2015年度地理B本試験[第4問]問6 解説
問6 [インプレッション]中南米の民族構成はよく問われることであるので、この図も見慣れたものではあるんだが、実は文章正誤問題になっていて、ちょっと厄介。宗教や言語も登場しているし、あなどれない問題だよ。
[解法] 正文判定問題。3つの選択肢を消さんといかんのがしんどいわな。じっくり一つ一つ間違いを指摘していきましょう。
①;アルゼンチンやウルグアイはヨーロッパ系の白人が多数を占める。両国ともラプラタ川河口エスチュアリーに面する港湾を有し、ヨーロッパから多数の移民を迎え入れた。ともにスペイン領だったので、スペインからの移住が多かったが、イタリアなど他国からも流入した時期もあった。同じ新大陸の北アメリカからの移民ではないので、これは誤り。
②;南米大陸の多くの国々はスペインの旧植民地であり、言語も公用語としてスペイン語が採用されている。ポルトガル語が公用語であるのは、ポルトガルの植民地であったブラジルのみ。誤り。それにしても、人口1000万の小国であるポルトガルがこんなに大きな国を支配していたなんて、ビックリするよね。それぐらいインパクトのあることなんで絶対に知っておこう。
③;そもそもムラートって何だ?これ、意外と難しいんじゃない?ムラートとは「(ヨーロッパ系)白人と(アフリカ系)黒人」の混血として覚えておこう。かつてセンター試験で、ムラートが多い国としてカリブ海の小国ドミニカ共和高が登場したことがあるけど、さすがにそんなマイナーな国は覚えなくていいや(笑)。ただ、プロ野球が好きな人ならわかると思うけれど、ドミニカ共和国から日本にやってくる野球選手ってとても多い。彼らはどちらかといえば褐色の肌を持ち、(たとえばアメリカ合衆国のバスケットボール選手にみられるような)典型的な黒人とは違うでしょ?黒人の運動神経と白人の力強さを備えた民族、それがムラートなのだ。
で、選択肢の文をみるに「アフリカから多くの奴隷」とある。なるほど、アフリカから連れてこられた奴隷が、やがて白人と混血しムラートが生まれたのだ(北アメリカに比べ、中南アメリカの方が混血が進んでいるっていうのは知っているよね。つか、知っといて)。この選択肢についてはとくに否定するところはない。保留。
④;おっと、ここでいきなり宗教。中南米はラテン民族の国家(スペインとポルトガル)によって植民地支配され、ラテンアメリカともいう。彼らの征服のパターンは決まっていて、まずキリスト教の宣教師を送り込む。十分にキリスト教を布教して、彼らの警戒心を解いたところで一気に軍隊を送って、制圧してしまうのだ。ラテンアメリカの国々のほとんどでカトリックが信仰されている。選択肢「植民地支配を受ける以前からの宗教」ではないので、これも誤文。以上より、③が正解。
[アフターアクション] 今回の試験では宗教に関する問題がみられず、本問の選択肢④がかろうじて宗教ジャンルをカバーしている程度。とかく宗教は複雑に考えてしまう人もいるかもしれないけれど、このように「ラテンアメリカ=カトリック」程度のことさえわからば得点できるのだから、さほど神経質になるものでもない。過去問に登場した内容を個別にまとめておいたら重宇文なんじゃないかな。