2019年地理B追試験[第1問]解説

2019年地理B追試験第1問

 

毎回恒例最初の大問は自然環境に関するもの。ただ、こちらも毎回恒例難易度が高いんだよなぁ。僕は第1問は後回しにしますが、そういった解く順番も考えてみて欲しいなと思っています。

 

<2019年地理B追試験第1問問1>

 

[インプレッション]地形に関す流問題で、非常にオーソドックスな印象。大地形に関する話題が中心になっているようだ。ただ、大地形についてはある程度「丸暗記」が必要であるだけに、苦手としている受験生も多いんじゃないかな。

 

[解法]4つの地域の地形が問われている。Aはアフリカ中央部。コンゴ盆地。Bはシベリア西部。Bの北西にみられる北極海に面する細長い形状の島があるよね。この島を東経60°の経線が通っており、同じ経線上にはウラル山脈が南北に走行している。ウラル山脈はヨーロッパとアジアとの境界となる山地であり、これより東側がシベリア。Bの地点がシベリアに含まれるのはわかるよね。

Dはメキシコの中央部。メキシコ中部にはメキシコシティという巨大な都市があることを知っているかな。メキシコシティは高原の盆地に位置する。メキシコ中央部が標高の高い地形であることがわかる。

さて、Cはどうだろう?ニュージーランドの南東であり、環太平洋造山帯の一部。新期造山帯の地形であり、高峻な山脈がみられるはず。日本列島と似た環境。

選択肢①〜④を見て、新期造山帯について説明したものはどれだろう?パッと目につくのは「3000」っていう数字だよね。「地理は数字の学問」だね。一般的に、安定陸塊は低平な地形であり、山地がみられたとしても標高1000m程度(例外はアフリカ大陸。後述します)。古期造山帯も低く、1000〜2000m程度がせいぜい。これに対し、新期造山帯は侵食が進まず、現在でも地殻変動によって標高が上がり続けているような場所もあり、山地の標高は3000mに達する。日本アルプスや富士山がいずれも3000m級であることを考えよう。新期造山帯国であり、日本と同じような地形環境のみられるニュージーランドならば、やはり3000m級の山岳がいくつもみられるはず。

さらに「氷河に関連した地形」とある。氷河そのものはみられないのかな?例えば、ニュージーランド南島の最南部にはフィヨルド(氷河の侵食谷に海水が侵入した深い入江)がみられるが、Cの場所からは外れている。Cが南東中央部の山岳地域であることから、この地点にみられる氷河地形としてはカールやホルン、モレーンが考えられる。カールはその名の通り、カールした(湾曲した)谷で圏谷と呼ばれるもの。氷河の侵食によって、大きく椀情に切り取られた谷で、断面は半円形。谷の両側は急斜面であるが、谷底は比較的平坦となっており、アルプス山脈などでは谷底に集落もみられる。ホルンは山頂付近の斜面が氷河によって削られることによって形成。尖った山頂となり、例えば、鉛筆削りで削りすぎて細く尖ってしまった鉛筆の芯って感じかな。これもアルプスに多い。モレーンは文字通り(?)土砂が「盛られて」できた丘。氷河の末端に堤防状にみられる小丘であり、かつて大陸氷河に覆われていたドイツやポーランドの平原に多い。もちろん山岳部にもみられる。

例えば、日本の高峻な山岳にもカールはよく見られる(ホルンは明確なものはない。モレーンも小規模なものしかないので話題とされない)。大陸氷河に覆われなかった日本列島ではあるが、寒冷な時期、標高の高いところは山岳氷河に覆われ、その名残りがみられるのだ。日本とほぼ同緯度にあるニュージーランドならば、当然そういった地形はいくらでも存在するんじゃないか。というか、ニュージーランドは夏の気温が低いので、日本とは異なり現在も山岳氷河はみられ、現在進行形でつくられている氷河地形もあるのではないだろうか。以上より、Cは④に該当。

 

[難易度]★★

 

[今後の学習]他の選択肢についても解説しておこう。

まず①から。「起伏のゆるやか」というのは、いわゆる安定陸塊の代名詞。もちろん、名前だけ安定陸塊であっても全く「安定」していないアフリカ地溝帯周辺の地形もあるのだけれど、本問で取り上げられているシベリア地域については典型的な安定陸塊と考えて妥当。①がBとなる。とくにここは低地である点も重要。上述したように、Bの西側にウラル山脈がある。Bの一帯はオビ川という大河川の流域に位置し、広く低地が広がっている。油田やガス田なども開発され、ロシアの(というか世界の)重要な化石燃料の産出地となっている。

さらに②。こちらは「盆地」とある。これだけでだいたいわかってしまうんじゃないかな。当然これはAのコンゴ盆地。熱帯雨林が広がるコンゴ川の流域。「山地や高原に囲まれた」とあるけれど、そもそも盆地って山地や高原に囲まれた地形だよね(笑)。あえていえば、アフリカ大陸は安定陸塊とは言うけれど、全体がテーブル状の地形となっていて、平均標高が高い「高原大陸」。①の説明で「起伏がゆるやかというのは安定陸塊の代名詞」と言ったけれども、このアフリカ大陸は例外。とくに東部にはプレートの広がる境界である大地溝帯が南北に走行しており、それに沿って険しい地形が連続している。安定陸塊とは言え、形成年代が古い古大陸であるだけで、むしろ現在激しい地殻変動がみられるのがアフリカ大陸のとくに地溝帯に沿う一帯である。

そして③がDに該当。メキシコの中央部は高原となっている。環太平洋造山帯に含まれる新期造山帯の山脈がメキシコを縦断。東西2列の山脈に囲まれた盆地の一つに首都メキシコシティが位置している。高原都市の一つ。

 

<2019年地理B追試験第1問問2>

 

[インプレッション]興味深い図ですね。見にくいけど(笑)

 

[解法]選択肢を検討していこう。正文選択なので、誤文を三つ指摘しないといけない。気をつけないとね。この手の問題って④が正解であることが多いんだが、さて本問はどうだろう?(でもちゃんと選択肢①から順番に見ていきましょう)

まず①から。「熱帯収束帯」が「上昇気流」であるのはその通り。でも上昇気流って雲ができるよね。まず誤り。

さらに②。ん?「熱帯低気圧」なら雲ができるよね。意味が通らない。誤りでしょう。

そして③。お、これは正しいっぽいぞ。たしかにアジアは季節風のエリア。あれ、でもちょっと違うな。季節風は「海から陸」あるいは「陸から海」に向かって吹くもの。そもそもが海陸の比熱差によって生じるものですからね。「太平洋からインド洋に」すなわち「海から海」はおかしいね。これも誤り。

というわけで、最初の予想通り(笑)④が答えっぽいなぁ。

「南半球の寒帯前線帯(亜寒帯低圧帯)では、主に極東風(極偏東風)と偏西風によって雲が多く形成されている」とある。

まず一つ目のチェックポイント。「寒帯前線」について。これが「亜寒帯低圧帯」という別称を持っているのは正しい。地球の気圧帯っていろいろな言い方があるから注意。「低緯度低圧帯=赤道低圧帯=熱帯収束帯=赤道無風帯」、「中緯度高圧帯=亜熱帯高圧帯=亜熱帯高気圧」、「高緯度低圧帯=亜寒帯低圧帯=寒帯前線」。

寒帯前線はおおよそ緯度50°を中心とした緯度帯に発達。「南半球の寒帯前線帯」ならば南緯50°付近。極方向からの寒冷な風(極風)と低緯度方向からの温暖な風が交わることで境界(この境界のことを「前線」と言う)に薄い雲が生じる。寒い冬の日に、暖かい部屋の窓に水滴がつくのと同じシステムだね。水分を含んだ暖かい空気が冷やされ、飽和水蒸気量が下がることで水蒸気が凝結する。「極東風」とは極風のことであるので、正しい。もちろん「偏西風」も正しい。「雲が多く形成される」わけで、本選択肢は正文となる。④が正解。

とくに図を見る必要もないだろう。そもそも読み取りにくい図であるし。一応確認すると、なるほど南極の周囲に雲が広がっている様子が伺える。赤道付近に比べると薄い雲になっていて、これこそまさに前線の雲の特徴である(梅雨前線をイメージすればいい。土砂降りじゃなく、しとしと雨だね)。

 

[難易度]★★

 

[今後の学習]図が見にくかったのがちょっと厄介だったけど、問題を解くには支障なかったね。地球の気圧帯や風系について総合的に考える良問だったと思う。

解法では省略してしまったけれど、各選択肢についてもうちょっと詳しく検討していこう。

選択肢①について。オーストラリア大陸に注目。南回帰線(南緯23.4°の緯線)はこの大陸のほぼ中央部を通過している。亜熱帯高圧帯のレギュラーポジション(春や秋の気圧帯の位置を便宜上このように呼んでおきますね)は緯度25°付近。本図は7月なので、気圧帯が全体的に北上しているが、それでもやはり緯度25°付近は亜熱帯高圧帯の影響下にあると思っていい。なるほど、たしかにこの緯度帯には雲がみられない。

ちなみに「回帰線」とは、夏至の日の正午の太陽高度が90°に達する地点が位置する緯度。あくまで地球(惑星)と太陽(恒星)との関係を示した天体用語であり、気象に関する用語ではない。空気や水のない惑星であっても回帰線は存在する。北極点、北極圏、北回帰線、赤道、南回帰線、南極圏、南極点などみな天体用語。だから、「回帰線付近に砂漠が広がる」なんていう言い方をする人がいるけれど、僕はあまり感心しないな。回帰線の存在と乾燥気候は本来全く関係ない。

選択肢②について。なるほど、北アメリカ大陸の南東部(メキシコ湾周辺)は黒っぽくなっていて雲があまり見られない。7月であることを考えると熱帯低気圧(ハリケーン)の発生時期と重なるわけだが。日本でも夏になると太平洋高気圧に覆われるわけだが、メキシコ湾周辺でも同じような状況が生じているのでは。太平洋高気圧は亜熱帯高圧帯の一部であり、レギュラーポジションは北緯25°付近だが、これが夏になると北緯35°付近に北上し、日本列島をその勢力下に収める。これと同じ状況が北アメリカでもみられるということ(だと思う)。

選択肢③について。南シナ海っていうのは「中国の南」ということで、華南地方が面している海域。華南っていうのは香港が含まれる地域だけど、本図で言えば、なるほど、中国南部とフィリピン、そしてベトナムに挟まれた海は明確に白くなっており、雲に覆われているのがわかる。ここからさらにインドシナ半島(ベトナムやタイが含まれる半島)からインド洋にかけて雲が広がっている。「解法」でも説明したように、この地域の夏の香水は主に季節風による。海洋からの湿った風の流入によって雲が生じている。

選択肢④について。こちらも「解法」で説明したように、なるほど前線の雲が広がっている。7月であり、南半球は冬。気圧帯全体が北上しているので、南緯50°付近をレギュラーポジションとする寒帯前線も、南緯40°付近(南米大陸の南端など)へもその影響が及んでいる。

 

(参考)解法の部分で、気圧帯は多様な別称を有していると述べたが、これに着いて整理しておこう。

 

・低緯度低圧帯・・・低緯度帯には上昇気流の発達した「低緯度低圧帯」が形成される。上昇気流=低気圧だったね。赤道付近であるので「赤道低圧帯」とも。僕はこの言い方が最も言いやすい。また、低緯度には熱帯地域が広がり、さらに両半球から貿易風が集まってくる(収束する)の「熱帯収束帯」とも言う。両半球から収束した空気は上昇気流となるため、風(水平方向の空気の動き)は生じない。つまり無風である。このため「赤道無風帯」という言い方もある。

・中緯度高圧帯・・・赤道付近で上昇した空気は大気圏の上層を移動し、緯度25°付近で下降する。下降気流=高気圧だったね。「亜熱帯高圧帯」とも言い、時に「亜熱帯高気圧」とも。日本周辺の太平洋高気圧がこれに含まれます。ただし、熱帯低気圧といえば台風やサイクロンのことなのでしっかり区別しておくこと。熱帯低気圧は、地球全体の気圧帯に関するキーワードではない。

・高緯度低圧帯・・・極からの寒冷な風(極風)と、中緯度高圧帯から吹き出す温暖な風(偏西風)がぶつかり前線が形成。これら二つの風は密度が違うため混じり合わず、暖かい空気の上に冷たい空気が乗り上げ、境界に沿って薄い雲が生じる。「亜寒帯低圧帯」、「寒帯前線」とも言うが(亜寒帯とは冷帯のこと)、温帯気候のみられる日本の本州以南の地域もこの影響がみられる時期がある。例えば、梅雨前線は寒帯前線の一種。日本は寒帯ではないし、そして暑い時期だと言うのに!

 

さらにおまけ。高気圧となる極地域から吹き出す風が「極風」だが、この問題では「極東風」あるいは「極偏東風」と説明されている。極風は、転向力によって北半球では北東風、南半球では南東風となるため、これらのような言い方もできるというわけ。

 

<2019年地理B追試験第1問問3>

 

[インプレッション]第1問には珍しい(?)シンプルな感じの文章正誤問題。範囲が下線部に限定されているし、さらに誤文を指摘するタイプなので、難易度は下がる。今回の第1問は他が難しいので、ここで確実に得点することが大切だね。

 

[解法]カリフォルニア海流とは、アメリカ合衆国の大西洋岸を南下する海流。冷涼な海水を暖かい海域に運ぶ(高緯度から低緯度へ)寒流である。この影響で、サンフランシスコは夏の気温が大きく下がり、涼しい気候がみられる。冬の気温は穏やかであり比較的高いので。結果として気温年較差が極めて小さくなる。最暖月平均気温18℃、最寒月平均気温10℃。気温年較差は8℃。さらに寒流には大気を安定させる作用があり、少雨気候となる。寒流によって地表面付近の空気が冷やされ、密度が上がる。この「重い」空気は地表面付近にとどまり、上昇気流を生じない。雲ができにくい大気の状態となるのだ。

ここで選択肢③に注目。なるほど、おいしい言葉が入っているね。それは「湿潤」。反対の言葉は「乾燥」。降水量>蒸発量が湿潤で。降水量<蒸発量が乾燥。寒流によって少雨となるのだから、むしろ乾燥する可能性が高くないか?この選択肢が誤りとなる。

北アメリカの中緯度付近の西岸については、サンフランシスコやロサンゼルスまでは地中海性気候がみられるが、その南のサンディエゴ(よかったら地図で見ておいて)からカリフォルニア半島(メキシコの西部にくっついてる南北に細長い半島ね)では乾燥気候がみられる。樹木が生育せず、短草草原や砂漠が広がっている。

あるいは、「1年を通して」っていうところに注目した人もいるかもしれないね。上記のようにサンフランシスコやロサンゼルスでは地中海性気候がみられる。つまり。夏は極めて降水量が少なく「乾季」となる。少雨でも栽培でき、さらにその果汁が人々の喉を潤すブドウが栽培されている。植生はオリーブやコルクガシなど硬葉樹。「1年を通して湿潤」ではもちろんない。寒流の存在より、単純に地中海性気候を思い浮かべてしまっても良かったと思う。「大陸西岸、緯度35°」に必ず出現する気候、それが地中海性気候であり、カルフォルニア州のサンフランシスコはその代表的な都市。

もしかして「1年を通して冷涼」というところも怪しいのかな。海洋性気候であるので、同緯度の地域に比べ冬の気温はむしろ高い。同じ北緯35°の都市を比較してみると、東京の1月の平均気温は5℃であるのに対し、サンフランシスコは10℃。完全な海洋性気候となる西岸と、大陸の影響が強い東岸の違い。

 

[難易度]★

 

[今後の学習]この程度の問題は軽々解いて欲しかったな。君はどうだったかな。

そもそも誤文になりそうな選択肢が③と④だけだったし(「湿潤」と「乾燥」、「反時計まわり」と「時計まわり」という対義語の組み合わせが考えられる)、その二つを重点的に検討していけば、楽々正解にたどり着けたはずだよ。

一応、他の選択肢についても検討しよう。

まず①から。風や海流には熱の交換によって地球全体の気温を平均化させる作用がある。例えば、空気や水のない月は、太陽が当たっている部分は高温となるが、陰の部分は極端な低温となる。地球では水や空気の存在によって、熱の交換が行われ、高緯度地域でも温暖なところ、低緯度でも冷涼な地域が生まれている。偏西風(低緯度からの風であるため気温が高い)と暖流の影響により、高緯度の西ヨーロッパでは冬でも凍結しない気候がみられる。寒流の影響で中緯度のサンフランシスコの夏の気温は北ヨーロッパ並みに涼しい(このことは解法でも言っているね)。このことをこの文章では「熱エネルギーの輸送」という言葉で表現している。

さらに②。これは日本地理の内容でしょう。日本列島の沖合で(三陸海岸から千葉県の沖合)、北から流れる寒流である千島海流(親潮)、南から流れる暖流である日本海流(黒潮)が会合し、「潮目(潮境)」を形成している。なお、本来は潮目と潮境はニュアンスが異なる言葉なのだが、地理においては完全に同じものとして考えていい。

二つの巨大な海流が正面衝突することで海水は混濁し、深海から栄養分(魚の死骸が分解してできた有機塩類など)が海表面まで持ち上げられる。漁獲豊かな海域となるのだ。例えば、イワシは巨大な魚群を組んで生息する魚種であるが、それだけに海水中に十分な栄養分があることが分布の条件となる。三陸海岸や千葉県の沖合はイワシの漁獲量が豊か。

④についても納得だね。海流の流れは「北半球で時計回り(右回り)、南半球で反時計回り(左回り)」になるのだが、厳密に言えば、北半球の海流の流れは「8の字」だったね。太平洋の中央を、日本付近から北アメリカ大陸に向かって海流が流れる。その海流は北アメリカ大陸にぶつかって、カナダ方面に向かう暖流である「アラスカ海流」と赤道方面に向かう寒流の「カリフォルニア海流」に分かれる。カリフォルニア海流はやがて赤道のやや北をアメリカ大陸からインドネシア方面に向かう「北赤道海流」となり、さらに東南アジアに達したこの海流は北に向きを変え、日本列島に向かう「日本海流」となる。この「カリフォルニア海流→北赤道海流→日本海流」という、中低緯度の海流の流れは確かに「時計回り」なのである。

しかし、北半球ではこれに付随して、やや小規模な海流の流れがある。「8」の字の上半分である。アラスカ海流は、アラスカ州南岸に沿って太平洋北部を東から西へと進み、やがて南に方向を変え、日本列島へと向かう「千島海流」となる。「アラスカ海流→千島海流」の流れ、これは反時計回りだよね。北半球の海流は、主要な流れは時計まわりだが、その高緯度側に小さな反時計回りの流れがくっついてるっていうこと。

 

これは大西洋にも言えること。太平洋と大西洋とで同じ位置になる海流の組み合わせを一覧にしておきますね。名前は重要でないので、参考までに。

 

 

流れる位置と方向

寒流と暖流の区分

太平洋

大西洋

北半球

高緯度・西部を北から南へ

寒流

千島海流

ラブラドル海流

高緯度・東部を南から北へ

暖流

アラスカ海流

北大西洋海流

中低緯度・西部を南から北へ

暖流

日本海流

メキシコ湾流

中低緯度・南東部を北から南へ

寒流

カリフォルニア海流

カナリア海流

南半球

西部を北から南へ

暖流

東オーストラリア海流

ブラジル海流

東部を南から北へ

寒流

ペルー海流

ベンゲラ海流

 

<2019年地理B追試験第1問問4>

 

[インプレッション]よくある問題と思いきや、これ、面白い問題だね。水平方向ではなく、垂直方向への震源の分布が問われている。立体視のテクニックが必要になってくるな。単に地震の発生回数だけで解いても大丈夫とは思うけど。

 

[解法]地震の震源の鉛直(垂直)分布が示されている。これ、かなり面白い図。まずはシンプルに地震の多さで考えてしまっていいと思う。

何と言っても「地震の巣」であるのは日本周遍だね。多くのプレートが集まり、それらがぶつかり合うことで巨大なストレスが発生し、地震が生じる。Gには海溝(伊豆小笠原海溝)がみられ、プレートの狭まる境界に沿って多くの震源が集中しているはず。単に数で判定してしまっていいと思う。アがGとなる。上辺中央から右辺中央(つまり東へ)と震源が密集する帯があるが、これがプレートの境界部なのだろう。2枚のプレートが強くぶつかり合っている様子を想像して欲しい。(覚えてなくていいけれど)伊豆小笠原海溝は東から太平洋プレートが、西からフィリピン海プレートが、それぞれ移動することで形成されている。この図を見る限り、フィリピン海プレートの方が太平洋プレートの下に潜り込んでいるような感じがするね。

さらにFとH。Fは南アジアの北部であり、付近にはヒマラヤ山脈とチベット高原が位置する。Hはチリ北部であり、沿岸には海溝、陸地にはアンデス山脈が走行している。

この2つのエリアの違いって何だ?いずれもプレートがぶつかる変動帯になっていると思う(巨大な褶曲山脈も海溝もプレートの狭まる境界に形成されるもの)。ポイントはその向き。ヒマラヤ山脈は東西にFを横切り、チリ海溝やアンデス山脈は南北にFを貫く。

このエリアについて、南から眺めた場合(つまり、図3と同様に、左手が西、右手が東)、Fではプレートの境界面は眼前にスクリーンのように広がるのに対し、Hでは中央を貫く線となる。西が太平洋側のプレート、東が南米側のプレート。そうすると、なるほどと思えないだろうか。カギとなるのはウの震源分布である。アで確認したように、震源の密集地をたどっていくと、そこはプレート境界となる。なるほど、全体にまばらに点が分散しているイに比べれば、上方から縦に震源が集まるラインが確認できるウこそ、プレート境界面が明確にとらえられるのでないか。以上より、ウをHとする。なるほど、さらに詳しく見ると、プレートの境界は中央から西方に向かっているようだ。大陸のプレートが海洋のプレートの下に潜り込んでいるんだね。

 

あれ、、、、ちょっとおかしいぞ?ちょっと待てよ。。。もしかしたら大きな勘違いをしているんじゃないだろうか。

 

やり直しだ!

 

これ、絶対におかしいよ。大陸プレートと海洋プレートがぶつかって、狭まるプレート境界を形成している場合、そこは必ず「沈み込み帯」になる。海洋プレートが大陸プレートの下に潜り込み、地下マントルの中に沈んでいく。海洋プレートが大陸プレートを引き下げる動きによって地震エネルギーとなるのだ。そうなると、この形っておかしいぞ。Hがウだとすると、むしろ、東側の大陸プレートが西側の海洋プレートの下に潜っている。

いやいや、これは絶対に違うじゃないか。東のプレートが西のプレートの下に潜り込んでいる形って、それはアではないか! アの、プレート境界面とみられる震源密集地の東西を異なった色で塗り分けてみるとわかりやすい。西側のプレートが、図の左上から右下に向かって、ズルズルと沈み込んでいく。これこそ、海洋プレートと大陸プレートの動きだ。Hをアと断言しよう。

そうなると、たしかにGがウになることに納得できるわけだ。先ほど「フィリピン海プレートの方が太平洋プレートの下に潜り込んでいるような感じがするね」と気楽に言ってしまったんだが、いやいや、そんなことがあるわけないじゃないか。ともに海洋プレートであり、ともに地下マントルへと沈んでいく。そう考えると、断面が垂直に近い形になっているウがGであると考えると極めて合点がいくのだ。なるほど、うまくできてるなぁ。

EはFであることは問題ないでしょう。プレート境界が横方向なので、その断面が明確ではない。これは既に述べた通り。以上より正解は④じゃないか。

 

で、答えを見る。。。よかった、正解は④で間違いない。こりゃ難しいわ。妙に知識があるとかえって解けない。とくかく原理原則論に基づいて科学的に考えるしかない。

 

[難易度]★★★

 

[最重要問題リンク]

 

[今後の学習] これは難しい。間違えても仕方ないんじゃないか。たしかに科学的に考えれば妥当な説明は得られるのだが、それでも解答にたどり着くのは極めて困難。高校地理のレベルではない。捨て問とみるべきだと思うな。

 

<2019年地理B追試験第1問問5>

 

[インプレッション] 津波に関する問題だが、考察問題っぽいね。特殊な知識は問われているのだろうか。正文判定問題なので注意しないと。

 

[解法] 津波は主に地震の中でも「内陸直下型地震」ではなく、「海底地震」によって発生するものである。このことは過去のセンター試験でも何度となく出題されている。ただ、本問では「火山活動や地すべりなどによっても発生し」っていきなり範囲が広がっているんやな。この辺りがよくわからない。ヒントになっているんだろうか。

とりあえず選択肢の文章から検討していこう。先に図をみても漠然としていて効率が悪い。こうした問題は選択肢から先に見てしまうのがコツ。

では選択肢①から。なるほど、インド洋の沿岸地域でも多くの津波が観測されている。それらは「インド洋南西部」で主に発生したものか。インド洋南西部といえばマダガスカル周辺(あれ、本年は第5問でも大きくマダガスカルがフューチャーされているぞ!マダガスカルは安定陸塊で地震はほとんど発生しない島です)。「米の形の島」マダガスカルの円は小さいものの、その横には大きな円が重なっている。この辺りにある小さな島国で多く観測されたのかな。

でも、どうだろう?果たしてインド洋で津波が観測されたのは南西部だけか?北西部ではオマーンで円が大きい(おっと、オマーンもなぜか今回のテストで登場している国だぞ)。さらにも南アジアのスリランカやモルディブの円も大きい。さらにとどめはインドネシアだね。日本に次ぐ2番目の大きさの円がインドネシアに乗っている(っていうか、今気づいたけど、世界で最も津波の観測回数が多い国って日本なんや!)。インドネシアも当然インド洋に面する国で、インド洋北東部に位置する。決して「主に南西部」ではないね。誤り。

さらに②。これも面白い選択肢だね。なるほど、国が大きくて海岸線が長ければ、それだけ津波に襲われる回数も多くなりそうだ。でも必ずしもそうは言えないんじゃないかな。先ほど見たけれど、マダガスカルという比較的面積の大きな島より、その横の(姿は見えないが)小さな島の方が津波の回数は多い。固定観念は持たず、オセアニアに目を移そう。

オセアニアといえば、太平洋の島国、そしてオーストラリア、パプアニューギニア、ニュージーランドといった比較的メジャーな国。面積が問題とされているのだから、わかりやすいところでオーストラリアに注目してみよう。「島の面積」が大きいオーストラリアならば、それに比例して津波の観測回数も多くなるのでは???いや、そんなことはないね。ここに描かれている円は小さい。オーストラリアは安定陸塊と古期造山帯であり、地震の発生がそもそもほとんど見られない。遠方で巨大な海底地震が発生した場合のみ、オーストラリアへ巨大な波動が達し津波が生じる可能性があるけれど、基本的には「静かな大陸」なのですね。

逆に面積の小さな島国でも大きな円が示されている国が多い。いや、正確に言えば、円に隠されてしまっているので島の面積はわからないが。でもオーストラリアに比べて小さいのは確実だよね。津波の観測回数は面積に比例しません。誤り。面積ではなく、その島もしくは近隣でいかに多くの地震が発生するのかということがカギとなっているはず。なるほど、新期造山帯の地震国であるニュージーランドでも回数が比較的多い(それでも日本と比べたら全然少ないが。。。)。

さらに選択肢③。グリーンランドは見えにくいが、図の左上に形が歪められて描かれている。小さいながらも円は描かれているようだ。しかし。この島に「火山」はあるのだろうか。火山の場所は必ず知っておこう。以下の通り。

・環太平洋地域(カムチャッカ半島〜日本〜フィリピン〜インドネシア〜ニュージーランド〜南極〜南米太平洋岸〜中央アジア・メキシコ〜カリブ海(*)〜北米太平洋岸)

・アフリカ東部の低緯度地域(キリマンジャロなど)

・地中海地域(イタリア半島など)

・アイスランド(海嶺上の島)

・ハワイ諸島(プレート中央部のホットスポットに形成)

お隣のアイスランドはプレート境界であり火山がみられるのだが、グリーンランドは該当しない。ここで観測された津波は、アイスランドでの地震や火山活動によるものではないか。誤り。

というわけで残った④がどうやら正解っぽいのだが、あわてずに文章を読んでみよう。「太平洋地域での観測回数」はたしかに「インド洋より多い」。もっとも、この部分は下線部外なので判定の必要はないんですが(笑)。

問題はここから。「プレート境界が海洋を取り巻くように分布する」ことはどうだろう?これ、正しいよね。太平洋の外周に沿うように海溝が走行している。海溝の場所はどうせ覚えないといけないので(そして名称も出題されたこと有り)、地図帳で確認しておこう。

アリューシャン海溝、千島カムチャッカ海溝、日本海溝、伊豆小笠原海溝、マリアナ海溝、トンガ海溝、ケルマデック海溝、チリ海溝、ペルー海溝、中央アメリカ海溝。アメリカ合衆国の沿岸には海溝がないので注意。ここではプレート境界は陸側に入り込んでいる(ずれる境界であるサンアンドレアス断層など)。

海溝はプレートの狭まる境界であり、海洋プレートが大陸プレートの下へと潜り込む一帯となっている(沈み込み帯)。もちろん「プレート境界」だね。これを正文とみていいでしょう。正解は④!

 

[難易度]★★

 

[今後の学習] 今回も第1問は難問ぞろいだったが、この第5問のみは難易度が低かった。ただし、正文指摘問題で、誤文を3つ挙げないといけないのがしんどい。決して油断はできない問題だったと思う。

問われている内容は、太平洋の外周に沿ってプレート境界がある(海溝)ことが問われているだけで特殊なものではない。もちろん、「環太平洋造山帯=新期造山帯」からプレート境界であることをシンプルに求めてしまっていい。地理の基本的な内容。

ただ、本問については上述のように他の誤文を指摘するのが難しいと思った受験生も多いのでは。「インド洋」や「オセアニア」の範囲について正確な情報を持っていないと判定に悩む。「インドネシアはインド洋に面している」、「オセアニアにはオーストラリアが含まれる」。このことをはっきり認識していくことが必要だったね。簡単な問題とは思うのだが、失点した人も多かったと思う。

 

<2019年地理B追試験第1問問6>

 

[インプレッション] さらに「火山」ネタ。そして「熱帯低気圧」、「洪水」。おっと、熱帯低気圧については第5問のキューバとマダガスカルの問題でも登場しているぞ(僕は第1問は後回しにするので、他の問題で問われた内容がこの時点でわかっているわけです)。ネタかぶりがひどいんじゃないかな。

地域としては西アジアが登場している。2018年にも地誌として大きく取り上げられた地域ではあるよね。ただし、マイナーな地域であることには変わりがなく、西アジアについて特殊な知識が求められるわけがない。別に苦手意識を持つ必要はないし、一般的な知識で考えれば十分。

「マイナーな地域」が問われても「マイナーな知識」が問われることはない。西アジアだからって全然ビビる必要はない。っていうか、「火山」ってあるよね。そうなるとあの地域が最重要になってくるのだ。それが君たちにはわかるかな?

 

[解法]最重要は「火山」。火山の分布については問5でも説明したけれど、大切なのでもう一回言います(っていうか、コピペだから簡単だけど・笑)

 

火山の場所は必ず知っておこう。以下の通り。

・環太平洋地域(カムチャッカ半島〜日本〜フィリピン〜インドネシア〜ニュージーランド〜南極〜南米太平洋岸〜中央アジア・メキシコ〜カリブ海(*)〜北米太平洋岸)

・アフリカ東部の低緯度地域(キリマンジャロなど)

・地中海地域(イタリア半島など)

・アイスランド(海嶺上の島)

・ハワイ諸島(プレート中央部のホットスポットに形成)

 

さて、どうかな。ちゃんと覚えたかな。えっ、めんどくさいだって?こんなにたくさん覚えられないって?いや、全然ちょっとやん。これぐらい覚えなあかんで(涙)

 

しゃあないなぁ、そんな君のために魔法の言葉を伝授しよう。火山分布に関する、たった一つの魔法の言葉。それは「南アジアに火山はない」なのだ。

南アジア南部は安定陸塊の古大陸(ゴンドナワランド)であり、そもそも火山があろうはずもない。モルディブもサンゴ礁の島でこちらも火山ではない(火山ならば標高の高い島になって海面上昇による水没の危険性はない。サンゴ礁で平坦な島だからヤバいわけだね)。

南アジア北部はヒマラヤ山脈やチベット高原、そして世界の屋根と称されるパミール高原などが連なっており、これらはいずれも新期造山帯の地形であるが、実は火山は存在しないのだ。大陸プレート同士(インド・オーストラリアプレートが南からユーラシアプレートに衝突している)の衝突帯であり、巨大な褶曲山脈は形成されるが、火山活動は生じない。大陸プレートが分厚いため、地下からマントルが噴き出すことはないのだ。

どうだろう?火山は「ある」場所より「ない」場所が大事なのだ。本問はまさにそれ。南アジアは本図の東に接しているわけだね。っていうか、実はパキスタンも本図に描かれているわけだが。図の東部が全くの空白となっているカを「火山活動」と判定する。よく見ると、キやクでは(南アジアの一部である)パキスタンに大きな円が示されている。パキスタンに火山があるわけないのだ。

 

さて、残るは2つ。でも、ここからはもっと簡単。今から当たり前の話をするね。「熱帯低気圧」は海上で発達し、周辺地域を襲うもの。ということは。熱帯低気圧の被害が集中するのは当然沿岸部。熱帯低気圧のもたらす高潮などの災害によって被災する人々は多いが、彼らの居住地も当たり前だが沿岸部に集まるだろう。日本でも南西諸島や太平洋岸の沿岸地域で熱帯低気圧(台風)の上陸による災害が多発し、内陸の山岳地域ではさほどでもない(もちろんゼロではないが、相対的には少ないはず。被災された皆様申し訳ありません)。キとクのうち、内陸国であるアフガニスタン(パキスタンの北に隣接)や、同じくエチオピア(「アフリカの角」であるソマリアの西、図の最南部に位置するケニアの北)での値が大きくなっているのがキ。内陸の、おまけに高原地域(アフガニスタンはアルプスヒマラヤ造山帯に沿う山岳国、エチオピアはアフリカ地溝帯の上に位置する高原国)である両国で熱帯低気圧の被害が大きいだろうか。

一方で、クの方は円は全て海に面する国に集まっている。パキスタン、イラン、オマーン(今年はやたらオマーンがポイントになるな・笑)、イエメン、ソマリア。どうかな、こっちが「熱帯低気圧」っぽくない?インド洋に発生する巨大熱帯低気圧はサイクロン。これらの国々の沿岸部に上陸し、大きな被害をもたらしているのだ。

残ったキが「洪水」。こちらはほぼ全ての国で発生している(とはいえ、なぜかオマーンはゼロ。何だか気になる国だな)。「河川の氾濫」などであるが、河川はどの国にもあるだろうから。洪水による被災者はいずれの国で生じてもおかしくない。以上より、正解は①。

 

[難易度]★★★

 

[今後の学習]これ、思い込みでやったらキツいね。センター地理のセオリーに基づいて「数学」的に解くことが求められる。数学的とは、この場合、計算しなさいっていう意味じゃなくて、公式に基づいて機械的に解こうっていうこと。主観的なイメージではない。「南アジアに火山はない」というセオリーがあるのだから、これを数学や物理の公式だと思って、これに従って機械的に解いてしまう。地理はこうした「頭の使い方」を覚える科目なのだね。本問は簡単とは思わないけれど、もし理論的に解くことができる人がいれば、素晴らしい思考力の持ち主ってことになるね。君の地理力つまり「頭の使い方」が問われる問題。