たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう

2010年度地理B本試験[第4問]解説

2010年度地理B本試験[第4問]                                               

 

都市と村落、生活文化に関する大問。このジャンルも新課程以降やたら出題される。っていうか、新課程そのものがこういった作りになっているんだろうね。

 

<2010年度地理B本試験[第4問]問1>

 

[講評] 都市人口ネタは近年とくに目立つものの一つ。数年前まで全く出題されなかったのにね。このように、今までほとんど出題されなかったトピックが、一旦出題されると堰を切ったようにいきなり出題が多くなったりする。結局、問題を作っている人が前年あるいは前々年の問題を参考に作問しているってことだと思う。要注意ネタではあるね。

 

[解法] おもしろい問題だね。何の注釈もないけれど、都市人口っていうのは都市に住んでいる人口で、農村人口っていうのは農村に住んでいる人口っていうことだよね。国は都市と農村からできているので、人々は都市か農村のどちらかに住んでいる。都市人口と農村人口を合計すれば、その国の総人口になることをまずは意識しておこうか。

 

都市人口割合っていう考え方がある。その国の総人口のうち、どれぐらいの割合が都市に住んでいるかということ。「(都市人口)÷(総人口)」によって計算されるもので、これは一般に1人当たりGNIに比例する。都市人口割合が低い、すなわち農村人口割合が高い国というのは、相対的に農村に多くの人口が住んでいるのだから、第1次産業(農林水産業)に就いている人の割合が高いということになる。第1次産業は、第2次産業(工業など)や第3次産業(商業など)に比べ儲からない仕事なのだから、この業種に就いている人が相対的に多い国は、所得水準が低いということになり、つまり1人当たりGNIが低い。

逆に都市人口割合が高い、すなわち農村人口割合が低いというのは、第1次産業の就業している人の数が相対的に少ないことになる。第2次産業や第3次産業のような収益性の高い仕事に就いている人が相対的に多くなるので、所得水準は上昇する。1人当たりGNIが高くなるということだ。

というわけで、くどくどと説明してみましたが、理解できたかな。都市人口率と経済レベルっていうのはものすごく関係性があるものだから、絶対にその関係性を意識しないといけない。そしてこの関係性を、本問においてはヨーロッパとアフリカに当てはめるのだ。

ヨーロッパとアフリカを比較する。ヨーロッパは世界全体からみても1人当たりGNIが高い地域であるので、都市人口割合が高く、逆に農村人口割合は低い。一方、その反対でアフリカは世界で最も1人当たりGNIが低い大陸といっていい。都市人口割合は低く、農村人口割合は高い。

都市人口割合と農村人口割合の関係については、以上のことを鉄則として頭に入れておこう。

 

しかしこれだけでは問題は解けない。実はここからが大切なのだ。このグラフをみていると気づくことがあるのだが、それぞれの人口において増加率に高低差がある。1は50年間一貫して増加率が高い。2は増加率が高い時期もあったが、近年横ばいとなっている。3はとくに最近になって増加率が極めて高いものになっている。4はむしろ減少している。このような変化はどのようにして生じているのだろうか。おそらく大陸全体の人口増加の様子が、それぞれの都市人口と農村人口にも反映されているのだろう。

ここで大陸別の人口増加率を考える。

 

3%;アフリカ

2%;ラテンアメリカ・南アジア

1%;東アジア・アングロアメリカ・オセアニア

0%;ヨーロッパ・日本

 

である。アフリカは人口爆発ともいえる増加率の高さが維持され、逆にヨーロッパの人口は停滞している。このことから、グラフのうち、1と3をアフリカと考え、2と4をヨーロッパと考える。

そしてさらに先ほど考えた都市人口割合と農村人口割合のバランスを考える。アフリカでは「農村人口>都市人口」なので、1が農村人口、3が都市人口となる。ヨーロッパでは「都市人口>農村人口」なので、2が都市人口、4が農村人口。以上より、3が正解となる。

 

なお、ヨーロッパとアフリカの人口規模については、おおよそ同じと考えていい。いずれも2000年段階で8億人程度。しかし人口増加率が全然違う(ヨーロッパの年人口増加率は約0%であるのに対し、アフリカは約3%と高率)ので、現在はそれなりの差がついているはず。ヨーロッパは未だに8億人程度であるが、アフリカは10億人に達しようとしている。

本図において、ヨーロッパの人口は、ヨーロッパの都市人口である2の5億人強と同じく農村人口である4の2億人強を加えて、8億人程度であることを確かめる。同様に、アフリカの都市人口である1の約6.5億人と同じく農村人口である3の3億人強を加えて、10億人レベルであることを読み取る。

 

[最重要問題リンク] 「発展途上国では全体的に都市人口割合は低いものの、特定の大都市(プライメートシティ)のみが巨大化し、そこへと流入する人口は多い」というように頭に入れておこう。

少し古い問題、さらに地理Aの問題ということで恐縮なのだが、これを表に表した問題がある。

98年度地理A本試験第2問問4だが、問題が手に入りにくいと思うので、転載する。

 

発展途上国を中心として、都市への急激な人口集中が進む国が多い。次の表2は、インド、ケニア、フランス、南アフリカ共和国の4か国における都市人口に関するいくつかの指標を示したものである。ケニアに該当するものを、表2中の1~4のうちから一つ選べ。

 

表2

 

全人口に占める都市人口の割合

都市人口の年平均増加率

(1965~95年、%)

人口75万人以上の都市数

(1990年)

1965年、%

1995年、%

67.1

72.8

0.9

47.2

50.8

2.7

8.6

27.7

7.7

18.8

26.8

3.4

34

 

国を考える場合に重要となるのは「人口」と「1人当たりGNI」である。4か国中、人口規模が圧倒的に大きいのはインドで、その数が10億人を超える。このような巨大な人口を抱える国だからこそ、大都市の数も多いと考えて普通。4がインドとなる。

他の3つの国は人口はよくわからない。人口規模に特徴がある国でもなく、いずれの国も同じような人口規模だろう。

さて、ここから考えるのは経済規模。フランスのみ先進国で、他の2つは発展途上国だが、とくに1人当たりGNIについては「フランス>南アフリカ共和国>ケニア」という高低関係がはっきりしている。都市人口割合と1人当たりGNIは比例するので、この値が高い1がフランスとなる。

2と3は南アフリカ共和国とケニアのいずれかになるが、さらにここで考えるのは「発展途上国は特定の都市だけが巨大化する」というセオリー。国全体の経済規模が大きくないため、投資が特定の都市にのみ集中し、商工業がその都市でしか発達しない。農村で余剰となった人口が流入するのもそうした都市であり、首位都市(プライメートシティ)が明確に形成されることが、発展途上国の最大の特徴の一つとなる。

南アフリカ共和国とケニアを比較して、より「発展途上国」なのは、1人当たりGNIの低いケニアである。2と3で大都市が一つだけに限られているのは3である。発展途上国において、たった一つだけの首位都市が巨大化していく様子を考えよう。3がケニアである。

 

さらにこの表には興味深いデータがあるので、注目しよう。それが「都市人口の年平均増加率」である。ケニアの値は7.7%という極めて高い増加率となっている。たった一つの都市に、人口が急激な勢いで流入するのだ。

 

発展途上国における都市人口の特徴として、「首位都市が形成される」こと、「都市人口割合が低い」こと、「都市人口の年平均増加率が高い」ことの3つを意識しよう。

 

[今後の学習] 何気なくいろいろな要素が入った問題なので、整理して考えないといけない。とくにこの3つの要素を意識すること。1つ目は「都市人口割合は先進国で高く、発展途上国で高い」こと。2つ目は「発展途上国では、特定の大都市にのみ、投資が進み社会資本整備が行われる」こと。3つ目は「発展途上国の首位都市には、農村から多くの人口が流入し、人口増加率が極めて高い」こと。

正解は3であったが、これをもう一度確認しておこう。アフリカとヨーロッパを比較しているわけだが、これはすぐに「アフリカ=発展途上国」「ヨーロッパ=先進国」と置き換えることができるよね。つまり発展途上国と先進国との都市人口の違いに関する問題なのだ。

発展途上国は一般的にみて都市人口割合が低い。農村に住む人々が相対的に多く、農業に従事している人の割合が高いのだ。商業や工業の発展は顕著ではなく、都市生活者の絶対数は農村に比べ少ない。しかし問題となるのはその増え方。「発展途上国」とは良く言ったもので、まさに発展する過程にある国々なのだ。都市人口の絶対数は少ないものの、その増加率は高い。農村と都市との格差は大きく、農村から都市へと多くの人口が流入するのだ。

3のグラフを参照。最初の値は小さく(3千万人程度)、現在もさほど大きいものではない(約3億人)。しかしその増加率はどうだろうか。4つのグラフの中で最も激しい伸びをみせているのがまさに3のグラフではないか。大都市の数そのものが少なく、都市人口も小さい発展途上国。しかしそこに流入する人口の勢いは激しい。そんな状況をこのグラフから想像しよう。

 

<2010年度地理B本試験[第4問]問2>

 

[講評] 前年にもマイナーな都市を問う問題があったが、さすがにこれはそこまで難しくないかな。っていうか、そもそも都市そのものに関する知識が問われているわけでないし、取りつく島がない問題っていうわけでもない。

 

[解法] 都市が登場していることでかなりビビる。しかも去年のハーローとかボローニャとかいう問題がアホほど難しかったんで、そのトラウマがあったりして、顔が青ざめるんだわ、一瞬。でも、都市名以外に絶対に手がかりがあると信じよう。冷静に文章を読み込むことによって、解答をたぐり寄せよう。

こうした問題ではまず聞いたことがない都市を消す。ただ、本問についてはそこまで完全に消せる都市名がないんだわ。ヴァラナシにしても過去に登場暦がある。マナオスも、しばしば気候グラフが出ていたりする。決定的に容疑者から外していい候補がないのだ。悩む。

では逆に開き直ってしまえ。「都市名が問われるわけはない」と信じて「都市名を飛ばして文章を読む」のだ。

 

このような選択肢になる。

1 ガンジス川に面した宗教都市があり、巡礼に訪れた人々が川で沐浴している光景がみられる。

2 ミシシッピ川河口部に位置する港湾都市があり、メキシコ湾岸で採掘される石炭の積出港として重要である。

3 チャオプラヤ川の三角州(デルタ)に位置する首都である都市があり、果実やみやげ物を売る水上マーケットは観光地にもなっている。

4 アマゾン川中流に位置する河港都市があり、自由貿易地域に指定されたことにより、外国企業の誘致が進んでいる。

 

一つ一つ検討していこう。

まず4について。前半部分はどうだろうか。これは消去しにくい。アマゾン川は国際河川であるが、国際河川というのは「沿岸国の自由航行が認められている川」のこと。単純に、複数の国を流れている河川を国際河川というと勘違いしている人がいるけど注意するように。アマゾン川を航行している船舶は多いだろうから、「河港」があることは間違いないだろう。何度もいうけれど、都市名にはこだわっていないので、マナオスという都市があるかどうかはこのさい何の関係もない。単に河港があることが考えられたら、それは正文であるとしていい。

さらに後半部分に移る。「自由貿易地域」という言葉がある。これってどういう意味?「自由貿易」っていうのは関税がかけられず商品の輸出量ができるということ。自由貿易がなされている地域ってことだろう。まぁ、こういうことが行われていたとしても別におかしくはないだろう。これは無視しましょう。さらに「外国企業の誘致」とある。これはすごくおいしい言葉。1人当たりGNIに関するセオリーを考えよう。「1人当たりGNIの高い国から低い国へと工場が進出する」というセオリー。このことから「外国企業の誘致」が行われているのは経済レベルの低い発展途上国ということになる。ブラジルはこの発展途上国に該当する。「外国企業の誘致」がアマゾン川中流の都市で行われていたとしても矛盾はない。4は正である。

さらに1について。これがなかなか厄介なのだが、とりあえず宗教はある程度覚える部分が多いので諦めてください(笑)。ここでのポイントは「インド=ヒンドゥー教」ということ。ガンジス川はヒマラヤ山脈に水源を発し、インド北部を東流し、やがてバングラデシュからベンガル湾に注ぐ。要するに、主にインドを流れる川と解釈してしまっていい。インドの主要宗教はヒンドゥー教である(そもそも「ヒンドゥー」とは「インドの」という意味)。ヒンドゥー教の教義においては、ガンジス川を聖なる川ととらえて、沐浴が行われるということがある。ヴァラナシという都市が正解はどうかは知らないが、それを除いて読んだ場合、「インド=ヒンドゥー教=ガンジス川=沐浴」という組合せには何の問題もない。前述のように都市名が違っている可能性はあり得ないと思っていい。これも正文である。

さらに3について。バンコクはタイの首都。チャオプラヤ川もタイの川であり、「バンコク=チャオプラヤ川」というセットは正しいと思っていい。ただし、このようなマイナーな河川名が問われることはないので、チャオプラヤ川の正誤については無視していいと思う。よってここで注目するべきワードはたった一つ、「三角州(デルタ」である。これは重要なワードと思っていい。三角州には対照的な語句として「三角江(エスチュアリー)」という言葉があり、この正誤が問われる可能性は十分にある。三角江がみられる代表的な河川は、イギリスのテムズ川、ドイツのエルベ川、カナダのセントローレンス川、アルゼンチンのラプラタ川などが代表的なところ。それに対し、三角州の例としてはベトナムのメコン川、エジプトのナイル川、オランダのライン川、さらに本問題でも取り上げられているガンジス川とミシシッピ川などがある。さて、チャオプラヤ川はどちらだろうか。チャオプラヤ川沿いには広く沖積平野が広がっており、豊かな米作地帯となっていることは知っておこう。タイは米の輸出量が世界1位であることからわかるように、人口に対する米の生産量が多い「米作国」である。沖積平野とは、河川の堆積によって形成された平坦な地形で、扇状地や氾濫原(自然堤防帯)、そして三角州を含む。「タイ=米作=沖積平野=デルタ=チャオプラヤ川」というつながりは確実。3も正文である。

以上、残ったのは2である。彼が「犯人」であることを証明していこう。何度も言うが、ニュ-オーリンズという都市名については「正しい」と決めつけてしまっていい。残りの中で誤っているものを探すのだ。まず「ミシシッピ川」。米国で最も重要な河川は外来河川のコロラド川である。コロラド川については絶対に知らないといけない。でもミシシッピ川についてはさほど重要でないし、この河川が問われることはまずないと思っていい。とりあえず「ミシシッピ川=三角州」は知っておいてもいいし、ミシシッピ川の河口近くに河港都市であるニューオーリンズが位置していることも知っておいてもいい。でもそれは重要ではない。ここで考える必要はない。

そう、ニューオーリンズもミシシッピ川も全然どうでもいいのだ。この選択肢が犯人である証拠は、文章の後半の「都市」でも「河川」でもないところにあるのだ。キーワードは「メキシコ湾岸」と「石炭」である。

米国と石炭に関する問題は09B追第3問問2でも登場している。米国は世界2位の石炭産出国であり、自給できていると考えていい(石炭の主要な輸入国ではない)。このことから「石炭の積出港」という言葉に何ら不整合な点はないように思える。石炭を輸出している港があるのかもしれない。

しかしここで非常に気になるのが「メキシコ湾岸」なのだ。米国の石炭産出地ってどこなんだ?石炭は一般的に古期造山帯において多く埋蔵されている資源である。米国で古期造山帯といえば国土東部のアパラチア山脈である。(現在は衰退しているとはいえ)米国を代表する鉄鋼都市であるピッツバーグもこのアパラチア山脈に沿う炭田上に立地したものである。「米国=石炭=古期造山帯=アパラチア山脈」という関係性を理解しよう。

メキシコ湾岸はむしろ「油田」地帯である!米国本土最大の面積を誇るテキサス州については「綿花・肉牛・原油」の生産・飼育においていずれも全米1位を誇っている。テキサス州の油田はいくつかあるものの、君たちが絶対に知っておくべきはメキシコ湾岸である。同じくメキシコ湾に沿うメキシコの東部沿岸地域も重要な油田地帯であると知っておいてもいい(メキシコの主要輸出品目の一つに原油がある)。「テキサス州=メキシコ湾岸=原油」と頭に入れておこう。メキシコ湾岸で石炭はありえない。この選択肢が犯人である証拠はズバリ「石炭」にあったのだ。

 

[最重要問題リンク] メキシコ湾岸の油田地帯は絶対に意識すること。2002年度地理B本試験第2問と問5参照。

米国の工業種を特定する問題であるが、ここではメキシコ湾岸に注目しよう。▲が多くみられるが、これが「石油精製」である。メキシコ湾岸は北米最大の油田地帯の一つであり、石油精製業が立地している。なお、この部分の▲はテキサス州に多くみられるが、一つだけその隣の「L」の形をした州にも分布している。これがルイジアナ州であり、ニュ-オーリンズである。

 

[今後の学習] ニュ-オーリンズについては、1999年度地理B本試験第2問問4選択肢3に登場しているように、「黒人(アフリカ系)」がキーワードになりやすい都市で、今回のように工業種が問われたケースはレア。綿花地帯に接し、綿花積出港として発展したことは知っておいてもいいかな。っていうか、実はむしろ「黒人奴隷の積み入れ港」であることの方が歴史的意味は大きいとは思うんだけどね。

それよりもやはり米国のエネルギー事情っていうのはスゴく大切だと思う。米国は世界最大の原油輸入国であるけれど、それは原油資源に恵まれないというわけではなく、その消費量が圧倒的に大きいので、足りない分をがんばって輸入しないといけないから。現に米国は世界3位の原油産出国である。主な油田は、アラスカ州・テキサス州・カリフォルニア州に分布しているが(面積上位3州が原油産出上位3州というのはもちろん偶然です)、とくに問われる可能性が高いのがテキサス州の南部、メキシコ湾岸地域。ルイジアナ州からテキサス州、さらにメキシコに至る一帯が、世界的な油田地帯であることをぜひとも知っておこう。

っていうかこの問題っておもしろいよね。問題そのものが「都市と河川との関係」についてのものなのに、結局問われているのは「メキシコ湾」についてだったりするんだわ。都市でも河川でもない。このように問題の表面的なテーマ(ここでは都市や河川)と、本当のテーマ(ここではメキシコ湾岸油田)が食い違っていることがしばしばある。センター試験にダマされるなよ。

 

<2010年度地理B本試験[第4問]問3>

 

[講評] 前回も日本とヨーロッパの村落というネタが出題されたよね。こんなマイナーな話題が2年連続ってちょっとびっくりなんだけど、でもこのように同じネタが連続して出題されるっていうのもまたセンター地理の特徴の一つなんだな。

でも内容は決して同じわけではないので、そこんとこはちょっと難儀かもしれない。また正文判定問題っていうのもしんどくて、要するに3つの文章が誤文であることを指摘しないといけない。3倍疲れるっていうわけだ。

とはいえ、もちろん簡単な問題とは言わないけれど、それぞれの文章の「おかしな点」っていうのは論理的に手順を踏んで考えていけば、絶対に指摘できるもの。慎重さと緻密な思考を持って、論理的な思考で取り組もう。非常に優れた問題です。

 

[解法] 問題文をじっくり読み解くのだ。粗い縄の繊維一つ一つをほぐしていくように、丁寧に、執拗に。とくにこういった「最も適当なもの」を選ぶ正文判定問題は、「適当でないもの」を選ぶ誤文判定問題に比べ、難しい。3つの文章が誤文であることを指摘しないといけないので、3倍困難になってしまうのだ。それなりの覚悟を決めて解きましょう。

では、わかりやすいところから行きましょう。選択肢3に注目。「日本の多くの村落では」「人口の増加がみられる」なんてことがありえるか!?日本の人口増減については、大都市圏で増加し、非大都市圏で減少が絶対的なセオリー。非大都市圏であっても、地方中枢都市のようなその地域で中心的な役割を果たすような都市においては増加がみられるが、それ以外の地方では確実に減少している。「村落」の多くはそういった「地方」に位置しているのであり、人口は減少しているはず。3は誤文です。除去しましょう。

さらに4について。産業構造の高度化のセオリーを適用しましょう。第1次産業、第2次産業、第3次産業という区分があるが、これは要するに「金がもうかる度合い」のこと。第1次産業が最も賃金水準の低い仕事、第2次産業がその次、第3次産業が最も高い仕事っていうイメージを持っておこう。そして人々は、第1次産業から第2次産業へ、さらに第3次産業へと仕事を変えていくのだ。このベクトルの向きは絶対的。だって、わざわざ儲からない仕事をしたい人っていないでしょ。「新規就農者」は増加しません。経済原則から考えておかしい。これも除去。

さらに選択肢1に戻る。「散村」っていうキーワードが登場しているわけだ。集落については、計画的な集落について君たちは知っておくべきで、以下のように整理しておく。

 

古代(~奈良時代)の集落・・・条里集落 「条」「里」の地名 九州から東北地方南部まで。主に奈良盆地 防御機能が高い集村形態(塊村)

中世(平安~戦国)・・・戦乱の時期で計画的な集落な見られなかった。この時期に成立した集落は集村形態。防御機能が高い。

近世(江戸)・・・新田集落 「新田」「新開」などの地名 乏水地(扇状地の扇端、台地の上など)や干拓地 平和な時代であり、散村が一般的。散村には火災の類焼を防いだり、自宅と耕地の間の距離が近いなど、集村にはないメリットがある。

近代(明治)・・・屯田兵集落 「北一号」「西二線」など記号的な名称がみられる 北海道の開拓村だが、米国中西部の開発方式であるタウンシップ制を参考にしている 散村が一般的

 

なお、新田集落や屯田兵集落には、交通の便がいい道路沿いに家屋が立ち並ぶ路村形態のものもしばしばみられる。家屋の背後に耕地が短冊状に並ぶ。2009年度地理B本試験第4問問1図1B参照。

 

散村については、新田集落と屯田兵集落に特有のものと考えてほしい。つまり近世(江戸)と近代(明治)の計画的集落。本選択肢についてはどうだろうか。時期は「第二次世界大戦後」である。たしかに文章はそれっぽいし、どこにも否定する部分はない。でもやっぱりセンター地理で「散村」といったら新田集落と屯田兵集落であり、「第二次世界大戦後」ではないのだ。選択肢1も除去する。

 

残った2が正解。正直言ってよくわからない。日本の戦国時代以前の集落が集村となるのと同じ理由である。日本でもヨーロッパでも、戦争などでヤバい時代には、人々は棟を寄せ集めてディフェンスを固めることによって日々の生活を営んでいたのだろうか。

 

[最重要問題リンク] 集村と散村のイメージが大切となる。とくに散村については特殊なものであるという認識を持っておこう。

その散村の具体的イメージをとらえた問題に2009年度地理B本試験第4問問1がある。

Aは典型的な散村。日本では新田集落や屯田兵集落にしばしばみられるもので、家屋が分散して配置されている様子を目で読み取ろう。家屋と耕地の間の距離が近いというメリットがあり、また火災の類焼が防ぎやすいという利点もある。逆に防御機能は低いが、比較的平和な時代だったので、外敵に備える必要がそもそもないのだ。屯田兵集落が参考とした米国のタウンシップ制もこの形。

Bは路村というもの。散村か集村かと言われれば集村になってしまうのだが、性格的には散村的な傾向がある。家屋は道路に沿って居並んでいるが、背後に短冊状の耕地を有し、家屋と耕地との間の距離は散村同様に近いものとなっている。日本では一部の新田集落にみられる形態であるが、ヨーロッパの林地村という開拓村もこの形である。

 

[今後の学習] ちょっととらえどころのない問題であることは確かなんだよね。ポイントがわかりにくい。だから最低限のこととして、日本の計画的集落における集村と散村の形式の違いだけ確実に押さえておこう。原則として「条里集落が集村、新田集落・屯田兵集落が散村」。

例えば、ベタな問題パターンとしては「条里集落は散村形態である」なんていう選択肢が登場するかもしれない。それを速攻で×にできるかどうか。

 

<2010年度地理B本試験[第4問]問4>

 

[講評] これ、好きだな。ホント、今回のセンター試験は興味深い問題が多い。ボクが気に入ったのは、この問題において「古い」ニュータウンが取り上げられている点。ニュ-タウンのうち、高度経済成長期など古い時代に設けられたものは、住民構成がそのまま高齢化し、ちょっとした問題になっているところも多い。1970年代に20~30代で入居した若い夫婦たちは、2000年代(30年後)には50~60代と歳を重ね、さらにいつしか住民の多くが老境に差し掛かる。いわば「オールドタウン」的な状況を考えるべき時期に来ている訳だ、我々の社会も、そしてセンター試験も。

その「オールドタウン」が主役となった問題です。今後のポイントともなりそうであるし、その辺りをしっかり見ていこう。

 

[解法] まず最初のポイント。問題文の筆頭に書かれているキーワード。「日本のある大都市に位置する」とある。この場合の大都市っていうのは、郊外も含めた大都市圏と考えた方がベターだろうね。「住宅団地」なんてのも含まれているし。しかしその住宅団地にしても、決して新しいものではない。統計年次が2005年なので、30年前っていうのは1970年代中頃だ。高度経済成長末期の日本において建設された住宅団地なのだ。その時代の建物が、街が、そして住民が、現在どのようなものになっているかは想像しないといけない。

選択肢を切っていこうか。

さらにADの文章を読んでいく。

 

A ウォーターフロントに近年高層マンションが多数建設された地区。

B 古くからの臨海工業地区に隣接する地区。

C 大規模な大学が立地する地区。

D 約30年前に開発された住宅団地からなる地区。

 

ボクはすごく気になったキーワードは、Aの「近年」、Bの「古くから」、Dの「30年前」っていうやつなのだ。どう?明らかに比較対象できるキーワードなのだ。問題を解く時にはこういった

「比較」を意識して考えていこうよ。やみくもに難しい言葉ばかりに注目しても仕方ない。

でね、ボクは思うわけですよ。まず新しいのから決めてしまおう!1から4の中で「新しい」のはどれかっていうことだ。

あ、ちょっと待ってください。すごくわかりやすいのが一つあるんで、それから決めてしまおう。それは20~24歳が飛び抜けた1のグラフ。女子も多いっちゃあ多いけど、男子がめちゃ多いよね。こういった変わった形になるのはそれなりの理由がある。もちろんキミたちは気づいているよね。これが「大学」なのだ。大学生の年代だけが際立って高い割合を占める。男子がとくに多いのは理系の大学があるからでしょうか。ボクは文系の外国語学部の出身なんで女子ばっかりの環境でしたが、もちろんこうした男子が多い状況も不自然ではないよね。1がCに該当します。

では、話を元に戻して、選択肢を2~4に絞ります。さらに分かりやすいものを考える。ここでは「臨海工業地区に隣接する地区」が気になるんだわ。もちろん「古くから」もポイントにはなっているんだろうけれど、それはそれとして(そもそも「新しい臨海工業地区」なんていうものは理論的にありえないんだが、その点は無視しましょう)、「工業」が強調されている点は注目してもいいと思う。工業地域に当然多い性別そして年齢層は何だろう。それはやっぱり「男性」であるだろうし、いわゆる働き盛りの「30代」ぐらいの年代が多いんじゃないかって想像できる。この条件に当てはまるのはどれだ?30代の男性が明らかに多いグラフがあるよね。それが3。どうだろう。これをBと考えていいと思う。30代だけでなく、「50~54」の年代も多くなっていて、結構な年齢やのにがんばってるおっちゃんらっているんやなぁって思ったりもするけど、でも他のグラフでもこの年代って多いんだよね、実は。ベビーブームか何やらでそもそもの人数が多かった年代なんだろうね。そんな気がします。

さあ、ここからだ。容疑者は2人にしぼられた。「近年」と「約30年前」の勝負だ。いわゆるニュータウンならば、新婚さんみたいな20代や30代の若い夫婦を中心とした世帯が入居者の中心になるだろう。でもそれが次第に老いていく。30年前に20代や30代でこのニュータウンにやって来た人々は、今は50代そして60代の老境に差し掛かる。ニュータウンが「オールド」タウンになっていき、人々も齢を重ねていくのだ。

この「50代60代」っていうキーワードに注目すれば、自ずと一つのグラフに目が行くようになる。それが4である。20代の年齢層にも「ふくらみ」は確認できるが、取り立てて多数派というわけでもない。決定的なのは「50~54」から「65~69」までの人数の多さなのだ。30年前に若者だった人々が、今はこの年代に達しているということなのだろう。Dについては4を正解とする。

残った2が「新しい」住宅地域のグラフとなる。どうかな。そういった雰囲気は感じられるかな。入居者の多くは若い世代である。いや、30代後半からの世代が多いからそこまで若くないかな(笑)。まぁそれでも4のグラフに比べれば明らかに若いちゃあ若いわね。それに意外と子供の数も多いでしょ?「0~4」の年代が4

 

[最重要リンク] 文章をしっかり読んで図を判定するというパターンで真っ先に思いついたのは昨年のロサンゼルスの問題。同じ人が作ったんじゃないかっていうぐらい雰囲気が似ているとボクは思うのですが、みなさんはどう思いますか。2009年度地理B本試験第4問問4参照。これも図を用いながらも、徹底して文章のキーワードにこだわって解く問題。かなりグッド。

アジア系のキーワードは「郊外」、黒人は「縮小」、ヒスパニックは「拡大」。白人がおもしろくて「人口密度の低い戸建て住宅地区に多く居住」がキーワードなんだけど、意味わかる?普通人口密度が低かったら人口も少ないじゃない?「人口=人口密度×面積」で、人口は人口密度に比例する。でもここでは「多く居住」なんだわ。これってちょっと妙だったりする。

いやいや、ちょっと待てよ。ここからがすごくおもしろい。人口密度が小さいのに、人口が多いっていう状態は、あり得なくはないよね。そう、「面積」がたいへん大きい場合。人口密度が低くとも、面積がとても大きければ、全体の人口は多くなる。そう、つまり分かったかな?白人については「人口密度が低い」「人口が多い」ということで、「面積が広い」ことが実は隠れキーワードだったりするのだ。

以上、4つの図から「都心部」「縮小」「拡大」「面積が広い」の4つのキャラクターをあぶり出せばいい。どう?できるでしょ?そしてこの問題が実にテクニカルな問題かわかるでしょ?センターでこんなにおもしろいのだよ。

 

[今後の学習] こうした問題が出題された場合、これが思考問題であるということをまず読み取らないといけない。そうしたニュアンスというか雰囲気というかそういったものを感じるトレーニングは必要だと思うし、センター地理ってそうした問題がスゴく多い。文章をしっかり読み、まずは思考する。その上で、足りない部分を自分が持っている知識で補うのだ。センター試験における思考問題の重要性を意識しよう。

 

<2010年度地理B本試験[第4問]問5>

 

[講評] ちょっとおもしろい。肉類の消費は少ないが、乳製品を多く摂取するというインド人の食生活がちょこちょこテーマとなりつつあるが、その雰囲気を持っている。もっとも、本問ではインドは無視されるんやけどね(笑)。選択肢1で「経済水準」が取り上げられ、選択肢3では宗教ネタ、選択肢4ではホイットルセー農業区分の話題と、なかなか一つ一つの選択肢も凝っているなぁ。模試で作ってみたいタイプの問題ですね。

 

[解法] 食文化ネタ、宗教ネタ、農業ネタが全部含まれていておもしろい。こうした問題は。図をじっくり見る前に、選択肢の文章を読んでしまって、ある程度検討を付けてから考えた方がいい。

というわけで、文章を一読します。「宗教的な理由から家禽の肉の消費がほとんどみられず」っていうのがやっぱり気になるわけだ。宗教と肉の関係は二つだけ知っておけばいい。一つはヒンドゥー教徒が牛肉を食さないこと、もう一つはイスラム教徒が豚肉を食さないこと(*)。牛と豚に対してはこのような戒律が存在しているわけだが、それに対し、家禽ってどうなんだろう。家禽とは、問題に注釈があるように「鶏などの飼育された鳥類」だよね。これについて食してはいけないなんていう戒律は聞いたことがない。もしかしたらマイナーな宗教の中にはそういったものもあるのかもしれないが、でもセンターで登場する宗教っていうのは、世界3大宗教である仏教・キリスト教・イスラム教、さらに2つの民族宗教であるユダヤ教とヒンドゥー教だけ。マイナー宗教は話題とされない。というわけで、この選択肢3をNGとし、誤文判定問題であるので、これを解答とする。

一応確認のために図3も参照する。西アジアの範囲も正確にとらえておきましょう。トルコ・イラン・アラブ諸国(イラクやサウジアラビア)・イスラエルなどが西アジアに該当する。トルコは「100キロカロリー未満」、イランは「羊・ヤギの肉」、イラクは「データなし」、サウジアラビアは「家禽の肉」、イスラエルは小さすぎて見えないや。

ん!?っていうか、もう一回サウジを見直すぞ。しっかり「家禽の肉」になってるやん。そもそも「西アジアで家禽の肉の消費量がほとんどみられず」っていう部分そのものが大間違いだったっていうわけだ。何ちゅうオチだ(笑)。

他の選択肢もおもしろいので検討しましょう。

1;たとえばナイジェリアはキャッサバっていうイモの仲間の生産が世界1位だけど、食事の中心がほとんどイモ類なんだよね。高温多雨で不衛生な自然環境下の国っていうのはそもそも動物の肉を食することが少ない。伝統的に植物性食物中心である、このナイジェリアのパターンを知っておいてもいいだろう。ところで選択肢の文章には「経済水準が低く」とも書いてあるけど、これについても「正しい」と認識しておいてください。やはり家畜の肉は価格が高く、経済レベルの低い国ではあまり購入できない。日本なんかでは野菜なども値段が高いイメージがあるけれど、それは野菜は(コストの高い)国内産が主で、肉は(コストの安い)輸入ものがメインっていう事情もあります。やっぱり「命」を食するということは、安いことではないよ。

2;これおもしろいよね。アングロアメリカってたしかにビーフのイメージが強いんですが、チキンの方が多いんやな。ボクも知らんかったし、キミらがどうのこうの考える選択肢でもないね。

4;混合農業の行われている代表的なヨーロッパの国としてドイツとポーランドを考えよう。飼料作物としてジャガイモとライ麦を輪作し、豚を飼育する。豚はその排泄物を肥料として利用するという目的も強いが、もちろん肉としても食されている。ヨーロッパの混合農業=(ジャガイモ+ライ麦)×豚 っていう感じです。

(*)言うまでもないけれど、この2つの「禁忌」は全く意味が違っているよね。インドでは牛は使役用や搾乳用の家畜として非常に貴重であるため、殺してしまって肉にしたらもったいないから、牛肉は食べられない。イスラム地域では、飼育するのにエサが大量に必要となる豚は、乾燥地域には適さない家畜であるので、豚はそもそも存在しない。

 

[最重要問題リンク] 直接的な関連問題はこれだね。2002年度地理B本試験第3問問7参照。イスラム国家であるサウジアラビアがXに該当するのだが、肉類の消費は多い。イスラム教の教義では豚肉を食することが禁じられているだけであって、羊や牛、そして本問にあるように鶏の肉などはむしろさかんに食されているのだ。

Zがインドなのだが、むしろこちらに注目してほしい。インドでは牛肉を食べることが許されていないことは有名だが、これを牛だけに限定してしまうと思わぬ勘違いとなる。インドではそもそも肉そのものを食する習慣がないのだ。インド人の伝統的な生活は菜食主義である。そのことを絶対に意識しておく。

 

[今後の学習] 宗教と食物の禁忌の関係っていうのはたしかに出題されやすい。イスラム教が豚肉がダメ、ヒンドゥー教が牛肉がダメっていうのはベタに覚えておくべきことだろう。

でもこの2つはちょっと意味合いが違っていて、センター地理ではそこのところもツッコンで問うてくるからちょっとヤバい。気をつけろ!

イスラム教地域は豚肉を食べないだけで、他の肉は多く食べられているのに対し、インドでは肉そのものが食べられていない。

イスラム教地域ではそもそも豚そのものが飼育されていないのに対し、インドではむしろ世界的な牛の飼育国となっている。

両者の違いを確実に意識しておくこと!

 

<2010年度地理B本試験[第4問]問6>

 

[講評] 最初に解いた時はあっさり解いてしまったんだが、よく考えてみると、これ、おかしいぞ!?全く意味がわからない。解答不能の問題なんじゃないか?意味がわからん。とりあえず、ボクがアッサリと解いてしまった理由や、問題の不整合な点、さらにはボクなりの解釈を書いてみるんで、おそらく解法にも何もなっていないとは思いますが、読んでみてください。

 

[解法] 最初にこの問題見て、先に選択肢の方の文章を読んで、一発で2を正解にした。だって、たしかOECD諸国で一番労働時間が長いのは米国じゃなかったかな。労働者の権利意識が強いので、日本みたいにサービス残業っていうことがないから、正確に働いた分がそのまま労働時間になるんだよね。アメリカ社会って世知辛いな~。ちゅうことで韓国が最長なわけはないから、すぐさま秒殺で2を正解(誤文)としました。

ただ、後から気づいたんだよね。これ、おかしいよね。この考え方間違ってるやん。だって、図をみたら韓国の労働時間が最大になってるもの。米国の方が大きいっていうのはボクの勘違いだったわけだ。偶然当たっただけで何も偉くない。ヤバいぜ、がっちり分析していこう。

でもボクはやっぱり2が誤りだと思うんだよ。この文章のどこに「ほころび」があるのかじっくりと目をこらして探してみよう。

 

語句の一つ一つを検討する。まず「1980年代の経済発展」について。これは妥当。韓国の高度経済成長の時期は1980年代。1970年代から始まったセマウル(新農村)運動によって農業の合理化が図られ、農業生産が上昇した。農業の労働生産性も高まったのだが、それによって余剰の労働力の当然生じる。しかしその余剰労働力が都市へと流入し、彼らが工業や商業に従事することによって、1980年代にピークを迎える韓国の高度経済成長が成し遂げられた。

この流れだけはっきりと意識しておく。1960年代までの韓国は人々は労働生産性の低い農業に従事し、1970年代にそれが改善され、1980年代には第1次産業就業人口割合の低下と第2次産業・第3次産業就業人口割合の上昇が生じた。経済レベル(1人当たりGNI)も急成長を果たした。

さぁ、これを労働時間の観点から解析していこう。1960年代は経済レベルは低かったよね。でもそれはみんなが働いていなかった(つまり労働時間が短かった)わけではない。みんなが「儲からない仕事」である第1次産業に主に就いていたからだ。たくさんの時間働いても、それが農業みたいな収益性の低い仕事ならば、結局経済レベルは低いままだよね。それが1970年代以降変化していく。農作業の合理化や機械の使用などによって農作業の時間は短縮化される。農業にそれほどの労力を裂かなくても十分な農作物の収穫は期待でき、少ない人数、少ない時間で農業が行われるようになる。余った労働力は都市へと流れ、yほり「儲かる仕事」である工業や商業に就くようになる。韓国の経済レベルはこの時期に急激な上昇カーブを描くのだが、この理由って何だと思う?それは「労働時間が長くなった」からじゃないんだよ。みんなが「より儲かる仕事」に就き始めたからなのだ。10時間農業だけならば1万円しか稼げないかもしれないが、同じ時間工業や商業に費やしたとしたら2万円も3万円も稼げるってことだ。つまり経済成長っていうのは「時間」じゃないんだよ。「効率性」っていうことなのだ。要領よく短時間で金を稼ぐヤツが一番金持ちということ。

このことをふまえて選択肢2をみる。どうだろうか?「経済発展にともなって労働時間が増加」っあるよね。要するに「労働時間が増えたら経済発展する」っていうこと。経済発展というのは1人当たりGNIが上昇するということなので、これをさらに言い換えたら「労働時間が増加したら、1人当たりGNIも上昇する」ということ。どうだ?これは正しいか?

そう、これは間違っているのだ。1人当たりGNIを決定するのは、時間ではなく、第1次産業とか第2次産業、第3次産業といった仕事の中身なのだ。経済発展と労働時間の間に関係性はない。韓国はたしかに労働時間が長い国であるが、これはこの国が経済発展を経験したからではない。理由はわからないが、そもそも韓国人は勤勉(あるいは要領が悪い?)な国民性を持っているってことなんじゃないか。

以上、ごちゃごちゃ書いたけどわかってくれたかな。労働時間と経済成長の間に関係性はない。もしこの問題で、1980年代以前と以降の韓国の労働時間の変化と経済成長の度合いを示すグラフでもあれば、それは考慮する問題なのだが、そのようなデータが提示されていない以上、韓国の労働時間の長さが経済発展によるものかどうかはわからない。むしろセマウル運動以前の方が労働生産性が低かったのだから、もっと労働時間が長かった可能性があるぞ。どう思う?ボクはそんな気がしているんだが。

さらに、もっと言えば、結局「労働時間と1人当たりGNIの間には何の関係もない」ことは、この図4を見れば実は明らかなんだよね。1人当たりGNIが最高であるのに、労働時間は1600時間というように決して短くはない国もある。オランダのように1人当たりGNIは日本などと同レベルなのに、労働時間が極めて短い国もある。日本とポーランドを比べれば、1人当たりGNIの高い日本の方が労働時間が短いが、韓国とポーランドを比べれば、1人当たりGNIが高い韓国の方が労働時間が長い。要するに、労働時間については、選択肢1・3・4にあるようにワークシェアリングや週休二日制など他の社会制度的な要素の影響が強いということになる。これって納得でしょ?

なお選択肢4についても考えてみようか。ポーランドは旧社会主義国であり、経済レベルは西ヨーロッパの国に比べて低い。工場などの設備も旧式のものであるだろう。完全に機械化がなされていない場合もあり、もしかして労働者1人1人の手作業に頼っている部分もあるかもしれない。たしかに「労働生産性が低い」といえるだろう。こうした国においては、西ヨーロッパではボタン一つで全自動でできる作業を労働者がコツコツをやらないといけないのだから、まさに「労働時間が長く」なるのは当然のことだろう。この選択肢が言わんとしているのはそういったことであり、君たちはかつて社会主義地域であった東ヨーロッパ諸国の特徴を認識しておかないといけない。

 

[最重要リンク] 韓国の1980年代ってものすごく重要。もっとも、本問の場合は「1980年代=韓国高度経済成長」を知っていることで逆に選択肢2を盲目的に正文にしてしまう可能性もあるわけで、ちょっと厄介ではあるんだけどね(苦笑)。とはいえ、やはり韓国の急激な変化っていうのは超重要アイテムなのでしっかり頭に入れておこう。

1980年代の韓国の都市人口割合の急激な変化を扱った問題もあるけれど、ここはぜひ産業構造が変化した様子を確認しておこう。2006年度地理B本試験第6問問5参照。三角グラフを用いて、第1次・第2次・第3次産業就業人口割合が変化した様子を示しているが、韓国の数値を読み取ってほしい。

1982年が「第1次産業:30%、第2次産業:30%、第3次産業:40%」であるのに対し、2000年が「第1次産業:10%、第2次産業:30%、第3次産業:60%」となっている。1980年代を中心としたこの時期に、農村から都市への大きな人口流動が生じ、第1次産業中心の国から第2次・第3次産業中心の国へと変化していった様子が伺える。

 

[今後の学習] まぁ、解説の方では韓国のセマウル運動から高度経済成長への流れを強調したわけだが、この問題自体はそれだけのものではないんだよね。っていうか、ぶっちゃけ解答不可。どうしたって、まともに考えれば考えるほど、解答から遠ざかってしまうのだ。

そう、「まともに考えれば」なのだ。ボクなんかもう全くわからないから、あえてこう断言してしまうよ。問題を作っている側っていうのは、正文である選択肢に断言口調っていうのは使いたくないわけ。「絶対にこうである」なんて言い切ってしまって、もしかして重箱の隅をつつくような問題点が見つかってしまったら、カバーしきれないでしょ。逆に正文ならば、できるだけあいまいな表現を好んで使おうとするよ、人間心理として。どこか「ハンドルの遊び」みたいなところを作っておいて、いざとなれば、それを言い訳にする。必ずしもそうじゃないっていうニュアンスを放り込んでおけば、後から何とか言い逃れはできる。

そういう観点からすると、この4つの選択肢中で最も「正文らしくない」文っていうのは、2になるわけだ。1や4の「一つとなっている」っていうのは何とも弱気であいまいな感じの言葉遣いじゃない?もしかしたら間違っているかもしれないけど、ほとんど当たっているでしょ、みたいな感じで。選択肢3にはそういう言い方がなく、普通に言い切っているよね。この違いは把握しておこう。そしてその選択肢3よりさらにはっきりと断言している部分が含まれているのが選択肢2である。ここには「最も」という強い言い方が含まれている。どうだ!このニュアンスの違い!

いや、まぁたしかに図4をみれば、その通り、韓国が「最も」長い国なんだけどね。だから本来ここはツッコむ場所でもない。っていうか、この部分は解答とは関係ないところなので、本当にどうでもいいところなのだ。

でも、でもなんだよ。この強い言い方を含む選択肢2が解答であることは間違いないんだよ。強い言い方を含む文が誤文であることには間違いないのだよ。どうなんだよ、これって。

もちろんこんなのを真に受けていたらダメだよ。でも、答えがわからなくてどうしようもない時ってあるじゃない?その時には、最後の、本当に最後の手段で、「強い断言口調を含む文は誤文の可能性が高い」というセオリーに乗っかってしまっていいと思う。どうせ、4択の問題だし、カンに頼って正解を得るのも決して悪いことじゃない。断言口調が誤文で使用されている例として本問があり、それを未来の「無理問」に適用するのは、むしろ賢者の考えだと思う。

 

 

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