2019年地理A追試験解説

たつじんオリジナル解説【2019年地理A追試験】           

 

【1】[インプレッション]いきなり図法の問題。いかにも地理A的とも言えるんだが、しかし問われている内容は「正積」か「正方位」かということであり、これは図から直接読み取れば明らか。さほど難しくないだろう。「対蹠点」についても、問題文中に「地球の反対側」とあるのだから、これも判定は容易。

 

[解法]図法に関する問題だが、図法の名称が問われているわけではないので、特別な対策が必要とも思わない。選択肢は「正積」と「正方位」だが、文字通り「面積が正しい」、「方位が正しい」と捉えればいい。

図1参照。例えば世界地図の中にはグリーンランド高緯度の大陸が大きく引き伸ばされて描かれ、明らかに面積のバランスがおかしいものもある(メルカトル図法などその例ですね。とくに重要ではありませんが)。しかし本図に関してはそのようなことはないようだ。グリーンランドの面積はオーストラリア大陸の半分程度に描かれており、これは実際のバランスに従って作図されているとみていいだろう。「正積」が正解。地球において、南極大陸の半分の面積がオーストラリア大陸で、さらにその半分がグリーンランド。なるほど、そういったバランスになっているようだ。

さらに対蹠点(たいせきてん)について。とくにこの言葉を知る必要はない。「地球の反対側」とすでに問題文に書かれているではないか。イギリスからみて、地球の反対側ってどこだ?北半球のイギリスからみて反対側は当然南半球。世界標準時子午線の通るイギリスの反対側なので、経度180°付近ということになるだろう。もちろんこの経度を考慮しなくても、何となくで解けるね(笑)答えは「ニュージーランド」。かつてイギリスの植民地だったニュージーランドの島々では、西ヨーロッパと同じような気候がみられるのです。高緯度であり夏は涼しいが、暖流や偏西風の影響で冬の気温は緯度のわりに高い。「雪の降らない北海道」って感じかな。

 

[今後の学習]図法は、中学で学習する範囲までが出題される。正距方位図法の読解は頻出なので、ぜひチェックしておこう。

その一方で、図法の名称についての出題例はほとんどない。モルワイデやサンソン、グードといった図法の名称を聞いたことがある人もいるだろうが。これらはノーチェックでいい。

 

ただし、正積図法の特徴として「分布図に利用される」ことだけはぜひ知っておいて欲しい。分図図の代表例にドットマップがある。どの地域にどれぐらい分布しているか、点の位置と数で「絶対分布」を表す図。こういった図の場合、地域ごとの面積のバランスがバラバラだと実際の分布状況をイメージすることが困難となる。例えば、グリーンランドの面積を1とするとオーストラリアは2、南極は4であるが、メルカトル図法のように面積が正しくない図では、そういったバランスはわからない。仮にグリーンランドとオーストラリアにドットが10個ずつ示されているとして、グリーンランドが大きく描かれるメルカトル図法では、分布の密度が「グリーンランド<オーストラリア」であるが、実際の面積を考えた場合、本当の密度は「グリーンランド>オーストラリア」である。正積図法は分布図に利用される。非常に重要!

 

【2】[インプレッション]変わった形式の問題。大陸の形状がポイントになっているのだが、わかるかな。南アメリカだけを解答する問題なので、さほど難易度は高くないかな。

 

[解法]四つの大陸の自然的特徴が問われている。「最高点の標高」と「最大流域面積の河川の流域面積」が表に示されているが、とりあえず①はわかりやすいんじゃないかな。世界最高峰のエベレスト(チョモランマ)がそびえるのはネパールと中国の国境で、もちろんユーラシア大陸。①がユーラシアとみていいだろう。

大陸内に新期造山帯の地形がなく、全体として平坦であるオーストラリア。東岸を走行するグレートディヴァイディング山脈は規模の大きな地形だが、しかし形成年代が古く(古期造山帯である。2〜3億年前)長期間の侵食によって標高の高い部分は削られ、なだらかな丘陵状の地形となっている。最高点の標高も低く、④がオーストラリア。

さらに南アメリカなのだが、もちろんこの大陸については「最大流域面積〜」がポイントになる。南アメリカ大陸の西岸に沿って大陸の分水嶺(流域を分ける山脈)であるアンデス山脈が走行するこの山脈の西側の狭い範囲に降った雨のみ太平洋側に注ぎ、広大な東側にアマゾン低地に降った雨は巨大なアマゾン川の流れとなって大西洋側へと流下する。そう、アマゾン川は世界最大の流域面積を誇る河川なのだ。②が南アメリカ。

残った③がアフリカ。大陸最高峰は、赤道に近いキリマンジャロ山。大地溝帯に形成された成層火山。噴火が繰り返され、火山灰と溶岩とか何重にも積み重なった。アフリカ大陸には北西部にアトラス山脈という新期造山帯があるが、最高峰キリマンジャロはそれとは関係ないので注意。

また、アフリカ大陸最大の流域面積を有するのは、赤道直下の広大な盆地を流域とするコンゴ川。流長はナイル川の方が長いのだが、流域面積はコンゴ川が広い。

 

[今後の学習]単なる知識問題として解いてしまってもいいのかな。例えば「世界最高峰のエベレスト山の標高は9000m近い」とか「世界最大の流域面積を持つのはアマゾン川である」と言ったように。これぐらいは知っておいてもいいかもね。

 

【3】[インプレッション]この問題、いいですね!良問というか、本年度ベストワンの名作じゃないですか?気候の特徴を、成因を交えつつ文章で問うている。選択肢③には「22℃を超える」とあって、一瞬ケッペンが問われているのかと思うけれど、むしろ消去法で他の選択肢の中の言葉をカギに解く問題なので、関係ないとは思います。

 

[解法]気候環境の特徴について文章で問うている。それぞれ「成因」が問われているのが特徴的。地理という科目において、気候は常に因果関係が問題とされる。なぜそういった気候的事象が生じるのか。そういった観点から文章を解析していこう。

 

最もわかりやすいのはD。ペルーの沿岸部。南アメリカ大陸の太平洋岸低緯度(エクアドル・ガラパゴス諸島からチリ北部にかけて)は、ペルー海流の影響で少雨地域(乾燥地域)となっている。ペルー海流は南極方面から赤道付近へと冷たい海水を流し込む寒流で、低空域の大気を冷却することで逆転層をつくる。大気は通常の状態は、上空で低温、地表面・海表面付近で高温となるのだが、これが反対の状態を逆転層と呼ぶ。密度の高い空気が低いところにあるので上昇気流が生じず、雲が発生しにくい大気の状態となる。これを「大気の安定」という。安定というと良い言葉のようだが、大気は安定しちゃいけない。雲ができず、雨が降らないのだ。

Dは②となる。「寒流」がキーワード。年降水量が100ミリを下回るというのはかなりの少量。寒冷地域で蒸発量が少ない地域ならこれでも湿潤気候となりえるが、Dのような低緯度地域は高温で蒸発量が多く、激しく乾燥することになる。砂漠が広がっておりナスカの地上絵がちょうどこの辺りなので、想像しやすいんじゃないかな。雨が降らず、さらに空気も動かない(風が吹かない)のだから、地面に描かれた絵は何千年も消えないのはなるほど納得なのだ。これが②に該当するのは確実。

さらにE。アルゼンチン東部の沿岸部なのだが、これ、ちょうど日本の反対側だよね。地球の裏側すなわち対蹠点。緯度35度で大陸東岸という共通点がある。東京と同じような気候が現れるとみていい。温帯に含まれ、四季が明瞭。降水量も豊富であり、移動性低気圧や前線による降雨もみられる。③が該当するとみていいんじゃないかな。

そしてここからは逆に文章から場所を特定しよう。①がおもしろい。「亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)の影響下にある時期には乾季となる」とある。亜熱帯高圧帯は、緯度25度付近に形成される高気圧の帯。中緯度高圧帯とも言うね。赤道付近で上昇した空気(熱帯収束帯における上昇気流)が上空を移動し、この緯度帯で下降する。空気が上から押しつけられることによって密度が上がり(自転車のタイヤに空気を入れるポンプを考えてみよう。上からレバーを押し込むことにより、ボンベ内の密度が高まっている。つまり気圧が上がっている)、一帯は高気圧となる。

この影響によって緯度25度付近は年間を通じて少雨気候となり、さらにl気温が高く蒸発量も多いことから乾燥する(降水量<蒸発量が乾燥だったね)。そのため、緯度25度付近には広く砂漠がみられる。北アフリカ(サハラ砂漠)やアラビア半島、オーストラリア内陸部などが典型例。乾燥の度合いが高く、植生がほとんどみられない。

さて、ここからが重要。この亜熱帯高圧帯、季節によって南北に移動する。正確には、赤道付近に形成される熱帯収束帯が移動するためにそれに伴って南北両半球の亜熱帯高圧帯もそれに従うということではあるのだが。とりあえず地球全体の気圧帯が移動するメカニズムは理解できているよね。北半球の受熱量が大きい7月を中心とした時期は気圧帯は全体に北上し、南半球の受熱量が大きい1月を中心とした時期は同じく南下する。

これによって生じる気候パターンは2種類。まず、北緯35度や南緯35度に生じる「地中海性気候」(*)と呼ばれるもの。北半球の亜熱帯高圧帯は7月を中心とした時期に北緯35度付近まで北上する。南ヨーロッパやアメリカ合衆国・カリフォルニア州などはこのため夏季に乾燥する気候が生じる。南半球の亜熱帯高圧帯は1月を中心とした時期に南緯35度まで南下し、この緯度帯に少雨気候(蒸発量との関係で乾燥する)をもたらす。アフリカ・ケープタウン、チリ中部、オーストラリア南部。

また、この地中海性気候については大陸東岸にはみられないことに注意。緯度35度といえば日本列島やアルゼンチン東部が該当するのだが、こちらは年間を通じて湿潤な気候がみられる。

そしてもう一つのパターン。こちらは「サバナ気候」(*)と呼ばれるもの。亜熱帯高圧帯の低緯度側への移動によって乾季が生じる。両半球の緯度10〜20度付近。北半球ならばカリブ海地域(キューバなど)、南半球ならばオーストラリア北部が典型例。北半球の亜熱帯高圧帯は1月を中心とした時期に南下し、北緯10〜20度の緯度帯に少雨気候をもたらす。南半球の亜熱帯高圧帯は7月を中心とした時期に北上し、南緯10〜20度を中心とした時期に少雨気候をもたらす。

さて、これに該当する地点はどこだろう。オーストラリアのFがそれに該当するだろう。グレートバリアリーフに面する世界的な観光地で温暖な気候がみられる。南半球の低緯度に位置し、7月を中心とした時期は亜熱帯高圧帯の影響下となると考えられる。①がFとなる。

そして最後にニュージーランドのGが残るのだが、この説明が④であることはわかるだろうか。ニュージーランドは中高緯度に位置し、偏西風帯である。日本列島とは異なって気候における大陸の影響が少ない海洋性の気候がみられ、年間を通じ穏やかな気候となる。暖流である東オーストラリア海流の影響も強い。また日本ならば季節風の影響によって夏と冬とで降水量の多い地域が異なってくるが、ニュージーランドは年間を通じ偏西風の影響を受け続け、そういった差異が生じない。この島は「雪の降らない北海道」であり、冷帯の北海道とは異なり、温帯気候となる(西ヨーロッパと同じ)。緯度は高いため夏の気温は冷涼であるが(日射量が十分でないのだ)、しかし温暖な風と暖流の影響によって冬の気温も比較的高く、凍結しない。気温年較差は15℃ほどであり、さすがに熱帯地域ほど気温年較差が小さいというわけではないが(熱帯は常夏である)、ほぼ同緯度の北海道で気温年較差が30℃であることを考えると、これは大きな違いである。夏は涼しく、冬は暖かい。そんなニュージーランドの気候を想像してほしい。

(*)「地中海性気候」や「サバナ気候」などカッコ付きで書いてはいるが、別に覚えなくて大丈夫。この名称がセンターで問われることはない。本問のように「亜熱帯高圧帯の影響で乾季がみられる」といった感じで文章の説明の仕方こそ重要。名称は無視できる。

 

[今後の学習]とてもいい問題だったなと思います。この一問だけで1コマ分の授業ができる(笑)

アルゼンチン東部のEは【9】でも取り上げられている。非常に特徴的な地域であるので、ぜひ知っておこう。

ニュージーランドについてもうちょっとコメントを。

気温についてはとにかく緯度が高いのに気温年較差が小さめであることが重要。降水量も、島の西岸と東岸とで年間の降水量に差があることもぜひ知っておいて欲しいのだが(偏西風の風上斜面である西岸で年降水量1000ミリを超える多雨、風下斜面である東岸で年降水量1000ミリに達しない少雨)、しかし季節ごとの降水量に差があるわけでなく、年間を通じて湿潤である。降水量が少ない東岸にしても、800〜900ミリぐらいの降水はあるのだから、決して「乾燥」というわけではない。

この穏やかな気候がどういった効果を生じるか。それは「年間を通じて牧草が生育する」という牧業にとって絶好の条件をもたらすのだ。この土地を植民地としたイギリスは、樹林を切り倒し牧場を開き、牛と羊を持ち込み大規模な放牧を始めた。これにより、これからニュージーランドと呼ばれることになるこの島の植生と生態系は大きく破壊されたのであった。「穏やかな気候」がもたらした災厄である。

 

【4】[インプレッション]時差計算の問題は地理A特有。でも、地理Bでのこの考え方が必要になる場合もあるし、この機会にチャレンジしてみよう。確実に!

なお、センター地理でサマータイムが話題にされたことはないので、この部分は注意しなくていい。

 

[解法]文章がちょっとわかりにくいな。「カ〜クの時刻は、それぞれ経度が120度ずつ異なる標準時子午線を基準としている」とある。地球一周が360度であるので、カ〜キ、キ〜ク、ク〜カ、いずれも経度差において120度あるってことか。3つ合わせて360度すなわち球体を一周。

クが日本なのでわかりやすい。この国の標準時子午線(明石市を通過しているね)は東経135度。ということは、キは東経15度、カは西経105度となる。ここまでオッケイかな。

時差は経度15度で1時間。地球が360度回転する間に24時間経過するわけだからね。よって経度差120度ならば8時間。120度を3倍すれば360度、同じく8時間を3倍すれば24時間。

時間は東の方が早く、西が遅い。例えば最も東に位置する国の一つであるニュージーランドは、世界で最も早く明日になる国の一つでもあるわけだ。

クの日本で早く、キの北部ヨーロッパで中間、クの北米中央部で遅い。このことを意識して問題文を参照していこう。

まずJについて。カの北米で17時なのだから、キではそれより8時間進んでいるだから、8を加えて25時。すなわち翌日の午前1時となる。「2020年7月25日1時」が正しい。これは誤文。

さらにKについて。ク で20時なのだから、キではそれより8時間遅れている。20から8をマイナスして12時。「2020年7月24日12時」である。これも誤り。以上より④が正解。

 

[今後の学習]こういった問題で「誤・誤」となるのはちょっと珍しいな。「正・誤」や「誤・正」のパターンが多い。ただ、本問については数値で答えが出るので判定にあいまいな部分がない。さほど迷うことはなかったと思う。

単なる時差ではなく、「東が進み、西で遅れる」という地球の自転を意識した時差計算の捉え方が非常に大切になってくる。感覚ではなく、しっかりとした理解が必要だね。

 

【5】[インプレッション]第1問で地形図問題というパターンは決して珍しくない。設定は車窓からの眺めだが、単に地形的特徴を問うているものだろう。オーソドックスな問題とみていいんじゃないかな。

 

[解法]地形図問題。地形図のスタイルは最近新しいものに改定されたが、本問は旧来のものを用いている。

①;「付近にほとんど家屋がない」が最大のキーワードだと思う。家屋は小さな四角形によって示されている。周囲にそういったものがみられないものとして、Sが該当すると思われる。「谷」とあるが、等高線が込み入っていて、山間部であることは確か。北東と南西にそれぞれ山頂(三角点が置かれているからわかりやすいだろう)があるので、この位置が谷となっていることは予想できる。

②;「進行方向の左側」に「斜面」がみられることをまず確認しよう。列車はサからシに向かって進んでいる。JRの線路を辿ってみよう。PからQへ向かい、大きな橋を渡り、湾曲してRを経由しSへ向かっている。Pでは左手に、河川を挟んで斜面がみられる。Qも同様に河川の向こう側に斜面がある。河川の北岸に当たるQで列車が東から西に向かって走っていることを考えると、左手は南側。こちらもやはり河川の向こうに斜面がある。あれっ?全部条件は同じだね。

ということは「広い平地には市街地」で考えるしかないかな。それならばシンプルに、最も建物が多くみられ、平坦な土地が開けているように見えるPがこれに該当するんじゃないかな。二重円で表される市役所も位置している。

③;「川を渡り」や「大きく曲がっていく」とあるが、これが具体的にどの場所を示しているかはわかりやすいね。「渡ってきた川」とあるのだから、河川を渡った後の地点としてRがこれに該当。

④;ということは残ったQが④となるのかな。なるほど、南側の斜面には「針葉樹林」の土地利用記号がみられる(本問では地図記号は問われていないことに注意。土地利用記号こそ重要なのだ)。Q付近ではとくに鉄道と大きな道路が並走している。この道路については、4点ほど注目して欲しいところがある。一つは着色されているところ。本来の地形図はカラー印刷なので、やや茶色っぽい色で塗られているのだが、センター問題はモノクロ印刷なのでそこは薄いグレーに見えるね。これ「国道」の記号。また、道路の中央に点々が連続して描かれている。これは「有料道路」の記号。そして3つ目に注目して欲しいのは、この道路が他の道路と交わっていないという点。拡大するとよくわかるんだが、Qのちょっと東、他の国道(着色されている。ただし点々はないので、こちらは有料道路ではなく一般道)と立体交差している。西側では小さな道路がこの道路の下を通過している箇所があり、さらにその西では陸橋もつくられている。有料道路なのだから、他から勝手に入って来られては困るよね。本図の範囲外にインターチェンジがあって、そこに設けられた料金所でお金を払って(というか、ETCか)、自動車がこの道路に入ってくる。「自動車専用道路」であることはわかると思う。自動車専用道路の多くが速度制限が100キロに達する高速道路であるので、これもそれに該当するとみていいんじゃないかな。本来ならインターチェンジが描かれているともっとわかりやすいのだが(あるいはパーキングエリアでもいいんだけどね)、「有料」である「国道」である時点で、高速道路と判定していい。

 

おまけの4つ目。さらに道路の南側にケバケバ線というか、ムカデの足のような短い線が並んでいるのがみえるかな。これ、「土の崖」の記号。崖というと極端だけど、ちょっとした急斜面を考えればいい。山すそを削って、高速道路を通しているのがわかるよね。あるいは、図の中央に近い「近金」付近では、高速道路の北側に沿って「土の崖」がみられる。「出」と書かれている低地から、一段高いところを高速道路が走っている様子が窺える。「土の崖」は地形の高低を表すのに非常に便利な記号なので、その見方を覚えておこう。

 

[今後の学習]本問は(細かい部分をみる必要はあるけれど)、さほど難易度の高い地形図問題ではなかったと思う。選択肢③では土地利用記号が問われていたが、これは非常に重要なのでチェック。さらに選択肢④で高速道路が取り上げられており、これも大切。「高速道路」の記号は存在しない。「有料道路」の記号からそれを読み取るべきであり、また高速道路は原則として「国道」であるので、着色されていることも確認する。もちろん、単なる「国道」は日本国中に張り巡らされているし、観光用の道路など国道ではない「有料道路」もある。それぞれの道路の特徴を図から読み取る練習もしておこう。

 

【6】[インプレッション]おもしろい問題ですね。ヒートアイランド現象に関する問題は、それが発生する要因を問うパターンが多いのですが、これはどうなのかな。

 

[解法]ヒートアイランド現象に関する問題。都市内部の気温が周辺地域に比べ上昇する。自動車の排ガスやエアコンの排熱などの生活熱が滞留することによって気温が上がる。風通しをよくすることや、緑地を増やすことがその緩和策となる。

誤りは④。生活熱の排出は年間を通じてみられるものであり、ヒートアイランド現象は夏だけに限るものではない。例えば都心部のゲリラ豪雨など、ヒートアイランド現象による災害は夏に顕著にみられる印象もあるが、だからといって冬に無関係な事象ではない。

 

[今後の学習]ヒートアイランド現象そのものはみんなもよく知っていると思うので、ポイントはその出題のされ方だね。

最重要の選肢は②。建物の配置を工夫して、風通しをよくすることで気温の上昇が抑制できる。こうした工夫をぜひ知っておこう。

それから、「原因」や「理由」が多く問われるのもセンター地理の特徴ではあるので、選択肢①も当然重要。地面をアスファルトやコンクリートで覆い尽くすことが都市内部の気温上昇の一つの要因。

③については曖昧だが、都市は決して内陸部だけにあるのではなく、沿岸に位置している。そうした都市を考えれば「沿岸部でもみられる」は決して間違った内容ではない。

 

【7】(図が公開され次第、解説をします)

 

【8】[インプレッション]最近こういった感じの問題が多いね。内容的にも形式的にも。問題そのものの難易度は低いみたいだけど、内容をしっかり把握し、多くの教訓を導き出して欲しい。

 

[解法]災害に関する問題。津波についても取り上げられており、その理解を助ける良問となっている。

a)は余震について述べている。タが該当。「すぐにまた地震が連動して起こる可能性」とはまさに余震のこと。

b)は津波についての説明。「川が逆流して」という部分にとくに注目して欲しい。津波は、上方から降りてくる巨大な波頭(なみがしら。盛り上がった波のいただき)ではなく、下から這い上がってくる水流なのだ。海底地震を原因として、波動が沿岸に押し寄せる。それだけに深い入り江の奥の谷などでは、我々が一般に思う以上に河川が逆流つまり津波被害が及ぶことがある。チに該当。浸水想定範囲などをハザードマップを用い、確認しておく。

(c)は災害の記録と記憶。ツに該当。災害から学ぶことは多い。災害を風化させず。その教訓をいつまでも後世に伝える。

シンポルな問題ではあるが、深みを感じる良問である。

 

[今後の学習]問題そのものは非常に簡単だと思う。しかし、だからといって読み捨ててはいけない。深いところまで読解し、心に刻む。

最も重要なのは津波に関する表現だろう。「逆流」とある。河川(というか谷というべきかな。もっとも、谷には河川が流れているのが普通なので、「河川=谷」とみていいが)に沿って、海水が激しい勢いで遡ってくる。海底地震の波動が沿岸に達し、海水を内陸部に向かって押し上げるのだ。津波はもちろん高波の一種なのだが、上方から襲いかかってくる高い波というより、海底から這い上がってくる水流というイメージの方がしっくり来るんじゃないかな。

 

【9】[インプレッション]自然環境に関する問題だが、キーワードが多く含まれているので、解きやすいんじゃないかな。オーソドックスな良問な気がします。

 

[解法]自然環境を中心とした問題。地形や気候、植生、家畜などがキーワードになっているね。

Aはどこだろうか。イタリア北部?ドイツ南部?それともアルプス山脈かな。ちょっとわかりにくいので、逆に選択肢の文章の方から考えてしまおう。

最も明確なのが、選択肢③。パンパというキーワードが含まれている。アルゼンチン東部に広がる温帯草原と考えていい。これ、Dでしょう。

さらに選択肢①に「サバナ」とある。これは熱帯草原と捉えていい。厳密には「疎林と長草草原」であるが、雨季と乾季のみられる熱帯によくみられる植生。植生に関するワードはこのようなカタカナ言葉も重要なので確実にしっておこう。サバナが「疎林と長草草原(熱帯草原)」、ステップが「短草草原」でこちらは乾燥帯にみられる。ツンドラは北極海沿岸などにみられる「地衣・蘚苔」が夏に繁茂する荒地。通常は氷雪に覆われている。

おっと、脱線しました。サバナはとにかく熱帯なので、低緯度にみられるはず。Bが該当するでしょう。ケニアかな?

さらに②。「草原」とあるね。先ほどのパンパ(温帯草原)やサバナ(熱帯草原)を例外とすれば、一般に草原は乾燥帯にみられるもの。乾燥帯の中でもとくに乾燥の度合いが高いと全く植生のみられない「砂漠」になってしまうので、半乾燥の「ステップ」について草原と考えるといいかも。

さらに家畜として「羊」が挙げられているが、これも乾燥気候に適応するものだね。羊の毛は皮膚からの過度な水分蒸発を防ぐものであり、乾燥気候に適応したもの(乾燥とは「降水量<蒸発量」だったね)。Cのモンゴルが該当するとみていいんじゃないかな。草原の広がるステップ(半乾燥)国。移動式の住居を用いた「遊牧」が伝統的に行われていた地域。

以上より、Aについては④を正解とする。「標高差のある山岳地域で、夏の高所(高原のアルプ=放牧地)、冬に低所(山麓の畜舎)に移動する牛の放牧」は「移牧」である。アルプス山脈やピレネー山脈などヨーロッパ南部の山岳地域で行われる。

 

牧業に関する言葉は非常に重要なので、意味と用法を確実に理解する。とくに遊牧と移牧を混乱しないこと。

 

牧畜・・・一般名詞。家畜を飼育すること。

放牧・・・一般名詞。家畜を放し飼いにすること。

遊牧・・・固有名詞。ホイットルセー農牧業区分の一つ。広大な土地で草地や水場を求め、家畜を移動させて飼育する。

酪農・・・固有名詞。ホイットルセー農牧業区分の一つ。牧場で乳牛を飼育し生乳を得る。乳製品の加工も行われる。

移牧・・・固有名詞。酪農の一種。アルプスやピレネーなどヨーロッパ南部の山岳地域で行われる。夏季は高原のアルプで放牧、冬季は麓の村で舎飼い。

 

移牧は「垂直方向の移動」と覚えておく。夏は涼しいところ、冬は暖かいところ。季節差を利用した牧業であるので、例えばアンデス高原のような季節差の明瞭でない低緯度地域で行われないので注意。「低緯度=気温年較差が小さい」は基本だったね。赤道周辺では年間を通じて太陽からの受熱量が変わらないのだ。アンデス高原では、標高の高いところ(耕作限界を超えた高所)は草地となっており、リャマやアルパカが「遊牧」されているが、もちろんこれは「移牧」ではない。

 

[今後の学習]問題自体はオーソドックスでとても良かったと思います。でも、だからこそ問題の分析は深く行ってください。とくに「解法」でも述べているように、「移牧」という言葉の定義は極めて重要。ホイットルセー農牧業区分のひとつである「遊牧」と「酪農」。移牧は酪農の中に含まれるものであり、さらに細かい区分となる。遊牧と酪農は同じレベルの言葉として語られるものだが、移牧はワンランク下のレベル。本来、混乱するべき言葉ではないのだが、用語の定義を曖昧にしておくとこんなつまらないところで躓く(つまずく)ぞ!

地理は理系科目であるので、言葉の定義は極めて厳格となるのです。感覚優先の文系科目とは違いますよ!

 

【10】[インプレッション]あれ、これ、難しいぞ。。。解答できるんだろうか。

 

[解法]これ、難しい。例えば、工業用水について「工業が発達している国で割合が高い」と考えてもいいが、先進国アメリカ合衆国だけでなく、今や中国こそ世界最大の工業国となっている。ちょっと判定しにくい。

さらに生活用水だが、「人口が多い国で使用量が多い」と考えるのが普通だろうし、年間水使用量に生活用水の割合をかければ、生活用水量が算出できるので、判定は簡単なようにも感じる。しかし、経済レベルが全く違う国が含まれている(1人当たりGNIは、アメリカ合衆国とインドとの間で数十倍もある)ので、1人当たりが使用する生活用水の量も違うだろう。決して短絡的に人口と結びつけることはできない。

 

というわけで過去問に手かがりを求めよう。過去にこういった問題が出題されている。

 

[2001年度地理A本試験]

次の図2は、アメリカ合衆国、タイ、日本、フランスの4か国の年間水使用量のうち、工業用水、生活用水、農業用水の各部門が占める割合の推定値を示したものである。図2を説明した文として最も適当なものを、下の①〜④のうちから一つ選べ。

 

(図2の内容を表にしてみました)

 

アメリカ合衆国

タイ

日本

フランス

工業用水

45

33

69

生活用水

13

17

16

農業用水

42

90

50

15

単位は%。統計年次は、アメリカ合衆国が1990年、タイ、日本、フランスが1987年。『世界の資源と環境1998−99』により作成。

 

① 人口が多い国ほど、年間水使用量に占める工業用水の割合が高い。

② アメリカ合衆国やフランスにおける年間水使用量を工業用水と農業用水とで比較すると、両国とも、工業用水の方が少ない。

③ 稲作で多量の水を必要とするため、タイや日本では農業用水使用量の占める割合が3部門中最高である。

④ 国土面積が広い国ほど、年間水使用量に占める生活用水の割合が高い。

 

正解は③であるのは明確だね。①は誤り。人口は「アメリカ合衆国>日本>タイ=フランス」だが、工業用水の割合はそれとは全く違う。②も誤り。ともに工業用水の方が多い。④については、面積が「アメリカ合衆国>フランス=タイ>日本」であることを考える。生活用水の割合はこの順にはなっていないね(フランスとタイって面積と人口がほぼ同じなのだ)。

選択肢③においては「米作地域で農業用水の割合が高い」ことが説明されており、最も特徴的な指標である。例えば、生活用水はアメリカ合衆国も日本もフランスもほとんど差がない。アメリカ合衆国は「無駄遣い」の国のイメージもあるのだが、1人当たりの生活用水の使用量についてはあまり差がない(というか、むしろ低い)。タイのみ極端に低くなっているが、発展途上国は1人当たりの使用量が少ないということだろうか。さらに工業用水だが、これも先進国で割合が高いという傾向が一応あるようだ。しかし、ちょっと気になるのはフランスの圧倒的な高さ。フランスは先進国であるとはいえ、日本やアメリカ合衆国に比べれば工業国というイメージはない。例えば、工業用水を必要とする業種の一つが鉄鋼業(製鉄業)であり、石炭の燃焼によって鉄鉱石を精錬する際に大量の工業用水を必要とする。日本とアメリカ合衆国は世界的な鉄鋼生産国であるのに、フランスはとくに鉄鋼業の発達した国でもない。それでも工業用水の割合は圧倒的なのだから、よくわからない。他の用途(生活用水と農業用水)の割合が低いため、相対的に工業用水が高い値となったのだろうか。そう考えると、タイで工業用水、生活用水ともに低いのは、逆に農業用水が極めて重要であるからこそ、相対的にこれらの値が下がっただけなのか。正直、分析のしようがないデータではある。

それに対し、農業用水については明中傾向があり、それが「米作地域で農業用水の割合が高い」というセオリーなのだ。これは絶対的な真理と考えていいんじゃないか。東アジアから南アジアなどのモンスーンアジアでは高温多雨の自然環境であり、米作が盛んに行われている。米のほとんどは水田耕作により栽培される。もちろん大量の水が必要。小麦やイモなど他の作物を主食とする地域より、農業用水の割合が高くなって当たり前なのだ。

 

さて、長々と過去問の説明をしてきたが、これをふまえて本年の問題を検討していこう。「米作=農業用水」と考えてしまっていいと思う。中国とインドは小麦も主穀の一つとはなっているが、やはり米を主食とする人口が多く、日本と同じモンスーンアジアの国々である。農業用水の割合が高いアとウが中国とインドのいずれかとなり、残ったウがアメリカ合衆国となる。なるほど、先進国は「工業用水の割合が高い」というセオリーも過去問において確認したが、それも成立しているようだ(ただ、何度も言うが、中国の方が圧倒的な工業力を有していることは間違いない。アメリカ合衆国の「製造業」は、むしろコンピュータソフトなど「サービス」部門へと移行している)。

残ったアとイについては、単純に工業の発達の度合いで考えてしまっていいと思う。鉄鋼や自動車の生産において中国は世界トップの座にある。もちろんインドも近年の工業力の成長にはめざましいものがあるが、しかし、現時点は中国に敵うものではない。「工業用水」の値が小さいアがインド、イを中国とし、正解は⑤。ここで答え合わせ。。。たしかに⑤が正解。よかった(笑)

 

[今後の学習]部門別の用水の使用割合の問題ってこれまでほとんど話題にならなかったので、なかなか取りつく島がなく、難儀してしまった。とりあえず解法でも述べたように、2001年の問題が参考にはなると思う。「米作地域で農業用水の割合が高い」。これを絶対的なセオリーとして戦おう。

 

【11】[インプレッション]誤文判定問題。燃料資源の問題だが、統計を基準に考えれば簡単なんじゃないかな。

 

[解法]これは簡単だと思う。ソウルは韓国の首都だが(これは絶対に知っておいてね。人口1000万人規模の巨大都市は知らないといけない)、韓国は日本同様に燃料資源の産出国ではなく。原油にしても海外からの輸入に依存している。②が誤り。

他の選択肢もチェックしておこう。

①;インドでは、牛糞が燃料として利用されている。台所には乾燥させた牛糞が高く積み上げてあるのだ。牛は草食だから臭いはあまりないから大丈夫。

③;これはとくに考慮しなくていいかな。

④;ブラジルではサトウキビから抽出したアルコールをガソリンの代替品にしているね。サトウキビカーが走っているのだ。

 

[今後の学習]統計が重要となってくる。韓国と日本は「人口密度が高い工業国であるが、資源を外国に依存し、食料を輸出する余裕はない」というキャラクターを共有している。よくあるのが「日本(韓国)は米の輸出国である」という正誤判定ネタ。もちろんこれは誤り。日本と韓国(そしてバングラデシュも)は農業に適した気候環境を有する国であるが、人口が過密であり、食料の自給は決して十分ではない。

今回は資源であるが。かつてイタリアをテーマとして「タラントでは付近で産出される石炭を利用した鉄鋼業が立地」という文章が正誤判定問題で登場した。これも誤り。タラントはイタリア半島南部の港湾都市であるが、原料(石炭と鉄鉱石)を輸入に依存した臨海型の製鉄所が設けられている。ちなみに、イタリアも穀物の自給率は低く、小麦を輸入している。

この3カ国は何となくキャラ的に重なるところがあるね。もっとも、地形的には火山国の日本とイタリア、安定陸塊の韓国っていう違いはあるけれど。

 

【12】[インプレッション]パーム油が登場!非常に重要な農産物加工品であるのだ。

 

[解法]油脂作物に関する統計問題。大豆油はもちろん大豆の加工品であり、パーム油は油ヤシから採取された油脂。

統計をそのまま当てはめて解いてみよう。大豆の上位生産国はアメリカ合衆国、ブラジル、アルゼンチン。アジア原産でありながら、新大陸とくに南米で生産が多いことが特徴。アメリカ合衆国では五大湖の南側のコーンベルトでトウモロコシと輪作され、家畜の飼料とされている(混合農業)。このことからFを大豆とする。中国での生産も多いようだね。

パーム油が得られる油ヤシは熱帯の高温多雨の自然環境に適応するもの。インドネシアとマレーシアが生産上位国。マレーシアでは、農園(プランテーション)での中心作物が天然ゴムから油ヤシへと植え替えられた、かつてイギリス人によって農園が開かれた際には、彼らが必要とする(自動車のタイヤに利用するのだ)天然ゴムが主に栽培されたが、独立によって農園が国営化あるいは現地資本(マレー人)による経営となると、労働コストの高い天然ゴムは避けられ、機械化作業の容易な油ヤシへと作物の植え替えが進んだ。Gが油ヤシである。

さらに文章の判定。カには「搾りかす」という言い方が含まれているね。これはもちろん大豆。既に述べたように大豆は家畜飼料となるのだが、油分が多く、これを取り除いた「搾りかす」こそエサとしては適している。大豆は、まず油を採取し、大豆油として重要な生産物となり、さらにその搾りかすも飼料として重宝される。万能の作物なのだ。

さらにキ。「石鹸」の原料としての利用が比較的オーソドックスなんじゃないかな。従来より教科書ではそうした記述がなされている。これが「パーム油」である。ただし、ここでは他の用途にもぜひ注目して欲しい。まず「食用」は非常に重要。日本で販売されている加工食品に使われている食用油(植物油)は現在パーム油が多い。かつてはトウモロコシ油や大豆油が多かったのだが、今はインドネシアやマレーシアから輸入したパーム油が主であり、需要が拡大している。我々の食生活に欠かせないものとなっている。さらに「ディーゼル燃料の原料」。パーム油はもちろん燃料にもなり、マレーシアなどではガソリンの代替品としての研究も進む。トウモロコシやサトウキビからアルコール燃料が採取され、植物性バイオマスとして重要であるのはよく知られた話とは思うが、むしろ最も将来性がある「資源」として注目されているのは油ヤシであり、パーム油なのである。

以下は参考までに。

パーム油の需要拡大とともに、油ヤシの栽培地域も同様に拡大している。インドネシアでは熱帯雨林を切り開き油ヤシ農園を開発していることにより、「熱帯林の減少」が生じている。ヨーロッパではこれに抗議し、東南アジア地域からのパーム油の輸入を行っていない。たしかに人間の食料を確保するために熱帯林を失うことは自然に対する冒涜であり、さらに将来的に我々人類の生存をも脅かすことにつながる。早急に改めるべき姿勢である。

ただ、僕は個人的には思うのだが、パーム油は燃料資源でもあるのだから、この生産量の拡大はむしろ石油など化石燃料への依存度を低下させ、将来的なエネルギー問題の解決に直結するのではないか。

さらに言えば、熱帯林は失うが、その跡地に再び植物(油ヤシ)を植えているのだから、必ずしも「植物が減った」という状況にはならないのではないか。実は熱帯林には老木が多く光合成が活発ではないため、酸素の供給量は少ないというデータもある。現状維持で「熱帯林を維持する」のではなく、パーム油といった新エネルギーの拡大によって「攻めるエネルギー政策」をとってこそ、地球の未来はあるんじゃないかな。

 

[今後の学習]これ、非常に面白い問題だった。僕は好きだな。とくに油ヤシの記述が興味深く、「ディーゼル燃料の原料」ってあるよね。過去にも油ヤシそしてそれから採取されるパーム油がセンター試験で問われたことがあるが、その用途として昔は「石鹸」の原料、ちょっと前は「食用油」だったものが、今回は「ディーゼル燃料」。パーム油の用途も時代とともに変化し、拡大している様子がわかる。僕の個人的な見解なんだが、油ヤシは世界を変える可能性を持つ農産物であり、もちろんその理由はパーム油が燃料として利用されうること。パーム油の生産が広まれば、それは原油や天然ガスの代替品となり、いつか枯渇するそれら化石燃料に変わり、パーム油こそ人類の主要エネルギー源となる可能性は非常に高い。

おいおい、そんな農産物が石油の替わりになるわけないやろ?と疑問に思う皆さん、いやいやそんなことはありませんよ。石炭が採掘され人類の主要エネルギー源になったのは産業革命の時期であり、せいぜい250年前。原油に至っては100年ほどの歴史しかないし、天然ガスや原子力などたった50年程度。

それに対し、例えばギリシャ文明やローマ文明は油脂採取用として地中海沿岸地域に広くオリーブ栽培を進めたし、日本も長く菜の花やヒマワリから採取された油脂が灯火用として重用されていた。その歴史は2000年よりさらに深い。人類はむしろ植物から得た油脂こそ、燃料資源として広く活用していたということ。

大豆やトウモロコシ、サトウキビからも油脂は得られ、それを化石燃料の代替品として利用することはもちろんできる。しかし、油ヤシはその名称からして「油」を得ることを目的に栽培されるものである。油ヤシの栽培が広まり、パーム油の生産が増えれば、人類の新しいエネルギー源として我々の未来を劇的に変えるものになるかも知れない。

パーム油の可能性についてはもはや書き尽くすことすらできないほど、人類の未来を背負う。パーム油の搾りかすも、炭化させることにより「バイオコークス」という石炭の代替品ともなるようだ。

とくに植物性のバイオマス(生物エネルギー)は成長中に光合成を行い、二酸化炭素を酸素に変えている。燃焼中に発生する二酸化炭素を相殺し、それはカーボンニュートラルという。このような効果もあるのだから、より積極的に普及させるべきと僕は思うのだが、みなさんはどう思うだろうか。

 

【13】[インプレッション]食事の問題っていうか、農産物の問題。オーソドックスでいいですね。

 

[解法]Jは中国、Kは南太平洋の島国、Lはメキシコ。Kの国名は不明だが、高温で湿潤な気候がみられることは十分に想像できるだろうし、その食文化もイメージしやすいはず。

最もわかりやすいものから判定しよう。スの「トウモロコシ」がもちろんポイント。これのみ写真が公開されているが、でもこの写真もよくわからないよね(笑)。トウモロコシは世界全体で10億トンが生産されている極めて消費(供給)量の大きい穀物であるが、その多くが家畜の飼料として用いられている。日本でも、三大穀物(米、小麦、トウモロコシ)のうち、最も消費(供給)量が大きいのがトウモロコシであると聞いたら驚くだろうか。それだけ家畜の飼料としての需要が大きく、家畜の肉が多く食されているということなのだ。さらに近年はアメリカ合衆国を中心にアルコール燃料の原料(植物性バイオマス)としての利用も進み、トウモロコシ価格の高騰を招くという弊害も生じている。

そんなトウモロコシであるが、食料用とくに主穀として重用されている国も少なからず存在し、代表例がメキシコである。メキシコを含む中央アメリカはトウモロコシの原産地と言われており、伝統的にトウモロコシを食材として用いてきた。タコスやトルティーヤが有名だね(写真もそうなのかな)。スがLとなる。

さらにJの中国について考えてみよう。中国では、北半部の東北地方および華北が「アジア式畑作農業」地域として小麦が主に栽培され(降水量が少ないのだ)、南半武の華中と華南が「アジア式稲作農業」地域として米が主に栽培され(こちらは多雨)、その境界線となっているのが「チンリン山脈―ホワイ川」のライン。中国は日本同様に米を主穀とするイメージもあるが、実は国土の半分は米の栽培には適さず、小麦を使った料理が中心になっている。長安や北京など古代文明が栄えた土地である。

このことから、サを中国と判定するのは容易なんじゃないかな。と言うか、写真こそないけれど「小麦からつくられた麺料理」ってラーメンのことなんじゃないかな。ラーメンが純粋な中華料理であるかどうかは判断が難しいけれど、そのルーツが中国大陸にあることは間違いないよね。サがJとなり、正解は①。

残ったKがシ。上述のようにこの国の名称はわからないが、南太平洋の熱帯の広い地域ではヤムイモやタロイモが伝統的に食されている。ヤムイモとタロイモの違いは別に覚えなくてもいいですよ。僕もよく知りませんし(笑)。ヤムイモがヤマイモっぽく、タロイモがサトイモっぽいんじゃないかな(本当かな???)。ちなみに、イモ類ってその多くが新大陸原産で、ジャガイモ、サツマイモ、キャッサバといったセンター試験に出題されるイモ類は全て南アメリカ大陸が原産地と言われている。ただし、ヤムイモとタロイモに関しては、東南アジア原産であり、Kのような南太平洋の島々へも伝えられた。熱帯は土壌が肥沃ではなく、焼畑農業によってこれらのイモが栽培されるのは、キャッサバと共通している。

 

[今後の学習]第3問問2【17】でも、中国の畑作地域と米作地域との違いが出題されている。チンリン山脈とホワイ川を結んだ線が、年間降水量1000ミリの等値線とほぼ一致し、これより北の少雨(乾燥)地域では小麦が、南の多雨(湿潤)地域では米が栽培され、地域の食文化を形成している。

このトピックは中学地理でも登場するものなので、大学受験を志す君たちはもはや常識として捉えておいて欲しい。中華料理のメニューには、米を用いたものも多いが、小麦を使った料理もたくさんあることはわかるよね。

トウモロコシを主穀とする国はメキシコだけでもないのだが(例えば、エチオピアではウガリというトウモロコシの粉を固めて作ったものが主食として食べられている)、結局のところ出題されるのはメキシコばかり。原産地であることと合わせて押さえておこう。

ヤムイモとタロイモについてはノーチェックでいいと思う。「焼畑農業」、「東南アジア原産」などがキーワードにはなるので、余裕がある人は知っておきましょうか。

 

【14】[インプレッション]ナイジェリアの宗教については他の問題でも問われていたような気がするな。地理Bだったかな、サヘル地帯の宗教というか、イスラム教の広がりについては知っておくべきだと思う。

 

[解法]各国の宗教構成に関する問題だが、イスラームが問われているのが特徴的。センター地理で最も話題になる宗教はもちろんイスラームであり、我々は正しい理解が必要。

ナイジェリアに注目しよう。ギニア湾の東部に接し、アフリカ最大の人口とGNIを有する産油国。ただし、植民地時代に民族(部族)分布を無視して境界線が引かれた名残りで、国内に多数の主要部族が分布する複雑な民族構成を持つ国ともなっている。

国土は比較的広く、赤道に近い南部(沿岸部でもある)では熱帯気候、サヘル地帯に含まれる北部は乾燥気候でステップが広がる。南部では焼畑農業によってキャッサバが栽培され、その生産量は世界1位である。北部では乾燥に強い羊などの遊牧、そして灌漑によるラッカセイや綿花の栽培が行われる。

部族構成が複雑であるだけに、宗教も多様である。主要部族に限っても、南西部のヨルバ族は伝統宗教を信仰し(ヨルバ族の分布地域はトーゴやベナンにかけて広がる。かつて奴隷としてアメリカ大陸に多くの人々が送られた。奴隷海岸である)。南東部のイボ族はイギリスの教育によりキリスト教(プロテスタント)が布教され、北部のハウサ族は「サヘルの民」でありイスラム教を信仰している。サヘル地域が岩塩が採取され、北アフリカからアラブ商人たちが多く交易に訪れた歴史がある。この時に栄えた都市が、黒人王国マリの都であるトンブクトゥ。サヘルに位置するニジェール川沿岸の都市である。アラブ商人によってイスラム教が伝えられた。

このように主要部族の一つがイスラム教を信仰しているのだから、ナイジェリアにおいてイスラム教徒の数は一定の割合を占める。カナダで割合が高い①がキリスト教として、ナイジェリアで①と並んで信者が多い②がイスラム教となる。

他は判定の必要はないが、とりあえず④が仏教。中国系住民が多いシンガポールでは仏教徒の割合も高い(なお、中国国内は無宗教であるので、仏教地域ではない)。残った③がヒンドゥー教。

 

[今後の学習]アフリカ大陸の宗教分布が重要。「アラブ=北アフリカ」であり、アラブはイスラム教を信仰しているので、「北アフリカ=イスラム教」と考えるのは基本。

ただし、イスラム教は商人の信仰する都市型宗教であり、交易路によって広まった。サハラ砂漠を越え、サヘル地帯にまでイスラム教が広められた。サヘル地帯に位置するセネガルやニジェール、マリ、そしてナイジェリア北部はいずれも「黒人・イスラム教」地域なのである。

 

【15】[インプレッション]スポーツをモチーフとした問題。興味深いですね。もちろんスポーツそのものが問われているわけではなく、宗主国と植民地の関係や宗教など人文地理的な内容がポイントになっているわけですが。

 

[解法]下線部を検討していこう。まず①から。オリンピック・パラリンピックの開催地であるが、2000年代以降だけをみても、2000年シドニー。2004年アテネ、2008年ペキン、2012年ロンドン、2016年リオデジャネイロと、アフリカを除いた各大陸に分散している。まさに国際的な大会であることがわかる。アジアも南アメリカも含まれ、この選択肢は正文。

さらに②であるが、ケニアと南アフリカ共和国について「オランダ植民地」とある。みんながオランダ植民地だった国として絶対に知っておかないといけないのは「インドネシア」。両国はこれに該当しない。②が誤りである。

ケニアはイギリスに植民地支配されていた。特産物を考えればイギリスとの関係性がみえてくるのでは。ケニアといえば何といってもお茶だね。ケニアは「ホワイトハイランド」という高原上に国土が広がるが、熱帯でありながらやや冷涼であるため伝染病の心配がなく、ヨーロッパから多くの移住者があった。イギリスによって植民地とされ、イギリス人が好む紅茶(というか茶)の栽培が始められた。

南アフリカ共和国もイギリス植民地だったのだが、実は最初にこの国にやってきたヨーロッパの勢力はオランダだったのだ。まずオランダがこの地を支配し、彼らはボーア(アフリカーンス)と自らを呼称した。しかしやがてイギリス人がやってきて、オランダ人を追いやり、植民地とした。イギリスは19世紀の世界に君臨した国であるが、それはこの地域で得られる金(マネーじゃなくてゴールドのことね)を独占したからだったのだ。

ちなみに、ケニアの公用語は英語とスワヒリ語、南アフリカ共和国の公用語は英語とアフリカーンス語。

残った③と④については検討の必要もなく、正文となる。いずれも非常に重要なことであるので、ぜひ知っておこう。

ムスリム(イスラム教徒)の女性は髪を隠すスカーフを身につけ、全身を覆うチャドルを纏い、時には顔を隠すヴェールも着用する。

東南アジアにはマレーシアやインドネシアなどイスラム教の国も多い。

イスラム教では豚は不浄として嫌われているが、他の家畜の肉についてはむしろよく食されている。ただし、それら肉についても正式の方法によって殺され、加工されたものしか食べることはできない。コーランの文言を唱え、メッカの方向を向いて羊の首をひといきに切り落とす。十分に血抜きをして、腐敗を避ける、

 

[今後の学習]「解法」では南アフリカ共和国についてちょっと詳しく述べてしまったけれど、もちろんこれらは不要な知識です。ケニアに関する事項だけは絶対に知っておこう。かつてのイギリス植民地であること、高原を中心にヨーロッパ人が入植したこと、茶のプランテーションが開かれたこと、公用語は英語とスワヒリ語(東アフリカの伝統的言語)であること。

 

【16】[インプレッション]オーソドックスな気候グラフ問題。

 

[解法]雨温図を用いた気候グラフ判定問題。暑いか寒いか、気温年較差はどれぐらいか、多雨か少雨か、季節による降水量の違いはあるか。ケッペンの気候区分は意識せず、グラフの数値を直接読み取ろう。

図1参照.ADの4地点をチェック。ACDはほぼ同緯度。Aのみ内陸部である。

低緯度のBの判定が最も容易だろう。低緯度でも標高の高い高原であれば気温が低い可能性があるが、Bは沿岸部に位置し、ここが高所とは思えない。シンプルに最も気温が高いものを選べばいいだろう。③がBに該当。他地域に比べやや気温年較差が小さいようだが、これも低緯度の特徴。夏の降水量が極めて大きいが、熱帯低気圧の影響かな。日本でも北海道まで達する台風は稀であるし、高緯度に比べれば台風の影響は間違いなく大きい。

残った3地点について。ほぼ緯度が同じということは、気温年較差も似た値になるはず。気温年較差つまり夏と冬の違いは、地軸の傾きによって生じることを考えよう。年間を通じ太陽からの受熱量があまり変化しない低緯度に対し、季節ごとの昼(日の出から日の入りまでの時間)が大きく異なる高緯度では寒暖差が大きくなる。

ただし、ここでグラフを参照すると必ずしも気温年較差が似た値になっていないことに気づく。プラスマイナス40℃を超える①に対し、②や④は30℃程度。どうだろうか、これを大陸性気候の特徴と捉えることはできないか。陸地は「固体」であり。比熱が小さい。暖まりやすく冷めやすい。海洋は「液体」であり、比熱が大きく、暖まりにくく、冷めにくい。夏はとくに暑く、冬はとくに寒くなるのが内陸部の特徴である。①をAとみていいだろう。①のグラフは降水量が少ないが、Aのモンゴルなら納得だろう。草原が広がるステップ地域で、農耕が困難であるため、羊などの遊牧が営まれる。

さて、残るは③と④である。Dが北海道のどの都市なのか具体的にはわからないのだが、どちらかといえば日本海側に近いようだ。日本列島の日本海側の地域は、季節風の影響で世界的な豪雪地帯となる。冬季極端に寒冷となる大陸内部には強い高気圧が発生(シベリア高気圧)し、風が吹き出す。これが季節風(モンスーン)であり、東アジアでは北西風となる。この風は日本海上空で湿った空気をはらみ、日本列島にぶつかる。湿った空気は山脈によって高所へ持ち上げられ、雲を成し、降水をもたらす。「地形性降雨」である。

このことを考えれば、1月や12月の降水量が多い④の北海道の日本海側に位置するDと考えるのは妥当だろう。残った②がCである。

②では降水量の季節による違いが明確となっており、とくに冬の降水量が少ない。大陸内部からの乾いた風が卓越する時期であり、雪はほとんど降らない。日本海から水分供給を受ける日本列島の日本海側とは条件が違うことを考えよう。

なお、最寒月の気温はマイナス10℃まで低下する。冬季は港湾が凍結し、使えないということ。ロシアは、大西洋側や黒海沿岸には不凍港を有するが、太平洋側には持っていない。

 

[今後の学習]気候グラフの判定は「暑いか寒いか」、「雨が降るか降らないか」である。

・気温の高低・・・低緯度ならば高温、高緯度ならば低温。標高が低いと高温、高いと低温。

・気温年較差・・・低緯度ならば気温年較差少ない。とくに熱帯気候ならば、10℃以内に収まることが一般的。

・年間の降水量・・・原則として気温に比例するが、亜熱帯高圧帯の季節的な移動(地中海性気候やサバナ気候)、大陸東岸における季節風の作用、暖流の影響など多様に考えることが必要。

 

【17】[インプレッション]文章正誤(下線部の誤りを指摘する)問題だが、統計問題になっているね。このように一見すると文章読解がポイントとなるような問題であっても、統計的事実が重要となるパターンは多い。

 

[解法]統計に基づいて考える。米の輸出国としてみんなが知っておくのは、インドシナ半島の国々(タイとベトナム)、インド、パキスタン、アメリカ合衆国。タイは長く米の輸出量において首位の国、ベトナムは社会主義国であるが市場経済化によって商業的な米の生産が急成長した。インドは緑の革命によって穀物の増産に成功し、米の輸入国から輸出国へと転化した。パキスタンが意外かも知れないが、乾燥国であり小麦を主穀とする(ナン)ものの、インダス川下流域では灌漑施設の整備によって米の西安も盛んに行われる。新大陸ではアメリカ合衆国が重要。カリフォルニア州では灌漑によって米の商業的栽培がみられ、日本でよく食べられるジャポニカ米に似たカリフォルニア米が生産される。

その一方で、米を輸出しない国も非常に重要。原則として「人口密度が高い」国をイメージすればいい。人口に比して国土面積が狭く、耕地面積が十分ではない。日本、韓国、バングラデシュがこれに該当する。日本の場合、政府の保護政策によって米の自給率は極めて高い水準に保たれてきた。また、米のトータルの生産量は減っているものの、1人当たりの消費(供給)量も同様に減っており(ピーク時の半分程度)、自給率が下がっているわけではない。しかし、過剰に生産されるわけでもなく、輸出余力はない。米の自給率は95S%である。

バングラデシュはガンジス川水系のデルタに位置する低地国であり、国土の半分ほどが耕地(その多くが水田)に利用されている。しかし、過密な人口を支えるほどではなく、一部をインドなどからの輸入に依存している。南アジアは「インド、パキスタンが米の輸出国、バングラデシュが輸入国」である。

他の選択肢も重要なので確認していこう。

①;日本ではパンや麺類の人気も高まり、1人当たりの米の消費(供給)量は減少している(地理では「消費」と「供給」は同じ意味なので知っておくといい)。ピーク時の120k g/人に対し、現在は60k g/人と半減している。

③;これは中学でも登場するネタだね。基本的な事項なので必ず知っておくこと。中国の北半分(東北地方と華北・黄河流域)と南半分(華中・長江沿岸と華南・南シナ海沿岸)とを分ける境界線が、チンリン山脈とホワイ川を結んだもの。このラインは年間降水量1000mmの等値線とほぼ一致しており、北が「アジア式畑作農業」地域として小麦などの栽培、南が「アジア式稲作農業」地域として米の栽培が行われている。稲の栽培には十分な農業用水が必要である一方、華北は気温に対する降水量が少なく(つまり蒸発量の方が多いということ。「乾燥」であるのだ)大量の農業用水が確保できないため、稲作は不可能となっているのだ。黄河の表面を流れる水流がしばしば消え去る「断流」現象が生じることと合わせて理解しておこう。黄河は泥の河なのである。

④;上記③の例外です。中国の北半部は原則として稲作が不可能なのだが、実はこれ、正確じゃない。稲の栽培に大量の農業用水が必要であり、降水量が少なく、さらに夏の気温が高いなど蒸発量もそれなりに多い華北地域ではたしかに稲作はみられない。ただし、その北の地域、中国の東北地方ほど気温が低かったらどうだろう?低温であるだけに蒸発量は少なく、年間の降水量がさほど多くなかったとしても「湿潤」の状態が保たれる。農業用水の確保は容易であり、決して稲作が不可能というわけではない。もちろん、あまりに低温であり(例えば、いくら湿潤であっても北部ヨーロッパでは稲作はほとんどみられない。ロンドンやパリは夏の気温が低すぎる)稲の生育に支障があるのなら問題外だが、品種改良によってある程度は低温に対応する稲も開発されている。そうした品種を活用すれば、むしろ平野に恵まれた東北地方は稲作の盛んな地域となる。日本でも、かつては北海道では稲の栽培は困難であったが、品種改良米の普及によって、今や日本最大の米の生産路油を誇る都道府県となっている。下線部、「灌漑」は稲作においては一般に行われるものとしてとくに重要な言葉とは思わないが、「品種改良」によって、東北地方での稲作が拡大した様子は必ず知っておいて欲しい。

 

[今後の学習]統計が文章正誤問題で問われることは極めて多い。文章正誤問題が苦手だっていうキミは、実は文章読解より、統計に関する知識が足りていないだけなのかも知れない。図表やグラフを読み解くだけではない、文章正誤問題だからこそ、統計の重要性を認識しよう。

 

【18】[インプレッション]正誤判定問題だが、このように2つの文の正誤をそれぞれ問うパターンは頭を悩ませる。本問は黄河と長江の対比のようであるが、さて解答は容易だろうか。

なお、本問についてはGの「2010年」について「2012年」に修正するよう指示されている。

 

[解法]アは黄河、イは長江。二つの河川の違いを意識して解いてみよう。

まずFについて。黄河は乾燥地域を流域に含む外来河川。とくに下流域の華北平原においては、そもそもの流量が小さいうえに、人口過密地域であるだけ必要とされる水量も多く、水不足が生じやすくなっている、これだけの巨大河川でありながら、表面に水流のみられない「断流」となることも。

さて、どうだろうか。こういった河川において「世界最大の発電量をもつ水力発電所」が存在するだろうか。ちょっと疑問である。誤りとしよう。

さらにGについて。長江の河口に位置する都市はもちろんシャンハイである。中国最大の都市であり、「経済規模が中国で最大級」であるのは間違いない。「万国博覧会」が開催されたことも事実で、年号は不明であるが(というか、センター地理でこんな細かい年号が問題とされることはない。これも無条件で正しい年号と思っていいだろう)正文とみていいだろう。正解は③。

なお、「世界最大の発電量をもつ発電所」については、長江のサンシャダムに付随する水力発電所が該当する。サンシャダムについては(名称はともかく)その規模がよく出題されるのでぜひ知っておこう。

 

[今後の学習]地名はさほど重要ではないセンター地理だが、黄河と長江は位置だけでなく、名称もしっかり知っておこう。また、本問のように対比して出題されるケースが多いので、その特徴も明確に。今回は長江の巨大ダムが出題されている。降水量が多い地域を流れ、流量が豊富。洪水も頻繁に起こり、治水対策もこのダムの一つの目的となっている。

 

【19】[インプレッション]よくある問題!なのだが、この手の問題は年次が変わるとガラッと印象も変わってしまう。とくに中国が絡むと、変化が大きくなるのだ。中国の躍進、日本の凋落。そうした状況がグラフからはっきり読み取れるだろうか。

 

[解法]東アジア4か国の貿易。モンゴルがちょっとマイナーだが、とりあえず経済規模(GNI)が小さい国であることが想像できれば十分。1人当たりGNIが低い発展途上国であるし、乾燥したステップ国であることから人口も多くはないだろう。1人当たりGNIと人口の積であるGNIについても、もちろん小さい値であるはず。

ではグラフ参照。矢印の向きによって輸出と輸入が示されている。貿易に関しては、以下の点に注意しよう。

・貿易額は原則としてGNIに比例。もちろん、GNIに比して貿易額の大きい国(貿易依存度が高い国)や小さい国(同じく低い国)もあるが、それでもGNIすなわち経済規模はおおまかな目安となる。GNIは「中国>日本>韓国>モンゴル」の順。

・日本は中国について貿易赤字(つまり輸出<輸入)。日本は全体としては貿易黒字であり、世界のほとんどの地域に対して輸出超となっているが、資源輸出国(OPEC諸国、インドネシア、オーストラリア)と中国に対してのみ貿易赤字となっている。資源国との貿易で輸入超となっているのは簡単にイメージできるが、人口も大きく国内市場も大きい中国との関係において輸出が少なく輸入が多いっていうのはちょっと想像しにくいよね。それだけたくさん、衣類や日用品などの軽工業製品、電気機械などの重工業製品を中国に依存しているということなのだ。

これだけわかれば十分なんじゃないかな。出入りする矢印が極めて細い(つまり貿易量が小さい)カをモンゴルと判定。経済規模が小さいので輸出額も輸入額も少ないのだ。

さらにキとクについては、日本との関係をみる。キを相手とする貿易は、日本の輸出超(黒字)であり、クを相手とする貿易は日本の輸入超(赤字)。このことより中国をクと判定し、残ったキが韓国。

ちなみに、日本の貿易相手国は、輸出が1位アメリカ合衆国、2位中国、3位韓国であり、輸入が1位中国、2位アメリカ合衆国である。日本との貿易額そのものも「ク(中国)>キ(韓国)」となっている点にも注目。

 

[今後の学習]解法そのものはシンプルだったと思う。「貿易額がGNIに比例する」こと、「日本の対中国貿易が赤字である」ことの2点に注意すれば簡単に解ける。

ただ、本問の面白さはここから。21世紀の世界経済の流れは「中国の繁栄と日本の凋落」。なるほど、このグラフからもそのことがはっきりと伺える。

キの韓国視点で捉えるとわかりやすい。1996年の段階では日本との貿易額が中国(ク)を圧倒的に上回っていた。韓国にとって日本は重要な経済パートナーである。それがどうだろう?2015年、なるほど実数としては日本との貿易額は増えているようだ。しかし、中国との貿易は輸出、輸入とも10倍以上に増えているではないか。韓国の主たる経済パートナーが中国へと入れ替わっているのだ。

モンゴル視点でみても、中国の存在感は圧倒的である。モンゴルの対日本貿易、対韓国貿易をみても、まだ辛うじて日本の方が上位にあるが、韓国の数値の伸び率は極めて高い。

僕はかねがね、理想的なセンター地理の問題とは「解くのは簡単だが、解き終わってから深い分析を試みることができる問題」であると言っているが、本問はまさにその典型。問題そのものの難易度は極めて低い。ただし、その背後にあるメッセージは重い。20世紀後半には「ジャパン・アズ・ナンバーワン」として隆盛を誇った日本経済であるが、今や地盤沈下が激しく、東アジアという限定された地域内ですら決して中心的な存在ではない。

日本は経済そして産業構造、外交において大きな革新的変化が求められているのだ。さむなくば、未来が危うい。

 

【20】[インプレッション]前問に続いて、日本の地位の低下を憂う問題。意図的にこうした問題をセレクトしているのか?それとも東アジアをテーマとすれば、どうしてもこうなってしまうのだろうか。中国の躍進、韓国の安定、そして日本の衰退。

 

[解法]自動車は乗用車と商用車に分かれており、本問はそのうち乗用車だけをテーマとしている。ただし、自動車生産と乗用車だけの生産は大きく異なるものでもなく、とくに意識しなくていい。

というか、一般的な工業力の統計と見て構わないと思う。21世紀に入り、生産量が急激に拡大しているサがもちろん中国。圧倒的な数値である。

さらにGNIを考えた場合、日本は韓国の3〜4倍の規模である。人口で2.5倍(1億2千5百万人と5千万人)、1人当たりGNIで1.5倍程度(45000ドル/人と30000ドル/人)の違いがある。日韓の経済規模は明確に異なるのだ。東アジア全体が世界的な工業地域であるのだが、それでも生産量を考えた場合、日本が上位にくるとみて妥当なんじゃないか。シが日本、スが韓国。

そもそも自動車の生産台数は、1位中国、2位アメリカ合衆国、3位日本、4位ドイツである。乗用車のみに限っても、それに準ずるとみて問題ないだろう。

シについては20世紀末までは3カ国中ダントツの首位だったことにも注目。1980年代の日本こそ世界最大の自動車生産国であったが、1990年代に入ってもその面目は保たれていたということ。しかし2010年代以降は新興国の勢いに押され、生産は停滞していく。前述のように世界3位の生産台数を今でも誇ってはいるのだが、かつてほどの勢いはない。2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災の影響も大きいが、仮にそれらの不安定要素がなかったとしても、日本の地位の低下は避けられなかったのではないか。

一方で、韓国は少しずつではあるが確実にこの20年間生産台数を増やしてきた。GNIの規模(先述のように日本の4分の1程度である)が小さいことを考えると、相対的な乗用車の生産台数は極めて多いと言える。「世界最高の工業国」であるのだ。

 

[今後の学習]地理の問題を解いていると、いかに現在の日本がダメなのかって改めて実感できてしまう。一部のマスコミでは「日本スゴい」みたいなことも言っているようだけど、そんな要素ははっきり言って皆無です。日本にポジティブな要素はない。

だからこそ、日本はゼロから、いやマイナスから這い上がっていけばいいと思う。現状を受け入れることは大切だ。その際に必要となるのは外国との連携。とくに中国や韓国の成長は著しいのだから、東アジア地域がより緊密な関係を築き、一つの経済地域としてともに成長していくようなロードマップが今後は必要なんじゃないかと思うな。

 

【21】[インプレッション]社会的な課題とはあるけれど、実際には地形や気候といった自然地理的な要素も含む複合問題になっているね。文章は読まずにキーワードだけ拾う習慣をつけよう。

 

[解法]文章正誤問題の正文判定。誤文を3つ探さないといけないのでちょっと面倒だね。

それぞれの選択肢についてキーワードに注目しながら分析していこう。

まず①から。韓国を含む朝鮮半島は安定陸塊。プレート境界から遠く離れ、大規模な地震は発生しない。朝鮮半島の南に浮かぶチェジュ島だけは火山島なんですけどね。だからこの島は溶岩で覆われ農業に適さない。日本に多くの人々が働きに出た歴史がある。古い時代の日本における朝鮮系の人はほぼチェジュ島出身。おっと、話がズレてしまったかな。とにかく「朝鮮半島は安定陸塊」は絶対的なこと。

さらに②。これはさすがに地理Bでは出題されないかな。国連については「バチカン市国以外全ての国が加盟している」と考えてください。かつて未加盟だった韓国と北朝鮮、そしてスイスも現在は国連の一員なのだ。ただし、台湾のように正式の国家として認められていない地域(経済的には独立しているが、あくまで公式には中国の一部であると日本政府はみなしている)はもちろん国連未加盟であるし、旧ユーゴのコソボについては日本は正式な国家として認めているものの、まだ未承認の国も多く、やはり国連未加盟(逆に、北朝鮮は日本は国家と認めていないのに、国連には加盟している)。

そして③。中国全体では植林(緑の長城計画)によって森林の面積は増加しているものの、黄河上流域の黄土高原では砂漠化が依然として進行している。この地域を発生現とする黄砂は、内陸部から吹き出す風に乗って、中国沿海部や朝鮮半島、日本上空にも達する。

④はどうだろう。「移民」とあるが、日本は原則として移民を受け入れる国ではないことを知っておこう。厳しい入国資格検査があり、不適合な者は祖国へと送還される。1990年の移民法(出入国管理法)の改正によって、とくにブラジルからの労働者を多く迎え入れたが、彼らは移民ではない。国籍はあくまでブラジルであり、家族で来日はしているものの、出稼ぎが終われば母国へと帰るものも多かった。

以上より、正解は③。

 

[今後の学習]多面的な内容が問われる問題であり、解答は困難だったかも知れない。また、本問の面白いのは、こうした文章正誤問題については各文章の後半にキーとなる言葉(つまり誤文となりうる箇所)が含まれているパターンが多いのだが、ここではむしろ文章の前半がポイントとなっている。①ならば「活断層による大規模な地震が頻発し」、②ならば「国際連合に加盟せず」がポイント。形式的にも難しかったんじゃないかな。

ただ、選択肢②の内容は覚えなくていいし、本問で必須となるのは選択肢①で取り上げられている事象だと思う。「朝鮮半島は安定陸塊」、これは絶対に知っておいて(大地形は「覚える」ことが大切なのです)。

 

【22】[インプレッション]中国の自治区は地理Aでは大変よく問われる。ただし。本問は難しいんじゃないかな。感覚的に解く必要があるかも。悪問の部類だと思います。

 

[解法]これ、答えは②なんですよ。難しいですよね。中国の少数民族自治区は5つあるのですが、漢民族の移住者も多く、チベット自治区ではチベット人より漢民族の方が多くなっています。そもそものチベット人の数自体が少ないということもありますけどね。

ここからはちょっと余談(ちょっと政治的)。

少数民族の自治がなされてこそ「自治区」なのだが、中国に5つある少数民族自治区、実際に自治がなされているところはない。中央から多くの漢民族が移住者として送り込まれ、行政に関して要職についていることが多い。

 

[今後の学習]う〜ん、やっぱり難しいな。たしかにはっきりと言い切っている選択肢って②だけだったりするんだわ。①は「多い」、③も「多い」と述べているし、必ずしも全てというわけではない。④は下線部の外だが「ことがある」と結ばれており、これもやっぱり曖昧な表現となっている。

その点、②だけははっきりと言い切られているし、さらに「過半数」という数字に基づいた言い方もされている。疑問の余地を残さない、明確な選択肢となっているのだ。この点だけとってみても、やっぱり②こそ唯一の、誤文になりえる(つまり解答となりえる)文章だっていうこと。テクニックというか、感覚的に解くことが重要な問題なわけだね。

 

【23】[インプレッション]今年は地理Aの本試験の方でも合計特殊出生率が取り上げられている。出題率高いなぁ。個人的にはあまりいい指標とは思わないのだが。アジア、アフリカ、ヨーロッパとわかりやすい地域を比較しているので取り組みやすいだろう。特に「人口上位10か国」ということは、あの国が入っているわけだ。大きな手がかりになるよ。

 

[解法]3つの地域の主要国(人口上位国)について、乳児死亡率と合計特殊出生率が問われている。乳児死亡率は問題の中に定義が示されていないが、「1歳未満の子どもの死亡率」とみていいと思うよ。「乳幼児」死亡率の場合は、5歳未満児となる。ただ、いずれにせよ、子どもが小さい間に亡くなってしまうということは、この指標の値の大きいのは発展途上国であり、低いのは先進国であると素直に考えていい。「乳児(乳幼児)死亡率と1人当たりGNIは反比例する」のだ。

さらに合計特殊出生率について。こちらは問題の中に「女性1人が生涯に産む子どもの数の推計値」とある。国民全員が結婚するとして、一組の夫婦に子どもが2人いれば、次の世代の再生産が行われることになる。男性は子どもを産まないので、女性は平均して2人の子どもを設けることになる。ただし、小さい頃に亡くなってしまう子どももいるだろうから、実際には「2プラスアルファ」の値であってこそ、将来も同じだけの人口がキープされることになる。

ただし、みんなも知っているように今の日本は少子化に悩まされているね。将来的に人口が大きく減少することが予想されている。合計特殊出生率は1.4程度であり、つまり今の世代の20人に対し、次の世代の人口は14人。一つの世代の年齢差を30年とすれば、30年後には人口は3分の2になってしまうのか!?もちろん、実際の計算はこんなに単純なものではないけれど(例えば平均寿命がさらに伸びれば人口の減り方は緩和される)、しかしいずれにせよ少子化については本格的な対策が必要なことがわかるよね。

この合計特殊出生率についてはおおまかに出生率と比例すると考えよう。あ、一応注意しておくけれど、「合計特殊出生率」と「出生率」は全く違う指標だからね。合計特殊出生率はすでに述べたように「女性1人が生涯に産む子どもの数の推計値」であり、これは単位がない(あえていえば「人」だろうか)。それに対し、出生率は人口当たりの出生数(つまり新生児の数)であり、単位はパーセント(百分率)あるいはパーミル(千分率)。人口100人の地域で、1年間に3人の子どもが生まれたら、出生率は「3パーセント」あるいは「30パーミル」。

さらに言えば、この2つの指標、普通に考えれば、合計特殊出生率の高い地域で出生率も高くなり、逆に合計特殊出生率の低い地域で出生率も低くなると思うよね。実は、必ずしもそうは言えない。日本国内で言えば、例えば東京都は出生率は高いが、合計特殊出生率は低い。その一方で、宮崎県は出生率は低いが、合計特殊出生率は高い。これには多様な事情があるので簡単には説明できないが、単純にこの二つの指標にシンプルな相関関係があるわけではないことを知っておいてください。

とはいえ、センター地理レベルでは「合計特殊出生率と出生率は比例する」と考えて問題ない。過去の出題例をみても、そのように考えて解く問題はいくらでもある。深い理解は大学での勉強を通じて行えばよく、受験レベルではさほど複雑に考える必要はない。

そして、さらに出生率が人口増加率に比例することを考えて欲しい。地域別の年人口増加率は以下の通り。

 

2%;アフリカ

1.5%;南アジア

1.0%;東南アジア・ラテンアメリカ

0.5%;東アジア・アングロアメリカ

0%;日本・ヨーロッパ

 

「人口増加率=出生率=合計出生率」であるので、本問の選択肢である3つの地域について合計特殊出生率は「アフリカ>アジア>ヨーロッパ」である。アがヨーロッパ、イがアジア、ウがアフリカとなる。

ヨーロッパが全て2以下となっているのが興味深い。人口は今後減少するのだろう。アジアについては人口10位までには日本は確実に入っている。日本の合計特殊出生率は1.4であるが、それに該当するものはあるだろうか。最低でも1.8ぐらいあるようにみえるのだが。まぁ、これは誤差のようなものなので気にしなくていいのだろう。なお、韓国の値は日本より低く1.3であるが、韓国はアジアの人口上位10か国には入っていない。アフリカは逆に全て2を超えている。

 

(別解)

では別解として、乳児死亡率に注目する方法も考えてみよう。そもそも(グラフを見る限り)大まかに乳児死亡率と合計特殊出生率は比例しているようだ。

「乳児死亡率は1人当たりGNIに反比例する」。これは絶対的なセオリーである。例えば、(乳児死亡率ではなく)乳幼児死亡率の値になるが、日本は1000人当たり2人であるのに対し、エチオピアは1000人当たり200人と実に100倍の差がある。1人当たりGNIも、日本とエチオピアの間の差は100倍である。1人当たりGNIと相関関係にある指標は多いが、例外となる事項も多い。その点、この乳幼児死亡率についてはほぼ例外なく反比例といえる。非常に相関性が強い指標なのだ。もちろん、衛生環境や栄養条件などさまざまなファクターが要因となっていることは言うまでもない。

図を参照し、乳児死亡率は「ウ>イ>ア」である。1人当たりGNIは「ヨーロッパ>アジア>アフリカ」であるので、それぞれ対応させて、アがヨーロッパ、イがアジア、ウがアフリカである。イで乳児死亡率が極めて低い点が一つあるが、これは日本だろうか。

 

[今後の学習]長々と「解法」を書いてしまったが、結局のところ「乳児死亡率も合計特殊出生率も、1人当たりGNIと反比例する」だけの問題なので、さほど難しく考える必要はないね。すいません、ややこしくて。

ただ、本問で興味深かったのはイのアジア。合計特殊出生率に比べ、全体に乳児死亡率が高く、とくに飛び抜けた国が一つある。合計特殊出生率が4弱であるのに、乳児死亡率が60‰を超えている。これ、パキスタンなんですよ。その次に乳児死亡率が高い(40‰)点がインド。やはり合計特殊出生率がさほど高くない(2.5程度)ながら、乳児死亡率はアフリカ諸国並みに高い。南アジア地域の人口増加率は現在極端に高い値ではなく(1.5%)、合計特殊出生率もそれに従う。しかし、乳児死亡率については極めて高い水準にあり、アフリカの最貧国と並ぶ。たしかに南アジアは1人当たりGNIも低い地域なのだが(1000〜2000ドル/人程度)、合計特殊出生率のわりに乳児死亡率が高いということに何か意味があるのだろうか。深く考えてみたい統計ではある。

 

【24】[インプレッション]OAPEC(オアペック)が出題されたのは初めてじゃないかな。でも、民族の問題と捉えれば解答は不可能ではない。

 

[解法]OPECは「石油輸出国機構」。世界の石油輸出国によって結成された国際組織。OAPECは「アラブ石油輸出国機構」。OPECより民族主義的な意味合いが強い。加盟国は全てアラブ民族が主である国だが、多くはOPECと重なっている(そもそもアラブ国家には産油国が多いのだ)。

選択肢の4つの国を検討してみよう。

まずトルコであるが、この国は産油国ではない。主要輸出品目は機械類ヤ自動車、衣類である。安価な労働賃金(1人当たりGNIは10000ドル/人程度)を目的にEU圏から製造業が進出してきている。OPEC加盟国は全て原油が最大の輸出品目となっている(これは覚えておくといいよ。サウジアラビアやベネズエラが典型的)。選択肢から外す。

さらにイラン。この国は最大の輸出品目が原油であるOPEC加盟国の一つである。さて、OAPECはどうだろうか。つまり「アラブ」民族かどうか。イランは別名を「ペルシャ」という(ジャパンを日本というようなものだね)。ペルシャ民族によるペルシャ語の国。そう、アラブではない。だからOAPECの加盟国であるはずもなく、「OPEC加盟、OAPEC非加盟」ということで、イランの②が正解となる。

①のアルジェリアと④のリビアはいずれも産油国であり、さらにアラブ国家(北アフリカに位置する。北アフリカはアラブ民族が分布)でもある。OPECOAPECともに加盟しているとみて間違いないだろう。

正解は②のイラン。ペルシャ民族の産油国。

 

[今後の学習]もちろん覚える必要はないが、参考までにOPECOAPECの加盟国を示しておく。

 

OPECのみ加盟

OPECOAPEC加盟

OAPECのみ加盟

イラン

ナイジェリア

(赤道ギニア)

(ガボン)

(アンゴラ)

ベネズエラ

エクアドル

(イラク)

クウェート

サウジアラビア

アラブ首長国連邦

(リビア)

アルジェリア

(シリア)

(バーレーン)

エジプト

 

カッコ内の国はまず出題されないだろう(とはいえ、リビアは今回登場しているのですが)。北アフリカと西アジアがアラブの範囲であるが、イランはペルシャ民族であり、その範囲に含まれないことをしっかり確認しておこう。

 

【25】[インプレッション]おもしろい図を用いた問題ですね。新課程(共通テスト)の問題っぽい。かなり思考力が試されるのではないかな。

 

[解法]農産物の生産・飼育、加工・流通、消費に関する問題。図の読解がもちろん重要なのだが、本問のように問題文が長文の場合にはその中にヒントが隠されていることが多い。まずはじっくりと問題文を読解していこう。

「食品ロス」の問題ではあるが、その具体的な内容としては「死亡や腐敗、廃棄」などがある。なるほど、例えばAは「生産・飼育」時に15%のロスがあるが、これは農産物が枯れてしまったり、家畜が死んでしまったりなどの影響ということだろうか。

グラフの数値を挙げてみる。

 

 

生産・飼育

加工・流通

消費

A

85.0

72.3

70.3

B

94.9

82.6

78.6

C

96.5

86.5

75.5

 

さらにそれぞれの段階での「失われたポイント」を整理してみる。

 

 

生産・飼育

加工・流通

消費

A

15.0

12.7

2.0

B

5.1

12.3

4.0

C

4.5

10.0

11.0

 

さぁどうだろう?「加工・流通」に関してはどの地域も大きなポイント差はない。際立った値が現れているのは、Aの「生産・飼育」、そしてCの「消費」である。これ、どう考える?

 

「生産・消費」の際の食品ロスは前述のように不作や死亡である。干ばつの発生のような自然的要因かも知れないし、内戦の発生のような社会的要因かも知れない。せっかく植えたのに実らない。せっかく育てたのに十分に生育しない。そういった危険性が最も多い地域ってどこだろう?それは「サハラ以南アフリカ」ではないか。厳しい自然環境と、不安定な政治体制によって、時には大規模な不作や家畜死に見舞われるかも知れない。他地域ほど農牧業のテクノロジーも発達せず、農産物や畜産物に病気が蔓延することもあるだろう。生産・飼育の段階で全体の6分の1近くが失われる。Aを「サハラ以南アフリカ」とみて妥当だろう。

 

さらに。Cの「消費」のポイントの高さはどう考える?他の地域が全体の50分の1、25分の1のロスしかないのに、この地域のみは10分の1を超える。大量の食品が廃棄されているということではないか。

さて、こうした食料の廃棄が問題となっている地域ってどこだろう?日本でもスーパーやコンビニの弁当が大量廃棄されている光景は一般的である。食べ物が豊かであるがゆえに、それを無駄にしてしまう。一粒の米も大切にする食料不足が深刻な地域もあれば、飽食がゆえの生活習慣病に苦しむ人が多く、食べ物などいつでも手に入るだけにちょっと古くなっただけでどんどん捨ててしまう。それって、間違いなく先進国である。Cを「北アメリカ・オセアニア」と判定し、正解は⑤。

 

[今後の学習]いやぁ難しい。パッと見で解ける問題ではない。僕も上のようにグラフを表に直して、さらに「失われたポイント」を一覧にしてみてようやく解けた。

普通、「食品ロス」というと、食べ物を捨ててしまうようなことをイメージするし、もちろんそれは「消費」段階の食品ロスとしては正しいのだが、本問のように「生産・飼育」の段階からの食品ロスをテーマとする問題ならば、それだけでは不十分。考えが浅い。

問題文が長いということには必ず意味があるのだ。「死亡や腐敗、廃棄」としっかり書かれているし、なるほど消費段階のロスがまさしく「廃棄」であるならば、生産・飼育段階のロスは「死亡」であるし、加工・流通段階のロスは「腐敗」であるのだろう。

そこまでたどり着くことができれば何とか解答は可能だったと思う。「数字を分析すること」、「問題文の中からヒントを拾うこと」。この2点を心がけることは、センター試験の基本である。

 

【26】[インプレッション]この手のパターンの問題は2012年にも出題されているが、そちらは二酸化炭素の総排出量について。今回は1人当たりの値である点に注目。

 

[解法]1人当たり二酸化炭素排出量に関する問題。「1人当たり」なので原則として人口に反比例するはずなのだが、こと二酸化炭素に関しては中国の排出量も相当なものであり、人口が大きいからといって1人当たりの値が小さくなるとも言えない。注意しないと。

年次を追った問題については、「現在の値」に注目することが大切。ただし、本問についてはその限りではないと思う。アメリカ合衆国を特定する問題なので尚更。ポイントは最も古い年次である「1971年」。この時点での各国の値を比較していこう。

1970年代前半は日本が高度経済成長を果たし、ようやく先進国の仲間入りを果たした時代。第二次世界大戦が終わり、ヨーロッパも復興を果たしたものの、戦争で大きなダメージを受けなかったアメリカ合衆国の存在感が圧倒的であった。鉄鋼業や自動車工業、石油化学工業などの重工業が隆盛を極め、先進国と発展途上国との間には大きな差があった。

どうだろうか?現在でもエネルギーの無駄遣い国の一つであるアメリカ合衆国、1971年当時こそ世界の中で最もエネルギーを消費する国であり、そして「1人当たり」の値も高かったのではないか。①をアメリカ合衆国と見るのは当然なのではないか。これが正解。

1970年代の中ごろのオイルショックの影響で生産活動に大きなダメージを食らい、ピッツバーグを中心とした鉄鋼業が落ち込み、さらに1980年代には自動車生産において日本に首位の座を明け渡し、そして貿易摩擦に苦しむ。アメリカ合衆国の栄光の時代はやがて終わるのだが、1970年代まではまさに世界の工業の中心に君臨していた。

日本は③に該当。高度経済成長を果たし、世界の工業国の仲間入りを果たした。「1人当たり」の値も大きい。アメリカ合衆国ほど「無駄遣い」の国ではないが。

②と④については判定の必要なし。でも、気になると思うので、一応解説しておきますね。

②って1970年代後半から急激に上昇しているんだわね。これ、オイルショックの原油価格高騰によって、サウジアラビアなど産油国が急激に工業化(この場合の工業は製造業ではなく、都市インフラ整備などの建設業がメイン)した影響なのか。石油や天然ガスが有り余っている国だからこそ、節約って概念はないんだろうね(日本人が水を無駄遣いするようなものかな)。②がサウジアラビア。

残った④が中国。1980年に市場経済化(改革開放政策)に舵を切ったわけだが、実際に本格的な経済成長が始まったのは1990年代。外国からの企業を多く迎え入れた。2000年代に入り、GNIの規模で日本を抜き去り、中国は世界第2位の経済大国になった。こうした背景を考えると、継続して増加傾向にある④を中国とみていいのではないだろうか。国単位で考えると中国は世界最大の二酸化炭素排出国であるが(石炭の消費が圧倒的に多い国でもあるしね)、人口が多いので、1人当たりの値はさほど高いものではない。とはいえ、世界平均からみれば十分に高い値ではるのです。

 

[今後の学習]アメリカ合衆国を当てる問題なので、さほど難しくはなかったんじゃないかな。

中国の数値に注目。中国は世界の半分の石炭を消費する国であり、硫黄酸化物の排出量も極端に多い。以前、センター試験でも、1人当たりの硫黄酸化物の排出量が問われたことがあり、中国は世界最高レベルだった。1人当たりの二酸化炭素排出量については、石炭だけが原因ではないので、中国の値はアメリカ合衆国やサウジアラビアには敵わないが、1人当たりGNIで大きな差がある日本とはさほど変わらない値となっている。

 

【27】[インプレッション]「都市鉱山」は重要ワードですね。これに対する理解は絶対的に必要。良問だと思います。

 

[解法]「都市鉱山」が問われている。問題文より「使用済みの電子機器などに蓄積される金属は、再資源化が期待される」ことから都市鉱山と称されていることが分かる。先進国として電子機器が早い段階から広く普及し、さらに人口規模が大きい日本社会こそ「巨大な都市鉱山」と言えるのではないか。家電や携帯電話などに含まれている金属は、重要な資源なのだ。

このことから③が誤りとなる。もちろん「都市鉱山の蓄積量は多い」のである。

 

[今後の学習]「都市鉱山」という言葉は馴染みが薄いかも知れないが、この機会にちゃんと覚えておこう。

他はレアメタルの特徴も選択肢①と②で問われているが、これについても整理しておくこと。「レア」とは採掘される量が少ないだけでなく、「特定の国・地域に偏在している」こともその意味に含まれる。日本ではほとんど採掘されないため「輸入に依存」している。

選択肢④についてはまさにその通りでしょう。

 

【28】[インプレッション]これ、難しそうだな。判断材料が少なすぎる。基本的には絶対量でみないといけないのだが、割合(増減率)もポイントになるのかな。

 

[解法]ODAとは「政府開発援助」。先進国が発展途上国の開発と発展のために供与されるもの。

日本の場合、経済交流が活発なアジア地域への供与が多い。将来的な日本企業の進出が期待されている。都市インフラを改善し、港湾や空港などを整備し、多くの日本企業が進出する土台をつくる。

アメリカ合衆国の場合、イスラエルを中心とした西アジアへの供与が特徴的なだが。これは安全保障(軍事)の目的が強い。政治的に不安定で内戦も生じている西アジア地域へと莫大な金額を供与する。アフガニスタンやイラクなどアメリカ合衆国が直接的に戦争に関与した国も含まれる。もちろんこの地域で産出される原油の利権に結びつく目的もある。

ヨーロッパの場合、旧植民地へと供与されることが多い。フランスによる西アフリカ諸国への供与など。歴史的、文化的(言語を共有する)な結びつき。

本問は日本の供与がテーマとなっている。さて、日本と結びつきが強い地域はどこだろう?カは金額が2000年も2016年も最大であり、他地域と異なり増加傾向にある。キはカに次ぎ供与額が大きいが、やや減少。クは3つの中では最低の金額。さらに急激に減少。

重要度において、カ>キ>クであることがわかる。日本からの距離も遠く、経済的にもさほど強いつながりを持つわけでもないアフリカがクであることは容易に想像がつくだろう。

残るは2つ。2000年以降に活発にインフラ整備がなされ、将来的な日本企業の進出が期待される地域ってどこだ?

中国?いや、中国についてはすでに多くの日本企業が進出しているではないか(日系企業の進出数世界1位)。1980年に改革開放政策による市場経済化で外国企業に門戸を開き、インフラ整備がなされ、1990年代後半から2000年代にかけて急激な経済成長がみられた。2000年の段階で多くのODAが供与されているのは納得なのだが、それ以降はそうした先進国からの援助が必要だっただろうか。十分に経済力を身につけ、今や日本を抜き去り世界2位の経済大国である(GNI世界2位)。2010年代そしてそれ以降の時代に躍進する「未来のホープ」という位置づけではないはず。

ここで注目されるのが東南アジア。東南アジア10カ国は経済レベルごとに4つのランクに分けられる。

(極めて高い)シンガポール・ブルネイ

(やや高い)マレーシア・タイ

(やや低い)インドネシア・フィリピン・ベトナム

(極めて低い)カンボジア・ラオス・ミャンマー

シンガポールは日本同様に1960年代に工業化を成し遂げた国。現在は工業より商業に中心が移行し、シンガポールの港はシャンハイに次ぐ世界2のコンテナ取扱高を誇っている。

マレーシアとタイは1990年代に工業化が進んだ。日本からも多くの電気機械工場が進出。現在はマレーシアではハイテク産業の集積もみられ、タイは「アジアのデトロイト」として自動車工業の中心地となっている。

インドネシア、フィリピン、カンボジアは今まさに工業化による経済成長の真っ只中。軽工業から電気機械工業の発達がみられ、フィリピンではコンピュータ部品、インドネシアではオートバイの生産も行われている。

カンボジア、ラオス、ミャンマーは長く内戦状況にあったなど国内の政治が不安定だったこともあり、工業化は進んでいない。今後インフラ整備が進めば、2020年代には外国企業の進出が牽引する経済発展がみられるかもしれない。

どうだろうか?年代別の経済発展を考えると、(1960年代)日本・シンガポール→(1980年代)韓国・台湾→(1990年代)マレーシア・タイ→(2000年代)中国→(2010年代)インドネシア・フィリピン・ベトナム といった流れが見えてこないだろうか。東南アジアについては経済レベルの高いグルーブが20世紀の間に経済発展を成し遂げたが、低いグループについては工業化が21世紀にずれこむ。もはや賃金水準(1人当たりGNI)が高くなってしまった中国ではなく、より低賃金による労働力が得られるインドネシアなどに注目が集まる時代になっているのではないか。まさに彼らこそ「未来のホープ」である。

ここで問題の表に戻るが、なるほど、カは2000年の段階で多額の供与を受けているが、その傾向が2010年代にはさらに強まっている(増減率がプラス)。インドネシア、フィリピン、ベトナムを中心とした東南アジアとみていいのではないだろうか。東南アジア全体で6億人を超える巨大な人口地域であり、とくにインドネシア(2.5億人)、フィリピン(1億人)、ベトナム(1億人)の人口規模は大きい。中国に代わる、新たな「世界の成長センター」になるのは彼らなのではないか。

以上より、カがと東南アジア、キが東アジア、クがアフリカで、正解は④。

 

[今後の学習]これ、難しかったな。従来のセンター試験と考え方が違う。

これまでは、「伸びているものは中国」で良かったんだが、本問のデータをみるに、ODAに関しては頭打ちで、むしろ減少している。もちろん、ODAは先進国が発展途上国に対して供与するもので、中国が経済成長によってもはや先進国の助けを必要としない段階に入ったというポジティブな事象とも言えるのだが、それでもやはり中国は現在でも発展途上国であることには間違いなく(1人当たりGNIは低い)、本来もっとODAが拡大していたとしてもおかしくはない。それなのに、中国で減少し、東南アジアで拡大する。風向きが変わったというか、世界はさらに新しいフェイズに入ったということだろうか。中国が「世界の成長センター」として栄華を誇っていた時代に去りつつある。これからは東南アジアなど、さらに低賃金の豊富な労働力が得られる(1人当たりGNIが低く、人口が多い)地域へと「主役」が変化していくのではないか。

手がかりが少なく、解答に困惑する問題であった(だから捨て問と言ってしまってもいいかもしれない)が、センター試験が終わり共通テストへと移行する中で、世界経済の移り変わりを実感する、中身の濃い問題だったとも言える。

 

と思ったら、、、

 

スイマセン。こちら間違えていました(涙)。正解は①だったようです。カがアフリカ、キが東南アジア、クが東アジア。

 

日本のODAについては「経済的なつながり」が非常に重要であり、近隣で経済交流の活発な東アジアと東南アジアがその主な供給先「でした」。これについてはもはや過去形で考えないといけないのかな。21世紀に入り、その主要な供給先は経済レベルが低く開発の遅れたアフリカへと変化しています。これ、知っておいてもいいかもね。

そもそもODAについては「都市インフラを整備し、将来的に日本企業の進出しやすい土台をつくる」ことが大原則なのですが、その対象であった東アジアや東南アジアではすでに都市整備は完了し、これ以上ODAを投下する必要もなくなったという認識でいいのでしょう。その典型の場所が中国であり、かつては日本の最大のODA供与先でしたが、現在はその金額は大きく減少しており、ほぼ「ゼロ」となっています。本問の表1のクですね。中国は1人当たりGNIは未だ低いですが、GNIは世界2位であり、もはや日本をしのぐ大国です。

東南アジアもインドネシアを中心に日本がさかんにODAを供与していましたが、その金額は減少しています。すでに主要都市においてはインフラ整備は十分な状況にあるのでしょう。

というか、東日本大震災などもあり、もはや日本が発展途上国を助ける余裕がなくなってきているのかも知れません。全体の供与額も減少していますもんね。

 

唯一、増加している(それでも16年間で8%ですから、1年あたり0.5%という極めて低い値に過ぎません)のがアフリカであることが、表1からわかります。というか、2000年の段階ですでに地域別では1位だったのですね。これは知らなかった。。。とても興味深いデータですので、私も今後模試などでこれに関する問題を作って、理解を深めたいと思います。

とりあえず難問でした。手がかりも少なく、過去に類題も出題されていない。厳しかった。