーロッパのアルプス山脈では、高原にアルプという牧草地が開かれ、移牧が行われているが、これもまさに森林限界より高い高度帯にみられるものである。さらに標高の高い山頂付近は山岳氷河に覆われる。

なお、日本の場合はこれとはちょっと異なっているので参考までに。直近では2018年地理B本試験第6問問6に、高度帯と植生帯との関係が問われている。低地は森林だが、森林限界を超えた高山帯は高山植物の世界となっている。山岳氷河が見られない日本においては、氷河による水分の供給がないため、森林限界を超えた高所は荒地(裸地)となり、草原とはなりにくい。低温少雨に耐える高山植物がところどころみられる程度。

話をアンデス高原に戻そう。アンデス高原は極めて標高が高く。低緯度でありながら、山頂付近は山岳氷河や万年雪に覆われる。そうした雪氷と、森林限界の間の範囲は草原となり、すなわち牧草地である。リャマやアルパカが使役用の家畜として飼育されている。これが④だろう。そもそも標高4000mを超える高所だって!?富士山より高いんだぜ!?いくら低緯度とは言え、こんな高度で農産物の栽培できないだろう。せいぜい草が生えるぐらいだと思うよ。

さらにキャッサバ。「キャッサバ=焼畑農業」だね。ホイットルセー農牧業区分はマストアイテムであり、その農牧業形態がどのような自然環境(主に気候)で行われているかは知らないといけないし、さらにどんな農畜産物が生産されているのかも知らないといけない。焼畑農業とは、草木を焼き払った灰を肥料とし、熱帯雨林地域の痩せた土壌(ラトソル)が分布する地域で行われる。「焼畑農業=熱帯低地」なのだから、「キャッサバ=熱帯低地」である。①がキャッサバに該当。

そして、ジャガイモとトウモロコシ。日本だといずれも北海道で生産が多いから迷ってしまうのだが、世界基準ならば違いは明確。ジャガイモが主に冷帯地域で栽培されるものであるのに対し、トウモロコシは温帯気候に対応。アメリカ合衆国の五大湖南側のコーンベルトの位置を考えればわかると思う。五大湖までは冷帯気候なのだが(五大湖は冬は凍結する)、その南側のコーンベルトは温帯地域であり、この気候に適応したトウモロコシと大豆が輪作され、豚などの飼育が行われている。ヨーロッパにおいてもジャガイモやポーランドやドイツなど北部の冷涼な地域の作物。トウモロコシの栽培北限はヨーロッパのほぼ中央であり、フランス南部やハンガリー、ルーマニアが主な栽培地域。どうだろうか、「大豆が冷涼、トウモロコシが温暖」というのは確実なんじゃないか。②がトウモロコシ、③がジャガイモとなる。正解は③。

ジャガイモもトウモロコシも両方とも北海道の産物なので、ともに寒い地域に適応する作物だと勘違いしてしまうけれど、あくまでトウモロコシは温暖な栽培環境を求めるので、そこは誤解しないように。

 

(冷涼・少雨)大麦←→ライ麦・ジャガイモ←→小麦←→トウモロコシ・大豆←→米(温暖・多雨)

 

[今後の学習]ジャガイモを当てるのがちょっと難しかったかも。熱帯低地のキャッサバと、森林限界を越えた放牧地の2つをまず決めてから消去法という考え方でいいと思う。

ちなみに、キャッサバ、トウモロコシ、ジャガイモはいずれも南米原産のものであり、とくにトウモロコシとジャガイモはアンデス地域で伝統的に栽培されていた二大作物である。本問からわかるように、高度差による棲み分けがなされており、比較的標高の低い温暖な高度帯でトウモロコシ、より高い冷涼な高度帯でジャガイモが、それぞれ植えられていた。さらにその境界となる高度には両方の作物を取引する交易集落がつくられた。

 

【19】[インプレッション]ずいぶんオードソックスな統計問題。肉類の生産や漁獲量に特徴がある国が多いので難しくはないでしょう。

 

[解法]南米諸国の漁業生産量と肉類生産量の問題。ペルーが重要。巨大な寒流であるペルー海流に面し、アンチョビを中心とした漁獲が多い。アンチョビは食用ではなく、アメリカ合衆国などに送られて主に飼料用となる。寒流は、海中に湧昇流が生じ、栄養分豊かな海域を形成する。魚群を組むイワシ類はこうした海域にこそ生息し、カタクチイワシの仲間であるアンチョビはその代表的な魚種。④をペルーと判定していいだろう。肉類の判定は要らなかったね。

一応他の国についても。4カ国中、肉類の生産に特徴がある国はブラジルとアルゼンチン。いずれも企業的牧畜(粗放的牧畜)によって大規模な肉牛飼育が行われている。この2カ国が①と②のいずれかに該当するとみていいだろう。

国の規模としてブラジルが大きいのだから(ブラジルの人口は2億人。アルゼンチンは5千万人)、数値が多い方がブラジルとみていいだろう。①がブラジル、②がアルゼンチン。

残った③がボリビアだが、アンデス山脈に位置する内陸国。人口も少ない。肉類も漁獲に少ないことは納得だろう。

チリも比較的漁獲量が多いので、必ずチェックしておこう。ペルー海流に面する国の一つである。なお、この統計では養殖業が含まれていないようだが。チリはサーモンの養殖が盛んな国なので。ぜひ知っておこう。南部のフィヨルドの波の静かな入江でサーモンの養殖が行われる。日本への輸出も多い(チリと日本の間には自由貿易協定が結ばれているのだ)。

 

[今後の学習]ペルーを特定する問題だったので簡単だったと思う。漁獲量の順位は変動が激しいので完璧に覚える必要はないが、上位国はほとんど決まっているので、統計を確認しておくといい。中国、インド。アメリカ合衆国、インドネシアのような人口大国に加え、北洋漁業を押さえるロシア、主な動物性タンパク源を魚介類に依存する日本、寒流に面するペルーとチリ。どうだろうか、決してイメージしにくい統計ではないと思う。

さらに肉類についてもしっかり整理しておくこと。肉が得られる主な家畜として牛と羊と豚があるが、とくに牛について特徴的な国を知っていく。牛の飼育頭数の上位国はブラジル、インド、アメリカ合衆国など。一方で牛肉はアメリカ合衆国が首位で、それに次いでブラジル。インドは肉類の生産が多い国ではない。アメリカ合衆国はフィードロットで十分に牛を肥育してから食肉に加工する。飼育頭数に対し、肉類の生産量が多くなっている。インドは牛を神聖視するヒンドゥー教の教えというか、そもそもが殺生を嫌う菜食主義の地域であるため、肉類の生産は少ない。牛の多くは搾乳用の乳牛。インドの人々の主な動物性タンパク源は乳製品である。

 

【20】[インプレッション]鉱産資源の分布を問う問題は珍しい。ただ、本問については細かい「分布」が問われているわけではなく、国の位置と名称、各資源の産出統計を結びつければ簡単に解答できる。

 

[解法]鉱産資源の分布。南米は鉱産資源が豊富な地域であるため、非常に重要な問題。

それぞれの資源の産出統計を考えてみよう。もっともわかりやすいのは銅鉱かな。世界最大の産出量を誇っているのはチリ。日本も銅鉱や精錬された銅について多くをチリからの輸入に頼っている。太平洋岸に沿うのがチリである。ここに多く分布するシが「銅鉱」。とくにチリ北部に多くの銅山がみられる。この地域は砂漠が広がり(世界でもっとも雨が降らない土地なのだ)、露天掘りで銅鉱が採掘されている。

さらに鉄鉱石の産出上位国は、中国、オーストラリア、ブラジル。鉄鋼業がとくに発達し、鉄鉱石の最大の輸入国である中国、鉄鋼業が発達せず採掘された鉄鉱石が輸出へと回されるオーストラリア、国内に多くの製鉄所はあるが、それでも鉄鉱石を輸出する余裕があるブラジルという違いがある。ブラジルに主に分布するスが「鉄鉱石」「。赤道に近いアマゾン低地、沿岸に近い南西部にみられるのが特徴的。

以上より、正解は②。

「石油」はサとなるのだが、北部にとくに多くの産地(油田)が集中していることが特徴的。南米最大の原油産出量を誇るのはOPEC(石油輸出国機構)に加盟するベネズエラ。マラカイボ湖周辺に多くの油田が開発されている。なお、南米では他にエクアドルもOPECに加盟。

 

[今後の学習]資源分布だが、細かい鉱山にはこだわる必要がなく、単に国だけチェックしておけば十分だったね。

以下は発展編。読まなくていいですが、余裕ある人は参考にしてください。

ブラジルの重要な鉄山は二つ。一つはアマゾン低地のカラジャス。世界最大の埋蔵量を有するといわれる巨大鉄山だが、こちらの開発のために熱帯林が失われるという環境問題も生じている。図5で赤道に近いアマゾン内陸部にある▽がこれ。

さらに南東部に3つほど▽が重なっているが、このうちの一つがイタビラ。ブラジル最大の工業州ミナスジェライスに位置し、付近では鉄鋼業も発達。日本資本による製鉄所も(ちなみに、サッカーのブラジルW杯で日本代表がキャンプを張ったのはこの近く)。

ベネズエラはOPECの原加盟国でもある南米最大の産油国。主な油田は国土西部のマラカイボ湖周辺、この図でいえば、南米大陸最北端の○が10個ほど固まっている地域が相当。採掘された原油の多くはアメリカ合衆国へと輸出される。

余談。原油供給という切り札を持っているのでアメリカ合衆国に対し強硬に発言できる世界唯一の国でもある。長く独裁政権によって世界最大の「反米」を志向していたが、政治的には不安定な国であり、経済も極端なインフレが生じるなど、多くの問題を抱えている。もちろんこういった事象がテストで問われることはないので、君たちは「ベネズエラ=原油」だけ覚えておけば十分ですよ。

チリの北部の銅山に注目。▲が多く並んでいる。チリ北部は、亜熱帯高圧帯が年間を通じ影響を及ぼすことと、寒流により大気が安定することの二重の効果によって、世界で最も降水量の少ない地域となっている。年降水量はごくわずかだが、それも雲ではなく、霧によってもたらされるものであるそうだ。本来このような乾燥地域には居住できないのだが、この地域は鉱産資源が豊富であり、多くの鉱業都市が生まれている。とくに少雨であることは露天掘りができるという点において鉱業に有利であり、日本のような多雨気候の国とは条件が異なっている。

チリ北部の乾燥地域には世界中の多くの国が天体観測所を置いている。雲が生じず、天体観測には有利。将来、天文学を目指すキミは、チリという国に注目してみよう。

他の国についてはノーチェックでいいと思います。とりあえず覚え書き程度に。

北西端のコロンビアはアンデス高原の国であるが、図からわかるように多くの油田がみられる。また、南米大陸では珍しく石炭の産出が多い国であり、原油と石炭がコーヒーと並んでこの国の主要輸出品目となっている。

ベネズエラ東部にも○が多く集まっている地域が。カリブ海の島国であるトリニダードトバゴも産油国。

アルゼンチン南部に油田が多くみられることにも注目しておこう。パタゴニア地方のアルゼンチン側は、偏西風の山陰(やまかげ)となることから、太平洋から湿った風が届かず少雨地域となっている。荒涼とした台地が広がり、ほとんど植生はみられない(砂漠ということ)。ただし、資源の埋蔵が豊富な地域であり、多くの油田がみられる。

さらに興味深いものとしてブラジルの沿岸部に多くの○が並んでいることにも注目しよう。ブラジルはかつてより化石燃料資源の乏しい国だったが、近年になり沿岸部で油田開発が進み、産油量を急激に伸ばしている。原油輸出国に転化した。

 

【21】[インプレッション]ずいぶんベタな(笑)。単に知識を問う問題であり、こうした問題を苦手にしている人もかなり多いとは思うが、決して複雑ではないので、最低限の知識は蓄えておこう。

 

[解法]ラテンアメリカの国はほとんどがスペイン語を公用語とする。例外を以下に挙げておく。

・ブラジル・・・旧ポルトガル領であり、公用語もポルトガル語。かつて南米大陸の西側半分をスペイン、東側半分をポルトガルが植民地としていた。独立の際に、スペイン領だった部分な多くの国に分かれたが(ペルーやアルゼンチンなど)、ポルトガル領だった部分は一つのまとまりとして独立しブラジルとなった。南米大陸の面積と人口の半分を占める国。

・ジャマイカ・・・旧イギリス領であり、公用語も英語。先住民インディオが滅亡したため、奴隷海岸より多くのアフリカ人が連れてこられた。国民の大多数はその子孫であるアフリカ系。

・ハイチ・・・旧フランス領であり、公用語もフランス語。ジャマイカ同様、先住民の滅亡によって奴隷が流入し、アフリカ系が多数を占める。奴隷海岸を当時支配していたのはイギリスやフランスで(スペインやポルトガルではなく)、旧イギリス領や旧フランス領にアフリカ系が多い。

・ガイアナ・・・旧イギリス領であり、英語を公用語とするが、植民地時代に流入したインド人も多く、ヒンディー語も使われる。

・スリナム・・・旧オランダ領であり、オランダ語を公用語とする。植民地時代にインドネシア人が多く流入し(インドネシアも旧オランダ領)、インドネシア系の人々も多い(つまりイスラム教徒が多いということ)。

さて、どうかな。さすがにガイアナやスリナムを知っている人は少ないと思うけれど、南米の主な国であるチリやブラジルについては十分な知識はあると思うし、「ブラジル=ポルトガル語」さえわかれば容易に解答に達することはできたはず。正解は③。

 

[今後の学習]ガイアナやスリナムといった特殊な国が出てきてビックリしたんじゃないかな。とくにチェックするべき国とも思わないけれど、それぞれ「英語」、「オランダ語」ぐらいは覚えて置いてもいいかもしれないね。

いずれも赤道に近いことから熱帯雨林に覆われ、ボーキサイトの産出が多い。これら二つの国を含む地域を「ギアナ」といい、安定陸塊の大地が激しい降水や急流である河川によって削られた「テーブルマウンテン」という地形がみられる。世界で最も高度差のある滝(アンヘルの滝)があるので、これらを画像検索しておいてもいいかもね。

 

【22】[インプレッション]よくあるパターンの問題ですね。ブラジルの問題っていうより日本に関する問題かな。

 

[解法]誤文(文というか、下線部だけど)判定問題。あいまいな選択肢は無視して、確実に誤っているものをピックアップしてみよう。

もちろん答えは④ですね。ブラジル人は高賃金と豊かな雇用を求めて日本にやってくる。特殊な技術をもっているわけではない。彼らは単純労働力であり、主に従事するのは自動車工業。群馬県や愛知県などの自動車工業都市でブラジル人が多い。

他の選択肢は検討の必要もないだろう。①や②はちょっとあいまいで判定に悩む。ただ、間違っているわけではないだろう。

④についてはぜひ知っておいてほしい。1990年に出入国管理法(移民法)が改正され、それまでは制限されていた外国人の単純労働への就業が、日系人に限り容認された。そもそもの日系人人口の多いブラジルからの人口流入が顕著になったのがこの時期である。

 

[今後の学習]これはセンターでよく問われるネタの一つであり、解答は難しくなかっただろう。近年はインド人のIT技術者が世界中で活躍する例がみられるが、これは例外的なこと。発展途上国の労働者が先進国に働きの場を求める場合、単純労働に従事するのが一般的であり、とくに日本の場合は自動車工業がそれに当てはまる。

 

【23】[インプレッショイン]シンプルな問題形式であり、センターっぽくないよね。内容的にも国際機構は地理Aでの出題はしばしばみられるものの、地理Bでは極めてレアケース。チェックする必要もないんじゃないかな。

 

[解法]国際機構が問われた例は少ないし、とくにOECDが取り上げられた例はちょっと記憶にない(1996年以前の旧課程に登場したことがあったような。。。)。

OECDは、「先進国クラブ」という俗称にあるように、主に先進国から構成される国際組織で、発展途上国への経済協力が目的とされている。ただ、先進国とはいえ、トルコや韓国、東ヨーロッパの国も含まれており、先進国とその周辺諸国といった感じかな。

①のAPECには、日本やアメリカ合衆国が含まれ、先進国の加盟国も多い。②のEUは言わずもがな。③のNATOは軍事同盟で、ヨーロッパや北アメリカの多くの国によって構成されている。

正解は④。OPECは石油輸出国機構。発展途上国の産油国が、資源ナショナリズム(資源を自国の発展のために使用する)の考えに基づいて結成した国際機構。産油量の調整により原油価格をコントロールし、世界経済への影響力を高めている。主な加盟国としてサウジアラビアやナイジェリアを知っておくといい。

 

[今後の学習]どうなんだろうね。とくにノーチェックでいいと思います。APECは地理Bでの出題例はないし、NATOのような軍事同盟も地理Bの出題対象とはならない。OECDも全く重要ではない。

 

【24】[インプレッション]交通ネタは地理A頻出。ただし、地理Bでも時々出題されるので無視するわけにはいかない。とくに本問の場合は、交通に関する知識が問われているわけではなく、むしろ国ごとの経済レベル(1人当たりGNI)の高低や人口規模の大小が問題を解くポイントとなっており、実は交通そのものが話題とされているのではない。思考力を伴う良問です。

 

[解法]「人口1000人当たりの自動車保有台数」についてはシンプルに1人当たりGNIに比例すると考えていいんじゃないかな。1人当たりGNIの高い国すなわち先進国ではモータリゼーション(自動車化)が進み、人口当たりの自動車の数が多い。一方で、1人当たりGNIの低い発展途上国では、自動車の普及の度合いはさほど高くなく、人口当たりの自動車の数は少ない。1人当たりGNIは、「ドイツ=日本>タイ>インドネシア」である。ドイツと日本がほぼ等しく、ともに高い。タイとインドネシアは、いずれも低い(一応、タイの方がやや高いが)。なるほど、①の「603」と②の「598」は数字が近接し、いずれも高い。これがドイツか日本のいずれかだろう。③がタイ、④がインドネシアと思われる。

①と②の判定は年間航空旅客輸送量による。とくに注目は「国内線」である。これは原則として国の面積と相関関係にある。シンガポールのような小国では国内線がゼロであることはわかるよね。国内に空港が一つしかないのだから、航路は全て外国向けとなり、国際線が100%。オランダのような小国でも同様の傾向になる、逆にアメリカ合衆国のように面積が大きい国では、国内線の値が大きくなる。国内の都市間の移動に空路が重用される。

さて、ドイツと日本はどうだろうか。面積は日本の方が大きい。旧ソ連のロシアとウクライナを除けば、ヨーロッパで日本(38万k m)より面積が大きいのはフランス(55万)、スペイン(50万)、スウェーデン(45万)のみ。さらに形状をみても、正方形に近いドイツでは、国内の各都市も比較的近接しているのに対し、弓なりの形をした日本では(弧状列島というやつですね)、東西南北に都市が分散しており、それぞれの距離も遠い。国内線の輸送量が大きいのは日本なんじゃないか。②が日本となる。①はドイツ。

せっかくなので国際線の値にも注目しよう。①のドイツの値が圧倒的に大きく、②の日本と③のタイはそれなり、④のインドネシアは小さい。ドイツの場合、周辺を様々な国で囲まれており、例えば近隣のパリ(フランス)への航路も短距離ながら「国際線」にカウントされる。また、ドイツのフランクフルトにはヨーロッパのハブ空港(中心的な大規模空港)が立地し、北米やアジアからも多くの航空路線が設けられている。国際線の値が圧倒的なのも納得。

その一方で、発展途上国であるタイやインドネシアの値が小さいのも納得なのだが、日本は先進国でありながら意外なほど国際線の便数が少ない。これについてはドイツと対照的な状況を考えてみよう。陸地を接する国がなく、経済的な交流もEU域内の緊密性に比べればさほどでもない。また東アジアのハブ空港は韓国のインチョンに置かれており、欧米からの路線の多くはインチョンを中継地とする。世界の航空交通については日本はむしろ発展途上国なのかも知れない。

 

[今後の学習]交通ネタは地理Bでは出題されにくいものの、本問については多様なデータを分析して解答を導くという点において極めて良問だと思う。とくにドイツと日本との航空旅客の国内線と国際線の値の違いは興味深い。両国の地勢的な条件の違い(周辺国との関係性)に注目してみよう。

 

参考までに、西ヨーロッパの主な国と日本との面積の関係。日本の面積は38万k mであるが、概数として40万としている。

 

フランス(55万k m)>スペイン(50万)>スウェーデン(45万)>日本(40万)>ドイツ(35万)>イタリア(30万)>イギリス(25万)

 

どうかな?結構わかりやすいんじゃないかな。主要5カ国にスウェーデンを加え、さらに日本を含めると、キレイに順番に並んでいる。これに人口を付け加えると、人口密度も概算できるね。人口は日本が1億2千万人、ドイツが8千万、イギリスとフランス、イタリアが6千万、スペインが4千万、スウェーデンが1千万。

フランスは人口が日本の半分、面積が1.5倍なので、人口密度は3分の1となる。日本の人口密度が330人/k mなので(この数字は覚えておこう)、フランスは110人/k mとなる。

また、人口は同じなのに、フランスとイギリスは面積が倍以上違うので、人口密度もイギリスの方が2倍以上高くなる。

 

【25】[インプレッション]形式としてはシンプル。ただし、内容は一筋縄ではいかない。かなり難しい。

 

[解法]携帯電話の普及率の問題。ただ、ちょっとやっかいなのは、「固定電話の普及率と比較して20倍以上の値を示す」という点。よほど携帯電話の普及率が高いのか、それとも固定電話の普及率が低いのか、あるいはその両方なのか。

それにしても20倍って極端だと思うよ。日本ではほぼ1人に1台の携帯電話となっているわけだけれど、固定電話の普及率がその20分の1だとしたら、例えば四人家族の家庭が5つあって、その中で固定電話を設置している家庭は一つだけっていうこと。さすがにこれは日本ではありえないんじゃないかな。

こういった極端な状況が生じている国ってどこだろう。近年は発展途上国でも携帯電話の普及率が急上昇している。それだけ一般的なツールになってきたわけだ。「携帯電話の普及率が高い」国ではなく、「固定電話の普及率が低い」国を考えるべきなんじゃないか。

固定電話の設置には、電話線といったインフラ整備が必須となる。例えば人口密度の高い都市部においては効率よく電話線の網を張り巡らすことができ、普及率も高くなる。その一方で、人口過疎地域においては隣家との間に広く間隔が空き、電話線を張るコストが極めて高くなる。

また、携帯電話が開発される前は固定電話こそ勇逸の電話だったわけであり、(携帯電話が広まったのが21世紀に入ってからと考えれば)20世紀後半の段階で近代化が進んだ国においては固定電話の普及率は高いだろうし、そうでない発展途上地域においてはほとんど広まらなかったと考えられる。

日本について考えてみよう。日本は1960年代の高度経済成長期に近代化を果たした先進国であり、この時期に固定電話も一般的になったと思われる。さらに人口密度が高い国であり、都市に多くの人口が居住することから。電話線網の広がりもスムーズだったと思われる。日本は間違いなく、世界有数の固定電話の高い普及率を有する国だろう。

オーストラリアはどうだろうか。オーストラリアも日本同様に先進国であり、固定電話は早い段階から広まったはず。ただし、多くの人口がシドニーやメルボルンなどの大都市に集中する一方で、広大な国土で人口がまばらに点在する地域もみられる。そういった土地においては固定電話は設置されず、無線通信機などによって他と連絡を取っていたのではないだろうか。ある程度、固定電話の普及率は高いだろうが、日本には及ばないはず。

さて、こういった観点からすると。4カ国中で最も固定電話の普及率が低い国はどこだろうか。経済発展が進まない発展途上国であり、そして多くの人口が都市以外の農山村に分散する国である。

アルゼンチンは農牧業国であるが、企業的な経営による大規模農場や牧場において農畜産物が生産されるのであり、(小さな農家が多いわけではないので)実は第1次産業就業者人口割合は高くなく、農村に住む人口も多くない。都市人口率(総人口に占める都市に住む人口の割合)は高くなっている。また、1人当たりGNIも10000ドル/人に達し、経済レベルは比較的高い。

その点、ケニアはどうだろう?具体的な1人当たりGNIの値はわからないが(良かったら調べておいてくださいね)、中南アフリカに位置し、経済レベルはかなり低いはず。発展途上国である(とくに経済レベルが低い「後発発展途上国」であると思われる)。

また、アフリカ諸国の一般的な傾向として都市人口率は低いだろう。農村で第1次産業に従事する人々が多く、農村人口率の方が高いと思われる。首都ナイロビは西欧の近代的な景観がみられる都市であり、人口規模の大きなプライメートシティであるが、しかしそれはケニアの一つの側面に過ぎない。ナイロビを少し離れれば広大な熱帯草原(サバンナ)が広がり、そこで伝統的な生活を送る人々が多いのだ。彼らが固定電話を持つだろうか。

ケニアこそ「固定電話の普及率が極端に低い国」とみていいのではないか。

もちろんケニアにおいて、日本など先進国並みに携帯電話が普及しているとは思えない。しかし「20倍」という極端な差が生じるには、日本は固定電話の普及率が高すぎるのだ。例えばケニア全体で10件に1台の割合で固定電話が普及しているとして、1世帯の平均人数を5人と考えれば、50人で1台の固定電話となる。携帯電話の普及率を50%とすれば(今や発展途上国でも携帯電話は広まりつつあるのだ)、50人で25台の携帯電話、すなわちその差は25倍。どうだろうか、これなら十分考えられる範囲じゃない?

以上、正解は③となるのです。いやぁ、難しかった(涙)。

 

[今後の学習]かなり変わった問題で、正直なところ自信はありませんでしたが、なんとか正解にたどり着くことができました。とにかくキーワード(というかキーナンバーというべきか)は「20倍」という極端な格差なのです。これってやっぱり普通じゃない。「分子」が大きいことだけじゃなく、「分母」が極端に小さくないとこの格差は生まれない!

数字に対する感覚(センス)こそ重要な問題だったと思います。経済発展(1人当たりGNI)や国土における人口分布の様子(都市人口率の高低)など多面的に考えつつ、さらに数字を思考の中心に置く。いやぁ、本当に頭を使う、心地よい疲労感を抱く問題だったと思います。名作の部類でしょう。

 

【26】[インプレッション]老年人口に関する問題でオーソドックスと思いきや、実はちょっとヒネリが効いてる。研究に値する良問ですな。

 

[解法]「総人口に占める65歳以上人口の割合」つまり老年人口。これは人口増加率に反比例する指標。人口増加は自然増加(出生と死亡の差)と社会増加(転入と転出の差)の和だが、大陸や国の人口については自然増加メインで考えていい。全体の人口変化に対する転入数や転出数の割合は高くない。やはり人口増減を決定する最大のファクターは出生と死亡。

ただし、死亡率はいずれの大陸・国も極端には変わらない。そもそも人間は「100年に一回死ぬ」のだ。平均寿命が200歳や300歳になるような地域があるわけでもなく、さほど死亡率に違いはない。

それに対し、出生率には大きな違いがある。子供が働き手として重要であり、さらに生まれても幼いうちに死んでしまう可能性が高い(乳幼児死亡率が高い)ため、発展途上国では極めて出生率が高い。とくにアフリカでこの値が高く、当然、出生率マイナス死亡率である自然増加率は全大陸中最高の値となり、すなわち人口増加率そのものが最高(自然増加率=人口増加率と考えていい)。一方で、乳幼児死亡率が低く(衛生環境が整い、医療技術が発達しているのだ)女性の社会進出や晩婚化によって出生率が低い先進地域では人口増加率が低い。経済レベル(1人当たりGNI)と人口増加率が反比例するのは、基本的なセオリーである。

 

年人口増加率は以下のように考えよう。

 

2%;アフリカ

1.5%;南アジア

1%;ラテンアメリカ

0.5%;東アジア・アングロアメリカ

0%;日本・ヨーロッパ

 

おおまかに1人当たりGNIと反比例になっていることがわかるだろうか。中国とアングロアメリカが例外で、中国は1人当たりGNIが低いにもかかわらず人口増加率も低い。これは一人っ子政策の影響。アングロアメリカ(アメリカ合衆国とカナダ)は、1人当たりGNIが極めて高いのに、人口増加率は日本やヨーロッパより高い。移民の流入が背景にある。

 

これを手がかりに問題を解いてみよう。図1参照。候補は4カ国。イギリスとエチオピア、韓国、ブラジル。きれいにカテゴリー分けできるね。

 

エチオピア→2%;アフリカ

ブラジル→1%;ラテンアメリカ

韓国→0.5%;東アジア

イギリス→0%;ヨーロッパ

 

人口増加率と老年人口率(65歳以上人口の割合)は反比例。よって、イギリス>韓国>ブラジル>エチオピアとなり、これを図1に当てはめ、2010年の値より(こうした問題では現在の値のみに注目するのがポイント)①がイギリス、②が韓国、③がブラジル、④がエチオピアとなる。②が正解。

参考までに詳しくみていこう。

イギリスは1960年の段階からすでに老年人口率が高かった。しかし、それからの伸びは比較的安定している。

韓国は急激に高齢化が進む。近年日本同様に出生率が低下し、高齢社会へと突入しつつある。

ブラジルも同様に上昇傾向。すなわち人口増加率がやや低下傾向にあるということ。ラテンアメリカは以前は人口増加率の高い地域であったが、近年は世界平均レベルに落ち着いている。

エチオピアは老年人口率が一貫して低い。高い出生率が将来的にも続くと予想されている。

 

[今後の学習]「解法」をえらく長々と書いてしましましたが(笑)実際はシンプルな問題ですよね。人口増加率が、エチオピア>ブラジル>韓国>イギリスなので、老年人口率はその逆となるわけですね。

さらにグラフについては変化を見ず、現在の値のみで解く。こうした問題を簡単に解くスキルがあれば、かなりのセンター地理マスターですよ。

 

【27】[インプレッション]世界全体の階級区分図を用いた問題。階級区分図は割合(相対値)を表すものである

取り上げられている指標は3つ。最初は「合計特殊出生率」。「出生率」ではないので注意。これを混用している人が本当に多いから注意してね。合計特殊出生率は、1人の女性が一生涯に設ける子供の数の平均値で、低いところで1程度、多ければ5や6に達するところも。単位はなく、単に数字で表される。

出生率は人口当たりの出生数の割合。例えば、人口100人の町で1人赤ちゃんが生まれたら、「出生率=1%」となる。%は百分率、‰(パーミル)は千分率なので、10‰とも言えるね。

合計特殊出生率の計算法はかなり変わっているので(決して難しくはないんだけどね)省略。でも出生率とはもちろん異なっている。本来、決してイコールで考えられるものではないことは知っておいてね。

とはいえ、センター地理レベルではこの二つを同じものと考えてしまって全く問題ない。問題もそのように作られている。出生率が高いところは合計特殊出生率も高く、出生率が低いところは合計特殊出生率も低い。本問もそれに倣っているので、シンプルに「単なる出生率」のデータと読み替えてしまっていい。

さらに「GDPに対する外国からの送金額の割合」。こうした指標の場合、分子だけでなく分母も非常に重要となるわけで、GDPの大小を本来考慮しないといけないのだが、本問の場合はそこまで神経質にならないでいいと思う。単純に「外国からの送金額」の大小のみに絞って考えていいだろう。外国からの送金?それは誰がするのか?外国に「出稼ぎ労働者」をより多く送っている国だと思う。それはどういうカテゴリーの国々なのだろうか。経済的な視点があれば判定は容易だろう。

そして「総人口に占める国際移民の割合」。こちらも本来なら分母である総人口も重要になるはずだが、単に「国際移民」だけで考えていいんじゃないかな。「総人口に占める国際移民」すなわち、その国の人口においてどれぐらいが外国人によって占められているかっていうこと。外国人を多く受け入れている国ってどういう国だろう?難民としてやってくる人々もいるけれども、国際的な人口移動って経済的な理由によってなされるものが主じゃないかな。つまり「仕事を求めて」っていうこと。仕事を理由として外国人が多く流入する国の特徴を考えてみよう。

なるほど、そうみると「GDPに対する外国からの送金額の割合」と「総人口に占める国際移民の割合」って、相反する指標なんじゃないかな。階級区分図はこのように「対立する指標」を探すことも解くコツの一つだよね。

 

[解法]階級区分図による問題。指標の高低を読み取らないといけない。

まず「総人口に占める国際移民の割合」が分かりやすいんじゃないかな。日本のように移民を積極的に迎え入れない国であっても、近年外国からの移住者は増加している。移民の多くは出稼ぎ労働者として、より雇用の多い、さらに賃金水準の高い国へと移動する。労働者は「1人当たりGNIの低い地域から高い地域へ」と動き、つまり先進国であればあるほど人口に占める移民の数は増える傾向にある。移民の中には難民も含まれるだろうが、これについても西ヨーロッパや北アメリカなどの先進地域が主だろう(同じ先進国でも日本はほとんど移民を受け入れていないが)。西ヨーロッパ諸国やアメリカ合衆国、カナダ。オーストラリアで「高」となっているアが「〜国際移民の割合」とみていんじゃないか。

さらに「合計特殊出生率」について。原則として、センター地理のレベルでは「合計特殊出生率は人口増加率と比例する」と考えていい。国ごとの人口増加率についてはほぼ自然増加率とイコールと見ていい。自然増加率に比べれば社会増加率の増減の幅は小さい。さらに、自然増加率は「出生率マイナス死亡率」だが、死亡率はどの国も極端には変わらない(人間は誰でも1人1回は死ぬのだ)。よって、出生率こそが自然増加率および人口増加率を決定する最大のファクターになるのだ。

そして、高校で学習する範囲においては「合計特殊出生率と出生率は同じもの」と考えて構わない。もちろん、両者は全く違う。合計特殊出生率は女性が一生涯にもうける子供の数の平均であり、20歳から49歳までの女性の出生率を合計したものである(だから「合計」出生率なのだ)。それに対し出生率は人口当たりの出生数であり、人口100人の村で子供が1人生まれたら1%、人口1000人の町で3人生まれたら0.3%。よりシンプルな指標なのである。

ただし、センター地理の過去問をひもとくに、両者の違いが強調されて取り上げられたことはないし。むしろ同じものと考えて解く問題ばかりである。本問についてもそれにならったらいいと思う。

地域(大陸)ごとの年人口増加率は以下の通り。

 

2%;アフリカ

1.5%;南アジア・オセアニア

1%;東南アジア・ラテンアメリカ

0.5%;東アジア・アングロアメリカ

0%;日本・ヨーロッパ(ロシアを含む)

 

さてどうだろうか。アフリカで高く、ヨーロッパで低い。合計特殊出生率に同じ傾向があると考え、イがそれに該当しないだろうか。とくにサハラ以南の中南アフリカは(データなしの国を除けば)ほとんどが「高」となっている。人口増加率(というか出生率)は1人当たりGNIに反比例する傾向があるが、たしかに中南アフリカはそもそも経済レベルが低いアフリカ大陸の中でもとくに低い地域であり、出生率そして人口増加率が極めて高いことは十分に想像できる。

インド、アメリカ合衆国、オーストラリアで比較的高くなっていることにも納得だろう。日本やヨーロッパ、ロシアは低い。中国も低くなっているが、これはもちろん一人っ子政策の影響。一人っ子政策は2015年に終わっているが、それからも継続して中国には子供の数を抑えるという傾向がある。

以上より正解は④となり、ウは「GDPに対する外国からの送金額の割合である。外国に出稼ぎ労働者を多く送り出している国でこそ、外国からの送金額は大きくなるはず。ということは、この指標は「総人口に占める国際移民の割合」と相反するものにならないだろうか。すでに述べたように、国際移民には紛争などによる難民も含まれるだろうが、多くが出稼ぎ労働者であるはず。1人当たりGNIの低い発展途上国であれば、多くの出稼ぎ労働者を先進国に送り、多額の送金を受けているはずだ。「〜国際移民の割合」がアなので、アとウを比較してみよう。なるほど、全体的に相反する関係になっているのではないか。アメリカ合衆国やオーストラリア、サウジアラビアなどはアでは「高」、ウでは「低」となっている。エジプト(アフリカ大陸の北東端の国)やミャンマー(東南アジアの最も西に位置する、インドなどと接する国)は、アでは「低」、ウでは「高」である。尤も、中国やブラジルのように、アでもウでも「低」という国もあるので、そこまで完全に反対の関係にあるわけでもないが。日本はちょっと細かくて読み取りにくいね。

 

[今後の学習]決して簡単な問題ではなかったと思うよ。

とにかくこうした問題を解くコツとして「1人当たりGNI」との関係性を考えるのが最善手。1人当たりGNIの高い先進国ではどうなんだろう?低い発展途上国ではどうなんだろう?とくに代表的な先進地域である西ヨーロッパや北アメリカと、やはり代表的な発展途上地域であるサハラ以南の中南アフリカとで、値が全く異なる(アでは前者は「高」、後者は「低」となっているね)場合、1人当たりGNIに基づいて考えることが必須となる。

 

【28】[インプレッション]スラムに関する問題はパターン化されているので簡単だと思う。センター過去問に習熟し、解法パターンを身につけることがいかに大切かっていうことがよくわかるんじゃないかな。

 

[解法]発展途上国がかかえる都市問題がテーマとされている。

選択肢①から。これはいわゆる「プライメートシティ」に関するトピック。プライメートシティとは首位都市と訳されるもので、その国において際立って人口や産業が集中している唯一の都市のこと。一般的には日本の東京やフランスのパリもこれに該当するわけだが、センター地理の定義においてはプライメートシティは発展途上国の都市に限られる。タイのバンコクやナイジェリアのラゴスが典型例。

2位以下の都市との間に極端な違いがあることが条件とされる。例えば日本の最大の都市は東京大都市圏であり、その規模は数銭万人に達するが、二番目の都市である大阪大都市圏の人口も1000万人を超え、両者の違いは決定的ではない。それに対し、バンコクはタイの総人口の1割以上が集まる巨大都市(都市圏)であるが、2位の都市は人口数十万人規模であり、10倍以上の差がある。むしろタイにはバンコク以外の都市がない、とも言えるわけだ。

これについては、国家としての資本力の差を考えればいいだろう。資本力すなわちGNIである。タイは決してGNIが大きい国ではない。国家として巨大な資本(お金)を持っていないのだから、開発の範囲も制限される。中心都市であるバンコクにのみ投資が集中し、インフラ整備がなされ、工業地域が形成される。その一方で、バンコク以外の都市は古いまま放置される。産業も未成熟で人口も増えない。こういった状況を考えて欲しい。①は正文。

さらに②。資本力が「ない」のではなく、「少ない」のだ。都市全体を開発する余裕はないが、都心付近のごく一部だけは先進国に負けない立派な街並みになる(逆に先進国の方が都心部は老朽化が激しくスラムになっている場合もあるが)。②も正文。また富裕層は、インフラが整備され、さらに治安も良い(実はこれが大事!貧富の差が激しい発展途上国だからこそ、犯罪率は高いし、富裕層は自衛の手段が必要)都心の中心業務地区(CBD)や商業地区に近接して高級住宅地が形成される。

そして③。スラムがキーワード。スラムは形成される場所がポイントだったね。先進国のスラムは「都心付近」すなわち都市の真ん中にできる。古くからの市街地が老朽化し荒廃すると、元々住んでいた人々(彼らは富裕層である)が郊外へと居を移し、そしてオフィスや商業施設などの産業も郊外に流出する。「空白」となった都心へと流入するのは、少数民族や移民を中心とした失業者。アメリカ合衆国ならば黒人やヒスパニック。彼らは低家賃のアパートに住み、時には廃墟を不法占拠し、スラムの住民となる。仕事も飲食店やサービス業であるが、低賃金で不安定である。

一方、発展途上国にも同様のスラムが形成されるが、こちらは「都市周辺」すなわち外側に広がっていく。

問題文ではインドネシアやタイなど発展途上国に関して述べている。こういった国々の大都市(ジャカルタやバンコク)ではスラムが形成されるんは都市の周辺であり、「都心周辺」ではない。都市周辺は「外側」で、都心周辺は「内側」だね。表現がややこしいけれど、しっかり「都市」と「都心」を区別しておこう。

さらに「高層の住宅群」ももちろん誤り。先ほども述べたように、とくに発展途上国のスラムのイメージは「掘っ立て小屋」。適当な木材やトタンなどを寄せ集めて、雨風をしのぐ(というか、こうした小屋なら雨風もしのげないよなぁ。。。)だけの簡易な家をつくる。もちろん「高層」なわけはないね。

選択肢の④についてはもちろん納得だろう。発展途上国は資本力が足りず、先進国などからの経済的支援が必須なのである。

 

[今後の学習]発展途上国のスラムに関してはとにかく「外側に広がる」ものとして考えて欲しい。2013B本16のメキシコシティの問題がわかりやすい。余計なことを考えず、シンプルに「一番外側」がスラムであると決めつけていい。もちろん、都心付近にも一部にスラムはみられるのだが、それらは線路の脇や河川沿いの橋の下など限定された場所のみ。大規模なスラムがあるのは都市の外側になる。

さらに参考になるのは2018B追15のリオのスラム。こちらは複雑な地形のうえに市街地が成り立っているので若干状況は異なるのだが、それでもスラムつまり「不良住宅地」が、山地に沿う傾斜地や、市街地から離れた北部に多いことがわかる。なるほど、沿岸部の高級住宅地の内部にもスラムがみられるが、それは特殊な例である。

さらにおまけで、インドのコルカタも典型的なスラムがみられる都市。2004B追の問題でコルカタの様子が文章で説明されている。

「自然堤防上に市街地が形成された。後背湿地に無秩序に拡大した住宅地は、衛生環境が悪く、社会基盤の整備が緊急課題となっている。」

コルカタはガンジス川水系の三角州に形成された都市であるが、比較的土地条件のよい自然堤防上に市街地がつくられている。低湿で洪水などの災害に弱い後背湿地にこそスラムが広がり、劣悪な居住環境となっている。こうした都市においては社会基盤すなわちインフラの整備が必要。

 

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