たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう

2015年度地理B本試験[第2問]問6 解説

問6 [インプレッション] 厄介な問題やわ。2015年本試験最大の問題作。これ、かなり特殊やで。普通の誤文判定問題ではない。通常ならば、一つだけ決定的に誤っている選択肢を選び、それを答えにすればよかった。例えば、選択肢が4つあるとすると、その内容は「明らかに誤っている選択肢」が1つと「あいまいでどちらとも取れる選択肢」が3つという組み合わせなのだ。一方で正文判定問題の場合は消去法で解く必要があるので、「明らかに誤っている選択肢」が3つと「あいまいでどちらとも取れる選択肢」が1つという組み合わせになる。つまり「誤っているもの」を指摘するのは容易なのだが、「正しいもの」を指摘するのは難しいのだから、こうした文章正誤問題についてはひたすら「間違っている部分」を探していくだけなのだ。
それがこの問題だよ!解き方が全くの反対。誤文判定なのだが、選択肢を読んで気づいたのだが、4つの選択肢のうち「明らかに正しい選択肢」が3つ、「あいまいでどちらとも取れる選択肢」が1つ、含まれているのだ。つまり、明確に「間違っている部分」はこの問題の中にはない。「正しい」ことを一つ一つ指摘していかないといけない。いやぁこれはしんどいよ。

[解法] ①;まさにその通り。穀物メジャーにはそうした影響力がある。
②;これもその通り。オーストラリアはかつてはイギリスの植民地だったこともあって、イギリスとの関係が深かったが、近年はアジアとの経済的な交流が活発化している。
④;これもその通り。EUは域内の貿易が自由化されているが、逆に域外との貿易には高い障壁を設けている。例えば、小麦については域内の価格はやや高く、海外(アメリカ合衆国など)から安価な小麦を輸入した方が本来ならコスト安になるはず。しかし、これをするとEU内の農業に打撃があるため、輸入品については課徴金(ようするに罰金)をかけることによって、域内農業の保護に努めている。「貿易摩擦」については明確ではないが、なるほどそういうことが生じたとしても納得だろう。
以上より、残った③が誤文(正解)。消去法によって誤文をあぶりだすというかなり変わった解法を持つ問題であるが、本問については選択肢③に関する事項を知っておけというのが無理な話なので、仕方ないかな。

[アフターアクション] 上でも説明しているように特殊な解法を持つ問題だけに、かなり難易度は高かったと思う。例えていえば、4人の容疑者がいて、3人の無実を証明することで、残る1人が犯人であると断定してしまうってことだからね。そこに決定的な証拠はないのに、犯人である可能性があるというだけで、そう決めてしまうのはどうなのかなって思う。
それはともかくとして、本問から発展的な内容を取り出す際にもやはり選択肢①・②・④の内容が重要となる。
①;アメリカ合衆国の農業巨大企業を穀物メジャーというが、国境を越えた多国籍な展開をしており(例えば、第4問問3にはブラジルにおける穀物メジャーの活動が述べられている)、種子や肥料の開発や販売、農作物の流通や価格決定などの面において強い影響力を持つことで、世界の食料供給を支配している。例えば、アメリカ合衆国っていわゆる家庭菜園みたいのが無いんだけど(ほら、日本なら庭なんかで自宅で食べるように野菜をつくったりするでしょ)、これはなぜかというと、一般消費者に種子の販売は許されていないから。穀物メジャーという一握りの企業たちが農業生産を独占したいがために、小規模農園の存在すら許さないのだ。ボクは恐ろしい話だと思うけどね。
②;オーストラリアは旧イギリス植民地で、20世紀に入り独立したものの、イギリスとの経済関係は長く続いた。しかしイギリスの経済的衰退やEU加盟(1970年代)への動きなどによって、両者の関係は疎遠となり、例えばオーストラリアは1970年代には白豪政策を転換し、アジアからの移民を多く受け入れるようになった(ベトナム戦争からの難民の流入もこの時期)。さらに現在は日本や東南アジア、アメリカ合衆国など環太平洋地域との経済的なつながりを強め、選択肢の文章にもあるように、とくに農産物については日本を中心としたアジアへの輸出に力を入れている(アメリカ合衆国は農産物の輸入国ではないからね)。政府がTPPを推し進めることによって、将来的には我々の主穀である米も「メイド・イン・オーストラリア」になるかもしれない。大規模化を進めることでかなり低価格の米が生産できるはず。しかし、これについても思うのだが、そもそも乾燥大陸であり水が少ないオーストラリアに過度に米の供給を依存することは危険ではないのだろうか。日本人が「安さ」にのみ価値を置き続けることによって、将来のリスクは増大するとボクは思うのだが。
④;EUとその周辺諸国の間では共通農業政策が実施され、域内(*)の農産物の価格は一定である。しかし、この価格は多少高く設定されており、より大規模な農業を行っているアメリカ合衆国などと比べるとどうしても競争力に欠ける。もしアメリカ合衆国から安価な農産物がヨーロッパ市場に入ってきたら、ヨーロッパの農業は壊滅的なダメージを受ける!
これを防ぐための措置はいくつか行われており、その一つが「輸入課徴金」。安い農産物を輸入すると課徴金(罰金)が取られるということなのだ。そんな損失をかぶってまで輸入する人はおらず、結果としてヨーロッパ域内の農産物が重用されることになる。このような形で農業そして農家を徹底的に保護しているのだ。
ほら、世界って自由貿易によって国境を越えた物のやりとりが盛んに行われているってイメージがあるでしょ?あれ、実は全く逆なんだよね。ヨーロッパの中では貿易はさかんなんだけれど、その外側との貿易は全く活発ではない。ヨーロッパ全域を取り囲む壁があり、その外側の世界とはできるだけ交渉を持とうとしない。閉鎖的な空間となっているのだ。日本がTPPによって、海外からの農産物の輸入を自由化するだって?他の国は誰もそんなことはしていないよ。日本だけが騙されてしまって、結果として日本の農業が壊滅し、食料供給を外国に握られてしまうだけなんじゃないかってボクは懸念するんだが、これって考えすぎなのか?

(*)「共通農業政策はEU」って覚えている人が多いんじゃない?でも本問においてはEUではなく「ヨーロッパ」と示されていることが疑問に感じて人がいるかも。でもこれは正しいのです。もちろん共通農業政策はEUのものではあるけれど、実はその範囲は周辺国まで及んでおり、スイスなどEU外の国々も経済的なつながりの面ではEUと一体化していると考えていいよ。自由貿易も実現されているし、パスポートなしで通過できる国境線も多い。



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