2010年度地理B本試験[第6問]解説

2010年度地理B本試験[第6問]                                                 

 

現代社会の諸課題に関する大問。っていうか「現代社会の諸課題」って?結局何でもかんでもアリっていうことなんじゃないの???

そんなわけで出題内容は結構カオスな状態となっております。どんな問題が登場してきても柔軟に対応しましょうっていうことですね。

 

<2010年度地理B本試験[第6問]問1>

 

[講評] 「1991年」というのがセンター地理では非常に重要な年号なわけだが、このように1991年を含む統計についてはちょっとそれを念頭に入れて考えていかないといけない。その典型的な問題だったりするんだね。

 

[解法] まず問題文を読んでみる。図1から「読み取れる」ことがらと「その背景」について述べた文として適当でないものを選ぶ問題になっている。「読み取れる」内容だけでなく、「その背景」まで考えないといけない。この「背景」っていうのがすごく気になるんだよなぁ。その辺り、ちょっと気にしながら各選択肢を読んでみたいと思います。

1について。読み取れる事柄としては正しいでしょう。で、その背景だよね。ここでは「大規模な自然災害」ってある。これはどうなんだろう?CISの国々っていうことはかつてソ連邦を構成していた国々のほとんどが含まれる。旧ソ連の崩壊は1991年(*)なわけで、この図が示している1990年から2006年という期間と合致している。これってどう思う?ソ連崩壊による混乱の影響って大きかったんじゃないかな。食糧や栄養不足によってなくなる人もいただろうし、時にはチェチェンのように内戦も生じた。衛生条件や医療環境も決して十分なものではなかっただろう。「自然災害」より、こっちの原因の方がそれっぽいと思いませんか。よって1が誤り。

他の選択肢については省略。どうも決め手に欠けるんやなぁ。ちょっとイマイチな感じ。ボクのモチベーションが上がりません。

(*)この年号は必ず覚えておこう。1991年っていうのは非常に重要な年号。世界では旧ソ連の崩壊、南アフリカにおけるアパルトヘイトの撤廃が起こった。日本においても、牛肉・オレンジの輸入自由化、入国管理法の改正(日系人は単純労働者としても入国・滞在可能)が実施された年である。

 

[最重要問題リンク] 1991年ソ連崩壊におけるロシア周辺諸国の混乱が取り上げられた例に、2007年度地理B追試験第4問4がある。問題自体はポーランドも含まれているのでちょっと難しいが、ソ連崩壊の1991年を含む「1990~1995年」に急激にマイナスの方向に変化している表1中のカにとくに注目しておこう。

 

[今後の学習] 年号を含む問題において「1991年」を意識することは非常に重要。とくに「旧ソ連=1991年」の組合せは常に意識しておくべきなのだ。

 

<2010年度地理B本試験[第6問]問2>

 

[講評] 女性の地位の向上に関する問題って最近やたら多く出題されているよね。昨年もパキスタンのネタが出題されていたり。ポイントはイスラム教であるのは間違いないのだが。さて本問やいかに!?

 

[解法] 「女性労働力率」と「合計特殊出生率」。合計特殊出生率は、一生涯に1人の女性が産む子どもの数の平均だけど、普通の出生率と同じように考えてしまってオッケイです。とりあえず合計特殊出生率と出生率は比例するということで。

そもそも出生率と人口増加率は比例するので、要するに合計特殊出生率と人口増加率が比例すると考えてしまっていい。

人口増加率については、大陸別の年人口増加率を数値で頭に入れておくと使える。

 

3%;アフリカ

2%;ラテンアメリカ・南アジア

1%;東アジア・アングロアメリカ・オセアニア

0%;ヨーロッパ・日本

 

本問の選択肢となる大陸は、アジア、アフリカ、ヨーロッパ。アジアは、東アジアと南アジアの平均で1.5%と考える。

人口増加率の高い順に並べると、アフリカ>アジア>ヨーロッパ となる。

図2のア~ウについて合計特殊出生率を考える。アが最低で、ウが中間、イが最も高い。

これより、アがヨーロッパ、ウがアジア、イがアフリカ。

以上、これでおしまい!あれっ、女性労働力率は全然見なかったよ(笑)。女性労働力率とイスラム教を関連させて解こうと思っていたんだが。でもよく考えたら、アジアもアフリカもともにイスラム地域が広い範囲に広がっており、どちらがどちらとか判定しにくいんだよね。ま、もともと女性労働力率では判定できなかったっていうわけかな。

 

[最重要問題リンク] 合計特殊出生率が出題された例に2007年度地理B本試験第5問問1がある。合計特殊出生率と出生率が比例し、さらに出生率と人口増加率が比例することを考える。合計特殊出生率が高ければ人口増加率が高く、低ければその反対。

選択肢の4か国中、最も人口増加率が高いのは「南アジア」のバングラデシュ、次いで「東南アジア」のタイ、さらに「東アジア」の中国が続き、最低が「日本」。この順位に当てはめて考えれば大丈夫。

もっとも、この問題の場合は中国とタイの判定に悩むわけだが、まぁそれは本問とは関係ないのでパスっちゅうことで。

 

[今後の学習] 表を読むテクニックというものをすごく大切にしてほしいなと思う。漠然と適当に眺めるのではなく、一つ一つの点が一つ一つの国を具体的に表していることを意識し、数字を確実に読んでいこう。

本問の場合は「女性労働力率」と「合計特殊出生率」の2つの指標が表されているわけだが、とくに注目するべきが「合計特殊出生率」であることは言うまでもない。自分が確実に知っている指標で勝負しよう!

 

<2010年度地理B本試験[第6問]問3>

 

[講評] いいっすね。基本中の基本。でもこうした基本中の基本の問題ができなかったりするのが、センターでしっかり得点できない人の一つの傾向。キーワードをきちんと整理しておくことが必要なので、そうしたクセをしっかり付けておこう。人口移動の原則は「工業労働力としての移動」であるけれど、それは第二次世界大戦後の現代社会に限ったこと。古い時代や戦前の移動は、むしろ農業や鉱業だったりするわけだ。世界が移り変わっていく様子をとらえる。

 

[解法] 人口移動の原則を考える。現代の人口移動は「工業労働力としての移動」。製造業や建設業の発達した地域へと、低賃金国から出稼ぎ労働者が流入する。単に「仕事を求めて移動する」だけではダメ。仕事の内容まで考えないと!

ただし、工業労働力としての移動は「現代」の社会に限定される。高度経済成長期には工業化著しい太平洋ベルトへと、日本各地から人口が移動した。オイルショックに続く時代には、オイルマネーに沸くペルシャ湾岸地域へと多くの出稼ぎ労働者が流入し、その多くは建設業に従事した。90年代初頭には入国管理法の改正によってブラジルから日系人が多く来日し、わが国の製造業を支えた。拡大EUにおいても、工業先進国である西ヨーロッパ諸国へと、経済レベルの低い東ヨーロッパ諸国から労働者が移入している。

本問で最大のポイントになる語句は「工業」なのだ。選択肢3参照。「ブラジルでは、かつて工業技術者として受け入れた日本人の子孫が」とある。「日本人の子孫」については日系人と考えていいだろう。日系人とは日本人の血を引いたブラジル人のことでもちろん国籍はブラジルなので、日本から見れば彼らは「外国人」である。本来なら外国人の単純労働者としての入国と滞在を制限しているわが国であるが、日系人に関しては90年代以降許容されている。90年代初頭にブラジル人の入国が急増したのはその影響だが、そもそもブラジル国内に日系人が多いという背景がある。

では、なぜブラジル人に日系人が多いのだろう?それは20世紀初頭から中頃にかけて、多くの日本人たちが世界各地に移住していったのだが、その最大の行き先がブラジルであったからだ。彼らの多くは日本で貧困な生活を送っていたが、遥か新大陸に夢を馳せ、地球の裏側である南米大陸へ旅立ったのだ。今よりも「地球が広かった」時代であり、何ヶ月もの船旅に耐え、彼らはブラジルを目指したのだ。

さて、ここで一つポイントがある。彼らはどんな仕事を目的としてブラジルに渡ったのか。選択肢3にあるように「工業技術者」なのだろうか。たしかに1人当たりGNIの高い日本は工業技術水準も高く、発展途上国であるブラジルに対しては指導する立場なのかもしれない。しかしここで考えてほしいのは「時代」である。先述のように、工業労働者としての移動は「現代社会」に限定される。ここで述べられている「工業技術者」もやはり工業労働者の一種なので、現代の人口移動を象徴するキーワードとなる。

しかし選択肢3に注目してみよう。「かつて工業労働者として受け入れた」とある。時代は「現代」ではない。過去なのだ。「子孫」というキーワードもあるのだから、彼らが移住したのは何十年もの昔で、移住後に家族を作り、現地社会に適応した歴史があるのだ。つまりこの選択肢は過去の人口移動についてその理由を「工業」としている。さぁ、これはどうだろうか?工業労働者としての移動はあくまで「現代」のキーワードである。過去には適応されない。この時点でこの選択肢を非常にうさん臭いものとしてとらえてほしいわけだ。

古い時代に日本からブラジルへと多くの移民が生じた理由は「農業」のためである。日本で仕事に恵まれない人々が、ブラジルへと渡り、農業労働者として働いた。大土地所有制による大農園が多く開かれているブラジルにおいて、農業労働者としての雇用は十分にあったのだ。

ちょっと読んだだけでは見落としてしまいそうな「工業」というキーワードに敏感に反応できるかどうかが最大のポイントとなる。細やかな神経が必要となるセンター試験特有の問題だね。ボクは好きです。

 

[最重要問題リンク] 地理Aの問題で興味深いものがある。1997A本第2問問2。問題が手に入りにくいと思うので、全文掲載しておく。

 

20世紀の後半になると、経済成長が著しい地域と停滞している地域との経済格差の拡大に伴って、国際的労働力移動が世界各地で発生した。こうした労働力移動について述べた次の文章1~4のうちから、下線部が適当でないものを一つ選べ。

 

1 1960年代には、地中海沿岸の国々からドイツとフランスへの移動が目立っていた。その多くは、両国の工業発展で不足した農業労働力を補うものであった。

2 1970年代後半には、東南アジアや南アジアから中東地域への移動が目立つようになった。その多くは、石油収入の増大で建設ブームとなったこの地域の建設労働力として募集されたものであった。

3 1980年代以降、アメリカ合衆国には東南アジアからの移動が顕著になった。その背景の一つには、1970年代後半以降に受け入れてきたインドシナ難民による家族の呼び寄せがあった。

4 1990年ごろ、それまで中東に向けて多くの労働力を送り出していた東南アジアでは、域内での流動が目立つようになった。これは、同地域内での急速な工業化を反映している。

 

さぁ、キーワードは一つだけ。それをダイレクトで指摘してみよう。詰め将棋で言えば、一手詰め。答えは言わないので、じっくり考えてみよう。いや、文章をしっかり「観察」してみよう。答えはそこにある!

 

[今後の学習] 「一般化された理論」と「個別の知識」の両方について考察してみよう。

まずは「一般化された理論」について。人口移動のセオリーは「経済レベルが低いところから高いところへ」と労働者が動くというもの。さらにその目的については、原則として「工業」。高い賃金水準を求めて移動するのだから、より収益性の高い産業に仕事を求めるのは当然だろう。この「工業労働者としての移動」を大原則とする。

選択肢3については2つの面で疑問がある。一つが、経済レベルの高い日本から低いブラジルへとなぜ移動しているのかということ。これは現代の人口移動の常識から考えると、非常におかしいことなのだ。要するに、この移動は現代の移動ではない。まだ「金」がさほど重要な意味をもたなかった「過去」の話なのだ。

また過去の人口移動であるので「工業」もおかしい。工業労働者としての移動はあくまで現代社会のもの。古い時代ならば他の理由(奴隷としての強制的な移動、宗教的な迫害を逃れるための移動、そして農業移民としての移動など)を考えるべき。

このように理論的に考えることがとても重要。

さらにもう一つ。「個別の知識」としても知っておくべきなのが、日本人のブラジルへの移動(移住)。今から100年ほど昔に、日本からブラジルへと最初の農業移民が送られた。日本では仕事に恵まれず、貧しい生活を余儀なくされていた人々が、新たな可能性を求め、ハワイや米国本土、さらに中南米へと旅立ったのだが、最も多くの日本人が送られたのがブラジルだったのだ。

彼らは最初は農業労働者として、コーヒーなどの大農園で働き、やがて現地社会へと適合していった。国籍は日本人であるが、ブラジルに永住する者は多い。さらに現地で結婚し、家族を持つ者も多かったが、その子供たちは「日本人の血を引くブラジル人」すなわち日系人である。2世3世である日系人が、今度は日本へと出稼ぎにやって来て、工場などで働いているのは何とも皮肉な話とも思う。

「古い時代には日本からブラジルへの農業労働者としての移動、現代はブラジルから日本への工業労働者としての移動」という事例は必ず知っておくべきこと。

 

なお、他の選択肢についても興味深いので解説を加えていこう。

1;「産油国」がキーワードとなっている。経済レベルの高い原油産出国(その多くはOPEC加盟国である)へ向かって、経済レベルの低いそれ以外の国々から労働者が移入している。南アジアといえば、パキスタンやインド、バングラデシュなどで、いずれも1人当たりGNIの低い国(これらが人口規模の大きな国であることも意識しておこう。1人当たりGNIは人口規模に反比例する)であり、出稼ぎ労働者を送り出す側の国であることは間違いない。

それに対し、「西アジアの産油国」とあるが、これについてはサウジアラビアやクウェート、アラブ首長国連邦などを代表例と考えよう。いずれもOPECに加盟する国であり、わが国にとっtも重要な原油輸入先である。経済レベル(1人当たりGNI)も高く、出稼ぎ労働者を受け入れる側の国々である。

2;インドがソフトウェア開発の盛んな国であることは確実に知っておいてほしい。原則として発展途上国ではハイテク産業は発達しないが、インドはその唯一の例外。英語を使用できる安価な労働者が豊富で、さらに米国との時差が約12時間でありコンピュータの24時間体制での管理もしやすく、現在米国に次ぐ世界第2位のコンピューアソフト生産国となっている。本選択肢も「インドのソフトウェア技術者」までは正しい。

さらにここからも重要。「先進国への移動もみられる」とある。これは正しいか。とくに理論的に考えて整合性があるか。インドは経済レベルの低い発展途上国である。人口移動のセオリーとして「経済レベルの低い国から高い国へ」という絶対的な法則がある。インドから先進国への移動はこれと適応したものである。本選択肢は後半部分も妥当。正文となる。

選択肢2と選択肢3については、いずれも「工業労働者としての移動」であるが、選択肢2が「発展途上国から先進国への移動」であるのに対し、選択肢3が「先進国から発展途上国への移動」となっている点に注意されたい。

なお選択肢4については、そのようなこともあるんやなぁってぐらいで認識しておいてもらえれば十分です。ブラジルやペルーからの出稼ぎ労働者が多い自治体では、小学校からスペイン語やポルトガル語の授業を実施しているところもあるらしいです。身近な国際化というわけですな。

 

(最重要リンク問題の解答) 正解は1です。現代の人口移動の目的に「農業」は当てはまらない。

 

 

<2010年度地理B本試験[第6問]問4>

 

[講評] これもなかなか良問だと思います。もちろん簡単な問題ではあるけれど、統計を意識する思考法ができていないと戸惑うと思うよ。

 

[解法] 米国の貿易の特徴を考えよう。米国は世界最大の貿易額を誇る国であるが、輸出量より輸出量が大きいという貿易赤字国でもある。選択肢1の「巨額の貿易赤字」が米国を象徴するキーワードであることを認識する。さらに、「巨大な国内市場」については、人口はGNIの大きさを考える。人口は世界3位であり、GNIはダントツの世界1位である。「工業製品」の輸入が多いことについては、わが国が米国に盛んに自動車を輸出している様子を思い浮かべよう。日本が世界最大の自動車輸出国であるのに対し、米国は世界最大の自動車輸入国である。また「エネルギー資源」については原油を考えるといい。米国は世界有数の原油産出国でありながら、世界最大の原油輸入国でもある。それだけたくさんの原油を消費してるってことだけどね。

2は日本。「高い技術力を背景として工業製品を積極的に輸出」は先進国のキーワード。日本はもちろん1人当たりGNIの高い先進国である。主に米国から「農産物を大量に輸入」している。牛肉やオレンジのようにすでに輸入自由化がなされているものがある一方、米のように「高い関税」がかけられ、国内の米作が保護されているような事例もある。

3は中国。「豊富で安価な労働力」については、中国の人口の多さと1人当たりGNIの低さを考える。「さまざまな資源を大量に輸入」については、鉄鉱石の世界最大の輸入国であるこを考え、さらに近年は原油の輸入量が急増していることを想起する。

4はサウジアラビア。「豊富なエネルギー資源」とはもちろんペルシャ湾岸で採掘される原油や天然ガス。ちなみに「国際機関」というのはOPEC(石油輸出国機構)のことですね。OPECというのは一言でいえば「売り惜しみ」の団体。豊富な原油資源を有するが、それを一気に採ってしまえば価格が暴落してしまい、産油国は儲からない。だから、ちょっと生産量を抑えながら採掘し、価格をおいしいレベルに引き上げようとする。そうやってレア感をあおっているわけですね(笑)。

 

 

[最重要問題リンク] とくにこれといったリンクが思い当たらないんだよなぁ。どうしたもんかな。まぁ簡単な問題だし、別にいいでしょう(笑)。

 

[今後の学習] ちょうどいいリンク問題がなかったりするけれど、問題自体は悪くない。っていうか、かなりグッドな問題だと思います。ボクはすごく好きです。文章問題でありながら、実は統計をかなり意識するといったような、いかにもセンター地理って感じの問題になっています。先にも述べていますが、例えば選択肢1でも「巨大な国内消費」「工業製品やエネルギー資源を大量に輸入」などの部分がそのまま統計と結びついています。ホント、いい問題だなと思います。今回の全36問中一番好きかも。

 

<2010年度地理B本試験[第6問]問5>

 

[講評] 第6問はこの問5と次の問6がいずれも1人当たりGNIに関する問題だが、ボク個人的にはこっちの問題の方が好き。ちょっと傾向が変わっているものの、1人当たりGNIが主役であるのは間違いない。CISが登場しているのが厄介だが、これぐらいハードルが高い方が歯ごたえがあっていいんじゃないかな。

 

[解法] 1人当たりGNIがテーマとなった問題。表1中の「1人当たり総所得」と「1人当たりGNI」は同義とみていい。そもそもGNIは国民総所得のことだしね。

域内全体の「1人当たり総所得」で判定してもいいとは思うのだが、どうせ1人当たりGNIについては(できるだけ)具体的な数値でいろいろな国の値を知っておかないといけないので、ここは表1中の「1人当たりGNI」とくに「最上位の国の値」に注目して解いてみよう。

選択肢はASEANEUNATA。国の数が限られていて最も考えやすいのはNATA。加盟(調印)国は米国、カナダ、メキシコであるが、とくに米国は経済レベルの高い国でその1人当たりGNIは40000$/人を超える。これからカをNATAとする。なお、カナダが35000$/人程度で、メキシコは10000$/人を割り込むレベルだが、「7755」がメキシコの1人当たりGNIと考えれば妥当。

残ったキとク。CISは旧ソ連の多くの国が加盟する国際組織で、主要構成国はロシア。ロシアの1人当たりGNIについては約5000$/人と覚えておくべき。

ASEANは東南アジア諸国によって構成される国際組織。主要国は(問6にも登場するが)タイやマレーシア。それぞれ1人当たりGNIは、タイが約3000$/人、マレーシアが約5000$/人。

このことを念頭に入れて、表1のキとクを判定する。キの「最上位」は「6679」でこれはロシアやマレーシアを考えれば、納得の範囲。しかしここで最大のポイントが登場する。それがクの「30058」なのだ!これってバリバリ先進国レベルの値じゃない!?CISASEANに先進国が含まれているというのか。

そう、この問題のポイントっていうのは要するに、ASEANと聞いたときにタイやマレーシアだけでなく、シンガポールまで思い起こすことができるかどうかっていうことなんだよ。シンガポールは中継貿易港として発展して来た商業国家で、人口規模が小さいこともあいまって(1人当たりGNIは人口規模に反比例する性質もある)、先進国レベルの高い1人当たりGNIを誇る国となっている。「30058」がシンガポールの値と考えるのは容易だろう。クがASEANとなり、残ったキがCIS。正解は6となる。

 

[最重要問題リンク] 1人当たりGNIに関する問題ではあるのだが、ボクは引っかかったのは「CIS」の方。CISは旧ソ連の国々を中心に結成された国際機構なのだが、これって地理B本試験には初登場じゃないかな。ちょっと記憶にない。旧ソ連を中心としたかつての社会主義諸国については地理Bでも追試験で主に取り扱われていた。本試験に登場するようなメインキャストではなかったのだ。しかしこの2010年は、チェコが登場したり、このCISが取り上げられたりと、いよいよ旧社会主義諸国について普通に問われるようになった印象がある。来年以降、地誌問題で東ヨーロッパやロシアが大々的に取り上げられても不思議ではない。

そのCISが出題された例を。2001年度地理B追試験第1問問6参照。CISについては「1991年のソビエト連邦解体後、15の独立国が新たに誕生したが、それらのうち12の国々は、緩やかな結びつきをもった独立国家共同体(CIS)を組織した」と説明されている。CISがどんな活動をする団体かといった内容まで問われることないので、とりあえず加盟国(旧ソ連)といった形式的なことだけ知っておけば十分だろう。

なお、旧ソ連でありながらCISに加盟していないのは、エストニア・ラトビア・リトアニアのバルト3国。彼らはすでにEUには加盟している。

 

[今後の学習] この問題の最大のポイントはシンガポールが思う浮かぶかどうかということ。どうせ1人当たりGNIは覚えておかないといけないので、カの最上位の国が米国で最下位の国がメキシコだっていうことは余裕でわからないといけないし、解法のところでも取り上げたようにロシアとマレーシアが約5000$/人でほぼ同じ水準であることもすぐに理解しないといけない。ただ、やっかりシンガポールなんだよな。シンガポールが高賃金国(つまり1人当たりGNIが高いってことね)であることはみんなも知っているとは思うけど、「ASEAN=シンガポール」と連想できるかどうかが難しい。国際組織については、その活動内容などほとんど問われない。加盟国をしっかりと確認しておくこと、それが最も大切なのだ。

 

ASEAN・・・フィリピン・ベトナム・ラオス・カンボジア・ミャンマー・タイ・マレーシア・シンガポール・ブルネイ・インドネシア

NATA・・・カナダ・米国・メキシコ

CIS・・・旧ソ連構成国15のうちの12。ロシアなど。

 

<2010年度地理B本試験[第6問]問6>

 

[講評] 問5問6と連続して1人当たりGNIの問題。こちらの方がダイレクトに問われている。表2中には「1人当たりGDP」とあるが、「1人当たりGNI」と同義と考えていい。

単純過ぎる問題ともいえるが、こうした問題を単純と思えるのも、すごく大切なことだと思う。よほどセンター試験を研究していないとこの問題のシンプルさが理解できない。インターネット普及率や都市人口率から何かを「想像」するのではなく、1人当たりGDPの値から直接に「当てはめる」のだ。いい問題だと思います。

 

[解法] 秒殺せよ。「1人当たりGDP」は「1人当たりGNI」である。タイの1人当たりGNIは約3000$/人。よって1が正解。おしまい。

 

[最重要問題リンク] そのまま同じ問題が出題されている。2001年度地理B本試験第1問問3。今年の問題の作成者が、この2001年の問題をベースにしたのは間違いないだろう。1人当たりGNI以外の指標(2001年は「製造業就業者の割合」、本年は「インターネット普及率」など)を変えてきているのもかなりオシャレ。問題作成者のセンスを感じます。

 

[今後の学習] 1人当たりGNIを主な国について覚えるのは当たり前なので、あえて他のポイントを。

「インターネット普及率」については1人当たりGNIに比例していることだけ見ておけばいい。タイの情報化についての出題は2000B本第1問問3でも取り上げられているので参照しておこう。

問題は「都市人口率」の方。都市人口率は昔は全くといっていいほど出題されなかったのに、ここ数年は最も熱いアイテムとなっているといって過言ではない。マレーシアの都市人口率は2009B追でも問われているので、2年続けて登場ということになる。ここはタイに注目しておこうか。都市人口率と1人当たりGNIは原則として比例するのだが、タイはその例外。タイは発展途上国ではあるものの、比較的工業が発達し、1人当たりGNIも約3000$/人とそれなりの高水準。しかし都市人口割合は30%程度と極めて低い値となっている。バンコクというプライメートシティはあるものの、それ以外の都市は小規模で、全体として農村の人口の方が大きいのだ。タイの都市人口については「30%」という数値で覚えてしまっていいかもしれない。マレーシアが連続登場なのだから、来年再びタイの都市人口割合が登場する可能性は小さくない。

 

 

 

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