2023年共通テスト地理B追試験[第4問]解説

2023年地理B追試験[第4問]解説

<第4問問1>

[インプレッション]

地中海沿岸の地誌ってよく出るんですよね。とくに今回は極めてオーソドックスな印象を受けます。

[解法]

発電の問題。イタリアがポイント。地中海には火山がいくつか分布しており、火山島もみられるが、やはりもっと特徴的なのはイタリア半島。活火山が分布し、地熱発電が行われる。△が地熱。

さらに風力は偏西風の利用を考える。大西洋方面から吹き込む南西の風。我々が想像するよりかなり強い風だよ。これが年間を通じ一定方向から吹き込む。大西洋に面したイベリア半島(ポルトガルやスペイン)で多い●が風力。スペインの小説「ドンキホーテ」では風車を怪物にみたてて主人公ドンキホーテが戦いを挑んだっていうシーンがあるよね。

残った■が水力かな。イタリア北部のアルプス山脈周辺で行われている。

[雑感]

かなり普通の問題で逆に面食らうよね。地熱が最大のポイント。活火山の分布に対応。地熱発電量が最大の国はアメリカ合衆国だが(太平洋地域に火山が多い)、それ以外の国は国のほぼ全域が火山帯に属する。フィリピン、インドネシア、イタリア、アイスランド、ニュージーランド、ケニア、メキシコ。日本は世界で最も早く地熱発電が実用化された国なのだが、最近は伸び悩んでいるんですよね。僕は日本こそ世界最大の地熱国になるべきだと思っている。

<第4問問2>

[インプレッション]

この問題もいいですね。モロッコが登場しているけれど、モロッコがどこにあるかわからなくても解けるかな。もちろんグラフは後回しにして、文章を先に読んでね。

[解法]

各選択肢を分析していこう。地理は数字の学問なので、数字に関する選択肢が怪しい。さらに何かと何かを比べる「比較の構造」が含まれている選択肢を探す。

まず1だけど、これは否定しにくい。数字があるわけでもなく、比較の構造もない。

それに対し2は「輸出量が増えた」とある。輸出量について「増えた」のか「減った」のかを確認。保留。

3はちょっと怪しい。土地生産性は「収量÷面積」で産出。地理はこういった指標が大好き。普通に考えると農業が近代化する中で土地生産性が下がるとは考えにくいのだが、例えば農地面積を急激に拡大させたことで、相対的に土地生産性が下がる可能性はある。面積に反比例する指標だからね。これも後で確認。

さらに4だが、これが一番怪しいような。EU諸国向けの輸出の割合の高低はグラフから計算できる。またモロッコの農業が振興するなかで、さらに周辺諸国の経済が上昇する中で、輸出先が多角化するというのは十分に考えられる。これが怪しいな。

先に4から見てしまおうか。グラフ参照。2009年ごろまでは「輸出量」と「EU諸国向け輸出量」がほぼ一致しているが、両者の間に開きが出てきたのが2010年以降。「輸出量-EU諸国向け輸出量」が、EU以外へん輸出量であり、これは確実に増えているね。EU諸国向けの輸出の割合は低下している。4が誤り。

3も確認しておこう。むしろ栽培面積は減少しているよね。「生産量÷栽培面積」の値は高くなりつつある。土地生産性は上がっているね。2も大丈夫でしょう。輸出量は増加している。

[雑感]

これもいい問題ですね。グラフを用いて、数字で考えされる問題。ほら、みんなすぐに「地誌」にこだわって地図長を開いて地名や都市名を必死で覚えるでしょ?それが全く意味がないことがわかる。地理に観光や旅行のイメージを持っている人が多く、それだからこそ地理が好きだって人、多いよね。でも、ごめんやけど、地理はそうじゃない。数字の学問であり、こうした統計を元に志向していく科目。僕はだからこそ地理が好きなんだけど、君はどう?それでもやっぱりグーグルアースを開いて世界旅行を楽しみたい?でも、それは地理じゃないんだわ。

<第4問題3>

[インプレッション]

自動車生産の統計ってベスト10ぐらいまでは知らないといけないので、スペインが重要な自動車生産国であることは知っておかないといけない。これも何回も言っているけれど、君たちが覚えないといけないのは地名や都市名じゃなく、統計なのだ。とくに自動車生産は重要な統計であり、細かいところまで知る必要がある。

[解法]

自動車生産統計はマスト。最大の自動車生産国は中国。先進国から自動車工場が進出する一方で、近年は自国メーカーの生産も拡大。国内販売台数も多い国である。2位アメリカ合衆国、3位日本、4位ドイツ。さまざまな工業が発展途上国中心になっていく中で、自動車生産は比較的先進国でも維持されている。多くの世界的な自動車メーカーの本社が位置する3カ国。自動車はブランドイメージも大切であるし(南アフリカ製のベンツなんか乗りたいかい?)、また部品が多いため自動車工業地域は他へと転出しにくいという事情もある。集約立地なのだ。

さらにこれに続くのが韓国やインド、ブラジル。いずれも特徴的な自動車生産国。韓国は財閥(巨大な企業集団)を中心とした自動車生産。ヒュンダイ(現代)など。インドは混合経済体制下で自国メーカーが保護されてきた。インディアやタタなど。ブラジルは外国企業の進出が多いものの、ブラジル特有のアルコール燃料車の生産が進む。BMWやホンダが独自の技術を持っている。サトウキビから生成した燃料がガソリンの代わり。

そしてメキシコ、スペイン、タイなど、自由貿易圏の中で比較的賃金水準が低い国へと盛んに工場が進出している。メキシコはアメリカ合衆国を中心としたUSMCAの一員で、安価な労働力を求めてアメリカ側から工場が進出。GNIの規模は大きくないが、自動車の生産が多い代表的な国となる。スペインはEUの中では1人当たりGNIが比較的低く、さらに人口も多い。ドイツやフランスから工場進出。そして、タイについては自由貿易圏というわけではないが、日本との間に自動車部品については自由貿易協定が結ばれている。日系工場が多い国であり、自動車部品を輸入し自動車組み立てが行われている。ここで作られた自動車は西アジアの産油国へも輸出されている(お金持ちが多いからね)。

どうだろうか。自動車生産国にはキャラクターが立って国が多いでしょ?上記のようにグループ別にまとめると理解しやすいと思うよ。とにかくスペインでは自動車生産が多い。もちろん輸出も多いはずで(安価な労働力を理由として自動車生産が行われているのだから、当然外国への輸出が目的。スペイン国内の販売を目的とした現地生産ではない)。人口当たりの輸出台数が多いEがスペイン。なお、輸入もそれなりにされているようだが、2005年には450万台の輸出に対し400万台の輸入、2015年は500万台の輸出に対し200万台の輸入。いずれにせよ輸出の方が多いことはわかるね。輸入が多いことについてはEU圏内であり、自由貿易により他国のものが入ってきやすい状況にあることだけ考えてくれたらいいや。例えば東欧で作られたより安い自動車が輸入されているのかもしれない。

さて、僕としてはみんながここまで理解してくれたら十分だと思ってる。残る2つの国は判定は必要ないよ。カンで当てたらいい。イスラエルもモロッコも君達はよく知らねいでしょ(笑)

あえて言えば、イスラエルは1人当たりGNIが高い国。西アジアの地中海沿岸に位置するユダヤ人国家で、パレスチナの地に第二次世界大戦後につくられた「新国家」。ユダヤだけをキーワードとして知っておけばいい。資源は産しないが、アメリカ合衆国との結び付きが強く、経済レベルが高い。ダイヤモンドが主要輸出品目だが、精密機械などの機械工業の発達も見られる。

それに対しモロッコはアフリカ北西端の国で、狭い海峡をはさんでイベリア半島(スペインなど)と相対している。衣服工業や機械組み立て工業が発達しているが、これはもちろん安価な労働力を求めてのヨーロッパからの工場進出。1人当たりGNIは低い。リン鉱石の産出量が多く、化学肥料の生産が多い。リンは窒素とカリウムと並ぶ化学肥料の原料。また寒流(カナリア海流)に面し水産業が盛んな国で、とくにタコは日本への主要輸出品目となっている。イスラームではタコを食することは禁じられていないが、イスラームのルーツであるユダヤ教はタコが禁忌となっており、アラブ世界ではあまり好まれるものでもない。タコ焼き大好きな日本へとたくさん輸出されているんだね。もっとも、乱獲によってタコの数が大きく減ってしまったみたいだけどね。どんだけタコ焼き好きやねん、日本人!?って感じだよね

さて、こういったイメージから、DとFはどちらがイスラエルでどちらがモロッコだろうか。Dは輸入台数が300万台に達し、国内で自動車の販売台数が多いことがわかる。輸出はゼロなので自動車工場はないのだろう。これに対し、Fは輸入はわずかであり国内販売台数が少ないのだろう。ただ、おもしろいのは輸出は80万台ほどあり、輸入が30万台ほどなので、差し引き50万台の自動車の純輸出国ということになる。国内での販売はほとんどない経済レベルの低い国なのだが、しかし一部に自動車工場が存在しているようだ。どうかな?これをモロッコと判定できないかな。ヨーロッパとの距離の近さ、さらに賃金の安さによって衣服工場や機械組み立て工場が進出しているのだから、自動車工場が作られているとしてもおかしくない。モロッコは「ヨーロッパの工場」の地位を確立しているのだ。それに対しイスラエルは1人当たりGNIの高い高賃金国であり、こういった国には自動車工場は進出しないよね。一方で、国民が豊かなので自動車を買う経済力はある。輸入超過のDをイスラエルと判定する。

[雑感]

とにかく自動車生産台数の統計は非常に重要。2021年統計(データブック オブ・ザ・ワールド2023より)を確認すると、1位中国、2位アメリカ合衆国、3位日本、4位インド、5位韓国、6位ドイツ、7位メキシコ、8位ブラジル、9位スペイン、10位タイ。ドイツの地位が落ちていることにビックリだが、それだけヨーロッパ各地に生産拠点が移転しているのだろう。ちなみに11位以降にはポーランドやチェコなどの東欧諸国が控えている。ベスト10までが強力なのでこの2か国がランクインすることはないと思うけれど、しかし東欧での生産が伸びていることは確実に知っておこう。

またイスラエルという国が登場しているので、これについても知っておいてもいいかも。1人当たりGNIは42610ドル/人と日本より高い。モロッコは3020ドル/人であり、アフリカ諸国としては高いけれど、東南アジアのインドネシア、フィリピンなどと同じレベル。たしかに労働集約型の工業が立地しやすい理由がわかる。

<第4問問4>

[インプレッション]

西アジア地域の国がわかるかってハードルはあるかな。でも最低トルコさえわかればいいかな。シリアやアフガニスタンまでわかれば完璧なんだが、とくにわからなくてもいいと思う。

[解法]

まずはカとキの判定をしてみよう。どこが違う?とくにはっきりしているのって最東端の国だよね。これはアフガニスタン。内戦などの影響で国土が荒廃し、経済的には極めて苦しい状態にある。アフガニスタンは国際的な支援を必要としている国。この国で値が高いキが国際援助額である。

ただ、アフガススタンっていう国を知らなくても何とかなると思うよ。トルコなら分かるよね。地中海に縁したヨーロッパとの「架け橋」。アジアとヨーロッパをつなぐ海峡を挟んでイスタンブールの市街地が広がっている。イスタンブールは東西文化の結節点で、キリスト教とイスラームが重なり合った文化がみられる。アヤソフィアなど巨大モスクが市内には多く、実はそのアヤソフィアもかつてはキリスト教の教会として利用され、内部にはキリスト教の壁画もある(イスラームは偶像崇拝を禁じているので、これは極めて異例なことなのだ)。こういった魅力的な都市に観光客が訪れないなんてことがあるだろうか。一方でトルコは1人当たりGNIが10000ドル/人ほどである工業国。国際援助をさほど必要としているとは思えない。トルコの値が大きいカが観光客数で間違いない。

イギリスとフランスの判定はさほど難しくないんじゃない?フランスからみて地中海を挟んだ対岸の国(モロッコやチュニジアなどが位置しています)でKの値の高く、これをフランスと見ていいんじゃないかな。この地域(モロッコからアルジェリア、チュニジア)は旧フランス領であり、フランスとの関係が深い。観光にも多く訪れるし、経済的な援助もなされている。

Jがイギリス。よく見ると、トルコの南に位置する島国でイギリスの値が高くなっている。これ、キプロスという国でEUの加盟国でもある。旧イギリス領で、地中海のリゾート地でもある。さらにペルシャ湾沿岸でも観光客が多い国があるね。こちらはアラブ首長国連邦。世界最高の観光地の一つ、ドバイがあるね。

キの国際援助額の方では、先ほどはアフガニスタンを紹介したけれど、シリアの金額も大きくなっている。シリアは西アジアでトルコの南に隣接する国。10年以上内戦状態にあり、多くの難民が生じている。これは個人的な見解になるんだけれど、ロシアとウクライナの戦争ばかりに注目が集まっているけれど、すでに10年以上も悲惨な戦争が続いている国があり、それがこのシリア。日本はシリアにこそ援助を行うべきかと僕は思うんですけどね。

[雑感]

どうなのかな、何となくでも解けたんじゃないかって思うんだけど、みんなは正解に辿り着いたかな。観光ではトルコに注目すればいいけど、キプロスやアラブ首長国連邦が特徴的。国際援助については内戦や紛争状態にある国を真っ先に考えて欲しく、シリア→アフガニスタンがカギ。最低限トルコがわかれば(トルコには観光客が多いだろう。一方で国際援助は少ないんじゃないか)何とか正解にまで辿り着けたんじゃないかな。フランスとイギリスの判定はカンで何とかなる。

<第4問問5>

[インプレッション]

スペインはともなく、チュニジアはかなりマイナーな国だね。北アフリカの一般的な特徴(乾燥地域である。アラブ民族でムスリムである)だけ考えておけばいいんじゃない?

[解法]

写真を用いた問題。文章から検討していこう。

まず1について。これはどうなのかな。チュニスははっきりしているような気がする。西側の市街地で細い路地が入り組み複雑な街並みになっている。これが旧市街。日本でも京都のような古都を考えればいいんじゃないかな。自動車が普及してきた現代ならば、まっすぐで広い幹線道路も必要だろうけれど、昔の市街地ならば、そういった大きな道路は必要ではないし、例えば外敵の侵入を防ぎやすいことを考えれば、街路は込み入った「迷路状」の形がいいだろう。チュニスの旧市街地(写真の西側)は迷路とまでは言い難いが、複雑な街路区画になっていることは明らか。反対の東側は新市街地と思われるが、道路の幅は大きく直線的。

セビリアはそこまではっきりしていないのが、よくみるとその雰囲気は伝わるよね。こちらも西側が旧市街地なんじゃないか。街路が細く複雑に込み入っている感じがする。そもそも問題文に、この衛星画像の範囲が都市の「中心部」であり、そして都市内部に景観写真のような「旧市街」が存在していることは述べられている。セビリアでも道路の形から、西側が旧市街、東側が新市街なんだろうね。

そうなると2が誤りになるのがわかるかな。「道の幅が広い」おのは新市街であり、旧市街ではない。これが答えとなる。先にも述べたように西アジアや北アフリカの旧市街は「迷路状」の街路となることが多く、チュニスはその典型であり、セビリアもその影響はみられる。

3はどうだろうか。そもそもスペイン自体、夏の観光客の方が多いんじゃないかな。イギリスやドイツなど夏にも気温が上がらない高緯度地域のヨーロッパから、夏の暑い気候を求めて多くの観光客が地中海沿岸地域へと訪れる。家族で長期の滞在型観光であるバカンスの文化がヨーロッパにはある。セビリアを訪れるのもそういったバカンス客だろう。地中海沿岸地域はこの時期亜熱帯高圧帯に覆われ、さわやかな晴天が続く。

4もオッケイなんじゃない?「日用品を扱う店舗」とは最寄り品のことだが、「日常生活」を支えるのは生鮮食料品や日用品などの最寄り品である。こうした市場はバザールと呼ばれ、一部は観光客も訪れるが、やはり地域の人の買い物の場になっているんだろうね。近代都市においてはコンビニやスーパーマーケット。

最寄り品の反対語は買い回り品。こちらは高級品や耐久消費財(電化製品など)。都心部のデパートで一般に扱われている。こちらは日常的な買い物というわけでもない。

[雑感]

写真がちょっと見にくい気がするんだけど大丈夫だったかな。問題文にしっかり「中心部」、「旧市街」と書いてあるから判別は可能かな。

都市の街路ネタってちょっとマイナーなので苦手な人もいるだろうけど、意識しなくていいと思うよ。西アジアや北アフリカの旧市街地は迷路状の街路ができる。日干しレンガでつくられた伝統的な家屋が並ぶのだが、窓や扉などの開口部が小さく、数も少ないことが特徴。高温の外気の侵入を防いでいるのだ。日本や東南アジアのような湿気の多い地域は「風通しのいい」家が快適な家なんだけど、こういった高温乾燥地域では違うのですね。

<第4問問6>

[インプレッション]

西アジア・北アフリカの伝統的地域では女性の権利は制限され、社会進出も進まない。チュニジアについておそういった国の一つだと認識しておけば十分でしょう。

ちなみに、こういった西アジア・北アフリカの乾燥地域がたまたまイスラーム地域であるから、「イスラーム=女性差別」と勘違いしている人が多いけど、それ、全く正反対だからね。イスラームほど女性を大切にしている文化はない。女性を家にとどめておくのも、女性にはしっかり家庭を守ってもらって子育てに専念してもらうっていう、(現代ではさすがに通用しないけれど)女性を大切にする考え方でしょ。僕なんかも最近思うんだけど、女性って男性以上に外見で良し悪しを判断されちゃうじゃない?ルッキズムって奴だよね。美人がたどる人生と、そうでない人のたどる人生は違う。だからこそ女性は全員ベールで顔を隠してしまうって、こんなに平等なことってないんじゃない?日本人だってこれだけ長くマスク社会になじんでいたわけだから、顔を隠すっていう習慣、これはこれで慣れたら快適なんじゃないかな。ルッキズムのない社会、素敵じゃない?

[解法]

これは1が全てでしょ。女性の方が高い値になっている。女性が社会進出した際に主に働くのは商業やサービス業などの第三次産業。建設業や製造業などの第二次産業は主に男性だよね。また、北アフリカの伝統社会で女性の地位が低く抑えられているチュニジアでは女性の就業率は上がらない。1は「スペインの第三次産業」だよね。左列がスペイン、右列がチュニジア、上行が第三次産業、下行が第二次産業なので、チュニジアの第三次産業は2ですね。

[雑感]

イスラームは女性に優しい宗教なんだが、しかし実際のところ、女性の地位が低く抑えられ社会進出が進まない世界もまた「イスラーム圏」なのである。このように考えればいいと思うよ。「昔はもっと酷かったんだが、イスラーム以降はちょっとまともになった。それでも現代社会の基準から比べると、まだまだ女性の地位は低く社会進出は進まない」と。

西アジア・北アフリカのアラブ・ペルシャ圏は、イスラーム成立以前(イスラームは比較的新しい宗教なのだ)、女性の地位は極端にまで低く抑えられていた。例えば王侯たちはハーレムをつくり、多くの女性を周りにはべられしていた。女性も性的な衣装を着せられることが多く、極端な男性社会。エジプトのポールダンスをみれば、いかにこの地域で女性が性的な面を強調された存在かがわかるよね。

さすがにこれはいけないと立ち上がったのがムハンマドであり、女性は肌をさらすことを制限し、服装は地味なものとした。妻帯も一夫多妻は認めつつも妻の数は4人までに制限。これも戦争未亡人の救済だってのは有名な話だよね。戦争によって夫が死んでしまえば妻や子供は直ちに生活に困ってしまう。それを救うために、村の有力者が未亡人を自宅に入れ、生活の保障をする。実に合理的なシステム。

日本なんてつい最近まで「二号さん」とか「お妾さん」なんていう言い方がまかり通っていて、社会的地位の高い者はむしろ何人も愛人を囲うのが普通だって言われてた社会じゃない?1500年も前に妻帯についてキチンとした決まり事をつくったムハンマド=イスラームは凄いと思うよ。

極端に女性が虐げられていた社会、それを緩和し、ちょっとでもまともな社会に近づけたのがイスラームなのだ。しかし人間の業は深く、伝統社会の考え方から脱することは難しい。昔より多少はマシになったんだろうが、なかなかこの地域の「女性差別」意識は改まらない。イスラームはそもそもコーランの下に万民が平等な世界の実現を目指したものであり、そこに男も女もないんだけどね。もっと言うならば、イスラームでは階級区分がないので、王様も貴族も存在しないことになる。でも、イスラームの聖地があるサウジアラビアこそ典型的な王侯貴族による専制君主国でしょ?これについても考えるべきことは多いと思うよ。